説明

金属イオンのための可溶化剤

本発明は可溶化活性物質としてデンプン水解物の酸化生成物を含む、金属イオンおよび難溶性金属化合物のための可溶化剤、金属イオンの可溶化のための方法および可溶化剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可溶化活性物質としてデンプン水解物の酸化生成物を含む金属イオン及び難溶性金属化合物のための可溶化剤、金属イオンの可溶化のための方法およびこの可溶化剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
金属塩は難溶性沈殿物を形成する傾向にもとづき、多くの化学的および技術的分野並びに多種多様な化学工学プロセスで障害を引き起こすことがある。技術的に重要な難溶性金属化合物は特にアルカリ土類金属および元素周期表の1−8亜族および3族の金属の好ましくは酸化物、水酸化物、リン酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、ケイ酸塩および類似の化合物である。金属イオン、特に難溶性金属化合物、例えば難溶性の沈着物(Belage)を形成する炭酸カルシウムの可溶化は、技術的工程および設備の機能の維持にとって決定的である。特に水溶液を扱う工程では、厄介な金属化合物の沈殿を防止することが重要である。そのために周知のように金属イオンを「遮蔽」し、金属化合物を溶解させておく錯化活性物質または錯化剤(錯形成物質とも呼ばれる)が使用される。代表的なこの種の薬剤は例えばEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、ニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸またはグルコン酸である。
【0003】
欧州特許公開EP 0472 042 A1はカルシウムの封鎖のために使用することができる酸化グルコシドオリゴマーを記述する。Santacesariaら、Carbohydrate Polymers 23 (1994)、35〜46頁が示すところでは、このオリゴマーはその製法によりC2およびC3原子のヒドロキシル基が酸化されたオリゴマーである。酸化された炭水化物の分散作用は一般にC2およびC3原子のカルボキシル機能に関連づけられる。従って炭水化物オリゴマーをベースとする公知の錯化剤は少なくともC2およびC3原子にカルボキシル機能を有する。
【0004】
酸化された炭水化物をベースとする周知の錯化剤、例えばグルコン酸ナトリウムは高濃度の水溶液(例えば40%TS(固形物)以上)から結晶化しやすい。低濃度溶液では貯蔵中に急速に腐敗が起こる欠点がある。しかも生成物中の高い水分含量は一般に望ましくない。貯蔵および輸送のために、この生成物を結晶形態に変えなければならない不都合がある。これは使用と再加工に支障をきたす。他方では、高濃度の貯蔵安定性の溶液/シロップを得るために、費用のかかる補助工程、例えばイオン交換または電気透析を採用しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の根底にあるのは、先行技術で公知の欠点を克服する改善された可溶化剤を提供するという技術問題である。
【0006】
さらに本発明の根底にあるのは、製造において好ましくは中間処理または精製をせずに直接に高濃度のシロップとして製造することができる可溶化剤を提供するという技術問題である。その場合例えば固形物40%以上、特に固形物約60−80%のシロップが貯蔵性良好で、腐敗しない。また製品の貯蔵と輸送をより簡素化するために、シロップは低温でも結晶化の傾向を示してはならない。
【0007】
さらに本発明の根底にあるのは、非常に高いpH値、好ましくは約13以上のpH値で良好な金属イオン結合、即ち難溶性金属イオンまたは金属化合物、特にアルカリ土類金属、例えばカルシウムおよびマグネシウムに対して良好な溶解能または結合能を示す可溶化剤を提供するという技術問題である。
【0008】
さらに本発明の根底にあるのは、塩基性pH値、例えば少なくとも8のpH値でも特に鉄および場合によっては8亜族および1−7亜族のその他の金属イオンに対して良好な金属イオン結合を示す可溶化剤を提供するという技術問題である。
【0009】
さらに本発明の根底にあるのは、可溶化する難溶性金属イオンまたは金属化合物に対して等モル量以下で、例えば金属化合物2モル以上に対して可溶化剤1モルのモル比で使用することができ、所望の効果を示す高性能な可溶化剤を提供するという技術問題である。
【0010】
本発明の根底にあるのは、難溶性金属イオンまたは金属化合物、例えばカルシウムおよびカルシウム化合物に対して改善された分散能を有する可溶化剤を提供するという技術問題である。
【0011】
さらに本発明の根底にあるのは、生分解性である、即ち好ましくは微生物酵素によってたやすく分解され、好ましくは自然の物質循環に戻ることができる可溶化剤を提供するという技術問題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、主としてデンプン水解物のC1選択的酸化によって製造される酸化生成物または酸化生成物混合物を可溶化活性物質として含む、金属イオンおよび難溶性金属化合物のための可溶化剤を提供することによって、その根底にある技術問題を解決する。
【0013】
即ち本発明は、特に金属イオンまたは難溶性金属化合物の可溶化のために採用または使用する場合、以下で詳しく特徴づける酸化生成物または酸化生成物混合物に関する。
【0014】
