説明

金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造

【課題】金属サイディング材に、嵌合連結の作業性や水密性を確保できるとともに、他方に剥離性を付与して施工時の手直しが簡単にできる嵌合連結部の水密構造を提供する。
【解決手段】一端に凸状連結部12を備え他端に凹状連結部13を備えて互いを嵌合連結可能に構成した金属サイディング材10の嵌合連結部の水密構造20で、凹状連結部13に、ホットメルト塗工可能で0℃における50%圧縮応力を1.5kg/cm2以下とする柔軟性を付与したエラストマーによるパッキン21を設け、凸状連結部12には剥離処理23を施して構成する。この水密構造20でパッキン21とすることにより、欠損を生じたり、工数の増大を招くこと防止する。また柔軟性を付与して嵌合連結の作業性と水密性を確保される。さらに、剥離処理23で、剥離性を付与し、金属サイディング材10同士を連結した後の取り外しなどの手直しが簡単にできるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造に関し、住宅や店舗、倉庫などの外壁材として用いられる金属サイディング材の嵌合連結部の一方にパッキンをホットメルト塗工を可能として水密性および嵌合性を確保するとともに、他方に剥離処理を施して施工時の手直しが簡単にできるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
金属サイディング材は、例えばガルバリウム鋼板に代表される厚さ約0.1〜0.5mmの金属鋼板を表面材とし、冷間フォーミングにより一端に凸状連結部を形成するとともに、他端に凹状連結部を形成して互いを嵌合連結できるようにし、さらに中間を樋状部に成形して、その中に発泡性液状硬質ウレタン材料を注入した後、冷間フォーミングした裏面鋼板を裏面材として発泡と同時に貼り合せることにより製造される製品厚さが10〜50mmの硬質ウレタンフォームを芯材として両面を鋼板で被覆した構造のパネルである。
この金属サイディング材は、例えば建物の躯体に設けた桟木上に隣り合うパネル同士の凸状連結部と凹状連結部を嵌合して外壁を構築するのに用いられ、断熱性と簡易施工性および乾式施工による工期短縮などの特徴を活かして、住宅や店舗、倉庫などの商業施設の外壁材として普及しつつある。
【0003】
このような金属サイディング材では、嵌合連結する凹凸状連結部の形状による水密性の確保に加え、台風や強風雨の際の嵌合連結部からの漏水対策として、嵌合連結部に発泡合成樹脂パッキンを設けたものが多く使用されている。
この発泡合成樹脂パッキンは、水密性および施工時の嵌合作業性を考慮して、柔軟性に富んだものとされ、例えば特許文献1に開示されているように、紐状とされる。
そして、金属サイディング材への取り付けは、金属サイディング材の製造工程中で、製造ラインを搬送される凹状連結部に発泡合成樹脂パッキンを張力を加えながら押し込むようにして行われる。
【0004】
【特許文献1】特公平7−9112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紐状の発泡合成樹脂パッキンを金属サイディング材の凹状連結部に張力を加えて押し込んだ後、金属サイディング材とともに、裁断すると、張力で伸ばされた発泡合成樹脂パッキンが内部歪の解放によって収縮し、両端部に欠損が生じてしまうという問題がある。
そこで、発泡合成樹脂パッキンの紐径を太くしたり、粘着剤や接着剤で固定することが行われているが、工数の増大を招いたり、コストの増大を招き好ましくない。
また、紐状にすることなく、凹状連結部に直接塗工することができるホットメルトを用いてパッキンとすることが考えられるが、発泡合成樹脂パッキンのような柔軟性を得ようとすると、粘着力が強くなり、施工の際に一旦嵌合連結した後、位置調整などの手直しのために連結を外そうとすると、強い粘着力で簡単に外せないばかりか、大きな力で外そうとすると、凹状連結部からホットメルトが剥離して凸状連結部と一緒に外れ、位置調整などの手直しができないなどの問題がある。
【0006】
