説明

重合体とキラリティーを有する液晶とからなる複合体

【課題】
液晶含有率が高く、高透明性および等方性であり、広い温度範囲で大きな電気複屈折値ΔnEを示す重合体/液晶複合体および該複合体を含有する光素子、たとえば液晶表示素
子を提供すること。
【解決手段】
本発明に係る重合体/液晶複合体は、(A)イオン重合によって得られた重合体と、(B)カイラルネマチック相またはブルー相を示す液晶とを含有し、電界をかけない時には光学的に等方性であり、電界をかけた時には複屈折を生じることを特徴とする。重合体(A)は、液晶性および/または非液晶性のイオン重合性モノマーを用いて、カチオン重合によって得ることが好ましい。液晶(B)は、キラリティーを有しない液晶70〜99重量%と、光学活性な化合物1〜30重量%とを含み、重合体/液晶複合体における含有率が70〜99重量%の範囲であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン重合により得られた重合体とキラリティーを有する液晶とからなる複合体および該複合体を含有する光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学効果を利用して、光の強度や偏光状態を高速かつ高精度で制御する素子(以下「光素子」という)は、光情報処理技術において不可欠なものであり、たとえば、複屈折性を示す液晶組成物の電気光学効果(電圧印加による屈折率の変化)を利用した液晶表示素子などが実用化されている。
【0003】
電気光学効果を利用した光変調としては、ポッケルス効果やカー効果が知られている。カー効果とは、電気複屈折値(ΔnE)が電場(E)の二乗に比例する現象をいい、カー
効果を示す材料ではΔnE=KλE2が成立する(K:カー係数、λ:波長)。液晶の等方相においてもカー効果が観測され、ネマチック相(カイラルネマチック相)−等方相転移温度直上において、大きなカー係数が観測される。
【0004】
このようなカー効果を示す材料を用いた光素子には、可視光領域の光(波長が400〜700nm)を実質的に散乱せず(以下、単に「高透明性」ともいう)、かつ、光学的に等方性(以下、単に「等方性」ともいう)であるとともに、使用する材料が大きなカー係数を広い温度範囲において示すことが求められている。
【0005】
特許文献1には、単なるネマチック液晶組成物を高分子等により、ほとんど可視光線を散乱しない程度の微小領域に分割し、カー効果材料として機能させる方法が開示されている。このような従来の複合材料において、液晶組成物の含有率は大部分が60重量%以内である。複合材料中の液晶組成物の含有量が低いと、光素子として使用した場合に、電界をかけた時に複屈折の変化に起因する部分が少ないため、大きな電気複屈折値を発現させることができない。一方、液晶組成物の含有率を高くすると、所望の高透明性および等方性を保持することができない。
【0006】
また、従来の液晶組成物は、大きなカー係数を示す温度範囲が狭いため、電界をかけた時の応答時間が長いという問題がある。液晶表示素子においては、電界をかけた時の応答時間が1ミリ秒以下であればフィールドシーケンシャルが適応でき表示品位が向上するが、現在実用化されている液晶組成物の応答時間は5〜10ミリ秒程度である。
【0007】
非特許文献1には、電気複屈折値ΔnEが、屈折率異方性値(Δn)と誘電率異方性値
(Δε)の積に比例することが記載されている。したがって、液晶表示素子が十分な明暗を示すためには、大きな電気複屈折値ΔnEが必要であることから、ΔnおよびΔεが大
きな液晶組成物を使用することが好ましい。
【0008】
しかしながら、ΔnやΔεが大きな液晶化合物は、不飽和結合を含み、ラジカル重合の重合条件に活性であることから、液晶組成物とラジカル重合性モノマーとの混合物に紫外線を照射して重合体/液晶複合体を製造する場合、本来重合してはならない液晶がリビング重合を阻害し、十分な重合度を有する重合体を得ることができない。そのため、所望の特性が充分に得られないという問題がある。
【特許文献1】特開平11−183937号公報
【非特許文献1】P. G. de genes et al., The physics of liquid crystals, Clarendon Press, Oxford, 1993.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、液晶含有率が高く、高透明性および等方性であり、広い温度範囲で大きな電気複屈折値ΔnEを示す重合体/液晶複合体および該複合体を含有する光素子を提
供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、キラリティーを有する液晶と、イオン重合性モノマーとの混合物に、紫外線を照射してイオン重合反応させることにより得られる重合体/液晶複合体が、上記課題を解決できることを見出した。本発明に係る重合体/液晶複合体、光素子および液晶表示素子は以下のとおりである。
【0011】
[1](A)イオン重合によって得られた重合体と、(B)カイラルネマチック相またはブルー相を示す液晶とを含有し、電界をかけない時には光学的に等方性であり、電界をかけた時には複屈折を生じることを特徴とする重合体/液晶複合体。
【0012】
[2]前記重合体(A)がカチオン重合によって得られたことを特徴とする[1]に記載の重合体/液晶複合体。
[3]前記重合体(A)がアニオン重合によって得られたことを特徴とする[1]に記載の重合体/液晶複合体。
【0013】
[4]前記重合体(A)が、非液晶性のイオン重合性モノマーを用いて得られたことを特徴とする[1]に記載の重合体/液晶複合体。
[5]前記重合体(A)が、液晶性のイオン重合性モノマーを用いて得られたことを特徴とする[1]に記載の重合体/液晶複合体。
【0014】
[6]前記重合体(A)が、非液晶性のイオン重合性モノマーと、液晶性のイオン重合性モノマーとを用いて得られたことを特徴とする[1]に記載の重合体/液晶複合体。
[7]前記非液晶性のイオン重合性モノマーが、スチレン、スチレン誘導体、アクリロニトリル、アクリレート、シアノアクリレート、ビニルケトン、1,3−ジエン、イソプレン、イソシアネート、イソチオシアネート、ホルムアルデヒド、オキシラン、エチレンイミン、チイラン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ブタンジオールホルマール、トリオキサン、ラクタム、ラクトン、ベンゾフラン、インデン、ジシクロペンタジエン、N−カルボキシ無水物、ビニルエーテルおよびオキセタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の骨格を重合性官能基として含有することを特徴とする[4]または[6]に記載の重合体/液晶複合体。
【0015】
[8]前記非液晶性のイオン重合性モノマーが、オキシランもしくはオキセタン骨格を重合性官能基として含有することを特徴とする[4]または[6]に記載の重合体/液晶複合体。
【0016】
[9]前記非液晶性のイオン重合性モノマーが、下記式(q−1)〜(q−12)で表される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする[4]または[6]に記載の重合体/液晶複合体。
【0017】
【化1】

【0018】
式中、mは1〜5の整数を示す。
[10] 前記液晶性のイオン重合性モノマーが、下記式(M1)または(M2)で表されることを特徴とする[5]または[6]に記載の重合体/液晶複合体。
a−Y−(A−Z)p−A−Y−Rb ・・・(M1)
b−Y−(A−Z)p−A−Y−Rb ・・・(M2)
式(M1)および(M2)中、Raは、水素原子、ハロゲン原子、−CN、−N=C=
O、−N=C=Sまたは炭素数1〜20のアルキル基であり、該アルキル基において、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH
−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、また、任意の水素原子は、ハロゲン原子または−CNで置き換えられてもよく;Rbは、下記式(M3−1)〜(
M3−4)のいずれかで表される重合性基であり;Aは、独立に芳香族性もしくは非芳香族性の5〜6員環または炭素数9以上の縮合環であり、該環において、任意の−CH2
は、−O−、−S−、−NH−または−NCH3−で置き換わってもよく、任意の−CH
=は−N=で置き換わってもよく、任意の水素原子は、ハロゲン原子または炭素数1〜5のアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基で置き換わってもよく;Yは、独立に単結合または炭素数1〜20のアルキレン基であり、該アルキレン基において任意の−CH2
は、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく;Zは、独立に単結合、−(CH22−、−(CH24−、−O(CH
22−、−(CH22O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CF22−、−(CH22−COO−、−OCO−(CH22−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CH=CH−(CH22−、−(CH22−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−CH=CH−、−CH=CH−C≡C−、−OCF2−(CH22−、−(CH22−CF2O−、−OCF2−または−CF2O−であり;pは1〜6の整数である。
【0019】
【化2】