本発明に基づく可溶化活性物質または可溶化手段は、好ましくは酸化されたモノマーまたはオリゴマー炭水化物、特にアルドン酸またはこのような化合物の混合物であって、アルデヒド基(ヘミアセタール)が選択的に、好ましくはもっぱらモノマーまたはオリゴマーのC1原子で酸化されたものが関連することを特徴とする。従って本発明に基づく可溶化活性物質または可溶化手段は多重に(mehrfach)酸化されたものでなく、本質的に単に一重に(einfach)酸化、好ましくはもっぱら一重に酸化されている。従って本発明の好ましい実施形態は、C2およびC3原子が酸化されてカルボキシル機能をもつモノマーおよびオリゴマー炭水化物を除外する。本発明に基づく好ましい変型では、炭水化物、特にデンプン水解物またはその誘導体の成分の酸化のために、分子当り1個のC1位カルボキシル基の生成だけを許し、C2およびC3位またはオリゴマー鎖中の対応するC2およびC3位のヒドロキシル基は炭水化物分子中でそのままである特殊な触媒酸化法を使用する。
【0015】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明に基づき酸化された炭水化物分子に含まれるその他の未酸化のヒドロキシル基は、C1位の単一のカルボキシル基のカチオン結合および可溶化作用を促進する。このことは好ましくは二糖およびオリゴ糖であてはまる。この付加的効果は、このような糖分子での複数のカルボキシル基の存在だけが金属イオンを錯体の形に結合することを可能にするという従来の考え方に反して発見されたもので、本発明に基づく可溶化剤に認められる技術的利点の構成要素である。
【0016】
金属イオンの可溶化のための本発明に基づく活性物質または手段は、本発明に基づく可溶化に関連して従来未知の生成物である。
【0017】
本発明に基づく可溶化剤として使用される酸化生成物または酸化生成物混合物は、意外なことに、生成物の不都合な結晶化の傾向が現れないため、好ましくは固形物60−80%、代表的には固形物70%の高濃縮シロップの形態でも製造、貯蔵、輸送および加工することができる。
【0018】
本発明は好ましくは難溶性金属化合物の沈着物の溶解またはこのような沈着物の形成の防止のために、本発明に基づく可溶化活性物質または可溶化手段の使用を提供する。この製剤の好ましい応用分野は洗浄用組成物であり、本発明に基づく可溶化活性物質または手段は少なくとも1種の表面活性剤とともに、場合によってはアルカリ化剤、例えば水酸化ナトリウム、場合によってはその他の助剤とともに使用される。このような組成物では特に表面活性剤およびアルカリ性との相互作用による相乗効果が生じる利点がある。但し本発明は本発明に基づく製剤のこのような応用に限るものでなく、その他の具体的な応用と使用を次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】強塩基性水溶液中の本発明に基づく可溶化剤とEDTA、NTAおよびグルコン酸塩の炭酸カルシウム分散能の比較を示す。
【図2】強塩基性水溶液中の本発明に基づく4つの異なる可溶化剤とEDTAおよびグルコン酸塩の炭酸カルシウム分散能の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
意外なことに、主としてC1原子だけが酸化された炭水化物または炭水化物組成物は良質な可溶化活性物質として適当であること、即ちより優れた可溶化剤になることが判明した。さらに、意外なことに本発明に基づく可溶化剤は特に高い、または非常に高いpH値の水溶液、即ち強アルカリ性の特に水溶液で、金属イオンおよび難溶性金属化合物、特にアルカリ土類金属を溶解させておくのに非常に好適であることが判明した。高いpH値とはpH11以上の範囲、非常に高いpH値とは13以上の範囲を意味する。鉄並びに8亜族および1−7亜族のその他の亜族金属のような金属の場合は、本発明は、特に強い可溶化効果を認めることができるため、好ましくはpH8−10、特にpH8−9の範囲のpH値での使用を提供する。
【0021】
また本発明者らは意外なことに、金属イオンおよび難溶性金属化合物を溶解させておく、または溶解させる、即ち既存の沈殿物または沈着物を再び溶解する性質が、本発明に基づく活性物質で特に顕著であることを発見した。このことは、特に比較可能な物質群のその他の薬剤、即ち酸化した炭水化物、特にグルコン酸またはグルコン酸塩およびラクトビオン酸またはラクトビオン酸塩と比較してそうである。本発明に基づく薬剤は意外なことにポリカルボキシル化合物、例えば多重酸化オリゴ糖よりはるかに効果的である。
【0022】
本発明に基づく薬剤は特に公知の酸化炭水化物のように錯化剤として作用するだけでなく、一般にいわゆる可溶化剤として作用する性質も有する。理論に拘束されることを望むものではないが、これは封鎖剤および分散剤としての機能、並びに類縁のまたはそれから派生する効果をともに包含する。使用領域、濃度比およびその他の条件に応じて、本発明に基づく製剤の一方または他方の効果および機能が優勢になる。
【0023】
意外なことに、金属イオンまたは金属化合物の効果的な可溶化のために、ごく少量の、特に金属イオンに対して等モル量以下の本発明可溶化剤を使用すればよいことが判明した。金属イオンおよび難溶性金属化合物を可溶化するために、本発明に基づく可溶化活性物質は本発明に基づき(溶解するまたは溶解させておく金属イオンの量に対して)非常に少ない量で使用すればよい。例えば、1モルの本発明に基づく可溶化活性物質で少なくとも2モル以上、特に3モル以上の金属イオン、例えばカルシウムイオン、または難溶性金属化合物、例えば炭酸カルシウムを可溶化し、即ち溶解させておきまたは溶解させることができる。従って、好ましい変型では1:2以上、好ましくは1:3以上のモル比(可溶化剤対金属化合物)の可溶化剤が使用される。
【0024】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明に基づく可溶化活性物質は封鎖剤として、もっぱらおよび/または補助的に分散剤として、および/または錯化剤として作用することができる。
【0025】
