説明

金属−セラミックス複合材料およびその製造方法

【課題】亀裂の発生を抑制し、製造歩留まりを高めることができる大型の金属−セラミックス複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】(A)セラミックスからなり、主面の大きさが200mm×200mm以上であるプリフォーム11を製造する工程と、(B)プリフォーム11の周囲に応力緩衝部材12を配置して、これらを溶湯加圧装置13の内部に設置する工程と、(C)プリフォーム11に溶融金属14を加圧浸透させる工程と、(D)この加圧浸透処理により得られた塊状物15の表面に付着した余分な金属を除去する工程により、主面が200mm×200mm以上の大きさを有し、かつ、その表面に長さが3mm以上の亀裂が存在しない金属−セラミックス複合材料10を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属−セラミックス複合材料およびその製造方法に関し、特に、加圧浸透法により製造されるアルミニウムまたはアルミニウム合金とSiC等のエンジニアリングセラミックスとからなる大型の金属−セラミックス複合材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックスとしての金属材料と強化材としてのセラミックス材料とからなる金属−セラミックス複合材料は、セラミックス材料が有する剛性および耐磨耗性と金属材料が有する延性および靭性を併せ持った優れた材料であり、近年、その用途開発が積極的に行われている。
【0003】
例えば、アルミニウム合金と炭化珪素(SiC)粉末とからなる複合材料は、軽量であり、かつ、ヤング率を密度で除した値である比ヤング率を大きくすることが可能であり、そのため大きな固有音速を有し、優れた振動減衰特性を備えているので、例えば、ロボットの高速移動アーム等に好適に適用することが可能である。
【0004】
このような金属−セラミックス複合材料の製造方法としては、一般的に、セラミックス粉末を用いて成形体(以下「プリフォーム」という)を製造し、これを溶湯加圧装置内に設置し、プリフォームに溶融金属を加圧浸透させる方法が用いられている(例えば、特許文献1参照。)
このような加圧浸透法で金属−セラミックス複合材料を製造する場合、プリフォーム内部の空間へ浸透するのに必要な量に加えて余分な量の溶融金属を使用する方法が用いられる。そのため、加圧浸透処理後の金属−セラミックス複合材料の表面には余分な金属が凝固してしまう。
【0005】
ここで、一般的に、金属−セラミックス複合材料とその外部表面に凝固した金属とは熱膨張係数が異なる。例えば、セラミックス粉末としてSiC粉末を用い、その充填率を70体積%とし、金属材料としてアルミニウム合金を用いた場合には、アルミニウム合金の熱膨張係数が約20×10−6/℃であるのに対し、金属−セラミックス複合材料の熱膨張係数は約8×10−6/℃となる。そのため、溶融アルミニウム合金をSiCプリフォームへ加圧浸透させた後の冷却過程において金属−セラミックス複合材料の外部表面にアルミニウム合金が凝固する際に、両者の熱膨張係数の差異に起因して、金属−セラミックス複合材料に応力が掛かり、これに亀裂が発生することがある。特に、主面形状が200mm×200mm以上で、厚さが10mm以上の大型の金属−セラミックス複合材料においては、この問題が発生する確率は極めて高く、製造歩留まりが低下する。
【特許文献1】特開平01−142244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、亀裂の発生を抑制し、製造歩留まりを高めることができる金属−セラミックス複合材料の製造方法およびこの製造方法により製造された金属−セラミックス複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により提供される金属とセラミックスとを有する金属−セラミックス複合材料は、その主面は200mm×200mm以上の大きさを有し、かつ、その表面に長さが3mm以上の亀裂が存在しないことを特徴とする金属−セラミックス複合材料である。「その主面は200mm×200mm以上の大きさを有し」とは、その主面に200mm×200mmの正方形が納まる大きさをいう。
【0008】
セラミックスとしては炭化珪素,窒化珪素,窒化アルミニウム,サイアロン,硼酸アルミニウム,アルミナのいずれかが好適であり、金属としてはアルミニウムまたはアルミニウム合金が好適である。
【0009】
