説明

金型内部情報計測センサー

【課題】ダイカストの品質管理はダイカストマシン側からのデータを基に制御するものの、金型からの情報管理は、ほとんどなかったため、ガスを巻き込んだ巣のある不良品を後段の工程に流すことが防止できず、結果として歩留まりを低下させていた。
【解決手段】金型ダイスに穿設されキャビティに開口する装着孔に装着可能なロッド形ケーシングと、前記ロッド形ケーシングに内挿されその軸芯方向に可動で金型キャビティ面に先端面を一致可能な圧力伝達ロッドと、前記圧力伝達ロッドの後端に対面して固定保持され、キャビティに注入された溶湯の圧力を検知可能な圧力センサーとを設けて、キャビティ内溶湯圧を検出する。前記圧力伝達ロッドの中心部に形成された細孔に装着され、前記細孔のロッド先端部側に検知端を有する熱電対からなる温度センサーと、を備えてキャビティ内溶湯温度を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金、マグネシュウムなどの金属材料を加圧鋳造するダイカストマシンの金型内の溶湯や、樹脂成形用の金型内の溶湯の樹脂圧、ガス圧、または溶湯温度を検知して、鋳造・樹脂成形品の良否を判定するのに好適な金型内部情報計測センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト製品の品質は、金属溶湯を金型内に充填する際の射出速度や射出圧力に影響されることが知られている。ダイカストマシンにおける金型に金属溶湯を充填する射出工程では、プランジャスリーブに金属溶湯を供給し、金属溶湯の空気の巻き込み等を避けるためにプランジャを低速の射出速度で駆動しプランジャスリーブと製品ライナー部が満杯になるまで前進する。次いで、金属溶湯の先端が金型の湯口に達する位置までプランジャが移動したら、プランジャを高速の射出速度に切り換えて駆動し、金属溶湯を金型のキャビティに急速に充填する。次いで、金型のキャビティに金属溶湯が充填されたらプランジャの圧力を上昇させて、金属溶湯を加圧する。
【0003】
ダイカストマシンに使用される金型は、図8に示すように可動ダイス1aと固定ダイス1bで構成されている。両ダイス1a、1bで形成されるキャビティ2には、射出シリンダーに続く、鋳込口3a、湯道3b、湯口3cが設けられ、さらにキャビティ2内のガスを抜くガス抜き4、湯溜り5を設けている。
【0004】
図9は、ダイカストマシンにおいて、金型のキャビティ2に溶湯金属を充填する状態を示す断面図である。同図において、プランジャスリーブ6の注湯口6aを通じて所定量の金属溶湯MLを、ラドルを使用して、供給する。この図では、所定量の金属溶湯MLをプランジャスリーブ6内に供給した状態からプランジャ7を低速駆動させて射出している状態を示している。低速射出状態では、プランジャチップ7aの前方には金属溶湯MLとともにガスGが存在しており、プランジャスリーブ6内の金属溶湯MLをキャビティ2に導く湯道3bにもガスGが存在している。また、図9に示す位置FPは、プランジャ7を低速移動から高速移動に切り替えるポイントである。プランジャチップ7aがこの位置FPまで到達すると、プランジャスリーブ6内および湯道3bに金属溶湯MLが充填され、金属溶湯MLの先端部が湯口3cに達する位置、すなわち、キャビティ2への金属溶湯MLの充填が開始される充填開始位置である。
【0005】
図10は、射出鋳造時のプランジャ7の射出速度J、射出圧力K、メタル圧L、ガス圧M、メタル温度Tの変化波形を時間軸に沿って時系列的に表示した図である。この図で、射出圧力は、プランジャ7が高速の射出速度で移動している間は、略一定の値をとる。その後、充填圧力は昇圧によって急上昇し保持する。一方、プランジャ7が高速の射出速度で移動している間は、メタル圧力が殆ど上がらず、キャビティ2の金属溶湯MLが充満するとほぼマシン圧力まで上昇するが、湯口3cの溶湯金属が凝固するとともに降下を開始する。
【0006】
ところで、金属溶湯には酸化膜やプランジャスリーブへの充填時に凝固膜が生じる。金属溶湯MLが湯口3cに達し、充填中、射出動作で砕かれた凝固膜や酸化膜などが入口のゲート部に引っかかると、湯の供給が断たれ、図10に示すキャビティ2への溶湯金属のメタル圧が上がらず、途中で腰砕け状態の曲線B、曲線Cを描き、正規のメタル圧曲線Aに達せず、成形した製品は加圧されないので、内部に気泡が多く残留した不良品となる。
【0007】
ダイカスト製品の約95%はアルミニュウム主体の材料で、コールドチャンバーダイカストマシンで生産されているが、日本工業規格(JIS)ではこの機械的性質(引張強さ、伸び)が表示されていない。この主な原因は、コールドチャンバーに注がれた溶湯が、射出動作で砕かれた凝固膜や酸化膜などが入口のゲート部に引っかかると溶湯の供給が断たれて圧力が伝わらず、外観は良品と変わらなくても内部に多数の巣ができ、多孔質の製品ができる可能性が高く、品質の面で機械的性質の評価ができない問題があったからである。このような多孔質の製品は著しく機械的性質が悪くなる。
【0008】
金型キャビティ内のガス抜きベントは複数個あるため、すべてのガス抜きベントにガス流量計を取付けてガス流量を測定しこの測定したガス流量で製品の品質を管理することは非常に困難であった。またガス抜きベントからガス圧力を検出する方法もあるが、ガスベントにバリが付着し安定検出ができず、また中子の合わせ面からのガスの排出もあり、検出が不可能であった。
【0009】
