説明

重合性化合物、重合性組成物、光学材料、光学素子及び光ヘッド装置

【課題】高屈折率性と高波長分散性とを有し、かつ優れた耐光性を有する重合性化合物を提供する。
【解決手段】下式(1)で示される重合性化合物。


[式中、Aは、水素原子、tert−ブチル基、トリフェニルシリル基、アクリロイルオキシアルキルジアルキルシリル基等を表し、Bは、アクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキルジアルキルシリル基等を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビフェニレン骨格を有する新規な重合性化合物、この重合性化合物を含む重合性組成物、この重合性組成物を用いた光学材料、この光学材料を用いた光学素子および光ヘッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高屈折率の樹脂材料は、光学素子を小型化、高効率化できることから、光学材料として広く利用されている。具体的には、ディスプレイ用パネル、眼鏡レンズ、光ディスクまたは光学フィルタなどに用いられている。
近年、これらの用途において、光強度の増大や使用波長の短波長化が進められており、これに伴い、高屈折率樹脂材料の耐光性の改善が求められている。
高屈折率樹脂材料等の光学材料が耐光性に劣る場合、部品や素子に使用したときに、時間の経過に伴って、透過率が低下したり、光学歪みが増加したりして、長期間に亘る安定的な使用が困難となるおそれがある。
【0003】
上述した要求は、特に光ディスクの分野で顕著となっている。例えばCD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)等の光ディスクでは、ディスク表面に設けた凹凸部によってピットが形成されている。ピットに記録された情報は、光ヘッド装置によって光ディスク表面にレーザ光を照射し、反射光を検出することで読み取りが行われる。近年、光ディスクの大容量化を図るため、レーザ光をさらに短波長化し、光ディスク上のピットサイズをより小さくする試みが進められている。例えば、波長300〜450nmのレーザ光(以下、青色レーザ光とも記す)を光源として用いる方式が提案されており、特にBD(Blu−ray Disk)では、近年著しい成長が見られている。
【0004】
このような光ヘッド装置に使用される光学材料としては、高い耐光性とともに高屈折率性が要求される。例えば偏光ホログラム素子は、光ヘッド装置の偏光分離素子として用いられるものであり、複屈折性樹脂と等方性樹脂とを積層した構造を有している。このような偏光ホログラム素子では、複屈折性樹脂の常光線方向の屈折率又は異常光線方向の屈折率を、等方性樹脂の屈折率と略等しくなるように構成することで、偏光特性と回折効率の向上を図っている。
しかしながら、一般に、高屈折率材料は屈折率の波長分散が大きいため、短波長の光に対する吸収が大きくなる傾向がある。したがって、例えば1.55以上の高い屈折率を有する複屈折性樹脂を用いた場合、これに適合する高屈折率の等方性樹脂は、耐光性が十分でなく、透過率の低下などの問題が生じ易いという問題がある。
【0005】
また、後述する波長選択性回折素子においては、屈折率の波長分散性が小さい(以下、低波長分散性と記す)材料と、屈折率の波長分散性が大きい(以下、高波長分散性と記す)材料とを積層して、回折格子が形成されている。
この場合、高波長分散性材料は、その波長分散性が高いほど、低波長分散性材料との間の波長選択的な屈折率差を拡大することが可能となり、格子高さを低減でき、製造プロセスや回折効率の面で好ましい特性を得ることができる。
しかしながら、高波長分散性材料は、一般に、長波長側に吸収帯を有する必要があり、上述した高屈折率材料と同様に、耐光性に劣り易い。
【0006】
光学材料として用いられる高屈折率樹脂材料として、従来、例えばフルオレン、テトラフェニルメタン、1,1,2,2−テトラフェニルエタン又はビフェニル等の骨格を有する化合物が提案されている(特許文献1〜2参照。)。
特許文献1〜2に記載の化合物は、分子中の重合基の数を増やす、または光安定化剤を添加するなどの手段により、樹脂材料の耐光性をある程度向上させることが可能である。しかしながら、この場合でも、十分な耐光性を得ることは困難であり、耐光性のさらなる向上が求められている。
【0007】
一方、特許文献3では、高屈折率性と高耐光性とを両立可能な材料として、ケイ素化合物が開示されている。しかしながら、特許文献3に記載のケイ素化合物でも、耐光性、波長分散性が不十分であり、高い耐光性を維持し、かつ波長分散性を向上させることが求められている。
しかしながら、高屈折率性と高耐光性、又は波長分散性と高耐光性とは、互いに相反する傾向にあり、これらをともに向上させることは困難であった。また、高屈折率性、高波長分散性、及び高耐光性とを、全て十分なレベルまで向上させることは、さらに困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−315744号公報
【特許文献2】特開2005−298665号公報
【特許文献3】WO2009−139476
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、高屈折率性と高波長分散性とを有し、かつ優れた耐光性を有する重合性化合物の提供を目的とする。
また、本発明は、この重合性化合物を用いた重合性組成物、この重合性組成物により作成される光学材料、この光学材料を用いた光学素子、光ヘッド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記式(1)で示される重合性化合物を提供する。
【化1】

但し、式中の記号は以下の意味を示す。
A:水素原子又は下記式(2)〜(5)から選択される基。
(3−W)C− ・・・ (2)
Ph(3−x)Si− ・・・ (3)
J−(CHm1−CH(CH(2−l)− ・・・(4)
J−(CHn1−SiPhp1(CH(2−p1)− ・・・(5)
B:下記式(6)〜(7)から選択される基。
J−(CHm2−CH(CH(2−k)− ・・・(6)
J−(CHn2−SiPhp2(CH(2−p2)− ・・・(7)
w:0〜3の整数。
V:メチル基またはエチル基。但し、wが2〜3のときにはVはそれぞれ異なる基であってもよい。
x:0〜3の整数。
Y:メチル基、シクロヘキシル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基およびiso−プロピル基から選択される基。但しxが0又は1のとき、Yは異なる基であってもよい。
J:CH=CR−COO−、エポキシ基、ビニル基及びビニルエーテル基から選択される基。
R:水素原子又はメチル基。
l:0〜1の整数。
k:0〜2の整数。ただし、Aが水素原子の場合、kは2を除く。
、m:それぞれ独立して0〜12。
、n:それぞれ独立して1〜12。
、p:それぞれ独立して0〜2。
但し、式(2)の置換基V、式(3)のフェニル基及び置換基Y並びに式(4)〜(7)のアルキレン基の水素原子の一部または全部は、メチル基、メトキシ基、フッ素原子に置換されていてもよく、ビフェニル基又はビフェニレン基の水素原子の一部または全部がメチル基、メトキシ基、フッ素原子に置換されていてもよい。
【0011】
前記重合性化合物は、Aが式(3)で示される基であることが好ましい。また、前記重合性化合物は、Aがトリフェニルシリル基であることが好ましい。また、前記重合性化合物は、Aがトリフェニルシリル基であり、Bが式(7)で示される基であることが好ましい。
【0012】
また、前記重合性化合物は、Aが式(5)で示される基であり、Bが式(7)で示される基であることが好ましい。
【0013】
また、前記重合性化合物は、Bが式(6)で示される基のとき、k=0であることが好ましい。また、前記重合性化合物は、Bが式(7)で示される基のとき、p=0であることが好ましい。
また、前記重合性化合物は、Aがtert−ブチル基であることが好ましい。
また、前記重合性化合物は、n、nがそれぞれ独立して1〜3であり、m、mがそれぞれ独立して1〜2であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、上記式(1)で示される重合性化合物を含有する重合性組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、上記本発明の重合性組成物を硬化してなる光学材料を提供する。
【0016】
また、本発明は、上記本発明の光学材料を用いてなる光学素子を提供する。
【0017】
また、本発明は、上記本発明の光学素子を用いてなる光ヘッド装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高い屈折率性と高波長分散性を有し、かつ耐光性に優れた重合性化合物を提供することができる。また、本発明によれば、本発明の重合性化合物を用いた重合性組成物を硬化させることにより、高屈折率性、高波長分散性、及び高い耐光性とを併せ持つ光学材料を提供することができる。
また、本発明によれば、耐光性に優れた光学素子を提供することができ、この光学素子を用いることにより、大容量化に適した光ヘッド装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る波長選択性回折素子の態様を示す模式的な横断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る波長選択性回折素子の態様を示す模式的な横断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る波長選択性回折素子の態様を示す模式的な横断面図である。
【図4】本発明の一実施形態である光ヘッド装置の構成を模式的に示す図である。
【図5】各硬化膜(光学材料)の屈折率nとアッべ数vdとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)とも記す。他の化合物についても同様に記す。
【0021】
【化2】

