量子ドット型光検知器及びその製造方法
【課題】感度を向上させることができる量子ドット型光検出器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】中間層4上に、InAsからなる複数の量子ドット5が形成されている。中間層4上で量子ドット5の間の領域には、真性AlAsからなるAlAs層6が形成されている。AlAs層6の厚さは、量子ドット5の高さよりも小さい。更に、量子ドット5上に、真性AlSbからなるAlSb層7が量子ドット5の表面に倣って形成されている。また、AlAs層6及びAlSb層7を覆う中間層4が形成されている。この中間層4も真性GaAsからなる。量子ドット5、AlAs層6、AlSb層7及びこれらを覆う中間層4から光吸収単位層が構成されている。そして、このような光吸収単位層が更に9層積層されている。従って、総計で10層の光吸収単位層が設けられている。なお、薄いAlAs層6が量子ドット5とAlSb層7との間に介在していてもよい。
【解決手段】中間層4上に、InAsからなる複数の量子ドット5が形成されている。中間層4上で量子ドット5の間の領域には、真性AlAsからなるAlAs層6が形成されている。AlAs層6の厚さは、量子ドット5の高さよりも小さい。更に、量子ドット5上に、真性AlSbからなるAlSb層7が量子ドット5の表面に倣って形成されている。また、AlAs層6及びAlSb層7を覆う中間層4が形成されている。この中間層4も真性GaAsからなる。量子ドット5、AlAs層6、AlSb層7及びこれらを覆う中間層4から光吸収単位層が構成されている。そして、このような光吸収単位層が更に9層積層されている。従って、総計で10層の光吸収単位層が設けられている。なお、薄いAlAs層6が量子ドット5とAlSb層7との間に介在していてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサ等に好適な量子ドット型光検知器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光検知器の一種として、量子ドット型光検知器が知られている。図5は、従来の量子ドット型光検知器の構造を示す断面図である。
【0003】
従来の量子ドット型光検知器では、n型GaAsからなるコンタクト層103上に、真性GaAsからなる中間層104が形成されている。中間層104上に、InAsからなる複数の量子ドット105が形成されている。そして、量子ドット105を覆うようにして他の中間層104が形成され、このような量子ドット105と中間層104との組み合わせが10組程度積層されている。そして、最上層の中間層104上に、n型GaAsからなるコンタクト層108が形成されている。
【0004】
このように構成された量子ドット型光検知器に光(赤外線)が入射すると、図6に示すように、InAs量子ドット105内でエネルギーが低い基底準位に存在する電子が光吸収によりエネルギーを得てドット内の高エネルギーの準位(励起準位)へと光励起される。そして、光励起された電子がInAs量子ドット105の外へ放出されることにより、光電流が発生する。この時、中間層104は障壁層として機能する。この光電流に基づいて光(赤外線)が検知される。従って、光検知器の感度は、光吸収を起こす際に量子ドット105内の準位間を遷移する確率に依存する。この遷移確率には、量子準位である基底準位(遷移元)と励起準位(遷移先)との間の波動関数の重なりが大きく関与しており、重なりが強いほど量子ドット型赤外線検収器の感度が向上する。
【0005】
しかしながら、上述の量子ドット型光検知器では、その製造の際に、InAs量子ドット105を覆うGaAs中間層104を形成する際に、図7に示すように、これらの界面近傍にInAs及びGaAsの混晶層111が形成されてしまう。混晶層111が形成されると、図7に示すように、InAs量子ドット105からバリアとなるGaAs中間層104へのポテンシャル変化(伝導帯の底)が緩やかになる。この結果、ポテンシャル井戸内の底側に近い基底準位と頂上側に近い励起準位との間で波動関数の拡がりに大きな相違が生じ、両者の重なりが減少してしまう。このため、従来の量子ドット型光検知器の感度は十分ではない。
【0006】
【特許文献1】特開平10−256588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、感度を向上させることができる量子ドット型光検出器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者等は、従来技術の問題点を解明すべく検討を行ったところ、図8に示すように、量子ドット105とその上に形成する中間層104との間に、AlAs層106をキャップ層として形成することにより、InAsとGaAsとの混晶化を抑制することができることを見出した。AlAs層106が存在していると、InAs量子ドット105から脱離するInの表面拡散がAlによって抑制されるのである。また、AlAsが高エネルギーの障壁層としても作用するため、図9に示すように、InAsからバリアへと向かうポテンシャル勾配が急峻となり、基底準位と励起準位との間の波動関数の重なりが強くなる。
【0009】
ところが、本願発明者等が更に検討を重ねたところ、AlAs層106はGaAs中間層104上に優先的に形成され、InAs量子ドット105上には形成されにくいことが判明した。この結果、混晶化が抑制される程度の厚さのAlAs層106を量子ドット105上に形成しようとすると、中間層104上に厚いAlAs層106が形成される。そして、厚いAlAs層106は、図10に示すように、電子112の移動を妨げ、光電流113に対する電流ブロック層として作用してしまう。このため、混晶化を抑制することができても、十分な光電流を得ることができず、十分な感度を得ることができない。
【0010】
このようなAlAs層106の選択的な成長は、AlAs及びInAs間の格子定数の差、並びにAlAs及びGaAs間の格子定数の差に起因する。つまり、AlAsの格子定数が、中間層104を構成するGaAsの格子定数とほぼ等しいのに対し、量子ドット105を構成するInAsの格子定数より小さく、これらの格子定数の間には、「AlAs(キャップ層)≒GaAs(中間層104)<InAs(量子ドット105)」の関係が成り立つ。このため、AlAs層106は中間層104上に優先的に成長する。そこで、InAsからなる量子ドット105を覆うキャップ層の材料は、その格子定数がInAsの格子定数に近いものであることが好ましいと考えられる。
【0011】
そして、本願発明者等は、このような知見に基づいて鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0012】
本発明に係る量子ドット型光検知器には、第1の中間層と、前記第1の中間層上に形成された量子ドットと、前記量子ドットの側面のうちで少なくとも前記第1の中間層と接する部分を覆う第1のキャップ層と、前記量子ドットの、少なくとも前記第1のキャップ層により覆われていない部分を覆う第2のキャップ層と、前記第1及び第2のキャップ層の上から前記量子ドットを覆う第2の中間層と、が設けられている。前記第1のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第1のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも小さい。また、前記第2のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第2のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも大きい。