真空ダイカスト法により鋳造することによって、ダイカスト製品へのガスの含有を抑制し、ダイカスト製品のガスの含有による品質のばらつきを低減する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。しかし、これも真空度の計測が難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−332558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のダイカストの品質管理はダイカストマシン側からのデータを基に制御するものの、金型からの情報管理は、ほとんどなかった。金型キャビティ内のガスが抜けきらなければ金型キャビティ内圧は上昇するものの、鋳物製品中へのガス巻き込み等の影響を受けて不良率が高くなって品質の面で問題があった。
また、金型内に冷却水が残ったり、金型亀裂で浸み出したりした場合、水分に溶湯が触れた瞬間、金型内で爆発を発生させていたが、金型からの情報は取れなかった。
【0012】
鋳造ショット毎に、ダイカスト製品が十分な強度を有するものであるか否かを判定することができれば、不良品を後段の工程に流すことが防止され、結果として歩留まりを向上させることができる。したがって、ダイカストマシンを使用して、金型に形成されるキャビティに、溶融されたアルミニウム合金等の溶湯金属を射出し、鋳物製品を鋳造する場合、射出時における金型内の溶湯金属の圧力および溶湯金属の温度、前記キャビティ内のガスが溶湯金属の充填によって圧縮するガス圧を測定する必要性があり、キャビティ内のガスの放出を確実に行うことは、品質の安定生産上重要である。
【0013】
このようなダイカストマシンにおけるメタル圧力や温度、ガス圧を検出する必要性は、金型による樹脂成形の場合も同様である。
本発明は、プランジャスリーブ内に定量給湯した金属・樹脂などの溶湯を、プランジャにより金型のキャビティ内に加圧充填し、製品を鋳造・成形する加圧鋳造品の良否判定を行うのに好適な金型内部情報計測センサーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る金型内部情報計測センサーは、金型ダイスに穿設されキャビティに開口する装着孔に装着可能なロッド形ケーシングと、前記ロッド形ケーシングの先端に配置されて金型キャビティ面に先端面を一致可能であって溶湯からガスを分離可能な多孔質フィルターと、この多孔質フィルターの後方に設けられ当該多孔質フィルターを通じて導入されるキャビティガスの導入室と、前記ガス導入室の圧力を検出するガス圧センサーと、を有し、キャビティ内ガス圧を検出可能としてなる。
【0015】
また、本発明は、金型ダイスに穿設されキャビティに開口する装着孔に装着可能なロッド形ケーシングと、前記ロッド形ケーシングの先端に配置されて金型キャビティ面に先端面を一致可能であって溶湯からガスを分離可能な多孔質フィルターと、この多孔質フィルターの後方に設けられ当該多孔質フィルターを通じて導入されるキャビティガスの導入室と、前記ガス導入室の圧力を検出するガス圧センサーと、を有するとともに、前記ロッド形ケーシングに内挿され、その軸芯方向に可動で金型キャビティ面に先端面を一致可能な圧力伝達ロッドと、前記圧力伝達ロッドの後端に対面して固定保持され、キャビティに注入された溶湯の圧力を検知可能な圧力センサーと、を有し、キャビティ内ガス圧およびキャビティ内溶湯圧を検出可能としてなることを特徴とする金型内部情報計測センサーである。
【0016】
更に、金型ダイスに穿設されキャビティに開口する装着孔に装着可能なロッド形ケーシングと、前記ロッドケーシングの先端に配置されて金型キャビティ面に先端面を一致可能であって溶湯からガスを分離可能な多孔質フィルターと、この多孔質フィルターの後方に設けられ当該多孔質フィルターを通じて導入されるキャビティガスの導入室と、前記ガス導入室の圧力を検出するガス圧センサーと、を有するとともに、 前記ロッド形ケーシングに内挿され、その軸芯方向に可動で金型キャビティ面に先端面を一致可能なロッドと、前記ロッドの中心部に形成された細孔に装着され、前記細孔のロッド先端部側に検知端を有する熱電対からなる温度センサーと、を有し、キャビティ内ガス圧およびキャビティ内溶湯温度を検出可能としてなることを特徴とする金型内部情報計測センサーとすることもできる。
【0017】
加えて、本発明は、金型ダイスに穿設されキャビティに開口する装着孔に装着可能なロッド形ケーシングと、前記ロッド形ケーシングの先端に配置されて金型キャビティ面に先端面を一致可能であって溶湯からガスを分離可能な多孔質フィルターと、この多孔質フィルターの後方に設けられ当該多孔質フィルターを通じて導入されるキャビティガスの導入室と、前記ガス導入室の圧力を検出するガス圧センサーと、を有するとともに、前記ロッド形ケーシングに内挿され、その軸芯方向に可動で金型キャビティ面に先端面を一致可能な圧力伝達ロッドと、前記圧力伝達ロッドの後端に対面して固定保持され、キャビティに注入された溶湯の圧力を検知可能な圧力センサーと、前記圧力伝達ロッドの中心部に形成された細孔に装着され、前記細孔のロッド先端部側に検知端を有する熱電対からなる温度センサーと、を有し、キャビティ内ガス圧、キャビティ内溶湯圧、およびキャビティ内溶湯温度を検出可能としてなることを特徴とする金型内部情報計測センサーとしてもよい。
【0018】
上記構成に加えて、前記ロッド形ケーシングの外周に摺動自在に取り付けられる食込み継手と、前記装着孔への止めネジとからなる固定ユニットを有しており、金型ダイス厚に応じてロッド挿入長さを調整可能とすればよい。
また、前記ガス導入室に圧縮空気供給手段を接続し、前記多孔質フィルターにパージエアを供給可能な構成とすることができる。
【0019】