【0022】
すなわち、本発明の化合物(1)は、ビフェニレン骨格を主骨格として有しており、その各環基上の水素原子が、A及びBによって、それぞれ異なる環基上で置換された構造を有している。このように、ビフェニレン骨格を主骨格とすることにより、フェニル基、フェニレン基などの単一環を主骨格とする化合物と比較して、高屈折率性や、高波長分散性を得ることができる。
なお、式(1)において、Aが水素原子の場合には、式(1)の主骨格は「ビフェニル基」であり、Aが水素原子以外の基である場合には、式(1)の主骨格は「ビフェニレン基」である。
さらに、ビフェニル基又はビフェニレン基との結合原子を炭素原子又はケイ素原子とし、これら炭素原子又はケイ素原子の少なくとも一つを3級以上の炭素原子、ケイ素原子とすることにより、ビフェニル骨格を有する従来の化合物と比較して、高い耐光性を得られることを見出した。
【0023】
A又はBによる、ビフェニレン基の置換位置は、特に限定されないが、4位及び4’位で置換した場合には、化合物(1)の直線性が高められ、樹脂のガラス転移温度が高められる。したがって、ビフェニレン基の置換位置は、4位、4’位であることが好ましい。
但し、化合物(1)の融点や屈折率を制御する観点からは、ビフェニレン基が2位、2’位で置換されていてもよい。また、A、B以外に、ビフェニル基又はビフェニレン基に結合する水素原子の一部または全部は、メチル基、メトキシ基、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0024】
式(1)中、Aは、水素原子又は下記式(2)〜(5)から選択される基である。
【0025】
(3−W)C− ・・・(2)
Ph(3−x)Si− ・・・(3)
J−(CHm1−CH(CH(2−l)− ・・・(4)
J−(CHn1−SiPhp1(CH(2−p1)− ・・・(5)
【0026】
式(1)中、Bは下記式(6)〜(7)のいずれかの基である。
【0027】
J−(CHm2−CH(CH(2−k)− ・・・(6)
J−(CHn2−SiPhp2(CH(2−p2)− ・・・(7)
【0028】
式(2)は、メチル基の水素原子を置換基Vで置換した基であり、Vはメチル基またはエチル基である。
また、メチル基またはエチル基は、融点や波長分散性を調整するために、耐光性を著しく損なわない範囲で水素原子の一部または全部がメチル基、メトキシ基、フッ素原子で置換されていてもよい。
式(2)において、wは0〜3の整数であるが、耐光性を向上させる観点からは、wは3であることが好ましい。なお、wが2〜3の場合には、Vは同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。
【0029】
式(3)は、ケイ素原子にフェニル基、及び置換基Yが結合したものであり、置換基Yは、メチル基、シクロヘキシル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基およびiso−プロピル基から選択される。このうち、置換基Yとしては、より高い耐光性を得る観点からは、シクロヘキシル基またはtert−ブチル基が好ましい。また、置換基Yのメチル基、シクロヘキシル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基およびiso−プロピル基は、水素原子の一部または全部がメチル基、メトキシ基、フッ素原子に置換されていてもよく、またフェニル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が、メチル基、メトキシ基、フッ素原子に置換されていてもよい。
【0030】
xは0〜3の整数であるが、高屈折率、高波長分散性を確保し、かつ耐光性を向上させる観点からは、xは2〜3であることが好ましい。
なお、xが0又は1のときは、Yは同一の基であってもよく、異なる基であってもよいが、原料の調達のし易さや、合成上の便宜の観点からは、同一の基であることが好ましい。
【0031】
式(4)〜(7)において、JはCH=CR−COO−、エポキシ基、ビニル基及びビニルエーテル基から選択される基であるが、このうちCH=CR−COO−は、光重合反応を短時間で行うことができ、生産性に優れるため好ましい。
このうち、Jとしてエポキシ基を用いた場合、光カチオン重合による重合反応が可能であるが、一般に、重合の際に加える光開始剤により、耐光性が低下するおそれがある。また、Jがエポキシ基の場合、熱重合による重合反応も可能であるが、重合に長時間を要するおそれがある。
したがって、Jとしては、光ラジカル重合が可能なCH=CR−COO−を用いることが好ましい。
【0032】
CH=CR−COO−のうち、Rは水素原子またはメチル基であり、具体的にはRが水素原子のときはCH=CR−COO−はアクリロイルオキシ基であり、Rがメチル基のときはCH=CR−COO−はメタクリロイルオキシ基である。
一般に、アクリロイルオキシ基は、メタクリロイルオキシ基と比較して反応が速やかに進行する。このため、重合反応を効率的に行う観点からは、Rが水素の場合、すなわちJがアクリロイルオキシ基であることが好ましい。
なお、重合性組成物中に、既知の安定化剤、例えば、フェノール系酸化防止剤やヒンダードアミン系光安定化剤などを添加剤として加えることにより、系全体を安定化させることが可能であるが、Jがアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基のときは、使用可能な安定化剤の種類の制約も少ないため、安定化剤を添加することによる、耐光性のさらなる向上を図ることも可能である。
また、式(4)〜(7)において、JがCH=CR−COO−の場合、アルキレン基の水素原子の一部または全部は、メチル基、メトキシ基、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0033】
Aが上記式(4)で示される基のとき、mは、0〜12であるが、重合性を維持し、かつより高い屈折率とガラス転移点を維持する観点からは、mは1〜2であることが好ましい。
が0の場合には、化合物(1)の重合性が損なわれるおそれがある。一方、mが3を超える場合には、屈折率が低下したり、ガラス転移温度が低下したりするおそれがある。
【0034】
化合物(1)の屈折率を調整する観点から、式(4)における(CHm1の水素原子の一部または全部は、メチル基、メトキシ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。特に、(CHm1の水素原子をフッ素原子で置換した場合には、低屈折率領域において波長分散性を向上させることができるため、フッ素原子による置換数により、化合物(1)の波長分散性を制御することも可能である。またさらに、(CHm1のメチレン基の一部は、酸素に置換されてもいても良い。
【0035】
耐光性をより向上させる観点から、ビフェニレン基と結合する炭素原子がメチル基を少なくとも1つ有することがよい。
このため、式(4)中、lは0又は1であるが、耐光性を向上させる観点からは、lは0であることが好ましい。
【0036】
Aが上記式(5)で示される基のときは、ケイ素原子によってビフェニレン基と結合する構造となるため、耐光性を向上させることができる。
【0037】
式(5)において、nは1〜12であるが、所定のガラス転移温度を維持しながら、より高い屈折率を得る観点からは、nは1〜3であることが好ましい。
が4を超えると、屈折率が低下したり、ガラス転移温度が低下したりするおそれがある。
【0038】
さらに、化合物(1)の屈折率を調整する観点から、式(5)における(CHn1の水素原子の一部または全部は、メチル基、メトキシ基、フッ素原子で置換されていてもよい。特に、(CHn1の水素原子をフッ素原子で置換した場合には、低屈折率領域において波長分散性を向上させることができるため、フッ素原子による置換数により、化合物(1)の波長分散性を制御することも可能である。
また、さらに(CHn1のメチレン基の一部は、酸素に置換されてもいても良い。
【0039】
式(5)中、pは0〜2であるが、より高い耐光性を得る観点からは、pは0であることが好ましい。一方、より高い屈折率を得る観点からは、pは2であることが好ましい。
【0040】
Bが式(6)で示される基のとき、kは0〜2であるが、耐光性をより向上させる観点から、Bの式(6)において、ビフェニル基又はビフェニレン基と結合する炭素原子がメチル基を少なくとも1つ有することが好ましい。すなわち、耐光性を向上させる観点からは、ビフェニル基又はビフェニレン基と結合する炭素原子が3級以上であることがよく、このため、kは0又は1であることが好ましく、より好ましくは、kは0である。
このように、ビフェニル基又はビフェニレン基と結合する炭素原子が、メチル基を少なくとも1つ有する構造とすることにより、耐光性をより向上させることができる。
【0041】
但し、Aが水素原子である場合には、kは0又は1である。Aが水素原子の場合、式(6)のkが2のときはビフェニル基と結合する炭素原子がメチル基を有しないものとなるが、この場合、ガラス転移温度の低下などにより化合物(1)の耐光性が十分に確保されないおそれがある。
【0042】
式(6)において、mは、0〜12であるが、重合性を維持し、かつより高い屈折率とガラス転移点を維持する観点からは、mは1〜2であることが好ましい。
が0の場合には、化合物(1)の重合性が損なわれるおそれがある。一方、mが3を超える場合には、屈折率が低下したり、ガラス転移温度が低下したりするおそれがある。
【0043】
化合物(1)の屈折率を調整する観点から、式(6)における(CHm2の水素原子の一部または全部は、メチル基、メトキシ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。特に、(CHm2の水素原子をフッ素原子で置換した場合には、低屈折率領域において波長分散性を向上させることができるため、フッ素原子による置換数により、化合物(1)の波長分散性を制御することが可能である。
また、さらに(CHm2のメチレン基の一部は、酸素に置換されてもいても良い。
【0044】
Bが上記式(7)で示される基のときは、ケイ素原子によってビフェニル基又はビフェニレン基と結合する構造となるため、耐光性を向上させることができる。
【0045】
式(7)において、nは1〜12であるが、所定のガラス転移温度を維持しながら、より高い屈折率を得る観点からは、nは1〜3であることが好ましい。
が4を超えると、屈折率が低下したり、ガラス転移温度が低下したりするおそれがある。
【0046】
化合物(1)の屈折率を調整する観点から、式(7)における(CHn2の水素原子の一部または全部は、メチル基、メトキシ基、フッ素原子で置換されていてもよい。
特に、(CHn2の水素原子をフッ素原子で置換した場合には、低屈折率領域において波長分散性を向上させることができるため、フッ素原子による置換数を調整することにより、化合物(1)の波長分散性を制御することが可能である。
また、さらに(CHn2のメチレン基の一部は、酸素に置換されてもいても良い。
【0047】
式(7)中、pは0〜2であるが、より高い耐光性を得る観点からは、pは0であることが好ましい。一方、より高い屈折率を得る観点からは、pは2であることが好ましい。
【0048】
式(2)〜(5)で表わされる基のうち、Aが式(3)の基の場合には、高い屈折率と高い波長分散性を得られるため好ましい。この中でも、Aがトリフェニルシリル基であるものが好ましい。
すなわち、下記式(8)に示す化合物(以下、化合物(8)と示す。)が好ましい。
【0049】
【化3】

