説明

野菜類の鮮度保持シート及びその製造方法

【課題】野菜類に対し効果的に鮮度低下を防止できる、柔軟でしっとり感のある野菜類の鮮度保持シート及びその製造方法の提供。
【解決手段】ペーパータオル、キッチンペーパーなどの吸水性、保水性に優れた繊維ウェブ5であって、天然繊維又は再生繊維のパルプを主原料とする、坪量10〜50g/m2、厚み0.1〜0.25mmでかつ表面に凹凸を有する繊維ウェブを支持体とし、トレハロースが前記支持体に担持されていることを特徴とする野菜類の鮮度保持シート及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜類の鮮度保持シート及びその製造方法に関し、より具体的には、凹凸を有する繊維ウェブにトレハロースを担持させてなる野菜類の鮮度保持シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水産物、畜産物、農産物、加工食料品等の食品は時間と共に腐敗、酸化が進み、鮮度が落ちる、とりわけ野菜類は、収穫後もその生体内で代謝が行われ、呼吸、蒸散作用により腐敗が進み易いという問題があった。
野菜類の鮮度保持手段としては、鮮度保持剤を直接野菜に接触させるなどの方法も知られているが、水により希釈する手間がかかるなどの問題もあり、また、鮮度保持剤は高価であり、経済性の点からも問題があった。また、一般家庭においては、新聞紙で包装したり、ラップフィルムを使用したりして、冷蔵庫で保存しているのが現状であり、新規な野菜類の鮮度保持材料の開発が望まれていた。
【0003】
食品組織の鮮度維持・保護性に効果があるものとして、トレハロースが知られている(非特許文献1:食品と開発、VOL.33 No.11[通巻489号〕)。
トレハロースを用いた鮮度保持方法の技術には、特開平9−252719号公報(特許文献1)、特開平6−227904号公報(特許文献2)、特開2000−4778号公報(特許文献3)などがある。
【0004】
特開平9−252719号公報には、0.8〜1.5質量%のエチルアルコール、0.1〜5質量%のトレハロース、及び0.005〜0.3質量%のビタミンC類を含有する水溶液に、適当な大きさに切断した野菜を接触せしめることを特徴とするカット野菜の鮮度保持方法が開示されている。
特開平6−227904号公報には、トレハロースを有効成分とする切花及び葉菜の鮮度保持剤、すなわち、トレハロースの含有量が0.001質量%乃至3質量%である鮮度保持剤が開示されている。
これら特開平9−252719号公報及び特開平6−227904号公報は、基本的には、対象野菜、切花に噴霧により適用するタイプのものである。
特開2000−4778号公報には、トレハロースを有効成分とする生鮮食料保存液であって、トレハロースの濃度が10〜2000mM/L、ガーリックから抽出されるエキスの濃度が0.001〜200g/Lである生鮮食料保存液に食料品を直接浸漬するタイプのものである。
【0005】
鮮度保持効果を持たせたシート状の食品包装材に関する先行技術には、特開平6−158500号公報(特許文献4)、特開平9−172952号公報(特許文献5)、特開平11−117193号公報(特許文献6)、特開2000−270764号公報)特許文献7)がある。
特開平6−158500号公報には、高吸水繊維を含有する不織布からなる鮮度保持シートが、特開平9−172952号公報には、不織布に銀ゼオライト分散液を塗布した鮮度保持シートが開示されている。
特開平11−117193号公報には、グレープフルーツ種子抽出物を紙に含有せしめた生鮮野菜鮮度保持シートが開示されているが、これは野菜の切り口に貼布することにより鮮度低下を防止するものである。
特開2000−270764号公報に記載の鮮度保持材は、高吸水性樹脂が不織布、織布、紙、多孔質体、ネット状物、フィルム、シートから選ばれる基材に付着一体化されてなる保水層と、軟質多孔質体、半硬質多孔質体、繊維状物積層体からなる群から選ばれる親水層とが積層されたものである。
【0006】
支持体にトレハロースを含有させることに関しては、特開2000−239454号公報(特許文献8)にフィルムに含有させることが、特開2003−20593号公報(特許文献9)に繊維ウェブに含有させることが開示されている。
特開2000−239454号公報には、ベースポリマーとしてのオレフィン系ポリマーと、トレハロース及び無機充填剤とを含有するポリオレフィン系組成物からフィルムを成形し、食品を包装又は収容してなる食品の鮮度保持方法が開示されている。
