金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置、操業支援方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
【課題】金属ストリップを連続処理設備にて処理する以前の時点で測定された形状指標に基づいて、当該ストリップの蛇行量と生産障害につながる危険率を推定し、予め操業オペレータに提示することで、必要以上に処理能力を損なうことなく可及的に高い生産性を可能にする。
【解決手段】伸び率差等の金属ストリップ形状指標を測定して、幅方向座標の関数で重み付けを行い、更にその左右差を評価する演算を実行して重み付き形状指標左右差を算出する(ステップS203)。重み付き形状指標左右差の統計量から蛇行量を推定するモデルを作成し(ステップS206)、このモデルを用いてストリップが生産障害を発生させる危険率を推定し(ステップS207)、操業オペレータに提示する(ステップS210)。
【解決手段】伸び率差等の金属ストリップ形状指標を測定して、幅方向座標の関数で重み付けを行い、更にその左右差を評価する演算を実行して重み付き形状指標左右差を算出する(ステップS203)。重み付き形状指標左右差の統計量から蛇行量を推定するモデルを作成し(ステップS206)、このモデルを用いてストリップが生産障害を発生させる危険率を推定し(ステップS207)、操業オペレータに提示する(ステップS210)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置及び操業支援方法に関し、特に熱処理や表面処理を連続して行う金属ストリップの処理設備において、金属ストリップの形状不良に起因する金属ストリップの進行方向と直交する方向への蛇行量を評価し、更に蛇行に起因した生産障害の発生危険率を推定して、操業オペレータにガイダンス情報として提示し、安定操業を行う為に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼の薄板製品などの金属ストリップ(以下ではストリップと記す)の製造プラントにおいては、ストリップについて、所望の加工特性を得る為の熱処理、或いは亜鉛メッキなどの表面処理を連続的に行うときに、ストリップを圧延した後に、多数の搬送ロールでストリップを支持しながら搬送して、熱処理や表面処理を施す連続処理設備が広く用いられている。
【0003】
このようなストリップの連続処理設備においては、ストリップの不均一な伸びなどの形状不良等に起因してストリップ進行方向と直交する方向に移動する現象、すなわち蛇行現象が生ずることがある。ストリップが蛇行すると、連続処理設備の通板ラインの構成部品に接触し、甚だしい場合はストリップ破断を引き起こしてライン停止に至るなどトラブルを引き起こす要因となる。
【0004】
このようなストリップの蛇行を抑制する方法として、幅広く採用されている方法には、大別して2つある。
【0005】
第1の方法は、搬送ロールのストリップ幅方向中央部の半径が、エッジ部の半径よりも大きいクラウンロールを使用する方法である。クラウンが形成された搬送ロールにストリップが接触した場合、ロール径が徐々に変化するテーパ部では、幅方向の中央部に向かう力(復元力)が作用することが知られている。ストリップが蛇行した場合、この復元力が全体として搬送ロールの中央部に戻る力として作用するようクラウン形状を設計することで、蛇行を抑制することが可能である。
【0006】
第2の方法は、搬送ロールの一部をステアリングロールと呼ばれる蛇行修正装置とする方法である。ステアリングロールは、搬送ロールとそれを旋回させる機構からなるもので、ストリップの蛇行検出器と共に設置される。この構成で、蛇行検出器による検出値がゼロとなるよう搬送ロールの旋回量を制御することで、蛇行量の修正を行う方法が広く用いられている。
【0007】
また、特許文献1に開示された方法では、搬送ロール間を走行するストリップの横方向弾性変形を表す数式モデル、搬送ロール上でのストリップの横方向移動を表す数式モデル、及びストリップ形状を考慮したクラウンロールによる蛇行修正機構を表す数式モデルを用いて、ラインに設置された蛇行検出器の出力を境界条件として、蛇行検出器よりも下流側での蛇行量を所定の方程式を用いてオンラインで予測し、予測された蛇行量が所定の閾値を越えた場合に警報を発することで、装置の運転員に操業トラブル防止の為のアクションを取るよう注意を促す方法を実現している。
【0008】
【特許文献1】特開平7−188780号公報
【特許文献2】特開2004−226240号公報
【非特許文献1】福田剛志,森本康彦,徳山豪著 「データマイニング」共立出版、2001.9、ISBN 4−320−12002−7
【非特許文献2】ジェイ・アール・キンラン(J.R Quinlan)著 「AIによるデータ解析」、1995.5、ISBN4−8101−8920−1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の第1の方法のクラウンロールや第2の方法のステアリングロールによる蛇行修正能力には限界があり、ストリップの著しい形状不良等に起因して過大な蛇行が発生した場合は、蛇行発生に気付いた操業オペレータが、ストリップ搬送速度の低減やライン張力アップなどの緊急アクションを実行する場合があった。しかも、この緊急アクションによる修正が間に合わなかった場合には、ストリップがサイドガイド等の構造物に衝突してエッジ部スリ疵のような品質トラブルが発生し、更に甚だしい場合はストリップ破断等の深刻な操業トラブルを引き起こすことがあった。
【0010】
また、特許文献1に開示された手法では、蛇行検出器が設置されていないステアリングロール間での蛇行によって、上述の品質及び操業トラブルが発生する課題を解決するために、ステアリング上のストリップの蛇行挙動を数式でモデル化し、蛇行検出器での検出量を境界条件として蛇行量を予測することで、ステアリングロール間の蛇行を把握し、迅速に蛇行拡大防止の操業アクションを実施できるとしている。
【0011】
ここで、特許文献1で開示されている数式モデルにおいては、ストリップ形状の影響としてストリップ両エッジ部の耳波深さの差が、搬送ロール上でのストリップ横移動に寄与するとのモデルとなっている。しかしながら、蛇行に影響を及ぼすストリップ形状は、単純にストリップ両エッジ部の耳波深さの差、すなわち両エッジの形状指標の差分量で表現できるものではなく、例えばストリップ中央部とエッジ部の中間位置であるクォータ部における伸び率差の左右差も蛇行量に影響を及ぼす。一例として、図12に鉄鋼製品の連続焼鈍処理設備の加熱炉炉頂部に設置された蛇行検出器での出力と、その前工程である冷間圧延工程の出側で測定した伸び率差のエッジ部での差分量を散布図表示したものを示す。
【0012】
図12における各点は、測定された蛇行量と伸び率差のチャートデータをお互いに対応する位置関係に合せた上で、100m毎に分割し、各分割区分で平均化した値をセットとしたものである。同図から、単にエッジ部の伸び率差の差分を取った指標と蛇行量の間には相関係数0.08と殆ど相関は見られない。従って特許文献1に開示されたストリップの両エッジの形状指標の差分量のみを考慮する数式モデルによる予測蛇行量は、上記の例と同様の精度であることがあり、操業支援をするための蛇行予測方法として十分ではない。
【0013】
以上のように従来技術における、ストリップの連続処理設備における蛇行の推定と制御には、上述のような難しさがある為、その運転に係るオペレータは、特に重大な生産障害に繋がる操業トラブルを極力回避しようとの考えから、過去に経験したトラブル事例に係わる種類のストリップや、或いは硬質であるなどの定性的な理由で良好な形状に製造することが難しいと予想される種類のストリップについては、ある程度の蛇行が発生することを前提として、一律に通板速度を低速にして操業を実行する。この結果、形状が良好であって本来全く低速にする必要がないストリップに対しても、低速操業を行うこととなり、設備の処理能力が低下し、生産性が悪化する問題があった。
【0014】
