説明

金属−セラミック基板または銅−セラミック基板の製造方法および該方法で使用するための支持体

【課題】直接接合法を用いて、両面を金属被膜化した金属−セラミック基板を製造するための方法を提供する。
【解決手段】直接接合法により、第一および第二金属層と該金属層の間に位置するセラミック層4とを含む少なくとも1つのDCB積層構造が、直接接合温度にまで加熱することで支持体の分離層2上に形成される。接合処理中、金属層の少なくとも1つが分離層2と当接し、該分離層2はムライト、Al、TiO、ZrO、MgO、CaO、CaCOおよび該材料の少なくとも2つの混合物から成る群から選択した分離層材料から成る多孔性層またはコーティングから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部で特許請求される方法、および請求項29の前提部で特許請求される、本方法において製造補助物として使用可能な担持体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅を金属被膜として使用する場合はDCB(直接銅接合)法とも称されるいわゆる直接接合処理を用いた、ストリップ導体、コネクタ等に必要な酸化アルミニウムセラミック等のセラミック上への金属被膜の製造方法が公知であり、金属被膜を形成する金属または銅箔あるいは金属また銅シートを用い、箔またはシートの表面は金属と反応ガス、好ましくは酸素との間の化学結合から成る層またはコーティング(メルトオン層)を有する。例えばUS-PS 37 44 120とDE-PS 23 19 854に記載のこの方法において、この層またはコーティング(ホットメルト層)は金属(例えば、銅)の融点より低い融点の共晶を形成するため、セラミック上に箔を置いて全ての層を加熱、つまり主にホットメルト層または酸化物層の領域においてのみ金属または銅を溶融することで、層を互いに接合することができる。
【0003】
次に、このDCB処理は、例えば、以下の処理工程を含む。
・均質な酸化銅層が生じるように銅箔を酸化
セラミック層上への銅箔の配置
・約1025〜1083℃、例えば約1072℃の処理または接合温度にまで複合体を加熱
・室温まで冷却
【0004】
特に、両面金属被膜化金属−セラミック基板または銅−セラミック基板が公知であり、DCB処理を用いて製造され、まず第一銅層をセラミック層またはセラミックプレートの表面に適用し、次に第二工程で第二銅層をもう一方の表面に適用する。この方法の欠点は、二重DCB接合による製造工程の複雑化である。
【発明の開示】
【0005】
本発明の目的は、両面金属被膜化金属−セラミック基板、特に両面金属被膜化銅−セラミック基板の単一処理または接合工程での製造を可能とする方法を提示または提供することである。この目的は、請求項1で表される方法によって達成される。
【0006】
この方法における処理補助具は、請求項29で特許請求の、好ましくはベースプレートとして設計された少なくとも1つの担持体を含み、このプレートは少なくともその片面上に分離層が設けられており、接触する金属または銅とこの分離層と担持体との間の接合を防止する。これにより、各分離層上に、分離層に直接隣接する下部金属層またはプレート、そのプレート上のセラミック層またはプレート、およびそのプレート上のさらに別の金属層またはプレートから成るパケット(以下、DCBパケットと称する)を設け、次に該DCBパケットを、低酸素含有量の保護ガス大気圧中におけるDCB接合と接合温度(例えば1072℃)までの加熱により両面金属被膜化金属−セラミック基板へと接合することが可能となる。
【0007】
本発明のさらなる態様は、独立請求項の主題である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は図面に基づいて以下でより詳細に説明され、図面はDCB技法またはDCB法を用いて金属−セラミック基板を製造するための様々な方法の概略図である。
【0009】
図1において、参照番号1は銅−セラミック基板の製造における製造補助具として使用するベースプレートを示し、該ベースプレートは高耐熱材料、例えばムライト、ZrO、Al、AlN、Si、SiCから成る。プレート1の表面上には、厚さ0.01〜10mm、孔隙率(孔体積の固体体積に対する比)が20%を越える多孔性分離層2を施す。層2は高耐熱材料、例えばムライト、Al、TiO、ZrO、MgO、CaO、CaCOの極小粒子または粉末から構成され、粒子径は例えば30μm未満である。上記材料または成分を2つ以上組み合わせたものも分離層2として適当である。
【0010】
分離層2を製造するには、最も単純なケースでは水と場合によっては接合剤から成る液状またはペーストマトリクス状で使用するパルプ塊または懸濁液をベースプレート1の各表面に適用、つまり例えば塗布または浸漬することで適用する。その後、接合剤を例えば150℃より高い前処理温度で乾燥および/または加熱して除去する。その後、層2を形成する粒子を、より高温ではあるが層に使用した材料の焼結温度よりは低い温度、例えば約1070℃で「焼き固める」または接合することで、該層2の孔隙率は20%より高くなる。