本発明に係る金型内部情報計測センサーは、金型ダイスに穿設されキャビティに開口する装着孔に装着可能で、前記金型ダイス厚さより長尺なロッド形ケーシングと、 前記ロッド形ケーシングの基端部に設けられたセンサーブロックと、前記ロッド形ケーシングの先端に配置されて金型キャビティ面に先端面を一致可能であって溶湯からガスを分離可能な多孔質フィルターと、前記センサーブロックに形成され、前記多孔質フィルターを通じて導入されるキャビティガスの導入室と、前記センサーブロックに装備され前記ガス導入室の圧力を検出するガス圧センサーと、を有し、キャビティ内ガス圧を検出可能としてなることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る金型内部情報計測センサーは、金型ダイスに穿設されキャビティに開口する装着孔に装着可能で、前記金型ダイス厚さより長尺なロッド形ケーシングと、前記ロッド形ケーシングの基端部に設けられたセンサーブロックと、前記ロッド形ケーシングの先端に配置されて金型キャビティ面に先端面を一致可能であって溶湯からガスを分離可能な多孔質フィルターと、前記センサーブロックに形成され、前記多孔質フィルターを通じて導入されるキャビティガスの導入室と、前記センサーブロックに装備され前記ガス導入室の圧力を検出するガス圧センサーと、を有するとともに、前記ロッド形ケーシングに内挿され、その軸芯方向に可動で金型キャビティ面に先端面を一致可能な圧力伝達ロッドと、前記圧力伝達ロッドの後端に対面して前記センサーブロックとの間に保持され、キャビティに注入された溶湯の圧力を検知可能な圧力センサーと、を有し、キャビティ内ガス圧およびキャビティ内溶湯圧を検出可能としてなることを特徴とする。
前記多孔質フィルターをリング状としてその中心部に圧力伝達ロッドを挿通した構成とし、前記圧力伝達ロッドの中心部にはロッド先端部に達する細孔を形成して内部に熱電対を配置する構成とすればよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、プランジャスリーブ内に定量給湯した溶湯金属をプランジャにより、金型に溶湯金属を加圧充填し、製品を鋳造する加圧鋳造装置に使用され、前記金型のキャビティ内をモニタリングすることができる。特に、金型側のメタル圧力を計測する事でゲートに破断凝固片が引っかかった場合、圧力異常として検出し、また凝固収縮による圧力降下速度を監視する事で品質管理ができる。
【0022】
また、キャビティ(製品部の型)のガス(空気と水蒸気などの混合気体)の圧力や真空ダイカスト法では真空度などを管理する事でゲートから入ってくる溶湯のガス巻込みを管理する事ができる。さらに、キャビティからは入ってきた溶湯は、瞬時に凝固するのでこの時の金型温度を計測し溶湯の温度を管理することができる。
【0023】
ダイカストの生産現場は環境が劣悪であり、この3つのセンサーを一本のセンサーに包含しピンの先端を金型面(製品の裏面など)に簡単に取付け、取り外しすることができるので、作業効率が良い。また、キャビティ内圧力検出部に適宜、モニタリング装置を接続し、射出波形及びキャビティ内圧力波形を、時間軸を共通にして観察することも可能である。溶湯金属の圧力、前記キャビティ内のガスが溶湯金属の充填によって圧縮するガス圧を測定するために、複数の計測センサーを一体化することにより、金型に着脱する作業時間を削減し、取り付けるコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る金型内部情報計測センサーの縦断面図である。
【図2】第1実施形態に係る金型内部情報計測センサーを構成しているセンサーブロック本体の断面図である。
【図3】第1実施形態に係る金型内部情報計測センサーのセンサーブロックの部分断面平面図である。
【図4】第1実施形態に係る金型内部情報計測センサーの側面図である。
【図5】第1実施形態に係る金型内部情報計測センサーを先端に装着した計測ロッドを金型ダイスに取り付けた状態の模式断面図である。
【図6】第2実施形態に係る金型内部情報計測センサーの構造を模式的に示す断面図である。
【図7】第2実施形態に係る金型内部情報計測センサーを先端に装着した計測ロッドの全体構成を示す縦部分断面図である。
【図8】図8はダイカストマシンに使用される金型を一部切欠いた斜視図である。
【図9】図9は、本発明の金型のキャビティに金属溶湯を充填する状態を示す断面図である。
【図10】図10は加圧鋳造時のメタル圧、ガス圧、金型温度を時系列として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明に係る金型内部情報計測センサーの実施形態につき、図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図5は、第1実施形態に係る金型内部情報計測センサー100を示しており、図1は金型内部情報計測センサー100の縦断面図、図2はセンサーブロック本体の断面図、図3はセンサーブロックの部分断面平面図、図4は図1の右側面図、図5は金型への取り付け状態を示す模式断面図である。
【0026】
この第1実施形態に係る金型内部情報計測センサー100は、金型の可動ダイス1a(若しくは固定ダイス1b)に装着できるようにしている。このため、可動ダイス1aには、図5に示すように、その背面からキャビティ2に達する装着孔8が穿孔されている。そして、金型内部情報計測センサー100は、前記装着孔8に挿入され、先端面をキャビティ2の表面に一致させるように取り付けられる計測ロッド102と、当該計測ロッド102の基端に設けられ可動ダイス1aの外部に位置されるセンサーブロック104とを有している。
【0027】
可動ダイス1aの厚みに対応できるように、計測ロッド102の途中の外周部分には、食込み継手106と止めネジ108からなる固定ユニット110が摺動可能に取り付けられている。金型のキャビティ2の面に合わせて計測ロッド102の先端部位置を調整し、止めネジ108を可動ダイス1aの装着孔14に締め付け、食込み継手106を回して計測ロッド102の外周面に食込ませることによって、計測ロッド102が定位置に固定される。
【0028】