この発明は、かかる従来技術の問題点と現状に鑑みてなされたもので、金属サイディング材の嵌合連結部の一方にパッキンをホットメルト塗工で簡単に設けることができ、柔軟性による嵌合連結の作業性や水密性を確保できるとともに、他方に剥離性を付与して施工時の手直しが簡単にできる金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術が有する課題を解決するこの発明の請求項1記載の金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造は、一端に凸状連結部を備え他端に凹状連結部を備えて互いを嵌合連結可能に構成した金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造であって、前記凸状連結部が嵌合連結される前記凹状連結部に、ホットメルト塗工可能で0℃における50%圧縮応力を1.5kg/cm2以下とする柔軟性を付与したエラストマーによるパッキンを設け、前記凸状連結部には、前記嵌合連結部を再嵌合可能とする剥離処理を施して構成してなることを特徴とするものである。
【0008】
また、この発明の請求項2記載の金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造は、請求項1記載の構成に加え、前記剥離処理を、液状処理剤または粉末状処理剤のいずれかを用いて塗工して構成したことを特徴とするものである。
【0009】
さらに、この発明の請求項3記載の金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造は、請求項2記載の構成に加え、前記液状処理剤を、合成樹脂と有機溶剤とからなる溶液、或いは合成樹脂と水とを乳化剤を使用して乳化させたエマルジョン溶液に剥離剤を添加したもので構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の請求項1記載の金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造によれば、一端に凸状連結部を備え他端に凹状連結部を備えて互いを嵌合連結可能に構成した金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造であって、前記凸状連結部が嵌合連結される前記凹状連結部に、ホットメルト塗工可能で0℃における50%圧縮応力を1.5kg/cm2以下とする柔軟性を付与したエラストマーによるパッキンを設け、前記凸状連結部には、前記嵌合連結部を再嵌合可能とする剥離処理を施して構成したので、嵌合連結部の一方にホットメルト塗工が可能なエラストマーによるパッキンとすることで、欠損を生じることを防止できる。さらに、ホットメルト塗工とすることで、工数の増大を招くことなく凹状連結部に設けることができる。また、パッキンの0℃における50%圧縮応力を1.5kg/cm2以下とすることで、柔軟性を付与して嵌合連結の作業性と水密性を確保することができる。さらに、嵌合連結部の他方の凸状連結部に剥離処理を施すことで、剥離性を付与することができ、金属サイディング材を一旦嵌合連結した後の取り外しなどの手直しを簡単に行うことができる。
【0011】
また、この発明の請求項2記載の金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造によれば、前記剥離処理を、液状処理剤または粉末状処理剤のいずれかを用いて塗工して構成したので、液状処理剤や粉末状処理剤の塗工によって簡単に剥離処理を施すことができ、金属サイディング材の製造工程中に塗工することで、別工程での作業の必要もなく、効率的に処理することができる。
【0012】
さらに、この発明の請求項3記載の金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造によれば、前記液状処理剤を、合成樹脂と有機溶剤とからなる溶液、或いは合成樹脂と水とを乳化剤を使用して乳化させたエマルジョン溶液に剥離剤を添加したもので構成したので、このような液状処理剤によっても嵌合連結部の他方の凸状連結部に剥離性を付与することができ、金属サイディング材を一旦嵌合連結した後の取り外しなどの手直しを簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1および図2はこの発明の金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造の一実施の形態にかかり、図1は金属サイディング材の正面図、凸状連結部の拡大図および凹状連結部の拡大図、図2は表裏を反転したパッキンの塗工状態の凹状連結部および凸状連結部の部分断面図および嵌合連結状態の部分断面図である。
【0014】