【0050】
トリフェニルシリル基は、分極率の高いフェニル基が、ケイ素原子に3つ結合しているため、これとビフェニレン基とが結合することにより、屈折率が高く、耐光性に優れるとともに、波長分散性の高い化合物(1)とすることができる。
【0051】
式(8)において、Bは式(6)又は式(7)であるが、耐光性を高める観点からは、式(8)中でのビフェニレン基との結合原子が、3級以上の炭素原子又はケイ素原子であることが好ましく、4級の炭素原子又はケイ素原子であることがより好ましい。
このため、式(8)において、Bが式(6)のときはkが0であることが好ましい。
また、式(8)において、Bが式(7)で示される基のときは、低融点化を図る観点からは、pが0であることが好ましい。
【0052】
また、本発明の化合物(1)のうち、Aがtert−ブチル基であるものが好ましい。すなわち、下記式(9)に示される化合物が好ましい。
【0053】
【化4】

【0054】
式(9)に示すように、主骨格であるビフェニレン基にtert−ブチル基が結合することにより、立体的に嵩高い分子構造を得られるため、光学材料としたときに高いガラス転移温度を得ることができ、また高い耐光性を得られるため好ましい。
【0055】
式(9)において、Bは式(6)又は式(7)から選択されるが、耐光性を高める観点からは、式(9)中でのビフェニレン基との結合原子が、3級以上の炭素原子又はケイ素原子であることが好ましく、4級の炭素原子又はケイ素原子であることがより好ましい。
このため、Bが式(6)で示される基のときは、kが0であることが好ましい。また、Bが式(7)で示される基のときは、低融点化を図る観点からは、pが0であることが好ましい。
【0056】
また、本発明の化合物(1)は、A、Bがともに重合性基を有する基の場合、すなわち、Aが式(4)又は式(5)から選ばれる基の場合にも、高い耐光性を得られるため好ましい。
より耐光性を高める観点からは、式(1)におけるビフェニレン基との結合原子が3級以上の炭素原子又はケイ素原子であることが好ましく、4級の炭素原子又はケイ素原子であることがより好ましい。
このため、Aが式(4)で示される基のときは、lが0であることが好ましい。また、Bが式(6)で示される基のときは、kが0であることが好ましい。
【0057】
式(1)において、A、Bがともに重合性基を有すると、これを含む重合性組成物を重合したときに架橋成分が形成されて、高い耐光性を得ることができる。一方、このように、AとBがともに重合性基を有すると、重合収縮が進行し過ぎるおそれがある。このため、AとBがともに重合性基を有するときは、化合物(1)の配合量を適宜調整することが好ましい。
【0058】
この中でも、特にAが式(5)で示される基でかつpが0あり、Bが式(7)で示される基でかつpが0であるときは、低融点かつ高い耐光性を得られるため好ましい。
【0059】
本発明の化合物(1)は、重合性組成物の一成分として用いることが好ましい。
重合性組成物は、重合性化合物として、化合物(1)の一種を単独で含むものであってもよく、化合物(1)から選ばれる2種以上の化合物を含むものであってもよい。またさらに、重合性化合物は、化合物(1)の一種又は二種以上と、化合物(1)以外の重合性化合物とを混合して含むものであってもよく、また、非重合性化合物を含むものであってもよい。
重合性組成物に用いる化合物としては、その用途に応じて適宜選択することができ、例えば、高屈折率性、高波長分散性又は高耐光性が求められる用途に用いる場合には、これらの性質を併有する化合物(8)が好適に用いられる。
一方、低温での操作性が求められる用途に用いる場合には、低融点を有する化合物(1)として、例えばAが式(5)であり、Bが式(7)であるものが好適に用いられる。
【0060】
重合性組成物に添加する、化合物(1)以外の重合性化合物としては、融点、粘度、屈折率、波長分散性等の観点から、その目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
高屈折率で、かつ耐光性に優れた樹脂を得る観点からは、重合性組成物に含まれる重合性化合物のうち、化合物(1)の含有率は、10質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0061】
本発明の重合性組成物は、重合反応に用いる反応開始剤を含有していてもよい。重合反応としては、例えば光重合反応、熱重合反応が挙げられるが、光重合反応は、周辺部材に対する熱的影響を殆ど与えることなく重合反応が可能なため、好ましく用いられる。
光重合反応には、紫外線または可視光線などの光線を用いることができるが、特に紫外線を用いた場合には、重合反応速度が速いため、好ましく用いられる。
【0062】
光重合開始剤としては、既知の材料を用いることができ、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、ベンジル類、ミヒラーケトン類、ベンゾインアルキルエーテル類およびベンジルジメチルケタール類から1種または2種以上を適宜選択して使用することができる。光重合開始剤の量は、組成物の総量に対して、0.05質量%〜5質量%とすることが好ましく、0.1質量%〜2質量%とすることが特に好ましい。
【0063】
本発明の重合性組成物に添加可能な他の成分としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤および光安定化剤など安定化剤が挙げられる。これらの成分の、重合性組成物に対する添加量は、重合性組成物の総量に対して、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。
本発明の重合性組成物には、有機溶剤が含まれていてもよいが、組成物の希釈を目的として用いる場合には、有機溶剤でなく低粘性の重合性化合物を用いる方が好ましい。
なお、重合の際の取り扱いを容易にするため、熱重合を生じない範囲の温度で加熱して、粘度を低下させて用いることがよい。
【0064】
本発明の重合性化合物を用いることにより、高屈折率性と高波長分散性と耐光性とを兼ね備えた光学材料を得ることができる。
【0065】
上述したように、本発明の重合性化合物を含む重合性組成物を硬化させることにより、特に、光硬化性の重合性組成物を光硬化させることにより、高屈折率性と高波長分散性と耐光性を兼ね備えた光学材料を得ることができる。
【0066】
さらに、本発明は、本発明の重合性化合物(1)を含む重合性組成物を硬化して得られる光学材料を用いた光学素子を提供することが可能である。
一般に、1.55以上の屈折率を有する光学材料は、優れた耐光性を得ることができず、また、耐光性に優れた光学材料において、1.55以上の屈折率を得ることは困難であった。重合性化合物(1)を用いた本発明の光学材料では、高い屈折率を得られるため、例えば、波長589nmで、1.55以上の屈折率が必要とされる用途において、好ましく用いられる。またさらに、本発明の光学材料では、高屈折率性と高い耐光性とを共に得られるため、これらの特性を要求される光学素子に、好適に用いることができる。
本発明の光学材料が好適に用いられる光学素子としては、例えば、1.55〜1.60の屈折率nが必要とされる偏光ホログラム素子や、1.60〜1.70の屈折率nが必要とされる波長選択性回折素子が挙げられる。
【0067】
また、本発明の光学材料は、高屈折率性とともに、高い波長分散性を有するため、高波長分散性が必要とされる光学素子においても好ましく用いられる。
本発明の光学材料は、屈折率nとアッベ数νとが、ν≦213−115・n(n≧1.55)の関係式を満たす範囲にある。このため、このような範囲の波長分散性が必要とされる用途において、好ましく用いられる。
このような高波長分散性が求められる光学素子として、例えば波長選択性回折素子を挙げることができ、その構成材料として、本発明の光学材料が好適に用いられる。
この際、格子高さをより低くし、製造プロセスの効率性及び回折効率を向上させる観点から、より高い波長分散性を有する光学材料を用いることが好ましく、屈折率n≧1.60において、アッベ数ν≦29であることが好ましく、アッベ数ν≦26であることがより好ましい。
【0068】
ここで、本発明の光学材料を用いた光学素子の一例として、波長選択性回折素子について説明する。以下、入射する光の波長を、波長λ1、波長λ2(λ1<λ2)とする。
【0069】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る波長選択性回折素子の態様を示す模式的な横断面図であり、図1(a)は、波長選択性回折素子1Aに波長λ1の光が入射したときの作用を示す模式的な横断面図であり、図1(b)は、波長選択性回折素子1Aに波長λ2の光が入射したときの作用を示す模式的な横断面図である。
図1において、波長選択性回折素子1Aは、透明基板11Aと、透明基板11Aの表面に形成された、凹凸部材からなる回折格子12Aと、回折格子12Aの凹凸部の間に充填される充填部材13Aとを備えており、充填部材13Aは、その上面に設けられた透明基板14Aによって保護されている。
