説明

金属ガラスナノワイヤ及びその製造方法

【課題】欠陥サイトの無い、全長75μm以上で直径が1000nm以下である金属ガラスナノワイヤおよびその製造方法の提供。
【解決手段】リボン状または棒状を酸化防止雰囲気中で上端を固定して下端を牽引しつつ上下端部を除く一部分を移動式加熱フィラメントやレーザーにより過冷却液体領域まで急速加熱し、下端に加えられた張力による超塑性加工により長尺の金属ナノワイヤを形成し、急速冷却により結晶化を回避し金属ガラスナノワイヤを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ガラス材料から構成されるナノワイヤの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、原子分解能を有する様々な顕微鏡法の発展により、新しいナノ構造が発見され、量子論的効果などのナノスケール電子現象も解明されつつあり、さらにこれらのナノ領域に特有の材料特性を積極的に実用化し活用しようとするナノテクノロジー研究が精力的に推進されている。「ナノテク」と呼ばれ一般的な知名度を得たナノテクノロジー研究ではあるが、ナノテクが工業的に実用化された成功例は非常に限定的である。これはナノ構造創製のための複雑な生産技術や、その微小なナノサイズの故にハンドリングが非常に難しい事にある。
例えば、将来的に電子デバイスやナノ電子機械システム(Nano Electro Mechanical Systems; NEMS)の部品材料として有望視され、実際、一部では既に実用化され競争的な研究
開発が進められているカーボンナノチューブ(carbon nanotube; CNT)においては、アレイ状ではあるが、多層CNTでメートル級〔非特許文献2〕、単層CNTでミリ単位〔非特許文献3〕長さの合成法が漸く開発された。
【0003】
一方、CNTの機械的特性に着目してみると原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope; AFM)によって測定された引張り強度は63GPaという驚異的な値が報告されているが、その強度測定は10μm程度の短い長さのCNTに対して実施されたものである〔非特許文献4〕。同様な結果が透過電子顕微鏡(transmission electron microscope; TEM)観測からも確かめ
られているが、くびれを伴わない破壊過程が観測されることから、その破壊には欠陥サイトが関与していることが報告されている〔非特許文献5〕。
また、究極のトランジスタ素子として活用が期待されている単結晶シリコンナノワイヤは依然として長尺化は困難であり、このような制限は結晶質ナノワイヤに共通した問題としてナノワイヤの本格的な実用化への足かせとなっている。
【0004】
この長尺化問題を克服する重要なポイントは、これまでの1次元ナノワイヤはすべて結
晶相から構成されていることにある。一般に結晶質材料は、たとえナノサイズであっても転位、点欠陥、双晶、粒界などの様々な欠陥サイトを含み、これらの欠陥サイトの存在は高強度のナノワイヤを長尺化する際に重大な影響を及ぼす。
これに対して本発明者が発見した金属ガラスナノワイヤ〔非特許文献1、特許文献14〕は非晶質であり(図1)、転位などの欠陥サイトの影響を受けることがない。さらにガラス質に特有な過冷却液体領域における超塑性を利用できる利点があり、これまで結晶質材料をベースとしたナノワイヤでは困難であったミリ単位以上の長尺で高強度のナノワイヤの作製が可能である。更に金属ガラス材料はその合金構成によって様々な優れた機能性を有するため、それらの優れた機能的なナノワイヤの創製は技術開発に大いに貢献できる。
【0005】
東北大学の井上グループは、通常のアモルファス金属では見られない明瞭なガラス転移を示す金属ガラスの過冷却液体状態を安定化することにより、極めてサイズの大きな「バルク状の金属ガラス」を創出し、日本発の新素材材料として世界的な注目を集めている。金属ガラスは転位がないため塑性変形に対する抵抗が強く、超高強度、高弾性伸び、低ヤング率、高耐食性等の優良な材料特性を実現している。最新の報告では直径30ミリのZr基バルク金属ガラスの製造に成功している〔非特許文献6〕。
一方、これら金属ガラスの機械的特性は、精密微小機械やマイクロマシーン部品としての機械的強度要求を十分に満たしており、その実用化が近年急速に進みつつあり、超精密ギヤ(直径0.3 mm)を内蔵した世界最小ギヤードモータの材料として実用化している〔非
特許文献7〕。このモータの耐久負荷テストでは鉄鋼(SK4)ギヤに比べ約100倍の寿命が得られることが報告されている。
【0006】
本発明者は、これらの優れた機械的特性を持つ金属ガラス材料のナノテク研究分野への適用を独自に探索し研究を行ってきた〔非特許文献1及び8、特許文献14〕。バルク金属ガラス材料は引張りや圧縮などの機械的試験を行うと剪断破壊が起こり、その破断面上にはミクロンサイズの特有な波状パターンが出現することが30年以上も前から知られていた〔非特許文献9〕。近年、剪断破壊の最終段階における温度分布が解析され、破断直前の100 ns程度の短時間に温度が急激に上昇するという破壊メカニズムの詳細が明らかにされつつある〔非特許文献10〕。この昇温は、引張りや圧縮によって蓄積した歪エネルギーが熱エネルギーとして放出された結果であるが、これによって剪断帯に沿って薄く過冷却液体層が形成される。このガラス質材料に特有な過冷却液体は粘性流動によって変形が起こる。したがって、破断後に現れる波状パターンは、過冷却液体層が分離によって急速冷却し波状に凝固した構造に他ならない。
本発明者はこの破断面を詳細に観察し、ミクロンサイズの波状パターンの他にナノサイズのワイヤが破断面上に形成されていることを見出している〔非特許文献1、特許文献14〕。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3-10041号公報
【特許文献2】特開平3-158446号公報
【特許文献3】特開平7-252559号公報
【特許文献4】特開平9-279318号公報
【特許文献5】特開2001-254157号公報
【特許文献6】特開2001-303218号公報
【特許文献7】特開2004-42017号公報
【特許文献8】特開2007-92103号公報
【特許文献9】特開2007-247037号公報
【特許文献10】特開2007-332413号公報
【特許文献11】特開2008-1939号公報
【特許文献12】特開2008-24985号公報
【特許文献13】米国特許第5429725号明細書
【特許文献14】特願2008-183080、ナノサイズ金属ガラス構造体、中山幸仁、他
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K. S. Nakayama, Y. Yokoyama, G. Xie, Q. S. Zhang, M. W. Chen, T. Sakurai, and A. Inoue, "Metallic glass nanowire," Nano. Lett. 8, 516-519 (2008)
【非特許文献2】M. Zhang, S. Fang, A. A. Zakhidov, S. B. Lee, A. E. Aliev, C. D. Williams, K. R. Atkinson, and R. H. Baughman, "Strong, Transparent, multifunctional, carbon nanotube sheets," Science 309, 1215-1219 (2005)
