金型装置及びそれを有する成形装置
【課題】複数のキャビティ間で生じる樹脂圧力の差を容易に調整できる金型装置及びそれを有する成形装置を提供する。
【解決手段】射出成形機100が備える金型装置101は、互いの間に複数のキャビティ5が設けられた固定型1及び可動型2と、コア3と、を備えている。コア3は、溶融された樹脂を複数のキャビティ5に導くランナー7を固定型1のランナー形成部13との間に形成する本体型、及び、ランナー7と複数のキャビティ5とをそれぞれ連通するゲート33aを有し且つ複数のキャビティ5に対応して本体型31に連設された複数のゲート型33、を有している。そして、コア3は、ランナー7内の樹脂を複数のゲート型33のゲート33a毎に所定温度に加熱可能なように、ゲート33aのそれぞれに対応して互いに独立して設けられた複数のマイクロヒーター35を有している。
【解決手段】射出成形機100が備える金型装置101は、互いの間に複数のキャビティ5が設けられた固定型1及び可動型2と、コア3と、を備えている。コア3は、溶融された樹脂を複数のキャビティ5に導くランナー7を固定型1のランナー形成部13との間に形成する本体型、及び、ランナー7と複数のキャビティ5とをそれぞれ連通するゲート33aを有し且つ複数のキャビティ5に対応して本体型31に連設された複数のゲート型33、を有している。そして、コア3は、ランナー7内の樹脂を複数のゲート型33のゲート33a毎に所定温度に加熱可能なように、ゲート33aのそれぞれに対応して互いに独立して設けられた複数のマイクロヒーター35を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数個取りの樹脂成形品の成形に用いられる金型装置及びそれを有する成形装置に関し、特に、高精度が要求される樹脂成形品の成形に用いられる金型装置及びそれを有する成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機やプリンタなどの電子写真方式の画像形成装置においては、レーザダイオード(LD)などを備える光学系を用いて感光体上に静電潜像を形成して、この静電潜像をトナーで現像して記録紙等に定着させることにより画像形成を行っている。
【0003】
上述したような光学系の一例を、図9に示す。LD811から照射された光ビームLは、非球面レンズ812によって平行光にされたのちアパーチャ813を通過して、シリンドリカルレンズ814によってポリゴンミラー815上に焦点が合うように集光される。そして、光ビームLは、ポリゴンミラー815によって、主走査方向に移動するように反射されて、走査レンズ(fθレンズ)816及び長尺レンズ817を通過したのち、図示しない反射ミラーに反射されて感光体に照射され、これにより、感光体上に静電潜像が形成される。
【0004】
このような画像形成装置の光学系などで用いられる樹脂成形の部品、例えば、シリンドリカルレンズ814は、特許文献1に示されるような金型装置としてのランナーレス金型を用いて、射出成形によって一度に複数個成形されていた。
【0005】
特許文献1のランナーレス金型900は、図10に示すように、固定型901と可動型902とからなり、互いの間に複数のキャビティ918を形成する。固定型901の中央にはホットノズル910を備え、その外側に有底筒状のランナー形成部911が設けられている。このランナー形成部911の可動型902側の底面911bは、所要深さの円錐形の凹状に形成されており、この底面911bには、円錐形状のコア912(即ち、ランナー型)が接離自在に嵌合されている。ランナー形成部911の底面911bの外周端縁は、全周にわたって壁状に形成されているとともに、複数のキャビティ918にそれぞれ対応する複数のゲート913が設けられている。
【0006】
ランナーレス金型900では、図示しない充填部からホットノズル910を通じて溶融された成形材料としての合成樹脂(以下、単に樹脂ともいう)の充填が開始されると、ランナー形成部911の底面911bに嵌合されたコア912が、充填された樹脂によって押し戻されて、コア912の表面と底面911bとの間にランナーを形成する。それと同時に、コア912がゲート913を開いて複数のキャビティ918に樹脂が充填される。そして、各キャビティ918への充填完了後に、コア912が再度ランナー形成部911と嵌合され、ゲート913が閉じられる。そして、各キャビティ918に充填された樹脂が冷却されて複数の成形品としてのシリンドリカルレンズが完成する。
【0007】
上述した画像形成装置の光学系や画像読取系などで用いられるような部品は、高精細な画像形成を実現するために高い寸法精度が要求される。例えば、図11(a)に示す形状のシリンドリカルレンズ814は、透明な樹脂を用いて、全長(主走査方向長さ)が18mm、幅(副走査方向長さ)が5mm、厚さが2mmに成形されている。また、このシリンドリカルレンズ814は、入射面が、断面階段状(図11(b))や平面状(図11(c))に形成されており、屈折面が断面円弧状の曲面に形成されている。そして、主走査方向の精度(許容誤差)として、入射面の反り0.5μm未満、うねり0.15μm未満、屈折面の反り0.5μm未満、うねり0.15μm未満、が要求される。また、副走査方向の精度として、入射面の反り4μm未満、うねり0.1μm未満、屈折面の反り1.2μm未満、うねり0.1μm未満、が要求される。
【0008】
このようなシリンドリカルレンズ814では、例えば、寸法が1μm変わると、0.05μm程度の反りやうねりが生じることが知られている。そのため、上述のランナーレス金型900などを用いて多数個取りした複数のシリンドリカルレンズ814間においては、その寸法のばらつきを抑える必要がある。
【0009】
しかしながら、上述したランナーレス金型など、射出成形等に用いる金型は、その加工上、寸法公差を設ける必要があるので、この寸法公差によって、例えば、複数のゲート間でそれら開口径に差が生じてしまうことがあった。また、金型においては、一般的に天側(金型上部)の方の温度が高くなりやすいので、天側に配されたキャビティの方が、地側(金型下部)に配されたキャビティより早く樹脂が充填される傾向があった。そのため、これらなどが原因となって、金型に設けられた複数のキャビティの充填に時間差が生じて、この時間差によって、複数のキャビティ間で樹脂圧力に差が生じてしまうことがあった。そして、複数のキャビティ間で樹脂圧力に差が生じると、キャビティ内の樹脂の充填状態に差異が生じて、同時に成形された複数の成形品の寸法にばらつき生じてしまうことがあった。
【0010】
そして、上述したランナーレス金型900においては、このような寸法のばらつきを抑えるために、充填に時間のかかるキャビティ918に対応するゲート913の開口径を広げたり、該ゲート913に通じるランナーを形成する底面911bやコア912の表面形状を変えたりするなどして、樹脂の充填において複数のキャビティ918間で生じる樹脂圧力の差の調整を行っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ゲート913の開口径を広げたり、コア912の表面形状を変えたりするためには、ランナーレス金型900を分解してランナー形成部911やコア912を取り外す作業が必要であり、また、その都度、切削加工装置などによる加工作業が必要になるので、それら作業が繁雑であり、そのため、複数のキャビティ918の充填に生じる時間差、つまり、樹脂の充填において複数のキャビティ918間で生じる樹脂圧力の差の調整が困難であるという問題があった。
【0012】
本発明は、上記課題に係る問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、複数のキャビティ間で生じる樹脂圧力の差を容易に調整できる金型装置及びそれを有する成形装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、(a)一方の成形型と他方の成形型との間に複数のキャビティが設けられた一対の成形型と、(b)前記複数のキャビティに溶融された樹脂を導くランナーを前記一方の成形型との間に形成した本体型、及び、前記ランナーと前記複数のキャビティとに連通するゲートを有するとともに前記本体型に連設された複数のゲート型、がそれぞれ設けられたランナー型と、を有する金型装置において、前記ランナー内における樹脂を前記複数のゲート型におけるゲート毎に所定温度に加熱するように、前記ゲートのそれぞれに対応して互いに独立して配置された複数の樹脂加熱手段が設けられていることを特徴とする金型装置である。
【0014】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記複数の樹脂加熱手段が、前記本体型に設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記本体型が、それぞれ前記ゲート型が1つずつ連設された複数の部分型に分割できるように設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載された発明において、前記複数のゲート型が、それぞれ個別に前記本体型に脱着可能に設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5に記載された発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載された発明において、前記一方の成形型から離れることにより前記ランナーを形成するとともに、前記一方の成形型に接することにより前記ランナーを消滅させるように、前記ランナー型が、前記一方の成形型に接離可能に設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項6に記載された発明は、上記目的を達成するために、金型装置と、該金型装置のキャビティ内に樹脂を充填する充填部と、を有する成形装置において、前記金型装置が、請求項1〜5のいずれか一項に記載の金型装置で構成されていることを特徴とする成形装置である。
【0019】
請求項1に記載された発明によれば、複数の樹脂加熱手段が、複数のゲート型が有するゲートのそれぞれに対応して互いに独立して設けられており、これら樹脂加熱手段によってランナー内の樹脂をゲート毎に所定温度に加熱できる。そのため、複数の樹脂加熱手段によって、各ゲートを通じてそれらに対応するキャビティに流れ込む樹脂を、ゲート毎に予め定められた温度(所定温度)になるように互いに独立に加熱することにより、樹脂の流動性をゲート毎に適切に調整することができる。
【0020】
請求項2に記載された発明によれば、複数の樹脂加熱手段が、本体型に設けられている。即ち、複数の樹脂加熱手段が、本体型によって形成されるランナーに近接して設けられている。
【0021】
請求項3に記載された発明によれば、本体型が、それぞれゲート型が1つずつ連設された複数の部分型に分割できるように設けられているので、一の部分型を他の部分型から分割して、当該一の部分型を個別に交換できる。
【0022】
請求項4に記載された発明によれば、複数のゲート型が、それぞれ個別に前記本体型に脱着可能に設けられているので、複数のゲート型をそれぞれ個別に本体型から取り外して交換できる。
【0023】