特開2003−20593号公報には、繊維ウェブに対し、例えばキシリトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール、ソルビトールのうち一種以上を含む、糖アルコールを含有させてなる繊維ウェブ製品が示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−252719号公報
【特許文献2】特開平6−227904号公報
【特許文献3】特開2000−4778号公報
【特許文献4】特開平06−158500号公報
【特許文献5】特開平09−172952号公報
【特許文献6】特開平11−117193号公報
【特許文献7】特開2000−270764号公報
【特許文献8】特開2000−239454号公報
【特許文献9】特開2003−20593号公報
【非特許文献1】食品と開発、VOL.33 No.11(通巻489号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、従来から知られていた、鮮度保持法に変わる、新規な、柔軟でしっとり感のある野菜類の鮮度保持シート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意検討した結果、トレハロースを有効成分とする鮮度保持剤を、可撓性の繊維ウェブに担持させたシートを用いることによって、効果的に野菜類の鮮度低下を防止できることを見出した。
即ち、ペーパータオル、キッチンペーパーなどの吸水性、保水性に優れた可撓性の繊維ウェブを支持体とし、吸水性、保水性を有するものの非吸湿性であるトレハロースとを組み合わせることにより、野菜の鮮度を保持するのに好適な環境を形成することを見出し、本発明に至った。
本発明は、基本的にはトレハロースを繊維ウェブに担持せしめてなる野菜類の鮮度保持シートに関する発明であり、以下の各発明を包含する。
【0010】
(1)天然繊維又は再生繊維のパルプを主原料とする繊維ウェブであって、坪量9〜50g/m、厚み0.1〜0.25mmでかつ表面に凹凸を有する繊維ウェブを支持体とし、トレハロースが前記支持体に担持されていることを特徴とする野菜類の鮮度保持シート。
【0011】
(2)支持体となる繊維ウェブが、クレープ紙であることを特徴とする(1)記載の野菜類の鮮度保持シート。
【0012】
(3)支持体となる繊維ウェブが、エンボス加工を施したものであることを特徴とする(1)記載の野菜類の鮮度保持シート。
【0013】
(4)支持体が、坪量4.5〜25g/mである繊維ウェブを少なくとも2枚積層したものであって、積層状態の坪量が9〜50g/mの繊維ウェブであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の野菜類の鮮度保持シート。
【0014】
(5)トレハロースが、支持体に対して0.1g/m〜1.0g/m担持されていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の野菜類の鮮度保持シート。
【0015】
(6)トレハロースが、繊維ウェブの積層に用いられるバインダーに含有されていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の野菜類の鮮度保持シート。
【0016】
(7)天然繊維又は再生繊維のパルプを主原料とする坪量9〜50g/m、厚み0.1〜0.25mmの繊維ウェブからなる支持体に、クレープ加工を施した後、トレハロースが配合された溶液を前記支持体に塗工することを特徴とする(1)記載の野菜類の鮮度保持シートの製造方法。
【0017】
(8)天然繊維又は再生繊維のパルプを主原料とする坪量9〜50g/m、厚み0.1〜0.25mmであり、トレハロースが配合された溶液が塗工された繊維ウェブに、エンボスロールを用いて表面に凹凸を形成することを特徴とする(1)記載の野菜類の鮮度保持シートの製造方法。
【0018】
(9)坪量が4.5〜25g/mである繊維ウェブを少なくとも2枚積層し、トレハロースを配合したポリビニルアルコール溶液をバインダーとして前記繊維ウェブの積層面に適用し、積層状態で坪量9〜50g/mの繊維ウェブからなる支持体を作成することを特徴とする(7)又は(8)に記載の野菜類の鮮度保持シートの製造方法。