この金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造20が適用される金属サイディング材10は、例えば、図1に外壁としての使用状態で示すように、ガルバリウム鋼板に代表される厚さ約0.1〜0.5mmの金属鋼板を表面材11とし、冷間フォーミングにより一端(図中、右端)に凸状連結部12を形成するとともに、他端(図中、左端)に凹状連結部13を形成して互いを嵌合連結できるようにしてある。さらに、この表面材11には、中間に必要に応じて形成される意匠とともに、樋状部14を成形して、反転状態の樋状部14の中に芯材15となる発泡性液状硬質ウレタン材料を注入した後、冷間フォーミングした裏面鋼板の裏面材16と、発泡する芯材15の形状を保持するとともに、熱伝導を抑える紙などの押え材17とを発泡と同時に貼り合せることにより構成される。
このように製造される金属サイディング材10は、製品厚さが10〜50mmの硬質ウレタンフォームを断熱芯材とし、表裏両面が鋼板の複合構造の断熱パネルとなる。なお、この金属サイディング材は、外装材として用いられるほか、畜舎や倉庫などの内装材として用いることもでき、壁面を水や薬剤などで洗浄することができる。
【0015】
この金属サイディング材10の嵌合連結部を構成する凸状連結部12は、先端が尖った曲面とされて断面形状が略V字状の凸部12aとされ、凹状連結部13の凹部13aは、平行部と円形部とで入口側より内部が広がった略鍵穴状としてあり、凹部13aに凸部12aを挿入して嵌合連結することで、凸部12aの上側の略垂直に近い立面と凹部13aの入口側の略垂直に近い立面とが密着するようにしてある。また、嵌合連結によって金属の表面材11と裏面材16とが直接接触しないように成形してあり、こうすることで、直接熱伝導が起こらず、ヒートブリッジによる断熱性低下を招かないようにしてある。
【0016】
この発明の金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造20では、金属サイディング材10の凸状連結部12と凹状連結部13とを密着させて水密状態とするのに加えて一層完全な水密状態を確保すると同時に、金属サイディング材10同士を一旦嵌合連結しても位置調整などの手直しのため外して再嵌合できるようにしてある。
このため金属サイディング材10の嵌合連結部の一方である凹状連結部13の凹部13aにパッキン21を設け、他方の凸状連結部12には、再嵌合可能とする剥離性を付与する剥離処理23が施される。
ここで、凸状連結部12における再嵌合を可能とする剥離性とは、手直しなどのため嵌合連結した状態の金属サイディング材10の凸部12aをパッキン21を設けた凹部13aから引っ張った場合に、1〜2名作業で然程労力を要することなく剥離処理23によって凸部12aにパッキン21が全く付着せずに外すことができる状態となることをいう。
【0017】
この金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造20に用いるパッキン21は、ホットメルト塗工可能なエラストマーで構成され、このエラストマーは、0℃における50%圧縮応力を1.5kg/cm2以下とする柔軟性を付与して構成したものである。
このパッキン21の0℃における50%圧縮応力が1.5kg/cm2を超えると、特に冬季における現場施工の際に、パッキン21が硬くなり、凹部13aと凸部12aを嵌合連結する時の凸部12aの押し込みにかなりの労力を要し、嵌合性(作業性)が著しく悪くなるとともに、水密性も悪くなる。
【0018】
このようなパッキン21によれば、ホットメルト塗工が可能なエラストマーとすることで、塗工すべき凹部13aに塗工されない欠損が生じることを防止できる。さらに、金属サイディング材10の製造工程中に塗工することで、塗工を別工程とする必要をなくして工数の増大を招くことなく凹状連結部13に設けることができる。また、パッキン21の0℃における50%圧縮応力を1.5kg/cm2以下とすることで、柔軟性を付与して嵌合連結の作業性と水密性を確保することができる。
【0019】
このパッキン21として用いるホットメルト塗工可能なエラストマーは、熱可塑性エラストマーや反応性エラストマーを用いることができ、エラストマー自体の0℃に於ける50%圧縮応力が1.5kg/cm2以下であれば、通常使用されるものが使用できる。
【0020】