本発明は、上記のような点に鑑みて為されたものであり、ストリップの蛇行量と生産障害につながる危険率を推定し、予め操業オペレータに提示することで、必要以上に処理能力を損なうことなく操業トラブルを回避して、可及的に生産性を高くするように操業支援するため操業支援装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の金属ストリップの連続処理施設における操業支援装置は、複数の金属ストリップをクラウンロールを用いて連続的に通板しながら処理する金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置であって、前記連続処理設備の入側において金属ストリップの形状を連続的若しくは間欠的に測定し、定量的な形状指標を金属ストリップ通板方向位置と対応させて出力する形状検出手段と、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールならびに金属ストリップの幅を取り込む入力手段と、前記形状指標に対して金属ストリップの幅方向センタを基準軸として、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールから該金属ストリップの幅方向位置の重み付けを行い、重み付けした該金属ストリップの左右差の指標である重み付き形状指標左右差の実績データを算出する重み付き形状指標左右差算出手段と、金属ストリップの通板方向の複数位置で算出された前記重み付き形状指標左右差から、金属ストリップの全長、或いは金属ストリップを通板方向に分割した各分割区分における複数の形状統計量を算出する形状統計量算出手段と、前記連続処理設備内を前記金属ストリップが通過する際の進行方向と直交する方向への蛇行量を検出する蛇行検出手段と、重み付き形状指標左右差の実績データと蛇行量の実績データとを紐付けして保存する記憶手段と、複数の金属ストリップについての該蛇行量の実績データと、前記重み付き形状指標左右差から算出された金属ストリップ全長、或いは通板方向の各分割区分における複数の形状統計量とに基づいて、当該ストリップが前記連続処理設備を通過する際の蛇行量を推定する蛇行量推定モデルを作成する蛇行量推定モデル作成手段と、新たな金属ストリップに対して得られた前記重み付き形状指標左右差、及び前記複数の形状統計量に基づいて、前記蛇行量推定モデルを用いて前記連続処理設備を前記新たな金属ストリップが通板する際の蛇行量を推定する蛇行量推定手段と、該蛇行量の推定値に基づいて、予め設定した種類の生産障害を前記新たな金属ストリップが発生させる危険率を推定する生産障害危険率推定手段と、前記危険率を連続処理設備の操業オペレータに提示する危険率表示手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明の金属ストリップの連続処理施設における操業支援装方法は、複数の金属ストリップをクラウンロールを用いて連続的に通板しながら処理する金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法であって、前記連続処理設備の入側において金属ストリップの形状を連続的若しくは間欠的に測定し、定量的な形状指標を金属ストリップ通板方向位置と対応させて出力する形状検出工程と、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールならびに金属ストリップの幅を取り込む入力工程と、前記形状指標に対して金属ストリップの幅方向センタを基準軸として、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールから該金属ストリップの幅方向位置の重み付けを行い、重み付けした該金属ストリップの左右差の指標である重み付き形状指標左右差の実績データを算出する重み付き形状指標左右差算出工程と、金属ストリップの通板方向の複数位置で算出された前記重み付き形状指標左右差から、金属ストリップの全長、或いは金属ストリップを通板方向に分割した各分割区分における複数の形状統計量を算出する形状統計量算出工程と、前記連続処理設備内を前記金属ストリップが通過する際の進行方向と直交する方向への蛇行量を検出する蛇行検出工程と、重み付き形状指標左右差の実績データと蛇行量の実績データとを紐付けして保存する記憶工程と、複数の金属ストリップについての該蛇行量の実績データと、前記重み付き形状指標左右差から算出された金属ストリップ全長、或いは通板方向の各分割区分における複数の形状統計量とに基づいて、当該ストリップが前記連続処理設備を通過する際の蛇行量を推定する蛇行量推定モデルを作成する蛇行量推定モデル作成工程と、新たな金属ストリップに対して得られた前記重み付き形状指標左右差、及び前記複数の形状統計量に基づいて、前記蛇行量推定モデルを用いて前記連続処理設備を前記新たな金属ストリップが通板する際の蛇行量を推定する蛇行量推定工程と、該蛇行量の推定値に基づいて、予め設定した種類の生産障害を前記新たな金属ストリップが発生させる危険率を推定する生産障害危険率推定工程と、前記危険率を連続処理設備の操業オペレータに提示する危険率表示工程とを有することを特徴とする。
また、本発明のコンピュータプログラムは、複数の金属ストリップをクラウンロールを用いて連続的に通板しながら処理する金属ストリップの連続処理設備における操業支援のためのコンピュータプログラムであって、前記連続処理設備の入側において金属ストリップの形状を連続的若しくは間欠的に測定し、定量的な形状指標を金属ストリップ通板方向位置と対応させて出力する形状検出処理と、前記クラウンロールの方向のプロフィールならびに金属ストリップの幅を取り込む入力処理と、前記形状指標に対して金属ストリップの幅方向センタを基準軸として、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールから該金属ストリップの幅方向位置の重み付けを行い、重み付けした該金属ストリップの左右差の指標である重み付き形状指標左右差の実績データを算出する重み付き形状指標左右差算出処理と、金属ストリップの通板方向の複数位置で算出された前記重み付き形状指標左右差から、金属ストリップの全長、或いは金属ストリップを通板方向に分割した各分割区分における複数の形状統計量を算出する形状統計量算出処理と、前記連続処理設備内を前記金属ストリップが通過する際の進行方向と直交する方向への蛇行量を検出する蛇行検出処理と、重み付き形状指標左右差の実績データと蛇行量の実績データとを紐付けして保存する記憶処理と、複数の金属ストリップについての該蛇行量の実績データと、前記重み付き形状指標左右差から算出された金属ストリップ全長、或いは通板方向の各分割区分における複数の形状統計量とに基づいて、当該ストリップが前記連続処理設備を通過する際の蛇行量を推定する蛇行量推定モデルを作成する蛇行量推定モデル作成処理と、新たな金属ストリップに対して得られた前記重み付き形状指標左右差、及び前記複数の形状統計量に基づいて、前記蛇行量推定モデルを用いて前記連続処理設備を前記新たな金属ストリップが通板する際の蛇行量を推定する蛇行量推定処理と、該蛇行量の推定値に基づいて、予め設定した種類の生産障害を前記新たな金属ストリップが発生させる危険率を推定する生産障害危険率推定処理と、前記危険率を連続処理設備の操業オペレータに提示する危険率表示処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
また、本発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記に記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ストリップを連続処理設備にて処理する以前の時点で測定されたストリップの形状指標に基づいて、当該ストリップの蛇行量と生産障害につながる危険率を操業オペレータが予め認識することが可能となる。このため、オペレータは、蛇行する危険率の高い金属ストリップに対してのみ低速操業を実施することとなり、必要以上に処理能力を損なうことなく操業トラブルを回避することが可能となる。また、品質トラブルやストリップ破断といった操業トラブルも低減するため、品質低下を招くことなく、生産性が高くなる。その結果、顧客への製品出荷の納期遅れ回避に資する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて説明する。まず図9において、典型的なストリップ形状不良の事例を示す。形状不良は、ストリップの一部が通板方向に伸びること、すなわち他の部位よりも相対的に長くなることで発生する。伸びた部位が波状を呈することから、ストリップの両エッジ部が伸びた形態を耳波、中央部が伸びた場合を中伸び、エッジと中央部の間のクォータ部が伸びた形態をクォータ伸びと称する。
【0018】
このような伸びを定量化する指標には、例えば伸び率差や波高さがある。図10は、伸び率差の定義を説明するための図であり、伸びが発生して波状を呈したストリップを、幅方向に短冊状に仮想的に切断すると、元々のストリップ長さlに対する形状不良部の伸び量Δlとして表すことができる。この伸び量Δlを元々のストリップ長さlで除して、伸び率差を定義する。
