説明

重合性化合物および該重合性化合物を重合してなる光学フィルム

【課題】Δnが大きい光学フィルムを与える新しい重合性化合物を提供する。
【解決手段】式(1−a)または式(1−b)で表される重合性化合物。ただし、−(B−A−E−D−G−Qに対する、−(B−A−E−D−G−Qのベンゼン環への置換位置は、パラ位またはメタ位である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性化合物および該重合性化合物に由来する構造単位を含む光学フィルム等に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、偏光板、位相差板などの光学フィルムを用いた部材が含まれている。最近、液晶表示装置の小型化が望まれており、それに伴い光学フィルムの薄膜化が求められている。薄膜化された光学フィルムには、たとえば、重合性化合物を溶媒に溶かして得られる溶液を、支持基材に塗布後、重合して得られる光学フィルムなどが挙げられる。そして、波長λnmの光が与える光学フィルムの位相差(Re(λ))は、複屈折率Δnとフィルムの厚みdとの積で決定されることが知られている(Re(λ)=Δn×d)。すなわち、光学フィルムを薄膜化するためには、Δnを大きくすればよい。所定の位相差を得ようとする場合、Δnが大きいと、dを小さくできるという利点を有する。
たとえば、該重合性化合物としては、LC242(BASF社製)が市販されている(非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】“Paliocolor”、[online]、平成16年10月20日、BASF社、[平成19年12月5日検索]、インターネット〈http://www.inorganics.basf.com/p02/CAPortal/en_GB/portal/Displaychemikalien/content/Produktgruppen/Displaychemikalien/Palicolor/Paliocolor〉
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、Δnが大きい光学フィルムを与える新しい重合性化合物等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(1−a)または式(1−b)で表される重合性化合物である。ただし、−(B−A−E−D−G−Qに対する、−(B−A−E−D−G−Qのベンゼン環への置換位置は、パラ位またはメタ位である。

[式(1−a)および式(1−b)中、XおよびXは、それぞれ独立に、−CH=CH−、−CH=C(CH)−、−C(CH)=CH−、−C(CH)=C(CH)−、−CH=N−、−N=CH−、−N=C(CH)−または−C(CH)=N−を表す。
およびYは、それぞれ独立に、6〜18員環の芳香族炭化水素基または5〜18員環の芳香族複素環基を表す。該芳香族炭化水素基および該芳香族複素環基に含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基またはハロゲン原子に置換されていてもよい。
、B、GおよびGは、それぞれ独立に、−CR−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CR=N−、−N=CR−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−NR−、−CHO−、−CFO−、−SCH−、−CHS−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−または単結合を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
およびAは、それぞれ独立に、6〜18員環の芳香族炭化水素基、5〜18員環の脂環式炭化水素基または5〜18員環の複素環基を表す。該芳香族炭化水素基、該脂環式炭化水素基および該複素環基に含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基またはハロゲン原子に置換されていてもよい。mおよびnは、それぞれ独立に、1〜3で表される整数を表す。
およびEは、それぞれ独立に、−CR−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CR=N−、−N=CR−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−NR−、−CHO−、−CFO−、−SCH−、−CHS−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−、または単結合を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
およびDは、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキレン基を表し、DおよびDに含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよい。
およびQは、水素原子または式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選ばれる基である。

(式(Q−1)〜式(Q−5)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)]
【0006】
また本発明は、式(1−a)または式(1−b)で表される重合性化合物が、式(1−a−1)または式(1−b−1)で表される化合物である上記重合性化合物である。

(A、A、B、B、E、E、D、D、G、G、Q、Q、X、X、Y、Y、mおよびnは、上記と同じ意味を表す。)
【0007】
また本発明は、XおよびXが、それぞれ独立に、−CH=CH−、−CH=N−または−N=CH−である上記重合性化合物である。
【0008】
また本発明は、QおよびQの少なくとも一方が、式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選ばれる基である上記重合性化合物である。
【0009】
また本発明は、−G−Qおよび−G−Qが、アクリロイル基またはメタクリロイル基である上記重合性化合物である。
【0010】
また本発明は、上記重合性化合物と、該重合性化合物以外の液晶化合物(2)とを含む組成物である。
【0011】
また本発明は、該重合性化合物以外の液晶化合物(2)が、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)または式(V)で表される化合物である上記組成物である。
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-A14-B15-A15-B16-E12-P12 (I)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-A14-B15-E12-P12 (II)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-E12-P12 (III)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-F11 (IV)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-F11 (V)
(式(I)〜式(V)中、A11、A12、A13、A14、およびA15は、それぞれ独立に、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、複素環基、フルオレニル基またはチオフェニレン基を表す。A11〜A15には、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、ニトリル基、フェニル基、ジメチルアミノ基またはハロゲン原子が結合していてもよい。)
B11、B12、B13、B14、B15およびB16は、それぞれ独立に、−CR1011−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−C(=O)−NR10−、−NR10−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−NR10−、−CHO−、−CFO−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−または単結合を表す。R10およびR11は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R10およびR11が連結した炭素数4〜7のアルキレン基であってもよい。
E11およびE12は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子に置換されていてもよい。
P11およびP12は、それぞれ独立に、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基またはビニルオキシ基を表す。
F11は、水素原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、ニトリル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノ基またはハロゲン原子を表す。)
【0012】
また本発明は、上記重合性化合物に由来する構造単位を含む光学フィルムである。
【0013】
また本発明は、上記組成物を重合してなる光学フィルムである。
【0014】
また本発明は、上記光学フィルムからなり、波長550nmにおける位相差値(Re(550))が113〜163nmであるλ/4板である。
【0015】
また本発明は、上記光学フィルムからなり、波長550nmにおける位相差値(Re(550))が250〜300nmであるλ/2板である。
【0016】
また本発明は、上記光学フィルムおよび偏光フィルムを含む偏光板である。
【0017】
また本発明は、上記偏光板と液晶パネルとを備える液晶表示装置である。
【0018】
また本発明は、上記偏光板を含む有機エレクトロルミネッセンスパネルを備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置である。
【0019】
また本発明は、上記重合性化合物を含む溶液を支持基材に塗布し、乾燥させる未重合フィルムの製造方法である。
【0020】
また本発明は、上記重合性化合物を含む溶液を、支持基材上に形成された配向膜上に塗布し、乾燥させる未重合フィルムの製造方法である。
【0021】
また本発明は、上記未重合フィルムの製造方法で得られた未重合フィルムを、重合により硬化させる光学フィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の重合性化合物によれば、Δnが大きい光学フィルムを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の重合性化合物(以下「重合性化合物(1)」という場合がある)は、式(1−a)または式(1−b)で表される。