請求項5に記載された発明によれば、ランナー型が、一対の成形型のうち一方の成形型から離れることによりランナーを形成するとともに、一方の成形型に接することによりランナーを消滅させるように、一方の成形型に接離可能に設けられているので、複数のキャビティへの樹脂の充填時にランナーを形成し、充填後にランナーを消滅させることができる。
【0024】
請求項6に記載された発明によれば、成形装置が有する金型装置が、上述した複数の樹脂加熱手段を有しているので、複数の樹脂加熱手段によって、各ゲートを通じてそれらに対応するキャビティに流れ込む樹脂を、ゲート毎に予め定められた温度(所定温度)になるように互いに独立に加熱することにより、樹脂の流動性をゲート毎に適切に調整することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、請求項1に記載された発明によれば、複数の樹脂加熱手段によって、各ゲートを通じてそれらに対応するキャビティに流れ込む樹脂を、ゲート毎に予め定められた温度(所定温度)になるように互いに独立に加熱することにより、樹脂の流動性をゲート毎に適切に調整することができるので、充填に時間のかかるキャビティについて、それに対応するゲートを通じて流れ込む樹脂を所定温度に加熱して流動性を適度に良好にして、当該キャビティの充填時間を早めることができ、金型を分解してゲートの開口径を広げることなどなく、複数のキャビティ間での樹脂圧力の差を容易に調整することができる。したがって、成形された複数の成形品の寸法のばらつきを容易に抑えることができる。
【0026】
請求項2に記載された発明によれば、複数の樹脂加熱手段が、本体型によって形成されるランナーに近接して設けられているので、樹脂加熱手段がランナーから離れて設けられている場合に比べて、ランナー内の樹脂をより効率的に加熱することができる。
【0027】
請求項3に記載された発明によれば、一の部分型を他の部分型から分割して、当該一の部分型を個別に交換できるので、(1)連接されたゲート型のゲートの開口径が互いに異なる複数の部分型や、(2)部分型におけるランナーを形成する箇所の形状が互いに異なる複数の部分型、(3)前記開口径及び前記箇所の形状が互いに異なる複数の部分型、などを予め用意しておき、キャビティの充填時間に応じて適切な前記開口径や前記箇所の形状の部分型に交換することで、各キャビティに樹脂が充填される時間を容易に調整することができ、そのため、複数のキャビティ間での樹脂圧力の差をさらに容易に調整することができる。
【0028】
請求項4に記載された発明によれば、複数のゲート型をそれぞれ個別に本体型から取り外して交換できるので、ゲートの開口径が互いに異なる複数のゲート型を予め用意しておき、キャビティの充填時間に応じて適切な前記開口径のゲート型に交換することで、各キャビティに樹脂が充填される時間を容易に調整することができ、そのため、複数のキャビティ間での樹脂圧力の差をさらに容易に調整することができる。
【0029】
請求項5に記載された発明によれば、複数のキャビティへの樹脂の充填時にランナーを形成し、充填後にランナーを消滅させることができるので、充填時は、ランナーによって複数のキャビティに樹脂を導くことができるとともに、充填後は、ランナー内に樹脂が残存することが無くなり、そのため、成形品として用いられないムダな樹脂が生じてしまうことを防ぐことができる。
【0030】
請求項6に記載された発明によれば、複数の樹脂加熱手段によって、各ゲートを通じてそれらに対応するキャビティに流れ込む樹脂を、ゲート毎に予め定められた温度(所定温度)になるように互いに独立に加熱することにより、樹脂の流動性をゲート毎に適切に調整することができるので、充填に時間のかかるキャビティについて、それに対応するゲートを通じて流れ込む樹脂を所定温度に加熱して流動性を適度に良好にして、当該キャビティの充填時間を早めることができ、金型を分解してゲートの開口径を広げることなどなく、複数のキャビティ間での樹脂圧力の差を容易に調整することができる。したがって、成形された複数の成形品の寸法のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の成形装置の一実施形態の射出成形機の断面図である。
【図2】(a)は、図1の射出成形機の金型装置が備える固定型を金型分割面から見た図であり、(b)は、図1の射出成形機の金型装置が備える可動型を金型分割面から見た図である。
【図3】図1の射出成形機の金型装置が備えるコアの周辺を拡大した断面図である。
【図4】(a)は、コアの正面図であり、(b)は、背面図であり、(c)は、(a)のIII−III線に沿う断面図である。
【図5】図1の射出成形機の固定型と可動型が閉じる前の状態での断面図である。
【図6】図1の射出成形機における樹脂の充填過程での断面図である。
【図7】図1の射出成形機における樹脂の充填完了後のゲートカット状態での断面図である。
【図8】図1の射出成形機におけるキャビティから成形品を取り出している状態での断面図である。
【図9】画像形成装置の光学系の構成の一例を示す図である。
【図10】従来の金型装置の断面図である。
【図11】(a)は、図9の光学系で用いられるシリンドリカルレンズの斜視図であり、(b)は、(a)のシリンドリカルレンズの副走査方向に沿う断面の一例を示す図であり、(c)は、(a)のシリンドリカルレンズの副走査方向に沿う断面の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の成形装置の一実施形態としての射出成形機について、図1〜図8を参照して説明する。本実施形態の射出成形機は、小型且つ高精度の樹脂成形品の多数個取り成形に用いられる成形装置であり、例えば、図11に示す、シリンドリカルレンズ814の射出成形する成形装置である。
【0033】
射出成形機100は、図1に示すように、金型装置101と、充填部としての射出機102と、図示しない制御装置と、を備えている。
【0034】
金型装置101は、一対の成形型としての固定型1及び可動型2と、ランナー型としてのコア3と、を備えている。これら固定型1と可動型2とは、金型分割面PLで互いに重ね合わされることによって、互いの間に複数のキャビティ5を形成している。本実施形態において、これらキャビティ5は、固定型1及び可動型2の中心について放射状に配置されており、形成されるキャビティ5は4個であるが、構成などに応じてキャビティ5の配置や数は適宜定められる。
【0035】
固定型1は、図1及び図2(a)に示すように、固定ベース部11と、固定型本体部12と、ランナー形成部13と、ホットノズル部14と、ガイドピン用孔16と、を備えている。
【0036】
固定ベース部11は、矩形板状に形成されており、例えば、工場のフロアや作業台などに、図示しない固定手段によって、後述の射出機102とともに固定されている。
【0037】
固定型本体部12は、矩形板型12aと、転写駒12bと、入れ子12c、12dと、を備えており、固定ベース部11に重ねられて固定されている。矩形板型12aにおける複数のキャビティ5に対応する箇所には、転写駒12b及び入れ子12c、12dが嵌め込まれている。転写駒12bは、シリンドリカルレンズ814の入射面形状(例えば、断面階段状形状や平面形状)に合わせて形成されている。また、入れ子12c、12dは、シリンドリカルレンズ814の全長方向(主走査方向)の端部形状に合わせて形成されている。
【0038】
ランナー形成部13は、略有底筒状に形成されており、その底面13a(即ち、一方のランナー形成面)が、固定型本体部12の可動型2側の面(即ち、金型分割面PL)に露出するように、固定ベース部11及び固定型本体部12の中央を貫通して固定されている。ランナー形成部13の底面13aは、略円錐形の凹状(即ち、すり鉢状)に形成されている。また、底面13aの外周縁部における複数のキャビティ5のそれぞれに対応する箇所には、後述するコア3のゲート型33が挿入される切り欠き13bが設けられている。
【0039】
ホットノズル部14は、シリンジ(注射筒)状に形成されており、その外周面がランナー形成部13の内周面に密に重なるようにして、ランナー形成部13内に配設されている。ホットノズル部14の先端14aは、ランナー形成部13の底面13aの中央に露出されている。ホットノズル部14の注入孔14bは、先端14aとは反対側の端部に開口するように配設されている。
【0040】
ランナー形成部13とホットノズル部14とのそれぞれには、図示しない制御装置によって、互いに独立に制御されるランナー形成部ヒーター13cとホットノズル部ヒーター14cとが設けられている。
【0041】
ガイドピン用孔16は、固定型本体部12の四隅に設けられており、固定型1と可動型2の接合時に、可動型2に設けられた後述のガイドピン26が挿入される。
【0042】
可動型2は、図1、図2(b)に示すように、可動ベース部21と、可動型本体部22と、押し出しロッド23と、押し出しプレート24と、押し出しピン25と、ガイドピン26と、リターンピン27と、を備えている。
【0043】
可動ベース部21は、3つの矩形板状部分21a、21b、21cが順次重ね合わされて構成されている。可動ベース部21は、例えば、制御装置に接続された油圧シリンダ装置などの図示しない金型駆動手段に取り付けられている。これにより、可動型2を、固定型1に近づけたり離したりすることができ、つまり、可動型2は、固定型1に接離可能に設けられる。
【0044】
可動型本体部22は、矩形板型22aと、転写駒22bと、入れ子22b、22cと、を備えており、可動ベース部21に重ねられて固定されている。矩形板型22aは、上述した固定型本体部12の矩形板型12aと略同一形状に形成されている。矩形板型22aにおける複数のキャビティ5に対応する箇所には、転写駒22b及び入れ子22c、22dが嵌め込まれている。転写駒22bは、シリンドリカルレンズ814の屈折面形状(例えば、断面円弧状)に合わせて形成されている。また、入れ子22c、22dは、シリンドリカルレンズ814の全長方向の端部形状に合わせて形成されている。固定型本体部12と可動型本体部22とが、互いに対向する面(金型分割面PL)で接合されることにより、各転写駒、入れ子が配置された箇所にキャビティ5が形成される。
【0045】
押し出しロッド23は、可動ベース部21及び可動型本体部22の中央を貫通して、この貫通方向(図1の左右方向であり、固定型1と可動型2の接合方向と一致)に移動可能に設けられている。押し出しロッド23は、可動ベース部21に設けられたスプリング23aによって引き込み方向(図1の左方向)に付勢されている。押し出しロッド23は、制御装置に接続された図示しないアクチュエータによって押し出し方向(図1の右方向)に押し出されることにより、後述するコア3を、ランナー形成部13の底面13aに押しつける。
【0046】
押し出しプレート24は、可動ベース部21の中央の矩形板状部分21b内に上記貫通方向に移動可能に設けられている。この押し出しプレート24は、押し出しロッド23の押し出し方向への移動に伴って、押し出し方向へ移動する。
【0047】