可溶化活性物質は、特に水溶液で、特に難溶性金属化合物の形態の金属イオンを溶解させておき、こうしてその沈殿を防止または阻止する作用を特徴とする。本発明に関連して「可溶化」とは、難溶性金属化合物および特に金属塩を溶解させておくこと、および溶解させることの双方を意味するものと理解される。可溶化活性物質がイオンを溶解させておき、または溶解させる化学的作用機構、即ち仕方は、本発明において、必ずしも理論的に知られた単一の機構に限らない。
【0026】
本発明に基づき可溶化活性物質は、好ましくはもっぱら封鎖剤として作用することが好ましい。本発明に関連して「封鎖剤」とは、イオンの性質、特に溶解度をイオンとの相互作用により変化する物質または化合物を意味する。
【0027】
本発明に基づき可溶化活性物質は好ましくはもっぱら分散剤として作用することが好ましい。本発明の意味で「分散剤」の特徴は、沈殿を防止しようとする金属イオンに関して等モル量よりはるかに少ない量で使用しうることである。
【0028】
本発明に基づき1モルの本発明可溶化活性物質で少なくとも2モル以上、好ましくは3モル以上、場合によっては4モル以上の金属イオンまたは金属化合物が可溶化されるようにすることが好ましい。金属化合物と本発明に基づく活性物質/可溶化剤の比は常に1:1以上、特に2:1以上、より好ましくは3:1以上であることが好ましい。
【0029】
理論に拘束されることを望むものではないが、錯化剤(錯形成物質ともいう)は沈殿を防止しようとする金属イオンに関して少なくとも等モル量で使用される。本発明の代替実施形態では、本発明に基づく可溶化活性物質は錯化剤として、本発明の別の好ましい変型では主として、好ましくはもっぱら錯化剤として作用する。この場合、溶液のすべての金属イオンを錯化するために、金属化合物と本発明に基づく活性物質/可溶化剤の比はおよそ1:1であることが好ましい。
【0030】
本発明に基づく可溶化活性物質はデンプン水解物から得ることが好ましい。デンプン水解物、例えばグルコースシロップは実質的に公知の方法で得られる。特に好ましくは、デンプン水解物はいわゆる工業用グルコースシロップまたはトウモロコシシロップまたはいわゆるマルトデキストリンから選ばれる。一般に、「デンプン水解物」とは、本発明に関連してグルコース、マルトースおよびオリゴマー・グルコース化合物の混合物またはこれらを含む組成物をも意味することが理解される。
【0031】
使用されるデンプン水解物は少なくとも5重量%以上、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは85重量%以上の割合の重合度(DP)DP2−DP4の二量体またはオリゴマー化合物を有することが好ましい。特に好ましくは、デンプン水解物は10重量%以上、好ましくは25重量%以上、好ましくは50重量%以上、好ましくは75重量%以上または85重量%以上の割合のDP2−DP4の化合物、好ましくはDP2の化合物を有する。デンプン水解物は90重量%以下、好ましくは95重量%以下の割合のDP2の化合物を有することが好ましい。デンプン水解物は5−90重量%、あるいは10−85重量%の割合のDP2化合物を有することが好ましい。従ってデンプン水解物中の残分はDP1、即ち好ましくはグルコースおよび場合によってはDP3またはDP4以上のその他の化合物である。
【0032】
本発明の一変型では、デンプン水解物は85重量%以下の割合のDP2およびDP3化合物を有する。
【0033】
本発明に基づき特に工業用グルコースシロップの形態のデンプン水解物は少なくともDE40のデキストロース当量(DE)を有することが好ましく、好ましくはDE50−DE60の範囲が好ましく、特にDE50−DE55の範囲が好ましい。デンプン水解物の代替変型においてはDE90以上である。
【0034】
本発明は上記で詳しく定義したデンプン水解物から本発明に基づく活性物質または手段を得るために、デンプン水解物の直接酸化、好ましくはC1選択的触媒酸化を行うものである。本発明によれば、その場合デンプン水解物分子またはデンプン水解物組成物は、分子のそれぞれ第1のアノマーC原子、即ち第一末端ヒドロキシル基またはアルデヒド基を担持するC1位原子だけが酸化されて酸基/カルボキシル基を生じるようにした。
【0035】
その場合酸化生成物として、本発明に基づきC1酸化モノカルボキシル化炭水化物の生成物組成物または生成物混合物が得られる。従って本発明は好ましくはアルドン酸組成物に関する。本発明によれば酸化生成物は好ましくは80重量%を超える、特に90重量%を超える、特に95重量%を超えるモノカルボキシル化単糖もしくは多糖および/またはアルドン酸を有する。
【0036】
別の変型では、場合によっては不純物を含むおおむね純粋な物質が得られる。
【0037】
このような本発明に基づく活性物質の製造方法は例えばドイツ特許公開DE103 19 917 A1およびDE10 2005 036 890 A1により公知であり、その内容は全面的に本明細書に組み入れられる。
【0038】
本発明に基づく活性物質の製造のために、例えば特に水溶液中のデンプン水解物を支持体、特に炭素支持体または金属酸化物支持体上のナノ分散型の微細な金粒子からなる金触媒の存在下で酸素と反応させる方法が用いられる。特にデンプン水解物のアルデヒド基を選択的に酸化してカルボキシル基とすることができる。金触媒の金属酸化物支持体は例えばTiO2支持体またはAl2O3支持体である。担持された金触媒は例えば約0.1%−5%、好ましくは約0.5−1%の金を含み得る。酸化は7−11のpH値および20℃−140℃、好ましくは40℃−90℃の温度で行うことができる。酸化を例えば1バール−25バールの圧力で行うことができる。本方法では例えば酸化の際に酸素および/または空気を気泡にしてデンプン水解物に通すことができる。本方法ではデンプン水解物の量と金属酸化物支持体上に含まれる金の量の比は例えば1000以上である。