【非特許文献3】K. Hata, D. N. Futaba, K. Mizuno, T. Namai, M. Yumura, and S. Iijima, "Water-assisted highly efficient synthesis of impurity free single walled carbon nanotubes," Science 19, 1362-1364 (2004)
【非特許文献4】M.-F. Yu, O. Lourie, M. J. Dyer, K. Moloni, T. F. Kelly, and R. S. Ruoff, "Strength and breaking mechanism of maltiwalled carbon nanotubes under tensile load," Science 287, 637-640 (2000)
【非特許文献5】B. G. Demczyk, Y. M. Wang, J. Cumings, M. Hetman, W. Han, A. Zettl, R. O. Ritchie, "Direct mechanical measurement of the tensile strength and elastic modulus of multiwalled carbon nanotubes," Materials Science and Engineering 334, 173-178 (2002)
【非特許文献6】Y. Yokoyama, E. Mund, A. Inoue, and L. Schultz, "Production of Zr55Cu30Ni5Al10 glassy alloy rod of 30 mm in diameter by a cap-cast technique," Mater. Trans. 48, 3190-3192 (2007)
【非特許文献7】石田央、竹田英樹、西山信行、網谷健児、喜多和彦、清水幸春、渡邉大智、福島絵里、早乙女康典、井上明久、「金属ガラス製超精密ギヤを用いた世界最小・高トルクギヤードモータ」まてりあ 44, 431-433 (2005)
【非特許文献8】K. S. Nakayama, Y. Yokoyama, T. Sakurai, and A. Inoue, "Surface properties of Zr50Cu40Al10 bulk metallic glass," Appl. Phys. Lett. 90, 183105 (2007).F. Spaepen, "On the fracture morphology of metallic glasses," Acta. Mater. 23, 615-621 (1975)
【非特許文献9】J. J. Lewandowski and A. L.Greer, "Temperature rise at shear bands in metallic glasses," Nature Mater. 5, 15-18 (2006)
【非特許文献10】Y. Kawamura, T. Nakamura, and A. Inoue, Scripta Mater. 39, 301-306 (1998)
【非特許文献11】A. Inoue, Stabilization of metallic supercooled liquid and bulk amorphous alloys, Acta Mater., 48, 279-306 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者はバルク金属ガラス材料の引張りや圧縮などの機械的試験で生じた上記破断面を詳細に観察し、ミクロンサイズの波状パターンの他にナノサイズのワイヤが破断面上に形成されていることを見出している〔非特許文献1、特許文献14〕。この発見は、優れた機能性を持つ金属ガラス材料を母体としてその性質を引き継いだ新規ナノワイヤを作製できる可能性を導き出すものである。
本発明者が発見した金属ガラスナノワイヤ〔非特許文献1、特許文献14〕を、金属ガラス材料から製造する方法を開発することが求められている。
ナノスケールのデバイスを構築するのに不可欠なナノ構造体を、結晶すべり面がなく、組織構造の均一性に優れ、機械的強度、耐食性に優れた金属ガラス材料から構成することは技術的に大きな意義がある。また、様々な機能性を持った金属ガラス材料の特性がナノサイズの構造体に引き継がれることが期待でき既存の結晶質ナノ構造体とは全く異なるユニークな新実用ナノ材料となる高い可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者はバルク金属ガラスの破壊に至る変形挙動の特徴を詳細に観測する研究を行っている中で、上記したように、圧縮や引張の機械試験において金属ガラスの応力方向に対して傾いた最大剪断応力面に沿った方向に近い面で発生する剪断面上に、加工硬化や結晶化すること無く、母体の金属ガラスと同じ組成成分で構成されるナノサイズのワイヤやチューブの構造体が形成されていることを発見した。これらのナノサイズの構造体発生のメカニズムは、金属ガラスの高温による超塑性特性が要因であり、破断直前の熱発生による粘性流動から生じたものである。
こうして、金属ガラスに超塑性加工を実施するため、過冷却液体領域まで急速に加熱を行い、加工後は結晶化を回避するため急速冷却することによりアモルファス状態を維持することにより金属ガラスナノワイヤの作製法が確立できることを認識するに至った。
金属ガラス材料は過冷却液体領域を有し、過冷却液体状態において超塑性加工が可能であるので〔非特許文献11〕、本発明における加工手段を用いることにより、全ての金属ガラス材料に対してナノワイヤの生成が可能である。
【0011】
本発明は、次のものを提供している。
〔1〕 金属ガラスで構成され、ディメンションの少なくとも1つがナノサイズであり、かつ全長が75マイクロメータ(μm)以上であることを特徴とする金属ガラスナノワイヤ

〔2〕 直径が、1000nm以下であることを特徴とする上記〔1〕に記載の金属ガラスナノワイヤ。
〔3〕 直径が、100nm以下であることを特徴とする上記〔1〕に記載の金属ガラスナ
ノワイヤ。
〔4〕 上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載の金属ガラスナノワイヤを製造するための製造方法であって、
リボン状または棒状の金属ガラスを、その端部で上下に固定せしめ且つその下端部を牽引することを可能とし、酸化を防止できる雰囲気中において、その下端部の牽引下、
(a)移動式熱加熱フィラメントを当該リボン状または棒状の金属ガラス試料に対し垂直
に接触させる、
(b)上下端に電極を固定し通電と破断直前に通電を遮断する、又は
(c)当該リボン状または棒状の金属ガラス試料をレーザー加熱する、
のいずれか一を施し、金属ガラスを過冷却液体領域まで急速加熱せしめ、形成された金属ガラスナノワイヤを急速冷却することにより、当該ナノワイヤの金属ガラス状態を維持せしめて、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載の金属ガラスナノワイヤを製造することを特徴とする金属ガラスナノワイヤ製造方法。
〔5〕 酸化を防止できる雰囲気が、真空であることを特徴とする上記〔4〕に記載の製造方法。