【0011】
ベースプレート1の厚さは0.2〜10mmである。所望の質の金属−セラミック基板を製造するためには、ベースプレート1と、ゆえに該ベースプレートと分離層2によって構成される製造補助具は極めて均一なのもでなくてはならない。従って、均一性は例えば長方形であるベースプレート1の長さの0.2%より高く、いかなる場合も該ベースプレートの幅の0.1%より高い。つまり、理想的かつ絶対的に均一なプレートからの偏差がプレートの長さの0.2%未満、プレートの幅の0.1%未満でなくてはならない。
【0012】
両面銅金属被膜を施した銅−セラミック基板をDCB技法を用いて製造するためには、まず、例えば予備酸化させた第一銅箔またはプレート3を水平方向に方向づけたベースプレート1の分離層2上に適用した後にセラミック層またはプレート4を適用し、続いて例えば予備酸化させたさらに別の銅箔またはプレート5を適用する。ベースプレート1上にこうして形成されたDCBパケット6を続いてベースプレート1上で低酸素保護ガス大気圧中でDCB温度、例えば1070℃まで加熱する。これによりDBC処理後、2つの銅箔3、5の全面がセラミック層に接合され、銅−セラミック基板となる。冷却後、一処理工程で製造した両面金属被膜化銅−セラミック基板は、ベースプレート1またはベースプレート1上の分離層2から容易に取り外すことができる。銅箔3によって形成される銅層に付着している分離層2の粒子は、適切な処理でもってその後除去する。これはブラシの使用等による機械的処理、または銅箔3によって形成された金属被膜の薄い表面層をエッチングすること等の化学的処理によって適切に行うことが可能である。こういった洗浄処理を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
図2はさらに別の態様の処理を示し、何枚かの両面金属被膜化銅−セラミック基板がDCB法を用いて1つの処理工程で積層状に製造される。これを目的として、それぞれ多孔性分離層2を備えた2つのベースプレート1を、少なくとも1つのさらに別のベースプレート1aに加えて使用する。ベースプレート1aは多孔性分離層2を両面に施されている。
【0014】
図に示したように、下部銅箔3、セラミック層4、および上部銅箔5から成るDBCパケット6を同様に水平方向に方向づけられたベースプレート1またはその分離層2上に形成する。分離層2を含む表面を備えたベースまたは中間プレート1aを続いてこのDBCパケット6上に設置する。さらに別のDCBパケット6をベースプレート1aのもう一方の上部分離層2上に適用し、DCBパケット上には図2に示されるように上部ベースプレート1が荷重プレートとして載置されるため、ベースプレートは分離層2でもって上部DCBパケット6に当接する。概して、この態様においては、中間ベースまたは分離プレート1aを用いて2つ以上のDCBパケット6を供給することも可能である。
【0015】
DCB処理完了後、つまりDCBパケット6とベースプレート1/1aから成る積層構造をDCBまたは接合温度まで加熱および冷却後、DCBパケット6から得られた両面金属被膜化銅−セラミック基板をベースプレート1または1aから取り外すことができ、つまりこの態様においても分離層2は銅箔3および5がそれぞれの隣接するベースプレート1または1aへ不用意に接合されることを防止する。
【0016】
図3はさらに別の態様の処理を示すものであり、垂直方向に幾つか積層したDCBパケット6の銅箔3、5およびセラミック層4は一処理工程により両面金属被膜化銅−セラミック基板へと接合される。図3に示す態様においては、互いに平行に積層した2つの水平ベースプレート1を使用している。2つのベースプレート1の間を隔てるため、フレーム状スペーサー部材7を用いる。スペーサー部材7は同様に高耐熱材料、好ましくはベースプレート1にも用いた材料から成る。DCBパケット6は各ベースプレート1の上部水平分離層2上に載置される。上部DCBパケット6上方でありかつスペーサー部材7によって上部ベースプレート1から間隔を置いた位置には上部カバープレート8があり、同様に高耐熱材料、例えばベースプレート1の材料から成る。スペーサー部材7は下部DCBパケット6の上面がその上のベースプレート1から離れるように、また上部DCBパケット6の上面がその上のカバープレート8から離れるようにと設計されている。
【0017】
この態様によっても、DCB処理完了後、製造した両面金属被膜化銅−セラミック基板を容易に取り外すことが可能である。
【0018】
図4はさらに別に態様の積層構造を示し、ベースプレート1とスペーサー部材7の代わりに長方形または正方形のベースプレート1bを使用しており、少なくとも2つの対向する辺のそれぞれに、底部10から突出してスペーサーとして機能する壁部または縁部9が設けられている。これらの樋型または溝状ベースプレート1bの内部には少なくとも底部10上に分離層2が設けられる。ベースプレート1bを積層することにより、幾つかのDCBパケット6のそれぞれもまた一処理工程で両面金属被膜化銅−セラミック基板へと接合することができる。