例えば、熱可塑性エラストマーとしては、天然ゴムの他、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、フッ化ビニリデンゴム(FKM)及びテトラフルオロエチレン-プロピレン系ゴム、テトラフルオロエチレンパーフルオロビニルエーテル系ゴム(FFKM)等のフッ素系ゴム、ビニルメチルシリコーンゴム(VMQ)及びフッ素化シリコーンゴム(FVMQ)等のシリコーンゴム、アクリルゴム(ACM)、ポリエステルポリオール系ウレタンゴム(AU)及びポリエーテルポリオール系ウレタンゴムなどのウレタンゴム、EPM及びEPDMなどのエチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム(CR)、クロルスルフォン化ポリエチレン(CSM)、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)、ブタジエンゴム(BR)、多硫化ゴム(T)、ノルボルネンゴム(NOR)等の合成ゴム、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、プロピレン‐エチレン‐ブテン‐1のランダム共重合樹脂、スチレン‐ブタジエン-スチレンブロック共重合樹脂(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合樹脂(SIS)等のエラストマーやそれらの共重合樹脂等を挙げることができる。
【0021】
反応性エラストマーとしては、シリコーン樹脂系やウレタン樹脂系等が適しており、ウレタン樹脂系では、ポリエステルやポリカーボネート、ポリエーテル、カプロラクトン等のポリオールを主骨格とするイソシアネート基末端のウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
【0022】
そして、これらの熱可塑性エラストマーや反応性エラストマーは単独でも、また2種類以上を混合して使用することも出来る。
【0023】
さらに、それぞれの熱可塑性エラストマーや反応性エラストマーには、必要に応じて、ジオクチルフタレート、エチレングリコールジベンゾエート、ブチルフタリルブチルグリコレート、ブチルベンジルフタレール、リン酸クレジルフェニル、トルエンスルホンアミド、N-エチルトルエンスルホンアミド、水添ターフェニル等の可塑剤、熱安定剤、老化防止剤、光安定剤、反応促進剤、プロセスオイル、充填剤、付粘剤、粘着付与樹脂、界面活性剤、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カスターワックス、カルナバワックス、ライスワックス、流動パラフィン、塩素化パラフィン等のワックス類、各種合成樹脂等の1種類乃至複数種類をそれぞれの特性向上のために適宜添加することもできる。
【0024】
このようなパッキン21を用いる金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造20では、予めエラストマーおよび必要な添加剤を選択して、これらの種類に応じた所定の配合に基づいてブロック状(固形状)のエラストマー組成物(パッキン組成物)を用意する。
そして、金属サイディング材10の製造工程で、搬送されてくる金属サイディング材10の反転状態の凹状連結部13の凹部13a内にホットメルト状態のパッキン21を塗工することで設ける。
【0025】
すなわち、ブロック状エラストマー組成物をホットメルト溶融塗工設備のメルターに投入し、150〜300℃、例えば約220℃に加熱して溶融し、定量供給ポンプで溶融状態のパッキン21を、ホースを介して自動ガンや塗工ノズル22へ輸送し、図2(a)に示すように、例えば塗工ノズル22から金属サイディング材10の反転状態の凹部13aの下部内面上に横断面形状が概ね円形状乃至は楕円形状となるように連続して塗工する。そして、金属サイディング材10の裁断の際にパッキン21も裁断され、パッキン21が各金属サイディング材10の凹部13aに設けられる。このパッキン21は冷却され、あるいは反応性エラストマーにおける反応によって、必要な柔軟性と嵌合作業性を備えたものとなる。
【0026】
一方、この金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造20では、金属サイディング材10の凸状連結部12の凸部に剥離処理23を施すことで、混合連結部の相手方となる凹状連結部13の凹部13に設けたパッキン21であるエラストマーの基本的に柔軟性に優れる粘着力を低下させ、現場施工時の金属サイディングの位置の手直し作業、即ち、一度嵌合した金属サイディングの位置を直すために嵌合を外す際に容易に外すことが出来る機能を付与できるようにする。
このため金属サイディング材10の凸状連結部12に施す剥離処理23は、嵌合連結状態を容易に解放できる処理であればどのような処理であっても良く、例えば剥離処理剤を用い、塗工することで処理することができる。
【0027】