【0013】
本発明に係る量子ドット型光検知器の製造方法では、第1の中間層上に量子ドットを形成し、その後、前記量子ドットの側面のうちで少なくとも前記第1の中間層と接する部分を覆う第1のキャップ層を形成する。次に、前記量子ドットの、少なくとも前記第1のキャップ層により覆われていない部分を覆う第2のキャップ層を形成する。そして、前記第1及び第2のキャップ層の上から前記量子ドットを覆う第2の中間層を形成する。なお、前記第1の中間層、量子ドット、第1のキャップ層、第2のキャップ層及び第2の中間層の材料として、前記第1のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第1のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも小さくなり、前記第2のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第2のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも大きくなるものを用いる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1のキャップ層及び第2のキャップ層の格子定数が適切に規定されているため、光電流を妨げることなく、量子ドットと第2の中間層との間の混晶化を抑制することができる。このため、高い感度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る量子ドット型光検知器(赤外線センサ)の構造を示す断面図である。
【0016】
本実施形態においては、例えば表面のミラー指数が(001)のGaAsからなる基板1上に、例えばGaAsからなるバッファ層2が形成されている。また、バッファ層2上に、例えばn型GaAsからなるコンタクト層3が形成されている。コンタクト層3におけるn型不純物の濃度は、例えば1×1018cm-3である。更に、コンタクト層3上に、真性GaAsからなる中間層4が形成されている。中間層4の厚さは、例えば50nm程度である。
【0017】
そして、この中間層4上に、InAsからなる複数の量子ドット5が形成されている。例えば、量子ドット5の直径は25nm程度であり、高さは4nm程度である。また、量子ドット5は、5×1010個/cm-2程度の密度で中間層4上に分散している。また、中間層4上で量子ドット5の間の領域には、真性AlAsからなるAlAs層6が第1のキャップ層として形成されている。つまり、量子ドット5の側面のうちで少なくとも中間層4と接する部分がAlAs層6により覆われている。また、中間層4の表面の量子ドット5が形成されていない領域がAlAs層6により覆われている。AlAs層6の厚さは、量子ドット5の高さよりも小さく、例えば0.5nm程度である。更に、量子ドット5上に、真性AlSbからなるAlSb層7が、第2のキャップ層として、量子ドット5の表面に倣って形成されている。AlSb層7の厚さは、例えば0.5nm程度である。また、AlAs層6及びAlSb層7を覆う中間層4が形成されている。この中間層4も真性GaAsからなり、その厚さは、例えば50nm程度である。量子ドット5、AlAs層6、AlSb層7及びこれらを覆う中間層4から光吸収単位層が構成されている。そして、このような光吸収単位層が更に9層積層されている。従って、本実施形態には、総計で10層の光吸収単位層が設けられている。なお、薄いAlAs層6が量子ドット5とAlSb層7との間に介在していてもよい。
【0018】
また、最上層の中間層4の上に、例えばn型GaAsからなるコンタクト層8が形成されている。コンタクト層8におけるn型不純物の濃度は、例えば1×1018cm-3である。そして、コンタクト層3上に電極11が形成され、コンタクト層8上に電極12が形成され、電極11及び電極12間に直流電圧が印加される。
【0019】
このような本実施形態では、中間層4、量子ドット5、AlAs層6(第1のキャップ層)及びAlSb層7の夫々を構成する物質の格子定数に、「AlAs(第1のキャップ層)≒GaAs(中間層4)<InAs(量子ドット5)<AlSb(第2のキャップ層)」のような関係が成立している。つまり、「AlAs(第1のキャップ層)とGaAs(中間層4)との間の格子定数の差が、AlAs(第1のキャップ層)とInAs(量子ドット5)との間の格子定数の差よりも小さい」という条件、及び「AlSb(第2のキャップ層)とGaAs(中間層4)との間の格子定数の差が、AlSb(第2のキャップ層)とInAs(量子ドット5)との間の格子定数差よりも大きい」という条件が満たされている。このため、AlAs層6は中間層4上に成長しやすく、AlSb層7は量子ドット5上に成長しやすい。また、AlAs層6は量子ドット5上には成長しにくく、AlSb層7は中間層4上にほとんど成長しない。このため、AlAs層6により、量子ドット5の側面の下部及び中間層4の表面が覆われ、AlSb層7により、量子ドット5の上部が覆われている。
【0020】
このため、AlAs層6により、量子ドット5から脱離しようとするInの表面拡散が抑制され、この表面拡散に起因する混晶化が抑制される。また、AlAs層6の厚さ(例えば0.5nm)は、量子ドット5の高さ(例えば4nm)よりも低く、例えば量子ドット5の高さの1/8程度であるため、AlAs層6による光電流の阻害はほとんど生じない。
【0021】
また、AlSb層7によっても、InAsとGaAsとの混晶化が抑制される。更に、図2及び図3に示すように、AlAsと同様に、AlSbにおいてもInAsに対する伝導帯側のポテンシャルが高いため、障壁層として機能する中間層4のGaAsよりも高いエネルギーの障壁によりInAsが取り囲まれたエネルギーバンドが得られる。従って、本実施形態によれば、基底準位と励起準位との間の波動関数の重なりを強くすることができ、感度を向上することができる。また、上述のように、AlAs層6による光電流の阻害が生じにくいため、感度の低下も生じにくい。
【0022】
次に、上述のような量子ドット型光検知器を製造する方法について説明する。図4A乃至図4Hは、本発明の実施形態に係る量子ドット型光検知装置を製造する方法を工程順に示す断面図である。ここでは、量子ドット型光検知装置として、複数の光検知素子がアレイ状に並んだ撮像装置を製造する方法について説明する。
【0023】
先ず、図4Aに示すように、基板1上にバッファ層2及びコンタクト層3を順次形成する。次に、コンタクト層3上に中間層4を形成し、更に、この中間層4上に、量子ドット5、AlAs層6、AlSb層7及び中間層4を備えた光吸収単位層を、例えば10層積そうすることにより、光吸収部21を形成する。次いで、光吸収部21上にコンタクト層8を形成する。これらの各半導体層は、例えば分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法又は有機金属気相成長(MOVPE:(Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy)法により形成することができる。量子ドット5の形成に当たっては、例えば、基板1の温度を500℃以下に設定し、In及びAsの分子線照射を行えばよく、この処理により量子ドット5が自己組織化により成長する。