【0019】
また、波高さは、ストリップ長手方向に伸びが断続的に生じることによって現れる波状の変形の振幅である。さらに、急峻率は、発生した波形状を正弦波で近似し、その長さ方向のピッチ、すなわち正弦波近似された波の波長で波高さを除することで定義される。
【0020】
なお、製造ライン中において実際にストリップの形状を測定するには、例えば、特許文献2に開示された光切断法を応用した手法を利用することができる。
【0021】
本発明者は、連続処理設備において搬送ロールで支持されながら通板するストリップの蛇行量と、ストリップの形状指標やロールクラウンプロフィール等の通板条件との相関を詳細に検討した。その結果、連続処理設備を通板するストリップの蛇行量は、ストリップの形状指標(伸び率差、波高さなど)の幅方向分布に、ストリップ幅方向中心からの位置に比例した重みを乗じ、更にロールクラウンのプロフィールを反映した重みを乗じた指標の左右差をとったものと高い相関を有することを見出した。
【0022】
ここで、鉄鋼薄板製品の連続処理設備である連続焼鈍処理設備における薄板ストリップについて、縦軸を蛇行量とし、横軸を重み付き形状指標の左右差(伸び率差の幅方向分布にストリップ幅方向中心からの位置に比例した重みを乗じ、更にロールクラウンプロフィールを反映した重みを乗じて左右差を計算した指標)とした散布図を図11に示す。蛇行量は、連続焼鈍処理設備の加熱炉炉頂部に設置された蛇行検出器で測定した値を用いた。また、この測定例では、ロールクラウンプロフィールを反映して、ストリップの中心から左右それぞれ250mmの範囲を重み係数1とした。250mmから外部の領域は、250mm位置で重み1、1000mm位置で重み0となるように線形補間した重み係数を乗じている。
【0023】
図11から判るように、蛇行量と上記重み付き形状指標左右差との間には相関があり、相関係数にして0.52と十分な相関が認められた。一方、ストリップの両エッジ部の伸び率差から、単純にその差を取った差分量と蛇行量の相関を示した散布図である図12と比較すると、図11に示す重み付き形状指標左右差は、蛇行量と相関が高いのみならず、同一の指標値における蛇行量のバラツキが少なく、蛇行量を推定する為の指標として、有効であることが判る。
【0024】
図8に、冷間圧延工程の出側で測定した薄板コイル全長の伸び率差の分布を輝度表示したものを示す。輝度の明るい部分が、相対的に伸びていることを示すが、ここでストリップの幅方向センタ位置を中心軸に左右の伸び率差分布に着目すれば、ストリップのエッジ部よりもクォータ部が伸びを呈しており、更にその左右差があることに起因して蛇行が生じている。実際に連続処理設備を通板するストリップの形状はクォータ伸びを呈する場合も多く、形状起因の蛇行量を推定する為には、重み付き形状指標左右差に基づいた推定が必要であると想到した。
【0025】
また、図7には、冷間圧延工程の出側で測定した薄板コイル全長の伸び率差に基づいて算出した重み付形状指標左右差と、当該コイルが連続焼鈍処理設備における加熱炉炉頂部を通板した際の蛇行量、更に蛇行を抑制するためのステアリングロールの操作量を図示した一例を示す。なお図の横軸は、連続焼鈍処理設備を通板した際のコイルトップ部を原点としている。このコイルは、ほぼ全長に渡って、重み付形状指標左右差が正値を取る方向に片伸びしており、更にコイルのトップを基点として約760m〜約1000mのボトム部において、片伸びの程度が著しく悪化している。このコイルを連続焼鈍処理設備にて通板させた時の蛇行量とステアリングロールの操作量の実績を見ると、コイルトップ部からミドル部が通板する際には、ステアリングロールにてコイルをライン中央位置に制御する操作が有効に作用し、蛇行量ラインセンタから±20mmと問題の無い範囲となっている。しかしながら片伸びの程度が悪化したボトム部に至った時点で、ステアリングロールの操作量が操作限界の100mmを超過し、その結果、蛇行量は負の方向に約80mmという危険なレベルに到達している。このような大蛇行が発生した要因は、コイルトップからミドル部での片伸びの為に、ステアリングロールが操作限界に近いレベルに到達していた状態に加え、コイルボトム部の著しい片伸びが発生したためである。このように、連続処理設備における金属ストリップの蛇行量は、蛇行した部位の形状のみならず、通板方向前段側の形状の影響を受ける。従って、蛇行予測の推定精度を向上させるためには、ストリップの通板方向の各部位における重み付き形状指標左右差の統計量を算出して、蛇行予測対象部位の前段部の統計量も考慮して蛇行量を推定するモデルを作成する必要があることを想到した。
【0026】
以上の内容を踏まえ、本発明の実施の形態の詳細について説明する。図1は、ストリップの連続処理設備の一例の概略図である。また、図2は、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援装置の概略を示すブロック図である。
【0027】
図2において、101は、重み付き形状指標左右差算出手段であり、図1に示すストリップの連続処理装置の入側、若しくは前工程の出側に設置された形状検出手段106によって測定された形状指標が入力される。重み付き形状指標左右差算出手段101は、入力された形状指標から、以下の数式(1)、(2)に基づいて重み付き形状指標左右差Mを算出して、形状統計量算出手段110に出力する。ここで形状検出手段106から入力される形状指標が、ストリップの通板方向の複数の位置における形状指標である場合は、入力された通板方向位置での形状指標に対応した位置での重み付き形状指標左右差Mを算出し、ストリップの通板方向位置座標の情報も付与して、形状統計量算出手段110に出力する。
【0028】
【数1】
【0029】
但し、Mは重み付き形状指標左右差、xは金属ストリップ幅方向中心を基準とする幅方向座標、Wは金属ストリップ幅、ε(x)は通板方向のある位置における金属ストリップの形状指標、A(x)はストリップ幅方向重み係数、R(x)はクラウンロールのストリップ幅方向プロフィールに基づく重み係数である。
【0030】
ここで形状検出手段106から出力される形状指標は、一般にストリップ幅方向に複数個配置された測定点での検出値として、幅方向に離散化された状態で出力される。このような離散化された形状指標に対して式(1)、(2)で算出するには、例えば以下のように演算処理を行えば良い。
【0031】
形状指標として伸び率差を使用する場合を例に説明する。伸び率差は、断面内で最も伸びが小さい位置で0値を取り、伸びが大きい位置ほど大きい値となる形状指標である。今、伸び率差が幅方向に2M+1(Mは1以上の整数)点に離散化されている場合、次式(3)で表すことができる。
【0032】
【数2】
【0033】
ここで添え字1から2M+1は幅方向に付与された測定点番号であり、M+1がストリップ幅方向中心位置に対応する。iはストリップの通板方向の測定点を示すもので、式(3)は通板方向同一位置の伸び率差から構成されている。
【0034】
また、測定点番号の各点と実際のストリップ幅方向の位置情報は、式(4)で表される。
【0035】
【数3】
【0036】
図3に測定点番号と伸び率差を図示した例を示す。図3では、XM+1を幅方向座標の原点としている為、ストリップ幅がWの場合、X1が−W/2、X2M+1がW/2となる。
【0037】
次にプロセスコンピュータ108より、クラウンロールのプロフィールを反映した重み係数のストリップ幅方向分布関数R(x)が入力される。形状指標が、式(3)の如く幅方向2M+1点に離散化されている場合、R(x)も同じ点での離散値が与えられれば良く、この場合は式(5)で表すことができる。
【0038】
【数4】
【0039】
R(x)の値としては、例えばストリップ幅方向中心で最もロール径が大きいM+1番目の位置に対応するrMを重み1とし、両エッジ側に掛けて、クラウンロールのプロフィール形状を反映して重みを低減させる方法がある。また、ある程度のトン数の鋼板を処理した後では搬送ロールの摩耗が発生し、クラウンロール交換直後に比べて表面粗度やプロフィールが変化することを考慮して、R(x)の値を決定しても良い。具体的には、例えばプロセスコンピュータ108のメモリに、連続処理設備の鋼板通板量と重み係数R(x)の対応テーブルを記憶させ、更に前回のクラウンロール交換以降の累積処理トン数に基づいて、対応する重み係数分布を決定し、重み付き形状指標左右差算出手段101に入力する方法がある。
【0040】