【0039】
デンプン水解物の選択的酸化のためのこのような触媒は、例えば担体と酸性クロロ金酸前駆体溶液の水溶液を「含浸(incipient wetness)」法で接触させることによって製造することができる。但しこの製造方法を限定的と解すべきでない。こうして含浸させた触媒前駆体を次に特に室温以上、好ましくは60℃−200℃、特に60℃−100℃の温度で乾燥する。支持体は乾燥形態で用意し、クロロ金酸前駆体の水溶液の体積は特に最大で支持体の気孔体積に相当することが好ましい。クロロ金酸前駆体の水溶液は、例えば担体がもうこれ以上の溶液を吸収できないという体積まで乾燥した支持体に徐々に加える。クロロ金酸前駆体の水溶液は、場合によっては少なくとも1種の別の酸と組み合わせた濃度0.1mol/l−12mol/l、好ましくは1mol/l−4mol/lの含水塩酸中のHAuCl4溶液である。別の段階で触媒前駆体の還元を特に250℃以上の温度で水素流中で、または液相還元として行うことができる。その場合還元を10分−300分、好ましくは80分−120分行うことができる。水素流は5容積%−15容積%、好ましくは10容積%の水素含量と場合によっては不活性ガスを含むことができる。支持体および/またはクロロ金酸前駆体の水溶液に、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土金属の酸化物から選ばれる、好ましくは0.01重量%−1重量%の割合のドーピング添加物をさらに加えることもできる。
【0040】
また本発明は本発明に基づく活性物質を可溶化剤として使用することによって、その根底にある技術問題を解決する。極性プロトン性溶媒、好ましくは水溶液中で使用することが好ましい。好ましい変型の1つは、このような金属イオンの封鎖のために本発明に基づく可溶化剤を使用することである。好ましい変型の1つは、このような金属化合物の錯化のために本発明に基づく可溶化剤を使用することである。本発明の目的はこのような金属化合物のために可溶化剤を使用することであり、可溶化剤がこれを含み、またはこれからなるデンプン水解物のC1選択的酸化から製造可能であり、または製造される酸化生成物である。
【0041】
本発明によれば、本発明に基づく活性物質は5重量%以上、好ましくは50重量%を超える、特に75重量%を超える、特に85重量%を超える、重合度DP2−DP3、好ましくはDP2のオリゴマー化合物を有することが好ましい。本発明によれば、酸化生成物は5−90重量%、代案として好ましくは10−85重量%のDP2−DP3、好ましくはDP2の化合物を含むことが好ましい。
【0042】
本発明の代替実施形態では、可溶化活性物質は工業用デンプン水解物から直接得たものでないが、同じく90重量%を超えるC1選択的酸化炭水化物、特にC1選択的酸化アルドースを含み、またはこれからなる。
【0043】
本発明によれば、可溶化剤は特に2価または3価の金属カチオンの金属化合物の可溶化のため使用することが好ましい。元素周期表の2または3族並びに1、2、3、4、5、6、7および8亜族の金属、特に難溶性金属化合物を作る上記金属の金属イオンおよび金属化合物の可溶化が得られる。金属は特にカルシウム、マグネシウム、マンガン、銅、鉄、亜鉛、ニッケル、クロムおよびアルミニウムからなる群から選択される。
【0044】
本発明に関連して「難溶性」とは、溶媒、特に極性、特にプロトン性溶媒、特に水(H2O)にわずかしか溶解しない金属化合物の性質を意味するものと理解される。その場合「溶液」とは、溶媒と溶解した分子の単相の均質な化合物または均質な混合物を意味するものと理解される。本発明に基づく難溶性金属化合物は溶媒1リットルにつき1g以下(100mg/L以下)、特に1mg/L以下の溶解度を有する。溶解度が温度、pH値、圧力および溶液中のその他のイオンの存在といった要因に依存し、その影響を受けることはいうまでもない。
本発明は好ましくは炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫化物、水酸化物、酸化物、ハロゲン塩(好ましくは塩化物および臭化物)並びに有機酸、カルボン酸およびアルコールの化合物、例えばシュウ酸塩、石鹸(石灰石鹸)およびエタノレート並びに有機ポリマーの化合物、例えばペクチン酸塩から選ばれた難溶性金属化合物での使用に関する。
【0045】
特に可溶化剤をカルシウム化合物、例えば炭酸カルシウム、水酸化カルシウムおよびリン酸カルシウムの可溶化のために使用することが好ましい。本発明に基づき可溶化剤をマグネシウム化合物、例えば炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムおよび硫酸マグネシウムの可溶化のために使用することが好ましい。本発明に基づき可溶化剤をマンガン化合物、例えば軟マンガン鉱/酸化マンガンおよび水酸化マンガンの可溶化のために使用することが好ましい。本発明に基づき可溶化剤を銅化合物、例えば水酸化銅および炭酸銅の可溶化のために使用することが好ましい。本発明に基づき可溶化剤を鉄化合物、例えば水酸化鉄、炭酸鉄の可溶化のために使用することが好ましい。本発明に基づき可溶化剤をアルミニウム化合物、例えば水酸化アルミニウムの可溶化のために使用することが好ましい。
【0046】
本発明に基づく活性物質または可溶化剤は、金属イオンが難溶性化合物として沈着することを防止するために利用することが好ましい。別の好ましい変型で本発明に基づく活性物質または手段は、このような難溶性金属化合物の沈殿物または沈着物を防止または溶解するために利用される。
【0047】
可溶化活性物質自体が好ましくは完全に、または少なくとも代替物として塩、好ましくはアルカリ塩、好ましくはナトリウム塩の形態であることが好ましい。
【0048】