【0024】
その後、図4Bに示すように、形成しようとする光検知素子毎に、コンタクト層8に回折格子61を形成する。
【0025】
続いて、図4Cに示すように、コンタクト層8及び光吸収部21を選択的にメサ状にウェットエッチングすることにより、コンタクト層3の一部を露出させる。
【0026】
次に、図4Dに示すように、表面全体に、例えばSiONからなる保護膜62を形成し、この保護膜62に、形成しようとする光検知素子毎にコンタクト層8まで到達する第1の開口部を形成する。また、コンタクト層3まで到達する第2の開口部も保護膜62に形成する。これらの開口部は、例えばドライエッチングにより形成することができる。次いで、各開口部内にオーミック電極63を形成する。オーミック電極63の形成に当たっては、例えば、コンタクト層3及び8上にAuGe膜を形成した後、その上にAu膜を形成する。AuGe膜及びAu膜は、例えばリフトオフ法により形成することができる。
【0027】
その後、図4Eに示すように、保護膜62に、形成しようとする光検知素子毎にコンタクト層8まで到達する第3の開口部を第1の開口部よりも大きく形成する。また、コンタクト層3まで到達する第4の開口部も保護膜62に第2の開口部よりも大きく形成する。これらの開口部は、例えばドライエッチングにより形成することができる。続いて、各開口部内にミラー電極64を形成する。ミラー電極64の形成に当たっては、例えば、コンタクト層3及び8並びにオーミック電極63上にTiW膜を形成した後、その上にAu膜を形成する。TiW膜及びAu膜は、例えばリフトオフ法により形成することができる。
【0028】
次に、図4Fに示すように、形成しようとする光検知素子を互いに分離する分離溝65を形成する。分離溝65は、光吸収部21の底面よりも深くするが、コンタクト層3の底面よりも浅くする。分離溝65は、例えば保護膜62に対するドライエッチング及び半導体層に対するドライエッチングにより形成することができる。
【0029】
次いで、図4Gに示すように、表面全体に、例えばSiONからなる保護膜66を形成し、この保護膜66に、形成しようとする光検知素子毎にミラー電極64まで到達する第5の開口部を形成する。また、コンタクト層3上のミラー電極64まで到達する第6の開口部も保護膜66に形成する。その後、各開口部内に下地電極67を形成する。下地電極67の形成に当たっては、例えば、ミラー電極64上にTi膜を形成した後、その上にPt膜を形成する。Ti膜及びPt膜は、例えばリフトオフ法により形成することができる。
【0030】
続いて、図4Hに示すように、下地電極67上に、例えばInからなるバンプ電極68を形成する。バンプ電極は、例えばリフトオフ法により形成することができる。
【0031】
このようにして形成された量子ドット型光検知装置では、コンタクト層8上の電極は光検知素子毎のものとして使用され、コンタクト層3上の電極は各光検知素子に共通のものとして使用される。そして、各電極には、読み出し回路が接続される。
【0032】
このような製造方法によれば、上述のように、AlAs層6(第1のキャップ層)を厚く形成せずとも、AlSb層7により量子ドット5と中間層4との間の混晶化を抑制することができる。
【0033】
なお、上記の実施形態では、基板1の材料としてGaAsを用いているが、InP等を用いてもよい。また、量子ドット5の材料としてInAsを用いているが、InAlAs又はInGaAs等を用いてもよい。また、中間層4、第1のキャップ層及び第2のキャップ層の材料も、夫々、GaAs、AlAs、AlSbに限定されない。例えば、InAs、GaAs、AlAs、InP、GaP、AlP、InSb、GaSb、AlSb、InN、GaN又はAlN等を用いてもよく、これらの混晶を用いてもよい。量子ドット5の材料がInGaAs又はInAlAsの場合、例えば、第1のキャップ層の材料はAlGaAsであり、第2のキャップ層の材料はAlGaSbである。但し、どの材料を用いる場合であっても、各層を構成する材料の格子定数の間に、
(1)「第1のキャップ層と中間層との間の格子定数の差が、第1のキャップ層と量子ドットとの間の格子定数の差よりも小さい」という条件、及び
(2)「第2のキャップ層と中間層との間の格子定数の差が、第2のキャップ層と量子ドットとの間の格子定数の差よりも大きい」という条件が満たされている必要がある。
【0034】
また、「電荷(電子又は正孔)に対するポテンシャルが、第1及び第2のキャップ層のいずれにおいても、中間層より大きい」という条件も満たされていることが好ましい。これは、十分な量子効果を得るためである。
【0035】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0036】
(付記1)
第1の中間層と、
前記第1の中間層上に形成された量子ドットと、
前記量子ドットの側面のうちで少なくとも前記第1の中間層と接する部分を覆う第1のキャップ層と、
前記量子ドットの、少なくとも前記第1のキャップ層により覆われていない部分を覆う第2のキャップ層と、
前記第1及び第2のキャップ層の上から前記量子ドットを覆う第2の中間層と、
を有し、
前記第1のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第1のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも小さく、
前記第2のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第2のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも大きいことを特徴とする量子ドット型光検知器。
【0037】
(付記2)
前記第1及び第2のキャップ層の電荷に対するポテンシャルが、前記第1及び第2の中間層のものよりも大きいことを特徴とする付記1に記載の量子ドット型光検知器。
【0038】
(付記3)
前記第1のキャップ層の厚さは、前記量子ドットの高さより小さいことを特徴とする付記1又は2に記載の量子ドット型光検知器。
【0039】
(付記4)
前記量子ドットと前記第2のキャップ層とを備えた光吸収単位層が複数互いに積層されていることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の量子ドット型光検知器。
【0040】
(付記5)
前記第1及び第2の中間層は、InAs、GaAs、AlAs、InP、GaP、AlP、InSb、GaSb、AlSb、InN、GaN、及びAlNからなる群から選択された1種の半導体、又は前記群から選択された2種以上の半導体の混晶からなることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の量子ドット型光検知器。
【0041】
(付記6)
前記量子ドットは、InGaAs又はInAlAsからなり、
前記第1のキャップ層は、AlGaAsからなり、
前記第2のキャップ層は、AlGaSbからなることを特徴とする付記5に記載の量子ドット型光検知器。
【0042】
(付記7)
前記第1のキャップ層は、前記第1の中間層の表面の前記量子ドットが形成されていない領域を覆っていることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の量子ドット型光検知器。