図1に示しているように、計測ロッド102は、外筒ケーシング112と、その中心部に軸芯方向に沿って配置される圧力伝達ロッド114とを有している。前記圧力伝達ロッド114は、前記外筒ケーシング112の内径よりは小径の外径を持つ円柱体であり、外筒ケーシング112と圧力伝達ロッド114の間に通気路115を形成している。計測ロッド102の先端部にて、外筒ケーシング112の内径を少し拡径させるとともに、前記圧力伝達ロッド114の先端もロッド本体部分より小径断面に形成しており、この間にロッド先端側からリング状の多孔質フィルター116とガイドブッシュ118とを順に並んで装着させている。多孔質フィルター116は、第1実施形態と同様に、アルミナセラミックス、カーボンナノチューブ等のアルミなどの金属溶湯が浸入しない微細空孔を有する素材で構成される。また、ガイドブッシュ118は、熱伝導性の低い窒化ケイ素やジルコニアなどの硬質セラミックから形成されている。これは、滑り軸受として、前記圧力伝達ロッド114の先端部を軸方向に摺動可能に保持しつつ、外筒ケーシング112の中心部に位置保持する。これにより、計測ロッド102の先端面は、最外周に外筒ケーシング112の端面、中心部に圧力伝達ロッド114の端面、それらの間に多孔質フィルター116が同心円状に配列して、可動ダイス1aに取り付けることによって金型キャビティ2の一部を構成可能となっている。また、ガイドブッシュ118には、前記通気路115と多孔質フィルター116側との間を連通する通気孔119が形成されている。これにより、キャビティ2内のガスがフィルター116で溶湯と分離されて通気路115に導入可能となっている。
【0029】
ところで、計測ロッド102の基部はセンサーブロック104に取り付けられる。センサーブロック104は、図2に示すような矩形のブロック本体120を有している。このブロック本体120には、ガス導入室122が一面に開口形成され、隔壁124を挟んで、反対面に第1センサー室126が同一軸芯上に並んで開口形成されている。前記隔壁124にはガス導入室122と第1センサー室126とを連通する貫通孔128が形成されている。
【0030】
このようなセンサーブロック104に対して前記計測ロッド102が取り付けられる。外筒ケーシング112の基端部が前記ガス導入室122の入口開口に拡開形成されたケーシング取付孔122aに装着され、ケーシング外周とブロック本体120とのコーナ部分にて溶接により結合されている。
【0031】
また、計測ロッド102における圧力伝達ロッド114の基端は外筒ケーシング112より長くなっており、この基端部は前記貫通孔128に挿通され、第1センサー室26に延在している。前記貫通孔128は、Oリング130にて圧力伝達ロッド114との隙間を封止しつつ、圧力伝達ロッド114を軸受支持する。したがって、圧力伝達ロッド114は、外筒ケーシング112の先端部内周に設けられたガイドブッシュ118と、センサーブロック104の隔壁124に設けられた貫通孔128とにより2点支持されて、外筒ケーシング112の内部でその軸芯方向に移動可能となる。圧力伝達ロッド114の先端が圧力を受けることにより、当該ロッドが軸方向に押圧され、センサーブロック104の第1センサー室126の開口側に向けて移動される。
【0032】
前記圧力伝達ロッド114の基端部端面には、ドーナツリング状に形成されている圧力センサー134がセンサー固定ボルト136によりプリロードが掛けられた状態で取り付けられている。一方、センサーブロック104には、前記圧力センサー134を圧力伝達ロッド114との間で挟着するように、圧力伝達ロッド114に基端面に対向して、第1センサー室126の開口を覆うブロック蓋132が取り付けられている。これにより、圧力伝達ロッド114の先端で受けた力が、ブロック蓋132の内面部を支持面として、圧力センサー134に伝わり、その荷重を検出することができる。この圧力センサー134は、実施形態の場合、セラミック圧電素子を用いた圧電型荷重検出センサーにより形成されている。これにより、キャビティ2内に充填された溶湯のメタル圧を計測することができる。
【0033】
圧力伝達ロッド114は軸方向に可動となっているため、先端で圧力を受けた場合はブロック蓋132で押さえられるので、実質的に位置移動はないが、無圧状態では、圧力伝達ロッド114は勝手に前進するおそれがある。これを防止するために、図3、4に示しているように、センサーブロック104の外面から第1センサー室126内に延在するストッパボルト139が取り付けられている。このストッパボルト139は、位置決めされた圧力センサー134の前面部外縁にボルト先端を当接させるように取り付けられ、これにより、圧力センサー134をブロック蓋132との間で挟着するようにしている。
【0034】
一方、計測ロッド102の外筒ケーシング112と圧力検出ロッド114との間に形成されている通気路115は、センサーブロック104の内部でガス導入室122に連通されている。センサーブロック104には、図1,2に示しているように、ガス導入室122に通じる第2センサー室138がブロック外周面に開口形成されている。この第2センサー室138の開口部には、ガス圧センサー140が開口部を密封するように配置され、そのセンサー外面を押さえブロック142により押さえ込んでいる。押さえブロック142はセンサーブロック104にボルト締めによって固定されている。前記ガス圧センサー140はドーナツリング状の形態のもので、上述した圧力センサー134と同様なセラミック圧電素子を用いた圧電型荷重検出センサーが使用され、センサー固定ボルト144でプリロードが掛けられた状態で押さえブロック142に固定されている。これにより、計測ロッド102の先端の多孔質ガス導入室122に導入されたガス圧は、第2センサー室138の開口部に面しているガス圧センサー140の全面に作用するものとなっている。したがって、計測ロッド102の先端側の多孔質フィルター116を通じて導入されたキャビティ2内のガスが、通気路115を経由してガス導入室122から第2センサー室138に導入され、ガス圧センサー140によってその圧力を計測できる。