押し出しピン25は、可動ベース部21の固定型1側の矩形板状部分21cと可動型本体部22とを貫通して、押し出しロッド23と平行に貫通方向に移動可能に設けられている。押し出しピン25の一端25aは、押し出しプレート24に固定されており、他端25bは、押し出しプレート24が押し出し方向に移動されたときに、可動型本体部22における複数のキャビティ5に対応する箇所に突出するように配されている。
【0048】
ガイドピン26は、可動型本体部22の四隅に突設された円柱状の固定ピンである。このガイドピン26は、固定型1と可動型2との接合時に、固定型1のガイドピン用孔16に挿入されて互いに嵌合し、固定型1と可動型2のセンター合わせを行っている。
【0049】
リターンピン27は、可動型本体部22の四隅にガイドピン26と並べて配設された円柱状の可動ピンである。このガイドピン26の一方の端部は、上述の押し出しプレート24に固定されており、他方の端部は、押し出しプレート24が押し出し方向に移動されたときに、可動型本体部22の固定型1側の面(金型分割面PL)から突出するように設けられている。このリターンピン27は、固定型1と可動型2とが接合されたとき、上述の押し出しピン25より先に固定型本体部12に当たり、押し出しプレート24を押し戻すことで、押し出しプレート24に固定されている押し出しピン25が戻され、この押し出しピン25の破損を防止するものである。
【0050】
コア3は、図3、図4(a)〜(c)に示すように、複数の部分型32からなる本体型31と、各部分型32のそれぞれに1つずつ一体に連接された複数のゲート型33と、本体型31(即ち、複数の部分型32)が固定されるベース部34と、複数の樹脂加熱手段としてのマイクロヒーター35と、を備えている。
【0051】
本体型31は、底面の径がランナー形成部13の外径と同一の略円錐形状に形成されており、そのテーパ状の表面31a(即ち、他方のランナー形成面)が、上述の固定型1のランナー形成部13の底面13aに密着可能なように形成されている。本体型31の表面31aは、ランナー形成部13の底面13aとの間にランナー7を形成する。即ち、ランナー形成部13を備える固定型1は、請求項中の一方の成形型に相当する。また、可動型2は、請求項中の他方の成形型に相当する。そして、固定型1と可動型2とが、請求項中の一対の成形型に相当する。
【0052】
複数の部分型32は、本体型31をその円錐形状の中心軸に沿って均等に分割した形状に形成されている。本実施形態においては、本体型31を4分割して複数の部分型32a〜32dを形成している。
【0053】
複数のゲート型33は、ランナー形成部13の切り欠き13bに嵌め込み可能なように、それぞれが片状(即ち、短い帯板状)に形成されている。ゲート型33の中央部には、それを貫通する孔である1つのゲート33aが設けられている。ゲート型33は、部分型32と一体に連設されており、部分型32の円弧状の外縁部の中央に上記中心軸と平行に立設されている。
【0054】
ベース部34は、平面視が本体型31の底面形状と同一の円板状に形成されている。ベース部34の一方の面34aには、部分型32a〜32dが互いに組み合わされて円錐形状の本体型31を形成するように固定されている。具体的には、これら4つの部分型32a〜32dは、例えば、ネジ止め構造や、嵌め込み構造(部分型32(即ち、本体型31)の底面及びベース部34の一方の面34aに互いに嵌合する凸部及び凹部を設けた構造等)など、それぞれ個別に脱着可能な図示しない固定手段を用いて、ベース部34の一方の面34aに固定されている。また、ベース部34の他方の面34bには、押し出しロッド23に押される円柱部34cが一体に設けられている。
【0055】
複数のマイクロヒーター35は、周知の小型の加熱手段であって、上記部分型32におけるゲート型33が備えるゲート33a近傍に埋設されている。これら複数のマイクロヒーター35は、上記部分型32a〜32dのそれぞれに1つずつ設けられている。各マイクロヒーター35は、それぞれ独立して制御可能なように、コア3内に設けられた配線などによって制御装置に接続されている。マイクロヒーター35は制御装置による制御によって発熱して、各部分型32a〜32dの表面(即ち、本体型31の表面31a)を通じて、該表面31aによって形成されるランナー7内の樹脂を所定温度に加熱する。つまり、複数のマイクロヒーター35は、ランナー7内の樹脂を複数のゲート型33のゲート33a毎に所定温度に加熱可能なように、ゲート33aのそれぞれに対応して互いに独立して設けられている。
【0056】
コア3は、複数のゲート型33のゲート33aのそれぞれが、それらに対応する複数のキャビティ5と相対するように、且つ、その表面31aがランナー形成部13の底面13aと相対するように、固定型1と可動型2との間に配置される。また、コア3は、固定型1と可動型2との間でランナー形成部13に接したり、ランナー形成部13から離れたりできるように、即ち、ランナー形成部13に接離可能に設けられている。そして、コア3が、ランナー形成部13から離れると、図3に示すように、コア3の本体型31の表面31aとランナー形成部13の底面13aとの間に空間が形成され、即ち、樹脂を複数のキャビティ5に導くためのランナー7が形成される。そして、コア3の各ゲート型33に設けられたゲート33aによって、このランナー7と複数のキャビティ5とが連通される。また、コア3が、ランナー形成部13に近づくと、コア3の本体型31の表面31aとランナー形成部13の底面13aとが密着してランナー7が消滅するとともに、各ゲート型33が、ランナー形成部13の切り欠き13bに挿入されて、各ゲート33aが閉じられる。
【0057】
射出機102は、上記金型装置101の固定型1と同様に、例えば、工場のフロアや作業台などに、図示しない固定手段によって固定されている。射出機102は、シリンダとしての加熱シリンダ53と、押圧部材としてのスクリュー54と、押圧シリンダなどを備えている。
【0058】
加熱シリンダ53は、筒状に形成されている。加熱シリンダ53は、その長手方向(軸芯方向)が、固定型1と可動型2との接合方向と平行に配されている。加熱シリンダ53の一端部53aは、該加熱シリンダ53の先端に向かうにしたがって徐々に細くなるようにテーパ状に形成されている。加熱シリンダ53は、加熱シリンダ53の一端部53aの開口55が、固定型1のホットノズル部14の注入孔14bに侵入した状態で、固定型1に取り付けられている。なお、注入孔14bの内面と加熱シリンダ53の一端部53aは、互いに密着している。
【0059】
加熱シリンダ53は、内側にスクリュー54を収容する。加熱シリンダ53の外表面には、加熱用ヒーターが複数取り付けられている。また、加熱シリンダ53には、筒状のホッパが取り付けられている。加熱シリンダ53は、ホッパを介して、成形材料としての固形チップ状の合成樹脂G(即ち、樹脂)が充填される。加熱シリンダ53は、充填されたチップ状の合成樹脂Gを加熱流動化(可塑化)する。このように、加熱シリンダ53は、可塑化された合成樹脂Gが充填される。また、加熱シリンダ53は、開口55を通して可塑化された合成樹脂Gを注入孔14b、ホットノズル部14内及びランナー7を順次介して、複数のキャビティ5内に射出可能になっている。
【0060】
スクリュー54は、棒状に形成されており、加熱シリンダ53内に収容されている。スクリュー54は、加熱シリンダ53内に収容されると、その長手方向(軸芯方向)が加熱シリンダ53の長手方向(軸芯方向)と平行になる。また、スクリュー54は、加熱シリンダ53の長手方向に沿って移動自在に設けられている。スクリュー54の外周面には、螺旋状に突起57が設けられている。
【0061】
スクリュー54は、加熱シリンダ53の長手方向に沿って移動することで、加熱シリンダ53内の合成樹脂Gを前記開口55即ち加熱シリンダ53の一端部53aに向かって移動させて、加熱シリンダ53内の可塑化された合成樹脂Gを注入孔14bに向かって押し出す。
【0062】
押圧シリンダは、シリンダ本体と、該シリンダ本体から伸縮自在なロッドとを備えている。ロッドは、スクリュー54に取り付けられている。押圧シリンダは、ロッドを伸縮することで、スクリュー54を加熱シリンダ53の長手方向に沿って移動させる。勿論、押圧シリンダは、ロッドを伸張することで、スクリュー54を開口55に近づけ、ロッドを縮小することで、スクリュー54を開口55から離す。
【0063】
前述した構成の射出機102は、押圧シリンダのロッドを伸縮することで、加熱シリンダ53の長手方向に沿って、スクリュー54を移動させて、加熱シリンダ53内の可塑化(溶融)された合成樹脂Gを注入孔14b、ホットノズル部14内、及び、ランナー7を介して複数のキャビティ5内に充填(射出)する。
【0064】
制御装置は、周知のRAM、ROM、CPUなどを備えたコンピュータである。制御装置は、射出成形機100を動作させるためのプログラムを記憶している。制御装置は、金型装置101と、射出機102などと接続しており、前述したプログラムに基づいて、これらを制御して、射出成形機100全体の制御をつかさどる。
【0065】
次に、上述の射出成形機100の動作について、図5〜図8を参照して説明する。図5は、固定型と可動型とを閉じる前の状態での断面図である。図6は、樹脂の充填過程での断面図である。図7は、樹脂の充填完了後のゲートカット状態での断面図である。図8は、キャビティから成形品を取り出している状態での断面図である。なお、図5〜図8において、射出機102は記載を省略しているが、実際には、ホットノズル部14の注入孔14bの内面に加熱シリンダ53の一端部53aを密着させて、金型装置101の固定型1とともに固定されている。
【0066】
まず、図5に示すように、固定型1と可動型2とを閉じる前の状態では、コア3は、その本体型31の表面31aがランナー形成部13の底面13aに密着されて、ランナー形成部ヒーター13cによって加熱される。また、コア3の複数のゲート型33は、ランナー形成部13の複数の切り欠き13bに挿入されており、これらゲート型33のゲート33aは閉じられた状態にある。
【0067】
そして、図6に示されている樹脂の充填過程では、射出機102によって、複数のキャビティ5への合成樹脂Gの充填が開始されて、ランナー形成部13の底面13aに表面31aを密着していたコア3が、注入された合成樹脂Gによって押されて、引き込み方向に移動し、底面13aと表面31aとの間にランナー7を形成する。これと同時に、各ゲート33aが各キャビティ5と相対して、ゲート33aによってキャビティ5とランナー7とが連通されて(即ち、ゲート33aが開かれて)、キャビティ5に樹脂が充填される。このときコア3は、熱源であるランナー形成部13から離れるが、充填された合成樹脂Gによってさらに加熱されるので、ランナー形成部13とコア3の間に形成されたランナー7内の合成樹脂Gは固化することはない。
【0068】
また、コア3の本体型31(即ち、各部分型32a〜32d)に埋設された複数のマイクロヒーター35によって、必要に応じて、複数のゲート33aを通じてそれらに対応する複数のキャビティ5に充填される合成樹脂Gを、ゲート33a毎に互いに独立して所定温度に加熱する。
【0069】