中心ベンゼン環を介して−(B−A−E−D−G−Qおよび−(B−A−E−D−G−Qはできるだけ直線性を示した方が、分子配向が容易となるため、−(B−A−E−D−G−Qに対する、−(B−A−E−D−G−Qのベンゼン環への置換位置は、パラ位またはメタ位である。
【0024】
中でも重合性化合物(1)は、式(1−a−1)または式(1−b−1)で表されることが好ましい。

中心ベンゼン環を介して−(B−A−E−D−G−Qおよび−(B−A−E−D−G−Qはできるだけ直線性を示した方が、分子配向が容易となるため、−(B−A−E−D−G−Qに対する、−(B−A−E−D−G−Qのベンゼン環への置換位置は、パラ位であることが好ましい。
【0025】
式(1−a)および式(1−b)中、XおよびXは、それぞれ独立に、−CH=CH−、−CH=C(CH)−、−C(CH)=CH−、−C(CH)=C(CH)−、−CH=N−、−N=CH−、−N=C(CH)−または−C(CH)=N−を表す。
これらのXおよびXは、対応するアルデヒドとベンジルトリフェニルホスフィンブロミド(またはクロリド)とのウイッティヒ反応、または対応するアルデヒド(またはケトン)とアミンとのシッフ塩基形成反応により容易に製造できる。
また原料の入手が比較的容易という点から、XおよびXは、それぞれ独立に、−CH=CH−、−CH=N−または−N=CH−であることが好ましい。
【0026】
およびYは、それぞれ独立に、6〜18員環の芳香族炭化水素基または5〜18員環の芳香族複素環基を表す。
該芳香族炭化水素基および芳香族複素環基は、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を分子内に有し、これらは単環であっても縮合環であってもよい。YおよびYとしては、下記式に表される基などが挙げられる。
【0027】

【0028】
また該芳香族炭化水素基および該芳香族複素環基に含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基またはハロゲン原子に置換されていてもよい。
置換基の具体例としては、たとえばメチル基、エチル基、i−プロピル基またはt−ブチル基などの炭素数1〜4程度のアルキル基;メトキシ基またはエトキシ基などの炭素数1〜4程度のアルコキシ基;トリフルオロメチル基;トリフルオロメチルオキシ基;ニトリル基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子または臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
さらにYおよびYとしては、下記式に挙げる基が例示される。
【0029】

【0030】
、B、GおよびGは、それぞれ独立に、−CR−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CR=N−、−N=CR−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−NR−、−CHO−、−CFO−、−SCH−、−CHS−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−または単結合を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
またBおよびB、ならびにGおよびGは、同じ種類の基であると、製造が容易なことから好ましい。
、B、GおよびGとしては、中でも重合性化合物(1)の製造の容易さの観点から、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−CR=N−または−N=CR−であることが好ましい。これらによれば液晶性がさらに向上するため、分子配向がさらに容易となる。
【0031】
およびAは、それぞれ独立に、6〜18員環の芳香族炭化水素基、5〜18員環の脂環式炭化水素基または5〜18員環の複素環基を表す。
およびAとしては、下記式で表される2価の芳香族炭化水素基、

【0032】
下記式で表される2価の脂環式炭化水素基、

【0033】
下記式で示される2価の複素環基等が挙げられる。

該芳香族炭化水素基、該脂環式炭化水素基および該複素環基に含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基またはハロゲン原子に置換されていてもよい。
置換基の具体例としては、たとえばメチル基、エチル基、i−プロピル基またはt−ブチル基などの炭素数1〜4程度のアルキル基;メトキシ基またはエトキシ基などの炭素数1〜4程度のアルコキシ基;トリフルオロメチル基;トリフルオロメチルオキシ基;ニトリル基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子または臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
【0034】
中でも、AおよびAが同種類の基であると、製造が容易であることから好ましい。特にAおよびAとしては、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基または3−メチル−1,4フェニレン基が製造容易なことから好ましい。
【0035】
mおよびnは、それぞれ独立に、1〜3で表される整数である。得られる重合性化合物(1)の配向性を良くするとの観点からmおよびnとしては、2または3が好ましい。
【0036】
およびEは、それぞれ独立に、−CR−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CR=N−、−N=CR−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−NR−、−CHO−、−CFO−、−SCH−、−CHS−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−、または単結合を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
およびDは、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキレン基を表し、DおよびDに含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよい。
【0037】
およびQは、水素原子または式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選ばれる基である。

式(Q−1)〜式(Q−5)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。
およびQの少なくとも一方が、式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選ばれる基であると、得られる光学フィルムの膜硬度が優れる傾向があることから好ましい。QおよびQがいずれも式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基であると、さらに好ましい。
−G−Qおよび−G−Qは、本発明の重合性化合物(1)を重合させることのできる置換基であり、具体的にはビニル基、p−スチルベン基、アクリロイル基、メタクロイル基、カルボキシル基、メチルカルボニル基、水酸基、アミド基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、アルデヒド基、イソシアネート基またはチオイソシアネート基などが例示される。
中でも光重合させる際の取り扱いが容易な上、製造も容易であることからアクリロイル基またはメタクロイル基が好ましく、特にアクリロイル基が好ましい。
本発明の光学フィルムにおいて、異なる複数の種類の重合性化合物(1)を用いてもよい。
【0038】
重合性化合物(1)の製造方法としては、上記ウイッティヒ反応、シッフ塩基生成反応の他に、中心ベンゼン環に、−(B−A−E−D−G−Qおよび−(B−A−E−D−G−Qの各構造単位を含む化合物を縮合反応、エステル化反応、ウイリアムソン反応、ウルマン反応、ベンジル化反応、薗頭反応、鈴木−宮浦反応、根岸反応、熊田反応、檜山反応、ブッフバルト−ハートウィッグ反応、フリーデルクラフト反応、ヘック反応またはアルドール反応などで結合することにより製造することができる。その合成方法としては、たとえば、フーベン・ヴァイル(Houben Wyle, Methoden der Organischen Chemie, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、オーガニック・シンセセーズ(Organic Syntheses, John Wily & Sons Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載された有機化学における合成方法を適切に組み合わせることにより、合成する事ができる。
−Yを有するジヒドロキシ化合物とHOOC−A−(B−Am−1−E−D−G−Qとの縮合反応により重合性化合物(1)を合成することができる。縮合反応には、たとえば、DCCなどのエステル化剤を用いる方法や、HOOC−A−(B−Am−1−E−D−G−Qを酸クロリド化またはメシチル化した後に、ジヒドロキシ化合物と縮合反応する方法などがある。