【0035】
ところで、前記ガス導入室122には、パージエア導入孔146が開口されている。このパージエア導入孔146には圧縮エア供給管148が接続され、系外の圧縮空気源(図示せず)から圧縮エアを供給できるようにしている。これにより、圧縮エアを、ガス導入室122を介して、前述した多孔質フィルター116側に流し、フィルター44の目詰まりをチェックすることができる。鋳造サイクル中の製品が無い状態でパージエアを切って、一定時間後に残圧の有無をガス圧センサー140で検出して、残圧を確認し多孔質フィルター116が正常かどうかを、ショット毎にチェックをする。鋳造中は通気遮断を行なう必要があるため、パージエア導入孔146までの経路中には逆止弁(図示せず)を介装しておけばよい。
【0036】
また、前述した圧力伝達ロッド114の軸芯部に細孔150が穿設されている。この細孔150は圧力伝達ロッド114の先端に近傍に達するものとし、ロッドによるメタル圧検出が可能な少しの肉厚を残す深さに形成している。この細孔150の内部にはシース型熱電対152が装填されている。シース型熱電対152はシース管の内部に絶縁材を充填して素線を埋め込んだ一般的なものを利用することができる。このシース型熱電対152は、検出端を圧力伝達ロッド114の先端部側に向け、シース管の基端を前記センサー固定ボルト136の先端部で押付けるようにしている。押付け力を保持するために、センサー固定ボルト136のボルト先端とシース型熱電対152のシース管端部との間に押さえバネ154と、押さえ駒156が細孔150に収容されている。したがって、センサー固定ボルト136で圧力センサー134を固定すると同時に、押さえ駒156を押付け、押さえバネ154によってシース管を所定の力で押圧し、熱電対152の検出端が圧力伝達ロッド114の先端位置に保持される。シース型熱電対152のリード線158は、圧力伝達ロッド114の基端に形成した切り込み溝160を介してブロック外に導出される。
【0037】
実施形態では、センサーブロック104に端子ボックス162を付帯させ、ここに圧力センサー134、ガス圧センサー140、シース型熱電対152の各種リード線を導いている。そして、端子ボックス162を介して各センサー類は計測器に接続され、所定の計測データを出力し、必要に応じて表示手段に表示させることができる。なお、圧力センサー134のリード線引出しのためにセンサーブロック104には第1センサー室126に至る引出し通路164を形成している。
【0038】
このように構成された金型内部情報計測センサー100は、実施形態の場合、型開した状態で、可動ダイス1aに形成した装着孔14に計測ロッド102を差し込み、その先端面がキャビティ3と同一面となるようにし、固定ユニット110により定位置に固定する。装着が終了した後、射出動作に入ると、キャビティ2内に溶湯が充填され、キャビティ2に臨んだ計測ロッド102の先端に溶湯のメタル圧が作用し、圧力伝達ロッド114が押され、この力が圧力センサー134により検出される。同時に、多孔質フィルター116を通じてキャビティ内部のガスが通気路115を経てガス導入室122に導入され、そのガス圧がガス圧センサー140により検出される。また、圧力伝達ロッド114の先端部に設けられているシース型熱電対152が溶湯温度を検出する。これらのデータは図示しない計測器により時系列的に計測され、図10に示したようなメタル温度、金型内ガス圧、メタル温度が計測される。
【0039】
ワンショットの射出成形が終了し、型開して製品を取り出した後、離型剤をキャビティ表面に塗布する際、圧縮エアをパージエアとして圧縮エア供給管148からガス導入室122、通気路115を介して多孔質フィルター116に通気させる。これにより、フィルター116に離型剤が付着することを防止すると共に、フィルター116の目詰まりを防止するようにしている。エアパージの際、ガス圧センサー140による検出圧が大気圧もしくは通気抵抗を含んだ圧力よりも上昇した場合、フィルター116が溶湯により目詰まりしたと判定し、フィルター116の交換作業に入ることができる。
【0040】
ここで、多孔質フィルター116の交換する場合は、次のように行なわれる。まず、圧力センサー134のストッパボルト139(図3参照)を緩めて、センサーとの係合を外し、次いで、ブロック蓋132の外面から押しボルト166(図4右端の想像線)によりセンサー固定ボルト144を押付け、前進移動させる。これにより圧力伝達ロッド114が移動し、ガイドブッシュ118を押して多孔質フィルター116を先端から外に押出す。これを取り外し、フィルター交換を行なって、圧力伝達ロッド114とともに、新規の多孔質フィルター116を外筒ケーシング112に収容するように押付ける。圧力センサー134がブロック蓋132に当接するまで移動させたら、ストッパボルト139を回し込み、ボルト先端を圧力センサー134の前面外縁に係合させることにより、交換作業が終了する。
【0041】
このような第1実施形態に係る金型内部情報計測センサー100によれば、キャビティ2に充填されている溶湯の直接的な情報であるため、従来のように金型表面やマシンから間接的な情報しか得ることが出来なかった場合に比較し、ダイレクトな情報として鋳造品の良否判定に利用することができ、後続する工程に不良品を送り出すことが防止され、歩留まり向上に大幅に寄与することができる。
【0042】
本実施形態では、金属溶湯の圧力を測定するセンサー、溶湯の温度を測定するセンサー、およびキャビティ内で溶湯充填によって圧縮するガス圧を測定するセンサーを複合一体化した金型内部情報計測センサー100となっているため、金型面に簡単に取り付けたり、取り外したりすることができ、作業効率が良いものとなっている。更に、メタル圧・ガス圧・メタル温度の三位一体の金型内部情報計測センサー100を使用して、キャビティ2内圧力計測部に、適宜、モニタリング装置を接続すれば、射出圧力波形及びキャビティ2内部のガス圧力波形を、メタル温度情報とともに時間軸を共通にして観察することも可能である。