【0043】
(付記8)
第1の中間層上に量子ドットを形成する工程と、
前記量子ドットの側面のうちで少なくとも前記第1の中間層と接する部分を覆う第1のキャップ層を形成する工程と、
前記量子ドットの、少なくとも前記第1のキャップ層により覆われていない部分を覆う第2のキャップ層を形成する工程と、
前記第1及び第2のキャップ層の上から前記量子ドットを覆う第2の中間層を形成する工程と、
を有し、
前記第1の中間層、量子ドット、第1のキャップ層、第2のキャップ層及び第2の中間層の材料として、
前記第1のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第1のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも小さくなり、
前記第2のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第2のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも大きくなるものを用いることを特徴とする量子ドット型光検知器の製造方法。
【0044】
(付記9)
前記第1の中間層、第1のキャップ層、第2のキャップ層及び第2の中間層の材料として、
前記第1及び第2のキャップ層の電荷に対するポテンシャルが、前記第1及び第2の中間層のものよりも大きくなるものを用いることを特徴とする付記8に記載の量子ドット型光検知器の製造方法。
【0045】
(付記10)
前記第1のキャップ層の厚さを、前記量子ドットの高さより小さくすることを特徴とする付記8又は9に記載の量子ドット型光検知器の製造方法。
【0046】
(付記11)
前記量子ドットと前記第2のキャップ層とを備えた光吸収単位層を複数互いに積層することを特徴とする付記8乃至10のいずれか1項に記載の量子ドット型光検知器の製造方法。
【0047】
(付記12)
前記第1及び第2の中間層の材料として、InAs、GaAs、AlAs、InP、GaP、AlP、InSb、GaSb、AlSb、InN、GaN、及びAlNからなる群から選択された1種の半導体、又は前記群から選択された2種以上の半導体の混晶を用いることを特徴とする付記8乃至11のいずれか1項に記載の量子ドット型光検知器の製造方法。
【0048】
(付記13)
前記量子ドットの材料として、InGaAs又はInAlAsを用い、
前記第1のキャップ層の材料として、AlGaAsを用い、
前記第2のキャップ層の材料として、AlGaSbを用いることを特徴とする付記12に記載の量子ドット型光検知器の製造方法。
【0049】
(付記14)
前記第1のキャップ層として、前記第1の中間層の表面の前記量子ドットが形成されていない領域を覆うものを形成することを特徴とする付記8乃至13のいずれか1項に記載の量子ドット型光検知器の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る量子ドット型光検知器(赤外線センサ)の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態におけるエネルギー構造を示すバンドダイアグラムである。
【図3】本発明の実施形態におけるポテンシャル井戸内の波動関数を示す図である。
【図4A】本発明の実施形態に係る量子ドット型光検知器を製造する方法を示す断面図である。
【図4B】図4Aに引き続き、係る量子ドット型光検知器を製造する方法を示す断面図である。
【図4C】図4Bに引き続き、係る量子ドット型光検知器を製造する方法を示す断面図である。
【図4D】図4Cに引き続き、係る量子ドット型光検知器を製造する方法を示す断面図である。
【図4E】図4Dに引き続き、係る量子ドット型光検知器を製造する方法を示す断面図である。
【図4F】図4Eに引き続き、係る量子ドット型光検知器を製造する方法を示す断面図である。
【図4G】図4Fに引き続き、係る量子ドット型光検知器を製造する方法を示す断面図である。
【図4H】図4Gに引き続き、係る量子ドット型光検知器を製造する方法を示す断面図である。
【図5】従来の量子ドット型光検知器の構造を示す断面図である。
【図6】従来の量子ドット型光検知器におけるエネルギー構造を示すバンドダイアグラムである。
【図7】従来の量子ドット型光検知器におけるポテンシャル井戸内の波動関数を示す図である。
【図8】AlSb層106を有する量子ドット型光検知器の構造を示す断面図である。
【図9】AlSb層106を有する量子ドット型光検知器におけるポテンシャル井戸内の波動関数を示す図である。
【図10】AlSb層106を有する量子ドット型光検知器の欠点を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1:基板
2:バッファ層
3、8:コンタクト層
4:中間層
5:量子ドット
6:AlAs層
7:AlSb層
11、12:電極
21:光吸収部
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサ等に好適な量子ドット型光検知器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光検知器の一種として、量子ドット型光検知器が知られている。図5は、従来の量子ドット型光検知器の構造を示す断面図である。
【0003】
従来の量子ドット型光検知器では、n型GaAsからなるコンタクト層103上に、真性GaAsからなる中間層104が形成されている。中間層104上に、InAsからなる複数の量子ドット105が形成されている。そして、量子ドット105を覆うようにして他の中間層104が形成され、このような量子ドット105と中間層104との組み合わせが10組程度積層されている。そして、最上層の中間層104上に、n型GaAsからなるコンタクト層108が形成されている。
【0004】
このように構成された量子ドット型光検知器に光(赤外線)が入射すると、図6に示すように、InAs量子ドット105内でエネルギーが低い基底準位に存在する電子が光吸収によりエネルギーを得てドット内の高エネルギーの準位(励起準位)へと光励起される。そして、光励起された電子がInAs量子ドット105の外へ放出されることにより、光電流が発生する。この時、中間層104は障壁層として機能する。この光電流に基づいて光(赤外線)が検知される。従って、光検知器の感度は、光吸収を起こす際に量子ドット105内の準位間を遷移する確率に依存する。この遷移確率には、量子準位である基底準位(遷移元)と励起準位(遷移先)との間の波動関数の重なりが大きく関与しており、重なりが強いほど量子ドット型赤外線検収器の感度が向上する。
【0005】
しかしながら、上述の量子ドット型光検知器では、その製造の際に、InAs量子ドット105を覆うGaAs中間層104を形成する際に、図7に示すように、これらの界面近傍にInAs及びGaAsの混晶層111が形成されてしまう。混晶層111が形成されると、図7に示すように、InAs量子ドット105からバリアとなるGaAs中間層104へのポテンシャル変化(伝導帯の底)が緩やかになる。この結果、ポテンシャル井戸内の底側に近い基底準位と頂上側に近い励起準位との間で波動関数の拡がりに大きな相違が生じ、両者の重なりが減少してしまう。このため、従来の量子ドット型光検知器の感度は十分ではない。
【0006】