【0039】
本発明の重合性化合物(1)は、Δnが大きく、かつ、汎用有機溶媒に易溶で塗工性が良好であり、アンチリフレクション(AR)フィルムなどの反射防止フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、視野角拡大フィルムなど、優れた光学特性を有する光学フィルムを簡便な方法で与える。また本発明の光学フィルムは液晶表示装置(LCD)や有機エレクトロルミネッセンス(EL)などのフラットパネル表示装置(FPD)に用いることができる。
【0040】
本発明の組成物は、重合性化合物(1)と、重合性化合物(1)とは異なる化合物であって液晶性を示す重合性化合物(以下「液晶化合物(2)」という場合がある)とを含有する。液晶化合物(2)を含有すると、組成物を重合させて得られる光学フィルムの配向性が増加し、位相差値が増加する傾向があることから好ましい。
【0041】
液晶化合物(2)の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の3章 分子構造と液晶性の、3.2 ノンキラル棒状液晶分子、3.3 キラル棒状液晶分子に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物が挙げられる。
液晶化合物(2)として、異なる複数の種類の液晶化合物(2)を併用してもよい。
【0042】
液晶化合物(2)としては、たとえば式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)または式(V)で表される化合物などが挙げられる。
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-A14-B15-A15-B16-E12-P12 (I)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-A14-B15-E12-P12 (II)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-E12-P12 (III)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-F11 (IV)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-F11 (V)
式(I)〜式(V)中、A11、A12、A13、A14、およびA15は、それぞれ独立に、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、複素環基、フルオレニル基またはチオフェニレン基を表す。A11〜A15には、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、ニトリル基、フェニル基、ジメチルアミノ基またはハロゲン原子が結合していてもよい。
B11、B12、B13、B14、B15およびB16は、それぞれ独立に、−CR1011−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−C(=O)−NR10−、−NR10−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−NR10−、−CHO−、−CFO−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−または単結合を表す。R10およびR11は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R10およびR11が連結した炭素数4〜7のアルキレン基であってもよい。
E11およびE12は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子に置換されていてもよい。
P11およびP12は、それぞれ独立に、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基またはビニルオキシ基などの重合性基を表す。
F11は、水素原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、ニトリル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノ基またはハロゲン原子を表す。
【0043】
液晶化合物(2)の具体例としては、たとえば以下の式(I−1)〜(I−5)、(II−1)〜(I−6)、(III−1)〜(III−19)、(IV−1)〜(IV−14)、(V−1)〜(V−5)で表される化合物などが挙げられる。ただし式中kは、それぞれ独立に、1〜11で表される整数を表す。