本発明はまた、このような金属−セラミックス複合材料の製造方法として、セラミックスからなり、主面の大きさが200mm×200mm以上であるプリフォームを製造する工程と、製造したプリフォームの周囲に応力緩衝部材を配置して、これらを溶湯加圧装置の内部に設置する工程と、前記プリフォームに溶融金属を加圧浸透させる工程と、この加圧浸透処理により得られた塊状物の表面に付着した余分な金属を除去する工程とを有することを特徴とする金属−セラミックス複合材料の製造方法を提供する。
【0010】
プリフォームの製造にセラミックス粉末および金属は上記の通りである。応力緩衝部材としては鉄,銅,カーボンから選ばれるいずれかの材料からなる薄板が好適である。プリフォームと応力緩和部材との間に設ける隙間は0.1mm以上30mm以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、主面が200mm×200mm以上の大きさを有する金属−セラミックス複合材料を、亀裂の発生を抑制して、歩留まり良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1に本発明に係る金属−セラミックス複合材料(以下単に「複合材料」という)の製造方法を模式的に示す。
【0013】
複合材料10の製造方法は、(A)セラミックス粉末からなり、主面の大きさが200mm×200mm以上であるプリフォーム11を製造する工程と、(B)プリフォーム11の周囲に応力緩衝部材12を配置して、これらを溶湯加圧装置13の内部に設置する工程と、(C)プリフォーム11に溶融金属14を加圧浸透させ、その後に冷却し、製造される塊状物15を溶湯加圧装置13から取り出す工程と、(D)得られた塊状物15の表面に付着した余分な金属を除去する工程とを有している。
【0014】
上記(A)工程において好適に用いられるセラミックス粉末としては、炭化珪素(SiC),窒化珪素(Si),窒化アルミニウム(AlN),サイアロン,硼酸アルミニウム(9Al・2B),アルミナ(Al)等のエンジンリアリングセラミックスが挙げられる。セラミックス粉末は、球体状等の粒状のものが一般的であるが、繊維状物であってもよい。またセラミックス粉末はウィスカーであってもよく、さらにこれらの異種形態物の混合物であってもよい。
【0015】
セラミックス粉末を成形して、プリフォーム11を製造する方法としては、セラミックス粉末に有機バインダーを添加して混合し、これをプレス成形法により所定の形状に成形する方法、セラミックス粉末に水等の溶媒を加えてフィルタープレスにより成形する方法、またドクターブレード法等のシート成形法を用いて製造したグリーンシートを複数枚積層して熱圧着する方法等、種々の粉末成形方法を用いることができる。プリフォーム11が複雑な形状の場合には、射出成形法を用いることもできる。
【0016】
プリフォーム11の主面の大きさは200mm×200mm以上とする。主面の大きさがこれよりも小さい場合には、応力緩衝部材12を配置しなくとも、複合材料10を亀裂の発生を抑えて、複合材料を製造することが可能である。「プリフォーム11の主面の大きさが200mm×200mm以上である」とは、その主面に200mm×200mmの正方形が納まることをいい、例えば、主面の形状が200mm×150mmの長方形のプリフォームは含まれないが、200mm×200mmの正方形の外接円よりも長い直径を有する円形主面を有するプリフォームは含まれる。プリフォーム11の厚さは特に限定されないが、厚さが薄いと(C)工程の終了後に反りが生じやすくなるために、例えば、10mm以上であることが好ましい。
【0017】
なお、最終的に得られる複合材料10におけるセラミックスの含有率が40体積%以上80体積%以下となるように、プリフォーム11の成形条件を設定することが好ましい。これは、複合材料10におけるセラミックス含有率が40体積%未満であると、高い剛性や耐摩耗性といったセラミックスの優れた特性を有効に発揮させることができず、一方、このセラミックス含有率が80体積%超となるようなプリフォーム11の成形は困難だからである。
【0018】
(B)工程は、(B−1)プリフォーム11の周囲に応力緩衝部材12を配置し、これらを溶湯加圧装置13の内部に設置するという方法、(B−2)プリフォーム11を溶湯加圧装置13の内部に載置し、その次にこのプリフォーム11の周囲に応力緩衝部材12を配置する方法、のいずれの方法を用いてもよい。また、これらの方法において、プリフォーム11と応力緩衝部材12は、溶湯加圧装置13の内部に設置した状態において、所定の温度に加熱された状態(以下「予熱状態」という)とされていることが好ましい。
【0019】
なお、溶湯加圧装置13は、試料を入れるための下金型13aおよび上金型13bと、これらに一定の圧力を加える油圧装置等の押圧装置(図示せず)を有している。「プリフォーム11と応力緩衝部材12を溶湯加圧装置13の内部に設置する」とは、「プリフォーム11と応力緩衝部材12を、溶湯加圧装置13を構成する下金型13aの内部に設置する」という意味である。