【0070】
波長選択性回折素子1Aは、波長λ1の光に対する回折格子12Aの屈折率と充填部材13Aの屈折率が等しく、波長λ2の光に対する回折格子12Aの屈折率と充填部材13Aの屈折率が異なるように形成されている。
すなわち、波長λ1の光に対する回折格子12Aの屈折率をn12A(λ1)、波長λ1の光に対する充填部材13Aの屈折率をn13A(λ1)とし、波長λ2の光に対する回折格子12Aの屈折率をn12A(λ2)、波長λ2の光に対する充填部材13Aの屈折率をn13A(λ2)としたとき、波長λ1の光と波長λ2に関し、それぞれn12A(λ1)=n13A(λ1)、n12A(λ2)>n13A(λ2)>0の関係を満たすように、回折格子12A、充填部材13Aの構成材料が選択されて形成されている。
【0071】
このため、図1(a)に示すように、波長選択性回折素子1Aに照射された波長λ1の光は、回折格子12A、充填部材13での屈折率がそれぞれ等しいため、回折素子1Aによる回折作用を受けることなく、回折格子12Aを直進透過する。一方、波長λ2の光は、回折格子12Aの屈折率、充填部材13Aの屈折率が異なるため、回折格子12Aに進入すると、図1(b)に示すように、その屈折率差によって回折されて、回折光が得られる。
なお、例えば回折格子12Aの高さd1、回折格子12Aの格子形状などを調整することにより、回折効率を調整することが可能である。また、回折格子12Aの格子ピッチを調整することにより、回折角度を制御することも可能である。
このようにして、波長λ1の光に対しては機能せず、波長λ2の光に対してのみ回折機能を発現する波長選択性回折素子1Aを得ることができる。
【0072】
ここで、波長選択性回折素子1Aにおいて、光吸収による透過損失を少なくする観点から、回折格子12Aおよび充填部材13Aを構成するいずれの材料も、波長λ1と波長λ2の範囲で正常分散を示すことが好ましく、n12A(λ1)、n13A(λ1)、n12A(λ2)、n13A(λ2)は、それぞれ、n12A(λ1)>n12A(λ2)、n13A(λ1)>n13A(λ2)の関係を満たすことがよい。
この場合、n12A(λ1)=n13A(λ1)>n12A(λ2)>n13A(λ2)となり、充填部材13Aは、回折格子12A比較してより大きい波長分散性を示す(アッベ数が小さい)ものとなる。
このような充填部材13Aの構成材料として、本発明の光学材料を好適に用いることができる。
【0073】
次に、図2に示す波長選択性回折素子1Bについて説明する。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る波長選択性回折素子の態様を示す模式的な横断面図であり、
図2(a)は、波長選択性回折素子1Bに波長λ1の光が入射したときの作用を示す模式的な横断面図であり、図2(b)は、波長選択性回折素子1Bに波長λ2の光が入射したときの作用を示す模式的な横断面図である。
図2において、波長選択性回折素子1Bは、透明基板11Bと、透明基板11Bの表面に形成された、凹凸部材からなる回折格子12Bと、回折格子12Bの凹凸部の間に充填される充填部材13Bとを備えており、充填部材13Bは、その上面に設けられた透明基板14Bによって保護されている。
【0074】
波長選択性回折素子1Bは、波長λ1の光に対する回折格子12Bの屈折率と充填部材13Bの屈折率が異なり、波長λ2の光に対する回折格子12Bの屈折率と充填部材13Bの屈折率が等しくなるように形成されている。
すなわち、波長λ1の光に対する回折格子12Bの屈折率をn12B(λ1)、波長λ1の光に対する充填部材13Bの屈折率をn13B(λ1)とし、波長λ2の光に対する回折格子12Bの屈折率をn12B(λ2)、波長λ2の光に対する充填部材13Bの屈折率をn13B(λ2)としたとき、波長λ1の光と波長λ2の光に関し、それぞれn12B(λ1)>n13B(λ1)>0、n12B(λ2)=n13B(λ2)の関係満たすように、回折格子12B、充填部材13Bの構成材料が選択されて形成されている。
【0075】
このため、図2(a)に示すように、回折格子12Bに進入した波長λ1の光は、回折格子12Bによって回折されて、回折光が得られる。
このとき、回折格子12Bの格子ピッチを調整することにより、回折角度を制御することも可能である。また、直進光の透過効率と回折光の回折効率は、回折格子12Bの高さd2 や回折格子12Bの格子形状を変化させることにより、調整することが可能である。
一方、図2(b)に示すように、回折格子12Bに進入した波長λ2 の光は、回折格子12Bによって回折されることなく直進透過する。
このようにして、波長λ2の光に対しては機能せず、波長λ1の光に対してのみ回折機能を発現する波長選択性回折素子1Bを得ることができる。
【0076】
ここで、波長選択性回折素子1Bにおいて、光吸収による透過損失を少なくする観点から、回折格子12Bおよび充填部材13Bを構成するいずれの材料も、波長λ1と波長λ2の範囲で正常分散を示すことが好ましく、n12B(λ1)、n13B(λ1)、n12B(λ2)、n13B(λ2)は、例えば、n12B(λ1)>n12B(λ2)、n13B(λ1)>n13B(λ2)の関係を満たすことがよい。
この場合、n12B(λ1)>n13B(λ1)>n12B(λ2)=n13B(λ2)となり、回折格子12Bは、充填部材13Bと比較してより大きい波長分散性を示す(アッベ数が小さい)ものとなる。
このような回折格子12Bの構成材料として、本発明の光学材料を好適に用いることができる。
【0077】
次に図3に示す波長選択性回折素子1Cについて説明する。
図3は、本発明の第3の実施形態に係る波長選択性回折素子の態様を示す模式的な横断面図であり、図3(a)は、波長選択性回折素子1Cに波長λ1の光が入射したときの作用を示す模式的な横断面図であり、図3(b)は、波長選択性回折素子1Cに波長λ2の光が入射したときの作用を示す模式的な横断面図である。
図3において、波長選択性回折素子1Cは、上述した(第1の実施態様である波長選択性回折素子1Aと第2の実施態様である波長選択性回折素子1Bとを組み合わせて構成されており、透明基板11Cと、透明基板11Cの表面に形成された、凹凸部材からなる回折格子12Cと、回折格子12Cの凹凸部の間に充填された充填部材13Cとを備えた第1部材1aを有している。また、第1部材1aの上方には、透明基板16Cと、透明基板16Cの表面に形成された、凹凸部材からなる回折格子15Cと、回折格子15Cの凹凸部間に充填された充填部材14Cとを備えた第2部材1bが設けられており、充填部材13Cと充填部材14Cとで透明基板17Cが挟持された状態で、第1部材1aと第2部材1bとが積層されている。
【0078】
なお、波長選択性回折素子1Cにおいて、第1部材1aを構成する透明基板11C、回折格子12C及び充填部材13C、並びに透明基板17Cは、それぞれ、上述した波長選択性回折素子1A(図1参照。)における透明基板11A、回折格子12A、充填部材13A及び透明基板14Aに該当する。また、波長選択性回折素子1Cにおいて、第2部材1bを構成する透明基板16C、回折格子15C及び充填部材14C、並びに透明基板17Cは、それぞれ、上述した波長選択性回折素子1B(図2参照。)における透明基板11B、回折格子12B、充填部材13B及び透明基板14Bに該当する。
【0079】
波長選択性回折素子1Cは、波長λ1の光に対する回折格子12Cの屈折率と充填部材13Cの屈折率が等しく、波長λ2の光に対する回折格子12Cの屈折率と充填部材13Cの屈折率が異なるように形成されている。
また、波長選択性回折素子1Cは、波長λ1の光に対する回折格子15Cの屈折率と充填部材14Cの屈折率が異なり、波長λ2の光に対する回折格子15Cの屈折率と充填部材14Cの屈折率が等しくなるように形成されている。
【0080】
このため、図3(a)において、波長λ1の光は、波長選択性回折素子1Cの第2部材1bに進入すると、回折格子15Cで回折され、次いで第1部材1aに進入すると、回折格子12Cでは回折されず、透過する。すなわち、波長λ1の光に対しては、回折格子15Cのみが回折格子として機能する。一方、図3(b)において、波長λ2の光は、波長選択性回折素子1Cの第2部材1bに進入すると、回折格子15Cを透過し、次いで第1部材1aに進入すると、回折格子12Cで回折される。すなわち、波長λ2の光に対しては、回折格子12Cのみが回折格子として機能する。
したがって、波長選択性回折素子1Cは、異なる素子を複合して形成された一つの素子により、2種の波長に対して、それぞれ独立に回折素子として機能することができる。
【0081】
例えば、上述した波長λ1、及び波長λ2を、それぞれBDで使用される405nm波長帯、及びDVDで使用される660nm波長帯とする。
このとき、図1に示す波長選択性回折素子1Aの回折格子12A及び充填部材13Aが、第1実施形態の関係を有する場合には、405nm波長帯の光を透過し、660nm波長帯の光を回折することができる。