【0019】
図5は、基本的に、各DCBパケット6上に追加のベースプレート1を分離層2を下にして、つまり追加ベースプレートと各DCBパケットとの間に、追加荷重プレートとして載置するという点においてのみ図4の積層構造とは異なる。図4の態様と同様に、2つ以上のベースプレート1bを図5の態様において積層することができる。
【0020】
図6は積層構造のさらに別の態様を示し、内側分離層2を備えた桶型または溝状ベースプレート1bの代わりに溝型または桶型補助または担持部材11を使用する。担持部材11は同様に正方形または長方形のプレート型底部12と底部と一体で製造された壁部13から成る。壁部13は底部12の少なくとも2つの対向する辺からその共通面上に突出してスペーサー部材を構成するため、担持部材11はその底部12でもって十分に間隔をあけて互いに積層される。
【0021】
幾つかの両面金属被膜化銅−セラミック基板を製造するためには、続いて各DCBパケット6を分離層2上に載置可能となるように各担持部材11内にベースプレート1を配置する。その後、次の担持部材11をその下の担持部材11の縁部上に載置し、続いてさらに別のDCBパケットをその担持部材のベースプレート1または分離層2上に載置する。上部担持部材11もまたカバープレート8で覆う。
【0022】
図3から図6の態様には、特には、積層構造下部のDCBパケット6がその上のDCBパケット6の重量の影響を受けないことから、全てのDCBパケット6のDCB接合を同質かつ同一条件下で再現することが可能であるという利点もある。さらに、この態様においてはDCB処理中に積層構造を取り巻く保護ガス大気圧中のDCBパケットの酸素含有量を、例えばスペーサー部材7に規定のサイズの窓を形成することで最適化することができ、これによりスペーサー部材7とプレート1または8との間に形成される空間は、DCB処理中に積層構造を取り巻く保護ガス大気と連通する。
【0023】
上述の態様において、セラミック層は、例えば、100×100mmより大きいサイズを有し、銅層またはプレート3、5を形成する銅箔の部位の寸法はほぼ同一サイズである。セラミック層4に適したセラミックは、例えば酸化ジルコニウム(ZrO)含有量が約2〜30%の酸化アルミニウムセラミック(Al)、または例えばイットリウムを添加物として含む窒化アルミニウムセラミック、またはシリコンセラミックであり、窒化アルミニウムセラミックおよび/または窒化ケイ素セラミックは酸化物表面層、例えば酸化アルミニウム表面層を有する。セラミック層4の厚さは約0.2〜1.5mmである。銅層を形成する箔の厚みは約0.1〜1.2mmである。さらに、上述した態様においては、通常、銅層3、5の厚みが異なることや、銅層の厚さのセラミック層4の厚さに対する比が好ましくは0.5より高いことも可能である。
【0024】
以下の表はセラミック層4と銅層3、5の層厚の有利な例を一覧にしたものである。
【0025】
【表1】

【0026】
好ましい態様において、各ベースプレート1、1a、1bの熱膨張係数はセラミック層4の熱膨張係数とは例えば±10%異なる。
【0027】
図7および8はベースプレート1cの断面と上面の簡略図であり、表面が構造化されている。つまり、その表面には互いに間隔をあけて平行に延び、かつ長方形または正方形のベースプレート1cの2つの外辺に平行である複数の凹部または溝部14が形成されている。この態様における分離層2は溝部14の間に形成された隆起領域15上に設けられている。実用においては、各DCBパケット6またはそれぞれの銅プレート3または5は隆起領域15にのみ当接する。
【0028】
溝型凹部14の代わりにその他の凹部16、例えば図9のベースプレート1dに図示されるような円形凹部をベースプレート上に設けることも可能である。この態様においても、凹部16間の隆起領域のみがベースプレート1dの支持面を構成し、分離層2を施される。さらに、特に該ベースプレートを中間プレートとして使用する場合は、各ベースプレートの両面に形状加工をすることも可能である。
【0029】
本発明を以下の実施例によって説明する。
【実施例1】
【0030】