この所定温度は、次のようにして決定する。例えば、この射出成形機100を用いた予備成形やコンピュータを用いた成形シミュレーションなどによって、複数のキャビティ5のそれぞれにおける充填時の樹脂圧力を測定する。この樹脂圧力は、例えば、各キャビティ5の近傍にひずみ計などを設けて、樹脂充填時の金型のひずみなどから計測する。そして、測定した樹脂圧力のばらつき(例えば、最大値と最小値との差、又は、標準偏差など)が、所定の許容基準値を超えていた場合、樹脂圧力が小さいキャビティ5に通ずるゲート33aに対応して設けられたマイクロヒーター35によって、該ゲート33aを通じて該キャビティ5に充填されるランナー7内の合成樹脂Gを加熱して、その温度を高めて流動性を変えて再度予備成形等を行い、これを繰り返して、最終的に樹脂圧力のばらつきが許容基準値内に収まるようにする。そして、このときの各マイクロヒーター35による加熱温度を上記所定温度として制御装置に記憶するとともに、上記充填過程でこの所定温度となるようにマイクロヒーター35を制御する。なお、上記では、各キャビティ5における充填時の樹脂圧力のばらつきを求めて、これら樹脂圧力が均等になるように調整するものであったが、これに限らず、例えば、成形品の寸法のばらつきを測定して、これら寸法が所定の基準範囲に収まるようにして、上記所定温度を決定してもよい。
【0070】
また、マイクロヒーター35での加熱だけでは樹脂圧力のばらつきを許容基準値内に収めることができない場合や、ばらつきが非常に大きい場合など、樹脂圧力がそれら平均値から最も離れているキャビティ5に対応するゲート型33が連接された部分型32(部分型32a〜32dのいずれか)を個別に取り外して、予め用意しておいた、それと異なる開口径のゲート33aを有するゲート型33が連接された部分型32を新たに取り付ける。または、ゲート33aの開口径は同一で、表面の形状(本体型31の表面31aの一部の形状であり、つまり、ランナー7の形状でもある)が異なる部分型32や、開口径及び表面の形状がともに異なる部分型32を新たに取り付けてもよい。そして、再度上記と同様にして上記所定温度を決定する。勿論、上記場合だけでなく、部分型32の交換によって樹脂圧力のばらつきの微調整をおこなってもよい。上述したような樹脂圧力の調整作業を予め実施しておく。
【0071】
次に、図7に示されている樹脂の充填完了後のゲートカット状態では、キャビティ5が合成樹脂Gで充填された後、押し出しロッド23により所定の押し出し位置までコア3が押圧され、本体型31の表面31aが、ランナー形成部13の底面13aに密着してランナー7が消滅するとともに、各ゲート型33が切り欠き13bに挿入されて、ゲート33aが閉じられる。このとき、ランナー形成部13とコア3により形成されたランナー7(図6を参照)内にあった溶融状態の合成樹脂Gは、ホットノズル部14を介して、射出機102に押し戻される。また、ホットノズル部14内の溶融された合成樹脂Gは、コア3がランナー形成部13に密着することによって、ホットノズル部14の先端14aが塞がれて、ホットノズル部14外への流出を防止することができる。
【0072】
そして、図8に示されているキャビティ5から成形品814(即ち、シリンドリカルレンズ814)を取り出している状態(成形品突き出し状態)では、金型の固定型1と可動型2を開くと共に、押し出しロッド23を上記所定の押し出し位置(図7に示す位置)からさらに前進させて、押し出しプレート24を押し出すことにより、押し出しピン25を可動型2のキャビティ5内へ突出させて、成形品814をキャビティ5から離脱させる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数のマイクロヒーター35が、複数のゲート型33が有するゲート33aのそれぞれに対応して互いに独立して設けられており、これらマイクロヒーター35によってランナー7内の合成樹脂Gをゲート33a毎に所定温度に加熱可能である。そのため、複数のマイクロヒーター35によって、各ゲート33aを通じてそれらに対応するキャビティ5に流れ込む合成樹脂Gを、ゲート33a毎に予め定められた温度(所定温度)になるように互いに独立に加熱することにより、合成樹脂Gの流動性をゲート33a毎に適切に調整することができる。
【0074】
このため、充填に時間のかかるキャビティ5について、それに対応するゲート33aを通じて流れ込む合成樹脂Gを所定温度に加熱して流動性を適度に良好にして、当該キャビティ5の充填時間を早めることができ、金型を分解してゲートの開口径を広げることなどなく、複数のキャビティ5間での樹脂圧力の差を容易に調整することができる。したがって、成形された複数の成形品の寸法のばらつきを抑えることができる。
【0075】
また、複数のマイクロヒーター35が、本体型31(即ち、各部分型32a〜32d)に設けられている。即ち、複数の複数のマイクロヒーター35が、本体型31によって形成されるランナー7に近接して設けられている。このため、マイクロヒーター35がランナー7から離れて設けられている場合に比べて、ランナー7内の樹脂をより効率的に加熱することができる。
【0076】
また、本体型31が、それぞれゲート型33が1つずつ連設された複数の部分型32a〜32dに分割可能に設けられているので、一の部分型32を他の部分型32から分割して、当該一の部分型32を個別に交換できる。このため、(1)連接されたゲート型33のゲート33aの開口径が互いに異なる複数の部分型32や、(2)部分型32におけるランナー7を形成する表面(即ち、本体型31の表面31aの一部)の形状が互いに異なる複数の部分型32、(3)前記開口径及び前記表面の形状が互いに異なる複数の部分型32、などを予め用意しておき、キャビティ5の充填時間に応じて適切な前記開口径や前記表面の形状の部分型32に交換することで、各キャビティ5に樹脂が充填される時間を容易に調整することができ、そのため、複数のキャビティ5間での樹脂圧力の差をさらに容易に調整することができる。
【0077】
また、コア3が、ランナー形成部13(即ち、固定型1)から離れることによりランナー7を形成し、且つ、ランナー形成部13に接することによりランナー7を消滅させるように、ランナー形成部13に接離可能に設けられているので、複数のキャビティ5への樹脂の充填時にランナー7を形成し、充填後にランナー7を消滅させることができる。このため、充填時は、ランナー7によって複数のキャビティ5に合成樹脂Gを導くことができるとともに、充填後は、ランナー7内に合成樹脂Gが残存することが無くなり、そのため、成形品として用いられないムダな合成樹脂Gが生じてしまうことを防ぐことができる。
【0078】
本実施形態は、成形品にランナー部分を含まないランナーレスの金型装置について説明するものであったが、これに限定されるものではなく、ランナー部分を含む成形品が成形される、ランナーレスでない通常の金型装置に本発明を適用してもよい。
【0079】
また、本実施形態では、コア3において、本体型31が、それぞれ1のゲート型33が一体に連接された複数の部分型32a〜32dに分割可能に設けられていたが、これに限定されるものではなく、本体型31が分割不可に設けられていてもよい。この場合、部分型32が交換できないので、マイクロヒーター35のみによって、複数のキャビティ5間での樹脂圧力の差を調整することになる。また、ゲート型33が、本体型31(分割不可の場合)又は各部分型32に、脱着可能に設けられていてもよい。このようにすることで、複数のゲート型33をそれぞれ個別に本体型31又は部分型32から取り外して交換できるので、ゲート33aの開口径が互いに異なる複数のゲート型33を予め用意しておき、キャビティ5の充填時間に応じて適切な前記開口径のゲート型33に交換することで、各キャビティ5に樹脂が充填される時間を容易に調整することができ、そのため、複数のキャビティ5間での樹脂圧力の差をさらに容易に調整することができる。
【0080】
また、本実施形態では、コア3の各部分型32a〜32dに樹脂加熱手段としてマイクロヒーター35を設けた構成であったが、これに代えて、例えば、可動型本体部22における各部分型32a〜32dに対応する箇所(図3において符号22a1で示す)などに、各部分型32a〜32dを別個に加熱する樹脂加熱手段としての複数の電磁誘導加熱装置を設けた構成などであってもよい。このようにすることで、コア3内の配線などを省略することができ、簡易な構成とすることができる。このように、樹脂加熱手段の種類及びそれを設ける箇所については、本発明の目的に反しない限り、任意である。
【0081】
また、本実施形態では、ランナー形成部13とコア3とによって、それら間に円錐形状のランナー7が形成されるものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、ランナー7は平板形状でもよく、又は、ランナー形成部13及びコア3の一方に、ホットノズル部14の先端14aから各ゲート33aまで延設された溝部を設け、他方に、この溝部に嵌合する凸部を設けて、管状のランナーを形成するようにしてもよく、本発明の目的に反しない限り、ランナーの形状は任意である。
【0082】
また、本実施形態では、コア3がランナー形成部13に接離可能に設けられていたが、これに限定されるものではなく、コア3がランナー形成部13との間にランナー7を形成した状態で固定されているものであってもよい。
【0083】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 固定型(一方の成形型)
2 可動型(他方の成形型)
3 コア(ランナー型)
5 キャビティ
7 ランナー
13 ランナー形成部(成形型)
13a 底面(ランナー形成面)
31 本体型
31a 表面(ランナー形成面)
32(32a〜32d) 部分型
33 ゲート型
33a ゲート
35 マイクロヒーター(樹脂加熱手段)
100 射出成形機(成形装置)
101 金型装置
102 射出機(充填部)
G 合成樹脂(樹脂)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【特許文献1】特開2010−17882号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数個取りの樹脂成形品の成形に用いられる金型装置及びそれを有する成形装置に関し、特に、高精度が要求される樹脂成形品の成形に用いられる金型装置及びそれを有する成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機やプリンタなどの電子写真方式の画像形成装置においては、レーザダイオード(LD)などを備える光学系を用いて感光体上に静電潜像を形成して、この静電潜像をトナーで現像して記録紙等に定着させることにより画像形成を行っている。
【0003】
上述したような光学系の一例を、図9に示す。LD811から照射された光ビームLは、非球面レンズ812によって平行光にされたのちアパーチャ813を通過して、シリンドリカルレンズ814によってポリゴンミラー815上に焦点が合うように集光される。そして、光ビームLは、ポリゴンミラー815によって、主走査方向に移動するように反射されて、走査レンズ(fθレンズ)816及び長尺レンズ817を通過したのち、図示しない反射ミラーに反射されて感光体に照射され、これにより、感光体上に静電潜像が形成される。
【0004】
このような画像形成装置の光学系などで用いられる樹脂成形の部品、例えば、シリンドリカルレンズ814は、特許文献1に示されるような金型装置としてのランナーレス金型を用いて、射出成形によって一度に複数個成形されていた。