なお、CD(Compact Disk)で使用される785nm波長帯は、660nm波長帯と屈折率が近いため、785nm波長帯の光も回折可能な波長選択性回折素子を作製することもできる。
また、図2に示す波長選択性回折素子1Bの回折格子12B及び充填部材13Bが、第2実施形態の関係を有する場合には、405nm波長帯の光を回折し、660nm波長帯の光を透過する波長選択性回折素子を作製することができる。
なお、785nm波長帯は660nm波長帯と屈折率が近いため、785nm波長帯の光も透過する波長選択性回折素子を作製することが可能である。
【0082】
以上説明した波長選択性回折素子においては、回折格子12A、12Bの格子高さd1 、d2を調整したり、その格子形状を変化させたりすることで、回折効率を調整することができる。したがって、3ビーム発生用素子またはホログラムビームスプリッタとして、好適な効率を得られる格子高さを用いればよい。また、波長選択性回折素子の凹凸部をブレーズド格子形状またはマルチレベル構造の階段状格子形状とすることにより、特定の次数における回折効率を高めて用いてもよい。またさらに、回折格子のピッチを調整することで、回折角度を調整できるため、所望の回折角度を得ることができる。
これらの素子は、従来の3ビーム発生用素子やホログラムビームスプリッタに用いられている手法を、そのまま波長選択性回折素子に適用することができる。
【0083】
さらに、本発明の重合性組成物を重合して得られる光学材料は、上述の回折素子以外のその他の回折素子、レンズ等の光学素子に用いることができる。
また、本発明の光学材料をこれら光学素子に用いる場合、これら光学素子の製造方法における手法には限定されず、例えば従来から知られた方法で本発明の光学材料を適用してもよい。またさらに、本発明の光学材料は、光学素子同士を積層したり、光学部品を固定したりする際の接着剤として用いることもできる。
【0084】
また、本発明の光学材料及びこれを用いた素子は、青色レーザーに対する耐光性に優れている。このため、光ピックアップ装置の用途において好ましく用いることができ、大容量化に適した光ヘッド装置の製造に用いることができる。すなわち、本発明の光学材料を用いた光学素子は、光記録媒体に情報を記録する、および/または、光記録媒体に記録された情報を再生する光ヘッド装置に適しており、特にBDのような青色レーザを用いた光情報記録再生装置用の光ヘッド装置に好適である。具体的には、光ヘッド装置のレーザ光の光路中に好ましく配置される。また、従来から高屈折率樹脂が必要とされている、その他用途においても、好適に用いることができる。
【0085】
以下に、本発明の光ヘッド装置について説明する。
図4は、本発明の一実施形態である光ヘッド装置の構成を模式的に示す図である。
図4に示すように、光ヘッド装置111は、レーザ光を出射する光源112と、波長選択性回折格子113と、レーザ光を透過するビームスプリッタ114と、レーザ光を平行化するコリメータレンズ115と、光ディスク116の記録層117に集光する対物レンズ118と、光ディスク116からの反射光を検出する光検出器119とを有している。
波長選択性回折格子113は、3ビーム発生用回折格子であり、本実施形態では、上述した波長選択性回折格子1B(図2参照。)を適用する。
波長選択性回折格子113で得られた3ビームは、光ヘッド装置111において、BDなどに記録された情報を読み取る際のトラッキング制御において用いられる。
【0086】
なお、図4では、光源112とビームスプリッタ114との間に波長選択性回折格子113が設けられているが、波長選択性回折格子113は、光源112と対物レンズ118の間の光路中に設けられていればよく、例えば、ビームスプリッタ114と対物レンズ118との間に波長選択性回折格子113を設けてもよい。ただし、図4に示すように、光源112とビームスプリッタ114の間に波長選択性回折格子113を配置することにより、光ディスクからの反射光が、波長選択性回折格子113で回折されず、その大半が光検出器119に到達するため、光の利用効率が高められるため好ましい。
【0087】
光源112は、例えば半導体レーザダイオードで構成されており、光ディスク116の種類に適した波長のレーザ光を生成し、波長選択性回折格子113に出射するようにされている。光源112には、通常の光ヘッド装置に使用される、一般的なレーザ光源が使用される。具体的には、半導体レーザが好適に用いられるが、半導体レーザ以外のレーザ光源であってもよい。本発明の光学材料は、青色レーザに対して優れた耐光性を有するため、青色レーザを光源とした光ヘッド装置に好適に使用される。
【0088】
本実施形態では、レーザ光として、波長405nm(波長λ1)、及び660nm(波長λ2)のものを使用する。なお、互いに異なる波長のレーザ光を出射する光源を複数備え、各光源から波長選択性回折格子113にレーザ光を出射する構成としてもよい。
波長選択性回折格子113は、波長λ1のレーザ光を回折せずに透過した光(0次回折光)と、波長λ1のレーザ光を回折した光(±1次回折光)とを含む3つのビーム(図2(a)参照。)をビームスプリッタ114に出力する。さらに、波長選択性回折格子113は、波長λ2のレーザ光を透過してビームスプリッタ114に出力する。
ビームスプリッタ114は、透過性の材料、例えば、ガラス、プラスチック等で構成されており、光ディスク116からの反射光を反射する反射面を備えている。
コリメータレンズ115も、透過性の材料、例えば、ガラス、プラスチック等で構成されており、入射したレーザ光を平行化するように構成されている。
対物レンズ118は、所定の開口数NAを有しており、コリメータレンズ115からの入射光を光ディスク116の記録層117に集光し、さらに、記録層117からの反射光を捕捉するように構成されている。
光検出器119は、レンズやフォトダイオードなどを含んでおり、ビームスプリッタ114の反射面によって反射された光ディスク116からの反射光を電気信号に変換する。また、光検出器119は、波長λ1の3ビームの反射光を受光し、0次回折光により生成された主ビームと、±1次回折光により生成された2つの副ビームとを受光し、2つの副ビーム間の光量差に基づいてトラッキングエラーを検出し、トラッキング制御部(図示せず)に出力する。
【0089】
光ディスク116がBDである場合、光ヘッド装置111は次のように動作する。
まず、図4に示すように、光源112から出射された波長λ1の光は、波長選択性回折格子113によって出射光の一部が回折される。これにより、波長選択性回折格子113からは、0次回折光と±1次回折光を含む光が出射され、ビームスプリッタ114を透過して、コリメータレンズ115によって平行光とされる。
コリメータレンズ115から出射された平行光は、対物レンズ118によって、0次回折光と±1次回折光とが3ビームとなって光ディスク116の情報記録トラック上に集光される。次に、光ディスク116によって反射された光は、再び対物レンズ118よりコリメータレンズ115を透過し、ビームスプリッタ114で反射されて、0次回折光により生成された主ビームと、±1次回折光により生成された2つの副ビームとが光検出器119の受光面に集光される。そして、光検出器119によって、2つの副ビーム間の光量差に基づいてトラッキングエラー信号が検出され、トラッキング制御部(図示せず)に出力される。
【0090】
光ディスク116がDVDである場合には、光ヘッド装置111は次のように動作する。
まず、図4に示すように、光源112から出射された波長λ2の光は、波長選択性回折格子113で回折されることなく透過した後、さらにビームスプリッタ114を透過して、コリメータレンズ115で平行光とされる。その後、この平行光は、対物レンズ118によって光ディスク116の情報記録トラック上に集光される。そして、光ディスク116で反射された光は、再び対物レンズ118とコリメータレンズ115を透過し、ビームスプリッタ114で反射されて光検出器119の受光面に集光される。
【0091】
以上述べたように、本発明の重合性化合物を含有する重合性組成物を硬化して得た、本発明の光学材料を適用した光学素子を用いることにより、大容量化に適し、信頼性の高い光ヘッド装置を構成することができる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜変形して実施することができる。
【実施例】
【0092】
以下、本発明化合物の合成例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明に係る化合物の合成はこれらの例によって限定されない。
以下に、本発明の実施例および比較例を述べる。ただし、本発明は以下の実施例に何ら制限されるものではない。
【0093】
<重合性化合物の合成例1>
下記の合成スキームに示す方法に従い、化合物(A−1)、(A−2)および(A−3)を経て下記の重合性化合物Aを合成した。
【0094】
【化5】