【0020】
応力緩衝部材12としては、溶融金属14と反応し難く、溶融金属14が冷却凝固する際に剥離し易いものを用いる。例えば、溶融金属14がアルミニウム合金の場合には、鉄,銅,カーボンから選ばれるいずれかの材料からなる薄板が好適に用いられる。薄板にはフィルム(箔)状やシート状のものが含まれ、形状保持性やハンドリングの容易さ等を考慮すると、その厚さが0.3mm以上10mm以下のものが好適である。この応力緩衝部材12には、後(C)工程で用いる溶融金属14の熱によってその形状が大きく崩れないものを選定することが好ましい。
【0021】
プリフォーム11を応力緩衝部材12で完全に密封してしまうと、溶融金属14をプリフォーム11に浸透させることができないので、溶融金属14を応力緩衝部材12の内側へ導入するための注入口となる部分を応力緩衝部材12に設けるようにする。
【0022】
また、応力緩衝部材12がプリフォーム11に密着していると溶融金属14のプリフォーム11への浸透が妨げられる。そのため、プリフォーム11と応力緩衝部材12との間には0.1mm以上30mm以下の隙間を設けることが好ましい。この隙間を30mm超とすると、加圧浸透処理後の複合材料10の表面に凝固する余分な金属の量が多くなり、熱膨張係数の内外差に起因して、複合材料10に亀裂が発生しやすくなる。また、この隙間を0.1mm未満とすると、プリフォーム11の一部に溶融金属14が浸透しない部分ができやすくなる。但し、プリフォーム11への溶融金属14の加圧浸透を良好に行うことができる限りにおいて、応力緩衝部材12の一部分がプリフォーム11と接触することは許容される。
【0023】
なお、図1に示すように、プリフォーム11の底面側には応力緩衝部材12を配置する必要はないが、配置しても構わない。図1には、応力緩衝部材12として、四角平板状のプリフォーム11の側面を囲繞するように自立薄板12aを設け、注入口12cが形成された薄板12bを、プリフォーム11の上面と接触しないように、自立薄板12aの中間部分に架設した形態を図示している。この注入口12cが形成された薄板12bが薄くて撓みやすい場合には、この薄板12bに梁を設ければ、薄板12bの撓みを抑制してプリフォーム11に接触することを防止することができる。
【0024】
プリフォーム11と応力緩衝部材12を溶湯加圧装置13の内部に設置した際に予熱状態とすることが好ましい理由は、プリフォーム11と応力緩衝部材12が常温であると、次の(C)工程において、溶融金属14を投入した際にプリフォーム11と応力緩衝部材12の表面で溶融金属14の一部が冷却されて固化し、プリフォーム11の内部への溶融金属14の浸透が妨げられるおそれがあるからであり、また、プリフォーム11により溶融金属14が冷却され、その粘性が上がることでプリフォーム11の内部への溶融金属14の浸透が妨げられるおそれがあるからである。
【0025】
但し、所定量の溶融金属14が溶湯加圧装置13の下金型13aに投入されることによってプリフォーム11が温められ、一度固化した金属が再び溶融して、プリフォーム11への浸透が妨げられない状態となる場合には、プリフォーム11と応力緩衝部材12の予熱は必要ではない。そのための方法としては、例えば溶融金属14を、プリフォーム11の加熱に熱を奪われても、プリフォーム11への浸透が十分に進行する温度が確保されるように、当初の温度を確保すればよい。
【0026】
プリフォーム11と応力緩衝部材12の予熱方法は、上記(B−1)の方法を用いる場合には、プリフォーム11の周囲に応力緩衝部材12を設けたものを所定の温度に加熱し、その後、一体的に溶湯加圧装置13の内部に設置すればよい。(B−2)の方法を用いる場合には、プリフォーム11と応力緩衝部材12を所定の温度に加熱し、先にプリフォーム11を、次に応力緩衝部材12を溶湯加圧装置13の内部に順次配置すればよい。
【0027】
プリフォーム11と応力緩衝部材12の予熱温度は、これらのハンドリングのしやすさや溶融金属14の温度を考慮して決定する。例えば、溶融金属14の温度がT℃である場合には、プリフォーム11の予熱温度はT−200℃以上T℃以下とすることができる。
【0028】
(C)工程は、所謂、加圧浸透法または高圧鋳造法と呼ばれる方法であり、下金型13aに溶融金属14を投入し、上金型13bを用いて溶融金属14に一定の圧力を加えることで、溶融金属14をプリフォーム11の内部に浸透させ、プリフォーム11を複合化させる。
【0029】