【0020】
式(M3−1)〜(M3−4)中、Rdは、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜
5のアルキル基であり、該アルキル基において任意の水素原子は、ハロゲン原子で置き換えられてもよい。
【0021】
[11]前記式(M1)および(M2)中、Raが、ハロゲン原子、−CN、−CF3、−OCF3、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜19のアルコキシ基、炭素数2〜
21のアルケニル基または炭素数2〜21のアルキニル基であり;Aが、独立に1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレン、2,3−ビス(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、9−メチルフルオレン−2,7−ジイル、9,9−ジメチルフルオレン−2,7−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイルまたはピリミジン−2,5−ジイルであり;
Yが、独立に単結合、−(CH2r−、−O(CH2r−または−(CH2rO−(rは1〜20の整数)であり;Zが、独立に単結合、−(CH22−、−COO−、−OCO−、−(CH22−COO−、−OCO−(CH22−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCF2−または−CF2O−であり;pが1〜3の整数であることを特徴とする[10]に記載の重合体/液晶複合体。
【0022】
[12]前記液晶(B)が、(b1)キラリティーを有しない液晶70〜99重量%と、(b2)光学活性な化合物1〜30重量%とを含み、該キラリティーを有しない液晶(b1)がネマチック相を示すことを特徴とする[1]に記載の重合体/液晶複合体。
【0023】
[13]前記キラリティーを有しない液晶(b1)が、0.18以上のΔnを有することを特徴とする[12]に記載の重合体/液晶複合体。
[14]前記キラリティーを有しない液晶(b1)が、0.20以上のΔnを有することを特徴とする[12]に記載の重合体/液晶複合体。
【0024】
[15]前記キラリティーを有しない液晶(b1)が、0.20以上のΔnを有し、かつ、正のΔεを有することを特徴とする[12]に記載の重合体/液晶複合体。
[16]前記キラリティーを有しない液晶(b1)が、下記式(N1)で表される化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項12に記載の重合体/液晶複合体。
【0025】
0−(A0−Z0w−A0−R0 ・・・(N1)
式(N1)中、A0は、独立に芳香族性もしくは非芳香族性の3〜8員環または炭素数
9以上の縮合環であり、該環において、任意の水素原子が、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は、−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N
=で置き換えられてもよく;R0は、独立に水素原子、ハロゲン原子、−CN、−N=C
=O、−N=C=Sまたは炭素数1〜20のアルキル基であり、該アルキル基において、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−C
F=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、また、任意の水素原子はハロゲン原子で置き換えられてもよく;Z0は、独立に単結合、炭素数1〜8のα,ω−アルキレ
ン基であり、該アルキレン基において、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−COO
−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、また、任意の水素原子はハロゲン原子で置き換えられてもよく;wは2〜4の整数である。
【0026】
[17]前記式(N1)中、A0が、独立に1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェ
ニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレン、2,3−ビス(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、9−メチルフルオレン−2,7−ジイル、9,9−ジメチルフルオレン−2,7−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイルまたはピリミジン−2,5−ジイルであり;R0が、独立に水素原子、フッ
素原子、塩素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、−CN、−N=C=Oまたは−N=C=Sであり、少なくとも一方の末端置換基が非極性基であり、他方の末端置換基が、−CN、−N=C=O、−N=C=S、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン化アルコキシ基であり;Z0が、独立
に単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CH−C≡C−または−C≡C−CH=CH−であることを特徴とする[16]に記載の重合体/液晶複合体。
【0027】
[18]前記光学活性な化合物(b2)が、1,2−ジフェニルエタン−1,2−ジオール誘導体、マンニトール誘導体、酒石酸誘導体およびビナフトール誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[12]に記載の重合体/液晶複合体。
【0028】
[19]前記液晶(B)の含有率が70〜99重量%であることを特徴とする[1]に記載の重合体/液晶複合体。
[20]10V/μmの電界をかけた時に複屈折を生じることを特徴とする[1]に記載の重合体/液晶複合体。
【0029】
[21](A)カチオン重合によって得られた重合体と、(B)カイラルネマチック相またはブルー相を示す液晶とを含有し、該液晶(B)が、(b1)キラリティーを有しない液晶70〜99重量%と、(b2)光学活性な化合物1〜30重量%とを含み、該キラリティーを有しない液晶(b1)が0.20以上のΔnを有し、電界をかけない時には光学的に等方性であり、10V/μmの電界をかけた時に複屈折を生じることを特徴とする重合体/液晶複合体。
【0030】
[22](A)カチオン重合によって得られた重合体と、(B)カイラルネマチック相またはブルー相を示す液晶とを含有し、該液晶(B)が、(b1)キラリティーを有しな
い液晶70〜99重量%と、(b2)光学活性な化合物1〜30重量%とを含み、該キラリティーを有しない液晶(b1)が、0.20以上のΔnを有し、かつ、正のΔεを有し、該重合体(A)が、スチレン、スチレン誘導体、アクリロニトリル、アクリレート、シアノアクリレート、ビニルケトン、1,3−ジエン、イソプレン、イソシアネート、イソチオシアネート、ホルムアルデヒド、オキシラン、エチレンイミン、チイラン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ブタンジオールホルマール、トリオキサン、ラクタム、ラクトン、ベンゾフラン、インデン、ジシクロペンタジエン、N−カルボキシ無水物、ビニルエーテルおよびオキシランからなる群より選ばれる少なくとも1種の骨格を重合性官能基として含有する非液晶性のイオン重合性モノマーを用いて得られた重合体であり、電界をかけない時には光学的に等方性であり、10V/μmの電界をかけた時に複屈折を生じることを特徴とする重合体/液晶複合体。
【0031】
[23]上記[1]〜[22]のいずれかに記載の重合体/液晶複合体を含むことを特徴とする光素子。
[24]上記[1]〜[22]のいずれかに記載の重合体/液晶複合体を含むことを特徴とする液晶表示素子。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、キラリティーを有する液晶とイオン重合性モノマーとの混合物に、紫外線を照射して複合体を製造しても、液晶がリビング重合を阻害せず、充分な重合度を有する重合体を得ることができる。また、本発明の重合体/液晶複合体は、高透明性および等方性であるとともに、充分に大きな電気複屈折値を示す。
【0033】
したがって、本発明の重合体/液晶複合体を用いた光素子、たとえば液晶表示素子は、従来技術に比べて低い電圧で、あるいは、高透明性および等方性を有した状態で、高速応答性および所望の電気複屈折値を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明に係る重合体/液晶複合体および該複合体を含有する光素子について詳細に説明する。なお、本明細書における用語の使い方は以下のとおりである。
「液晶性」は、液晶相を有すること、および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用なことの総称である。液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と表記することがある。式(1)、式(2)などで表わされる化合物を、それぞれ化合物(1)、化合物(2)などのように表記することがある。また、「イオン重合性」は、アニオン重合またはカチオン重合で高分子を与える能力を示す。
【0035】
「重合体/液晶複合体」は、重合体と液晶とが巨視的には混合している状態を意味する。特に、重合体と液晶は微視的には分離しており、液晶のみの領域(ドメイン)の大きさは十分に小さいので、巨視的には、すなわち可視光領域では均一な状態を示す。本明細書では、この状態を「擬似等方性」という。重合体の前駆体、すなわち重合前の重合性モノマーと液晶との混合物は、完全に混合し、均一な混合物であるが、重合性モノマーが重合する過程において、反応点を持つ重合体は徐々に液晶と相分離を起こし、最終的に重合体/液晶複合体を与える。なお、「重合体/液晶複合体」を単に「複合体」と表記することもある。
【0036】
「任意の−CH2−は、−O−、−CH=CH−などで置き換えられてもよい」の意味
を一例で示す。C49−における任意の−CH2−を、−O−または−CH=CH−で置
き換えた基の一部は、C37O−、CH3O(CH22−、CH3OCH2O−、CH2=CH(CH−CH2−)3−、CH3CH=CH(CH22−およびCH3CH=CHCH2
−である。このように「任意の」とは、「区別なく選択された少なくとも1つの」を意味
する。化学的安定性を考慮した場合、酸素原子と酸素原子とが隣接したCH3OOCH2−よりも、酸素原子と酸素原子とが隣接しないCH3OCH2O−の方が好ましい。本発明で用いられる化合物は、2H(重水素)や13Cなどの同位体を天然存在比の量よりも多く含
んでいても同様の特性を有する。
【0037】
本発明の重合体/液晶複合体は、イオン重合により得られた重合体(A)と、カイラルネマチック相またはブルー相を示す液晶(B)とからなり、電界をかけない時には光学的に等方であり、電界をかけた時には複屈折を生じることを特徴とする。特に、正のΔεを有する液晶を使用した重合体/液晶複合体を櫛歯電極セルに封入し、該セルを直交した偏光板に挟んだ光素子は、電界をかけたこと・かけないことによって明暗を与える。かける電界は10V/μm以下、たとえば1〜5V/μmの範囲でも、一般的に明暗を与えることができるとされる複屈折値、具体的には0.05以上の複屈折値を発現することが可能である。
【0038】
<重合体(A)>
本発明の複合体を構成する重合体(A)は、イオン重合、具体的にはカチオン重合またはアニオン重合によって合成される。イオン重合により合成することにより、ラジカル重合において見られたような液晶によるリビング重合の阻害を引き起こさず、高い重合度を有する重合体を得ることができる。そのため、小さくかつ均一な相関長を有する複合体を製造することができ、電界をかけない時には高い透明性が得られ、電界をかけた時には大きなカー係数および大きな複屈折値が得られる。また、得られる複合体は、高分子網により充分に支持されるので、低温でも安定した擬似等方相を保持することができ、さらに、機械的強度が向上する。
【0039】
重合体(A)を合成するためのイオン重合性モノマーの構造は、イオン重合性の官能基を有すれば特に限定されず、公知の低分子量のモノマーまたはマクロモノマーの他、オリゴマーを使用することができる。本発明において、重合体(A)の原料モノマーとはこれらを包含する意味である。また、2つ以上のイオン重合性官能基を有する多官能性モノマーを用いれば、三次元架橋構造を形成することが可能である。高透明性および等方性をより発現させるためには、3つ以上のイオン重合性官能基を有するモノマーを、全原料モノマー中に10重量%以上含有させることが好ましい。重合体(A)の原料モノマーは、非液晶性のイオン重合性モノマーでも、液晶性のイオン重合性モノマーでもよく、両者を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(原料モノマー)
非液晶性のカチオン重合性モノマーおよびアニオン重合性モノマーとしては、電子求引性置換基を含むものが好ましい。具体的には、下記式(1−1)〜(1−26)に示したスチレン(1−1)、スチレン誘導体(1−2)、アクリロニトリル(1−3)、アクリレート(1−4)、シアノアクリレート(1−5)、ビニルケトン(1−6)、1,3−ジエン(1−7)、イソプレン(1−8)、イソシアネート(1−9)、イソチオシアネート(1−10)、アルデヒド(1−11)、オキシラン(1−12)、エチレンイミン(1−13)、チイラン(1−14)、テトラヒドロフラン(1−15)、1,3−ジオキソラン(1−16)、ブタンジオールホルマール(1−17)、トリオキサン(1−18)、ラクタム(1−19)、ラクトン(1−20)、ベンゾフラン(1−21)、インデン(1−22)、ジシクロペンタジエン(1−23)、N−カルボキシ無水物(1−24)、ビニルエーテル(1−25)およびオキセタン(1−26)からなる群より選ばれる少なくとも1種の骨格を重合性官能基として含有するイオン重合性モノマーが挙げられる。
【0041】
【化3】