〔6〕 上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載の金属ガラスナノワイヤを製造するための製造装置であって、
金属ガラス試料の酸化を防止できる雰囲気を達成する筐体、当該筐体内に配置されており且つリボン状または棒状の金属ガラスをその端部で上下に固定せしめる少なくとも二つの固定具、下端部の固定具を牽引する荷重付与装置、
(a) 当該リボン状または棒状の金属ガラス試料に対し垂直に接触させることのできる移動式熱加熱フィラメント、
(b)当該試料上下端の固定具に固定され且つ通電と通電の遮断のできる電極、又は
(c)当該リボン状または棒状の金属ガラス試料を加熱できるレーザー
のいずれか一を備え、金属ガラスを過冷却液体領域まで急速加熱せしめ、形成された金属ガラスナノワイヤを急速冷却することにより、当該ナノワイヤの金属ガラス状態を維持せしめて、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載の金属ガラスナノワイヤを製造することができることを特徴とする金属ガラスナノワイヤ製造装置。
〔7〕 酸化を防止できる雰囲気が、真空であることを特徴とする上記〔6〕に記載の製造装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明に従えば、全ての金属ガラス材料に対してナノワイヤの生成が可能である。また本発明はリボン状または細線金属ガラス材料をベース材料とするため、バルク状の金属ガラスを必要とせず、その観点からも全ての金属ガラス材料に対して応用が可能である。
本発明に従えば、ナノスケールのデバイスを構築するのに不可欠なナノ構造体を、結晶すべり面がなく、組織構造の均一性に優れ、機械的強度、耐食性に優れた金属ガラス材料から構成することが可能となる。また、様々な機能性を持った金属ガラス材料の特性がナノサイズの構造体に引き継がれることが期待でき、既存の結晶質ナノ構造体とは全く異なるユニークな新実用ナノ材料となる。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種
々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】Pd基金属ガラスナノワイヤの走査電子顕微鏡像。1cm以上のナノワイヤがリボン状試料の先端に生成している。
【図2】(a)実験チャンバーの概略図。熱加熱フィラメントが直線導入機で水平移動しリボン試料に接触することが可能。(b)フィラメントがリボンに接触した様子。リボン下端におもりが固定され、その荷重によって垂直方向に歪みが印加される。(c)加工後は下側が切断されるので、熱源であるフィラメントから瞬時に分離でき急冷条件を実現できる。
【図3】(a)通電加熱法の概略図。(b)レーザー加熱法の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、金属ガラス材料からなる成形物、例えば、金属ガラス製リボンまたは細線に対して、歪みを加えながら過冷却液体状態まで急速加熱を実施して、その状態で加工を行い、加工終了時に伴う急速冷却によってナノワイヤにアモルファス状態の構造を保持せしめることを特徴としている。
当該生成されたナノワイヤは、透過電子顕微鏡を使用しての原子構造観測により、それがアモルファス状態のものであることの確認も実施されている。さらに当該ナノワイヤについて、その機械的測定も実施され、それがバルク金属ガラスと同等のヤング率を有することも確認されている。
【0015】
本明細書中、金属ガラス(metallic glass)〔ガラス合金(glassy alloy)ともいう〕とは、アモルファス合金〔amorphous alloy, アモルファス金属(amorphous metal)〕の一種であるが、ガラス転移点が明瞭に現れるものを指しており、このガラス転移点を境界として高温側にある過冷却液体領域を示す点で、従来のアモルファス合金とは区別されるものである。すなわち、金属ガラスの熱的挙動を、示差走査熱量計を用いて調べると、温度上昇にともないガラス転移温度(Tg)を過ぎると吸熱温度領域が現れ、結晶化温度(Tx)近傍で発熱ピークを示し、さらに加熱すると融点(Tm)で吸熱ピークが現れる。金属ガラスの組成成分によって各温度点は異なる。過冷却液体温度領域(ΔTx)は、ΔTx=Tx - Tgで定義され
、ΔTxが50〜130℃と非常に大きいことが、冷却液体状態の安定性が高く結晶化を回避し
アモルファス状態を維持できる。従来のアモルファス合金ではこのような熱的挙動は見られずTgが存在しない。
【0016】
バルク状の金属ガラスを作製するためには、過冷却液体状態の安定が要素であり、これを実現するための組成として、
(1)3成分以上の多元系であること、
(2)主要3成分の原子寸法比が互いに12%以上異なっていること、
(3)主要3成分の混合熱が互いに負の値を有していること、
が経験則として報告されている(A. Inoue, Stabilization of metallic supercooled liquid and bulk amorphous alloys, Acta Mater., 48, 279-306 (2000): 非特許文献11)。
金属ガラス材料の組成としては、様々な例が知られており、例えば、特開平3-10041号
公報〔特許文献1〕、特開平3-158446号公報〔特許文献2〕、特開平7-252559号公報〔特許文献3〕、特開平9-279318号公報〔特許文献4〕、特開2001-254157号公報〔特許文献
5〕、特開2001-303218号公報〔特許文献6〕、特開2004-42017号公報〔特許文献7〕、
特開2007-92103号公報〔特許文献8〕、特開2007-247037号公報〔特許文献9〕、特開2007-332413号公報〔特許文献10〕、特開2008-1939号公報〔特許文献11〕、特開2008-24985
号公報〔特許文献12〕、米国特許第5429725号明細書〔特許文献13〕などに開示のものを
参照できる。
【0017】
金属ガラスとしては、Ln-Al-TM、Mg-Ln-TM、Zr-Al-TM(ここで、Lnは希土類元素、TMは遷移金属を示す)系等が見出されているのをはじめとして、最近までに数多くの組成が報告されている。ガラス合金としては、Mg基、希土類金属基、Zr基、Ti基、Fe基、Ni基、Co基、Pd基、Pd-Cu基、Cu基、Al基などのバルクガラス合金が包含されてよい。
過冷却液体領域の温度幅が広く、加工性に優れるアモルファス合金として、XaMbAlc (X: Zr, Hf、M: Ni, Cu, Fe, Co, Mn、25≦a≦85、5≦b≦70、0≦c≦35)が知られており、例えば、特開平3-158446号公報などを参照することができる。
【0018】
Zr基金属ガラスは、合金の中でZrを他の元素よりも多く含有し、Zr以外に、第4族元素(例えば、Zr以外のTi, Hfなど)、第5族元素(例えば、V, Nb, Taなど)、第6族元素(例えば
、Cr, Mo, Wなど)、第7族元素(例えば、Mnなど)、第8族元素(例えば、Feなど)、第9族元
素(例えば、Coなど)、第10族元素(例えば、Ni, Pd, Ptなど)、第11族元素(例えば、Cu, Agなど)、第13族元素(例えば、Alなど)、第14族元素(例えば、Siなど)、第3族元素(例えば、Y、ランタノイド元素など)などからなる群から選択された1種又は2種以上の元素を含有するものが挙げられる(元素の周期表は、IUPAC Nomenclature of Inorganic Chemistry, 1989に基づく、以下同様)。典型的な場合では、Zrの含有量は、Zr以外に含有せしめ
