説明

金型への転写部材取付け構造

【課題】金型の成形面に取付けた転写部材の剥離を抑制し、金型の耐久性を向上させる。
【解決手段】成形面3に凹部5を形成し、この凹部5に転写部材4を嵌め込む。また、この凹部5の深さを、転写部材4の厚みと同一にすることで、成形面3と転写部材4の表面とをフラット(面一)にする。また、凹部5において、側面5aの少なくとも一部、又は底面5bの少なくとも一部には、アンダーカット形状を形成する。さらに、転写部材4を熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂で形成し、これを凹部5に嵌め込んでから硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型への転写部材取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形において、シボ模様を樹脂成形品に転写するために、金型表面に発生したピンホール、ヒケ、クラック等の微小凹凸部をパテで埋めて平滑に整えてから、シボ模様を有するシート(転写部材)を接着剤によって貼付けるものがあった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−244588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金型表面に対して単に接着剤で転写部材を貼付けるだけでは、金型表面から転写部材が剥離しやすいという問題があった。この問題は、金型表面の一部分だけに接着剤で転写部材を取付ける場合に特に顕著になる。
本発明の課題は、金型の成形面に取付けた転写部材の剥離を抑制し、金型の耐久性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、
樹脂成形の金型と、前記金型の成形面に形成された凹部と、前記凹部に嵌め込まれ成形品に意匠を転写する転写部材と、を備えることを特徴とする。
このように、金型の成形面に形成した凹部に転写部材を嵌め込むことで、単なるフラットな成形面に転写部材を出っ張った状態で取付ける場合と比較して、転写部材の剥離を抑制し、金型の耐久性を向上させることができる。
【0006】
本発明の他の形態は、
前記凹部は、前記転写部材の厚みと同一深さに形成されることを特徴とする。
このように、凹部の深さを転写部材の厚みと同一にすることで、金型の成形面と転写部材の表面とをフラットになる。すなわち、金型の成形面に対する転写部材の出っ張りを防止できるので、転写部材の剥離を抑制し、金型の耐久性を向上させることができる。
【0007】
本発明の他の形態は、
前記凹部は、側面及び底面の少なくとも一部に、アンダーカット形状が形成されることを特徴とする。
このように、凹部の側面や底面の一部にアンダーカット形状を形成することで、金型からの転写部材の剥離を抑制し、金型の耐久性を向上させることができる。
【0008】
本発明の他の形態は、
前記転写部材は、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂で形成されると共に、前記凹部に嵌め込まれてから硬化されることを特徴とする。
このように、転写部材を熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂で形成し、凹部に嵌め込んでから硬化させることで、凹部への転写部材の嵌め込みを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】可動側金型及び固定側金型の概略構成図である。
【図2】凹部の側面に形成したアンダーカット形状を示す図である。
【図3】凹部の底面に形成したアンダーカット形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《構成》
図1は、可動側金型及び固定側金型の概略構成図である。
可動側金型1は、凸状に形成され、固定側金型2は、凹状に形成される。可動側金型1及び固定側金型2は、可動側金型1の成形面3と固定側金型2の成形面3を対向させて配置され、固定側金型2に対する可動側金型1の進退によって型の開閉が行われる。この型を閉じたときに、可動側金型1の成形面3と固定側金型2の成形面3によって形成された空洞部分がキャビティとなり、このキャビティに充填された溶融樹脂が冷却されて固化することで成形品が成形される。
【0011】
可動側金型1の成形面3及び固定側金型2の成形面3の少なくとも1つには、成形品に模様などの意匠を転写する転写部材4が取付けられる。具体的には、成形面3に凹部5が形成され、この凹部5に転写部材4が嵌め込まれる。凹部5の深さは、転写部材4の厚みと同一である。つまり、凹部5に転写部材4を嵌め込むと、成形面3と転写部材4の表面とがフラットになり、成形面3に対して転写部材4が出っ張らないように構成される。
【0012】
図2及び図3に示すように、凹部5には、側面5aの少なくとも一部、又は底面5bの少なくとも一部に、アンダーカット形状、つまり転写部材4の抜け止め形状が形成され、このアンダーカット形状に係合するように転写部材4が嵌め込まれる。
【0013】
図2は、凹部の側面に形成したアンダーカット形状を示す図である。
凹部5の側面5aでは、側面5aを底面5bから上方に向かって凹部5の中心側に向かって傾斜させた逆テーパ形状としたり、側面5aにおける底面5bから離れた位置に凹部5の中心側に向かって突出する突起やフランジを形成したり、側面5aに対して深さ方向に並んだ断面三角状の複数の溝を周方向に沿って形成したりする。
【0014】
図3は、凹部の底面に形成したアンダーカット形状を示す図である。
凹部5の底面では、図2で示したようなアンダーカット形状を有し、凹部5よりも小さな底面用凹部6を、凹部5の底面に形成する。すなわち、底面用凹部6の側面を逆テーパ形状としたり、側面に突起やフランジを形成したり、複数の溝を形成したりする。
【0015】
転写部材4は、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂で形成され、凹部5に嵌め込まれてから熱や光によって硬化される。すなわち、転写部材4が可撓性を有するときに、撓ませながら凹部5のアンダーカット形状へと嵌め込み、それから硬化させる。なお、アンダーカット形状となる部位に、予め転写部材4と同一材料(熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂)の粉体を充填させて、それから転写部材4を嵌め込んで熱や光によって硬化させてもよい。特に、図3のように、凹部5の底面5bに底面用凹部6を形成するような場合には、その底面用凹部6に、先ず転写部材4と同一材料の粉体を装入し、それから凹部5に単なる板状の転写部材4を嵌め込んで硬化処理を行うとよい(嵌め込みの容易性や転写部材4の成形性のため)。
【0016】
なお、側面5aや底面5bに形成するアンダーカットの形状(角度や深さ等)、数、組合せについては任意とする。
【符号の説明】
【0017】
1…可動側金型、2…固定側金型、3…成形面、4…転写部材、5…凹部、5a…側面、5b…底面、6…底面用凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形の金型と、
前記金型の成形面に形成された凹部と、
前記凹部に嵌め込まれ成形品に意匠を転写する転写部材と、を備えることを特徴とする金型への転写部材取付け構造。
【請求項2】
前記凹部は、前記転写部材の厚みと同一深さに形成されることを特徴とする請求項1に記載の金型への転写部材取付け構造。
【請求項3】
前記凹部は、側面及び底面の少なくとも一部に、アンダーカット形状が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の金型への転写部材取付け構造。
【請求項4】
前記転写部材は、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂で形成されると共に、前記凹部に嵌め込まれてから硬化されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の金型への転写部材取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−213071(P2011−213071A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85815(P2010−85815)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】