また本発明の目的は、可溶化剤として、好ましくは唯一の可溶化活性物質として本発明に基づく酸化生成物を含む、金属イオン、好ましくは2価および/または3価の金属カチオンのための可溶化剤である。2族の金属、特にカルシウムイオンおよび/またはマグネシウムイオンの金属化合物を11以上の高いpH値、特に12以上のpH値、好ましくは13以上のpH値で結合するため、もしくは亜族金属、特に鉄および8亜族のその他の金属並びに1−7亜族の金属の金属化合物を8以上のpH値、特に8−9のpH値で結合するために、本発明に基づく酸化生成物のアルカリ金属塩を可溶化活性物質として使用することが好ましい。
【0049】
また本発明は、金属イオンおよび難溶性金属化合物、特に水溶液に溶解しにくい沈殿物または沈着物を形成する金属化合物の可溶化のために、少なくとも下記の段階、即ち少なくとも1つの金属イオンと可溶化活性物質の少なくとも1つの分子から溶解しやすい単位体、例えば錯体を形成することを可能にする条件のもとで、本発明に基づく活性物質または可溶化剤を接触させることを含む方法を提供することによって、その根底にある技術問題を解決する。本発明に基づき溶解しやすい単位体は1以上の金属イオンと可溶化活性物質の分子からなることが好ましい。本発明に基づき沈殿を阻止する単位体は少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個の金属イオンと可溶化活性物質の1個の分子からなることが好ましい。
【0050】
本発明に基づきこの方法は極性プロトン性溶媒、特に水溶液中で行うことが好ましい。本発明に基づきこの方法は塩基性pH値(標準条件下21℃で測定)で行うことが好ましい。本発明に基づきこの方法は8以上のpH値、別の変法では11以上、好ましくは12以上のpH値、特に13以上のpH値で行うことが好ましい。最適の可溶化作用は、第1の変法では亜族金属(1−8亜族)、特に鉄の金属化合物に対してpH8−9にあり、別の変法で最適は特にアルカリ土類金属イオン、特にカルシウムおよびマグネシウムに対してpH13−14にある。
【0051】
意外なことに本発明に基づく可溶化剤は、最終消費者が組成物中で中和しうる塩または酸として、好ましくは塩基性洗浄液、特に工業用塩基性洗浄液で金属化合物に対する可溶化剤として使用できることが示される。このような条件のもとで、本発明に基づく可溶化剤は意外なことに在来の活性物質、例えばNTAおよびEDTAの優れた代替物である。
【0052】
本発明に基づく好ましい使用においては、本発明に基づく可溶化剤は他の含有物、例えば水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、リン酸塩および/または界面活性剤との液状混合物で使用される。理論に拘束されることを望むものではないが、界面活性剤、アルカリおよび本発明に基づく可溶化活性物質の相互作用から相乗効果が生じる。
【0053】
本発明の目的は生物学的にたやすく分解される可溶化剤を使用することである。本発明者は意外なことに本発明に基づく薬剤がその化学構造に基づき公知の分解経路および物質代謝過程で、特に微生物酵素活性によりたやすく分解され、分離され、その際有害な化合物が特に残存しないことを発見した。従って、本発明は高い環境融和性、特に生分解性が保証されなければならないプロセスで本発明に基づく活性物質を使用することを好ましくは意図するものである。
【0054】
本発明の目的は難溶性カルシウム化合物、例えば石灰/石灰スパー、方解石、ドロマイト、ボイラースケールおよび炭酸塩混合物および石灰石鹸並びに難溶性マグネシウム化合物の沈着の防止および/または溶解のために可溶化剤を使用することである。水溶液中のカルシウムおよびマグネシウムの存在は基本的に沈着物、いわゆる石灰沈着物の形成に関して大きなリスクである。これらの金属イオンは周知のように難溶性化合物を形成するからである。
【0055】
また本発明の目的は可溶化剤を、場合によって界面活性剤、アルカリ、ケイ酸塩、ケイ酸アルミニウムおよび/またはリン酸塩と組み合わせて、洗浄剤および洗剤のための材料として使用することである。
【0056】
また本発明の目的は表面の濡れの改善のために可溶化剤を使用することである。
【0057】
また本発明の目的は可溶化剤を、場合によってスルファミン酸と組み合わせて微生物の沈着物の除去のために使用することである。
【0058】
また本発明の目的は可溶化剤を、場合によってアルカリ、例えば炭酸ナトリウムおよびその水和物と組み合わせて鋳型表面の洗浄のために使用することである。本発明に基づき可溶化剤をガラス製造用鋳型の洗浄のために使用することが好ましい。
【0059】
ガラス製造での鋳型はさび、ケイ酸塩および炭素の沈着を防止するために定期的な洗浄を必要とする。このために可溶化剤をリットル当り50−100グラムの濃度で洗剤に使用することが好ましい。このような洗浄液はさらに約200グラムのソーダを含むことが好ましい。
【0060】
また本発明の目的はコンクリートの沈着物および汚れの除去のために可溶化剤を使用することである。
【0061】
また本発明の目的は工業設備もしくは機械の沈着物および水あかの除去または防止のために可溶化剤を使用することである。
【0062】
また本発明の目的はさびの沈着および汚れの除去のために可溶化剤を使用することである。
【0063】
また本発明の目的は染料の沈着および汚れの除去のために可溶化剤を使用することである。
【0064】
また本発明の目的は硫酸カルシウム沈着物の除去のために可溶化剤を使用することである。
【0065】
また本発明の目的は金属表面の脱脂において可溶化剤を使用することである。
【0066】
また本発明の目的は可溶化剤を場合によってアルカリ、例えば炭酸塩および水酸化物と組み合わせて脱脂のために使用することである。
【0067】