【0005】
特許文献1のランナーレス金型900は、図10に示すように、固定型901と可動型902とからなり、互いの間に複数のキャビティ918を形成する。固定型901の中央にはホットノズル910を備え、その外側に有底筒状のランナー形成部911が設けられている。このランナー形成部911の可動型902側の底面911bは、所要深さの円錐形の凹状に形成されており、この底面911bには、円錐形状のコア912(即ち、ランナー型)が接離自在に嵌合されている。ランナー形成部911の底面911bの外周端縁は、全周にわたって壁状に形成されているとともに、複数のキャビティ918にそれぞれ対応する複数のゲート913が設けられている。
【0006】
ランナーレス金型900では、図示しない充填部からホットノズル910を通じて溶融された成形材料としての合成樹脂(以下、単に樹脂ともいう)の充填が開始されると、ランナー形成部911の底面911bに嵌合されたコア912が、充填された樹脂によって押し戻されて、コア912の表面と底面911bとの間にランナーを形成する。それと同時に、コア912がゲート913を開いて複数のキャビティ918に樹脂が充填される。そして、各キャビティ918への充填完了後に、コア912が再度ランナー形成部911と嵌合され、ゲート913が閉じられる。そして、各キャビティ918に充填された樹脂が冷却されて複数の成形品としてのシリンドリカルレンズが完成する。
【0007】
上述した画像形成装置の光学系や画像読取系などで用いられるような部品は、高精細な画像形成を実現するために高い寸法精度が要求される。例えば、図11(a)に示す形状のシリンドリカルレンズ814は、透明な樹脂を用いて、全長(主走査方向長さ)が18mm、幅(副走査方向長さ)が5mm、厚さが2mmに成形されている。また、このシリンドリカルレンズ814は、入射面が、断面階段状(図11(b))や平面状(図11(c))に形成されており、屈折面が断面円弧状の曲面に形成されている。そして、主走査方向の精度(許容誤差)として、入射面の反り0.5μm未満、うねり0.15μm未満、屈折面の反り0.5μm未満、うねり0.15μm未満、が要求される。また、副走査方向の精度として、入射面の反り4μm未満、うねり0.1μm未満、屈折面の反り1.2μm未満、うねり0.1μm未満、が要求される。
【0008】
このようなシリンドリカルレンズ814では、例えば、寸法が1μm変わると、0.05μm程度の反りやうねりが生じることが知られている。そのため、上述のランナーレス金型900などを用いて多数個取りした複数のシリンドリカルレンズ814間においては、その寸法のばらつきを抑える必要がある。
【0009】
しかしながら、上述したランナーレス金型など、射出成形等に用いる金型は、その加工上、寸法公差を設ける必要があるので、この寸法公差によって、例えば、複数のゲート間でそれら開口径に差が生じてしまうことがあった。また、金型においては、一般的に天側(金型上部)の方の温度が高くなりやすいので、天側に配されたキャビティの方が、地側(金型下部)に配されたキャビティより早く樹脂が充填される傾向があった。そのため、これらなどが原因となって、金型に設けられた複数のキャビティの充填に時間差が生じて、この時間差によって、複数のキャビティ間で樹脂圧力に差が生じてしまうことがあった。そして、複数のキャビティ間で樹脂圧力に差が生じると、キャビティ内の樹脂の充填状態に差異が生じて、同時に成形された複数の成形品の寸法にばらつき生じてしまうことがあった。
【0010】
そして、上述したランナーレス金型900においては、このような寸法のばらつきを抑えるために、充填に時間のかかるキャビティ918に対応するゲート913の開口径を広げたり、該ゲート913に通じるランナーを形成する底面911bやコア912の表面形状を変えたりするなどして、樹脂の充填において複数のキャビティ918間で生じる樹脂圧力の差の調整を行っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ゲート913の開口径を広げたり、コア912の表面形状を変えたりするためには、ランナーレス金型900を分解してランナー形成部911やコア912を取り外す作業が必要であり、また、その都度、切削加工装置などによる加工作業が必要になるので、それら作業が繁雑であり、そのため、複数のキャビティ918の充填に生じる時間差、つまり、樹脂の充填において複数のキャビティ918間で生じる樹脂圧力の差の調整が困難であるという問題があった。
【0012】
本発明は、上記課題に係る問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、複数のキャビティ間で生じる樹脂圧力の差を容易に調整できる金型装置及びそれを有する成形装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、(a)一方の成形型と他方の成形型との間に複数のキャビティが設けられた一対の成形型と、(b)前記複数のキャビティに溶融された樹脂を導くランナーを前記一方の成形型との間に形成した本体型、及び、前記ランナーと前記複数のキャビティとに連通するゲートを有するとともに前記本体型に連設された複数のゲート型、がそれぞれ設けられたランナー型と、を有する金型装置において、前記ランナー内における樹脂を前記複数のゲート型におけるゲート毎に所定温度に加熱するように、前記ゲートのそれぞれに対応して互いに独立して配置された複数の樹脂加熱手段が設けられていることを特徴とする金型装置である。
【0014】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記複数の樹脂加熱手段が、前記本体型に設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記本体型が、それぞれ前記ゲート型が1つずつ連設された複数の部分型に分割できるように設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載された発明において、前記複数のゲート型が、それぞれ個別に前記本体型に脱着可能に設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5に記載された発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載された発明において、前記一方の成形型から離れることにより前記ランナーを形成するとともに、前記一方の成形型に接することにより前記ランナーを消滅させるように、前記ランナー型が、前記一方の成形型に接離可能に設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項6に記載された発明は、上記目的を達成するために、金型装置と、該金型装置のキャビティ内に樹脂を充填する充填部と、を有する成形装置において、前記金型装置が、請求項1〜5のいずれか一項に記載の金型装置で構成されていることを特徴とする成形装置である。
【0019】
請求項1に記載された発明によれば、複数の樹脂加熱手段が、複数のゲート型が有するゲートのそれぞれに対応して互いに独立して設けられており、これら樹脂加熱手段によってランナー内の樹脂をゲート毎に所定温度に加熱できる。そのため、複数の樹脂加熱手段によって、各ゲートを通じてそれらに対応するキャビティに流れ込む樹脂を、ゲート毎に予め定められた温度(所定温度)になるように互いに独立に加熱することにより、樹脂の流動性をゲート毎に適切に調整することができる。
【0020】
請求項2に記載された発明によれば、複数の樹脂加熱手段が、本体型に設けられている。即ち、複数の樹脂加熱手段が、本体型によって形成されるランナーに近接して設けられている。
【0021】
請求項3に記載された発明によれば、本体型が、それぞれゲート型が1つずつ連設された複数の部分型に分割できるように設けられているので、一の部分型を他の部分型から分割して、当該一の部分型を個別に交換できる。
【0022】
請求項4に記載された発明によれば、複数のゲート型が、それぞれ個別に前記本体型に脱着可能に設けられているので、複数のゲート型をそれぞれ個別に本体型から取り外して交換できる。
【0023】
請求項5に記載された発明によれば、ランナー型が、一対の成形型のうち一方の成形型から離れることによりランナーを形成するとともに、一方の成形型に接することによりランナーを消滅させるように、一方の成形型に接離可能に設けられているので、複数のキャビティへの樹脂の充填時にランナーを形成し、充填後にランナーを消滅させることができる。
【0024】
請求項6に記載された発明によれば、成形装置が有する金型装置が、上述した複数の樹脂加熱手段を有しているので、複数の樹脂加熱手段によって、各ゲートを通じてそれらに対応するキャビティに流れ込む樹脂を、ゲート毎に予め定められた温度(所定温度)になるように互いに独立に加熱することにより、樹脂の流動性をゲート毎に適切に調整することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、請求項1に記載された発明によれば、複数の樹脂加熱手段によって、各ゲートを通じてそれらに対応するキャビティに流れ込む樹脂を、ゲート毎に予め定められた温度(所定温度)になるように互いに独立に加熱することにより、樹脂の流動性をゲート毎に適切に調整することができるので、充填に時間のかかるキャビティについて、それに対応するゲートを通じて流れ込む樹脂を所定温度に加熱して流動性を適度に良好にして、当該キャビティの充填時間を早めることができ、金型を分解してゲートの開口径を広げることなどなく、複数のキャビティ間での樹脂圧力の差を容易に調整することができる。したがって、成形された複数の成形品の寸法のばらつきを容易に抑えることができる。
【0026】
請求項2に記載された発明によれば、複数の樹脂加熱手段が、本体型によって形成されるランナーに近接して設けられているので、樹脂加熱手段がランナーから離れて設けられている場合に比べて、ランナー内の樹脂をより効率的に加熱することができる。
【0027】
請求項3に記載された発明によれば、一の部分型を他の部分型から分割して、当該一の部分型を個別に交換できるので、(1)連接されたゲート型のゲートの開口径が互いに異なる複数の部分型や、(2)部分型におけるランナーを形成する箇所の形状が互いに異なる複数の部分型、(3)前記開口径及び前記箇所の形状が互いに異なる複数の部分型、などを予め用意しておき、キャビティの充填時間に応じて適切な前記開口径や前記箇所の形状の部分型に交換することで、各キャビティに樹脂が充填される時間を容易に調整することができ、そのため、複数のキャビティ間での樹脂圧力の差をさらに容易に調整することができる。
【0028】
請求項4に記載された発明によれば、複数のゲート型をそれぞれ個別に本体型から取り外して交換できるので、ゲートの開口径が互いに異なる複数のゲート型を予め用意しておき、キャビティの充填時間に応じて適切な前記開口径のゲート型に交換することで、各キャビティに樹脂が充填される時間を容易に調整することができ、そのため、複数のキャビティ間での樹脂圧力の差をさらに容易に調整することができる。
【0029】