【特許文献1】特開平10−256588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、感度を向上させることができる量子ドット型光検出器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者等は、従来技術の問題点を解明すべく検討を行ったところ、図8に示すように、量子ドット105とその上に形成する中間層104との間に、AlAs層106をキャップ層として形成することにより、InAsとGaAsとの混晶化を抑制することができることを見出した。AlAs層106が存在していると、InAs量子ドット105から脱離するInの表面拡散がAlによって抑制されるのである。また、AlAsが高エネルギーの障壁層としても作用するため、図9に示すように、InAsからバリアへと向かうポテンシャル勾配が急峻となり、基底準位と励起準位との間の波動関数の重なりが強くなる。
【0009】
ところが、本願発明者等が更に検討を重ねたところ、AlAs層106はGaAs中間層104上に優先的に形成され、InAs量子ドット105上には形成されにくいことが判明した。この結果、混晶化が抑制される程度の厚さのAlAs層106を量子ドット105上に形成しようとすると、中間層104上に厚いAlAs層106が形成される。そして、厚いAlAs層106は、図10に示すように、電子112の移動を妨げ、光電流113に対する電流ブロック層として作用してしまう。このため、混晶化を抑制することができても、十分な光電流を得ることができず、十分な感度を得ることができない。
【0010】
このようなAlAs層106の選択的な成長は、AlAs及びInAs間の格子定数の差、並びにAlAs及びGaAs間の格子定数の差に起因する。つまり、AlAsの格子定数が、中間層104を構成するGaAsの格子定数とほぼ等しいのに対し、量子ドット105を構成するInAsの格子定数より小さく、これらの格子定数の間には、「AlAs(キャップ層)≒GaAs(中間層104)<InAs(量子ドット105)」の関係が成り立つ。このため、AlAs層106は中間層104上に優先的に成長する。そこで、InAsからなる量子ドット105を覆うキャップ層の材料は、その格子定数がInAsの格子定数に近いものであることが好ましいと考えられる。
【0011】
そして、本願発明者等は、このような知見に基づいて鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0012】
本発明に係る量子ドット型光検知器には、第1の中間層と、前記第1の中間層上に形成された量子ドットと、前記量子ドットの側面のうちで少なくとも前記第1の中間層と接する部分を覆う第1のキャップ層と、前記量子ドットの、少なくとも前記第1のキャップ層により覆われていない部分を覆う第2のキャップ層と、前記第1及び第2のキャップ層の上から前記量子ドットを覆う第2の中間層と、が設けられている。前記第1のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第1のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも小さい。また、前記第2のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第2のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも大きい。
【0013】
本発明に係る量子ドット型光検知器の製造方法では、第1の中間層上に量子ドットを形成し、その後、前記量子ドットの側面のうちで少なくとも前記第1の中間層と接する部分を覆う第1のキャップ層を形成する。次に、前記量子ドットの、少なくとも前記第1のキャップ層により覆われていない部分を覆う第2のキャップ層を形成する。そして、前記第1及び第2のキャップ層の上から前記量子ドットを覆う第2の中間層を形成する。なお、前記第1の中間層、量子ドット、第1のキャップ層、第2のキャップ層及び第2の中間層の材料として、前記第1のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第1のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも小さくなり、前記第2のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第2のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも大きくなるものを用いる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1のキャップ層及び第2のキャップ層の格子定数が適切に規定されているため、光電流を妨げることなく、量子ドットと第2の中間層との間の混晶化を抑制することができる。このため、高い感度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る量子ドット型光検知器(赤外線センサ)の構造を示す断面図である。
【0016】
本実施形態においては、例えば表面のミラー指数が(001)のGaAsからなる基板1上に、例えばGaAsからなるバッファ層2が形成されている。また、バッファ層2上に、例えばn型GaAsからなるコンタクト層3が形成されている。コンタクト層3におけるn型不純物の濃度は、例えば1×1018cm-3である。更に、コンタクト層3上に、真性GaAsからなる中間層4が形成されている。中間層4の厚さは、例えば50nm程度である。
【0017】
そして、この中間層4上に、InAsからなる複数の量子ドット5が形成されている。例えば、量子ドット5の直径は25nm程度であり、高さは4nm程度である。また、量子ドット5は、5×1010個/cm-2程度の密度で中間層4上に分散している。また、中間層4上で量子ドット5の間の領域には、真性AlAsからなるAlAs層6が第1のキャップ層として形成されている。つまり、量子ドット5の側面のうちで少なくとも中間層4と接する部分がAlAs層6により覆われている。また、中間層4の表面の量子ドット5が形成されていない領域がAlAs層6により覆われている。AlAs層6の厚さは、量子ドット5の高さよりも小さく、例えば0.5nm程度である。更に、量子ドット5上に、真性AlSbからなるAlSb層7が、第2のキャップ層として、量子ドット5の表面に倣って形成されている。AlSb層7の厚さは、例えば0.5nm程度である。また、AlAs層6及びAlSb層7を覆う中間層4が形成されている。この中間層4も真性GaAsからなり、その厚さは、例えば50nm程度である。量子ドット5、AlAs層6、AlSb層7及びこれらを覆う中間層4から光吸収単位層が構成されている。そして、このような光吸収単位層が更に9層積層されている。従って、本実施形態には、総計で10層の光吸収単位層が設けられている。なお、薄いAlAs層6が量子ドット5とAlSb層7との間に介在していてもよい。
【0018】
また、最上層の中間層4の上に、例えばn型GaAsからなるコンタクト層8が形成されている。コンタクト層8におけるn型不純物の濃度は、例えば1×1018cm-3である。そして、コンタクト層3上に電極11が形成され、コンタクト層8上に電極12が形成され、電極11及び電極12間に直流電圧が印加される。
【0019】