ここで用いられる溶融金属14としては、アルミニウム(純アルミニウム)またはアルミニウム合金が好適であり、アルミニウム合金としては、アルミニウム−シリコン(Al−Si)系合金やアルミニウム−マグネシウム(A1−Mg)系合金が挙げられる。その場合の溶融温度は、700℃以上1000℃以下とすることが好ましく、750℃以上900℃以下とすることがより好ましい。700℃未満では溶融アルミニウム合金の粘性が高くなる等して浸透不良が生じやすく、1000℃以上とすると溶融アルミニウム合金が酸化しやすくなり、製品たる複合材料10の品質の維持が困難となる。
【0030】
溶融金属14として溶融アルミニウムまたは溶融アルミニウム合金を用いる場合には、プリフォーム11の予熱温度は、500℃以上1000℃以下とすることが好ましく、700℃以上800℃以下とすることができる。
【0031】
溶融金属14をプリフォーム11へ加圧浸透させるときの圧力は、溶融金属14の粘性にも依存するが、一般的に10MPa以上100MPa以下とする。この圧力が10MPa未満では浸透不良が生じやすく、100MPa超では溶融金属14が溶湯加圧装置13の上下金型13a,13から噴きこぼれるおそれがある。
【0032】
一定時間の加圧を行った後にその加圧状態を解除し、試料たる塊状物15を一定温度へ冷却して取り出す。このとき、(C)工程前にプリフォーム11と応力緩衝部材12との間に形成されていた隙間には、(C)工程によって凝固した金属が充填された状態となり、また応力緩衝部材12の外側にも凝固した金属が付着した状態となる。つまり、取り出される塊状物15は、プリフォーム11に溶融金属14が浸透してできあがった複合材料10の周囲に余分な金属が付着した状態のものである。塊状物15では、複合材料10とその周囲の余分な金属との間の熱膨張係数の差に起因して複合材料10に掛かる応力が、応力緩衝部材12によって緩和されているために、複合材料10に歪みや亀裂が発生することを抑えることができる。
【0033】
続く(D)工程では、塊状物15から余分な金属を除去して複合材料10を取り出すが、この工程には研削加工が好適に用いられる。先の(B)工程でプリフォーム11と応力緩衝部材12との間に形成した隙間が広い場合には、最初に切削加工を行い、次に研削加工を行う方法を用いることも好ましい。なお、複合材料10の表面のわずかな金属を除去する場合において、金属が所定の薬液に溶解する場合には、そのような薬液を用いることもできる。
【0034】
このような製造方法により、主面が200mm×200mm以上の大きさを有し、かつ、長さが3mm以上の亀裂を有しない複合材料10を歩留まり良く製造することができる。「長さが3mm以上の亀裂を有しない」とは、亀裂を全く有しないか、または亀裂が発生していてもその長さが3mm未満である2つの状態を指す。
【0035】
なお、プリフォーム11を収容する溶湯加圧装置の下金型として、その内壁とプリフォーム11の外周との間の隙間を、上述したようにプリフォーム11と応力緩衝部材12との間に設定される隙間と同等になるものを用い、かつ、応力緩衝部材12を用いることなく複合材料の製造を行うと、プリフォーム11と下金型との間に注入された溶融金属14が金型により冷却されて固化し、これによってプリフォーム11への溶融金属14の浸透が阻害されるという問題が発生する。また、プリフォーム11は大きな強度を有するものではないので、このような小さい下金型に予熱状態にあるプリフォームを破損することなく配置する作業には困難が伴い、生産歩留まりが低下する。
【実施例】
【0036】
(1)実施例に係る複合材料の製造
市販のSiC粉末(信濃電気製錬製、平均粒径60μm):70重量部と、SiC粉末(信濃電気製錬製、平均粒径10μm):30重量部に、バインダーとしてPVB(ポリビニルブチラール):5重量部(外比)と、コロイダルシリカ:5重量部(外比)を添加し、これをプレスして縦800mm×横200mm×高さ20mmの大きさに成形して、SiC粉末の充填率が60体積%となるプリフォームを製造した。
【0037】
続いて、製造したプリフォームの周囲に応力緩衝部材として、厚み1mmの鉄板をプリフォームと鉄板の間に1mmの間隔を設けて設置し、これらを700℃に予熱した。予熱したプリフォームと鉄板を取り出し、これらを予熱処理時と同じ形態となるように、溶湯加圧装置の金型に配置した。なお、この設置形態は図1に示した形態とした。
【0038】
別途、アルミニウム合金(JIS AC8A)を750℃で溶融させ、この溶融アルミニウム合金を、プリフォームと応力緩衝部材とが配置された金型に投入し、30MPaの圧力を印加して、溶融アルミニウム合金をプリフォーム内に浸透させた。この浸透処理は10分間行った。その後、複合材料を含む塊状体を金型から取り出した。この塊状体では、複合材料の周囲で凝固したアルミニウム合金は鉄板の部分で分割されており、溶融アルミニウム合金が収縮する際に複合材料に掛かる応力が緩和されているものと考えられた。
