説明

金属−セラミック−複合材料の製造法

プレスおよび同時熱処理または後熱処理による硬質金属粉末からなる成形体の製造は公知である。乾燥プレスされた成形体を製造するための硬質粉末とアルミニウム粉末との混合はその一例である。分離および均質性の喪失の危険に基づき、例えば従来技術により硬質材料粒子をアルミニウム粉末へ添加する際、上限は約20体積%である。混合物中の硬質材料粒子の割合を高めるために、本発明により金属−セラミック−複合材料の製造法が提案され、該方法は25〜79体積%の割合を有する1種以上の金属相、有利にはアルミニウムおよびその合金と、75〜21体積%の割合を有するセラミック材料としての1種以上の非金属無機成分、有利には炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、炭素およびケイ酸塩とからなるベース組成物を有する粉末を乾燥プレスすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属−セラミック−複合材料(MKV−材料)の製造に関する。
【0002】
こんにち市場で公知の金属−セラミック−複合材料のための製造法は、液体金属による多孔質の前駆体の溶浸、粒子または繊維の金属溶融物への導入、金属−セラミック−混合物の噴霧圧密成形(Spruehkompaktieren)または遠心鋳造のいずれかに基づいている。
【0003】
溶浸法の場合、セラミックのベース材料がプレスされかつ900℃〜1200℃の温度で硬化される。引き続き多孔質のプレスされた物体は、費用が掛かる第二の処理工程において金属材料により溶浸される。粒子または繊維が溶融物中に導入される場合、充填率は一般的に最大25体積%に制限される。問題は液体溶融物中に粒子が沈降することであり、該沈降により不均質の構造物が生じる。遠心鋳造のような代替的な製造法では、異なった重さの硬質材料粒子にかかる遠心力の影響に基づき該粒子がワークピース中で不均質に分散される。粒子強化射出成形材料 (partikelverstaerkter Spritzgussmassen)が使用される場合、組織が形成される危険が存在する。
【0004】
プレスおよび同時熱処理または後熱処理による硬質金属粉末からなる成形体の製造は公知である。複合材料の製造では材料特性により混合物の比が決定される。乾式プレスされた成形体を製造するための硬質材料粉末とアルミニウム粉末との混合はその一例である。分離および均質性の喪失の危険に基づき、例えば従来技術により硬質材料粒子をアルミニウム粉末へ添加する場合、上限は約20体積%である。
【0005】
本発明の課題は、乾式プレスされた成形体の混合物中での硬質材料粒子の割合を公知の欠点が生じることなく高めることである。
【0006】
前記課題の解決は、21〜75体積%のセラミック割合を有する金属−セラミック−粉末−混合物を用いて行われ、これは乾式プレスによりプレスされ安定な成形体となる。セラミック材料の一部は、硬質材料、例えばTiC、TiN、Ti(CN)およびWCで取り替えてもよい。
【0007】
そのつどの硬質材料粒子またはセラミック粒子の粒径は0.2μm〜150μmであり、有利なのは30μm〜70μmのD50値である。
【0008】
意想外にも、粉末冶金学から公知の例えば6000barの高いプレス圧力は必要ではない。すでに2000barのプレス圧力により、高密度のかつ機能性の構成部材を製造することができる。
【0009】
乾式プレスのために金属−セラミック−粉末−混合物が使用され、該混合物は25〜79体積%の割合を有する1種以上の金属相、有利にはアルミニウムおよびその合金と、75〜21体積%の割合を有するセラミック材料としての1種以上の非金属無機成分、有利には炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、炭素およびケイ酸塩とからなるベース組成物により特徴づけられる。プレス工程の間またはプレスした後に、構造物を硬化させかつその結合強度を高めるために圧縮された粉末体を熱的に処理する。
【0010】
SiCおよびAlをベースとする有利なMKV−材料は、Al25〜79体積%およびSiC75〜21体積%の組成を有し、例えば180W/mKの熱伝導率、例えば200MPaの曲げ強度ならびに例えば200GPaの弾性係数を伴う。
【0011】
50体積%より大きい金属割合を有する金属−セラミック−複合材料は、金属−マトリックス−複合材(MMC)と呼ばれる。セラミック割合が50体積%を上回る場合、材料はセラミック−マトリックス−複合材(CMC)と呼ばれる。
【0012】
該材料は高い熱伝導率を有し、これは殊に局所的な過熱の回避下での、熱源から加熱されるべき材料への迅速でかつ均一な熱の伝達のために有利である。そのためここでは熱アシストされた形状付与の技術も一緒に組み込んでよい。成形体の均一かつ迅速な加熱は熱処理をプレス成形用金型において行うホットプレス法の際にとりわけ有利である。これは均一な材料構造物を形成するための条件である。材料を加熱するためのマイクロ波放射線の使用も考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属−セラミック−複合材料の製造法において、25〜79体積%の割合を有する1種以上の金属相、有利にはアルミニウムおよびその合金と、75〜21体積%の割合を有するセラミック材料としての1種以上の非金属無機成分、有利には炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、炭素およびケイ酸塩とからなるベース組成物を有する粉末を乾式プレスすることを特徴とする、金属−セラミック−複合材料の製造法。
【請求項2】
セラミック材料の一部が、硬質材料、例えばTiC、TiN、Ti(CN)およびWCで取り替えられることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