る元素によっても異なるが、合金全体に対して40質量%以上、好ましくは45質量%以上、より好ましくは45質量%以上である。具体的には、Zr50Cu40Al10(以下、下付数字は原子%を
示す)、Zr55Cu30Al10Ni5、Zr60Cu20Al10Ni10、Zr65Cu15Al10Ni10、Zr66Cu12Al8Ni14、Zr65Cu17.5Al7.5Ni10、Zr48Cu36Al8Ag8、Zr42Cu42Al8Ag8、Zr41Ti14Cu13Ni10Be22、Zr55Al20Ni25、Zr60Cu15Al10Ni10Pd5、Zr48Cu32Al8Ag8Pd4、Zr52.5Ti5Cu20Al12.5Ni10、Zr60Cu18Al10Co3Ni9等が挙げられる。これらの中でも、Zr50Cu40Al10、Zr65Cu15Al10Ni10、Zr48Cu32Al8Ag8Pd4、Zr55Cu30Al10Ni5等のZr基ガラス合金が特に好ましいものとして挙げられる

【0019】
金属ガラスとして、PdとPtとを必須元素とする金属ガラスが報告されており、例えば、特開平9-279318号公報などを参照することができる。また、金属ガラス材料としては、Ni72-Co(8-x)-Mox-Z20 (x=0, 2, 4又は6原子%、Z=メタロイド元素)が知られており、例え
ば、米国特許第5429725号明細書などを参照することができる。Pdの他、Nb, V, Ti, Ta, Zrなどの金属が水素透過性能を有することが知られており、このような金属を中心とする金属ガラスは、水素選択透過性を発揮し得る。
【0020】
さらに、金属ガラスとして、Nb-Ni-Zr系、Nb-Ni-Zr-Al系、Nb-Ni-Ti-Zr系、Nb-Ni-Ti-Zr-Co系、Nb-Ni-Ti-Zr-Co-Cu系、Nb-Co-Zr系や、Ni-V-(Zr,Ti)系、Ni-Cr-P-B系、Co-V-Zr
系、Cu-Zr-Ti系などが挙げられ、例えば、特開2004-42017号公報などを参照することができる。具体的には、Ni60Nb15Ti15Zr10、Ni65Cr15P16B4等のNb-Ni-Ti-Zr系ガラス合金、Ni-Cr-P-B系ガラス合金などが特に好ましいものとして挙げられる。
さらに、金属ガラスとしては、メタル−メタロイド(半金属)系金属ガラス合金、メタル−メタル系金属ガラス合金、ハード磁性系金属ガラス合金などが挙げられる。
金属元素としてFeを含有するメタル−メタロイド(半金属)系金属ガラス合金としては、例えばFe以外の他の金属元素と半金属元素(メタロイド元素)とを含有してなり、金属元素としてAl, Ga, In, Snのうちの1種または2種以上を含有し、半金属元素として、P,
C, B, Ge, Siのうちの1種または2種以上を含有するものなどが挙げられる。メタル−
メタル系金属ガラス合金の例としては、Fe, Co, Niのうちの1種又は2種以上の元素を主成分とし、Zr, Nb, Ta, Hf, Mo, Ti, Vのうちの1種又は2種以上の元素とBを含むものが挙げられる。
【0021】
本発明においては、好適な金属ガラスとして、金属ガラスが複数の元素から構成され、その主成分として少なくともFe, Co, Ni, Ti, Zr, Mg, Cu, Pdのいずれかひとつの原子を30〜80原子%の範囲で含有するものが挙げられる。さらに、第6族元素(Cr, Mo, W)を10〜40原子%、第14族元素(C, Si, Ge, Sn)を1〜10原子%の範囲で、各グループから少なくとも1種類以上の金属原子を組み合わせてもよい。また、鉄族元素に、目的に応じて、Ca, B,
Al, Nb, N, Hf, Ta, Pなどの元素が10原子%以内の範囲で添加されてあってもよい。これらの条件により、高いガラス形成能を有するものであってよい。
【0022】
金属ガラスの成分元素として、少なくともFeを含有するものは、耐食性が飛躍的に向上しており、好適なものがある。金属ガラス中のFe含有量としては、30〜80原子%が好適で
ある。Feが30原子%より少ない場合では耐食性が十分に得られず、また、80原子%より多い場合では金属ガラスの形成は困難である。より好ましいFe原子の割合は、35〜60原子%
である。上記の金属ガラス組成は安定なアモルファス相の金属ガラス層を形成すると同時に加工の低温化にも貢献し、均一なガラス組織と結晶質金属組織の層状構造を、形成することができる。好ましい組成としては、例えば、Fe43Cr16Mo16C15B10、Fe75Mo4P12C4B4Si1、Fe52Co20B20Si4Nb4、Fe72Al5Ga2P11C6B4等が挙げられる。
また、本発明において用いる金属ガラスの好適なものとして、Fe100-a-b-cCra TMb (C1-XBXPy )c〔ただし、式中、TM=V, Nb, Mo, Ta, W, Co, Ni, Cuの少なくとも一種以上、a,
b, c, x, yは、それぞれ5原子%≦a≦30原子%, 5原子%≦b≦20原子%, 10原子%≦c≦35原
子%, 25原子%≦a+b≦50原子%, 35原子%≦a+b+c≦60原子%, 0.11≦x≦0.85, 0≦y≦0.57〕で示される組成を有するものが挙げられる。当該金属ガラスは、例えば、特開2001-303218号公報などを参照できる。
【0023】
当該金属ガラスとしては、軟磁性Fe基金属ガラス合金であってよく、例えば、特開2008-24985号公報並びにそこで引用されている全ての特許文献及び参考文献を参照できる。軟磁性金属ガラス合金としては、例えば、Fe-(Al, Ga)-メタロイド系、(Fe, Co, Ni)-(Zr, Hf, Nb, Ta)-B系、(Fe, Co)-Si-B-Nb系、(Fe, Co)-Ln-B系、Fe-Si-B-P-(C)系などが包含
されてよい。また、硬磁性金属ガラス合金も知られており、そうした硬磁性金属ガラス合金としては、例えば、Fe-Nd-B系、Fe-Pr-B系、Fe-Pt-B系などが包含されてよい。
Co基金属ガラスとしては、例えば、特開2007-332413号公報並びにそこで引用されてい
る全ての特許文献及び参考文献を参照できる。Ni基金属ガラスとしては、例えば、特開2007-247037号公報並びにそこで引用されている全ての特許文献及び参考文献を参照できる
。Mg基金属ガラスとしては、例えば、特開平3-10041号公報、特開2001-254157号公報、特開2007-92103号公報並びにそこで引用されている全ての特許文献及び参考文献を参照できる。Ti基金属ガラスとしては、例えば、特開平7-252559号公報、特開2008-1939号公報並
びにそこで引用されている全ての特許文献を参照できる。
好ましい組成としては、例えば、Ti50Cu25Ni15Zr5Sn5、Mg50Ni30Y20等が挙げられる。
【0024】
本発明で、「ナノスケール」とは、三次元空間を表すディメンジョンx, y, zのうちの
少なくとも二つがナノサイズであることを意味する場合を指すものと理解してよく、ここで「ナノサイズ」とは1000ナノメートル(nm)以下の大きさのことを指しており、より好適には、500 nm以下の大きさ、ある場合には200 nm以下の大きさ、典型的には150 nm以下の大きさ、より典型的には120 nm以下の大きさ、さらなる典型では、100 nm以下の大きさ、さらには、80 nm以下の大きさ、ある場合の典型では70 nm以下の大きさ、別の場合には、60 nm以下の大きさ、さらには、55 nm以下の大きさ、あるいは、50 nm以下の大きさを指