【0044】

【0045】

【0046】

【0047】

【0048】
本発明の光学フィルムは、重合性化合物(1)に由来する構造単位を含有する。重合性化合物(1)に由来する構造単位のみを含有していてもよいが、液晶化合物(2)に由来する構造単位をさらに含有してもよい。液晶化合物(2)に由来する構造単位を含むと配向性が増加し、位相差値が増加する傾向があることから好ましい。
この際、重合性化合物(1)と液晶化合物(2)とが共重合するように、重合性化合物(1)に含まれる−G−Qまたは−G−Qの重合性基と、液晶化合物(2)の重合性基とは互いに反応し得る重合性基であり、特に互いにアクリロイル基であると、容易に光重合させることができることから好ましい。
また光学フィルムに含まれる重合性化合物(1)に由来する構造単位の含有量と液晶化合物(2)に由来する構造単位の含有量とを変えることにより、得られる光学フィルムのΔnをコントロールすることができる。すなわちΔnの小さな液晶化合物(2)であっても、重合性化合物(1)を添加することにより、得られる光学フィルムのΔnを大きくすることができる。
これらの液晶化合物であれば、合成が容易であり、市販されているなど、入手が容易であることから好ましい。
【0049】
<光学フィルムの製造方法>
本発明の重合性化合物(1)に由来する構造単位および液晶化合物(2)に由来する構造単位を含有する光学フィルムの製造方法について、以下説明する。
本発明の光学フィルムとは、光を透過し得るフィルムであって、光学的な機能を有するフィルムをいう。光学的な機能とは、屈折、複屈折などを意味する。光学フィルムの一種である位相差フィルムは、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、逆に円偏光または楕円偏光を直線偏光に変換したりするために用いられる。
【0050】
[混合溶液調整工程]
まず重合性化合物(1)、液晶化合物(2)および有機溶媒に、必要に応じて、重合開始剤、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤または架橋剤などの添加剤を加えて、混合溶液を調製する。とりわけ有機溶媒は、成膜時に含んでいる方が、成膜が容易となることから好ましく、重合開始剤は、得られた光学フィルムを硬化する働きをもつことから好ましい。
【0051】
〔重合開始剤〕
本発明の光学フィルムを調製する際には、一般に重合性化合物(1)および液晶化合物(2)を重合させるための重合開始剤が使用される。本発明の光学フィルムの製造方法の好ましい一実施形態として、重合性化合物(1)および液晶化合物(2)を光重合させる方法が挙げられる。そのため重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、たとえばベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、ヨードニウム塩またはスルホニウム塩等が挙げられ、より具体的にはイルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学株式会社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬株式会社製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152またはアデカオプトマーSP−170(以上、全て旭電化工業株式会社)などを挙げることができる。
また重合開始剤の使用量は、たとえば重合性化合物(1)および液晶化合物(2)の合計100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、液晶化合物(2)の配向性を乱すことなく、重合性化合物(1)を重合させることができる。
【0052】
〔重合禁止剤〕
本発明の光学フィルムを調製する際に、重合禁止剤を使用してもよい。重合禁止剤としては、たとえばハイドロキノンまたはアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類、ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類、ピロガロール類、2,2、6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類、およびβ−ナフトール類等を挙げることができる。
重合禁止剤を用いることにより、重合性化合物(1)および液晶化合物(2)の重合を制御することができ、得られる光学フィルムの安定性を向上させることができる。また重合禁止剤の使用量は、たとえば重合性化合物(1)および液晶化合物(2)の合計100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、液晶化合物(2)の配向性を乱すことなく、重合性化合物(1)を重合させることができる。
【0053】
〔光増感剤〕
また本発明の光学フィルムを調製する際に、光増感剤を使用してもよい。光増感剤としては、たとえばキサントンまたはチオキサントン等のキサントン類、アントラセンまたはアルキルエーテルなどの置換基を有するアントラセン類、フェノチアジンあるいはルブレンを挙げることができる。
光増感剤を用いることにより、重合性化合物(1)および液晶化合物(2)の重合を高感度化することができる。また光増感剤の使用量としては、重合性化合物(1)および液晶化合物(2)の合計100重量部に対して、たとえば0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、液晶化合物(2)の配向性を乱すことなく、重合性化合物(1)を重合させることができる。
【0054】
〔レベリング剤〕
さらに本発明の光学フィルムを調製する際に、レベリング剤を使用してもよい。レベリング剤としては、シリコーン系、フッ素系、ポリエーテル系、アクリル酸共重合物系またはチタネート系等の種々の化合物を用いることができ、たとえば放射線硬化塗料用添加剤(ビックケミージャパン製:BYK−352,BYK−353,BYK−361N)、塗料添加剤(東レ・ダウコーニング株式会社製:SH28PA、DC11PA、ST80PA)、または塗料添加剤(信越化学工業株式会社製:KP321、KP323、X22−161A、KF6001)などを挙げることができる。
レベリング剤を用いることにより、光学フィルムを平滑化することができる。さらに光学フィルムの製造過程で、重合性化合物(1)を含有する混合溶液の流動性を制御したり、重合性化合物(1)および液晶化合物(2)を重合して得られる光学フィルムの架橋密度を調整することができる。またレベリング剤の使用量の具体的な数値は、たとえば重合性化合物(1)および液晶化合物(2)の合計100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。上記範囲内であれば、液晶化合物(2)の配向性を乱すことなく、重合性化合物(1)を重合させることができる。
【0055】
〔有機溶媒〕
重合性化合物(1)および液晶化合物(2)などを含有する混合溶液の調製に用いる有機溶媒としては、重合性化合物(1)および液晶化合物(2)などを溶解し得る有機溶媒であり、具体的にはメタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールまたはメチルセロソルブまたはブチルセロソルブなどのアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ガンマーブチロラクトンまたはプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトンまたはN−メチル−2−ピロリドンなどのケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサンまたはヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、メトキシベンゼンまたは1,2−ジメトキシベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンまたはジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、フェノール、アセトニトリル、ブチロニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミド、乳酸エチルあるいはクロロホルムなどが挙げられる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。中でも本発明の組成物は相溶性に優れ、アルコール、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、非塩素系脂肪族炭化水素溶媒および非塩素系芳香族炭化水素溶媒などにも溶解し得ることから、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素を用いなくとも、溶解して塗工させることができる。
【0056】
重合性化合物(1)および液晶化合物(2)を含有する混合溶液の粘度は、塗布しやすいように、たとえば10Pa・s以下、好ましくは0.1〜7Pa・s程度に調整される。
また上記混合溶液における固形分の濃度は、たとえば5〜50重量%である。固形分の濃度が5%以上であると、光学フィルムが薄くなりすぎず、液晶パネルの光学補償に必要な光学異方性が与えられる傾向がある。また50%以下であると、上記混合溶液の粘度が低いことから、光学フィルムの膜厚にムラが生じにくくなる傾向があることから好ましい。
【0057】
[配向膜形成工程]
支持基材は、該支持基材上に配向膜を形成できるものであればよい。たとえばガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルムまたは透光性フィルムを挙げることができる。なお上記透光性フィルムとしては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマーなどのポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムまたはポリフェニレンオキシドフィルムなどが挙げられる。
一般に重合性化合物(1)および液晶化合物(2)から得られる光学フィルムは、薄膜であり、たとえば本発明のフィルムを用いる貼合工程、フィルムを運搬、保管などを実施する工程など、フィルムの強度が必要な工程でも、支持基材を用いることにより、破れなどなく容易に取り扱うことができる。
【0058】
本発明の光学フィルムの製造方法では、好ましくは支持基材上に配向膜を形成させた後、混合溶液を塗工する。配向膜は、重合性化合物(1)などを含有する混合溶液の塗工等により溶解しない溶剤耐性を持つこと、溶媒の除去や液晶の配向の加熱処理による耐熱性をもつこと、ラビングによる摩擦などによる剥がれなどが起きないこと等が必要であり、ポリマー、またはポリマーを含有する組成物である。
上記ポリマーとしては、たとえば分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミドおよびその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸またはポリアクリル酸エステル類等のポリマーを挙げることができる。これらのポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上混ぜて用いてもよいし、共重合して用いてもよい。これらのポリマーは、脱水や脱アミンなどによる重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合や開環重合等で容易に得ることができる。
【0059】
またこれらの配向膜材料は、溶媒に溶解して、塗布することができる。溶媒は、特に制限はないが、具体的には、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブまたはブチルセロソルブなどのアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ガンマーブチロラクトンまたはプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトンまたはメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサンまたはヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレンまたはクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、乳酸エチルあるいはクロロホルムなどが挙げられる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
配向膜として、市販の配向膜をそのまま使用してもよい。市販の配向膜としては、感光性ポリイミドに偏光UV処理を施したものとして、サンエバー(登録商標、日産化学工業株式会社製)またはオプトマー(登録商標、JSR株式会社製)などが挙げられ、変性ポリビニルアルコールとして、ポバール(登録商標、株式会社クラレ製)などが挙げられる。
このような配向膜を用いれば、延伸による屈折率制御を行う必要がないため、複屈折の面内ばらつきが小さくなる。それゆえ支持基材上にFPDの大型化にも対応可能な大きな光学フィルムを提供できるという効果を奏する。
【0061】