【0042】
式中、Rは水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示し、R’は炭素数1〜10のアルキル基を示し、nは1〜5の整数である。上記の中では、オキシラン(1−12)もしくはオキセタン(1−26)骨格、すなわちオキシラニル基またはオキセタニル基を重合性官能基として含有する化合物が好ましい。
【0043】
上記のような重合性官能基を有するイオン重合性モノマーは、通常、カチオン重合にもアニオン重合にも使用できる。カチオン重合およびアニオン重合は重合の形式を示すもので、重合条件を最適化することで、すなわち、活性種としてカチオンまたはアニオンのいずれかを使用して重合を開始することで、重合形式を決定できる。
【0044】
非液晶性のカチオン重合性モノマーおよびアニオン重合性モノマーとしては、たとえば上記式(q−1)〜(q−12)で表される化合物が挙げられる。また、データブック類、たとえば「光硬化技術データブック材料編」(市村監修、テクノネット社編(2000))等に開示されているモノマーも好適に使用できる。
【0045】
液晶性のイオン重合性モノマーとしては、上記式(M1)で表されるメソゲン部位を持つ単官能性モノマーおよび上記式(M2)で表される二官能性モノマーが挙げられる。式(M1)および(M2)中の各記号について以下に説明する。
【0046】
aは、水素原子、ハロゲン原子、−CN、−N=C=O、−N=C=Sまたは炭素数
1〜20のアルキル基であり、該アルキル基において、任意の−CH2−は、−O−、−
S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、また、任意の水素原子は、ハロゲン原子または−CNで置き換えられてもよい。
【0047】
好ましいRaは、ハロゲン原子、−CN、−CF3、−OCF3、炭素数1〜20のアル
キル基、炭素数1〜19のアルコキシ基、炭素数2〜21のアルケニルおよび炭素数2〜21のアルキニル基である。特に好ましいRaは、−CN、炭素数1〜20のアルキル基
および炭素数1〜19のアルコキシ基である。なお、アルキル基およびアルケニル基は、分岐状よりも直鎖状の方が好ましい。
【0048】
bは、上記式(M3−1)〜(M3−4)のいずれかで表される重合性基である。式
(M3−1)〜(M3−4)中、Rdは、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜5の
アルキル基であり、該アルキル基において任意の水素原子は、ハロゲン原子で置き換えられてもよい。好ましいRdは、水素原子、ハロゲン原子およびメチル基である。特に好ま
しいRdは、水素原子、フッ素原子およびメチル基である。
【0049】
Aは、独立に芳香族性もしくは非芳香族性の5〜6員環または炭素数9以上の縮合環であり、該環において、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−NH−または−NCH3−で置き換わってもよく、任意の−CH=は−N=で置き換わってもよく、任意の水素原子は、ハロゲン原子または炭素数1〜5のアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基で置き換わってもよい。
【0050】
好ましいAは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレン、2,3−ビス(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、9−メチルフルオレン−2,7−ジイル、9,9−ジメチルフルオレン−2,7−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイルおよびピリミジン−2,5−ジイルである。なお、2−フルオロ−1,4−フェニレンは、3−フルオロ−1,4−フェニレンと構造的に同一であるので、後者は例示していない。この規則は、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンと3,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンの関係などにも適用する。
【0051】
メソゲン部位が誘起するΔnが大きければ、大きなΔnEが得られるので好ましい。こ
の観点から、Aは、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、9−メチルフルオレン−2,7−ジイルおよび9,9−ジメチルフルオレン−2,7−ジイルが好ましく、これらはハロゲン原子、アルキル基またはハロゲン化アルキル基で置換されていてもよい。
【0052】
Yは、独立に単結合または炭素数1〜20のアルキレン基であり、該アルキレン基において任意の−CH2−は、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−ま
たは−OCO−で置き換えられてもよい。好ましいYは、単結合、−(CH2r−、−O(CH2r−および−(CH2rO−であり、rが1〜20の整数である。特に好ましいYは、単結合、−(CH2r−、−O(CH2r−および−(CH2rO−であり、rが1〜10の整数である。
【0053】
Zは、独立に単結合、−(CH22−、−(CH24−、−O(CH22−、−(CH22O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CF22−、−(CH22−COO−、−OCO−(CH22−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CH=CH−(CH22−、−(CH22−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−CH=CH−、−CH=CH−C≡C−、−OCF2−(CH22−、−(CH22−CF2O−、−OCF2−また
は−CF2O−である。
【0054】
好ましいZは、単結合、−(CH22−、−COO−、−OCO−、−(CH22−COO−、−OCO−(CH22−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCF2−および−CF2O−である。
【0055】
pは1〜6、好ましくは1〜3の整数である。pが1のときは、6員環などの環を2つ有する二環の化合物である。pが2または3のときは、それぞれ三環または四環の化合物である。pが1であるとき、2つのAは同一でも、異なってもよい。pが2であるとき、3つのA(または2つのZ)は同一でも、異なってもよい。pが3〜6であるときについても同様である。Ra、Rb、Rd、Z、AおよびYについても同様である。
【0056】
好ましい化合物(M1)および化合物(M2)の具体例としては、下記式(M1−1)〜(M2−12)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式(M1−1)〜(M2−12)において、Ra、Rb、Rd、Z、A、Yおよびpは、上記式(M1)および式(M
2)中で定義したとおりである。環Aはシクロヘキサン環またはベンゼン環を示す。Fがベンゼン環に結合した1,4−フェニレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられた1,4−フェニレンを意味する。(F)がベンゼン環に結合した1,4−フェニレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよい1,4−フェニレンを意味する。(F,Me)がベンゼン環に結合した1,4−フェニレンは、任意の水素原子がフッ素原子またはメチル基で置き換えられてもよい1,4−フェニレンを意味する。(Me)が9位に結合したフルオレンは、9位の水素原子がメチル基で置き換えられてもよいフルオレンを意味する。
【0057】
【化4】