メタル圧、ガス圧、メタル温度の検知は金型可動ダイス1aのキャビティ2の面で行なうが、センサー類を備えるセンサーブロック104は、固定ユニット110の外側、すなわち金型から離れた位置に置かれるため、センサー類への熱的影響を回避することができる。計測ロッド102の長さを任意に調整しても、センシング作用に影響しない。
【0043】
また、圧力センサー134やガス圧センサー140はセラミック圧電素子を利用した圧電型荷重検出センサーであるが、これらは密閉空間に配置されるのではなく、オープン状態で取り付けられて空冷されるので、この点でも熱的影響を回避できる。
【0044】
メタル温度計測は圧力伝達ロッド114の先端で行なわれるが、圧力伝達ロッド114自体は、外筒ケーシング112と多孔質フィルター116、断熱性のあるガイドブッシュ118、並びに通気路115で熱的に遮断されており、金型ダイスとは直接的に接する構造とは成っていない。そのため、メタル温度を金型温度による影響を受けることなく計測することができる。これにより精度の高いメタル温度検出が可能となっている。
【0045】
上述した各実施形態では、複合型溶湯センサーとした構成例を示したが、キャビティ内ガス圧検出、メタル圧検出、メタル温度検出をそれぞれ単独で検出するように構成することも可能であり、また2種の検出機能を組み合わせた構成とすることも可能である。
更に、上記実施形態では、ダイカストマシンへの適用例を説明したが、樹脂射出成形装置の金型への適用も可能であり、この場合においても、射出時のキャビティガス圧、樹脂圧、樹脂温度の計測ができるのはいうまでもない。
【0046】
次に、図6〜図7に第2実施形態に係る金型内部情報計測センサー210を示す。この実施形態は、センサー部を備えた金型内部情報計測センサー210を計測ロッドの先端に取り付けた構成として小型チップ化したものである。
図6〜図7は、本発明をダイカストマシンに適用した第2実施形態に係る金型内部情報計測センサー210と(図6)、これを装備した計測ロッド212(図7)を示している。この金型内部情報計測センサー210は、前記第1実施形態と同様に、キャビティ2内のメタル圧、ガス圧、温度の変化を計測するものである。
【0047】
ロッドタイプの計測ロッド212は、可動ダイス1aに取り付けるようにしている。図7に示しているように、可動ダイス1a(若しくは固定ダイス1b)にはその背面からキャビティ2に達する装着孔8が穿孔され、計測ロッド212をダイス背面から差込み、ロッド先端がキャビティ面に一致するように取り付けるものとしている。可動ダイス1aの厚みに対応できるように、計測ロッド212のロッド形ケーシング216の途中の外周部分に、食込み継手218と止めネジ220からなる固定ユニット222が摺動可能に取り付けられている。金型のキャビティ2の面に合わせてロッド先端部位置を調整し、止めネジ220をダイス1aの装着孔8の入口部に形成した雌ネジ部に締め付け、食込み継手218を回してケーシング216に食込ませることによって、計測ロッド212が定位置に固定される。
【0048】
計測ロッド212の先端には、実施形態に係る金型内部情報計測センサー210が装備されており、このセンサー210の詳細を図6の断面図に示す。この金型内部情報計測センサー210は、前記ロッド形ケーシング216と外径が同一で、同心的にロッド形ケーシング216の先端部に螺着される円筒ケース224を有し、その内部にメタル圧計測部と、ガス圧計測部、並びに溶湯温度計測部とを備えたものである。
【0049】
メタル圧計測部は次のようになっている。前記円筒ケース224は、キャビティ2と同一面に沿うエンドプレート部226と、後方の仕切り板部228とを有し、これら両者の中間部に形成された空間部(ガス導入室)230を有している。円筒ケース224の中心部にはその軸芯方向に沿って、前記エンドプレート部226と仕切り板部228とに軸支された圧力伝達ロッド232が軸方向に摺動可動に取り付けられており、キャビティ2に充填された溶湯MLから受けた圧力を後方に伝達可能としている。圧力伝達ロッド232の後端部にはフランジ232aが設けられ、このフランジ232aを前記仕切り板部228に形成した凹陥部に嵌着させている。また、仕切り板部228の背面(キャビティ2と反対側)には、その背面全体を覆うように、押さえ蓋234がボルト236で固定されている。押さえ蓋234には、前記圧力伝達ロッド232のフランジ232aと対面する位置にロードセル238が取り付けられている。これにより、前記圧力伝達ロッド232が溶湯MLから直接受けたメタル圧を計測できるようになっている。
【0050】
前記ロードセル238の代わりに、圧電式の圧カセンサ(耐熱温度300度、計測溶湯温度850度以下、最大計測圧力200MPa)を用いることもできる。圧電効果を持つ材料は、構造的にもセンサーの検知部が溶湯により近い箇所に設置でき、間接測定に比べ誤差要因が小さいことが期待できる。このようなセンサーを用いることで充填時の溶湯の圧力伝達から、溶湯の状態変化を知ることが可能となり、圧カ保持時間などを評価することができる。
なお、圧力伝達ロッド232の途中には断熱系セラミック部材240を介在させ、溶湯MLからの熱を断熱し、計測部側を断熱保護するようにしてもよい。
【0051】
次に、ガス圧計測部の構成は次のようになっている。前記エンドプレート部226の先端面には、前記圧力伝達ロッド232の周囲を取り囲むように、環状凹部242が形成されている。この環状凹部242には、溶湯アルミなどの液相材料は通さないがガスを通すリング状の多孔質のフィルター244が装着されている。このフィルター244としては、例えば、アルミナセラミックス、カーボンナノチューブ等のアルミなどの金属溶湯が浸入しない微細空孔を有する素材で構成される。