このような本実施形態では、中間層4、量子ドット5、AlAs層6(第1のキャップ層)及びAlSb層7の夫々を構成する物質の格子定数に、「AlAs(第1のキャップ層)≒GaAs(中間層4)<InAs(量子ドット5)<AlSb(第2のキャップ層)」のような関係が成立している。つまり、「AlAs(第1のキャップ層)とGaAs(中間層4)との間の格子定数の差が、AlAs(第1のキャップ層)とInAs(量子ドット5)との間の格子定数の差よりも小さい」という条件、及び「AlSb(第2のキャップ層)とGaAs(中間層4)との間の格子定数の差が、AlSb(第2のキャップ層)とInAs(量子ドット5)との間の格子定数差よりも大きい」という条件が満たされている。このため、AlAs層6は中間層4上に成長しやすく、AlSb層7は量子ドット5上に成長しやすい。また、AlAs層6は量子ドット5上には成長しにくく、AlSb層7は中間層4上にほとんど成長しない。このため、AlAs層6により、量子ドット5の側面の下部及び中間層4の表面が覆われ、AlSb層7により、量子ドット5の上部が覆われている。
【0020】
このため、AlAs層6により、量子ドット5から脱離しようとするInの表面拡散が抑制され、この表面拡散に起因する混晶化が抑制される。また、AlAs層6の厚さ(例えば0.5nm)は、量子ドット5の高さ(例えば4nm)よりも低く、例えば量子ドット5の高さの1/8程度であるため、AlAs層6による光電流の阻害はほとんど生じない。
【0021】
また、AlSb層7によっても、InAsとGaAsとの混晶化が抑制される。更に、図2及び図3に示すように、AlAsと同様に、AlSbにおいてもInAsに対する伝導帯側のポテンシャルが高いため、障壁層として機能する中間層4のGaAsよりも高いエネルギーの障壁によりInAsが取り囲まれたエネルギーバンドが得られる。従って、本実施形態によれば、基底準位と励起準位との間の波動関数の重なりを強くすることができ、感度を向上することができる。また、上述のように、AlAs層6による光電流の阻害が生じにくいため、感度の低下も生じにくい。
【0022】
次に、上述のような量子ドット型光検知器を製造する方法について説明する。図4A乃至図4Hは、本発明の実施形態に係る量子ドット型光検知装置を製造する方法を工程順に示す断面図である。ここでは、量子ドット型光検知装置として、複数の光検知素子がアレイ状に並んだ撮像装置を製造する方法について説明する。
【0023】
先ず、図4Aに示すように、基板1上にバッファ層2及びコンタクト層3を順次形成する。次に、コンタクト層3上に中間層4を形成し、更に、この中間層4上に、量子ドット5、AlAs層6、AlSb層7及び中間層4を備えた光吸収単位層を、例えば10層積そうすることにより、光吸収部21を形成する。次いで、光吸収部21上にコンタクト層8を形成する。これらの各半導体層は、例えば分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法又は有機金属気相成長(MOVPE:(Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy)法により形成することができる。量子ドット5の形成に当たっては、例えば、基板1の温度を500℃以下に設定し、In及びAsの分子線照射を行えばよく、この処理により量子ドット5が自己組織化により成長する。
【0024】
その後、図4Bに示すように、形成しようとする光検知素子毎に、コンタクト層8に回折格子61を形成する。
【0025】
続いて、図4Cに示すように、コンタクト層8及び光吸収部21を選択的にメサ状にウェットエッチングすることにより、コンタクト層3の一部を露出させる。
【0026】
次に、図4Dに示すように、表面全体に、例えばSiONからなる保護膜62を形成し、この保護膜62に、形成しようとする光検知素子毎にコンタクト層8まで到達する第1の開口部を形成する。また、コンタクト層3まで到達する第2の開口部も保護膜62に形成する。これらの開口部は、例えばドライエッチングにより形成することができる。次いで、各開口部内にオーミック電極63を形成する。オーミック電極63の形成に当たっては、例えば、コンタクト層3及び8上にAuGe膜を形成した後、その上にAu膜を形成する。AuGe膜及びAu膜は、例えばリフトオフ法により形成することができる。
【0027】
その後、図4Eに示すように、保護膜62に、形成しようとする光検知素子毎にコンタクト層8まで到達する第3の開口部を第1の開口部よりも大きく形成する。また、コンタクト層3まで到達する第4の開口部も保護膜62に第2の開口部よりも大きく形成する。これらの開口部は、例えばドライエッチングにより形成することができる。続いて、各開口部内にミラー電極64を形成する。ミラー電極64の形成に当たっては、例えば、コンタクト層3及び8並びにオーミック電極63上にTiW膜を形成した後、その上にAu膜を形成する。TiW膜及びAu膜は、例えばリフトオフ法により形成することができる。
【0028】
次に、図4Fに示すように、形成しようとする光検知素子を互いに分離する分離溝65を形成する。分離溝65は、光吸収部21の底面よりも深くするが、コンタクト層3の底面よりも浅くする。分離溝65は、例えば保護膜62に対するドライエッチング及び半導体層に対するドライエッチングにより形成することができる。
【0029】
次いで、図4Gに示すように、表面全体に、例えばSiONからなる保護膜66を形成し、この保護膜66に、形成しようとする光検知素子毎にミラー電極64まで到達する第5の開口部を形成する。また、コンタクト層3上のミラー電極64まで到達する第6の開口部も保護膜66に形成する。その後、各開口部内に下地電極67を形成する。下地電極67の形成に当たっては、例えば、ミラー電極64上にTi膜を形成した後、その上にPt膜を形成する。Ti膜及びPt膜は、例えばリフトオフ法により形成することができる。
【0030】
続いて、図4Hに示すように、下地電極67上に、例えばInからなるバンプ電極68を形成する。バンプ電極は、例えばリフトオフ法により形成することができる。
【0031】
このようにして形成された量子ドット型光検知装置では、コンタクト層8上の電極は光検知素子毎のものとして使用され、コンタクト層3上の電極は各光検知素子に共通のものとして使用される。そして、各電極には、読み出し回路が接続される。
【0032】
このような製造方法によれば、上述のように、AlAs層6(第1のキャップ層)を厚く形成せずとも、AlSb層7により量子ドット5と中間層4との間の混晶化を抑制することができる。
【0033】
なお、上記の実施形態では、基板1の材料としてGaAsを用いているが、InP等を用いてもよい。また、量子ドット5の材料としてInAsを用いているが、InAlAs又はInGaAs等を用いてもよい。また、中間層4、第1のキャップ層及び第2のキャップ層の材料も、夫々、GaAs、AlAs、AlSbに限定されない。例えば、InAs、GaAs、AlAs、InP、GaP、AlP、InSb、GaSb、AlSb、InN、GaN又はAlN等を用いてもよく、これらの混晶を用いてもよい。量子ドット5の材料がInGaAs又はInAlAsの場合、例えば、第1のキャップ層の材料はAlGaAsであり、第2のキャップ層の材料はAlGaSbである。但し、どの材料を用いる場合であっても、各層を構成する材料の格子定数の間に、
(1)「第1のキャップ層と中間層との間の格子定数の差が、第1のキャップ層と量子ドットとの間の格子定数の差よりも小さい」という条件、及び