このような剥離性を付与するための剥離処理23に使用する処理剤としては、その形態は液状でも粉末状でも良く、例えば、液状処理剤としては、四フッ化エチレン(PTFE)、パーフルオロアルキル基含有オリゴマーやポリマー等を主成分とするフッソ樹脂系離型剤、ジメチルポリシロキサンやアルキル変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アミノ酸変性シリコーン等のシリコーンオイル、各種シリコーン樹脂、各種シリコーンゴム等のシリコーンオイルやシリコーン樹脂系離型剤、ステアリン酸やパルミチン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、カルナバワックスやライスワックス等の天然ワックス、パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス、イソパラフィンワックス、酸化ペトロラタム、酸化ペトロラタム金属塩、酸化ワックスエステル、ウレタン型ワックス等の石油ワックス、ポリエチレンワックス、アクリル系ワックスポリマー等の剥離剤をそのまま使用するか、或いは有機溶剤や水等に溶解した溶液、必要に応じて乳化剤を使用して乳化したエマルジョンとした溶液に添加して使用することが出来る。これらの液状処理剤は単独又は2種類以上を混合して使用することが出来る。
【0028】
また、液状処理剤としては、合成樹脂と有機溶剤とからなる溶液、或いは合成樹脂と水とを乳化剤を使用して乳化させたエマルジョン溶液等に上記の剥離剤を添加したものを使用することも出来る。
合成樹脂としては、一般に使用されるものが使用でき、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂、塩化ビニル-エチレン共重合樹脂、塩化ビニル-ウレタン共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル-アクリル共重合樹脂、ウレタン-アクリル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、MBS、SBR、MSBR、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の合成樹脂溶液や合成樹脂エマルジョン、ラテックスが使用出来る。これらの合成樹脂溶液や合成樹脂エマルジョン、ラテックスは、単独または2種類以上を混合して使用することができる。
このような合成樹脂に剥離剤を添加する場合の合成樹脂と剥離剤との質量比は、基本的には、凹状連結部13の凹部13aに塗工されているエラストマーによるパッキン21の粘着力を低減し、施工時の手直し作業を容易にできる量であれば良く、パッキン21としてのエラストマーの種類や粘着力及び添加する剥離剤の種類により変化するが、概ね合成樹脂に対して剥離剤を1〜200質量%、好ましくは10〜100質量%添加するのが好ましい。剥離剤の添加量が1質量%を下回ると粘着力低減効果が弱く、施工時の手直し作業性が悪くなり、200質量%を超えると性能上の問題は特にないが、コスト高となり好ましくない。
【0029】
この液状処理剤を使用して凸部12aに剥離処理23を施す方法としては、通常の塗工手段が適用でき、例えばロールコーター、スプレイ塗装、刷毛塗り、ノズルからの塗布等で凸状連結部12に剥離処理することができる。
【0030】
また、粉末状処理剤としては、少なくとも現場施工の時まで前記柔軟性に優れるエラストマーによるパッキン21と凸部12aとの間に介在し、エラストマーであるパッキン21の粘着を防止することができれば良いことから、有機または無機の微粉末を設けることで、パッキン21と凸部12aとの間に微粉末が介在し、これによってパッキン21の粘着力が及ばないようする。
このような粉末状処理剤の微粉末の粒度は概ね100μm以下が好ましく、100μmを超えると凸部12aに付着し難くなるとともに、粉末粒子の自重で凸部12aより脱落し易くなる
【0031】
剥離処理23に用いることができる有機系微粉末としては、各種合成樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸粉末、でんぷん粉末、小麦粉等を挙げることができる。
また、剥離処理23に用いることができる無機系微粉末としては、微粉末シリカ、炭酸カルシウムやタルク、水酸化アルミ、酸化アルミ等の無機充填剤微粉末、アルミニウムや鉄等の金属微粉末等を挙げることができる。
これらの粉末状処理剤は単独又は2種類以上を混合して使用することもできる。
【0032】
このような粉末状処理剤を使用して凸部12aに剥離処理23を施す方法は、通常の粉末塗装手段が適用でき、例えば、散布、スプレイ塗装、刷毛塗り等により凸状連結部12に剥離処理することができる。