寸法130×180mm、厚さ0.4mmの2つの銅層または銅プレート3、5の両面に酸化物層を施す。寸法130×180mm、厚さ0.32mmのAlのセラミックプレート4を、例えばブラシを用いて洗浄する。セラミックプレートの熱膨張係数は6.8×10−6/°Kである。セラミックプレート4の均一性は2枚の平行平面プレートによって測定され、完全に均一なセラミックプレートからの偏差は0.5mm未満である。分離層2を形成するために、平均粒径10μmの粉末Al材料から成る層を、水性懸濁液として層厚約1mmで厚さ3mmのムライトから成るベースプレート1上に塗布することで適用する。ベースプレートを続いて150℃で乾燥する。DCBパケット6を乾燥させたベースプレートに適用する。つまり、まず最初に最下層として予備酸化銅プレート3、次にセラミックプレート4、その上に第二の予備酸化銅プレート5を適用する。次に、こうして形成した積層構造を炉内で、例えば酸素含有量が10×10−6容量%の窒素大気である保護ガス大気中で1072℃のDCB温度まで加熱する。その後、積層構造を炉から取り出し十分に冷却した後、両面金属被膜化DCBまたは銅−セラミック基板をベースプレートから取り外す。付着している分離層のセラミック粒子をブラシで落とすことで露出した銅表面を洗浄する。
【実施例2】
【0031】
寸法130×180mm、厚さ0.4mmの2つの銅プレート3、5に酸化物層を施すまたは予備酸化する。厚さ0.63mm、寸法130×180mmのAlのセラミックプレート4をブラシを用いて洗浄する。Alプレートの熱膨張係数は6.8×10−6/°Kである。セラミックプレート4の均一性は2枚の平行平面プレートによって測定され、完全に均一なセラミックプレートからの偏差は0.8mm未満である。分離層2を形成するために、平均粒径10μmの粉末Al材料から成る層を、水性懸濁液として層厚約1mmで厚さ3mmのムライトから成るベースプレート1上に塗布することで適用する。分離層2を形成するために、平均粒径10μmの粉末Al材料から成る層を、水性懸濁液として層厚約1mmで厚さ4mmのムライトから成るさらに別の(荷重プレートとしての)ベースプレート1上に塗布することで適用する。ベースプレートを続いて150℃で乾燥する。DCBパケット6を乾燥させた第一ベースプレート1に適用する。つまり、まず最初に最下層として予備酸化銅プレート3、次にセラミックプレート4、その上に第二の予備酸化銅プレート5を適用する。第二ベースプレート1をDCBパケット6上に荷重プレートとして載置する。このように形成された積層構造を炉内で、例えば酸素含有量が10×10−6容量%の窒素大気圧である保護ガス大気圧中で1072℃のDCB温度まで加熱する。その後、積層構造を炉から取り出し十分に冷却した後、両面金属被膜化DCBまたは銅−セラミック基板をベースプレートから取り外す。付着している分離層のセラミック粒子を例えば化学的にエッチングすることで銅−セラミック基板の銅表面を洗浄する。
【実施例3】
【0032】
この方法においては実施例1または実施例2の手順に従うが、例えばそれぞれ厚さ3mmの2つのベースプレート1、1aと厚さ4mmの(荷重プレートとしての)ベースプレート1の合計3つのムライト製のベースプレートを準備する。分離層2を形成するために、粉末Al材料から成る層を、水性懸濁液または塊として層厚約1mmで厚さ3mmのベースプレート1表面上に塗布することで適用する。粉末Al材料から成る厚さ1mmの層を厚さ3mmのもう一方のベースプレート1aの両面に適用して、中間プレートを形成する。分離層を形成するために、粉末Al材料から成る水溶液または塊を、厚さ4mmの第三ベースプレート1(荷重プレート)の少なくとも一面に厚さ1mmで塗布することで適用する。このようにして準備したベースプレート1、1aを続いて150℃で乾燥させ、図2に記載の積層構造をこれらのベースプレートを用いて形成する。次に、積層構造を炉内で例えば酸素含有量が10×10−6容量%の窒素大気圧である保護ガス大気圧中で1072℃のDCB温度まで加熱する。その後、積層構造を炉から取り出し十分に冷却した後、両面金属被膜化DCBまたは銅−セラミック基板をベースプレートから取り外す。付着している分離層からのセラミック粒子をブラシで落とすおよび/または化学的エッチングすることで銅−セラミック基板の銅表面を洗浄する。
【実施例4】
【0033】
寸法130×180mm、厚さ0.4mmの2つの銅層または銅プレート3、5の両面に酸化物層を施す。寸法130×180mm、厚さ0.32mmのAlのセラミックプレート4を例えばブラシを用いて洗浄する。セラミックプレートの熱膨張係数は6.8×10−6/°Kである。セラミックプレート4の均一性は2枚の平行平面プレートによって測定され、完全に均一なセラミックプレートからの偏差は0.5mm未満である。厚さ3mmの底部を備えたムライト製のベースプレート1bの底部9の内側には、水性懸濁液または塊に含有させた平均粒径10μmの粉末Al材料の層を施して分離層2とする。ベースプレート1bを続いて150℃で乾燥させる。ベースプレート1bを用いて、図4の積層構造と同様の積層構造を形成するが、ベースプレート1bとこのベースプレート内のDCBパケット6とカバープレート8のみを用いる。次に、積層構造を炉内で、例えば酸素含有量が10×10−6容量%の窒素大気圧である保護ガス大気圧中で1072℃のDCB温度まで加熱する。その後、積層構造を炉から取り出す。十分に冷却した後、得られた両面金属被膜化DCBまたは銅−セラミック基板をベースプレートから取り外す。付着している分離層のセラミック粒子をブラシで落とすことで露出した銅表面を洗浄する。