金属表面の脱脂においては金属表面上に難溶性の塩が再沈着することを防止しなければならない。これは本発明に基づく可溶化剤を脱脂液に添加することによって達成することができる。
【0068】
また本発明の目的は電気メッキ(Galvanik)で可溶化剤を使用することである。本発明に基づきメッキ浴中の沈着物および汚れの除去または防止のために可溶化剤を使用することが好ましい。
【0069】
また本発明の目的は食器洗浄剤組成物の成分として可溶化剤を使用することである。また本発明の目的は食器洗浄で可溶化剤を使用することである。本発明に基づき工業的食器洗浄で可溶化剤を使用することが好ましい。可溶化剤は固形、特に粉末状または液状の食器洗浄剤組成物で使用することができる。工業的食器洗浄で使用される溶液は、家庭で私用されるものよりもアルカリ性であることが好ましい。
【0070】
また本発明の目的は硬い表面の洗浄のために可溶化剤を使用することである。硬い表面、例えば床や作業台の洗浄は、活性物質が濃縮された形態になっている液状の洗浄液を必要とする。洗浄液は微量の無機および有機物質を除去することができなければならない。結晶化の傾向が少ないため、可溶化剤をより高い濃度で投入できる液状調合物で本発明に基づく可溶化剤を使用することが有利であることが判明した。
【0071】
また本発明の目的はガラス瓶の洗浄で可溶化剤を使用することである。
【0072】
ガラス瓶洗浄での本発明に基づく可溶化剤の使用は、可溶化剤がたやすく生分解されるので好都合である。しかも本発明に基づく可溶化剤はアルカリ性媒質で使用すれば非常に効果的であり、加水分解に耐える。本発明に基づく可溶化剤の使用は沈殿や混濁の形成を防止し、ボトルネックの効果的な浄化をもたらす。さらに洗浄装置、洗浄機械および洗浄剤容器の石灰沈殿物やボイラースケールの形成が防止される。さらにアルミニウム栓付きガラス瓶の洗浄の場合は、洗浄系統で水酸化アルミニウム沈殿物の形成が防止される。また本発明に基づく可溶化剤の毒性が低いため、すすぎ工程を簡素化し、短縮することができるから、費用と資源、特に水の節約が得られる。意外なことにインクの除去の改善も認められた。
【0073】
また本発明の目的は食品工業の機械や装置の洗浄で可溶化剤を使用することである。
【0074】
また本発明の目的は例えば乳製品製造業でフィルター、特に限外濾過膜の洗浄のために可溶化剤を使用することである。
【0075】
限外濾過は乳製品製造業で牛乳や乳清の巨大分子を分離し、濃縮するために非常に普及している分離技術である。その場合使用される膜は、十分な選択性と透過性を保証し、微生物汚染を防止するために、定期的な洗浄が必要である。
【0076】
フィルターの洗浄のために可溶化剤を使用する場合、可溶化剤を別の封鎖剤、例えばEDTAを含む溶液で使用することが好ましい。しかし、本発明に基づく可溶化剤を使用することによって、洗浄液のEDTA含量を著しく減少することができる。
【0077】
また本発明の目的はビール製造で沈殿物の防止のために可溶化剤を使用することである。醸造業で不十分な洗浄はカルシウム沈殿物の上に微生物の繁殖をもたらすことがある。それによってビールの意図せぬ変化、特に味や香りの劣化が起こる恐れがある。本発明に基づく可溶化剤を特にスルファミン酸と組み合わせて洗浄することによって、これを防止することができる。カルシウム沈殿物の形成が防止されるからである。
【0078】
また本発明の目的は製紙業で可溶化剤を使用することである。本発明に基づき製紙機械の洗浄のために可溶化剤を使用することが好ましい。
【0079】
また本発明の目的はポリカーボネートの製造で可溶化剤を使用することである。
【0080】
また本発明の目的は染料の製造で可溶化剤を使用することである。
【0081】
また本発明の目的は研磨または粉砕の際に添加剤として可溶化剤を使用することである。
【0082】
また本発明の目的は食品中の微量元素の可溶化のために可溶化剤を使用することである。本発明に基づき微量元素、バリウム、マンガン、銅および/またはモリブデンを可溶化することが好ましい。
【0083】
また本発明の目的は例えば二酸化チタンの製造でアルミン酸ナトリウムの安定化のために可溶化剤を使用することである。
【0084】
また本発明の目的は例えばアルミニウムのエッチング作業で水酸化アルミニウムおよび類似の化合物の沈殿を防止するために可溶化剤を使用することである。
【0085】
また本発明の目的は繊維産業で可溶化剤を使用することである。単糸(Faden)および紡糸(Garnen)の製造で可溶化剤を使用することが好ましい。
【0086】
また本発明の目的は繊維品用の洗剤組成物の成分として可溶化剤を使用することである。
【0087】
また本発明の目的は繊維品用の漂白剤組成物の成分として可溶化剤を使用することである。
【0088】
また本発明の目的は繊維品用の染料組成物の成分として可溶化剤を使用することである。
【0089】
また本発明の目的は請求項のいずれか1項で特徴づけられた可溶化剤をコンクリートの凝結の遅延のために使用することである。また本発明の目的は請求項のいずれか1項で特徴づけられた可溶化剤をセメントまたはモルタルの凝結の遅延のために使用することである。
【0090】
また本発明の目的はセメント、特にボーリング、例えばオイルボーリングで使用されるセメントで可溶化剤を使用することである。
【0091】
本発明の目的は好ましくは洗浄または洗浄液で可溶化剤を使用することである。また本発明の目的は、本発明に基づく活性物質を好ましくは唯一の可溶化剤として含む洗浄または洗浄液である。
【0092】
また本発明の目的は写真およびフィルム用現像浴の成分として可溶化剤を使用することである。
【0093】
当業者は洗浄液で使用する際に本発明に基づく可溶化剤の分量を実質的に公知の方法で問題なく決定することができる。可溶化剤は洗浄液で2重量%−100重量%の分量で使用することが好ましい。用途に応じて可溶化剤は洗浄液中に例えば5重量%、7重量%、10−20重量%、特に13重量%、または25重量%の割合で存在することができる。