【0058】
【化5】

【0059】
【化6】

【0060】
【化7】

【0061】
【化8】

【0062】
【化9】

【0063】
【化10】

【0064】
メソゲン部位を有し、かつ、3つ以上の重合性基を有するモノマーを使用すれば、複合体の熱安定性が高くなる。このようなモノマーとしては公知化合物でよいが、たとえば、特開2004−182949号公報、特開2004−59772号公報に開示されている化合物が挙げられる。
【0065】
(重合反応)
本発明では、光重合によって系内で重合体(A)を製造することが好ましい。この観点から、工業的にはアニオン重合に比べカチオン重合がより好ましい。液晶(B)に溶解させた上記原料モノマーをカチオン重合またはアニオン重合でリビング重合することにより、重合体/液晶複合体が得られる。
【0066】
イオン重合反応を開始するためには、少量のカチオンまたはアニオン活性種が必要である。この活性種を発生させるために、光を照射することにより、分解して活性種を発生する重合開始剤が用いられる。このような重合開始剤としては、種々知られており、公知の開始剤を用いることができる。なお、シアノアクリレートのように、光照射によってそれ自体の二重結合が開裂し、求核剤として機能する重合性モノマーもある。
【0067】
カチオン重合開始剤としては、たとえばジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられる。
ジアリールヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウム塩や4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム塩などが挙げられる。カウンターアニオンは、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-、CF3CO2-、p−トルエンスルホン酸イオンなどである。ジアリールヨードニウム塩に、チオキサントン、フェノチアジン、クロロチオキサントン、キサントン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ルブレンなどの光増感剤を併用してもよい。
【0068】
トリアリールスルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウム塩や4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム塩などが挙げられる、カウンターアニオンは、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-、CF3CO2-、p−トルエンスルホン酸イオンなどである。
【0069】
市販のカチオン重合開始剤としては、たとえば、「サイラキューアーUVI−6990」、「サイラキュアーUVI−6974」、「サイラキュアーUVI−6992」(UCC社製)、「アデカオプトマーSP−150、SP−152、SP−170、SP−172」(旭電化社製)、「Photoinitiator2074」(ローディア社製)、「イルガキュアー250」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、「UV−9380C」(GEシリコンズ社製)などが挙げられる。
【0070】
アニオン重合開始剤としては、たとえばブレンステッドもしくはルイス塩基を使用でき、たとえば、アルカリ金属、金属アルコキシド、アミン、リン酸およびナトリウム・ナフ
タレンなどが挙げられる。
【0071】
上記重合開始剤に加えて1種または2種以上の他の成分、たとえば、触媒や安定剤を添加してもよい。特に、安定剤を添加することにより、貯蔵中の不所望な重合を防止できる。このような安定剤としては、当業者が知るすべての化合物を使用できる。安定剤の代表例としては、4−エトキシフェノール、ハイドロキノンおよびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)などが挙げられる。
【0072】
重合温度は、重合体/液晶複合体が、高透明性および等方性を示す温度(ただし、重合終了直後には重合部位がクロスニコルの偏光顕微鏡下で着色して見える場合もあるが、この場合でも、アニールすることで等方性を発現する温度であればよい。)であることが好ましい。より好ましくは、上記原料モノマーと液晶との混合物が等方相またはブルー相を発現する温度で、かつ、等方相または擬似等方相で重合を終了する。すなわち、重合体/液晶複合体が、可視光線より長波長側の光を実質的に散乱せず、かつ、光学的に等方性の状態を発現する温度とすることが好ましい。
【0073】
<液晶(B)>
本発明の複合体を構成する液晶(B)は、(b1)キラリティーを有しない液晶を70〜99重量%、好ましくは75〜95重量%、より好ましくは80〜95重量%の範囲で、(b2)光学活性な化合物を1〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%の範囲で含む混合物であり、該キラリティーを有しない液晶(b1)は、ネマチック相を示す。
【0074】
光学活性化合物(b2)の混合量を調整することにより、キラリティーを有する液晶(B)のカイラルピッチを調整することができる。液晶(B)のピッチは、擬似等方性を示せば特に限定されないが、可視光領域での不必要な散乱や反射を避けるために、通常500nm未満、好ましくは400nm未満である。なお、液晶(B)のピッチは、光学活性化合物(b2)の混合量以外にも、重合体(A)の含有量、光学活性化合物のHTP(helical twisting power)等を考慮し、目的に応じて最適化する必要がある。
【0075】
(b1)キラリティーを有しない液晶
本発明で用いられるキラリティーを有しない液晶(b1)としては、公知の液晶化合物を用いることができ、その化学構造および製造方法は、データベース「LiqCryst」(登録商標、LCI Publisher, Hamburg, Germany)およびそれに掲載されている参照文献等に記
載されている。また、フーベン・バイル(Houben-Wyle, Methoden der Organische Chemie, Georg-Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・シンセセス(John & Wily & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(John & Wily & Sons, Inc.)、コンプリヘ
ンシブ・オーガニック・シンセシス(Pergamon Press)等に記載された有機合成化学的手法を適宜組み合わせて製造することもできる。
【0076】
本発明で用いられるキラリティーを有しない液晶(b1)は、上記式(N1)で表される化合物により構成される液晶組成物であることが好ましい。なお、化合物中に含まれる各元素が、同位体元素を自然存在の割合より多く含んでも、物性に大きな差異はない。上記式(N1)中の各記号について以下に説明する。
【0077】
0は、独立に芳香族性もしくは非芳香族性の3〜8員環または炭素数9以上の縮合環
であり、該環において、任意の水素原子が、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基もしくはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、任意の−CH2−は、−O−、
−S−または−NH−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよい。
【0078】
好ましいA0は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1
,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレン、2,3−ビス(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、9−メチルフルオレン−2,7−ジイル、9,9−ジメチルフルオレン−2,7−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイルまたはピリミジン−2,5−ジイルである。なお、1,4−シクロへキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はトランス型が好ましい。
【0079】
0は、独立に水素原子、ハロゲン原子、−CN、−N=C=O、−N=C=Sまたは
炭素数1〜20のアルキル基であり、該アルキル基において、任意の−CH2−は、−O
−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、また、任意の水素原子はハロゲン原子で置き換えられてもよい。
【0080】
好ましいR0は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜10のアルキル基、ア
ルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、−CN、−N=C=Oおよび−N=C=Sである。また、少なくとも一方の末端置換基は、高い液晶性を発現させるために、非極性基であることが好ましく、他方の末端置換基は、大きなΔεおよびΔnが得られることから、−CN、−N=C=O、−N=C=S、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン化アルコキシ基であることが好ましい。
【0081】
0は、独立に単結合、炭素数1〜8のα,ω−アルキレン基であり、該アルキレン基
において、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=C
H−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、また、任意の水素原子はハロゲン原子で置き換えられてもよい。好ましいZ0は、ΔnおよびΔεを大きくでき
ることから、不飽和結合を有する基、具体的には、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CH−C≡C−および−C≡C−CH=CH−である。
【0082】
化合物(N1)の具体例として、下記式(N2)〜(N15)で表される化合物が挙げられる。
【0083】
【化11】