【0095】
[合成例1]化合物(A)の合成例
【化6】

【0096】
以下、重合性化合物Aにおける上記合成スキームの各反応について詳細に説明する。
【0097】
[例1−1]化合物(A−1)の合成
【化7】

【0098】
(a)化合物A−1の合成
窒素雰囲気下にて1Lの脱水テトラヒドロフラン(以下、THFと記載する。)に21.0g(67.3mmol)の4,4’−ジブロモビフェニルを溶解させて攪拌した後、−74℃に冷却し、濃度1.67mol/Lのn−ブチルリチウム ヘキサン溶液40.3ml(67.3mmol)を30分程度かけてゆっくりと滴下し、−74℃のまま1時間攪拌を行った。次に、クロロジメチルビニルシラン11.0ml(80.9mmol)を10分かけて滴下して−74℃のまま1時間攪拌し、さらに室温に戻して1時間攪拌を行った。塩水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、さらに硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。ジクロロメタンとヘキサン(ジクロロメタン:ヘキサン=1:9)を用いてカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、不純物を含んだ状態で白色固体の化合物A−1を19.9g得た。収率は93.6%であった。
【0099】
[例1−2]化合物(A−2)の合成
【化8】

【0100】
(b)化合物A−2の合成
窒素雰囲気下にて300mlの脱水THFに19.9g(62.9mmol)の化合物A−1を溶解し、−74℃に冷却して攪拌をした。次いで、濃度1.67mol/Lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液41.5ml(69.3mmol)を30分程度かけてゆっくりと滴下した。−74℃で1時間反応させた後、200mlのTHFに溶解させたトリフェニルクロロシラン24.1g(82.0mmol)を20分程度かけてゆっくりと滴下した。その後、−74℃で1時間保持してから、室温で1時間反応させた。次に、塩水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。得られた固体にエタノール1Lを加え、65℃で攪拌して洗浄した後、室温でエタノールに不溶の固体をろ過することにより、白色固体の化合物A−2を21.9g得た。収率は70.1%であった。
【0101】
[例1−3]化合物(A−3)の合成
【化9】

【0102】
(c)化合物A−3の合成
200mlの脱水THFに21.9g(44.2mmol)の化合物A−2を溶解し、窒素雰囲気で氷浴の下、濃度0.5mol/Lの9−BBN THF溶液を114.8ml(57.4mmol)を20分程度かけて滴下し、65℃に昇温して3時間攪拌した。その後、2.5Nの水酸化ナトリウム水溶液30mlを氷浴下にて30分かけて滴下し、次いで30%過酸化水素水100mlを氷浴下にて30分かけて滴下した。塩水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行った後、ヘキサンを用いた再結晶により、白色固体の化合物A−3を11.1g得た。収率は54.1%であった。
上記式において、9−BBNは9−ボラ−ビシクロ[3.3.1]ノナンを示す。
【0103】
[例1−4]化合物(A)の合成
【化10】

【0104】
(d)化合物Aの合成
300mlの脱水THFに、11.1g(21.6mmol)の化合物A−3と、3.59ml(25.9mmol)のトリエチルアミンを溶解させて攪拌した。窒素雰囲気・氷浴下で、2.14ml(25.9mmol)のアクリロイルクロリドを5分程度かけて滴下した。希塩酸と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(酢酸エチル:ヘキサン=1:15)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行った後、溶媒留去後に得られた透明な粘稠体をヘキサン100mlとジクロロメタン2ml程度(ジクロロメタンは低温で生成した粘稠体が溶ける程度加えた)で再結晶することにより、白色固体の化合物Aを7.0g得た。収率は57.1%であった。
【0105】
重合性化合物Aの1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl、内部標準:テトラメチルシラン(TMS))のスペクトルデータは、δ(ppm):0.36(6H、s)、1.31(2H、t)、4.28(2H、t)、5.77(1H、m)、6.08(1H、m)、6.33(1H、m)、7.38−7.66(23H、m)であった。得られた化合物Aの融点は67℃であった。
【0106】
<重合性化合物の合成例2>
[合成例2] 化合物(B)の合成例
合成例1において、クロロジメチルビニルシランの代わりにアリルクロロジメチルシラン、9−BBNの代わりにボランを用いた以外は同様にして、化合物Bを合成した。
【0107】
【化11】

【0108】
重合性化合物Bの1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl、内部標準:テトラメチルシラン(TMS))のスペクトルデータは、δ(ppm):0.31(6H、s)、0.80(2H、t)、1.70(2H、m)、4.12(2H、t)、5.81(1H、m)、6.11(1H、m)、6.39(1H、m)、7.37−7.79(23H、m)であった。得られた化合物Bの融点は116℃であった。
【0109】
<重合性化合物の合成例3>
下記の合成スキームに示す方法に従い、化合物(C−1)および(C−2)を経て重合性化合物Cを合成した。
【0110】
【化12】

【0111】
[合成例3] 化合物(C)の合成例
【化13】

【0112】
以下、重合性化合物Cにおける上記合成スキームの各反応について詳細に説明する。
【0113】
[例3−1]化合物(C−1)の合成
【化14】

【0114】
(a)化合物C−1の合成
2.54g(105.8mmol)のマグネシウムと0.2g程度のヨウ素を窒素雰囲気下にて20mlの脱水テトラヒドロフラン中で攪拌したところに、脱水THF400mlに溶解させた15.0g(48.1mmol)の4,4’−ジブロモビフェニルを20ml程度滴下し、ヒートガンを用いて加熱することによってグリニャール反応を開始させた。反応の開始後に残りの溶液を30分程度かけて滴下した後、65℃で12時間加熱攪拌を行った。次に、クロロジメチルビニルシラン14.4ml(105.9mmol)を10分程度かけて滴下し、65℃で1時間攪拌を行った。飽和塩化アンモニウム水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、さらに硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。ジクロロメタンとヘキサン(ジクロロメタン:ヘキサン=1:19)を用いてカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、透明液体の化合物C−1を10.8g得た。収率は69.7%であった。
【0115】
[例3−2]化合物(C−2)の合成
【化15】

【0116】
(b)化合物C−2の合成
100mlの脱水THFに10.8g(33.5mmol)の化合物C−1を溶解した後、窒素雰囲気で氷浴の下、濃度0.5mol/Lの9−BBN THF溶液を161ml(80.5mmol)を20分程度かけて滴下し、65℃に昇温して12時間攪拌した。その後、2.2Nの水酸化ナトリウム水溶液40mlを氷浴下にて30分かけて滴下し、次いで30%過酸化水素水120mlを氷浴下にて30分かけて滴下した。塩水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物C−2を9.0g得た。収率は75%であった。
【0117】
[例3−3]化合物(C)の合成
【化16】

【0118】
(c)化合物Cの合成
300mlの脱水THFに、9.0g(25mmol)の化合物C−2と、8.3ml(60mmol)のトリエチルアミンを溶解させて攪拌した。窒素雰囲気・氷浴下で、5.0ml(60mmol)のアクリロイルクロリドを10分程度かけて滴下した。希塩酸と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(酢酸エチル:ヘキサン=1:7)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、無色透明液体の化合物Cを4.0g得た。収率は62%であった。
【0119】
重合性化合物Cの1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl、内部標準:テトラメチルシラン(TMS))のスペクトルデータは、δ(ppm):0.31(12H、s)、1.32(4H、t)、4.28(4H、t)、5.77(2H、m)、6.06(2H、m)、6.34(2H、m)、7.59(8H、m)であった。
【0120】
<重合性化合物の合成例4>
[合成例4]化合物(D)の合成例
合成例1において、クロロジメチルビニルシランの代わりにアリルクロロジメチルシラン、9−BBNの代わりにボランを用いた以外は同様にして、化合物Dを合成した。
【0121】
【化17】

【0122】
重合性化合物Dの1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl、内部標準:テトラメチルシラン(TMS))のスペクトルデータは、δ(ppm):0.32(12H、s)、0.81(4H、t)、1.71(4H、m)、4.11(4H、t)、5.81(2H、m)、6.11(2H、m)、6.39(2H、m)、7.58(8H、m)であった。得られた化合物Dの融点は65℃であった。
【0123】
<重合性化合物の合成例5>
下記の合成スキームに示す方法に従い、化合物(E−1)、(E−2)および(E−3)を経て重合性化合物Eを合成した。
【0124】
【化18】

【0125】
[合成例5] 化合物(E)の合成例
【化19】

【0126】
以下、重合性化合物Eにおける上記合成スキームの各反応について詳細に説明する。
【0127】
[例5−1]化合物(E−1)の合成
【化20】

【0128】
(a)化合物E−1の合成
窒素雰囲気下にて150mlの脱水THFに5.0g(17.3mmol)の4−ブロモ−4’−tert−ブチルビフェニルを溶解し、−74℃に冷却して攪拌をした。次いで、濃度1.6mol/Lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液11.9ml(19.0mmol)を30分程度かけてゆっくりと滴下した。−74℃で30分反応させた後、DMF2.7ml(34.9mmol)を5分程度かけて滴下した。その後、−74℃で30分保持してから、室温で30分反応させた。次に、塩水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(酢酸エチル:ヘキサン=1:9)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、化合物E−1を3.3g得た。収率は80.1%であった。
上記式において、DMFはN,N−ジメチルホルムアミドを示す。
【0129】
[例5−2]化合物(E−2)の合成
【化21】

【0130】
(b)化合物E−2の合成
窒素雰囲気下にて150mlの脱水THFに8.9g(24.9mmol)のトリフェニルホスホニウムブロミドを加え、−74℃に冷却して攪拌をした。次いで、濃度1.6mol/Lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液15.6ml(25.0mmol)を30分程度かけてゆっくりと滴下した。氷浴下で30分反応させた後、脱水THF10mlに溶解させた3.3gのE−1(13.9mmol)を15分程度かけて滴下した。その後、氷浴下で30分保持してから、室温で30分反応させた。次に、塩水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(酢酸エチル:ヘキサン=1:6)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、化合物E−2を3.2g得た。収率は97.8%であった。
【0131】
[例5−3]化合物(E−3)の合成
【化22】