【0039】
こうして得られた塊状体から複合材料の周囲に付着している余分なアルミニウム合金を研削加工により除去し、プリフォームと同等形状の複合材料を得た。この複合材料の表面には亀裂は認められなかった。
【0040】
(実施例に係る複合材料の特性評価)
得られた複合材料の嵩密度をJIS−R1634規定の方法で求めた。その結果、嵩密度は3.0g/cmと小さく軽量であることが確認された。また、得られた複合材料から100mm×25mm×2mmの試験片を切り出し、その試験片を用いて、JIS−R1602規定の方法によりヤング率を求めた。その結果、ヤング率は220GPaと大きく高剛性であった。このように、得られた複合材料は、SiCの高い剛性とアルミニウム合金の軽量性とを併せ持つという特徴を備えていた。
【0041】
(比較例)
上記実施例と同材質かつ同形状のプリフォームを製造し、同じ溶湯加圧装置を用いて、プリフォームの周囲に応力緩衝部材としての鉄板を設けないこと以外は上記実施例と同じ条件として、複合材料を製造した。その結果、得られた複合材料の表面には、長さが3mm以上の亀裂が多数発生していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】金属−セラミックス複合材料の製造方法を模式的示す図。
【符号の説明】
【0043】
10…金属−セラミックス複合材料、11…プリフォーム、12…応力緩衝部材、12a…自立薄板、12b…薄板、12c…注入口、13…溶湯加圧装置、13a…下金型、13b…上金型、14…溶融金属、15…塊状体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属とセラミックスとを有する金属−セラミックス複合材料であって、
その主面は200mm×200mm以上の大きさを有し、かつ、その表面に長さが3mm以上の亀裂が存在しないことを特徴とする金属−セラミックス複合材料。
【請求項2】
前記セラミックスは炭化珪素,窒化珪素,窒化アルミニウム,サイアロン,硼酸アルミニウム,アルミナのいずれかであり、
前記金属はアルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1に記載の金属−セラミックス複合材料。
【請求項3】
セラミックスからなり、主面の大きさが200mm×200mm以上であるプリフォームを製造する工程と、
製造したプリフォームの周囲に応力緩衝部材を配置して、これらを溶湯加圧装置の内部に設置する工程と、
前記プリフォームに溶融金属を加圧浸透させる工程と、
この加圧浸透処理により得られた塊状物の表面に付着した余分な金属を除去する工程とを有することを特徴とする金属−セラミックス複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記プリフォームは、その主面が200mm×200mm以上の大きさを有すことを特徴とする請求項3に記載の金属−セラミックス複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記セラミックス粉末は炭化珪素,窒化珪素,窒化アルミニウム,サイアロン,硼酸アルミニウム,アルミナのいずれかであり、前記金属はアルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の金属−セラミックス複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記応力緩衝部材は鉄,銅,カーボンから選ばれるいずれかの材料からなる薄板であることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の金属−セラミックス複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記プリフォームと前記応力緩和部材との間に0.1mm以上30mm以下の隙間を設けることを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の金属−セラミックス複合材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−270340(P2007−270340A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140008(P2006−140008)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】