(2)「第2のキャップ層と中間層との間の格子定数の差が、第2のキャップ層と量子ドットとの間の格子定数の差よりも大きい」という条件が満たされている必要がある。
【0034】
また、「電荷(電子又は正孔)に対するポテンシャルが、第1及び第2のキャップ層のいずれにおいても、中間層より大きい」という条件も満たされていることが好ましい。これは、十分な量子効果を得るためである。
【0035】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0036】
(付記1)
第1の中間層と、
前記第1の中間層上に形成された量子ドットと、
前記量子ドットの側面のうちで少なくとも前記第1の中間層と接する部分を覆う第1のキャップ層と、
前記量子ドットの、少なくとも前記第1のキャップ層により覆われていない部分を覆う第2のキャップ層と、
前記第1及び第2のキャップ層の上から前記量子ドットを覆う第2の中間層と、
を有し、
前記第1のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第1のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも小さく、
前記第2のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第2のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも大きいことを特徴とする量子ドット型光検知器。
【0037】
(付記2)
前記第1及び第2のキャップ層の電荷に対するポテンシャルが、前記第1及び第2の中間層のものよりも大きいことを特徴とする付記1に記載の量子ドット型光検知器。
【0038】
(付記3)
前記第1のキャップ層の厚さは、前記量子ドットの高さより小さいことを特徴とする付記1又は2に記載の量子ドット型光検知器。
【0039】
(付記4)
前記量子ドットと前記第2のキャップ層とを備えた光吸収単位層が複数互いに積層されていることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の量子ドット型光検知器。
【0040】
(付記5)
前記第1及び第2の中間層は、InAs、GaAs、AlAs、InP、GaP、AlP、InSb、GaSb、AlSb、InN、GaN、及びAlNからなる群から選択された1種の半導体、又は前記群から選択された2種以上の半導体の混晶からなることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の量子ドット型光検知器。
【0041】
(付記6)
前記量子ドットは、InGaAs又はInAlAsからなり、
前記第1のキャップ層は、AlGaAsからなり、
前記第2のキャップ層は、AlGaSbからなることを特徴とする付記5に記載の量子ドット型光検知器。
【0042】
(付記7)
前記第1のキャップ層は、前記第1の中間層の表面の前記量子ドットが形成されていない領域を覆っていることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の量子ドット型光検知器。
【0043】
(付記8)
第1の中間層上に量子ドットを形成する工程と、
前記量子ドットの側面のうちで少なくとも前記第1の中間層と接する部分を覆う第1のキャップ層を形成する工程と、
前記量子ドットの、少なくとも前記第1のキャップ層により覆われていない部分を覆う第2のキャップ層を形成する工程と、
前記第1及び第2のキャップ層の上から前記量子ドットを覆う第2の中間層を形成する工程と、
を有し、
前記第1の中間層、量子ドット、第1のキャップ層、第2のキャップ層及び第2の中間層の材料として、
前記第1のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第1のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも小さくなり、
前記第2のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第2のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも大きくなるものを用いることを特徴とする量子ドット型光検知器の製造方法。
【0044】
(付記9)
前記第1の中間層、第1のキャップ層、第2のキャップ層及び第2の中間層の材料として、
前記第1及び第2のキャップ層の電荷に対するポテンシャルが、前記第1及び第2の中間層のものよりも大きくなるものを用いることを特徴とする付記8に記載の量子ドット型光検知器の製造方法。
【0045】
(付記10)
前記第1のキャップ層の厚さを、前記量子ドットの高さより小さくすることを特徴とする付記8又は9に記載の量子ドット型光検知器の製造方法。
【0046】
(付記11)
前記量子ドットと前記第2のキャップ層とを備えた光吸収単位層を複数互いに積層することを特徴とする付記8乃至10のいずれか1項に記載の量子ドット型光検知器の製造方法。
【0047】
(付記12)
前記第1及び第2の中間層の材料として、InAs、GaAs、AlAs、InP、GaP、AlP、InSb、GaSb、AlSb、InN、GaN、及びAlNからなる群から選択された1種の半導体、又は前記群から選択された2種以上の半導体の混晶を用いることを特徴とする付記8乃至11のいずれか1項に記載の量子ドット型光検知器の製造方法。
【0048】
(付記13)
前記量子ドットの材料として、InGaAs又はInAlAsを用い、
前記第1のキャップ層の材料として、AlGaAsを用い、
前記第2のキャップ層の材料として、AlGaSbを用いることを特徴とする付記12に記載の量子ドット型光検知器の製造方法。
【0049】
(付記14)
前記第1のキャップ層として、前記第1の中間層の表面の前記量子ドットが形成されていない領域を覆うものを形成することを特徴とする付記8乃至13のいずれか1項に記載の量子ドット型光検知器の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る量子ドット型光検知器(赤外線センサ)の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態におけるエネルギー構造を示すバンドダイアグラムである。
【図3】本発明の実施形態におけるポテンシャル井戸内の波動関数を示す図である。
【図4A】本発明の実施形態に係る量子ドット型光検知器を製造する方法を示す断面図である。
【図4B】図4Aに引き続き、係る量子ドット型光検知器を製造する方法を示す断面図である。
【図4C】図4Bに引き続き、係る量子ドット型光検知器を製造する方法を示す断面図である。
【図4D】図4Cに引き続き、係る量子ドット型光検知器を製造する方法を示す断面図である。
【図4E】図4Dに引き続き、係る量子ドット型光検知器を製造する方法を示す断面図である。
【図4F】図4Eに引き続き、係る量子ドット型光検知器を製造する方法を示す断面図である。
【図4G】図4Fに引き続き、係る量子ドット型光検知器を製造する方法を示す断面図である。
【図4H】図4Gに引き続き、係る量子ドット型光検知器を製造する方法を示す断面図である。
【図5】従来の量子ドット型光検知器の構造を示す断面図である。
【図6】従来の量子ドット型光検知器におけるエネルギー構造を示すバンドダイアグラムである。