【実施例5】
【0034】
この実施例は、ベースプレート1bをたった一つだけ使用する代わりに、つまり図4の積層構造を形成するために2つのベースプレート1bを使用するという点で実施例4とは異なる。双方のベースプレート1bには、実施例4に記載の方法に従って、その底部9の内側上に分離層2を施した。その後、積層構造を炉内で、例えば酸素含有量が10×10−6容量%の窒素大気圧である保護ガス大気圧中で1072℃のDCB温度まで加熱する。続いて、積層構造を炉から取り出す。十分に冷却した後、得られた両面金属被膜化DCBまたは銅−セラミック基板をベースプレートから取り外す。付着している分離層のセラミック粒子をブラシで落とすことで露出した銅表面を洗浄する。
【実施例6】
【0035】
本実施例の手順は実施例5に対応するが、2つのベースプレート1bに加えて、ムライト製であり厚さ4mmの2つの別のプレート1を荷重プレートとして使用する。どちらのプレート1にも少なくとも1つの面に分離層2を設ける、つまり粉末Al材料から成るペースト状または水性塊を層厚1mmで適用する。プレート1、1bを乾燥後2つのDCBパケット6を備えた積層体を該プレートでもって図6のように形成する。その後、積層構造を炉内で、例えば酸素含有量が10×10−6容量%の窒素大気圧である保護ガス大気圧中で1072℃のDCB温度まで加熱する。DCB処理および冷却後、得られたDCBまたは銅−セラミック基板を取り外す。続いて、付着しているセラミック粒子をブラシで落とすおよび/または化学的にエッチング等することで露出した銅表面を洗浄する。
【実施例7】
【0036】
寸法130×180mm、厚さ0.4mmの2つの銅プレート3、5に酸化物層を施すまたは予備酸化する。厚さ0.63mm、寸法130×180mmのAlNのセラミックプレート4を例えばブラシを用いて洗浄する。AlNプレートの熱膨張係数は4×10−6/°Kである。セラミックプレート4の均一性は2枚の平行平面プレートによって測定され、完全に均一なセラミックプレートからの偏差は0.8mm未満である。分離層2を形成するために、平均粒径10μmの粉末Al材料から成る層を、水性懸濁液として、Alから成る熱膨張係数が6.8×10−6/°K、厚さ3mmのベースプレート1上に約1mmの層厚で塗布することで適用する。分離層2を形成するために、平均粒径10μmの粉末Al材料の層を、水性懸濁液として、Alから成る熱膨張係数が6.8×10−6/°Kで厚さ4mmのさらに別の(荷重プレートとしての)ベースプレート1に厚さ約1mmで塗布することで適用する。ベースプレートを続いて150℃で乾燥する。DCBパケット6を乾燥させた第一ベースプレート1に適用する。つまり、まず最初に最下層として予備酸化銅プレート3、次にセラミックプレート4、その上に第二の予備酸化銅プレート5を適用する。第二ベースプレート1をDCBパケット6上に荷重プレートとして載置する。このように形成した積層構造を次に炉内で、例えば酸素含有量が10×10−6容量%の窒素大気圧である保護ガス大気圧中で1072℃のDCB温度まで加熱する。その後、積層構造を炉から取り出し十分に冷却した後、両面金属被膜化DCBまたは銅−セラミック基板をベースプレートから取り外す。付着している分離層のセラミック粒子を例えばブラシで落とすおよび/または化学的エッチングすることで銅−セラミック基板の銅表面を洗浄する。
【実施例8】
【0037】
寸法130×180mm、厚さ0.4mmの2つの銅層または銅プレート3、5の両面に酸化物層を施す。寸法130×180mm、厚さ0.32mmの、ZrO含有量が20重量%のAlのセラミックプレート4を例えばブラシを用いて洗浄する。セラミックプレートの熱膨張係数は6.8×10−6/°Kである。セラミックプレート4の均一性は2枚の平行平面プレートによって測定され、完全に均一なセラミックプレートからの偏差は0.5mm未満である。SiCから成る合計3つのベースプレート、つまりそれぞれの厚さが3mmの2つのベースプレート1と1a、厚さ4mmの(荷重プレートとしての)ベースプレート1を準備する。分離層2を形成するために、粉末Al材料から成る層を、水性懸濁液または塊として厚さ3mmのベースプレート1の表面上に厚さ1mmで塗布することで適用する。粉末Al材料から成る厚さ1mmの層をもう一方の厚さ3mmのベースプレート1aの両面に適用して中間プレートを形成する。分離層を形成するために、粉末Al材料から成る水溶液または塊を、厚さ4mmの第三ベースプレート1(荷重プレート)の少なくとも片面に厚さ1mmで塗布することで適用する。このようにして準備したベースプレート1と1aを次に150℃で乾燥させ、図2に示す積層構造をこれらのベースプレートを用いて形成する。積層構造を炉内で、例えば酸素含有量が10×10−6容量%の窒素大気圧である保護ガス大気圧中で1072℃のDCB温度まで加熱する。その後、積層構造を炉から取り出し十分に冷却した後、両面金属被膜化DCBまたは銅−セラミック基板をベースプレートから取り外す。付着している分離層のセラミック粒子を例えばブラシで落とすおよび/または化学的にエッチング等することで銅−セラミック基板の銅表面を洗浄する。