すものであってよい。本発明で「ナノサイズ」とは、金属ガラスの種類に応じて1000nm以下の大きさの中から、様々なサイズとすることも可能であり、さらには、40 nm以下の大
きさとか、30 nm以下の大きさとか、20 nm以下の大きさとか、さらに小さい、10 nm以下
の大きさとか、5 nm以下の大きさのものも包含される。典型的には、本発明の金属ガラスナノワイヤでは、ワイヤの直径が上記「ナノサイズ」であることを指すと理解してよい。
以上から明らかなごとく、本発明の金属ガラスナノワイヤは、ディメンジョンの一つ、例えば、長さが上記ナノサイズ以上であってよく、例えば、1マイクロメートル(μm)以上の大きさであるものも包含される。
【0025】
本発明の金属ガラスナノワイヤは、様々な形状のものが包含されてよく、さらに、金属ガラスの種類により各種の形態のものが許容されるが、例えば、ナノスケールの、細線、ファイバー(ナノファイバー)、フィラメント、ロッド(ナノロッド)、シリンダー(ナノシリンダー)などが挙げられる。
本金属ガラスナノワイヤは、直線形、分岐形、ねじれ形、コイル形又はスパイラル形などのいずれであってもよいが、例えば、直線形、円柱状のものなどを挙げることができる。該金属ガラスナノワイヤの形状は、金属ガラスの種類により各種の形態のものにすることができるし、許容されるもので、例えば、細線の断面の形状は、円形、楕円形、西洋梨形など、適宜、任意の形状とすることもできるが、好適には円形又は楕円形のものである。
【0026】
当該金属ガラスナノワイヤにおいては、細線の直径は1000nm以下の大きさであり、典型的には、500 nm以下の大きさ、あるいは、200 nm以下の大きさ、ある場合には、150 nm以下の大きさあるいは120 nm以下の大きさ、具体的には100 nm以下の大きさや90 nm以下の
大きさ、さらには、85 nm以下の大きさや80 nm以下の大きさ、別の場合には、75 nm以下
の大きさあるいは70 nm以下の大きさ、より具体的には65 nm以下の大きさや60 nm以下の
大きさ、もっと典型的な場合では、55 nm以下の大きさや50 nm以下の大きさをもつもの、さらには、45 nm以下の大きさや40 nm以下の大きさ、あるいは、35 nm以下の大きさや30 nm以下の大きさ、また、20 nm以下の大きさ、さらには、15 nm以下の大きさ、さらに別の場合では、10 nm以下の大きさ、あるいは、5 nm以下の大きさをもつものが挙げられる。
該細線の直径は、金属ガラスの種類により各種のサイズとすることも可能であり、1000nm以下の大きさの中から、様々なサイズとすることも可能であり、例えば、10 nm以下の大
きさとか、5 nm以下の大きさのものも包含される。当該金属ガラスナノワイヤの細線長さとしては、1μm以上とすることも可能であり、5μm又はそれ以上、10μm又はそれ以上、20μm又はそれ以上、30μm又はそれ以上、50μm又はそれ以上のものも包含され、例えば、0.1mm又はそれ以上、0.25mm又はそれ以上、0.5mm又はそれ以上、1.0cm又はそれ以上のも
のも得られる。
【0027】
当該金属ガラスナノワイヤにおいては、アスペクト比(線材の径のサイズ対長さの比)は、適宜、任意の値のものとすることができるし、さらに、金属ガラスの種類により各種の値とすることも可能であり、例えば、1:75〜1:500,000の範囲、あるいは、1:100〜1:450,000の範囲、ある場合には、1:250〜1:400,000の範囲、別の場合では、1:500〜1:5,000
の範囲で選択することができる。
典型的な例では、本発明の金属ガラスナノワイヤのアスペクト比は、例えば、1:1,000
〜1:500,000の範囲、あるいは、1:2,000〜1:450,000の範囲、ある場合には、1:1,000〜1:400,000の範囲、別の場合では、1:2,000〜1:400,000の範囲で選択することができる。
別の具体的な態様では、本発明の金属ガラスナノワイヤのアスペクト比は、例えば、1:1,000〜1:10,000の範囲、あるいは、1:10,000〜1:450,000の範囲、ある場合には、1:1,000〜1:2,000の範囲、別の場合では、1:1,000〜1:5,000の範囲で選択することができる。
具体例の一つでは、本金属ガラスナノワイヤとしては、直径がおおよそ100〜500nmで、細線の長さがおおよそ75〜20,000μmのものが挙げられる。別の具体例では、本金属ガラ
スナノワイヤは、直径がおおよそ10〜100nmで、細線の長さがおおよそ100〜15,000μmの
ものが挙げられる。
【0028】
さらに、別の具体例の一つでは、本金属ガラスナノワイヤとしては、直径がおおよそ40〜120nmで、細線の長さがおおよそ500〜13,000μmのものが挙げられる。また、別の具体
例では、本金属ガラスナノワイヤは、直径がおおよそ40〜100nmで、細線の長さがおおよ
そ250〜13,000μmのものが挙げられる。さらなる具体例の一つでは、本金属ガラスナノワイヤとしては、直径がおおよそ100〜500nmで、細線の長さがおおよそ400〜7,500μmのも
のが挙げられる。また、別の具体例では、本金属ガラスナノワイヤは、直径がおおよそ35〜50nmで、細線の長さがおおよそ500〜14,000μmのものが挙げられる。また、さらなる具体例の一つでは、本金属ガラスナノワイヤとしては、直径がおおよそ60〜80nmで、細線の長さがおおよそ80〜150μmのものが挙げられる。また、別の具体例では、本金属ガラスナノワイヤは、直径がおおよそ80〜110nmで、細線の長さがおおよそ150〜450μmのものが挙げられる。
上記金属ガラスナノワイヤなどの線材の太さは、必ずしも全て同一である必要はなく、ある程度は大小であるものも包含されてよい。
【0029】
当該金属ガラスナノワイヤにおいては、細線の直径は1000nm以下の太さであり、典型的には100nm以下の太さをもつものが挙げられる。細線の長さは1cm以上とすることも可能であり、それ以上のものも包含される。アスペクト比は、適宜、任意の値とすることができる。これらのサイズは金属ガラスの高温の過冷却液体領域における粘性に依存するので、金属ガラスの種類により各種の値とすることが可能である。例えば、先端の直径が100nm
、元径が1000nmの場合、平均直径は550nmであるが、全長を1cmとした場合、アスペクト比は1:18,182となる。
【0030】
一つの具体的な態様では、本発明の金属ガラスナノワイヤは、リボン状または棒状の金属ガラスを、その端部で上下に固定せしめ且つその下端部を牽引することを可能とし、酸化を防止できる雰囲気中において、その下端部の牽引下、移動式熱加熱フィラメントを当該リボン状または棒状の金属ガラス試料に対し垂直に接触させ、金属ガラスを過冷却液体領域まで急速加熱せしめ、形成された金属ガラスナノワイヤを急速冷却することにより、当該ナノワイヤの金属ガラス状態を維持せしめて、製造することができる。別の具体的な態様では、本発明の金属ガラスナノワイヤは、リボン状または棒状の金属ガラスを、その端部で上下に固定せしめ且つその下端部を牽引することを可能とし、酸化を防止できる雰囲気中において、その下端部の牽引下、上下端に電極を固定し通電と破断直前に通電を遮断し、金属ガラスを過冷却液体領域まで急速加熱せしめ、形成された金属ガラスナノワイヤを急速冷却することにより、当該ナノワイヤの金属ガラス状態を維持せしめて製造することができる。さらに、一つの具体的な態様では、本発明の金属ガラスナノワイヤは、リボン状または棒状の金属ガラスを、その端部で上下に固定せしめ且つその下端部を牽引することを可能とし、酸化を防止できる雰囲気中において、その下端部の牽引下、当該リボン状または棒状の金属ガラス試料をレーザー加熱し、金属ガラスを過冷却液体領域まで急速加熱せしめ、形成された金属ガラスナノワイヤを急速冷却することにより、当該ナノワイヤの金属ガラス状態を維持せしめて製造することができる。