請求項5に記載された発明によれば、複数のキャビティへの樹脂の充填時にランナーを形成し、充填後にランナーを消滅させることができるので、充填時は、ランナーによって複数のキャビティに樹脂を導くことができるとともに、充填後は、ランナー内に樹脂が残存することが無くなり、そのため、成形品として用いられないムダな樹脂が生じてしまうことを防ぐことができる。
【0030】
請求項6に記載された発明によれば、複数の樹脂加熱手段によって、各ゲートを通じてそれらに対応するキャビティに流れ込む樹脂を、ゲート毎に予め定められた温度(所定温度)になるように互いに独立に加熱することにより、樹脂の流動性をゲート毎に適切に調整することができるので、充填に時間のかかるキャビティについて、それに対応するゲートを通じて流れ込む樹脂を所定温度に加熱して流動性を適度に良好にして、当該キャビティの充填時間を早めることができ、金型を分解してゲートの開口径を広げることなどなく、複数のキャビティ間での樹脂圧力の差を容易に調整することができる。したがって、成形された複数の成形品の寸法のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の成形装置の一実施形態の射出成形機の断面図である。
【図2】(a)は、図1の射出成形機の金型装置が備える固定型を金型分割面から見た図であり、(b)は、図1の射出成形機の金型装置が備える可動型を金型分割面から見た図である。
【図3】図1の射出成形機の金型装置が備えるコアの周辺を拡大した断面図である。
【図4】(a)は、コアの正面図であり、(b)は、背面図であり、(c)は、(a)のIII−III線に沿う断面図である。
【図5】図1の射出成形機の固定型と可動型が閉じる前の状態での断面図である。
【図6】図1の射出成形機における樹脂の充填過程での断面図である。
【図7】図1の射出成形機における樹脂の充填完了後のゲートカット状態での断面図である。
【図8】図1の射出成形機におけるキャビティから成形品を取り出している状態での断面図である。
【図9】画像形成装置の光学系の構成の一例を示す図である。
【図10】従来の金型装置の断面図である。
【図11】(a)は、図9の光学系で用いられるシリンドリカルレンズの斜視図であり、(b)は、(a)のシリンドリカルレンズの副走査方向に沿う断面の一例を示す図であり、(c)は、(a)のシリンドリカルレンズの副走査方向に沿う断面の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の成形装置の一実施形態としての射出成形機について、図1〜図8を参照して説明する。本実施形態の射出成形機は、小型且つ高精度の樹脂成形品の多数個取り成形に用いられる成形装置であり、例えば、図11に示す、シリンドリカルレンズ814の射出成形する成形装置である。
【0033】
射出成形機100は、図1に示すように、金型装置101と、充填部としての射出機102と、図示しない制御装置と、を備えている。
【0034】
金型装置101は、一対の成形型としての固定型1及び可動型2と、ランナー型としてのコア3と、を備えている。これら固定型1と可動型2とは、金型分割面PLで互いに重ね合わされることによって、互いの間に複数のキャビティ5を形成している。本実施形態において、これらキャビティ5は、固定型1及び可動型2の中心について放射状に配置されており、形成されるキャビティ5は4個であるが、構成などに応じてキャビティ5の配置や数は適宜定められる。
【0035】
固定型1は、図1及び図2(a)に示すように、固定ベース部11と、固定型本体部12と、ランナー形成部13と、ホットノズル部14と、ガイドピン用孔16と、を備えている。
【0036】
固定ベース部11は、矩形板状に形成されており、例えば、工場のフロアや作業台などに、図示しない固定手段によって、後述の射出機102とともに固定されている。
【0037】
固定型本体部12は、矩形板型12aと、転写駒12bと、入れ子12c、12dと、を備えており、固定ベース部11に重ねられて固定されている。矩形板型12aにおける複数のキャビティ5に対応する箇所には、転写駒12b及び入れ子12c、12dが嵌め込まれている。転写駒12bは、シリンドリカルレンズ814の入射面形状(例えば、断面階段状形状や平面形状)に合わせて形成されている。また、入れ子12c、12dは、シリンドリカルレンズ814の全長方向(主走査方向)の端部形状に合わせて形成されている。
【0038】
ランナー形成部13は、略有底筒状に形成されており、その底面13a(即ち、一方のランナー形成面)が、固定型本体部12の可動型2側の面(即ち、金型分割面PL)に露出するように、固定ベース部11及び固定型本体部12の中央を貫通して固定されている。ランナー形成部13の底面13aは、略円錐形の凹状(即ち、すり鉢状)に形成されている。また、底面13aの外周縁部における複数のキャビティ5のそれぞれに対応する箇所には、後述するコア3のゲート型33が挿入される切り欠き13bが設けられている。
【0039】
ホットノズル部14は、シリンジ(注射筒)状に形成されており、その外周面がランナー形成部13の内周面に密に重なるようにして、ランナー形成部13内に配設されている。ホットノズル部14の先端14aは、ランナー形成部13の底面13aの中央に露出されている。ホットノズル部14の注入孔14bは、先端14aとは反対側の端部に開口するように配設されている。
【0040】
ランナー形成部13とホットノズル部14とのそれぞれには、図示しない制御装置によって、互いに独立に制御されるランナー形成部ヒーター13cとホットノズル部ヒーター14cとが設けられている。
【0041】
ガイドピン用孔16は、固定型本体部12の四隅に設けられており、固定型1と可動型2の接合時に、可動型2に設けられた後述のガイドピン26が挿入される。
【0042】
可動型2は、図1、図2(b)に示すように、可動ベース部21と、可動型本体部22と、押し出しロッド23と、押し出しプレート24と、押し出しピン25と、ガイドピン26と、リターンピン27と、を備えている。
【0043】
可動ベース部21は、3つの矩形板状部分21a、21b、21cが順次重ね合わされて構成されている。可動ベース部21は、例えば、制御装置に接続された油圧シリンダ装置などの図示しない金型駆動手段に取り付けられている。これにより、可動型2を、固定型1に近づけたり離したりすることができ、つまり、可動型2は、固定型1に接離可能に設けられる。
【0044】
可動型本体部22は、矩形板型22aと、転写駒22bと、入れ子22b、22cと、を備えており、可動ベース部21に重ねられて固定されている。矩形板型22aは、上述した固定型本体部12の矩形板型12aと略同一形状に形成されている。矩形板型22aにおける複数のキャビティ5に対応する箇所には、転写駒22b及び入れ子22c、22dが嵌め込まれている。転写駒22bは、シリンドリカルレンズ814の屈折面形状(例えば、断面円弧状)に合わせて形成されている。また、入れ子22c、22dは、シリンドリカルレンズ814の全長方向の端部形状に合わせて形成されている。固定型本体部12と可動型本体部22とが、互いに対向する面(金型分割面PL)で接合されることにより、各転写駒、入れ子が配置された箇所にキャビティ5が形成される。
【0045】
押し出しロッド23は、可動ベース部21及び可動型本体部22の中央を貫通して、この貫通方向(図1の左右方向であり、固定型1と可動型2の接合方向と一致)に移動可能に設けられている。押し出しロッド23は、可動ベース部21に設けられたスプリング23aによって引き込み方向(図1の左方向)に付勢されている。押し出しロッド23は、制御装置に接続された図示しないアクチュエータによって押し出し方向(図1の右方向)に押し出されることにより、後述するコア3を、ランナー形成部13の底面13aに押しつける。
【0046】
押し出しプレート24は、可動ベース部21の中央の矩形板状部分21b内に上記貫通方向に移動可能に設けられている。この押し出しプレート24は、押し出しロッド23の押し出し方向への移動に伴って、押し出し方向へ移動する。
【0047】
押し出しピン25は、可動ベース部21の固定型1側の矩形板状部分21cと可動型本体部22とを貫通して、押し出しロッド23と平行に貫通方向に移動可能に設けられている。押し出しピン25の一端25aは、押し出しプレート24に固定されており、他端25bは、押し出しプレート24が押し出し方向に移動されたときに、可動型本体部22における複数のキャビティ5に対応する箇所に突出するように配されている。
【0048】
ガイドピン26は、可動型本体部22の四隅に突設された円柱状の固定ピンである。このガイドピン26は、固定型1と可動型2との接合時に、固定型1のガイドピン用孔16に挿入されて互いに嵌合し、固定型1と可動型2のセンター合わせを行っている。
【0049】
リターンピン27は、可動型本体部22の四隅にガイドピン26と並べて配設された円柱状の可動ピンである。このガイドピン26の一方の端部は、上述の押し出しプレート24に固定されており、他方の端部は、押し出しプレート24が押し出し方向に移動されたときに、可動型本体部22の固定型1側の面(金型分割面PL)から突出するように設けられている。このリターンピン27は、固定型1と可動型2とが接合されたとき、上述の押し出しピン25より先に固定型本体部12に当たり、押し出しプレート24を押し戻すことで、押し出しプレート24に固定されている押し出しピン25が戻され、この押し出しピン25の破損を防止するものである。
【0050】
コア3は、図3、図4(a)〜(c)に示すように、複数の部分型32からなる本体型31と、各部分型32のそれぞれに1つずつ一体に連接された複数のゲート型33と、本体型31(即ち、複数の部分型32)が固定されるベース部34と、複数の樹脂加熱手段としてのマイクロヒーター35と、を備えている。
【0051】
本体型31は、底面の径がランナー形成部13の外径と同一の略円錐形状に形成されており、そのテーパ状の表面31a(即ち、他方のランナー形成面)が、上述の固定型1のランナー形成部13の底面13aに密着可能なように形成されている。本体型31の表面31aは、ランナー形成部13の底面13aとの間にランナー7を形成する。即ち、ランナー形成部13を備える固定型1は、請求項中の一方の成形型に相当する。また、可動型2は、請求項中の他方の成形型に相当する。そして、固定型1と可動型2とが、請求項中の一対の成形型に相当する。
【0052】
複数の部分型32は、本体型31をその円錐形状の中心軸に沿って均等に分割した形状に形成されている。本実施形態においては、本体型31を4分割して複数の部分型32a〜32dを形成している。
【0053】
複数のゲート型33は、ランナー形成部13の切り欠き13bに嵌め込み可能なように、それぞれが片状(即ち、短い帯板状)に形成されている。ゲート型33の中央部には、それを貫通する孔である1つのゲート33aが設けられている。ゲート型33は、部分型32と一体に連設されており、部分型32の円弧状の外縁部の中央に上記中心軸と平行に立設されている。
【0054】