【0019】
(10)バインダーが、ポリビニルアルコール100質量部に対してトレハロースを30〜50質量部配合した溶液であることを特徴とする(9)記載の野菜類の鮮度保持シートの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の野菜類の鮮度保持シートは、凹凸を有する包装材である繊維ウェブにトレハロースを担持させることによって、野菜類を包んだとき、凸部、すなわち野菜類に接触する箇所に存在するトレハロースの保水力により野菜類からゆるやかに水分を繊維ウェブ側に移動させることができる。また、トレハロースの非吸湿性により凹部の空間内は高湿度に保たれ野菜類からの水分の蒸散を抑えることができる。
【0021】
したがって、繊維ウェブとトレハロースの吸水性と保水性により、余分な水分を吸収することができるので菌の増加を抑え、かつ野菜が包まれた空間内を高湿度に保つことができるので、野菜類からの水分の蒸散を抑え野菜類の切断面の組織の硬化を防ぐことができ、優れた鮮度保持効果を有する包装材を提供することができる。
また、トレハロースは食品素材であるから、本発明の鮮度保持シートは安全面からも問題はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に本発明の実施形態に基づいて、本発明の野菜類の鮮度保持シート及びその製造方法に関して詳細に説明する。
【0023】
<トレハロースについて>
本発明において使用するトレハロースは、ブドウ糖2分子がα,α−1,1で結合した非還元性の糖質で、アミノ酸、たんぱく質との共存下で加熱しても褐変(メイラード反応)を起こさず、また澱粉の老化防止に効果があることが知られている。その効果は食品組織の鮮度維持効果であり、加工時の加熱、過熱、凍結、粉砕、加圧による変性、環境(温度、湿度など)変化による劣化、一般的な経時変化に対し、トレハロースには、元のままに保持、維持する作用があることが知られている。
【0024】
<繊維ウェブについて>
本発明において使用する繊維ウェブとしては、ふきん、タオルの代用品としてパルプ繊維を主原料として製造された、ペーパータオルやキッチンペーパーと称されるものが好適に用いられ、特に天然のパルプ繊維、再生繊維及びレーヨンの群から選ばれた1種又は2種以上の原料素材からなるものが好ましい。
繊維ウェブの坪量は、一枚当たりで4.5〜25g/mで、好ましくは一枚当たり5〜24g/mであり、2枚重ねでは9〜50g/mで、好ましくは2枚重ねで10〜48g/mである。その厚みは、0.1〜0.25mmが好ましい。
【0025】
本発明で支持体として好適に使用される繊維ウェブは、JIS S3104で規定されている坪量が、2枚重ねでは10〜50g/m、厚み(JIS P8118 試験条件:温度20±2℃、湿度65±2%による。但しハイブリッチ試験機で測定。)が、0.1〜0.25mm、密度が0.120〜0.300g/cm(JIS P8118 試験条件:温度20±2℃、湿度65±2%)、引張強さが、JIS S3104で規定されている乾燥時縦の条件で4.8N以上、乾燥時横の条件で1.9N以上、湿潤時縦の条件で1.3N以上であり、JIS S3104の滴下法吸水度で規定されている吸水度が8秒以下、JIS S3104で規定されている白色度が79%以上、クレープ率が18〜25%である。
クレープ率は
100×(ドライヤー周速度−巻取部周速度)/巻取部周速度
で表わされ、具体的な例を示すと、たとえば、ドライヤーパートの周速度を1600m/分、巻取部周速度を1314m/分とすれば、上記式より得られる繊維ウェブのクレープ率は、約22%となる。
【0026】
繊維ウェブの原料素材は、パルプ繊維(原料パルプ)としては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプ、などから選ばれる。具体的には、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、脱墨パルプ(DIP)、ウエストパルプ(WP)等の古紙パルプ、(TP)、木綿(コットン)、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから一種又は数種を適宜選択して使用することができる。好ましいパルプは安定供給、経済的観点、大量生産の面から、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)である。