【0038】
上記記載においては、各分離層2は液状または水溶性マトリクスに含有させた粉末分離層材料(例えばAl材料等)の塊を塗布し、続いて例えば150℃で乾燥および/または接合剤を除去することで形成されるものとしている。通常、各分離層2または該分離層を備えるベースプレート1、1a、1b、1c、1dを、分離層2の乾燥または接合剤の除去後、分離層2に使用した分離層材料の焼結温度よりも低い温度まで加熱し続けて、該分離層を形成する粒子の部分焼結により、分離層の高孔隙率(20%より高い)を維持しつつ、また各ベースプレート1、1a、1b、1c、1dの取り扱いを簡易化しつつ、分離層2を強化することが可能である。
【0039】
上記では本発明を実施態様例に基づいて説明した。本発明が基本とする創意を放棄することなく、様々な改変や変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】DCB技法またはDCB法を用いて金属−セラミック基板を製造する方法の概略図
【図2】DCB技法またはDCB法を用いて金属−セラミック基板を製造する方法の概略図
【図3】DCB技法またはDCB法を用いて金属−セラミック基板を製造する方法の概略図
【図4】DCB技法またはDCB法を用いて金属−セラミック基板を製造する方法の概略図
【図5】DCB技法またはDCB法を用いて金属−セラミック基板を製造する方法の概略図
【図6】DCB技法またはDCB法を用いて金属−セラミック基板を製造する方法の概略図
【図7】DCB技法またはDCB法を用いて金属−セラミック基板を製造する方法の概略図
【図8】DCB技法またはDCB法を用いて金属−セラミック基板を製造する方法の概略図
【図9】DCB技法またはDCB法を用いて金属−セラミック基板を製造する方法の概略図
【符号の説明】
【0041】
1a−1d ベースプレート
2 分離層
3 銅箔またはプレート
4 セラミック層またはプレート
5 銅箔またはプレート
6 DCBパケット
7 フレーム状スペーサー部材
8 カバープレート
9 底部
10 縁部
11 担持部材
12 底部
13 縁部
14 凹部
15 隆起領域
16 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面金属被膜化金属−セラミック基板、例えば銅−セラミック基板を直接接合温度まで加熱する直接接合法を用いて製造する方法であり、
第一および第二金属層(3、5)と金属層の間に位置するセラミック層(4)から成る少なくとも1つのDCBパケット(6)を少なくとも1つのベースプレート(1、1a、1b、1c、1d)の分離層(2)上に形成し、少なくとも1つの金属層が分離層(2)と当接しており、
分離層はムライト、Al、TiO、ZrO、MgO、CaO、CaCOまたはこれらの材料の少なくとも2つの組み合わせから成る群から選択した分離層材料から成る多孔層から構成され、
ベースプレート(1、1a、1b、1c、1d)が例えばセラミック材料である耐熱材料から構成され、
少なくとも1つのベースプレート(1、1a、1b、1c、1d)上に形成された少なくとも1つのDCBパケット(6)が、直接接合温度にまで加熱されることで少なくとも1つの両面金属被膜化金属−セラミック基板へと接合されることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
ムライト、ZrO、Al、AlN、Si、SiCまたは前記成分の少なくとも2つの組み合わせから成るベースプレート(1、1a、1b、1c、1d)の使用を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
高耐熱金属、例えば合金鋼、モリブデン、チタン、タングステン、前記成分の少なくとも2つの組み合わせから成るベースプレート(1、1a、1b、1c、1d)の使用を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各分離層(2)が厚さ0.01〜10mmを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
分離層(2)が20%を越える孔隙率(孔体積の固体体積に対する比)を有することを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項6】
ベースプレート(1、1a、1b、1c、1d)または分離層(2)備えたベースプレート(1、1a、1b、1c、1d)の一部の厚さが0.2〜10mmであることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項7】
ベースプレート(1、1a、1b、1c、1d)を担持体として使用することを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項8】