【0132】
(c)化合物E−3の合成
150mlの脱水THFに3.2g(13.6mmol)の化合物E−2を溶解した後、窒素雰囲気で氷浴の下、濃度0.5mol/Lの9−BBN THF溶液を36.3ml(18.2mmol)を15分程度かけて滴下し、65℃に昇温して12時間攪拌した。その後、1.3Nの水酸化ナトリウム水溶液20mlを氷浴下にて10分かけて滴下し、次いで30%過酸化水素水30mlを氷浴下にて20分かけて滴下した。塩水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、化合物E−3を2.9g得た。収率は84.4%であった。
【0133】
[例5−4]化合物(E)の合成
【化23】

【0134】
(d)化合物Eの合成
200mlの脱水THFに、2.9g(11mmol)の化合物E−3と、1.8ml(13mmol)のトリエチルアミンを溶解させて攪拌した。窒素雰囲気・氷浴下で、脱水THF10mlに溶解させた1.1ml(13mmol)のアクリロイルクロリドを10分程度かけて滴下した。希塩酸と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(酢酸エチル:ヘキサン=1:9)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物Eを2.6g得た。収率は74%であった。
【0135】
重合性化合物Eの1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl、内部標準:テトラメチルシラン(TMS))のスペクトルデータは、δ(ppm):1.36(9H、s)、3.02(2H、t)、4.40(2H、t)、5.83(1H、m)、6.12(1H、m)、6.40(1H、m)、7.28−7.54(8H、m)であった。得られた化合物Eの融点は67℃であった。
【0136】
<重合性化合物の合成例6>
下記の合成スキームに示す方法に従い、化合物(F−1)および(F−2)を経て重合性化合物Fを合成した。
【0137】
【化24】

【0138】
[合成例6] 化合物(F)の合成例
【化25】

【0139】
以下、重合性化合物Fにおける上記合成スキームの各反応について詳細に説明する。
【0140】
[例6−1]化合物(F−1)の合成
【化26】

【0141】
(a)化合物F−1の合成
脱水THF300mlに水素化ナトリウム5.6g(151mmol)を混ぜ、窒素雰囲気・氷浴下で、脱水THF50mlに溶解させた4−ビフェニル酢酸エチル14.5g(60.4mmol)を20分程度かけてゆっくりと滴下した。室温で1時間半攪拌した後、氷浴下でヨードメタン25g(17.6mmol)を滴下し、室温で4時間反応させた。氷浴下で飽和塩化アンモニウム水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(酢酸エチル:ヘキサン=1:7)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、無色透明液体の化合物F−1を14.4g得た。収率は88.9%であった。
【0142】
[例6−2]化合物(F−2)の合成
【化27】

【0143】
(b)化合物F−2の合成
脱水THF250mlに水素化リチウムアルミニウム4.1g(108mmol)を窒素雰囲気・氷浴下で混ぜ、脱水THF50mlに溶解させた14.4gのF−1(53.7mmol)を30分程度かけてゆっくりと滴下した。室温で8時間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水を40ml滴下した後、酢酸エチル174mlとメタノール20mlとトリエチルアミン6mlの混合溶媒を氷浴下でゆっくりと滴下した。固体成分をろ過した後に有機層を100ml程度まで留去した。塩水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。ジクロロメタンを用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物F−2を10.0g得た。収率は82.4%であった。
【0144】
[例6−3]化合物(F)の合成
【化28】

【0145】
(c)化合物Fの合成
300mlの脱水THFに、10.0g(44.2mmol)の化合物F−2と、7.3ml(52.0mmol)のトリエチルアミンを溶解させて攪拌した。窒素雰囲気・氷浴下で、脱水THF10mlに溶解させた4.4ml(53.2mmol)のアクリロイルクロリドを15分程度かけて滴下した。希塩酸と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(酢酸エチル:ヘキサン=1:6)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物Fを9.8g得た。収率は79.1%であった。
【0146】
重合性化合物Fの1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl、内部標準:テトラメチルシラン(TMS))のスペクトルデータは、δ(ppm):1.42(6H、s)、4.25(2H、s)、5.80(1H、m)、6.10(1H、m)、6.36(1H、m)、7.31−7.61(9H、m)であった。得られた化合物Fの融点は43℃であった。
【0147】
<重合性化合物の合成例7>
下記の合成スキームに示す方法に従い、化合物(G−1)、(G−2)および(G−3)を経て重合性化合物Gを合成した。
【0148】
【化29】

【0149】
[合成例7]化合物(G)の合成例
【化30】

【0150】
以下、重合性化合物Gにおける上記合成スキームの各反応について詳細に説明する。
【0151】
[例7−1]化合物(G−1)の合成
【化31】

【0152】
(a)化合物G−1の合成
2−(4−ブロモフェニル)−2−メチルプロパン−1−オールを8.1g(35.4mmol)、tert−ブチルジメチルシリルクロリドを6.4g(42.4mmol)、イミダゾールを2.9g(42.6mmol)をDMF100mlに溶解させ、室温で1時間攪拌した。その後、塩水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(酢酸エチル:ヘキサン=1:9)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、無色透明液体の化合物G−1を9.3g得た。収率は76.9%であった。なお、上記式において、TBDMSはtert−ブチルジメチルシリル基を示す。
【0153】
[例7−2]化合物(G−2)の合成
【化32】

【0154】
(b)化合物G−2の合成
トルエン250mlと水150mlに、8.0g(23.3mmol)の化合物G−1、5.0g(28.1mmol)の4−tert−ブチルフェニルボロン酸、24.4g(74.8mmol)の炭酸セシウムを溶解させて攪拌しておき、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)1gを加え、70℃で3日間攪拌した。その後、室温に戻した後に塩水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(酢酸エチル:ヘキサン=1:9)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、無色透明液体の化合物G−2を8.6g得た。収率は92.6%であった。
【0155】
[例7−3]化合物(G−3)の合成
【化33】

【0156】
(c)化合物G−3の合成
THF150mlに8.6g(21.7mmol)の化合物G−2を溶解させ、さらにテトラブチルアンモニウムフルオリド8.2g(26.0mmol)を添加し、30分室温で攪拌した。塩水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物G−3を5.5g得た。収率は90.0%であった。
なお、上記式において、TBAFはテトラブチルアンモニウムフルオリドを示す。
【0157】
[例7−4]化合物(G)の合成
【化34】

【0158】
(d)化合物Gの合成
200mlの脱水THFに、5.5g(19.5mmol)の化合物G−3と、3.2ml(23.1mmol)のトリエチルアミンを溶解させて攪拌した。窒素雰囲気・氷浴下で、脱水THF10mlに溶解させた1.9ml(23.0mmol)のアクリロイルクロリドを15分程度かけて滴下した。希塩酸と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(酢酸エチル:ヘキサン=1:8)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物Gを2.9g得た。収率は44.3%であった。
【0159】
重合性化合物Gの1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl、内部標準:テトラメチルシラン(TMS))のスペクトルデータは、δ(ppm):1.36(9H、s)、1.42(6H、s)、4.24(2H、s)、5.80(1H、m)、6.09(1H、m)、6.35(1H、m)、7.31−7.54(8H、m)であった。得られた化合物Gの融点は56℃であった。
【0160】
<光硬化性組成物の重合と屈折率評価>
(実施例1)
化合物A100重量部に、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IC184」)を0.5重量部加え、加熱しながら均一になるまで攪拌して、光硬化性の重合性組成物Aを得た。
次に、2枚のガラス板の角4箇所を、直径10μmのガラスビーズを配合した接着剤を用いて貼り合わせて、ガラス間に10μmの間隔を設けたガラスセルを作製した。このガラスセルの内部に、上記の光硬化性の重合性組成物Aを液体状態で注入した後、ガラス板に対して垂直方向から紫外線を2分間照射し、セルAを得た。用いた高圧水銀灯の照度は、波長365nmで100mW/cmであった。その後、カッターを用いてセルAの2枚のガラス板の一方を剥離し、片面に付着した光学材料、すなわち硬化膜(以下、硬化膜と示す。)を有する試験片Aを得た。プリズムカプラ(Metricon社製、商品名「Model2010」)を用い、室温で波長404nm、633nmおよび791nmにおける屈折率を測定したところ、それぞれ、1.686、1.626、1.615であり、高屈折率の硬化膜であることが確認された。
【0161】
次に、3つの波長の屈折率をもとにして、コーシーの分散式(n(λ)=A+B/λ+C/λ)のパラメーターA、B、Cを、最小2乗法を用いたフィッティングから求めることによって400nm〜800nmにおける屈折率を導出し、そのフィッティング値をもとに589nmにおける屈折率n、およびアッベ数νを算出したところ、nは1.632、νは21.6であった。得られたアッベ数νより、高波長分散性の硬化膜であることが確認された。
【0162】
(実施例2〜7)
化合物Aに代えて化合物B、C、D、E、FおよびGを用いたこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性の重合性組成物B、C、D、E、F、Gを得た。これらの重合性組成物B、C、D、E、F、Gを用いてセルB、C、D、E、F、Gを得た後、セルの片側のガラスを剥離して、試験片B、C、D、E、F、Gを作製した。試験片B、C、D、E、F、Gを室温で屈折率を測定し、nおよびνを算出したところ、それぞれ、589nmの屈折率nは1.640、1.570、1.567、1.581、1.600、1.571であり、アッベ数νは、20.3、26.3、28.6、25.9、25.4、26.3であり、いずれも高屈折率で、かつ波長分散性の高い樹脂であることが確認された。
【0163】
<光硬化性組成物の重合と耐光性評価>
(実施例8)
ガラスセルの製造に、片側面に反射防止膜をコーティングしたガラス板を用い、コーティング面と反対側の面を互いに対向させ、さらに接着剤に配合するガラスビーズの直径を20μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ガラスセルを作製した。化合物A100重量部に、光開始剤として、(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「IC184」)を0.5重量部加え、加熱しながら均一になるまで攪拌し、液状の光硬化性組成物Aを得た。得られた組成物を液体の状態で上記のガラスセルの内部に注入し、ガラス板に対して垂直方向から紫外線を2分間照射して積層体Aを得た。尚、用いた高圧水銀灯の照度は、波長365nmにて100mW/cmであった。
上記の積層体Aに、80℃で発振波長406nmの青色LD光を7W・hour/mmとなるまで照射した。照射前後で透過率を測定したところ、透過率変化△TLDは1%未満であった。尚、ここで、△TLD=(照射前の青色LD光透過率)−(照射後の青色LD光透過率)である。
【0164】
(実施例9〜14)
化合物Aに代えて、化合物B、C、D、E、F、Gを用いたこと以外は、実施例8と同様にして、積層体B、C、D、E、FおよびGを作製した。実施例8と同様にして、耐光性試験を行い、積層体B、C、D、E、FおよびGの△TLDを測定したところ、いずれも1%未満であり、高い耐光性を有することが分かった。
【0165】
(比較例1)
化合物Aに代えて下記の化合物Hを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてセルHを作製し、硬化膜が付着した試験片Hを得た。室温で屈折率を測定したところ、589nmにおける屈折率が1.573、アッベ数νが28.7であった。
【0166】
【化35】