次に、上記の入力情報を用いて行う具体的な計算について説明する。式(3)で表現された伸び率差εに対して、鋼板のセンタ位置に相当するM+1位置を対称軸にして、分布をグラフの左側1〜M+1の領域と、右側M+1〜2M+1の領域に二分割する。図3の例では前者が冷間圧延工程のドライブサイド(DS)側、後者がワークサイド(WS)側に相当する為、以降の説明では、1〜M+1の領域をDS側分布、M+1〜2M+1の領域をWS側分布と呼称する。
【0041】
そして、形状検出手段106の各測定位置がカバーする測定範囲を、hj(j=1〜2M+1)と記載するものとすると、まずDS側分布に対して、伸び率差と測定範囲を乗じた下記の式(6)の指標を算出する。これによって測定範囲の大小に比例した重みを乗ずることになる。
【0042】
【数5】
【0043】
次に、式(6)に対して、ストリップ幅方向中心からの距離を重み係数として乗ずる処理を行う。測定点番号と幅方向の座標位置は式(4)で表される為、式(7)に示すように、幅方向中心位置に対応するM+1の点から各測定点への距離を乗ずる計算を行えば良い。
【0044】
【数6】
【0045】
ここで、"||"は、記号内の計算結果の絶対値を意味しており、座標の原点の取り方によって距離が負値となる不都合が無いように導入したものである。式(7)によって、ストリップ幅方向中心より離れた位置の伸びがストリップの蛇行に大きく影響することを反映した重み付けを行っている。
【0046】
また図3に示すように、クラウンロールのプロフィールを反映した重み係数R(x)の内、DS側分布に対応する位置の係数を選択して、式(7)の各成分に乗ずる処理を行う。下記の式(8)は、その演算結果を示す数式である。
【0047】
【数7】
【0048】
さらに、各測定位置からの蛇行への寄与分を合計して、重み付き形状指標のDS側成分、下記の式(9)を算出する。このようにストリップ幅方向中心位置から最エッジまでの伸び率差全てを考慮した指標とする事で、例えばストリップクォータ部の伸びも考慮した指標が実現できている。
【0049】
【数8】
【0050】
WS側分布に対しても、DS側分布と同様の演算処理を行って、下記の式(10)の重み付き形状指標のWS側成分を算出する。
【0051】
【数9】
【0052】
さらに、下記の式(11)の演算を行って、重み付き形状指標左右差を算出し、結果を形状統計量算出手段110に引き渡すようにする。
【0053】
【数10】
【0054】
また、形状検出手段106から入力される形状指標が、ストリップの通板方向の複数の位置における形状指標である場合は、入力された通板方向位置での形状指標それぞれに対して、上記の式(1)〜式(11)用いた演算処理を行って重み付き形状指標左右差Mを算出し、ストリップの通板方向位置座標の情報も付与して形状統計量算出手段110に引き渡すようにする。
【0055】
以上の実施の形態の説明では、形状検出手段106からの出力が式(3)で表される幅方向に離散化されたデータの場合について説明したが、重み付き形状指標左右差算出手段101の実施の形態は、この説明に限定されるものではなく、式(1)及び(2)で表される計算と本質的に等価な演算処理であれば、全て本発明の範疇に含まれる。また、形状指標として、波高さや急峻率、或いは伸び率差に定数100000を乗じたI−unit指標など、伸び率差以外の指標を用いた場合も、本発明の範疇に入ることは言うまでもない。
【0056】
図2に戻り、110は、形状統計量算出手段であり、上述したような金属ストリップの通板方向の座標情報と、対応する位置での重み付き形状指標左右差Midiffとを重み付き形状指標左右差算出手段101から出力され、それらに基づいて、金属ストリップの全長、或いは通板方向に分割された各分割区分での統計量を算出する処理を行う。
【0057】
具体的な算出方法としては、例えば予め設定された蛇行の評価単位長さに基づいて、コイルを仮想的に分割する通板方向分割位置を決定し、各分割区分における重み付き形状指標左右差の平均値、最大値、最小値、範囲値、積分値などの統計指標を計算する方法がある。すなわち、金属ストリップの全長が3000mで、評価単位長さが100mの場合、通板方向の分割位置を100m、200m、300m、…、2900mmと設定し、0mから100mの範囲における重み付き形状指標左右差の平均値、最大値、最小値、範囲値、積分値などを計算して、当該分割区分の統計量として算出する処理を、全ての分割区分に対して行えば良い。また、本発明で利用できる統計量としては、上述の平均値、最大値、最小値、範囲値、積分値に限定されるものではなく、データの特徴を表す特性指標として統計理論や信号処理理論の分野で提案された諸量を用いた場合も、本発明の範疇である。
【0058】
105は、蛇行量推定モデル作成手段であり、蛇行検出手段107にて測定された蛇行量の実績データと、前記形状統計量算出手段110で算出された重み付き形状指標左右差の統計量のデータとに基づいて、金属ストリップが連続処理設備を通過する際の蛇行量を推定するモデルを作成する。推定モデルの出力は、金属ストリップの各分割区分の蛇行量であり、入力は予測対象区分、及びその前段部の複数の分割区分それぞれにおける重み付き形状指標左右差の複数の統計量である。このような、複数の入力因子に基づいて予測を行う推定モデルとしては、例えば、IF−THENルールモデルがある。
【0059】
IF−THENルールモデルとは、「ある前提条件Aを満たした場合は、Bと判断する」、といった判断の形式で表現されたモデルである。本発明においては、前提条件に前記形状統計量に関する不等式を用い、更に複数個の不等式を論理演算子であるANDやORで組み合わせた論理式を用いる。具体的な一例を示すと、蛇行の評価単位長さを100mに設定して100m単位での蛇行量を推定するものとし、蛇行予測対象の分割区分h0、及びその100m前段の分割区分h1における重み付き形状指標左右差の平均値を入力とするモデルであって、例えば、以下のような前提条件と結論部の組合せで表現されるものである。
【0060】
前提条件A:「h1における重み付き形状指標左右差の平均値 ≧ 3」AND 「h0における重み付き形状指標左右差の平均値 ≧ 6」の場合、
結論部B:「h0に横変位量30mmを超える蛇行が発生する」
【0061】
このようなIF−THENルールモデルをデータから導出する手段としては、例えば非特許文献1に記載された相関ルール抽出アルゴリズムを用いれば良い。相関ルール抽出は、OK及びNGといったカテゴリで表現される予測変数と、数値若しくはカテゴリで表現される入力変数のセットからなる実績データを用いて、高い頻度で発生している入力変数の不等式と予測変数の組合せをIF−THENルールとして自動的に抽出するものである。本発明の場合は、蛇行実績を元に大蛇行が発生したか否かをOK/NGといったカテゴリで表される変数で表現し、重み付き形状指標左右差の統計量を入力変数としたデータセットを作成し、相関ルール抽出アルゴリズムを適用して得られるIF−THENルールを予測モデルとすることで、蛇行量推定IF−THENルールモデルを得ることができる。また、前記蛇行量推定IF−THENルールモデルの結論部は、上述の例のような大蛇行発生の有無を表すOK/NGといったカテゴリに限定されるものではなく、例えば蛇行量の平均値や最大値といった蛇行の程度を定量的に表現する数値、若しくは蛇行量の確率密度関数、或いは蛇行量の度数分布といった蛇行量の発生程度とバラツキを表現する数式やテーブルでも良い。このような蛇行の程度を表す数値指標や数式、及びテーブルは、例えば上記の相関ルール抽出アルゴリズムで導出されたIF−THENルールの条件部に適合する実績データを選択し、これらのデータの蛇行実績を用いて、平均値や最大値を算出する、或いは正規分布関数における平均値や標準偏差のような予め設定された確率密度関数のパラメータを算出する、更には蛇行量の度数分布を求めてテーブルに登録するよう装置に処理させることで得ることが出来る。
【0062】
また、複数の入力因子に基づいて予測を行う別の推定モデルとしては、非特許文献2に記載された決定木モデルがある。決定木モデルは、図4に示すような複数の分岐点が階層的に組み合わされた木構造で表現されるモデルであって、ノード(節)と呼ばれる分岐点には入力変数に関する不等式が設定されており、一方リーフ(葉)と呼ばれる分岐の最下点には、データの予測値が設定されている。ルート(根)と呼ばれる最上部の分岐点より、データを順次ノードの不等式に基づいて分類し、最後に適合したリーフの予測値を、そのデータの予測値とする。このような決定木モデルをデータから導出する手段としては、例えば非特許文献2に記載されたC4.5アルゴリズムを用いれば良い。