上記支持基材上に配向膜を形成する方法としては、たとえば上記支持基材上に、配向膜の材料を塗布し、その後アニールすることにより、上記支持基材上に配向膜を形成することができる。
支持基材への塗布方法としては、たとえば押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法またはダイコーティング法などが挙げられる。またディップコーター、バーコーターまたはスピンコーターなどのコーターを用いて塗布する方法などが挙げられる。
【0062】
このようにして得られる配向膜の厚さは、たとえば10nm〜10000nmであり、好ましくは10nm〜1000nmである。上記範囲とすれば、重合性化合物(1)および液晶化合物等を当該配向膜上で所望の角度に配向させることができる。
またこれら配向膜は、必要に応じてラビングもしくは偏光UV照射を行なうことができる。これらにより重合性化合物(1)および液晶化合物(2)等を所望の方向に配向させることができる。
配向膜をラビングする方法としては、たとえばラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールを、ステージに載せられ、搬送されている配向膜に接触させる方法を用いることができる。
【0063】
[未重合フィルム調製工程]
支持基材の上に配向膜が形成されていれば、重合性化合物(1)および液晶化合物(2)を含有する混合溶液を配向膜上に塗工し、乾燥すると、未重合フィルムが得られる。この未重合フィルムにネマチック相などの液晶相を示した場合、モノドメイン配向による複屈折性を有する。この未重合フィルムは0〜120℃程度、好ましくは25〜80℃の低温で配向することから、配向膜として上記に例示したような耐熱性に関して必ずしも十分ではない支持基材を用いることができ、配向後、さらに30〜10℃程度に冷却しても結晶化することがない。
配向膜上への塗布方法としては、たとえば押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法またはダイコーティング法などが挙げられる。またディップコーター、バーコーターまたはスピンコーターなどのコーターを用いて塗布する方法などが挙げられる。
【0064】
[未重合フィルム乾燥工程]
光重合の場合には、成膜性を向上させるために、光重合前に溶媒を乾燥させて、未重合フィルムを得ることが好ましい。また熱重合の場合には、乾燥とともに重合を進行させてもよいが、重合前に溶媒を乾燥させて、未重合フィルムを得る方法が、成膜性に優れる傾向があることから好ましい。
溶媒の乾燥方法としては、たとえば自然乾燥、通風乾燥または減圧乾燥などの方法が挙げられる。具体的な加熱温度としては、10〜120℃であることが好ましく、25〜80℃であることがさらに好ましい。また加熱時間としては、10秒間〜60分間であることが好ましく、30秒間〜30分間であることがより好ましい。加熱温度および加熱時間が、上記範囲内であれば、上記支持基材として、耐熱性が必ずしも十分ではない支持基材を用いることができる。
【0065】
[未重合フィルム重合工程]
未重合フィルム重合工程では、上記未重合フィルム調製工程で得られた未重合フィルムを重合し、硬化させる。これにより重合性化合物(1)および液晶化合物(2)の配向性が固定化されたフィルム、すなわち重合フィルムとなる。したがってフィルムの平面方向に屈折率変化が小さく、フィルムの法線方向に屈折率変化が大きい重合フィルムを製造することができる。
未重合フィルムを重合させる方法は、重合性化合物(1)および液晶化合物(2)に含まれる重合性基が光重合性であれば、可視光、紫外光またはレーザー光などの光を照射して硬化させ、該重合性基が熱重合性であれば、加熱によって重合させる。本発明では、特に光重合により未重合フィルムを重合させることが好ましい。これによれば低温で未重合フィルムを重合させることができるので、支持基材の耐熱性の選択幅が広がる。また工業的にも製造が容易となる。取り扱い性の観点から、紫外光による重合が特に好ましい。
かくして得られた光学フィルムは、液晶ポリマーを用いることなく製造することができる。
【0066】
未重合フィルム重合工程において、重合性化合物(1)および液晶化合物を光重合により架橋することができる。それゆえ、熱による複屈折の変化の影響を受けにくいという効果を奏する。
また得られる光学フィルムに、界面活性剤などの表面処理剤を用いなくてよい。つまり本発明の光学フィルムに用いる配向膜は、支持基材と配向膜との密着性および配向膜と光学フィルムとの密着性が良好であるから、光学フィルムの製造が容易である。
さらに本発明の光学フィルムは、延伸フィルムで同等の位相差値を有するフィルムと比較して、薄膜である。
【0067】
本発明の光学フィルムの製造方法において、上記工程に続いて支持基材を剥離する工程を含んでいてもよい。このような構成とすることにより、得られるフィルムは、配向膜と光学異方性層とからなるフィルムとなる。また上記支持基材を剥離する工程に加えて、配向膜を剥離する工程をさらに含んでいてもよい。このような構成とすることにより、得られるフィルムは、光学異方性層のみからなるフィルムとなる。
【0068】
なお混合溶液の塗布液の量や塗布液の濃度を適宜調整することにより、所望の位相差を与えるように膜厚を調製することができる。重合性化合物(1)が一定である混合溶液の場合、得られる光学フィルムの位相差値(リタデーション値、Re(λ))は、式(3)のように決定されることから、所望のRe(λ)を得るためには、膜厚dを調整すればよい。
Re(λ)=d×Δn(λ) (3)
(式(3)中、Re(λ)は、波長λnmにおける位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける屈折率異方性を表す。)
【0069】
かくして得られた光学フィルムは、透明性に優れ、様々なディスプレイ用フィルムとして使用される。形成される層の厚みは、上記のとおり、得られるフィルムの位相差値によって、異なるものである。本発明では、上記厚みは、0.1〜10μmであることが好ましく、光弾性を小さくする点で0.5〜3μmであることがさらに好ましい。
上記の通り、未重合フィルム調製工程では、任意の支持基材の上に積層した配向膜上に未重合フィルム(液晶層)を積層する。それゆえ液晶セルを作製し、当該液晶セルに液晶化合物を注入する方法に比べて、生産コストを低減することができる。さらにロールフィルムでのフィルムの生産が可能である。
配向膜を用いて複屈折性を有する場合には、たとえば位相差値としては、50〜500nm程度であり、好ましくは100〜300nmである。
このような薄膜でかつ逆波長分散特性を示す光学フィルムは、すべての液晶パネルや有機ELなどのFPDにおいて、光学補償フィルムとして用いることができる。
【0070】
本発明の光学フィルムを広帯域λ/4板またはλ/2板として使用するためには、重合性化合物(1)に由来する構造単位の含有量を適宜選択することにより、式(3)に従い、位相差値が、λ/4板の場合には、得られる光学フィルムのRe(550)を113〜163nm、好ましくは135〜140nm、特に好ましくは約137.5nm程度に膜厚を調整すればよく、λ/2板の場合には得られる光学フィルムのRe(550)を250〜300nm、好ましくは273〜277nm、特に好ましくは約275nm程度となるように、膜厚を調整すればよい。
【0071】
本発明の光学フィルムをVA(Vertical Alingment)モード用光学フィルムとして使用するためには、重合性化合物(1)に由来する構造単位の含有量を適宜選択することにより、式(3)に従い、得られる光学フィルムの位相差値が、Re(550)を好ましくは40〜100nm、より好ましくは60〜80nm程度となるように膜厚を調整すればよい。
【0072】
本発明の光学フィルムは、優れた光学特性を有する光学フィルムと広く用いることができる。上記光学フィルムとしては、アンチリフレクション(AR)フィルムなどの反射防止フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、視野角拡大フィルム、または透過型液晶ディスプレイの視野角補償用光学補償フィルムなどを挙げることができる。また発明の光学フィルムは1枚でも優れた光学特性を示すが、複数枚を積層させてもよい。
また他のフィルムと組み合わせてもよい。具体的には偏光フィルムに本発明の光学フィルムを貼合させた楕円偏光板、該楕円偏光板にさらに本発明の光学フィルムを広帯域λ/4板として貼合させた広帯域円偏光板などが挙げられる。
さらに本発明にかかるフィルムは、反射型液晶ディスプレイおよび有機ELディスプレイの位相差板ならびに当該位相差板や上記光学フィルムを備えるFPDにも利用することができる。上記FPDは、特に限定されるものではなく、たとえば液晶表示装置(LCD)や有機ELを挙げることができる。
【0073】
このように本発明に係るフィルムは、広範囲な用途が考えられる。たとえばこのうち本発明に係る光学フィルムおよび偏光フィルムを積層してなる偏光板ならびに該偏光板を備えるフラットパネル表示装置について、以下説明する
本発明に係る偏光板は、偏光機能を有するフィルム、すなわち偏光フィルムの片面もしくは両面に直接、または接着剤もしくは粘着剤を用いて前記光学フィルムを張り合わせることにより得られるものである。なお以下の図1〜図3の説明では、接着剤および粘着剤を総称して接着剤と呼ぶ場合がある。
【0074】
図1(a)〜図1(e)は、本発明に係る偏光板1を示す概略図である。
図1(a)に示す偏光板1aは、光学フィルム2と、偏光フィルム3とが直接貼り合わされており、光学フィルム1aは、支持基材4、配向膜5および光学異方性層6からなる。光学フィルム1aは、支持基材4、配向膜5、光学異方性層6、偏光フィルム3の順に積層されている。
図1(b)に示す偏光板1bは、光学フィルム2と偏光フィルム3とが、接着剤層7を介して貼り合わされている。
図1(c)に示す偏光板1cは、光学フィルム2と光学フィルム2’とが直接貼り合わされ、さらに光学フィルム2’と偏光フィルム3とが直接貼り合わされている。
図1(d)に示す偏光板1dは、光学フィルム2と光学フィルム2’とが接着剤層7を介して貼り合わされ、さらに光学フィルム2’上に偏光フィルム3が直接貼り合わされている。
図1(e)に示す偏光板1eは、光学フィルム2と光学フィルム2’とを接着剤層7を介して貼り合わせ、さらに光学フィルム2’と偏光フィルム3とを接着剤層7’を介して貼り合せた構成を示す。
【0075】
本発明の偏光板とは、偏光フィルムおよび本発明の光学フィルムを張り合わせたものである。光学フィルム2および光学フィルム2’の代わりに、光学フィルム2から支持基材4および配向膜5を剥離した、重合性化合物(1)に由来する構造単位を含有する光学異方性層6のみからなるフィルムを用いてもよいし、光学フィルム2から支持基材4を剥離した、配向膜5および光学異方性層6からなるフィルムを用いてもよい。
本発明の偏光板は、光学フィルムを複数積層してもよく、その複数の光学フィルムは、全て同一であっても、上述した異なるフィルムを組み合わせて用いてもよい。
【0076】
偏光フィルム3は、偏光機能を有するフィルムであればよく、たとえばポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルム、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸してヨウ素や二色性色素を吸着させたフィルムなどが挙げられる。
接着剤層7および接着剤層7’に用いられる接着剤は、透明性が高く耐熱性に優れた接着剤であることが好ましい。そのような接着剤としては、たとえばアクリル系、エポキシ系またはウレタン系接着剤などが用いられる。
【0077】
本発明のフラットパネル表示装置は、本発明の光学フィルムを備えるものであり、たとえば本発明の偏光フィルムと液晶パネルとが貼り合わされた貼合品を備える液晶表示装置や、本発明の偏光フィルムと、発光層とが貼り合わされた有機ELパネルを備える有機EL表示装置を挙げることができる。
本発明にかかるフラットパネル表示装置の実施形態として、液晶表示装置と、有機EL表示装置とについて、以下詳細に述べる。
【0078】
〔液晶表示装置〕
図2は、本発明に係る液晶表示装置の液晶パネル11と偏光板1との貼合品10を示す概略図である。
液晶表示装置としては、たとえば図2に示すような液晶パネル11と偏光板1との貼合品10を備える液晶表示装置などが挙げられる。貼合品10は、本発明の偏光板1と液晶パネル11とが、接着層12を介して貼り合わされてなるものである。図示しない電極を用いて、液晶パネル11に電圧を印加することにより、液晶分子が駆動し、光シャッター効果を奏する。
【0079】
〔有機EL表示装置〕
図3は、本発明に係る有機EL表示装置の有機ELパネル13を示す概略図である。
有機EL表示装置としては、図3に示す有機ELパネル13を備える有機EL表示装置などが挙げられる。有機ELパネル13は、本発明の偏光フィルム1と、発光層14とを、接着層15を介して貼り合わせてなるものである。
上記有機ELパネルにおいて、偏光フィルム4は、広帯域円偏光板として機能する。また上記発光層7は、導電性有機化合物からなる少なくとも1層の層である。
【実施例】
【0080】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」および「部」は、特記ない限り、重量%および重量部である。
<重合性化合物(1−1)の製造例>
重合性化合物(1−1)を以下のスキームで合成した。