【0094】
結晶化傾向が少ないため、可溶化剤を高い濃度で投入できる液状調合物で本発明に基づく可溶化剤を使用することが特に有利であることが判明した。
【0095】
本発明は上記の本発明に基づく用途で、好ましくは可溶化剤をpH値8以上のアルカリ性(水)溶液で使用するものとする。可溶化剤をpH値11以上のアルカリ性水溶液で使用することが好ましく、可溶化剤をpH値12以上、好ましくは13以上で使用することが好ましく、特に可溶化剤をpH値13.5または14以上の強アルカリ性(水)溶液で使用することが好ましい。本発明に基づく活性物質はシロップの形態で、または一般に液状で使用することが好ましい。
【0096】
本発明を図面および実施例に基づき詳しく特徴づける。但しこれを限定的と解すべきでない。
【実施例1】
【0097】
本発明に基づく可溶化活性物質(Sol.D)の製造
市販の工業用デンプン水解物の溶液を攪拌釜中でAl2O3担体金触媒で酸化した。反応条件は次の通りであった。T=40-80℃、pH=7-11、p=1-25bar O2。苛性ソーダ溶液で滴定することによって反応懸濁液のpH値を一定に保った。完全に転化するまで反応を行った。反応の終りに濾過して触媒を分離した。得られた酸化シロップを別に精製せずに適当な簡単な処理(脱水)によって濃縮し(65−75%固形物)、貯蔵可能な可溶化剤として使用することができた。
【実施例2】
【0098】
本発明に基づく可溶化剤の炭酸カルシウム分散能の比較測定
本発明に基づく可溶化剤の炭酸カルシウム分散能(“calcium carbonate dispersing capacity”,CCDC)を先行技術による可溶化剤のCCDCと比較した。本発明に基づく可溶化剤として、デキストロース当量(DE)55−60、DP2化合物90重量%のデンプン水解物の酸化から得た選択的C1酸化生成物(Sol.A)を使用した。
【0099】
デキストロース当量(DE)は実質的に公知の方法で、特にFehlingにより、組成物の還元画分を定めることによって決定した。
【0100】
このCCDCをEDTA、NTAおよびグルコン酸ナトリウムのCCDCと比較した。CCDCの値はF.RichterおよびE.W.Winkler(“Das Calciumbindevermoegen”, Tenside Surfactants Detergent 24(1987),213-216頁)により決定した。NaOH濃度0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%および3%でCCDCを測定した。
【0101】
測定結果を図1に示す。グルコン酸塩と本発明に基づく可溶化剤はそのCCDCの顕著なpH依存性を示すが、本発明に基づく可溶化剤の作用はグルコン酸塩より強く、強塩基性溶液ではEDTAおよびNTAよりも強い。
【実施例3】
【0102】
本発明に基づく種々の可溶化剤の炭酸カルシウム分散能の比較測定
実施例2の本発明に基づく可溶化剤(以下Sol.Aと呼ぶ)のほかに本発明に基づく別の3種の可溶化剤(Sol.B、Sol.CおよびSol.D)を調製した。このために種々異なるDE値およびDP2およびDP3含量を有するデンプン水解物を実施例1に従って酸化した。
【0103】
Sol.Bは5%のDP2含量と約95のデキストロース当量(DE)を有するデンプン水解物から調製した。Sol.Cは40−46%のDP2含量と40−45のDEを有するデンプン水解物から調製した。Sol.Dは70−80%のDP含量と約50−55のDEを有するデンプン水解物から調製した。
【0104】
Sol.A、Sol.B、Sol.CおよびSol.DのCCDCをグルコン酸塩およびEDTAのCCDCと比較した。CCDCの値は実施例2のように決定した。NaOH濃度1%、2%および3%でCCDCを測定した。
【0105】
測定結果を図2に示す。本発明に基づく可溶化剤はグルコン酸塩と少なくとも同様に良好なCCDCを示す。さらにSol.A、Sol.CおよびSol.Dは3つのすべての測定点にわたってグルコン酸塩より著しく良好なCCDCを示す。
【実施例4】
【0106】
瓶の洗浄のための洗浄液
瓶の工業的洗浄のための洗浄液は例えば次の組成を有し得る。
【0107】

【実施例5】
【0108】
食器の工業的洗浄のための洗浄液
a) 食器の工業的洗浄のための粉末状洗剤は例えば次の組成を有し得る。
【0109】

b) 食器の工業的洗浄のための液状溶剤は例えば次の組成を有し得る。
【0110】

【実施例6】
【0111】
限外濾過膜の洗浄のための組成物
限外濾過膜の洗浄のために例えば次の組成物を使用することができる。
【0112】

この組成物を例えばリットル当り10グラムの濃度で洗浄液に使用することができる。
【実施例7】
【0113】
金属表面の化学脱脂のための組成物
洗浄する金属に応じて種々の組成物を使用することができる。
【0114】
脱脂液を例えば亜鉛合金では60℃の温度、または鋼および銅合金では75℃の温度で使用することができる。
【0115】
データは脱脂液1リットル当りの物質のグラム数を意味する。溶媒として水が使用される。
【0116】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプン水解物のC1選択的酸化により製造される酸化生成物を可溶化活性物質として含む難溶性金属化合物のための可溶化剤であって、デンプン水解物が少なくとも5重量%の割合のDP2−DP4の化合物を含む、上記可溶化剤。
【請求項2】
デンプン水解物が10−85重量%の割合のDP2−DP4の化合物を含む、請求項1に記載の可溶化剤。
【請求項3】