【0084】
式(N2)〜(N4)中、R1は炭素数1〜10のアルキル基であり、該アルキル基に
おいて、任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、任意
の水素原子はフッ素原子で置き換えられてもよい。好ましいR1は、炭素数1〜10のア
ルキル基、アルコキシ基、炭素数2〜10のアルケニル基、アルキニル基である。
【0085】
式(N2)〜(N4)中、X1は、フッ素原子、塩素原子、−OCF3、−OCHF2
−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、−OCHF3または−OCF2CH
FCF3であり、L1およびL2は、独立に水素原子またはフッ素原子である。
【0086】
式(N2)〜(N4)中、環Bおよび環Dは、独立に1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルまたは任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり、環Eは、1,4−シクロヘキシレンまたは任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよい1,4−フェニレンである。好ましい環B、環Dおよび環Eは、ΔnおよびΔεを大きくできることから、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよい1,4−フェニレンである。
【0087】
式(N2)〜(N4)中、Z1およびZ2は、独立に単結合、−(CH22−、−(CH24−、−COO−、−(C≡C)1,2,3−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH
−または−CH2O−である。好ましいZ1およびZ2は、単結合、−(CH22−、−C
OO−、−(C≡C)1,2,3−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−または−C
2O−である。特に好ましいZ1およびZ2は、大きなΔnおよびΔεが得られることか
ら、−COO−、−(C≡C)1,2,3−、−CF2O−および−CH=CH−である。
【0088】
【化12】

【0089】
式(N5)および(N6)中、R2およびR3は、独立に炭素数1〜10のアルキル基であり、該アルキル基において、任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換
えられてもよく、任意の水素原子はフッ素原子で置き換えられてもよい。好ましいR2
よびR3は、炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシ基、炭素数2〜10のアルケニル
基、アルキニル基である。
【0090】
式(N5)および(N6)中、環Gは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルまたはピリミジン−2,5−ジイルであり、環Jは1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイルまたは任意の水素原子がフッ
素原子で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり、環Kは1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよいナフタレン−2,6−ジイルまたは1,4−フェニレンである。環Gおよび環Kは、大きなΔnおよびΔεが得られることから、液晶性を損なわない範囲で芳香環であることが好ましい。
【0091】
式(N5)および(N6)中、Z3およびZ4は、独立に単結合、−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−(C≡C)1,2,3−、−CH=CH−、−CH2
−または−CH=CH−COO−である。好ましいZ3およびZ4は、単結合、−CF2
−、−(C≡C)1,2,3−、−CH=CH−および−CH=CH−COO−である。
【0092】
式(N5)および(N6)中、X2は、−CN、−C≡C−CN、−N=C=Oまたは
−N=C=Sであり、L3、L4およびL5は、独立に水素原子またはフッ素原子であり、
a、b、c、dおよびeは、独立に0または1である。
【0093】
【化13】

【0094】
式(N7)〜(N12)中、R4およびR5は独立に炭素数1〜10のアルキル基であり、該アルキル基において、任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えら
れてもよく、任意の水素原子はフッ素原子で置き換えられてもよく、R5はフッ素原子で
あってもよい。好ましいR4およびR5は、炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシ基、炭素数2〜10のアルケニル基、アルキニル基である。
【0095】
式(N7)〜(N12)中、環Mおよび環Pは、独立して1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレンまたはナフタレン−2,6−ジイルである。好ましい環Mおよび環Pは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレンおよびナフタレン−2,6−ジイルである。なお、大きなΔnおよびΔεが得られることから、液晶性を損なわない範囲で芳香環を多く含むことが好ましい。環Wは、下記式(W1)〜(W6)で表される。
【0096】
【化14】

【0097】
式(N7)〜(N12)中、Z5およびZ6は、独立に単結合、−(CH22−、−COO−、−CH=CH−または−(C≡C)1,2,3−であり、L6およびL7は、独立して水
素原子またはフッ素原子であり、L6およびL7の少なくとも一つはフッ素原子であり、fおよびgは、独立に0、1または2であり、かつ、f+gは0ではない。
【0098】
【化15】