【0027】
これらのパルプは、酸素、オゾン、過酸化水素を使用して漂白された、いわゆるTCFパルプであることが好ましく、場合によっては、二酸化塩素漂白を含めたECFパルプであってもよい。
【0028】
本発明における支持体である繊維ウェブは、表面に凹凸を有するものが用いられる。表面に凹凸を有する繊維ウェブとしては、クレープ加工あるいはエンポス加工によって得られたものが好ましい。
【0029】
エンボス加工に関しては、「最新紙加工便覧」、893−898頁に記載の、マチドスチール(レギュラー)法、ネステッド法及びピロー法といった公知の3種類のエンボス加工方法が適用されることは言うまでもない。
【0030】
<バインダーについて>
積層、エンボス加工工程で使用されるバインダー(結合剤)は通常は水溶性高分子化合物である。
水性高分子化合物の具体例としては、例えば完全(部分)ケン化ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、ジアセトン基変性ポリビニルアルコール、ケイ素変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉及びその誘導体、アルギン酸(塩)、キサンタンガム、ラムザンガム、ウェランガムカゼイン、ジイソブチレン・無水マレイン酸共重合体塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体塩、エチレン−アクリル酸共重合体塩、スチレン・アクリル酸共重合体塩等が挙げられる。なかでも、完全(部分)ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、ジアセトン基変性ポリビニルアルコール、ケイ素変性ポリビニルアルコール等ポリビニルアルコール類が好ましく、特に変性されていない完全(部分)ケン化ポリビニルアルコールが塗液のポットライフ性に優れ、好ましい。
【0031】
勿論、これらの水性高分子化合物は必要に応じて2種類以上を混合使用してもよく、さらに本発明の所望の効果を損なわない限りにおいて、スチレン・ブタジエン系ラテックス、アクリル系ラテックス、ポリエステルポリウレタン系ラテックス等の水分散性高分子化合物を塗液中に含有させて使用することもできる。
水性高分子化合物は衛生上の観点からはポリビニルアルコール(以下略してPVAと記載する場合がある。)が好適に使用される。その重合度は平均1400〜1800、ケン化度は99.5%が好適に使用される。繊維ウェブに塗布されるPVA溶液は通常0.8g/mである。この塗布量は目的とする製品の物性によって適宜決定されることは言うまでもない。
【0032】
PVA溶液に配合されるトレハロースは、PVA100質量部に対して30〜50質量部、好ましくは32〜48質量部、さらに好ましくは35〜45質量部である。ただし、保存するには攪拌機が必要となる。
【0033】
トレハロースが担持含有された繊維ウェブを野菜類の鮮度保持シートとして使用するに当たっては、繊維ウェブ(鮮度保持シート)で野菜類を包み込み、高湿度の空間が形成されるようにして、冷蔵庫内で保存する。その場合、鮮度保持シートは、表面に形成された凸部で部分的に野菜と接触しトレハロースの保水力によりゆるやかに水分を移動させることができる。また、トレハロースの非吸湿性により繊維ウェブ表面の凹部には高湿度の空間が形成され野菜類からの水分の蒸散を抑えることができる。
また、冷蔵庫の野菜室と称される、高湿度の環境下で保存すると、より高湿度に保つことができ、好ましい。
【実施例】
【0034】
本発明を下記実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例においては、質量を固形分質量で示す。
【0035】
図1に示す工程により、繊維ウェブを製造した。図1において、1はワイヤーパート、2はプレスパート、3はヤンキードライヤー、4はクレーピングドクター、5は繊維ウェブである。