【0031】
より好ましい態様では、本発明の金属ガラスナノワイヤは、以下に説明する金属ガラスナノワイヤ製造装置を利用して、それを製造できる。
該金属ガラスナノワイヤ製造装置は、金属ガラス試料の酸化を防止できる雰囲気を達成する筐体、当該筐体内に配置されており且つリボン状または棒状の金属ガラスをその端部で上下に固定せしめる少なくとも二つの固定具、下端部の固定具を牽引する荷重付与装置、
(a) 当該リボン状または棒状の金属ガラス試料に対し垂直に接触させることのできる移動式熱加熱フィラメント、
(b)当該試料上下端の固定具に固定され且つ通電と通電の遮断のできる電極、又は
(c)当該リボン状または棒状の金属ガラス試料を加熱できるレーザー
のいずれか一を備え、金属ガラスを過冷却液体領域まで急速加熱せしめ、形成された金属ガラスナノワイヤを急速冷却することにより、当該ナノワイヤの金属ガラス状態を維持せ
しめて、金属ガラスナノワイヤを製造することができるものである。
【0032】
当該金属ガラスナノワイヤ製造装置に備えられた筐体は、排気口を備えており、該排気口を介して排気装置により、その内部に置いた加工用金属ガラス材料の周囲雰囲気を、実質的に真空環境とすることができる。したがって、当該筐体は、通常、当該分野で知られている真空室、減圧室などの筐体であってよい。該排気装置としては、減圧ポンプ、真空ポンプなどのが包含されてよく、排気口は当該排気装置に連結されている。該排気装置は、例えば、機械式真空ポンプ、運動量輸送式の真空ポンプ、例えば、金属製のタービン翼を持った回転体であるロータが高速回転し、気体分子を弾き飛ばすことによりガスを排気するポンプであるターボ分子ポンプ(ターボモレキュラーポンプ、Turbo Molecular Pump; TMP)などを包含するものであってよい。
【0033】
当該筐体は、その筐体内に配置されており且つリボン状または棒状の金属ガラスをその端部で上下に固定せしめる少なくとも二つの固定具、並びに出発金属ガラス材料の下端部の固定具を牽引する荷重付与装置を備えることができる。
当該金属ガラスナノワイヤ製造装置は、また、当該筐体内に配置された当該リボン状または棒状の金属ガラス試料に対し垂直に接触させることのできる移動式熱加熱フィラメント、当該試料上下端の固定具に固定され且つ通電と通電の遮断のできる電極、及び/又は、当該リボン状または棒状の金属ガラス試料を加熱できるレーザーを備えることができる。
前記加熱フィラメントとしては、例えば、タングステンフィラメントのコイルなどが挙げられ、加熱用電流供給回路により電力供給を受けているものであってよい。
出発の金属ガラス材料の下端部にかける荷重は、錘を利用した重力加重であってもし、牽引式の機械的な加重するものであってもよく、さらに、各装置の移動、温度制御、電流供給、パワーの賦与などは、制御装置によって行われるものであることもできる。
【0034】
以下に、具体的な装置を参照しながら、代表的な製造処理工程を説明する。
図2(a)には、試料をほぼ中心部に配置固定できるスペースを有している真空室を有し
ているほぼ円筒形のチャンバー型の装置が示されている。該装置には、排気口があり、ポンプでチャンバー内を実質的に真空状態にできる。かくして、重力荷重下における熱フィラメント接触法を図2(a)に示す。リボン状または線状金属ガラス試料の下端に重りを固
定して荷重を加え、上端はチャンバーの天井に固定した。真空中で予め熱せられたフィラメントをリボンに接触するまで水平に移動することにより局所的な急加熱を実現している〔図2(b)〕。表面酸化を抑えるため真空中で加熱を実施する。温度がガラス転移温度以
上に到達すると粘性流動変形によってリボンが切断されるが、局部的には図2(c)のような液体架橋状態が生じ、高温における試料の粘性率と荷重条件に依存してナノワイヤが生成される。リボン下側は熱源から瞬時に切り離されるので急冷条件が満たされ、その結果アモルファス相の維持が可能になる。
【0035】
通電加熱法を図3(a)に示す。リボン状試料上下端に電極を固定し、図2と同様に荷重
を加える。予備実験で、電圧を一定の割合で増加させた際の電流値を測定しておいて、適切な条件を選択するようにしてもよい。例えば、電力増加に伴い加熱温度が上昇するとリボン形状にくびれが発生した。更に電力が増加すると高温加熱による粘性低下が生じ破断に至るが、破断直前に電圧(電流)を遮断することによりナノワイヤが生成できる。
【0036】
レーザー加熱法を図3(b)に示す。ミリ秒からナノ秒以下までパルス幅を調整できるレ
ーザーは、急速加熱・冷却を実現できるので、結晶化の回避、即ちアモルファス相の維持という点から理想的な熱源である。また、照射領域内では均一な加熱を行うことができる。予備実験を実施したところ、大気中において金属ガラスリボンならびに径1ミリの棒状
試料に対してレーザー照射加熱に成功している。その結果、0.5〜4.0 msのパルス幅で0.5
〜20 Jの熱量を与えることにより試料が切断可能であることを確認している。従って、ナノワイヤ表面酸化を防止するため真空中で荷重を加えながら加熱を実施することでナノワイヤの作製が可能である。
【0037】
本金属ガラスナノワイヤは、ナノマテリアル(NMS)の鍵となる材料であり、電極材、モ
ーター材料、ナノエレクトリニクス材料、ナノ医療デバイス、ナノセンサー、オプティカル材料などとして有用である。金属ガラスナノワイヤは、例えば、磁気材料、セミコンダクターの配線、電極材などを含め、医療機器、ナノテクノロジー応用機器、磁気材料、エレクトリニクス機器などにおいて利用できる。本金属ガラスナノワイヤ、金属ガラスナノロッドなどは、その機械的強度が局所的な欠陥・転位に影響されず、ナノ領域において超高強度材料、超弾性伸び材料として有用である。
【0038】
金属ガラス、特にはバルク金属ガラスは、粘い金属であり、高い引張強度、大きな弾性限界値を示し、破壊強度も大きく、高靭性を示すなど、高硬度、高弾性で、非常に高強度の材料で、優れた耐食性、耐磨耗性を示す。金属ガラスは、低ヤング率を示し、平滑性、転写性も有する材料で、高比表面積材料でもあり、高透磁率、耐傷性もあり、磁性材料としても有望である。金属ガラスは、その優れた機械強度、耐食性、表面平滑性、精密鋳造性、超塑性などの優れた特性を生かし、それを電磁弁、アクチュエータ、スプリング部材、位置センサー、受信センサー、磁気センサー、張力センサー、歪センサー、トルクセンサー、圧力センサーなどの用途利用も期待され、内視鏡・ロータブレータ・血栓吸引カテーテルなどの医療機器、精密工学機器、産業用小型・高性能デバイスを含めた産業機器、検査ロボット、産業用ロボット、マイクロファクトリーなどへの応用も考えられている。