【0099】
式(N13)〜(N15)中、R6およびR7は、独立に水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、該アルキル基において、任意の−CH2−は、−O−、−CH=C
H−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素原子はフッ素原子で置き換えられてもよい。
【0100】
式(N13)〜(N15)中、環Q、環Tおよび環Uは、独立に1,4−シクロヘキシレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2、5−ジイルまたは任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよい1,4−フェニレンである。
【0101】
式(N13)〜(N15)中、Z7およびZ8は、独立に単結合、−(C≡C)1,2,3
、−CH=CH−C≡C−、−C≡C−CH=CH−C≡C−、−CH2O−、−COO
−、−(CH22−または−CH=CH−である。
【0102】
上記化合物(N13)〜(N15)は、液晶性が良く、Δnが大きく、Δεはほぼゼロであることから、Δεが大きな化合物と混合して、液晶温度範囲やΔnの調節のために用いられる。
【0103】
上記化合物(N2)〜(N4)のより具体的な例として、下記式(N2−1)〜(N4−10)で表される化合物が挙げられる。下記式中、R1およびX1は、上記式(N2)〜(N4)中で定義したとおりであり、(F)はフッ素原子で置換されていてもよいことを意味する。
【0104】
【化16】

【0105】
【化17】

【0106】
【化18】

【0107】
【化19】

【0108】
【化20】

【0109】
【化21】

【0110】
【化22】

【0111】
上記化合物(N5)および(N6)のより具体的な例として、下記式(N5−1)〜(N6−2)で表される化合物が挙げられる。下記式中、R2およびR3は、上記式(N5)および(N6)中で定義したとおりであり、(F)はフッ素原子で置換されていてもよいことを意味する。
【0112】
【化23】

【0113】
【化24】

【0114】
【化25】

【0115】
【化26】

【0116】
【化27】

【0117】
【化28】

【0118】
【化29】

【0119】
【化30】

【0120】
【化31】

【0121】
【化32】

【0122】
上記化合物(N7)〜(N12)のより具体的な例として、下記式(N7−1)〜(N12−11)で表される化合物が挙げられる。下記式中、R4およびR5は、上記式(N7
)〜(N12)中で定義したとおりである。
【0123】
【化33】

【0124】
【化34】

【0125】
【化35】

【0126】
上記化合物(N13)〜(N15)のより具体的な例としては、下記式(N7−1)〜(N15−6)で表される化合物が挙げられる。下記式中、R6およびR7は、上記式(N13)〜(N15)中で定義したとおりであり、(F)はフッ素原子で置換されていてもよいことを意味する。
【0127】
【化36】

【0128】
【化37】

【0129】
【化38】

【0130】
上記R、R1〜R7、Z0〜Z8、X1、X2、L1〜L7、P、a、b、c、d、e、f、g、A0、環B、環D、環E、環M、環P、環W、環Q、環Tおよび環Uを適切に選択する
ことで、目的の物性を有する化合物(N1)〜(N15)を得ることができる。
【0131】
上記キラリティーを有しない液晶(b1)の屈折率異方性値Δnは0.18以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.2〜0.3の範囲である。さらに、より大きな誘電率異方性値Δεを有すれば、低電圧での駆動が可能であり好ましい。ΔnとΔεの積は1〜15、好ましくは2〜15である。Δnおよび/またはΔεを大きくすることにより、ΔnとΔεの積を大きくすることができるが、電界をかけた時の応答時間を短くするためにはΔεをより大きくすることが好ましく、電気複屈折値ΔnEを大きくするためには
Δnをより大きくすることが好ましい。
【0132】
(b2)光学活性な化合物
本発明で用いられる光学活性な化合物(b2)としては、HTPが大きな光学活性化合物であれば、特に制限されずに用いることができるが、キラリティーを有しない液晶への溶解性が良好なことから、軸不斉化合物が好ましい。特に、1,2−ジフェニルエタン−1,2−ジオール誘導体(1’)、マンニトール誘導体(2’)、酒石酸誘導体(3’)ならびにビナフトール誘導体(4’)および(5’)が好ましい。原料の入手のしやすさおよび合成の簡便さを考慮すれば、化合物(1’)、(3’)〜(5’)の不斉炭素が結合したベンゼン環もしくはナフタレン環は非置換でよいが、該環上の水素原子がアルキル基や液晶性メソゲンで置き換わっていても何ら差し支えない。
【0133】
上記光学活性化合物(b2)の代表的な例として、下記式(1’−1)〜(5’−3)で表される化合物が挙げられる。これらは代表例であり、同様な特性有する化合物であれば、いずれも用いることができる。下記式中、R8は炭素数1〜20のアルキル基、アル
コキシ基を示し、重合性基を含んでもよい。
【0134】
【化39】

【0135】
【化40】

【0136】
【化41】

【0137】
【化42】

【0138】
【化43】

【0139】
上記化合物(1’)〜(5’)は、公知の有機合成化学的手法を用いて製造できるが、例えば、下記の先行文献およびそれらに記載されている参考文献を参照できる。
化合物(1’): WO02/40614号
化合物(2’): WO98/00428号、EP1,273,585号
化合物(3’): WO02/06265号
化合物(4’): DE3604901号、WO02/06195号
化合物(5’): WO02/034739号、WO02/094805号
<重合体/液晶複合体>
本発明の複合体における上記液晶(B)の含有率は70〜99重量%、好ましくは80〜99重量%、より好ましくは85〜95重量%の範囲である。液晶(B)の含有率は、擬似等方性を保持できる範囲であれば、大きなΔnEを与えるために高含有率であること
が好ましい。本発明によれば、キラリティーを有する液晶(B)を用いることにより、高い液晶含有率においても擬似等方性を発現する複合体を製造できるため、大きなΔnE
よびカー係数Kを得ることができる。
【0140】
すなわち、本発明の重合体/液晶複合体においては、カー係数Kが1×10-10mV-2
以上、好ましくは1×10-9mV-2以上であり、得られる電気複屈折値ΔnEは0.05
以上であるとともに、温度差10℃におけるカー係数Kの比が1.5以下である領域が存在する。カー係数Kが大きいということは、低電圧で屈折率の変化が可能であることを意味する。また、温度差10℃でのカー係数Kの比が1.5以下であることは、電気複屈折の温度特性が穏やかであり広い温度範囲にわたって安定していることを意味し、光素子の設計上有意義である。
【0141】
本発明の重合体/液晶複合体は、前述した特長的な電気光学効果に基づく光変調や光スイッチングなどの機能を奏する各種の光素子として利用することができる。すなわち、本発明の複合体からなる光素子は、表示装置、光プリンター、光交換機、光演算装置、光記憶装置などの広い分野で用いることができる。これらの各装置は、それぞれの用途に応じ
て適宜工夫して構成され、特に限定されるものではないが、好ましい態様の例を以下に説明する。
【0142】
光変調や光スイッチングのための基本的な素子としては、本発明の複合体を調光層とし、これを電極付基板で挟持させてなるもの、または、櫛形電極を有する基板と電極を有しない基板とで挟持させてなるものが挙げられる。この調光素子は電場により複屈折が誘起され偏光板と組み合わせることにより光素子とすることができる。
【0143】
表示装置においては、偏光板、透明電極、配向膜、調光層、配向膜、透明電極、偏光板の順に配設された液晶シャッター、または、偏光板、調光層、櫛形電極、偏光板の順に配設された液晶シャッターであり、電界をかけたことにより光を通過または遮断する調光層として本発明の複合体が用いられ、カラーフィルターおよびバックライトとともに表示装置を構成する。
【0144】
光プリンターにおいても本発明の複合体からなる光素子が液晶シャッターとして機能し、光源ユニットとともにプリンタヘッドを構成する。
光交換機においては、光の進行方向を制御する液晶ホログラム素子として本発明の複合体が用いられ、光学系、液晶ホログラム素子、光デバイスアレイを順次配設し、機能素子間の光接続を切り替えるための部品として機能する。
【0145】
光演算装置においては、入射光の透過光量および透過方向が変化し、透光性を有する材料の透過制御層に本発明の複合体が用いられ、該透過制御層を画定してアドレス電極とともに複数の単位構成体を構成する。そして、各単位構成体に対して電界の強度を変化させ、透過光量および透過方向を制御することにより、各単位構成体が有する透過光量の分布や透過方向を用いて演算を行うことができる。
【0146】
光記憶装置においては、回転対称な液面収差を発生させる光素子として本発明の複合体が用いられ、レーザー、ユリメートレンズおよび対物レンズとともに光ピックアップを構成する。
【0147】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例等において、化合物の割合(百分率)は、組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。また、液晶の物性値の測定は、日本電子機械工業規格(Standard of Electronic Industries Association of Japan)、EIAJ・ED−2521Aの方法またはこれを修飾した方法に従い、以下のようにして行った。
【0148】
<相転移温度>
液晶の相転移温度は、偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱および冷却して測定した。顕微鏡視野中の試料の一部が相転移したときの温度を相転移温度とし、相転移が不鮮明な場合には、DSCを併用して相転移温度を決定した。C、N、Ch、BPおよびIは、それぞれ結晶、ネマチック相、コレステリック相(カイラルネマチック相)、ブルー相および等方相を意味する。
【0149】
<光学異方性および屈折率>
光学異方性(屈折率異方性値Δn)および屈折率は、波長589nmの光によりアッベ屈折計を用いて、25℃で測定した。
【0150】
<誘電率異方性(Δε)>
1)誘電率異方性が正である液晶組成物
2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度の液晶セルに試料を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を25℃で測定した。また、前記セルに0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を25℃で測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から算出した。
【0151】
2)誘電率異方性が負である液晶組成物
ホメオトロピック配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε‖)を25℃で測定した。また、ホモジニアス配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε⊥)を25℃で測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から算出した。
【0152】
〔実施例1〕
下記組成(1)からなるネマチック液晶組成物(1)(NI=168.8℃、Δn=0.229、Δε=9.2)を調製した。この組成物(1)88%と、光学活性な化合物としてカイラル化合物「ZLI−4572」(メルク社製)12%とを混合したキラリティーを有する液晶組成物A−1を得た。
【0153】
【化44】