【0167】
次いで、実施例8と同様にして積層体Hを得た後、その透過率を測定したところ、透過率変化△TLDは4%であった。
【0168】
(比較例2)
化合物Aに代えて下記の化合物Iを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、セルIを作製し、硬化膜が付着した試験片Iを得た。室温で屈折率を測定したところ、589nmにおける屈折率が1.607、アッベ数νが25.4であった。
【0169】
【化36】

【0170】
次いで、実施例8と同様にして、積層体Iを得た後、その透過率を測定したところ、過率変化△TLDは58%であった。
【0171】
(比較例3)
化合物Aに代えて下記の化合物Jを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、セルJを作製し、硬化膜が付着した試験片Jを得た。室温で屈折率を測定したところ、589nmにおける屈折率が1.596、アッベ数νが26.1であった。
【0172】
【化37】

【0173】
次いで、実施例8と同様にして、積層体Jを得た後、その透過率を測定したところ、透過率変化△TLDは6%であった。
【0174】
(比較例4)
化合物Aに代えて下記の化合物Kを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、セルKを作製し、硬化膜が付着した試験片Kを得た。室温で屈折率を測定したところ、589nmにおける屈折率が1.651、アッベ数νが20.3であった。
【0175】
【化38】

【0176】
次いで、実施例8と同様にして、積層体Kを得た後、その透過率を測定したところ、透過率変化△TLDは7%であった。
【0177】
表1に、重合性化合物A〜Gを用いて得られた、実施例1〜7の硬化膜の屈折率n、アッべ数ν、及び重合性化合物A〜Gを用いて得られた実施例8〜14の積層体A〜Gの透過率変化△TLDを表1に示す。また、化合物H〜Kを用いた比較例1〜4の硬化膜の屈折率n、アッべ数ν、及び化合物H〜Kを用いて得られた積層体H〜Kの透過率変化△TLDを表1に示す。
【0178】
【表1】

【0179】
表1から明らかなように、本発明の重合性化合物を用いて得られた硬化膜は、高い屈折率と高波長分散性を得られるとともに、耐光性にも優れることが確認された。なお、透過率変化△TLDは1%以下であることが好ましい。
【0180】
(比較例5〜8)
化合物Aに代えて下記の化合物L、M、NおよびOを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、セルL〜Oを作製し、硬化膜が付着した試験片L〜Oを得た。
なお、化合物L、M、NおよびOは、特許文献3に記載の化合物である。
試験片L〜Oの硬化膜の屈折率を室温で測定したところ、589nmにおける屈折率は夫々、1.622、1.616、1.609、1.599、アッベ数νは夫々、26.4、27.2、27.8、29.1であった。
【0181】
【化39】

【0182】
【化40】

【0183】
【化41】

【0184】
【化42】

【0185】
実施例1〜7の化合物A〜Gから得られる各硬化膜、及び比較例5〜7の化合物L〜Oから得られる各硬化膜の、屈折率nとアッべ数vdとの関係を図5に示す。
図5から明らかなように、本発明の重合性化合物を用いて得られる各硬化膜は、比較例の重合性化合物を用いて得られる硬化膜と比較して、高屈折率領域でもアッベ数vdが小さく、高波長分散性を有することが確認された。
以上より、本発明の重合性ビフェニレン化合物は、高耐光性、高屈折率、高波長分散性を兼ね備えた材料であることが確認でされた。
【符号の説明】
【0186】
1A〜1C…波長選択性回折素子、11A,14A,11B,14B,11C,16C,17C…透明基板、12A,12B,12C,15C…回折格子、13A,13B,13C,14C…充填部材、1a…第1部材、1b…第2部材、111…光ヘッド装置、112…光源、113…波長選択性回折格子、114…ビームスプリッタ、115…コリメータレンズ、116…光ディスク、117…記録層、118…対物レンズ、119…光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される重合性化合物。
【化1】

但し、式中の記号は以下の意味を示す。
A:水素原子又は下記式(2)〜(5)から選択される基。
(3−W)C− ・・・ (2)
Ph(3−x)Si− ・・・ (3)
J−(CHm1−CH(CH(2−l)− ・・・(4)
J−(CHn1−SiPhp1(CH(2−p1)− ・・・(5)

B:下記式(6)〜(7)から選択される基。
J−(CHm2−CH(CH(2−k)− ・・・(6)
J−(CHn2−SiPhp2(CH(2−p2)− ・・・(7)
w:0〜3の整数。
V:メチル基またはエチル基。但し、wが2〜3のときにはVはそれぞれ異なる基であってもよい。
x:0〜3の整数。
Y:メチル基、シクロヘキシル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基およびiso−プロピル基から選択される基。但しxが0又は1のとき、Yは異なる基であってもよい。
J:CH=CR−COO−、エポキシ基、ビニル基及びビニルエーテル基から選択される基。
R:水素原子又はメチル基。
l:0〜1の整数。
k:0〜2の整数。ただし、Aが水素原子の場合、kは2を除く。
、m:それぞれ独立して0〜12。
、n:それぞれ独立して1〜12。
、p:それぞれ独立して0〜2。

ただし、式(2)の置換基V、式(3)のフェニル基及び置換基Y並びに式(4)〜(7)のアルキレン基の水素原子の一部または全部は、メチル基、メトキシ基、フッ素原子に置換されていてもよく、ビフェニル基又はビフェニレン基の水素原子の一部または全部がメチル基、メトキシ基、フッ素原子に置換されていてもよい。
【請求項2】
Aが式(3)で示される基である請求項1記載の重合性化合物。
【請求項3】
Aがトリフェニルシリル基である請求項2記載の重合性化合物。
【請求項4】
Aがトリフェニルシリル基であり、Bが式(7)で示される基である請求項1乃至3のいずれか1項記載の重合性化合物。
【請求項5】
Aが式(5)で示される基であり、Bが式(7)で示される基である請求項1記載の重合性化合物。
【請求項6】
Bが式(6)で示される基のときk=0である請求項1乃至5のいずれか1項記載の重合性化合物。
【請求項7】
Bが式(7)で示される基のとき、p=0である請求項1乃至5のいずれか1項記載の重合性化合物。
【請求項8】
Aがtert−ブチル基である請求項1、6又は7記載の重合性化合物。
【請求項9】
、mがそれぞれ独立して1〜2であり、n、nがそれぞれ独立して1〜3である請求項1乃至8のいずれか1項記載の重合性化合物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の重合性化合物を含有する重合性組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の重合性組成物を硬化してなる光学材料。
【請求項12】
請求項11に記載の光学材料を用いてなる光学素子。
【請求項13】
請求項12に記載の光学素子を用いてなる光ヘッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−1498(P2012−1498A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138624(P2010−138624)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】