【0081】
(4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)安息香酸エチル(PG−a)の合成例)
4−ヒドロキシ安息香酸エチル150g(0.90mol)、炭酸カリウム186g(1.35mol)、N,N−ジメチルアセトアミド750gを加え、80℃に昇温した。続いて6−ブロモヘキサノール244g(1.24mol)を滴下し、その後80℃で攪拌した。冷却後、酢酸エチルを加え、水洗、溶媒を留去することにより、(PG−a)を主成分とする白色固体312gを得た。
【0082】
(4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)安息香酸(PG−b)の合成例)
前項で得られた(PG−a)を主成分とする白色固体312gをメタノールに溶解させた。次いで水酸化カリウムを含有するメタノール溶液(水酸化カリウム328g(5.85mol))を滴下し、約70℃で攪拌した。冷却後、塩酸を加え、析出した白色固体を水洗、濾別して、50℃減圧下、乾燥させることにより(PG−b)を主成分とする白色固体195g(0.82mol)を得た。収率は(PG−a)基準で91%であった。
【0083】
(4−(6−アクリルオキシヘキシルオキシ)安息香酸(PG−c)の合成例)
前項で得られた(PG−b)を主成分とする白色固体195g((PG−b)として0.82mol)とN,N−ジメチルアニリン208gを格納した容器内を窒素置換した後、1,4−ジオキサンで溶解させた。反応溶液を70℃に昇温し、アクリル酸クロリド148g(1.64mol)を滴下し、攪拌した。冷却後、酢酸エチルを加え、水洗、溶媒を留去させることにより、(PG−c)を主成分とする白色固体120g(0.41mol)を得た。収率は(PG−b)基準で50%であった。
【0084】
(4−ヒドロキシ安息香酸エトキシメチルエステル(PG−d)の合成例)
4−ヒドロキシ安息香酸166g(1.2mol)とトリエチルアミン121g(1.2mol)とクロロホルム1193gを容器内に入れ攪拌した。室温で、クロロメチルエチルエーテル113g(1.2mol)とクロロホルム298gの混合溶液を滴下し、さらに攪拌した。冷却後、反応溶液を水、塩酸水溶液、炭酸ナトリウム水溶液の順に洗浄し、溶媒を留去させることにより、(PG−d)を主成分とする黄色液体を251g得た。
【0085】
(4−(4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)ベンジルオキシ)安息香酸(PG−e)の合成例)
前項で得られた(PG−d)を主成分とする黄色液体124gに、(PG−c)の白色固体147g(0.50mol)、4−ジメチルアミノピリジン7.7g(63mmol)、クロロホルム824gを加えた。続いてN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)123g(0.60mol)をクロロホルム165gに溶解させ、滴下し、攪拌した。その後、濾過して固形物を取り除いて得られた有機層を、塩酸で洗浄、溶媒を留去し、237gの淡黄色液体を得た。
得られた液体にエタノール474gとパラトルエンスルホン酸ピリジニウム塩12.7g(50mmol)を加え、60℃で3時間攪拌した。その反応溶液を室温まで冷却して、得られた結晶を濾過して、固形物をエタノールで洗浄した後、乾燥すると、(PG−e)が180g得られた。収率は(PG−c)基準で86%であった。
【0086】
((T−01)の合成例)
容器に、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド7.8g(56.5mmol)、ベンジルトリフェニルホスフィンブロミド24.5g(56.5mmol)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン8.9g(58.4mmol)およびアセトニトリル83gを混合し、還流攪拌した。冷却後、溶媒を留去し得られた固体をクロロホルムに溶解し、水、塩酸水溶液の順に洗浄し、溶媒を留去し、シリカカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、(T−01)3.9gを得た。収率は2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド基準で32%であった。
【0087】
(重合性化合物(1−1)の合成例)
容器に、(T−01)を1.91g(9.0mmol)、4−(4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)ベンジルオキシ)安息香酸(PG−e)7.79g(18.9mmol、)4−ジメチルアミノピリジン0.23g(1.9mmol)およびクロロホルム249gを混合し、続いてN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)5.85g(28.4mmol)をクロロホルム62gに溶解させ、氷冷下で滴下し、室温で攪拌した。析出した固体を濾別後、塩酸で洗浄し、溶媒を留去し、メタノールを添加して、固形物を取得した。取得した固形物を、メタノールで洗浄して、白色固体である重合性化合物(1−1)7.54gを得た。収率は(T−01)基準で85%であった。
重合性化合物(1−1)は、118℃で結晶相からネマチック液晶相への転移を示し、268℃で熱重合した。
【0088】
<重合性化合物(1−2)の製造例>
重合性化合物(1−2)を以下のスキームで合成した。