ベースプレート(1、1a、1b、1c、1d)を使用し、理想的に均一なプレートからの偏差がベースプレートの長さの0.2%未満および/またはベースプレートの幅の0.1%未満であることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項9】
分離層(2)を形成するために、ベースプレート(1、1a、1b、1c)の少なくとも1つの面を例えば水溶性マトリクスである液状マトリクス中の少なくとも1つの粉末状分離層材料を含有する塊でコーティングすることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項10】
分離層を形成するコーティングを適用した後、該コーティングを乾燥させるためおよび/または接合剤を除去するために130℃より高い温度まで加熱することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
分離層を形成するコーティングまたは該コーティングを施したベースプレート(1、1a、1b、1c、1d)を150℃より高く分離層材料の焼結温度より低い温度まで加熱することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
分離層(2)を粒径30μm未満の粉末状分離層材料で形成することを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのベースプレート(1、1a、1b、1c、1d)の材料の熱膨張係数が少なくとも1つのDCBパケット(6)の少なくとも1つのセラミックプレート(4)の熱膨張係数とは異なることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項14】
金属プレートが銅プレートまたは銅箔(3、5)であることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項15】
幾つかの両面金属被膜化金属−セラミック基板を製造するために、少なくとも2つのDCBパケット(6)の積層構造を形成し、その下部DCBパケット(6)は下部ベースプレート(1)の分離層(2)上に横たわっており、分離層(2)を両面に備えたベースプレート(1a)を積層構造の隣接するDCBパケット(6)間における分離プレートとして設けることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項16】
ベースプレート(1、1a、1b、1c、1d)の材料から成り分離層(2)を備える荷重部材を少なくとも1つのDCBパケット(6)上に設けることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項17】
幾つかのDCBパケット(6)の積層構造を形成するために、互いに積層したベースプレート(1、1b)上にDCBパケットを設け、ベースプレート(1、1b)はスペーサー部材(7、9)によって互いに間隔があいていることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項18】
接合するために、少なくとも1つのDCBパケット(6)を、該DCBパケット(6)を担持するベースプレート(1、1b)によって少なくとも部分的に局限された空間中に収めることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つのDCBパケット(6)を桶型または溝状ベースプレート(1b)内に設置し、また少なくとも2つの溝状または桶型ベースプレート(1b)を互いに積層することを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項20】
直接接合するために、桶型または溝状担持部材(11)の内部の、分離層(2)を備えたベースプレート(1)上に少なくとも1つのDCBパケット(6)を位置させ、また担持部材を耐熱材料、例えばセラミック材料、好ましくは少なくとも1つのベースプレート(1)の材料から形成することを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項21】