【0063】
C4.5アルゴリズムは、OK及びNGといったカテゴリで表現される予測変数と、数値若しくはカテゴリで表現される入力変数のセットからなる実績データを用いて、予測変数のデータの分類の良否を情報理論の分野で提案された情報量エントロピーを尺度として評価し、決定木モデルを自動的に作成するものである。本発明の場合は、蛇行実績を元に大蛇行が発生したか否かをOK/NGといったカテゴリで表される変数で表現して、重み付き形状指標左右差の統計量を入力変数としたデータセットを作成し、C4.5アルゴリズムを適用して得られる決定木を予測モデルとすることで、蛇行量推定決定木モデルを得ることができる。また、前記蛇行量推定決定木モデルの結論部は、上述の例のような大蛇行発生の有無を表すOK/NGといったカテゴリに限定されるものではなく、例えば蛇行量の平均値や最大値といった蛇行の程度を定量的に表現する数値、若しくは蛇行量の確率密度関数、或いは蛇行量の度数分布といった蛇行量の発生程度とバラツキを表現する数式やテーブルでも良い。このような蛇行の程度を表す数値指標や数式、及びテーブルは、例えば上記のC4.5アルゴリズムで導出された決定木の各リーフの蛇行実績データを選択し、その平均値や最大値を算出する、或いは正規分布関数における平均値や標準偏差のような予め設定された確率密度関数のパラメータを算出する、更には蛇行量の度数分布を求めてテーブルに登録するよう装置に処理させることで得ることが出来る。
【0064】
蛇行量推定モデル作成手段105は、上記の何れかの手順で作成・更新した蛇行量推定モデルを、蛇行量推定手段102に出力する。
【0065】
図2に戻り、102は、蛇行量推定手段である。この蛇行量推定手段102は、蛇行量推定モデル作成手段105より出力された蛇行推定モデルを用いて、当該金属ストリップが連続処理設備を通板する時の蛇行量を推定する処理を行う。具体的には、形状統計量算出手段110で算出されたストリップの重み付き形状指標左右差の通板方向の各分割区分における統計量を蛇行推定モデルの入力とし、IF−THENルールや決定木など、モデルの種類に即した演算処理を行うことで、蛇行量を推定する。以下には、正規分布関数で近似した蛇行発生の確率密度を決定木モデルによって推定する場合を例に説明する。
【0066】
予測したいストリップの重み付き形状指標左右差の統計量を入力データとして、蛇行推定決定木モデルのルートの不等式から順次、木構造に基づいて分類する。最後に適合したリーフには、蛇行発生の確率密度を表すパラメータである正規分布関数の中心値と標準偏差が設定されており、これを取り出し、生産障害危険率推定手段103に出力する。
【0067】
103は、生産障害危険率推定手段である。この生産障害危険率推定手段103は、蛇行量推定手段102より出力された蛇行推定量に基づき、重大な生産障害の原因となる、ストリップと連続処理設備通板ラインの構造物の接触が発生する危険率を推定する。以下には、蛇行量推定手段102からは、ストリップの蛇行量推定量として、蛇行生の確率密度を正規分布関数で近似した場合のパラメータである中心値Y0と標準偏差が入力される場合を例に説明する。
【0068】
まず、プロセスコンピュータ108からは、蛇行量を推定したストリップの幅サイズが入力される。前記幅サイズを用いて、生産障害危険率推定手段103では、予め判明している連続処理設備通板ラインの構造物とストリップの距離を算出する。例えば通板ラインの幅方向両サイドにあるガイド間の距離がW2、ストリップ幅がWの場合、ストリップ幅方向中心がラインセンタに一致しているとの前提で、ストリップ両エッジとサイドガイド間の距離Dは、式(12)で算出できる。
【0069】
【数11】
【0070】
次に、推定を行う上で前提としたい確率α(例えばα=80%)を設定し、図5(a)に示すように、その確率値に対応する蛇行量の範囲Y1、Y2を、例えば正規分布関数の逆累積確率分布関数を計算することで算出する。
【0071】
さらに、確率α%の前提で推定された蛇行量の範囲Y1及びY2を、前記ストリップ両エッジ−サイドガイド間距離Dと比較する処理を行い、Y1、Y2のいずれかが距離Dよりも大きい場合は、過去の事例から推定して確率α%でストリップがサイドガイドに衝突すると判定して、アラート信号と判定結果を危険率表示手段104に出力する。
【0072】
また、蛇行量の範囲Y1、Y2の何れも±Dより小さい場合には、図5(b)に示すように、蛇行量の正規分布関数の中心位置Y0と標準偏差の情報に基づいて、蛇行量がエッジ−サイドガイド間距離Dを越える確率βを推定する。このとき確率βは、(1−α)よりも小さな確率値であって、発生する可能性は低いものの、過去の事例から推定されたストリップとサイドガイドの衝突確率を定量的に表現する値である。この確率値βを危険率表示手段104に出力する。
【0073】
危険率表示手段104においては、生産障害危険率推定手段103より出力されたストリップとサイドガイドの衝突アラート信号、或いは衝突確率βを連続処理設備の操業オペレータに提示する処理を行う。この提示された情報に基づいて、オペレータは、例えば危険率の高いストリップについてのみ搬送速度を低速に設定して操業する、といった危険回避の為のアクションをとることができる。
【0074】
次に図6に示すフローチャートを用いて、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援方法を説明する。
【0075】
ステップS201は、形状検出工程であって、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援装置においては、図2の形状検出手段106に対応する。ここでは、ストリップの連続処理装置の入側、若しくは前工程の出側でストリップの形状を連続的若しくは間欠的に測定し、定量的な形状指標として出力する処理を行う。
【0076】
ステップS202は、重み付き形状指標左右差算出工程であって、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援装置においては、図2の重み付き形状指標左右差算出手段101に対応する。形状検出工程ステップS201より出力された形状指標に対して、上記でも説明した以下の数式(1)、(2)に基づいて重み付き形状指標左右差Mを算出する処理を行う。
【0077】
【数12】
【0078】
但し、Mは重み付き形状指標左右差、xは金属ストリップ幅方向中心を基準とする幅方向座標、Wは金属ストリップ幅、ε(x)は通板方向のある位置における金属ストリップの形状指標、A(x)はストリップ幅方向重み係数、R(x)はクラウンロールのストリップ幅方向プロフィールに基づく重み係数とする。
【0079】
ステップS203は、形状統計量算出工程であって、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援装置においては、図2の形状統計量算出手段に対応する。重み付き形状指標左右差算出工程ステップS202より出力されたストリップの全長、或いは通板方向に分割された各分割区分での統計量を算出する処理を行う。
【0080】
次にステップS204において、蛇行量推定モデルが既に作成されているか、を判定する処理を行う。既に蛇行量推定モデルが作成されている場合は、重み付き形状指標左右差Mを蛇行量推定工程ステップS207に出力する。未だ蛇行量推定モデルが作成されていない場合は、重み付き形状指標左右差Mを蛇行検出工程ステップS205に出力して、さらに蛇行量実績データと共に、蛇行量推定モデル作成工程ステップS206に出力する。
【0081】
ステップS206は、蛇行量推定モデル作成工程であって、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援装置においては、図2の蛇行量推定モデル作成手段105に対応する。
【0082】
ステップS207は、蛇行量推定工程であって、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援装置においては、図2の蛇行量推定手段102に対応する。蛇行量推定モデル作成工程ステップS206より出力された蛇行量推定モデル、及び前記重み付き形状指標左右差算出工程ステップS202で算出された重み付き形状指標左右差Mに基づいて、当該金属ストリップが連続処理設備を通板する時の蛇行量を推定する処理を行う。
【0083】