【0089】
((T−02)の合成例)
2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド4.0g(29.0mmol)をエタノール20gに溶解した溶液と、4−アミノベンゾニトリル3.42g(29.0mmol)をエタノール27gに溶解した溶液とを混合し、攪拌した。析出してきた沈殿を濾過し、エタノールで洗浄し、橙色固体である(T−02)5.9gを得た。収率は2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド基準で58%であった。
【0090】
(重合性化合物(1−2)の合成例)
容器に、(T−02)を3.10g(13.0mmol)、4−(4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)ベンジルオキシ)安息香酸(PG−e)11.3g(27.3mmol、)、4−ジメチルアミノピリジン0.33g(2.73mmol)およびクロロホルム360gを混合し、続いてN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)5.63g(27.3mmol)をクロロホルム90gに溶解させ、氷冷下で滴下し、室温で26時間攪拌した。析出した固体を濾別した後、クロロホルム溶液にトリエチルアミンを加え、溶媒を1/3ほどの量まで留去した。この溶液にトリエチルアミンを含むメタノールを添加し、固形物を取得した。取得した固形物は、トリエチルアミンを含むメタノール、ついでヘキサンで洗浄した。白色固体である重合性化合物(1−2)8.24gを得た。収率は(T−02)基準で62%であった。
重合性化合物(1−2)は、135℃で結晶相からネマチック液晶相への転移を示し、250℃で熱重合した。
【0091】
(実施例1)
<光学フィルムの製造例>
ガラス基板にポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2%水溶液を塗布したのち、加熱乾燥後、膜を得た。続いて表面にラビング処理を施したのち、ラビング処理を施した面に、表1の組成の塗布液(混合溶液)をスピンコート法により塗布した。続いて110℃ホットプレート上で加熱しながら1200mJ/cmの紫外線を照射して、膜厚0.940μmの光学フィルムを作製した。
表1中、光重合開始剤は、イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、レベリング剤には、BYK361N(ビックケミージャパン社製)、溶媒はシクロペンタノンを用いた。また溶媒以外の表中の%は、塗布液を100%とした固形分の%を意味する。
【0092】
【表1】

光重合性開始剤:イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)
溶媒:シクロペンタノン
【0093】
<光学特性の測定>
作製した光学フィルムについて、測定波長550nmにおける正面位相差値Re(550)およびチルト角を、測定機(KOBRA−WR、王子計測機器株式会社製)を用いて測定した。また光学フィルムの重合性化合物に由来する膜厚をレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて測定した。以上の測定を行ったところ、正面位相差値は169.2nm、チルト角は5.5度、Δnは0.180であることがわかった。結果を表2に示す。
【0094】
(実施例2)
表1の塗布液を用い、130℃で加熱しながら2400mJ/cmの紫外線を照射した以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを製造し、膜厚0.802μmの光学フィルムを作製した。得られた光学フィルムについて正面位相差値およびチルト角を測定機(KOBRA−WR、王子計測機器株式会社製)を用いて測定したところ、正面位相差値は151.6nm、チルト角は8.2度、Δnは0.189であることがわかった。結果を表2に示す。
【0095】
(比較例1)
表1の塗布液を用い、実施例1と同様にして、光学フィルムを製造し、膜厚1.09μmの光学フィルムを作製した。得られた光学フィルムについて正面位相差値およびチルト角を測定機(KOBRA−WR、王子計測機器株式会社製)を用いて測定したところ、正面位相差値は156.0nm、チルト角は1.7度、Δnは0.143であることがわかった。結果を表2に示す。
【0096】
【表2】

【0097】
実施例1および実施例2の結果より、重合性化合物(1−1)および重合性化合物(1−2)は、汎用有機溶媒に易溶で塗工性が良好で、成膜した光学フィルムのΔnは大きい値となった。これに対して、比較例1の結果より、LC242は、塗布液の調製は可能であったが、Δnは小さい値となった。
【0098】
(実施例3)
<光学フィルムの製造例>
ガラス基板にポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2%水溶液を塗布したのち、加熱乾燥後、膜を得た。続いて表面にラビング処理を施したのち、ラビング処理を施した面に、表3の組成の塗布液(混合溶液)をスピンコート法により塗布した。続いて45℃ホットプレート上で1分間乾燥し、室温にて1分間空冷した後、1200mJ/cmの紫外線を照射して、膜厚0.79nmの光学フィルムを作製した。
表3中、LC242は、BASF社より入手した液晶化合物であり、光重合開始剤は、イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、レベリング剤には、BYK361N(ビックケミージャパン社製)、溶媒はシクロペンタノンを用いた。また表3中、全ての例はLC242に対して同じモル比の化合物を加えており、溶媒以外の表中の%は、塗布液を100%とした固形分の%を意味する。
【0099】
【表3】