【図7】従来の量子ドット型光検知器におけるポテンシャル井戸内の波動関数を示す図である。
【図8】AlSb層106を有する量子ドット型光検知器の構造を示す断面図である。
【図9】AlSb層106を有する量子ドット型光検知器におけるポテンシャル井戸内の波動関数を示す図である。
【図10】AlSb層106を有する量子ドット型光検知器の欠点を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1:基板
2:バッファ層
3、8:コンタクト層
4:中間層
5:量子ドット
6:AlAs層
7:AlSb層
11、12:電極
21:光吸収部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の中間層と、
前記第1の中間層上に形成された量子ドットと、
前記量子ドットの側面のうちで少なくとも前記第1の中間層と接する部分を覆う第1のキャップ層と、
前記量子ドットの、少なくとも前記第1のキャップ層により覆われていない部分を覆う第2のキャップ層と、
前記第1及び第2のキャップ層の上から前記量子ドットを覆う第2の中間層と、
を有し、
前記第1のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第1のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも小さく、
前記第2のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第2のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも大きいことを特徴とする量子ドット型光検知器。
【請求項2】
前記第1及び第2のキャップ層の電荷に対するポテンシャルが、前記第1及び第2の中間層のものよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の量子ドット型光検知器。
【請求項3】
前記第1のキャップ層の厚さは、前記量子ドットの高さより小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の量子ドット型光検知器。
【請求項4】
第1の中間層上に量子ドットを形成する工程と、
前記量子ドットの側面のうちで少なくとも前記第1の中間層と接する部分を覆う第1のキャップ層を形成する工程と、
前記量子ドットの、少なくとも前記第1のキャップ層により覆われていない部分を覆う第2のキャップ層を形成する工程と、
前記第1及び第2のキャップ層の上から前記量子ドットを覆う第2の中間層を形成する工程と、
を有し、
前記第1の中間層、量子ドット、第1のキャップ層、第2のキャップ層及び第2の中間層の材料として、
前記第1のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第1のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも小さくなり、
前記第2のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第2のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも大きくなるものを用いることを特徴とする量子ドット型光検知器の製造方法。
【請求項5】
前記第1の中間層、第1のキャップ層、第2のキャップ層及び第2の中間層の材料として、
前記第1及び第2のキャップ層の電荷に対するポテンシャルが、前記第1及び第2の中間層のものよりも大きくなるものを用いることを特徴とする請求項4に記載の量子ドット型光検知器の製造方法。
【請求項6】
前記第1のキャップ層の厚さを、前記量子ドットの高さより小さくすることを特徴とする請求項4又は5に記載の量子ドット型光検知器の製造方法。
【請求項1】
第1の中間層と、
前記第1の中間層上に形成された量子ドットと、
前記量子ドットの側面のうちで少なくとも前記第1の中間層と接する部分を覆う第1のキャップ層と、
前記量子ドットの、少なくとも前記第1のキャップ層により覆われていない部分を覆う第2のキャップ層と、
前記第1及び第2のキャップ層の上から前記量子ドットを覆う第2の中間層と、
を有し、
前記第1のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第1のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも小さく、
前記第2のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第2のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも大きいことを特徴とする量子ドット型光検知器。
【請求項2】
前記第1及び第2のキャップ層の電荷に対するポテンシャルが、前記第1及び第2の中間層のものよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の量子ドット型光検知器。
【請求項3】
前記第1のキャップ層の厚さは、前記量子ドットの高さより小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の量子ドット型光検知器。
【請求項4】
第1の中間層上に量子ドットを形成する工程と、
前記量子ドットの側面のうちで少なくとも前記第1の中間層と接する部分を覆う第1のキャップ層を形成する工程と、
前記量子ドットの、少なくとも前記第1のキャップ層により覆われていない部分を覆う第2のキャップ層を形成する工程と、
前記第1及び第2のキャップ層の上から前記量子ドットを覆う第2の中間層を形成する工程と、
を有し、
前記第1の中間層、量子ドット、第1のキャップ層、第2のキャップ層及び第2の中間層の材料として、
前記第1のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第1のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも小さくなり、
前記第2のキャップ層と前記第1の中間層との間の格子定数の差が、前記第2のキャップ層と前記量子ドットとの間の格子定数の差よりも大きくなるものを用いることを特徴とする量子ドット型光検知器の製造方法。
【請求項5】
前記第1の中間層、第1のキャップ層、第2のキャップ層及び第2の中間層の材料として、
前記第1及び第2のキャップ層の電荷に対するポテンシャルが、前記第1及び第2の中間層のものよりも大きくなるものを用いることを特徴とする請求項4に記載の量子ドット型光検知器の製造方法。
【請求項6】
前記第1のキャップ層の厚さを、前記量子ドットの高さより小さくすることを特徴とする請求項4又は5に記載の量子ドット型光検知器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2008−205397(P2008−205397A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42733(P2007−42733)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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