ステップS208は、生産障害危険率推定工程であって、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援装置においては、図2の生産障害危険率推定手段103に対応する。蛇行量推定工程ステップS207より出力された蛇行推定量に基づき、重大な生産障害の原因となる、ストリップと連続処理設備通板ラインの構造物の接触が発生する危険率を推定する処理を行う。
【0084】
次にステップS209において、ストリップの全長に対する蛇行量推定、及び生産障害危険率推定が完了したか、を判定する処理を行い、未だであれば形状検出工程S201以降の処理を、再度実行する。全長に対する推定が完了している場合は、推定結果を危険率表示工程ステップS210に出力する。
【0085】
ステップS210は、危険率表示工程であって、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援装置においては、図2の危険率表示手段104に対応するものである。
【0086】
以上に述べた本実施の形態による金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置、及び操業支援方法によれば、処理設備入側の形状指標から重み付き形状指標左右差を算出する為、従来の技術よりも高精度で蛇行量を推定し、更には生産障害につながるストリップとライン構造物の衝突危険率を推定し、予め操業オペレータに提示することが可能である。この結果、オペレータは、蛇行する危険率の高いストリップに対してのみ低速操業を実施し、必要以上に処理能力を損なうことなく操業トラブルを回避することが可能である。
【0087】
(実施例)
以下には、鉄鋼の薄板製品の連続焼鈍処理設備について、その前段階の工程である冷間圧延工程の出側に設置された形状指標に基づき、連続焼鈍処理設備の加熱炉内で発生する薄板の蛇行量、及び薄板が加熱炉内で構造物に接触する危険率を推定し、連続焼鈍処理設備の操業オペレータに提示することで、操業支援を行った実施例について述べる。今回の実施例においては、本発明に係る操業支援装置をコンピュータ上のプログラムとして実現した。
【0088】
冷間圧延工程にて測定された伸び率差は、逐次、形状指標を処理する計算機のメモリ上にバッファリングされ、コイル全長分の測定が完了した時点で、操業支援装置を実現したコンピュータに入力される。入力された伸び率差は、通板方向に10mピッチでサンプリングされ、コイル単位のファイルに加工された上で、更に検索に使用するためのコイル番号を付与された形式で、コンピュータ内のハードディスクに保存されるものとした。
【0089】
次に連続焼鈍処理設備で熱処理を行うロットが確定した時点で、上位計算機よりロットを構成するコイルの番号が、操業支援装置に送信される。この際、同時にクラウンロールについての情報も入力されるようにしてもよい。引き渡されたコイル番号に基づいて、コンピュータ内のハードディスクより伸び率差のファイルを検索し、各コイルの重み付き形状指標左右差を10mピッチで算出するものとした。コンピュータの記憶手段であるハードディスクには、図11と同様の重み付き形状指標左右差と蛇行量の実績データのセットを保存し、10mピッチで算出された重み付き形状指標左右差に基づいて、事例ベース推論を応用して蛇行量を推定する機能を実現した。
【0090】
蛇行量の推定に当っては、事前の操業試験テストの結果を踏まえ、確率80%を前提として蛇行量が取り得る範囲を操業オペレータに提示するものとした。また、生産障害危険率としては、焼鈍設備の加熱炉内の炉壁間隔2000mmを前提とし、ストリップ幅に応じて算出される薄板のエッジと炉壁間距離に基づいて、蛇行によるストリップと炉壁の衝突による生産障害危険率を算出するものとした。
【0091】
操業オペレータに対しては、現在処理している薄板コイルも含めて、現時点以降処理予定のコイル50本について、全長の推定蛇行量と危険率を提示する機能とした。
【0092】
上記の操業支援装置によって、連続焼鈍処理設備の操業オペレータに蛇行量と危険率の推定量を提示するシステムを実現し、運用を行った結果、炉壁と薄板の接触によるスリ疵の発生率低減、ストリップ破断による操業ライン停止トラブルの回数減少、更には製品歩留まりの向上、製品手入れの省力化、品質トラブルによる納期遅れの回避などの効果を得ることができた。一方、蛇行による操業トラブル発生懸念材に対する低速操業を実施したことで、生産量が低減することが予想されたが、実際には低速操業を必要とする懸念材の発生量は軽微であり、生産量への影響は見られなかった。
【0093】
なお、今回の実施例では、コンピュータ上のプログラムとして操業支援装置を実現したが、演算装置、メモリ等を組み合わせたハードウェアによって構成されるものであっても良い。
【0094】
また、本発明の金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置は、複数の機器から構成されるものであっても、一つの機器から構成されるものであっても良い。
【0095】
また、上述した実施の形態は、コンピュータのCPU或いはMPU、RAM、ROM等で構成されるものであり、RAMやROMに記録されたプログラムが動作することで実施される。したがって、前記実施の形態の機能を実現するためのソフトウェアのプログラムコードをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムコードを格納した記録媒体は本発明の範疇に含まれる。
【0096】
さらに、今回の実施例では、鉄鋼の薄板製品の連続焼鈍処理設備について、その前段階の工程である冷間圧延工程出側の形状指標に基づきガイダンスを行う操業支援装置を実現したが、操業支援の対象となる設備、及びその前段階の工程である設備は、これらに限定されるものではない。例えば、亜鉛メッキ処理設備に対し、その前段階の工程である冷間圧延工程出側の形状指標に基づきガイダンスを行う操業支援装置、或いは錫メッキ処理設備に対し、その前段階の工程である連続焼鈍処理設備出側の形状指標に基づきガイダンスを行う操業支援装置なども、本発明の範疇に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施の形態に係る金属ストリップの連続処理設備の一例の概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置の概略を示すブロック図である。
【図3】重み付き形状指標左右差を計算する処理を説明する図である。
【図4】決定木モデルを説明する図である。
【図5】蛇行発生の確率密度をモデルによる推定量とした場合の生産障害発生率推定処理を説明する図であり、(a)は、蛇行量の度数分布を正規分布と仮定した場合に、蛇行量を推定する処理を模式的に説明する図であり、(b)は蛇行量の正規分布関数の情報に基づいて、蛇行量がエッジ−サイドガイド間距離Dを越える確率βを推定する処理を模式的に説明する図である。
【図6】本発明の金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法の実施の一形態の処理フローの概略を示すフローチャートである。
【図7】ストリップ全長における重み付き形状指標左右差と、連続処理設備を通板した際の蛇行量及びステアリング操作量を示す図である。
【図8】冷間圧延工程の出側で測定した薄板コイル全長の伸び率差分布を表示した図である。
【図9】金属ストリップの典型的な形状不良の例を説明する図である。
【図10】伸び率差の概念を示す説明図である。
【図11】金属ストリップの形状指標から算出した重み付き形状指標左右差と、金属ストリップ蛇行量の散布図である。
【図12】金属ストリップ両エッジ部の伸び率の差分量と、金属ストリップ蛇行量の散布図である。
【符号の説明】
【0098】
101 重み付形状指標左右差算出手段
102 蛇行量推定手段
103 生産障害危険率推定手段
104 危険率表示手段
105 蛇行量推定モデル作成手段
106 形状検出手段
107 蛇行検出手段
108 プロセスコンピュータ
109 クラウンロール
110 形状統計量算出手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置及び操業支援方法に関し、特に熱処理や表面処理を連続して行う金属ストリップの処理設備において、金属ストリップの形状不良に起因する金属ストリップの進行方向と直交する方向への蛇行量を評価し、更に蛇行に起因した生産障害の発生危険率を推定して、操業オペレータにガイダンス情報として提示し、安定操業を行う為に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼の薄板製品などの金属ストリップ(以下ではストリップと記す)の製造プラントにおいては、ストリップについて、所望の加工特性を得る為の熱処理、或いは亜鉛メッキなどの表面処理を連続的に行うときに、ストリップを圧延した後に、多数の搬送ロールでストリップを支持しながら搬送して、熱処理や表面処理を施す連続処理設備が広く用いられている。