すなわち、金属サイディング材10の凸状連結部12への剥離処理23は、図2(b)に示すように、例えば塗工ノズル24から金属サイディング材10の反転状態の凸部12aの先端から下面に連続して塗工することで剥離処理23が行われる。そして、金属サイディング材10の裁断の際に剥離処理23が施された部分も裁断され、各金属サイディング材10の凸部12aの全長に剥離処理23が施され、必要に応じて溶剤を用いた場合には、これを加熱するなどで蒸発させることで、剥離処理剤のみが塗工された状態となり、パッキン21に対する必要な剥離性を付与することができる。
【0033】
こうして凹状連結部13の凹部13aにパッキン21が設けられるとともに、凸状連結部12の凸部12aに剥離処理23が施された金属サイディング材10は、施工現場に輸送され、建物の駆体に設けた桟木上に固定した金属サイディング材10の凸状連結部12の凸部12aに次の金属サイディング材10の凹状連結部13の凹部13aを挿入して嵌合連結する。
この嵌合連結の際には、パッキン21の柔軟性によって挿入抵抗が小さく、嵌合作業を容易にできるとともに、この嵌合連結状態では、図2(c)に示すように、凸部13aの上面と凹部13aの上部内面との間にパッキン21が押しつぶされるように密着して、水密状態が確保される。
また、金属サイディング材10同士の嵌合連結後の手直しの際には、凸状連結部12の凸部12aの先端から上面に剥離処理23が施してあるので、パッキン21と粘着せず、一旦嵌合した直後に位置調整などの手直しのため嵌合連結を外そうとすると、凸部12aにパッキン21が全く付着することなく、外すことができ、手直しを容易に行うことができる。
【0034】
以上、説明したように、この金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造20によれば、一端に凸状連結部12を備え他端に凹状連結部13を備えて互いを嵌合連結可能に構成した金属サイディング材10の嵌合連結部の水密構造20で、凸状連結部12が嵌合連結される凹状連結部13に、ホットメルト塗工可能で0℃における50%圧縮応力を1.5kg/cm2以下とする柔軟性を付与したエラストマーによるパッキン21を設け、凸状連結部12には、嵌合連結部を再嵌合可能とする剥離処理23を施して構成したので、嵌合連結部の一方にホットメルト塗工が可能なエラストマーによるパッキン21とすることで、欠損を生じることを防止できる。さらに、ホットメルト塗工により工数の増大を招くことなく凹状連結部13にパッキン21を設けることができる。
また、パッキン21の0℃における50%圧縮応力を1.5kg/cm2以下としたので、柔軟性を付与して嵌合連結の作業性と水密性を確保することができる。
さらに、嵌合連結部の他方の凸状連結部12に剥離処理23を施すことで、剥離性を付与することができ、金属サイディング材10同士を一旦嵌合連結した後の取り外しなどの手直しを簡単に行うことができる。
【0035】
また、この金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造20によれば、剥離処理23を、液状処理剤または粉末状処理剤のいずれかを用いて塗工して行うようにしたので、液状処理剤や粉末状処理剤の塗工によって簡単に凸部12aに剥離処理23を施すことができ、金属サイディング材10の製造工程中に塗工することで、別工程での作業の必要もなく、効率的に剥離処理23を行うことができる。
【0036】
さらに、液状処理剤として、合成樹脂と有機溶剤とからなる溶液、或いは合成樹脂と水とを乳化剤を使用して乳化させたエマルジョン溶液に剥離剤を添加したものを使用することもでき、このような液状処理剤によっても嵌合連結部の他方の凸状連結部に剥離性を付与することができ、金属サイディング材を一旦嵌合連結した後の取り外しなどの手直しを簡単に行うことができる。
【0037】
なお、上記の実施の形態では、パッキン21を塗工する際に、反転状態の凹部13aの下部内面上に塗工するようにしたが、金属サイディング材10の凸部12aと凹部13aとの間に位置して密着状態にできれば良く、例えば図3(a)に示すように、凹部13aの中央内面にパッキン21を塗工することもできる。
そして、この場合には、嵌合連結部の他方の凸状連結部12の凸部12aに施す剥離処理23も、パッキン21と粘着しない剥離性を付与できるようにすれば良く、図3(b)に示すように、凸状連結部12の凸部12aの先端から上下面のパッキン21と接触する範囲に剥離処理23を施すようにする。