【0052】
また、前記フィルター244が装着された環状凹部242の底板部分には前記円筒ケース224の空間部230に通じる通気路246が形成されている。これにより、フィルター244を通じて導入されるキャビティ2からのガスが、空間部230に導入されるようにしている。空間部230には、ガス圧センサー248が取り付けられている。この実施形態では前記仕切り板部228の板面に固定されている。これにより、フィルター244で気液分離されたガスが空間部230に導入され、空間部230内の圧力をガス圧として検知することができる。
【0053】
ところで、前記空間部230を形成している仕切り板部228と、これに接合されている押さえ蓋234には、ロッド形ケーシング216に通じるパージエア導入孔250が形成されている。このパージエア導入孔250は系外の圧縮空気源(図示せず)に接続され、フィルター244の目詰まりチェックとしてサイクル中の製品が無い状態で圧力と流量をコントロールされたエアを流し、ガス圧センサー248で圧力を確認しフィルター244が正常かどうか毎ショットチェックをする。鋳造中は通気遮断を行なう必要があるため、パージエア導入孔250には逆止弁252を介装しておく。
【0054】
また、メタル温度を計測するための構成は次のようになっている。前記圧力伝達ロッド232の軸芯部に細孔254が穿設されている。この細孔254は圧力伝達ロッド232の先端に近傍に達するものとし、ロッドによるメタル圧検出が可能な少しの肉厚を残す深さに形成している。この細孔254に熱電対256を取り付け、溶湯温度を検出させるようにしている。細孔254は熱電対256のリード線256aの引出し通路として利用される。
なお、ロードセル238、ガス圧センサー248、熱電対256のリード線は仕切り板部228や押さえ蓋234に設けた通路、ロッド形ケーシング216を介して系外の計測器に接続される。
【0055】
上述のように構成された金型内部情報計測センサー210は、実施形態の場合、型開した状態で、可動ダイス1aに形成した装着孔8に計測ロッド212を差し込み、先端の金型内部情報計測センサー210の先端面がキャビティ2と同一面となるようにし、固定ユニット222により定位置に固定する。装着が終了した後、射出動作に入ると、キャビティ2内に溶湯が充填され、キャビティ2に臨んだ金型内部情報計測センサー210の先端に溶湯のメタル圧が作用し、圧力伝達ロッド232が押され、この力がロードセル238により検出される。同時に、フィルター244を通じてキャビティ内部のガスが空間部230に導入され、そのガス圧が検出される。また、圧力伝達ロッド232の先端部に設けられている熱電対256が溶湯温度を検出する。これらのデータは図示しない計測器により時系列的に計測され、図10に示したようなメタル温度、金型内ガス圧、メタル温度が計測される。
【0056】
ワンショットの射出成形が終了して型開して製品を取り出した後、離型剤をキャビティ表面に塗布する際、圧縮エアをパージエアとして空間部230を介してフィルター244に通気させ、フィルター244に離型剤が付着することを防止すると共に、フィルター244の目詰まりを防止するようにしている。エアパージの際、ガス圧センサー248による検出圧が大気圧もしくは通気抵抗を含んだ圧力よりも上昇した場合、フィルター44が溶湯により目詰まりしたと判定し、フィルター244の交換作業に入ることができる。
【0057】
このような第2実施形態に係る金型内部情報計測センサー210によれば、第1実施形態の場合と同様に、キャビティガス圧や、キャビティ2に充填されている溶湯のメタル圧やメタル温度を直接的に計測できるので、ダイレクトなキャビティ内部情報を得ることが出来、これを鋳造品の良否判定に利用することができ、後続する工程に不良品を送り出すことが防止され、歩留まり向上に大幅に寄与することができる。
【0058】
また、金属溶湯の圧力を測定するセンサー、溶湯の温度を測定するセンサー、およびキャビティ内で溶湯充填によって圧縮するガス圧を測定するセンサーを複合一体化した金型内部情報計測センサー210となっているため、金型面に簡単に取り付けたり、取り外したりすることができ、作業効率が良いものとなっている。更に、メタル圧・ガス圧・メタル温度の三位一体の金型内部情報計測センサー210を使用して、キャビティ2内圧力計測部に、適宜、モニタリング装置を接続すれば、射出圧力波形及びキャビティ2内部のガス圧力波形を、メタル温度情報とともに時間軸を共通にして観察することも可能である。
【0059】
特に、この第2実施形態では、計測ロッド212の先端に小型チップ化した金型内部情報計測センサー210としているので、取り扱いが簡易で、損傷時の交換も容易に行なうことができる。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、メタル圧・ガス圧・メタル温度の計測を、各々単体で計測するように構成することも、2種の組み合わせで計測するように構成することも可能である。
【0060】
なお、良否判定基準はJISにより、下記の通り厳しい基準が定められている。
A メタル圧力の判定
1 マシン圧力に対して最大値がX%以上であること
例)メタル換算で80%以上に圧力が上がること
2 t秒後Y%以上であること
例)充填完了から0.1秒後に20%以上に圧力があること
B ガス圧(大気圧ダイカストの場合)
1 ガス圧がVPa以下であること
例)ガス圧の最大値が50Pa以下であること
2 ガス圧の積分値がZcm2以下である事
例)ガス圧の積分値=ガス容積がキャビティ容積の80%以下であること
C ガス圧(真空ダイカストの場合)
1 真空圧がWPa以上であること