【0154】
次いで、暗所で注意深く、組成物A−1(87.1%)、1,4−ブタンジオールビスグリシジルエーテル(q−1、m=1)(5.38%)、下記式(M2−6−1)で表される2−メチル−1,4−ビス[4−(3−オキシラニルプロピルオキシ)ベンゾイルオ
キシ]ベンゼン(7.12%)および光重合開始剤として下記式(I−1)で表される化
合物(0.4%)を混合した液晶組成物A−2を調製した。化合物(M2−6−1)は、英国特許公報GB2338240号の方法に従い製造した。
【0155】
【化45】

【0156】
【化46】

【0157】
次いで、櫛歯型ITO電極付ガラス板(電極間距離10μm)にスペーサーを塗布し、もう一枚のガラス板を重ねあわせ、ガラス間隔が5μmのセルを作製した。ガラス基板はいずれも配向処理をしていないものを使用した。このセルに液晶組成物A−2を注入し、等方相以上の温度まで加熱した。その状態で、紫外光[紫外光強度1.5mWcm-2(365nm)]を20分間照射することにより、重合体/液晶複合体が挟持された液晶セルを得た。
【0158】
この液晶セルの両側(上部および下部)に、2枚の偏光板を、一方の偏光板の偏光軸がITO電極と45°をなすように、クロスニコルの状態に配置して液晶表示素子を作製した。電圧非印加時には完全な暗視野であったが、電圧印加時(10V)には明視野を得た。明暗のスイッチングは可逆的であった。
【0159】
〔実施例2〕
ネマチック液晶組成物(1)の代わりに下記組成(2)からなるネマチック液晶組成物(2)(NI=67.5℃、Δn=0.262、Δε=14.5)を用いて、実施例1と同様にして液晶表示素子を作製した。電界をかけたこと・かけないことによって明暗が得られた。
【0160】
【化47】

【0161】
〔実施例3〕
ネマチック液晶組成物(1)の代わりに下記組成(3)からなるネマチック液晶組成物(3)(NI=73.4℃、Δn=0.198、Δε=−3.5)を用いて、実施例1と同様にして液晶表示素子を作製した。電界をかけたこと・かけないことによって明暗が得られた。
【0162】
【化48】

【0163】
〔組成例〕
本発明で用いることができる他のネマチック液晶組成物として、たとえば、下記組成(4)からなるネマチック液晶組成物などが挙げられる。
【0164】
【化49】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イオン重合によって得られた重合体と、(B)カイラルネマチック相またはブルー相を示す液晶とを含有し、電界をかけていない時には光学的に等方性であり、電界をかけた時には複屈折を生じることを特徴とする重合体/液晶複合体。
【請求項2】
前記重合体(A)がカチオン重合によって得られたことを特徴とする請求項1に記載の重合体/液晶複合体。
【請求項3】
前記重合体(A)がアニオン重合によって得られたことを特徴とする請求項1に記載の重合体/液晶複合体。
【請求項4】
前記重合体(A)が、非液晶性のイオン重合性モノマーを用いて得られたことを特徴とする請求項1に記載の重合体/液晶複合体。
【請求項5】
前記重合体(A)が、液晶性のイオン重合性モノマーを用いて得られたことを特徴とする請求項1に記載の重合体/液晶複合体。
【請求項6】
前記重合体(A)が、非液晶性のイオン重合性モノマーと、液晶性のイオン重合性モノマーとを用いて得られたことを特徴とする請求項1に記載の重合体/液晶複合体。
【請求項7】
前記非液晶性のイオン重合性モノマーが、スチレン、スチレン誘導体、アクリロニトリル、アクリレート、シアノアクリレート、ビニルケトン、1,3−ジエン、イソプレン、イソシアネート、イソチオシアネート、ホルムアルデヒド、オキシラン、エチレンイミン、チイラン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ブタンジオールホルマール、トリオキサン、ラクタム、ラクトン、ベンゾフラン、インデン、ジシクロペンタジエン、N−カルボキシ無水物、ビニルエーテルおよびオキセタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の骨格を重合性官能基として含有することを特徴とする請求項4または6に記載の重合体/液晶複合体。
【請求項8】
前記非液晶性のイオン重合性モノマーが、オキシランもしくはオキセタン骨格を重合性官能基として含有することを特徴とする請求項4または6に記載の重合体/液晶複合体。
【請求項9】
前記非液晶性のイオン重合性モノマーが、下記式(q−1)〜(q−12)で表される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項4または6に記載の重合体/液晶複合体。
【化1】