デンプン水解物がDE50−DE55の範囲のデキストロース当量を有する請求項1または2に記載の可溶化剤。
【請求項4】
90重量%を超えるモノカルボキシル化化合物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の可溶化剤。
【請求項5】
マグネシウム、マンガン、カルシウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケル、クロムおよびアルミニウムからなる群から選択される2価または3価金属カチオンの難溶性金属化合物の可溶化のために使用される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の可溶化剤。
【請求項6】
少なくとも1つの金属イオンと少なくとも1つの可溶化剤の分子から錯体を形成することを可能にする条件下で、請求項1〜5のいずれか1項に記載の可溶化剤を接触させる段階を含む、金属イオンの可溶化方法。
【請求項7】
金属イオンの錯化のための、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項8】
たやすく生分解される可溶化剤としての、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項9】
場合によって界面活性剤、アルカリ、ケイ酸塩、ケイ酸アルミニウムおよび/またはリン酸塩と組み合わせた、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の洗浄剤および洗剤の材料としての使用。
【請求項10】
表面の濡れを改善するための、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項11】
場合によってスルファミン酸と組み合わせた、微生物の沈着物の除去のための、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項12】
工業設備または機械で沈着物および水あかを除去または防止するための、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項13】
食器洗浄、特に工業的食器洗浄における、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項14】
食器洗浄剤組成物の成分としての、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項15】
ガラス瓶の洗浄における、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項16】
電気メッキ(Galvanik)における、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項17】
メッキ浴の沈着物および汚れを除去または防止するための、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項18】
場合によってアルカリ、例えば炭酸塩および水酸化物と組み合わせた脱脂のための、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項19】
コンクリートの沈着物および汚れの除去のための、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項20】
繊維品用洗剤組成物の成分としての、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項21】
繊維品用漂白剤組成物の成分としての、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項22】
繊維品用染料組成物の成分としての、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項23】
場合によってアルカリ、例えば炭酸ナトリウムおよびその水和物と組み合わせた、鋳型表面の洗浄のための、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項24】
コンクリートの凝結遅延のための、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項25】
pH8以上の弱アルカリ性水溶液での、請求項8〜24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
写真およびフィルム用現像浴の成分としての、上記請求項のいずれか1項に記載の可溶化剤の使用。
【請求項27】
下記の段階、即ち
5重量%以上の割合のDP2およびDP4化合物を有するデンプン水解物またはデンプン水解物組成物を調製し、
デンプン水解物の少なくとも1つの炭水化物のC1位のC原子だけが酸化されるようにデンプン水解物またはデンプン水解物組成物を触媒酸化すること
を含む、難溶性金属化合物のための可溶化剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−505935(P2012−505935A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531405(P2011−531405)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007475
【国際公開番号】WO2010/046070
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(500175772)ズートツッカー アクチェンゲゼルシャフト マンハイム/オクセンフルト (47)
【Fターム(参考)】