原料パルプとして、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)及び針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を使用した。配合のパルプのカナダ標準ろ水度を620〜630mlCSFに叩解し、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン変性湿潤紙力増強剤(荒川化学工業株社製、商品名:アラフィックス255)を対パルプ0.15%内添し、ツインワイヤータイプの2層抄き合せ式のヤンキー抄紙機によりLBKPの層とNBKPの層と抄き合わせ、LBKPの層がヤンキードライヤーの鏡面に接するようにして乾燥して、坪量が20.5g/m2、LBKPとNBKPの使用比率が絶乾量で60部:40部の繊維ウェブを抄造した。得られた繊維ウェブをクレーピングドクター4によりドライヤー面から剥がし、巻取りリールに速度差を設けることにより、18%のドライクレープを付与し、ヤンキードライヤー3の鏡面に接したLBKPの層が外側になるように巻き取り、繊維ウェブ5とした。
【0036】
図2の工程により、繊維ウェブにトレハロースを塗工した。図2において、5,6が繊維ウェブ、7がトレハロース塗工用コーター、8が2枚重ねとなったトレハロース担持繊維ウェブである。
本実施例においては、坪量20.5g/mの繊維ウェブを使用した。
繊維ウェブ5、6を、NBKPの層同士が内側になるように2枚重ねにし、次いで、塗工用コーター7でトレハロース含有水溶液を塗工し、2枚重ねのトレハロース担持繊維ウェブ8を得た。
【0037】
塗工用トレハロース水溶液は、トレハロース(登録商標トレハ、林原社製)40質量%、水40質量%、バインダーとしてPVA(商品名JHL−121―52−D、日本フーラー社製)又は澱粉20%の塗工液を使用した。
【0038】
次いで、図3の工程により、トレハロース担持繊維ウェブ8にエンボス加工を施し、最終製品とした。9はスチールエンボスロールであり、エンボス加工後、折機・切断・箱詰工程10を経て、鮮度保持シートを得た。
得られた鮮度保持シートの坪量は41.9g/mであリ、トレハロースの担持含有量は0.7g/mであった。
【0039】
トレハロースの別の担持方法として、以下の方法も採用することができる。
図4において11はウェブA、12はウェブB、13は上部ニップロール、14は上部エンボスロール、15は下部エンボスロール、16は下部ニップロール、17はマリッジロール、18はファウンテンロール、19はトランスファーロール、20はアプリケーターロール、21はグルーパン、22はダンサーロールである。グルーパン21にはPVA(商品名JHL−121―52−D、日本フーラー社製)が供給されており、さらにグルーパン21中のPVA100質量部に対してトレハロース(登録商標トレハ、林原社製)が40質量部配合されている。ウェブA、ウェブBが上部エンボスロール14、と下部エンボスロール15のニップで積層される場合、ウェブAにはグルーパン21において、ファウンテンロール18からピックアップされたPVA溶液をトランスファーロール19、アプリケーターロール20と転写され、下部エンボスロール15においてウェブAにPVA溶液が転写され積層される、得られた繊維ウェブ2プライ品の坪量は41.3g/mであリ、トレハロースの担持含有量は0.13g/mであった。
【0040】
図1〜3の方法で得られたトレハロース担持繊維ウェブ2プライ品を切断し(20センチ×20センチ)試験片とした。この試験片で包装した、大根上部青首、下部の2サンプルに付き、冷蔵庫の野菜室、6〜7℃、湿度90%で保存し、トレハロース担持繊維ウェブ及びトレハロース非担持繊維ウェブについて保存日数7日間の質量変化を測定した。結果は表1及び表2に示した。
また、同様に、ほうれん草及びセロリを試験片とした場合の質量変化測定結果を表3及び4に示した。
【0041】
大根上部青首
【表1】

【0042】
大根下部
【表2】

【0043】
ほうれん草
【表3】

【0044】
セロリ
【表4】

【0045】
<評価>
表1〜4から明らかなように7日間保存において、質量変化を十分抑えることができ、トレハロース担持繊維ウェブの効果は明白である。
トレハロース担持繊維ウェブで包んだ試験区の野菜は、切断面はみずみずしさを保ち、表皮は軟らかい状態を保っているのに対し、対照品(トレハロース非担持繊維ウェブで包んだもの)の場合、切断面は、乾燥し被膜ができた状態になり、表皮は乾燥し硬くなっていた。
【0046】