このような金属サイディング材10同士の嵌合連結部の嵌合連結状態では、図3(c)に示すように、凸部13aの先端上下面が凹部13aの中央部のパッキン21に入り込んで包まれるようにして密着状態が確保されるとともに、パッキン21には、剥離処理23された凸部12aが接触することで、剥離性が確保される。
これにより、この金属サイディング材の嵌合連結部の密着構造20においても、すでに説明した上記実施の形態と同一の作用効果を奏するものとなる。
【0038】
なお、凹部に塗工するパッキンの形状は、円形、楕円形、半円形、凸部の当たる部分の溝付などの様々な断面形状が適用でき、その大きさは、基本的には金属サイディング材を嵌合連結した際に凸部と接触し、外部からの水の浸入を防止できる程度の接触状態を確保できれば良い。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例を比較例とともに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例では、パッキンを構成するエラストマーとして、0℃における50%圧縮応力が異なる2種類のものを用意した。
すなわち、圧縮応力が0.25kg/cm2となる合成ゴム系エラストマー(A)、圧縮応力が0.78kg/cm2となる合成ゴム系エラストマー(B)を用いた。
なお、比較例では、パッキンを構成するエラストマーとして、0℃における50%圧縮応力が2.10kg/cm2となる合成ゴム系エラストマー(C)を用いた。これらエラストマーは、パッキン組成物としてブロック状として用いた。
また、剥離処理には、シリコーンオイル系剥離剤を用い、溶剤を用いて溶液とした。
【0040】
(実施例1)
エラストマー(A)のパッキン組成物をホットメルト塗工設備の220℃に設定したメルターで溶融し、塗工ノズルからパッキンを、円形断面の直径が約5mmとなるようにして、図1に示した金属サイディング材の凹部に塗工してパッキンを形成した。
このパッキンを評価するため、パッキン単独の0℃における50%圧縮応力を測定した。
また、金属サイディング材の凸部には、パッキンと接触する範囲に、剥離剤の溶剤溶液を刷毛にて塗布し、約80℃に加熱して溶剤を蒸発させた。
次に、評価を行うため、嵌合部の長さが45cmの金属サイディング材同士を嵌合連結し、嵌合連結の際の嵌合抵抗から嵌合性を評価するとともに、手直し作業性については、嵌合連結直後に、金属サイディング材を引っ張って外す場合の抵抗とパッキンの付着の有無によって評価した。
さらに、圧縮応力値、嵌合性、手直し作業性に基づき、総合評価を行った。
これらの評価は、いずれも、問題なしを○、著しく問題ありを×として表1中に記載した。
このパッキン組成物の0℃における50%圧縮応力を測定した結果、0.25kg/cm2であった。
このパッキンを用いた金属サイディング材での嵌合性、手直し作業性、総合評価を行ったところ、嵌合連結の際にほとんど抵抗無く容易に凹部に凸部を嵌合することができ(○)、現場施工時の手直し作業を想定し、一旦嵌合した凸部を引っ張ったところ、ほとんど抵抗を感じることなく外すことができ、現場施工時の手直し作業性は問題がなく(○)、これらから総合評価も問題がない(○)と判定した(表1参照)。
【0041】
(実施例2)
パッキンとしてエラストマー(B)を用いた以外は、実施例1と同一の条件としてパッキンの塗工および剥離処理を行った。
このパッキン組成物の0℃における50%圧縮応力を測定した結果、0.78kg/cm2であった。
このパッキンを用いた金属サイディング材での嵌合性、手直し作業性、総合評価を行ったところ、嵌合連結の際にほとんど抵抗無く容易に凹部に凸部を嵌合することができ(○)、現場施工時の手直し作業を想定し、一旦嵌合した凸部を引っ張ったところ、ほとんど抵抗を感じることなく外すことができ、現場施工時の手直し作業性は問題がなく(○)、これらから総合評価も問題がない(○)と判定した(表1参照)。
【0042】
(比較例1)
凸状連結部に剥離処理を施さない以外、実施例2と同一の条件としてパッキンの塗工を行った。
このパッキン組成物の0℃における50%圧縮応力を測定した結果、0.78kg/cm2であった。
このパッキンを用いた金属サイディング材での嵌合性、手直し作業性、総合評価を行ったところ、嵌合連結の際にほとんど抵抗無く容易に凹部に凸部を嵌合することができた(○)が、現場施工時の手直し作業を想定し、一旦嵌合した凸部を引っ張ったところ、粘着力が強く容易に引き剥がすことができないばかりか、部分的に剥ぎ取られたパッキンの付着があり、そのまま再び嵌合することができない状態と認められ、現場での手直し作業性に著しい問題が生じ(×)、これらから総合評価は著しく問題がある(×)と判定した(表1参照)。