【0003】
このようなストリップの連続処理設備においては、ストリップの不均一な伸びなどの形状不良等に起因してストリップ進行方向と直交する方向に移動する現象、すなわち蛇行現象が生ずることがある。ストリップが蛇行すると、連続処理設備の通板ラインの構成部品に接触し、甚だしい場合はストリップ破断を引き起こしてライン停止に至るなどトラブルを引き起こす要因となる。
【0004】
このようなストリップの蛇行を抑制する方法として、幅広く採用されている方法には、大別して2つある。
【0005】
第1の方法は、搬送ロールのストリップ幅方向中央部の半径が、エッジ部の半径よりも大きいクラウンロールを使用する方法である。クラウンが形成された搬送ロールにストリップが接触した場合、ロール径が徐々に変化するテーパ部では、幅方向の中央部に向かう力(復元力)が作用することが知られている。ストリップが蛇行した場合、この復元力が全体として搬送ロールの中央部に戻る力として作用するようクラウン形状を設計することで、蛇行を抑制することが可能である。
【0006】
第2の方法は、搬送ロールの一部をステアリングロールと呼ばれる蛇行修正装置とする方法である。ステアリングロールは、搬送ロールとそれを旋回させる機構からなるもので、ストリップの蛇行検出器と共に設置される。この構成で、蛇行検出器による検出値がゼロとなるよう搬送ロールの旋回量を制御することで、蛇行量の修正を行う方法が広く用いられている。
【0007】
また、特許文献1に開示された方法では、搬送ロール間を走行するストリップの横方向弾性変形を表す数式モデル、搬送ロール上でのストリップの横方向移動を表す数式モデル、及びストリップ形状を考慮したクラウンロールによる蛇行修正機構を表す数式モデルを用いて、ラインに設置された蛇行検出器の出力を境界条件として、蛇行検出器よりも下流側での蛇行量を所定の方程式を用いてオンラインで予測し、予測された蛇行量が所定の閾値を越えた場合に警報を発することで、装置の運転員に操業トラブル防止の為のアクションを取るよう注意を促す方法を実現している。
【0008】
【特許文献1】特開平7−188780号公報
【特許文献2】特開2004−226240号公報
【非特許文献1】福田剛志,森本康彦,徳山豪著 「データマイニング」共立出版、2001.9、ISBN 4−320−12002−7
【非特許文献2】ジェイ・アール・キンラン(J.R Quinlan)著 「AIによるデータ解析」、1995.5、ISBN4−8101−8920−1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の第1の方法のクラウンロールや第2の方法のステアリングロールによる蛇行修正能力には限界があり、ストリップの著しい形状不良等に起因して過大な蛇行が発生した場合は、蛇行発生に気付いた操業オペレータが、ストリップ搬送速度の低減やライン張力アップなどの緊急アクションを実行する場合があった。しかも、この緊急アクションによる修正が間に合わなかった場合には、ストリップがサイドガイド等の構造物に衝突してエッジ部スリ疵のような品質トラブルが発生し、更に甚だしい場合はストリップ破断等の深刻な操業トラブルを引き起こすことがあった。
【0010】
また、特許文献1に開示された手法では、蛇行検出器が設置されていないステアリングロール間での蛇行によって、上述の品質及び操業トラブルが発生する課題を解決するために、ステアリング上のストリップの蛇行挙動を数式でモデル化し、蛇行検出器での検出量を境界条件として蛇行量を予測することで、ステアリングロール間の蛇行を把握し、迅速に蛇行拡大防止の操業アクションを実施できるとしている。
【0011】
ここで、特許文献1で開示されている数式モデルにおいては、ストリップ形状の影響としてストリップ両エッジ部の耳波深さの差が、搬送ロール上でのストリップ横移動に寄与するとのモデルとなっている。しかしながら、蛇行に影響を及ぼすストリップ形状は、単純にストリップ両エッジ部の耳波深さの差、すなわち両エッジの形状指標の差分量で表現できるものではなく、例えばストリップ中央部とエッジ部の中間位置であるクォータ部における伸び率差の左右差も蛇行量に影響を及ぼす。一例として、図12に鉄鋼製品の連続焼鈍処理設備の加熱炉炉頂部に設置された蛇行検出器での出力と、その前工程である冷間圧延工程の出側で測定した伸び率差のエッジ部での差分量を散布図表示したものを示す。
【0012】
図12における各点は、測定された蛇行量と伸び率差のチャートデータをお互いに対応する位置関係に合せた上で、100m毎に分割し、各分割区分で平均化した値をセットとしたものである。同図から、単にエッジ部の伸び率差の差分を取った指標と蛇行量の間には相関係数0.08と殆ど相関は見られない。従って特許文献1に開示されたストリップの両エッジの形状指標の差分量のみを考慮する数式モデルによる予測蛇行量は、上記の例と同様の精度であることがあり、操業支援をするための蛇行予測方法として十分ではない。
【0013】
以上のように従来技術における、ストリップの連続処理設備における蛇行の推定と制御には、上述のような難しさがある為、その運転に係るオペレータは、特に重大な生産障害に繋がる操業トラブルを極力回避しようとの考えから、過去に経験したトラブル事例に係わる種類のストリップや、或いは硬質であるなどの定性的な理由で良好な形状に製造することが難しいと予想される種類のストリップについては、ある程度の蛇行が発生することを前提として、一律に通板速度を低速にして操業を実行する。この結果、形状が良好であって本来全く低速にする必要がないストリップに対しても、低速操業を行うこととなり、設備の処理能力が低下し、生産性が悪化する問題があった。
【0014】
本発明は、上記のような点に鑑みて為されたものであり、ストリップの蛇行量と生産障害につながる危険率を推定し、予め操業オペレータに提示することで、必要以上に処理能力を損なうことなく操業トラブルを回避して、可及的に生産性を高くするように操業支援するため操業支援装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の金属ストリップの連続処理施設における操業支援装置は、複数の金属ストリップをクラウンロールを用いて連続的に通板しながら処理する金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置であって、前記連続処理設備の入側において金属ストリップの形状を連続的若しくは間欠的に測定し、定量的な形状指標を金属ストリップ通板方向位置と対応させて出力する形状検出手段と、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールならびに金属ストリップの幅を取り込む入力手段と、前記形状指標に対して金属ストリップの幅方向センタを基準軸として、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールから該金属ストリップの幅方向位置の重み付けを行い、重み付けした該金属ストリップの左右差の指標である重み付き形状指標左右差の実績データを算出する重み付き形状指標左右差算出手段と、金属ストリップの通板方向の複数位置で算出された前記重み付き形状指標左右差から、金属ストリップの全長、或いは金属ストリップを通板方向に分割した各分割区分における複数の形状統計量を算出する形状統計量算出手段と、前記連続処理設備内を前記金属ストリップが通過する際の進行方向と直交する方向への蛇行量を検出する蛇行検出手段と、重み付き形状指標左右差の実績データと蛇行量の実績データとを紐付けして保存する記憶手段と、複数の金属ストリップについての該蛇行量の実績データと、前記重み付き形状指標左右差から算出された金属ストリップ全長、或いは通板方向の各分割区分における複数の形状統計量とに基づいて、当該ストリップが前記連続処理設備を通過する際の蛇行量を推定する蛇行量推定モデルを作成する蛇行量推定モデル作成手段と、新たな金属ストリップに対して得られた前記重み付き形状指標左右差、及び前記複数の形状統計量に基づいて、前記蛇行量推定モデルを用いて前記連続処理設備を前記新たな金属ストリップが通板する際の蛇行量を推定する蛇行量推定手段と、該蛇行量の推定値に基づいて、予め設定した種類の生産障害