同様の試験を、キャベツ(6〜7℃)、トマト、椎茸、ナガネギ、レタス、ブロッコリー、キュウリ、ニンジン(6〜7℃、湿度70〜75%)に対して行なったところ、良好な鮮度保持効果を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によるトレハロース担持繊維ウェブからなる鮮度保持シートは、優れた鮮度保持効果を有するので、果物類や野菜類の長期保存および長距離輸送に際して生ずる腐敗やカビの発生を防ぐことができ、非常に衛生的な状態を保つことが可能なため、種々の分野で生鮮食品を取り扱う生産者、運送業者を初めとする人々に多大の貢献をすることができ、産業上きわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】繊維ウェブ製造工程図
【図2】トレハロースの塗工工程図
【図3】エンボス加工工程図
【図4】他のトレハロース担持工程図
【符号の説明】
【0049】
1:ワイヤーパート
2:プレスパート
3:ヤンキードライヤー
4:クレーピングドクター
5、6:繊維ウェブ
7:トレハロース塗工用コーター
8:トレハロース担持繊維ウェブ2プライ品
9:スチールエンボスロール
10:折機・切断・箱詰工程
11:ウェブA
12:ウェブB
13:上部ニップロール
14:上部エンボスロール
15:下部エンボスロール
16:下部ニップロール
17:マリッジロール
18:ファウンテンロール
19:トランスファーロール
20:アプリケーターロール
21:グルーパン
22:ダンサーロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維又は再生繊維のパルプを主原料とする繊維ウェブであって、坪量9〜50g/m、厚み0.1〜0.25mmでかつ表面に凹凸を有する繊維ウェブを支持体とし、トレハロースが前記支持体に担持されていることを特徴とする野菜類の鮮度保持シート。
【請求項2】
支持体となる繊維ウェブが、クレープ紙であることを特徴とする請求項1記載の野菜類の鮮度保持シート。
【請求項3】
支持体となる繊維ウェブが、エンボス加工を施したものであることを特徴とする請求項1記載の野菜類の鮮度保持シート。
【請求項4】
支持体が、坪量4.5〜25g/mである繊維ウェブを少なくとも2枚積層したものであって、積層状態の坪量が9〜50g/mの繊維ウェブであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の野菜類の鮮度保持シート。
【請求項5】
トレハロースが、支持体に対して0.1g/m〜1.0g/m担持されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の野菜類の鮮度保持シート。
【請求項6】
トレハロースが、繊維ウェブの積層に用いられるバインダーに含有されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の野菜類の鮮度保持シート。
【請求項7】
天然繊維又は再生繊維のパルプを主原料とする坪量9〜50g/m、厚み0.1〜0.25mmの繊維ウェブにクレープ加工を施したものを支持体とし、トレハロースが配合された溶液を前記支持体に塗工することを特徴とする請求項1記載の野菜類の鮮度保持シートの製造方法。
【請求項8】
天然繊維又は再生繊維のパルプを主原料とする坪量9〜50g/m、厚み0.1〜0.25mmであり、トレハロースが配合された溶液が塗工された繊維ウェブに、エンボスロールを用いて表面に凹凸を形成することを特徴とする請求項1記載の野菜類の鮮度保持シートの製造方法。
【請求項9】
坪量が4.5〜25g/mである繊維ウェブを少なくとも2枚積層し、トレハロースを配合したポリビニルアルコール溶液をバインダーとして前記繊維ウェブの積層面に適用し、積層状態で坪量9〜50g/mの繊維ウェブからなる支持体を作成することを特徴とする請求項7又は8に記載の野菜類の鮮度保持シートの製造方法。
【請求項10】
バインダーが、ポリビニルアルコール100質量部に対してトレハロースを30〜50質量部配合した溶液であることを特徴とする請求項9記載の野菜類の鮮度保持シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−79569(P2008−79569A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266281(P2006−266281)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】