例)真空の最大値がー30Pa以下であること
2 真空圧の積分値がVcm2以上である事
D 金型温度
金型温度が温度振幅の上限と下限に以内に入っていること
したがって、本実施形態では、上記判定基準を溶湯から直接計測することができるので、信頼性の高い計測データを得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ダイカストマシンや樹脂射出装置の成形時における金型のキャビティ内をモニタリングしながら、製品の良否判定を行うことができるセンサーとして、品質の安定に多大な貢献を行うものである。
【符号の説明】
【0062】
1a………可動ダイス、1b………固定ダイス、2………キャビティ、3a………鋳込み口、3b………湯道、3c………湯口、4………ガス抜き、5………湯溜り、6………プランジャスリーブ、6a………注湯口、7………プランジャ、7a………プランジャチップ、100………金型内部情報計測センサー、102………計測ロッド、104………センサーブロック、106………食込み継手、108………止めネジ、110………固定ユニット、112………外筒ケーシング、114………圧力伝達ロッド、115………通気路、116………多孔質フィルター、118………ガイドブッシュ、119………通気孔、120………ブロック本体、122………ガス導入室、122a………ケーシング取付孔、124………隔壁、126………第1センサー室、128………貫通孔、130………Oリング、132………ブロック蓋、134………圧力センサー、136………センサー固定ボルト、138………第2センサー室、139………ストッパボルト、140………ガス圧センサー、142………押さえブロック、144………センサー固定ボルト、146………パージエア導入孔、148………圧縮エア供給管、150………細孔、152………シース型熱電対、154………押さえバネ、156………押さえ駒、158………リード線、160………切り込み溝、162………端子ボックス、164………引出し通路、166………押しボルト、210………金型内部情報計測センサー、212………計測ロッド、214………装着孔、216………ロッド形ケーシング、218………食込み継手、220………止めネジ、222………固定ユニット、224………円筒ケース、226………エンドプレート部、228………仕切り板部、230………空間部、232………圧力伝達ロッド、232a………フランジ、234………押さえ蓋、236………ボルト、238………ロードセル、240………断熱系セラミックス部材、242………環状凹部、244………フィルター、246………通気路、248………ガス圧センサー、250………パージエア導入孔、252………逆止弁、254………細孔、256………熱電対。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型ダイスに穿設されキャビティに開口する装着孔に装着可能なロッド形ケーシングを有し、前記ロッド形ケーシングには、検出端をセンサー装着孔のキャビティ開口面となるように配置されてガス圧、溶湯圧力、溶湯温度のうち複数のセンサーを内蔵したことを特徴とする金型内部情報計測センサー。
【請求項2】
金型ダイスに穿設されキャビティに開口する装着孔に装着可能なロッド形ケーシングと、
前記ロッド形ケーシングに内挿され、その軸芯方向に可動で金型キャビティ面に先端面を一致可能な圧力伝達ロッドと、
前記圧力伝達ロッドの後端に対面して固定保持され、キャビティに注入された溶湯の圧力を検知可能な圧力センサーと、
前記圧力伝達ロッドの中心部に形成された細孔に装着され、前記細孔のロッド先端部側に検知端を有する熱電対からなる温度センサーと、
を有し、キャビティ内溶湯圧、およびキャビティ内溶湯温度を検出可能としてなることを特徴とする金型内部情報計測センサー。
【請求項3】
前記ロッド形ケーシングの外周に摺動自在に取り付けられる食込み継手と、前記装着孔への止めネジとからなる固定ユニットを有しており、金型ダイス厚に応じてロッド挿入長さを調整可能としていることを特徴とする請求項1または2に記載された金型内部情報計測センサー。
【請求項4】
金型ダイスに穿設されキャビティに開口する装着孔に装着可能で、前記金型ダイス厚さより長尺なロッド形ケーシングと、
前記ロッド形ケーシングの基端部に設けられたセンサーブロックと、
前記ロッド形ケーシングに内挿され、その軸芯方向に可動で金型キャビティ面に先端面を一致可能な圧力伝達ロッドと、
前記圧力伝達ロッドの後端に対面して前記センサーブロックとの間に保持され、キャビティに注入された溶湯の圧力を検知可能な圧力センサーと、
前記圧力伝達ロッドの中心部に形成された細孔に装着され、前記細孔のロッド先端部側に検知端を有する熱電対からなる温度センサーと、
を有し、キャビティ内溶湯圧、およびキャビティ内溶湯温度を検出可能としてなることを特徴とする金型内部情報計測センサー。
【請求項5】
前記圧力伝達ロッドの中心部にはロッド先端部に達する細孔を形成して内部に熱電対を配置してなることを特徴とする請求項4に記載の金型内部情報計測センサー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−121070(P2012−121070A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−46150(P2012−46150)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【分割の表示】特願2011−544732(P2011−544732)の分割
【原出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(510095651)株式会社ダイレクト21 (2)
【Fターム(参考)】