[式中、mは1〜5の整数を示す。]
【請求項10】
前記液晶性のイオン重合性モノマーが、下記式(M1)または(M2)で表されることを特徴とする請求項5または6に記載の重合体/液晶複合体。
a−Y−(A−Z)p−A−Y−Rb ・・・(M1)
b−Y−(A−Z)p−A−Y−Rb ・・・(M2)
[式(M1)および(M2)中、
aは、水素原子、ハロゲン原子、−CN、−N=C=O、−N=C=Sまたは炭素数1
〜20のアルキル基であり、
該アルキル基において、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、
−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、また、任意の水素原子は、ハロゲン原子または−CNで置き換えられてもよく;
bは、下記式(M3−1)〜(M3−4)のいずれかで表される重合性基であり;
Aは、独立に芳香族性もしくは非芳香族性の5〜6員環または炭素数9以上の縮合環であり、
該環において、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−NH−または−NCH3−で置き換わってもよく、任意の−CH=は−N=で置き換わってもよく、任意の水素原子は、ハロゲン原子または炭素数1〜5のアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基で置き換わってもよく;
Yは、独立に単結合または炭素数1〜20のアルキレン基であり、
該アルキレン基において任意の−CH2−は、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡
C−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく;
Zは、独立に単結合、−(CH22−、−(CH24−、−O(CH22−、−(CH2
2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CF22−、−
(CH22−COO−、−OCO−(CH22−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CH=CH−(CH22−、−(CH22−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−CH=CH−、−CH=CH−C≡C−、−OCF2−(CH22−、−(CH22−CF2O−、−OCF2−また
は−CF2O−であり;
pは1〜6の整数である。]
【化2】

[式(M3−1)〜(M3−4)中、Rdは、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜
5のアルキル基であり、該アルキル基において任意の水素原子は、ハロゲン原子で置き換えられてもよい。]
【請求項11】
前記式(M1)および(M2)中、
aが、ハロゲン原子、−CN、−CF3、−OCF3、炭素数1〜20のアルキル基、炭
素数1〜19のアルコキシ基、炭素数2〜21のアルケニル基または炭素数2〜21のアルキニル基であり;
Aが、独立に1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレン、2,3−ビス(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、9−メチルフルオレン−2,7−ジイル、9,9−ジメチルフルオレン−2,7−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイルまたはピリミジン−2,5−ジイルであり;
Yが、独立に単結合、−(CH2r−、−O(CH2r−または−(CH2rO−(rは1〜20の整数)であり;
Zが、独立に単結合、−(CH22−、−COO−、−OCO−、−(CH22−COO−、−OCO−(CH22−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCF2−または−CF2O−であり;
pが1〜3の整数であること
を特徴とする請求項10に記載の重合体/液晶複合体。
【請求項12】
前記液晶(B)が、(b1)キラリティーを有しない液晶70〜99重量%と、(b2)光学活性な化合物1〜30重量%とを含み、該キラリティーを有しない液晶(b1)がネマチック相を示すことを特徴とする請求項1に記載の重合体/液晶複合体。
【請求項13】
前記キラリティーを有しない液晶(b1)が、0.18以上の屈折率異方性値(Δn)を有することを特徴とする請求項12に記載の重合体/液晶複合体。
【請求項14】
前記キラリティーを有しない液晶(b1)が、0.20以上のΔnを有することを特徴とする請求項12に記載の重合体/液晶複合体。
【請求項15】
前記キラリティーを有しない液晶(b1)が、0.20以上のΔnを有し、かつ、正の誘電率異方性(Δε)を有することを特徴とする請求項12に記載の重合体/液晶複合体。
【請求項16】
前記キラリティーを有しない液晶(b1)が、下記式(N1)で表される化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項12に記載の重合体/液晶複合体。
0−(A0−Z0w−A0−R0 ・・・(N1)
[式(N1)中、
0は、独立に芳香族性もしくは非芳香族性の3〜8員環または炭素数9以上の縮合環で
あり、該環において、任意の水素原子が、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は、−O−、
−S−または−NH−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよく;
0は、独立に水素原子、ハロゲン原子、−CN、−N=C=O、−N=C=Sまたは炭
素数1〜20のアルキル基であり、
該アルキル基において、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−
、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、また、任意の水素原子はハロゲン原子で置き換えられてもよく;
0は、独立に単結合、炭素数1〜8のα,ω−アルキレン基であり、
該アルキレン基において、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO
−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、また、任意の水素原子はハロゲン原子で置き換えられてもよく;
wは2〜4の整数である。]
【請求項17】
前記式(N1)中、
0が、独立に1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4
−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレン、2,3−ビス(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、9−メチルフルオレン−2,7−ジイル、9,9−ジメチルフルオレン−2,7−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイルまたはピリミジン−2,5−ジイルであり;
0が、独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アルコ
キシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、−CN、−N=C=Oまたは−N=C=Sであり、
少なくとも一方の末端置換基が非極性基であり、他方の末端置換基が、−CN、−N=C=O、−N=C=S、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン化アルコキシ基であり;
0が、独立に単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CH−C≡C−または−
C≡C−CH=CH−であること
を特徴とする請求項16に記載の重合体/液晶複合体。
【請求項18】
前記光学活性な化合物(b2)が、1,2−ジフェニルエタン−1,2−ジオール誘導体、マンニトール誘導体、酒石酸誘導体およびビナフトール誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項12に記載の重合体/液晶複合体。
【請求項19】
前記液晶(B)の含有率が70〜99重量%であることを特徴とする請求項1に記載の
重合体/液晶複合体。
【請求項20】
10V/μmの電界をかけた時に複屈折を生じることを特徴とする請求項1に記載の重合体/液晶複合体。
【請求項21】
(A)カチオン重合によって得られた重合体と、(B)カイラルネマチック相またはブルー相を示す液晶とを含有し、
該液晶(B)が、(b1)キラリティーを有しない液晶70〜99重量%と、(b2)光学活性な化合物1〜30重量%とを含み、
該キラリティーを有しない液晶(b1)が0.20以上のΔnを有し、
電界をかけない時には光学的に等方性であり、10V/μmの電界をかけた時に複屈折を生じることを特徴とする重合体/液晶複合体。
【請求項22】
(A)カチオン重合によって得られた重合体と、(B)カイラルネマチック相またはブルー相を示す液晶とを含有し、
該液晶(B)が、(b1)キラリティーを有しない液晶70〜99重量%と、(b2)光学活性な化合物1〜30重量%とを含み、
該キラリティーを有しない液晶(b1)が、0.20以上のΔnを有し、かつ、正のΔεを有し、
該重合体(A)が、スチレン、スチレン誘導体、アクリロニトリル、アクリレート、シアノアクリレート、ビニルケトン、1,3−ジエン、イソプレン、イソシアネート、イソチオシアネート、ホルムアルデヒド、オキシラン、エチレンイミン、チイラン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ブタンジオールホルマール、トリオキサン、ラクタム、ラクトン、ベンゾフラン、インデン、ジシクロペンタジエン、N−カルボキシ無水物、ビニルエーテルおよびオキシランからなる群より選ばれる少なくとも1種の骨格を重合性官能基として含有する非液晶性のイオン重合性モノマーを用いて得られた重合体であり、
電界をかけていない時には光学的に等方性であり、10V/μmの電界をかけた時に複屈折を生じることを特徴とする重合体/液晶複合体。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれかに記載の重合体/液晶複合体を含むことを特徴とする光素子。
【請求項24】
請求項1〜22のいずれかに記載の重合体/液晶複合体を含むことを特徴とする液晶表示素子。

【公開番号】特開2006−299084(P2006−299084A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122532(P2005−122532)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】