液晶化合物:LC242(BASF社製)
光重合性開始剤:イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)
溶媒:シクロペンタノン
【0100】
<光学特性の測定>
作製した光学フィルムの550nmにおける位相差値を測定機(KOBRA−WR、王子計測機器株式会社製)を用いて測定し、膜厚からΔnを算出した。結果を表4に示す。
【0101】
(実施例4)
表3の塗布液を用い、実施例1と同様にして、光学フィルムを作製し、膜厚0.81μmの光学フィルムを作製した。得られた光学フィルムについて、位相差値を測定機(KOBRA−WR、王子計測機器株式会社製)を用いて測定した。結果を表4に示す。
【0102】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の重合性化合物によれば、Δnが大きい光学フィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明に係る偏光板1を示す概略図である。
【図2】本発明に係る液晶表示装置の液晶パネル11と偏光板1との貼合品10を示す概略図である。
【図3】本発明に係る有機EL表示装置の有機ELパネル13を示す概略図である。
【符号の説明】
【0105】
1,1a,1b,1c,1d,1e 偏光板
2,2’ 光学フィルム
3 偏光フィルム
4,4’ 支持基材
5,5’ 配向膜
6,6’ 光学異方性層
7,7’,12,15 接着剤層
10 貼合品
11 液晶パネル
13 有機ELパネル
14 発光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1−a)または式(1−b)で表される重合性化合物。ただし、−(B−A−E−D−G−Qに対する、−(B−A−E−D−G−Qのベンゼン環への置換位置は、パラ位またはメタ位である。

[式(1−a)および式(1−b)中、XおよびXは、それぞれ独立に、−CH=CH−、−CH=C(CH)−、−C(CH)=CH−、−C(CH)=C(CH)−、−CH=N−、−N=CH−、−N=C(CH)−または−C(CH)=N−を表す。
およびYは、それぞれ独立に、6〜18員環の芳香族炭化水素基または5〜18員環の芳香族複素環基を表す。該芳香族炭化水素基および該芳香族複素環基に含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基またはハロゲン原子に置換されていてもよい。
、B、GおよびGは、それぞれ独立に、−CR−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CR=N−、−N=CR−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−NR−、−CHO−、−CFO−、−SCH−、−CHS−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−または単結合を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
およびAは、それぞれ独立に、6〜18員環の芳香族炭化水素基、5〜18員環の脂環式炭化水素基または5〜18員環の複素環基を表す。該芳香族炭化水素基、該脂環式炭化水素基および該複素環基に含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基またはハロゲン原子に置換されていてもよい。mおよびnは、それぞれ独立に、1〜3で表される整数を表す。
およびEは、それぞれ独立に、−CR−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CR=N−、−N=CR−、−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−NR−、−CHO−、−CFO−、−SCH−、−CHS−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−、または単結合を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
およびDは、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキレン基を表し、DおよびDに含まれる水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよい。
およびQは、水素原子または式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選ばれる基である。

(式(Q−1)〜式(Q−5)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)]
【請求項2】
式(1−a)または式(1−b)で表される重合性化合物が、式(1−a−1)または式(1−b−1)で表される化合物である請求項1記載の重合性化合物。

(A、A、B、B、E、E、D、D、G、G、Q、Q、X、X、Y、Y、mおよびnは、上記と同じ意味を表す。)
【請求項3】
およびXが、それぞれ独立に、−CH=CH−、−CH=N−または−N=CH−である請求項1または2記載の重合性化合物。
【請求項4】
およびQの少なくとも一方が、式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選ばれる基である請求項1〜3のいずれか記載の重合性化合物。
【請求項5】
−G−Qおよび−G−Qが、アクリロイル基またはメタクリロイル基である請求項1〜4のいずれか記載の重合性化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の重合性化合物と、該重合性化合物以外の液晶化合物(2)とを含む組成物。
【請求項7】
該重合性化合物以外の液晶化合物(2)が、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)または式(V)で表される化合物である請求項6記載の組成物。
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-A14-B15-A15-B16-E12-P12 (I)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-A14-B15-E12-P12 (II)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-E12-P12 (III)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-F11 (IV)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-F11 (V)
(式(I)〜式(V)中、A11、A12、A13、A14、およびA15は、それぞれ独立に、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、複素環基、フルオレニル基またはチオフェニレン基を表す。A11〜A15には、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、ニトリル基、フェニル基、ジメチルアミノ基またはハロゲン原子が結合していてもよい。)
B11、B12、B13、B14、B15およびB16は、それぞれ独立に、−CR1011−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−C(=O)−NR10−、−NR10−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−NR10−、−CHO−、−CFO−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−または単結合を表す。R10およびR11は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R10およびR11が連結した炭素数4〜7のアルキレン基であってもよい。
E11およびE12は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子に置換されていてもよい。
P11およびP12は、それぞれ独立に、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基またはビニルオキシ基を表す。
F11は、水素原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、ニトリル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノ基またはハロゲン原子を表す。)
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか記載の重合性化合物に由来する構造単位を含む光学フィルム。
【請求項9】
請求項6または7記載の組成物を重合してなる光学フィルム。
【請求項10】
請求項8または9記載の光学フィルムからなり、波長550nmにおける位相差値(Re(550))が113〜163nmであるλ/4板。
【請求項11】
請求項8または9記載の光学フィルムからなり、波長550nmにおける位相差値(Re(550))が250〜300nmであるλ/2板。
【請求項12】
請求項8または9記載の光学フィルムおよび偏光フィルムを含む偏光板。
【請求項13】
請求項12記載の偏光板と液晶パネルとを備える液晶表示装置。
【請求項14】
請求項12記載の偏光板を含む有機エレクトロルミネッセンスパネルを備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれか記載の重合性化合物を含む溶液を支持基材に塗布し、乾燥させる未重合フィルムの製造方法。
【請求項16】
請求項1〜5のいずれか記載の重合性化合物を含む溶液を、支持基材上に形成された配向膜上に塗布し、乾燥させる未重合フィルムの製造方法。
【請求項17】
請求項15または16記載の未重合フィルムの製造方法で得られた未重合フィルムを、重合により硬化させる光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−149754(P2009−149754A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328408(P2007−328408)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】