金属ガラス材料は、さらに、例えば、切削工具、バネ材料、高周波トランス、チョークコイル、高速機構部材、精密機械部品、精密光学部材、宇宙材料、電極材料、燃料電池部材、輸送機器部材、航空機部材、精密医療機器、原子力プラント、生体材料、化学プラントなどへの用途・適用が期待できる。したがって、金属ガラスナノワイヤなどは、上記金属ガラスの特性を生かす分野やマイクロマシーンや半導体・精密電子部品の分野など広範な分野での利用が期待される。
【0039】
ナノワイヤはナノ電子機械システム構築を行う際の重要な構成材料要素である。よって、金属ガラスの持つ超高強度、超弾性伸び、超軟磁性などの優れた特性を、ナノ領域で、本発明の金属ガラスナノワイヤなどを使用して活用することが可能であり、ナノ電子機械システムの基板材料としてのみでなく、ナノ磁気センサー、数cmまでの長さの金属ガラスナノワイヤなどでは先端医療器具に利用でき、例えば、ナノワイヤの径が100nm程度のも
のであれば人細胞と比較して十分に小さいので、痛みなどを伴わずに人体への侵入を可能にできるので、センサーとして患部からの直接的な診断や、周辺細胞に影響を及ぼすことなく患部細胞にのみ電流刺激を行って活性化したり、悪性腫瘍を破壊したりすることなども可能となる。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
【実施例1】
【0040】
図2に示された装置を使用して、金属ガラスナノワイヤの生産を試みた。図2に示された装置は、試料をほぼ中心部に配置固定できるスペースを有している真空室を有するほぼ円筒形のチャンバー型装置である。該装置には、排気口があり、ポンプでチャンバー内を
実質的に真空状態にできる。該装置は、重力荷重下における熱フィラメント接触法を実施できるものである。チャンバー内で、リボン状または線状金属ガラス試料の下端に重りを固定して荷重を加え、上端はチャンバーの天井に固定した。真空中で予め熱せられたフィラメントをリボンに接触するまで水平に移動することにより局所的な急加熱を実現している(図2(b))。表面酸化を抑えるため真空中で加熱を実施する。温度がガラス転移温度
以上に到達すると粘性流動変形によってリボンが切断されるが、局部的には図2(c)のような液体架橋状態が生じ、高温における試料の粘性率と荷重条件に依存してナノワイヤが生成される。リボン下側は熱源から瞬時に切り離されるので急冷条件が満たされ、その結果アモルファス相の維持が可能になる。
【0041】
本実施例で使用する金属ガラスリボン試料は、メルトスピニング法で調製された。
図2の装置において、真空チャンバー内に金属ガラスリボンの上下端を固定し、表1で示す条件にて、タングステンフィラメントを用いて加熱した。当該フィラメントを水平方向に移動せしめ、金属ガラスリボンに熱が伝わるように操作した。該リボン試料にかける荷重は、1.70gの重りを使用し、16.7mNの垂直の一定の荷重がかかるようにした。真空チ
ャンバー内は、ターボ分子ポンプを使用して排気処理して真空状態の雰囲気にせしめた。
フィラメントの温度は試料接触前に放射温度計(放射率0.35)用いて測定を行い、加熱温度が所定の温度になるように調整された。加熱されたフィラメントが試料に接触し、粘性流動による加工が行われる。その際、ガラス転移温度以上に急加熱されるが、加工の始まるガラス転移温度は素材合金組成によって異なる。
図2Cで示すように一度に数本の金属ガラスナノワイヤが得られた。この条件で得られた金属ガラスナノワイヤは、直径100nm、長さ0.5mm以上であった。
【0042】
【表1】

【0043】
Zr48Cu32Ag8Al8Pd4の金属ガラスナノワイヤは、走査電子顕微鏡(scanning electoron microscope; SEM)で観察したところ、一つの例では、長さが500マイクロメータ以上であり、直径がおおよそ数100 nm程度であり、一様な形態的特徴を示すものであり、そのナノワイヤの末端部には如何なる触媒クラスターも現れていなかった。また、エネルギー分散型X線分光分析装置(energy dispersive X-ray spectroscopy)で分析した結果、Zr, Cu, Al, Ag, Pdを含有していることが示され、出発試料の組成と同じであることが確認された。SEM観察で、おおよそ230 nm〜おおよそ290 nmの直径を有し、500マイクロメータ以上の長さを有する金属ガラスナノワイヤが得られていることが認められた。
【実施例2】
【0044】
実施例1と同様、図2に示された装置を使用して、Zr基金属ガラスナノワイヤの生産を
試みた。 本実施例で使用する金属ガラスリボン試料は、メルトスピニング法で調製された。フィラメントへの電力量は、0.23Wに下げて処理された。
Zr65Cu15Ni10Al10の金属ガラス組成において、加熱温度973Kにて直径60nmまで、長さ0.5mmまでの金属ガラスナノワイヤが得られた。
本金属ガラスナノワイヤは、SEMで観察したところ、上記サイズであり、一様な形態的
特徴を示すものであり、そのナノワイヤの末端部には如何なる触媒クラスターも現れていなかった。また、エネルギー分散型X線分光分析装置で分析した結果、出発試料の組成と同じであることが確認された。
【実施例3】
【0045】
これまでに以下の金属ガラス材料に対して、本発明における図2の手法を用いてナノワイヤ作製の実施に成功している。
(1)Pd基金属ガラス
Pd40Cu30Ni10P20の金属ガラス合金組成において、以下の条件にて処理し、以下の形状
のナノワイヤが得られた(図1)。
金属ガラスリボン形状:断面0.03×0.8 mm2、長さ約3 cm
荷重:152 mN
雰囲気:1.2×10-8 Torr以下の真空
フィラメントへの電力量:0.145 W
フィラメント温度(放射温度計により測定):450〜550℃
金属ガラスナノワイヤ
直径:最小で40 nm
長さ:最長で1.3 cm
【0046】
(2)Fe基金属ガラス
Fe76(Si0.3B0.5P0.2)24の金属ガラス合金組成において、以下の条件にて処理し、以下
の形状のナノワイヤが得られた。
金属ガラスリボン形状:断面0.03×0.8 mm2、長さ約3 cm
荷重:131 mN
雰囲気:5.4×10-8 Torr以下の真空
フィラメントへの電力量:0.364 W
フィラメント温度(放射温度計により測定):725〜775℃
金属ガラスナノワイヤ
直径:最小で70 nm
長さ:最長で100マイクロメータ
【0047】
(3)Au基金属ガラス
Au49Ag5.5Pd2.3Cu26.9Si16.3の金属ガラス合金組成において、以下の条件にて処理し、以下の形状のナノワイヤが得られた。
金属ガラスリボン形状:断面0.03×0.8 mm2、長さ約3 cm
荷重:243 mN
雰囲気:5.2×10-8 Torr以下の真空
フィラメントへの電力量:0.066 W
フィラメント温度(放射温度計により測定):約300℃
金属ガラスナノワイヤ
直径:最小で100 nm
長さ:最長で250マイクロメータ
【0048】
これらの金属ガラスナノワイヤは、SEMで観察したところ、上記サイズであり、一様な
形態的特徴を示すものであり、そのナノワイヤの末端部には如何なる触媒クラスターも現れていなかった。また、エネルギー分散型X線分光分析装置で分析した結果、出発試料の組成と同じであることが確認された。
実施例においてはサイズが幅0.8〜1mm、厚さ20〜50μm、長さ3cmのリボン状試料を用
いたが、これは実験を簡便に実行するためのサイズである。
Pd基金属ガラスを用いると、図1に示すような長さ1cm以上の金属ガラスナノワイヤ
が得られた。
【0049】