ベース部34は、平面視が本体型31の底面形状と同一の円板状に形成されている。ベース部34の一方の面34aには、部分型32a〜32dが互いに組み合わされて円錐形状の本体型31を形成するように固定されている。具体的には、これら4つの部分型32a〜32dは、例えば、ネジ止め構造や、嵌め込み構造(部分型32(即ち、本体型31)の底面及びベース部34の一方の面34aに互いに嵌合する凸部及び凹部を設けた構造等)など、それぞれ個別に脱着可能な図示しない固定手段を用いて、ベース部34の一方の面34aに固定されている。また、ベース部34の他方の面34bには、押し出しロッド23に押される円柱部34cが一体に設けられている。
【0055】
複数のマイクロヒーター35は、周知の小型の加熱手段であって、上記部分型32におけるゲート型33が備えるゲート33a近傍に埋設されている。これら複数のマイクロヒーター35は、上記部分型32a〜32dのそれぞれに1つずつ設けられている。各マイクロヒーター35は、それぞれ独立して制御可能なように、コア3内に設けられた配線などによって制御装置に接続されている。マイクロヒーター35は制御装置による制御によって発熱して、各部分型32a〜32dの表面(即ち、本体型31の表面31a)を通じて、該表面31aによって形成されるランナー7内の樹脂を所定温度に加熱する。つまり、複数のマイクロヒーター35は、ランナー7内の樹脂を複数のゲート型33のゲート33a毎に所定温度に加熱可能なように、ゲート33aのそれぞれに対応して互いに独立して設けられている。
【0056】
コア3は、複数のゲート型33のゲート33aのそれぞれが、それらに対応する複数のキャビティ5と相対するように、且つ、その表面31aがランナー形成部13の底面13aと相対するように、固定型1と可動型2との間に配置される。また、コア3は、固定型1と可動型2との間でランナー形成部13に接したり、ランナー形成部13から離れたりできるように、即ち、ランナー形成部13に接離可能に設けられている。そして、コア3が、ランナー形成部13から離れると、図3に示すように、コア3の本体型31の表面31aとランナー形成部13の底面13aとの間に空間が形成され、即ち、樹脂を複数のキャビティ5に導くためのランナー7が形成される。そして、コア3の各ゲート型33に設けられたゲート33aによって、このランナー7と複数のキャビティ5とが連通される。また、コア3が、ランナー形成部13に近づくと、コア3の本体型31の表面31aとランナー形成部13の底面13aとが密着してランナー7が消滅するとともに、各ゲート型33が、ランナー形成部13の切り欠き13bに挿入されて、各ゲート33aが閉じられる。
【0057】
射出機102は、上記金型装置101の固定型1と同様に、例えば、工場のフロアや作業台などに、図示しない固定手段によって固定されている。射出機102は、シリンダとしての加熱シリンダ53と、押圧部材としてのスクリュー54と、押圧シリンダなどを備えている。
【0058】
加熱シリンダ53は、筒状に形成されている。加熱シリンダ53は、その長手方向(軸芯方向)が、固定型1と可動型2との接合方向と平行に配されている。加熱シリンダ53の一端部53aは、該加熱シリンダ53の先端に向かうにしたがって徐々に細くなるようにテーパ状に形成されている。加熱シリンダ53は、加熱シリンダ53の一端部53aの開口55が、固定型1のホットノズル部14の注入孔14bに侵入した状態で、固定型1に取り付けられている。なお、注入孔14bの内面と加熱シリンダ53の一端部53aは、互いに密着している。
【0059】
加熱シリンダ53は、内側にスクリュー54を収容する。加熱シリンダ53の外表面には、加熱用ヒーターが複数取り付けられている。また、加熱シリンダ53には、筒状のホッパが取り付けられている。加熱シリンダ53は、ホッパを介して、成形材料としての固形チップ状の合成樹脂G(即ち、樹脂)が充填される。加熱シリンダ53は、充填されたチップ状の合成樹脂Gを加熱流動化(可塑化)する。このように、加熱シリンダ53は、可塑化された合成樹脂Gが充填される。また、加熱シリンダ53は、開口55を通して可塑化された合成樹脂Gを注入孔14b、ホットノズル部14内及びランナー7を順次介して、複数のキャビティ5内に射出可能になっている。
【0060】
スクリュー54は、棒状に形成されており、加熱シリンダ53内に収容されている。スクリュー54は、加熱シリンダ53内に収容されると、その長手方向(軸芯方向)が加熱シリンダ53の長手方向(軸芯方向)と平行になる。また、スクリュー54は、加熱シリンダ53の長手方向に沿って移動自在に設けられている。スクリュー54の外周面には、螺旋状に突起57が設けられている。
【0061】
スクリュー54は、加熱シリンダ53の長手方向に沿って移動することで、加熱シリンダ53内の合成樹脂Gを前記開口55即ち加熱シリンダ53の一端部53aに向かって移動させて、加熱シリンダ53内の可塑化された合成樹脂Gを注入孔14bに向かって押し出す。
【0062】
押圧シリンダは、シリンダ本体と、該シリンダ本体から伸縮自在なロッドとを備えている。ロッドは、スクリュー54に取り付けられている。押圧シリンダは、ロッドを伸縮することで、スクリュー54を加熱シリンダ53の長手方向に沿って移動させる。勿論、押圧シリンダは、ロッドを伸張することで、スクリュー54を開口55に近づけ、ロッドを縮小することで、スクリュー54を開口55から離す。
【0063】
前述した構成の射出機102は、押圧シリンダのロッドを伸縮することで、加熱シリンダ53の長手方向に沿って、スクリュー54を移動させて、加熱シリンダ53内の可塑化(溶融)された合成樹脂Gを注入孔14b、ホットノズル部14内、及び、ランナー7を介して複数のキャビティ5内に充填(射出)する。
【0064】
制御装置は、周知のRAM、ROM、CPUなどを備えたコンピュータである。制御装置は、射出成形機100を動作させるためのプログラムを記憶している。制御装置は、金型装置101と、射出機102などと接続しており、前述したプログラムに基づいて、これらを制御して、射出成形機100全体の制御をつかさどる。
【0065】
次に、上述の射出成形機100の動作について、図5〜図8を参照して説明する。図5は、固定型と可動型とを閉じる前の状態での断面図である。図6は、樹脂の充填過程での断面図である。図7は、樹脂の充填完了後のゲートカット状態での断面図である。図8は、キャビティから成形品を取り出している状態での断面図である。なお、図5〜図8において、射出機102は記載を省略しているが、実際には、ホットノズル部14の注入孔14bの内面に加熱シリンダ53の一端部53aを密着させて、金型装置101の固定型1とともに固定されている。
【0066】
まず、図5に示すように、固定型1と可動型2とを閉じる前の状態では、コア3は、その本体型31の表面31aがランナー形成部13の底面13aに密着されて、ランナー形成部ヒーター13cによって加熱される。また、コア3の複数のゲート型33は、ランナー形成部13の複数の切り欠き13bに挿入されており、これらゲート型33のゲート33aは閉じられた状態にある。
【0067】
そして、図6に示されている樹脂の充填過程では、射出機102によって、複数のキャビティ5への合成樹脂Gの充填が開始されて、ランナー形成部13の底面13aに表面31aを密着していたコア3が、注入された合成樹脂Gによって押されて、引き込み方向に移動し、底面13aと表面31aとの間にランナー7を形成する。これと同時に、各ゲート33aが各キャビティ5と相対して、ゲート33aによってキャビティ5とランナー7とが連通されて(即ち、ゲート33aが開かれて)、キャビティ5に樹脂が充填される。このときコア3は、熱源であるランナー形成部13から離れるが、充填された合成樹脂Gによってさらに加熱されるので、ランナー形成部13とコア3の間に形成されたランナー7内の合成樹脂Gは固化することはない。
【0068】
また、コア3の本体型31(即ち、各部分型32a〜32d)に埋設された複数のマイクロヒーター35によって、必要に応じて、複数のゲート33aを通じてそれらに対応する複数のキャビティ5に充填される合成樹脂Gを、ゲート33a毎に互いに独立して所定温度に加熱する。
【0069】
この所定温度は、次のようにして決定する。例えば、この射出成形機100を用いた予備成形やコンピュータを用いた成形シミュレーションなどによって、複数のキャビティ5のそれぞれにおける充填時の樹脂圧力を測定する。この樹脂圧力は、例えば、各キャビティ5の近傍にひずみ計などを設けて、樹脂充填時の金型のひずみなどから計測する。そして、測定した樹脂圧力のばらつき(例えば、最大値と最小値との差、又は、標準偏差など)が、所定の許容基準値を超えていた場合、樹脂圧力が小さいキャビティ5に通ずるゲート33aに対応して設けられたマイクロヒーター35によって、該ゲート33aを通じて該キャビティ5に充填されるランナー7内の合成樹脂Gを加熱して、その温度を高めて流動性を変えて再度予備成形等を行い、これを繰り返して、最終的に樹脂圧力のばらつきが許容基準値内に収まるようにする。そして、このときの各マイクロヒーター35による加熱温度を上記所定温度として制御装置に記憶するとともに、上記充填過程でこの所定温度となるようにマイクロヒーター35を制御する。なお、上記では、各キャビティ5における充填時の樹脂圧力のばらつきを求めて、これら樹脂圧力が均等になるように調整するものであったが、これに限らず、例えば、成形品の寸法のばらつきを測定して、これら寸法が所定の基準範囲に収まるようにして、上記所定温度を決定してもよい。
【0070】
また、マイクロヒーター35での加熱だけでは樹脂圧力のばらつきを許容基準値内に収めることができない場合や、ばらつきが非常に大きい場合など、樹脂圧力がそれら平均値から最も離れているキャビティ5に対応するゲート型33が連接された部分型32(部分型32a〜32dのいずれか)を個別に取り外して、予め用意しておいた、それと異なる開口径のゲート33aを有するゲート型33が連接された部分型32を新たに取り付ける。または、ゲート33aの開口径は同一で、表面の形状(本体型31の表面31aの一部の形状であり、つまり、ランナー7の形状でもある)が異なる部分型32や、開口径及び表面の形状がともに異なる部分型32を新たに取り付けてもよい。そして、再度上記と同様にして上記所定温度を決定する。勿論、上記場合だけでなく、部分型32の交換によって樹脂圧力のばらつきの微調整をおこなってもよい。上述したような樹脂圧力の調整作業を予め実施しておく。
【0071】
次に、図7に示されている樹脂の充填完了後のゲートカット状態では、キャビティ5が合成樹脂Gで充填された後、押し出しロッド23により所定の押し出し位置までコア3が押圧され、本体型31の表面31aが、ランナー形成部13の底面13aに密着してランナー7が消滅するとともに、各ゲート型33が切り欠き13bに挿入されて、ゲート33aが閉じられる。このとき、ランナー形成部13とコア3により形成されたランナー7(図6を参照)内にあった溶融状態の合成樹脂Gは、ホットノズル部14を介して、射出機102に押し戻される。また、ホットノズル部14内の溶融された合成樹脂Gは、コア3がランナー形成部13に密着することによって、ホットノズル部14の先端14aが塞がれて、ホットノズル部14外への流出を防止することができる。
【0072】