ベースプレート(1c、1d)の分離層(2)を含む面の少なくとも一方を構造化することを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つのDCBパケット(6)のセラミック層のセラミックがZrO含有量が例えば2〜30%のAlから成ることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つのDCBパケット(6)のセラミックが、例えば酸化アルミニウム(Al)から成る酸化物表面層を備えた窒化アルミニウム(AlN)および/または窒化ケイ素(Si)から成ることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つのセラミック層(4)の寸法が100×100mmより大きい、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つのDCBパケット(6)のセラミック層の厚さが0.2〜1.5mmであることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つのDCBパケット(6)の金属プレート(3、5)の厚さが0.1〜1.2mmであることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つのDCBパケット(6)の金属層の厚さのセラミック層の厚さに対する比が0.5よりも大きいことを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つのDCBパケットの金属層(3、5)の厚さが異なることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の方法。
【請求項29】
先行の請求項の1つに記載の方法で使用するための特にはプレート型担持体であり、好ましくはセラミック材料である耐熱材料から製造され、その表面上に少なくとも1つの分離層(2)を備えており、分離層は20%を越える孔隙率(孔体積の固体体積に対する比)を有し、ムライト、Al、TiO、ZrO、MgO、CaO、CaCOまたはこれらの材料の少なくとも2つの組み合わせから成る群から選択した分離層材料から成ることを特徴とする担持体。
【請求項30】
分離層(2)の厚さが0.1〜10mmであることを特徴とする、請求項29に記載の担持体。
【請求項31】
分離層(2)が、その厚み全体を通して20%を越える孔隙率(孔体積の固体体積に対する比)を有することを特徴とする、請求項29または30に記載の担持体。
【請求項32】
担持プレートまたは分離層を備えた該プレートの一部が厚さ0.2〜10mmを有することを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の担持体。
【請求項33】
分離層(2)を含む領域が、理想的に均一なプレートからの偏差が担持体の長さの0.2%未満および/または担持体の幅の0.1%未満である均一性を有することを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の担持体。
【請求項34】
少なくとも1つの表面上に分離層(2)を備えたプレート型設計であることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の担持体。
【請求項35】
分離層(2)と、分離層の平面から突出する縁部(10)を備えた底部を有するその桶型または溝状設計を特徴とする、先行の請求項の1つに記載の担持体。
【請求項36】
分離層(2)を含む表面上が構造化、例えば複数の凹部(14、16)が設けられていることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の担持体。
【請求項37】
分離層(2)を形成する粒子のサイズが30μm未満であることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の担持体。
【請求項38】
担持体を形成する材料の熱膨張係数が製造する両面金属−セラミック基板のセラミック材料の熱膨張係数とは異なり、例えば金属−セラミック基板のセラミック材料の熱膨張係数とは±約10%異なることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の担持体。
【請求項39】
担持体の材料の熱膨張係数が約6.8×10−6/°Kであることを特徴とする、請求38に記載の担持体。
【請求項40】
ムライト、ZrO、Al、AlN、Si、SiCまたは前記成分の少なくとも2つの組み合わせから製造されることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の担持体。
【請求項41】
高耐熱金属、例えば合金鋼、モリブデン、チタン、タングステン、前記成分の少なくとも2つの組み合わせから製造されることを特徴とする、先行の請求項の1つに記載の担持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−91164(P2009−91164A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260209(P2007−260209)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(506417832)キュラミーク エレクトロニクス ゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】