フィラメントの温度は試料接触前に放射温度計(放射率0.35)用いて測定を行い、加熱温度が500〜700℃になるように調整された。加熱されたフィラメントが試料に接触し、粘性流動による加工が行われる。その際、ガラス転移温度以上に急加熱されるが、加工の始まるガラス転移温度は素材合金組成によって異なる。例えば、Pd基金属ガラスで代表的なPd40Cu30Ni10P20のガラス転移温度は561 K 〔N. Nishiyama, A. Inoue, and J.Z. Jiang,
Appl. Phys. Lett. 78, 1985 (2001)〕であり、Zr基金属ガラスで代表的なZr65Al10Ni10Cu15では652 K 〔Y. Kawamura, T. Shibata, and A. Inoue, Appl. Phys. Lett. 71, 779
(1997)〕である。
【0050】
ナノワイヤ表面酸化防止と熱フィラメント維持のため、作製チャンバー雰囲気は10-8Torr以下の真空が望ましい。リボン試料下端には17〜243 mNの範囲の応力を印加したが、ナノワイヤ生成における応力依存性は確認できなかった。したがって、リボン状試料がフィラメントに対して垂直接触を可能とするような配置を与える程度の応力で構わない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の技術は、産業上、次のような利用可能性を有している。
バルク金属ガラスは、高い引張強度、大きな弾性限界値、大きな破壊強度、高靱性、低ヤング率、耐食性を示すので、これらの特性を引き継いだナノ構造体は、MEMSやナノエレクトロ機械システム(NEMS)の軸となる材料である。例えば、Zr基金属ガラスナノワイヤは、圧力センサー、精密工学機器部品、産業小型。高性能デバイスを含めた産業機器、産業ロボット、マイクロ・ナノファクトリーなどへの応用も考えられる。
【0052】
水素吸蔵性のあるMgやPdアモルファス合金を水素感応体の部材として水素センサーに利用する技術が公開されている(特開2005-256028号)。Pd基金属ガラスナノワイヤを水素
センサーの感応体として利用すれば高感度、微量水素濃度測定、小型サイズ化が期待でき、水素エネルギー活用の際の安全利用に貢献できる。またPdの高い水素触媒作用を利用した水素発生装置の応用も考えられる。
【0053】
Fe、Ni、Coから構成されるアモルファススパッタ膜は高感度の磁気インピーダンス素子としての報告されている(特開2000-292506)。Fe基金属ガラスは、同様な磁気センサー
としての軟磁性特性を持ち、この材料でナノワイヤが作製されるとさらに超高感度、超小型磁気センサーへの応用が期待できる。更に、Au基金属ガラスナノワイヤでは、Auの合金比率が約50%であるため、高い伝導率が期待できナノサイズの半導体デバイス上のワイヤボンデングにおけるリード線としての応用が期待できる。
【0054】
上記のマイクロマシンや半導体・精密電子部品・センサー部品の他に、金属ガラスの特性を活かす生体材料などの分野など広範囲な分野での利用が期待される。本発明は実施例に特に記載した合金組成以外にも実行できることは明白であり、ナノワイヤにおいて低ヤング率特性を保持する事実から弾性変形領域が広く、フレキシブルな変形が可能である。
【0055】
本発明により製造される金属ガラスナノワイヤなどは、金属ガラスの優れた特性、例えば、優れた機械強度、耐食性、表面平滑性、精密鋳造性、超塑性などを生かし、それを位置センサー、受信センサー、電磁弁、磁気センサー、圧力センサーなどの用途利用に適用可能で、内視鏡・ロータブレータ・血栓吸引カテーテルなどの医療機器、精密工学機器、産業用小型・高性能デバイスを含めた産業機器、検査ロボット、産業用ロボット、マイクロファクトリーなどへの応用も期待できる。本発明の金属ガラスナノワイヤなどは、上記金属ガラスの特性を生かす分野やマイクロマシーンや半導体・精密電子部品の分野など、そして電極材、モーター材料、ナノエレクトリニクス材料、ナノ医療デバイス、ナノセン
サー、オプティカル材料などとして有用で、例えば、磁気材料、セミコンダクターの配線、電極材などを含め、医療機器、ナノテクノロジー応用機器、磁気材料、エレクトリニクス機器など広範な分野での利用が期待される。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ガラスで構成され、ディメンションの少なくとも1つがナノサイズであり、かつ全長が75マイクロメータ(μm)以上であることを特徴とする金属ガラスナノワイヤ。
【請求項2】
直径が、1000nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属ガラスナノワイヤ。
【請求項3】
直径が、100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属ガラスナノワイヤ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一に記載の金属ガラスナノワイヤを製造するための製造方法であって、
リボン状または棒状の金属ガラスを、その端部で上下に固定せしめ且つその下端部を牽引することを可能とし、酸化を防止できる雰囲気中において、その下端部の牽引下、
(a)移動式熱加熱フィラメントを当該リボン状または棒状の金属ガラス試料に対し垂直
に接触させる、
(b)上下端に電極を固定し通電と破断直前に通電を遮断する、又は
(c)当該リボン状または棒状の金属ガラス試料をレーザー加熱する、
のいずれか一を施し、金属ガラスを過冷却液体領域まで急速加熱せしめ、形成された金属ガラスナノワイヤを急速冷却することにより、当該ナノワイヤの金属ガラス状態を維持せしめて、請求項1〜3のいずれか一に記載の金属ガラスナノワイヤを製造することを特徴とする金属ガラスナノワイヤ製造方法。
【請求項5】
酸化を防止できる雰囲気が、真空であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一に記載の金属ガラスナノワイヤを製造するための製造装置であって、
金属ガラス試料の酸化を防止できる雰囲気を達成する筐体、当該筐体内に配置されており且つリボン状または棒状の金属ガラスをその端部で上下に固定せしめる少なくとも二つの固定具、下端部の固定具を牽引する荷重付与装置、
(a) 当該リボン状または棒状の金属ガラス試料に対し垂直に接触させることのできる移動式熱加熱フィラメント、
(b)当該試料上下端の固定具に固定され且つ通電と通電の遮断のできる電極、又は
(c)当該リボン状または棒状の金属ガラス試料を加熱できるレーザー
のいずれか一を備え、金属ガラスを過冷却液体領域まで急速加熱せしめ、形成された金属ガラスナノワイヤを急速冷却することにより、当該ナノワイヤの金属ガラス状態を維持せしめて、請求項1〜3のいずれか一に記載の金属ガラスナノワイヤを製造することができることを特徴とする金属ガラスナノワイヤ製造装置。
【請求項7】
酸化を防止できる雰囲気が、真空であることを特徴とする請求項6に記載の製造装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−229546(P2010−229546A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36870(P2010−36870)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】