そして、図8に示されているキャビティ5から成形品814(即ち、シリンドリカルレンズ814)を取り出している状態(成形品突き出し状態)では、金型の固定型1と可動型2を開くと共に、押し出しロッド23を上記所定の押し出し位置(図7に示す位置)からさらに前進させて、押し出しプレート24を押し出すことにより、押し出しピン25を可動型2のキャビティ5内へ突出させて、成形品814をキャビティ5から離脱させる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数のマイクロヒーター35が、複数のゲート型33が有するゲート33aのそれぞれに対応して互いに独立して設けられており、これらマイクロヒーター35によってランナー7内の合成樹脂Gをゲート33a毎に所定温度に加熱可能である。そのため、複数のマイクロヒーター35によって、各ゲート33aを通じてそれらに対応するキャビティ5に流れ込む合成樹脂Gを、ゲート33a毎に予め定められた温度(所定温度)になるように互いに独立に加熱することにより、合成樹脂Gの流動性をゲート33a毎に適切に調整することができる。
【0074】
このため、充填に時間のかかるキャビティ5について、それに対応するゲート33aを通じて流れ込む合成樹脂Gを所定温度に加熱して流動性を適度に良好にして、当該キャビティ5の充填時間を早めることができ、金型を分解してゲートの開口径を広げることなどなく、複数のキャビティ5間での樹脂圧力の差を容易に調整することができる。したがって、成形された複数の成形品の寸法のばらつきを抑えることができる。
【0075】
また、複数のマイクロヒーター35が、本体型31(即ち、各部分型32a〜32d)に設けられている。即ち、複数の複数のマイクロヒーター35が、本体型31によって形成されるランナー7に近接して設けられている。このため、マイクロヒーター35がランナー7から離れて設けられている場合に比べて、ランナー7内の樹脂をより効率的に加熱することができる。
【0076】
また、本体型31が、それぞれゲート型33が1つずつ連設された複数の部分型32a〜32dに分割可能に設けられているので、一の部分型32を他の部分型32から分割して、当該一の部分型32を個別に交換できる。このため、(1)連接されたゲート型33のゲート33aの開口径が互いに異なる複数の部分型32や、(2)部分型32におけるランナー7を形成する表面(即ち、本体型31の表面31aの一部)の形状が互いに異なる複数の部分型32、(3)前記開口径及び前記表面の形状が互いに異なる複数の部分型32、などを予め用意しておき、キャビティ5の充填時間に応じて適切な前記開口径や前記表面の形状の部分型32に交換することで、各キャビティ5に樹脂が充填される時間を容易に調整することができ、そのため、複数のキャビティ5間での樹脂圧力の差をさらに容易に調整することができる。
【0077】
また、コア3が、ランナー形成部13(即ち、固定型1)から離れることによりランナー7を形成し、且つ、ランナー形成部13に接することによりランナー7を消滅させるように、ランナー形成部13に接離可能に設けられているので、複数のキャビティ5への樹脂の充填時にランナー7を形成し、充填後にランナー7を消滅させることができる。このため、充填時は、ランナー7によって複数のキャビティ5に合成樹脂Gを導くことができるとともに、充填後は、ランナー7内に合成樹脂Gが残存することが無くなり、そのため、成形品として用いられないムダな合成樹脂Gが生じてしまうことを防ぐことができる。
【0078】
本実施形態は、成形品にランナー部分を含まないランナーレスの金型装置について説明するものであったが、これに限定されるものではなく、ランナー部分を含む成形品が成形される、ランナーレスでない通常の金型装置に本発明を適用してもよい。
【0079】
また、本実施形態では、コア3において、本体型31が、それぞれ1のゲート型33が一体に連接された複数の部分型32a〜32dに分割可能に設けられていたが、これに限定されるものではなく、本体型31が分割不可に設けられていてもよい。この場合、部分型32が交換できないので、マイクロヒーター35のみによって、複数のキャビティ5間での樹脂圧力の差を調整することになる。また、ゲート型33が、本体型31(分割不可の場合)又は各部分型32に、脱着可能に設けられていてもよい。このようにすることで、複数のゲート型33をそれぞれ個別に本体型31又は部分型32から取り外して交換できるので、ゲート33aの開口径が互いに異なる複数のゲート型33を予め用意しておき、キャビティ5の充填時間に応じて適切な前記開口径のゲート型33に交換することで、各キャビティ5に樹脂が充填される時間を容易に調整することができ、そのため、複数のキャビティ5間での樹脂圧力の差をさらに容易に調整することができる。
【0080】
また、本実施形態では、コア3の各部分型32a〜32dに樹脂加熱手段としてマイクロヒーター35を設けた構成であったが、これに代えて、例えば、可動型本体部22における各部分型32a〜32dに対応する箇所(図3において符号22a1で示す)などに、各部分型32a〜32dを別個に加熱する樹脂加熱手段としての複数の電磁誘導加熱装置を設けた構成などであってもよい。このようにすることで、コア3内の配線などを省略することができ、簡易な構成とすることができる。このように、樹脂加熱手段の種類及びそれを設ける箇所については、本発明の目的に反しない限り、任意である。
【0081】
また、本実施形態では、ランナー形成部13とコア3とによって、それら間に円錐形状のランナー7が形成されるものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、ランナー7は平板形状でもよく、又は、ランナー形成部13及びコア3の一方に、ホットノズル部14の先端14aから各ゲート33aまで延設された溝部を設け、他方に、この溝部に嵌合する凸部を設けて、管状のランナーを形成するようにしてもよく、本発明の目的に反しない限り、ランナーの形状は任意である。
【0082】
また、本実施形態では、コア3がランナー形成部13に接離可能に設けられていたが、これに限定されるものではなく、コア3がランナー形成部13との間にランナー7を形成した状態で固定されているものであってもよい。
【0083】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 固定型(一方の成形型)
2 可動型(他方の成形型)
3 コア(ランナー型)
5 キャビティ
7 ランナー
13 ランナー形成部(成形型)
13a 底面(ランナー形成面)
31 本体型
31a 表面(ランナー形成面)
32(32a〜32d) 部分型
33 ゲート型
33a ゲート
35 マイクロヒーター(樹脂加熱手段)
100 射出成形機(成形装置)
101 金型装置
102 射出機(充填部)
G 合成樹脂(樹脂)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【特許文献1】特開2010−17882号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一方の成形型と他方の成形型との間に複数のキャビティが設けられた一対の成形型と、(b)前記複数のキャビティに溶融された樹脂を導くランナーを前記一方の成形型との間に形成した本体型、及び、前記ランナーと前記複数のキャビティとに連通するゲートを有するとともに前記本体型に連設された複数のゲート型、がそれぞれ設けられたランナー型と、を有する金型装置において、
前記ランナー内における樹脂を前記複数のゲート型におけるゲート毎に所定温度に加熱するように、前記ゲートのそれぞれに対応して互いに独立して配置された複数の樹脂加熱手段が設けられている
ことを特徴とする金型装置。
【請求項2】
前記複数の樹脂加熱手段が、前記本体型に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の金型装置。
【請求項3】
前記本体型が、それぞれ前記ゲート型が1つずつ連設された複数の部分型に分割できるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金型装置。
【請求項4】
前記複数のゲート型が、それぞれ個別に前記本体型に脱着可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の金型装置。
【請求項5】
前記一方の成形型から離れることにより前記ランナーを形成するとともに、前記一方の成形型に接することにより前記ランナーを消滅させるように、前記ランナー型が、前記一方の成形型に接離可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の金型装置。
【請求項6】
金型装置と、該金型装置のキャビティ内に樹脂を充填する充填部と、を有する成形装置において、
前記金型装置が、請求項1〜5のいずれか一項に記載の金型装置で構成されている
ことを特徴とする成形装置。
【請求項1】
(a)一方の成形型と他方の成形型との間に複数のキャビティが設けられた一対の成形型と、(b)前記複数のキャビティに溶融された樹脂を導くランナーを前記一方の成形型との間に形成した本体型、及び、前記ランナーと前記複数のキャビティとに連通するゲートを有するとともに前記本体型に連設された複数のゲート型、がそれぞれ設けられたランナー型と、を有する金型装置において、
前記ランナー内における樹脂を前記複数のゲート型におけるゲート毎に所定温度に加熱するように、前記ゲートのそれぞれに対応して互いに独立して配置された複数の樹脂加熱手段が設けられている
ことを特徴とする金型装置。
【請求項2】
前記複数の樹脂加熱手段が、前記本体型に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の金型装置。
【請求項3】
前記本体型が、それぞれ前記ゲート型が1つずつ連設された複数の部分型に分割できるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金型装置。
【請求項4】
前記複数のゲート型が、それぞれ個別に前記本体型に脱着可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の金型装置。
【請求項5】
前記一方の成形型から離れることにより前記ランナーを形成するとともに、前記一方の成形型に接することにより前記ランナーを消滅させるように、前記ランナー型が、前記一方の成形型に接離可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の金型装置。
【請求項6】
金型装置と、該金型装置のキャビティ内に樹脂を充填する充填部と、を有する成形装置において、
前記金型装置が、請求項1〜5のいずれか一項に記載の金型装置で構成されている
ことを特徴とする成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−61622(P2012−61622A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205358(P2010−205358)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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