【0043】
(比較例2)
パッキンとしてエラストマー(C)を用いた以外は、実施例1と同一の条件としてパッキンの塗工および剥離処理を行った。
このパッキン組成物の0℃における50%圧縮応力を測定した結果、2.10kg/cm2であった。
このパッキンを用いた金属サイディング材での嵌合性、手直し作業性、総合評価を行ったところ、嵌合連結の際に凸部を凹部に押し込もうとしてもパッキンの抵抗が強く容易に所定の嵌合ができず、著しい問題があった(×)が、現場施工時の手直し作業を想定し、一旦嵌合した凸部を引っ張ったところ、ほとんど抵抗を感じることなく外すことができ、現場施工時の手直し作業性は問題がなかった(○)。これらからの総合評価は著しく問題がある(×)と判定した(表1参照)。
【0044】
以上の実施例および比較例からは、合成ゴム系エラストマー(A)、(B)のパッキン組成物のように、0℃における50%圧縮応力が、1.50kg/cm2以下であっても剥離処理が施してない場合には、剥離性を確保できず手直し作業性において著しい問題が生じてしまうとともに、合成ゴム系エラストマー(C)のように0℃における50%圧縮応力が、1.50kg/cm2以上であれば、剥離処理が施してあっても嵌合性において著しい問題が生じることから、上記各実施例で用いたパッキンの0℃における50%圧縮応力が、1.50kg/cm2以下であるとともに、剥離処理が必須の要件となることが分かった。
【0045】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造の一実施の形態にかかる金属サイディング材の正面図、凸状連結部の拡大図および凹状連結部の拡大図である。
【図2】この発明の金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造の一実施の形態にかかる表裏を反転したパッキンの塗工状態の凹状連結部および凸状連結部の部分断面図および嵌合連結状態の部分断面図である。
【図3】この発明の金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造の他の一実施の形態にかかる表裏を反転したパッキンの塗工状態の凹状連結部および凸状連結部の部分断面図および嵌合連結状態の部分断面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 金属サイディング材
11 表面材
12 凸状連結部
12a 凸部
13 凹状連結部
13a 凹部
14 樋状部
15 芯材(発泡断熱層)
16 裏面材
17 押え材
20 金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造
21 パッキン
22 塗工ノズル
23 剥離処理
24 塗工ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に凸状連結部を備え他端に凹状連結部を備えて互いを嵌合連結可能に構成した金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造であって、
前記凸状連結部が嵌合連結される前記凹状連結部に、ホットメルト塗工可能で0℃における50%圧縮応力を1.5kg/cm2以下とする柔軟性を付与したエラストマーによるパッキンを設け、
前記凸状連結部には、前記嵌合連結部を再嵌合可能とする剥離処理を施して構成してなることを特徴とする金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造。
【請求項2】
前記剥離処理を、液状処理剤または粉末状処理剤のいずれかを用いて塗工して構成したことを特徴とする請求項1記載の金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造。
【請求項3】
前記液状処理剤を、合成樹脂と有機溶剤とからなる溶液、或いは合成樹脂と水とを乳化剤を使用して乳化させたエマルジョン溶液に剥離剤を添加したもので構成したことを特徴とする請求項2記載の金属サイディング材の嵌合連結部の水密構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−106642(P2010−106642A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288626(P2008−288626)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】