成形体にするための粉末圧縮を単軸プレスにより行うことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
成形体にするための粉末圧縮を等方プレスにより行うことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
プレス圧力が7000barより小さく、有利には2000barより小さいことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
プレスされた成形体を硬化させるために続けて熱処理を500℃〜1000℃の温度で行うことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
成形体をすでにプレス工程において100℃〜1000℃の温度で、有利には550℃〜700℃の温度で熱処理に供することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
粉末の粒径が0.2μm〜150μm、有利なD50値が30μm〜70μmにあることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
金属材料とのろう接−接合技術、溶接−接合技術および摩擦溶接−接合技術のためのベース材料として使用するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により製造された金属−セラミック−複合材料からなる成形体。
【請求項10】
金属材料がアルミニウムおよびその合金であることを特徴とする、請求項9記載の成形体。
【請求項11】
金属および非金属材料との収縮−接合技術、クリンピング−接合技術およびクリッピング−接合技術のためのベース材料として使用するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により製造された金属−セラミック−複合材料からなる成形体。
【請求項12】
ポンプおよび圧縮機のためのスライダーリング、カウンターリング、軸方向のスラストワッシャ、シールワッシャ、ラジアル軸受、側板、およびベーンセル式ポンプおよびローターセル式ポンプおよびローターセル式圧縮機のローター、ベーンおよびハウジングリングとして使用するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により製造された金属−セラミック−複合材料からなる成形体。
【請求項13】
個人保護、車両保護および物体保護の領域において使用するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により製造された金属−セラミック−複合材料からなる成形体。
【請求項14】
ナイフエッジおよび相応する切断工具の刃先および切断エッジを研磨するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により製造された金属−セラミック−複合材料からなる成形体。
【請求項15】
ラジアル軸受およびスラスト軸受のためのシャフト材料および軸材料として使用するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により製造された金属−セラミック−複合材料からなる成形体。
【請求項16】
計量弁、調整弁および閉鎖弁および付属品において使用するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により製造された金属−セラミック−複合材料からなる成形体。
【請求項17】
ミルおよび他の粉砕装置において使用するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により製造された金属−セラミック−複合材料からなる成形体。
【請求項18】
繊維工業におけるガイドとして、繊維およびヤーンを偏向するために、およびテキスチャリングするために、スレッドブレーキとして、および回転紡績におけるローター材料として使用するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により製造された金属−セラミック−複合材料からなる成形体。
【請求項19】
線引加工の際およびワイヤ変形する際に使用するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により製造された金属−セラミック−複合材料からなる成形体。
【請求項20】
輸送工学における部材において使用するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により製造された金属−セラミック−複合材料からなる成形体。
【請求項21】
ワークピース加工および表面加工において切削工具としてかつ研削工具として使用するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により製造された金属−セラミック−複合材料からなる成形体。

【公表番号】特表2007−538148(P2007−538148A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517037(P2007−517037)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005171
【国際公開番号】WO2005/113464
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(597165054)セラムテック アクチエンゲゼルシャフト イノヴェイティヴ セラミック エンジニアリング (11)
【氏名又は名称原語表記】CeramTec AG Innovative Ceramic Engineering
【住所又は居所原語表記】Fabrikstrasse 23−29, D−73207 Plochingen, Germany
【Fターム(参考)】