を前記新たな金属ストリップが発生させる危険率を推定する生産障害危険率推定手段と、前記危険率を連続処理設備の操業オペレータに提示する危険率表示手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明の金属ストリップの連続処理施設における操業支援装方法は、複数の金属ストリップをクラウンロールを用いて連続的に通板しながら処理する金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法であって、前記連続処理設備の入側において金属ストリップの形状を連続的若しくは間欠的に測定し、定量的な形状指標を金属ストリップ通板方向位置と対応させて出力する形状検出工程と、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールならびに金属ストリップの幅を取り込む入力工程と、前記形状指標に対して金属ストリップの幅方向センタを基準軸として、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールから該金属ストリップの幅方向位置の重み付けを行い、重み付けした該金属ストリップの左右差の指標である重み付き形状指標左右差の実績データを算出する重み付き形状指標左右差算出工程と、金属ストリップの通板方向の複数位置で算出された前記重み付き形状指標左右差から、金属ストリップの全長、或いは金属ストリップを通板方向に分割した各分割区分における複数の形状統計量を算出する形状統計量算出工程と、前記連続処理設備内を前記金属ストリップが通過する際の進行方向と直交する方向への蛇行量を検出する蛇行検出工程と、重み付き形状指標左右差の実績データと蛇行量の実績データとを紐付けして保存する記憶工程と、複数の金属ストリップについての該蛇行量の実績データと、前記重み付き形状指標左右差から算出された金属ストリップ全長、或いは通板方向の各分割区分における複数の形状統計量とに基づいて、当該ストリップが前記連続処理設備を通過する際の蛇行量を推定する蛇行量推定モデルを作成する蛇行量推定モデル作成工程と、新たな金属ストリップに対して得られた前記重み付き形状指標左右差、及び前記複数の形状統計量に基づいて、前記蛇行量推定モデルを用いて前記連続処理設備を前記新たな金属ストリップが通板する際の蛇行量を推定する蛇行量推定工程と、該蛇行量の推定値に基づいて、予め設定した種類の生産障害を前記新たな金属ストリップが発生させる危険率を推定する生産障害危険率推定工程と、前記危険率を連続処理設備の操業オペレータに提示する危険率表示工程とを有することを特徴とする。
また、本発明のコンピュータプログラムは、複数の金属ストリップをクラウンロールを用いて連続的に通板しながら処理する金属ストリップの連続処理設備における操業支援のためのコンピュータプログラムであって、前記連続処理設備の入側において金属ストリップの形状を連続的若しくは間欠的に測定し、定量的な形状指標を金属ストリップ通板方向位置と対応させて出力する形状検出処理と、前記クラウンロールの方向のプロフィールならびに金属ストリップの幅を取り込む入力処理と、前記形状指標に対して金属ストリップの幅方向センタを基準軸として、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールから該金属ストリップの幅方向位置の重み付けを行い、重み付けした該金属ストリップの左右差の指標である重み付き形状指標左右差の実績データを算出する重み付き形状指標左右差算出処理と、金属ストリップの通板方向の複数位置で算出された前記重み付き形状指標左右差から、金属ストリップの全長、或いは金属ストリップを通板方向に分割した各分割区分における複数の形状統計量を算出する形状統計量算出処理と、前記連続処理設備内を前記金属ストリップが通過する際の進行方向と直交する方向への蛇行量を検出する蛇行検出処理と、重み付き形状指標左右差の実績データと蛇行量の実績データとを紐付けして保存する記憶処理と、複数の金属ストリップについての該蛇行量の実績データと、前記重み付き形状指標左右差から算出された金属ストリップ全長、或いは通板方向の各分割区分における複数の形状統計量とに基づいて、当該ストリップが前記連続処理設備を通過する際の蛇行量を推定する蛇行量推定モデルを作成する蛇行量推定モデル作成処理と、新たな金属ストリップに対して得られた前記重み付き形状指標左右差、及び前記複数の形状統計量に基づいて、前記蛇行量推定モデルを用いて前記連続処理設備を前記新たな金属ストリップが通板する際の蛇行量を推定する蛇行量推定処理と、該蛇行量の推定値に基づいて、予め設定した種類の生産障害を前記新たな金属ストリップが発生させる危険率を推定する生産障害危険率推定処理と、前記危険率を連続処理設備の操業オペレータに提示する危険率表示処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
また、本発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記に記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ストリップを連続処理設備にて処理する以前の時点で測定されたストリップの形状指標に基づいて、当該ストリップの蛇行量と生産障害につながる危険率を操業オペレータが予め認識することが可能となる。このため、オペレータは、蛇行する危険率の高い金属ストリップに対してのみ低速操業を実施することとなり、必要以上に処理能力を損なうことなく操業トラブルを回避することが可能となる。また、品質トラブルやストリップ破断といった操業トラブルも低減するため、品質低下を招くことなく、生産性が高くなる。その結果、顧客への製品出荷の納期遅れ回避に資する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて説明する。まず図9において、典型的なストリップ形状不良の事例を示す。形状不良は、ストリップの一部が通板方向に伸びること、すなわち他の部位よりも相対的に長くなることで発生する。伸びた部位が波状を呈することから、ストリップの両エッジ部が伸びた形態を耳波、中央部が伸びた場合を中伸び、エッジと中央部の間のクォータ部が伸びた形態をクォータ伸びと称する。
【0018】
このような伸びを定量化する指標には、例えば伸び率差や波高さがある。図10は、伸び率差の定義を説明するための図であり、伸びが発生して波状を呈したストリップを、幅方向に短冊状に仮想的に切断すると、元々のストリップ長さlに対する形状不良部の伸び量Δlとして表すことができる。この伸び量Δlを元々のストリップ長さlで除して、伸び率差を定義する。
【0019】
また、波高さは、ストリップ長手方向に伸びが断続的に生じることによって現れる波状の変形の振幅である。さらに、急峻率は、発生した波形状を正弦波で近似し、その長さ方向のピッチ、すなわち正弦波近似された波の波長で波高さを除することで定義される。
【0020】
なお、製造ライン中において実際にストリップの形状を測定するには、例えば、特許文献2に開示された光切断法を応用した手法を利用することができる。
【0021】
本発明者は、連続処理設備において搬送ロールで支持されながら通板するストリップの蛇行量と、ストリップの形状指標やロールクラウンプロフィール等の通板条件との相関を詳細に検討した。その結果、連続処理設備を通板するストリップの蛇行量は、ストリップの形状指標(伸び率差、波高さなど)の幅方向分布に、ストリップ幅方向中心からの位置に比例した重みを乗じ、更にロールクラウンのプロフィールを反映した重みを乗じた指標の左右差をとったものと高い相関を有することを見出した。
【0022】
ここで、鉄鋼薄板製品の連続処理設備である連続焼鈍処理設備における薄板ストリップについて、縦軸を蛇行量とし、横軸を重み付き形状指標の左右差(伸び率差の幅方向分布にストリップ幅方向中心からの位置に比例した重みを乗じ、更にロールクラウンプロフィールを反映した重みを乗じて左右差を計算した指標)とした散布図を図11に示す。蛇行量は、連続焼鈍処理設備の加熱炉炉頂部に設置された蛇行検出器で測定した値を用いた。また、この測定例では、ロールクラウンプロフィールを反映して、ストリップの中心から左右それぞれ250mmの範囲を重み係数1とした。250mmから外部の領域は、250mm位置で重み1、1000mm位置で重み0となるように線形補間した重み係数を乗じている。
【0023】
図11から判るように、蛇行量と上記重み付き形状指標左右差との間には相関があり、相関係数にして0.52と十分な相関が認められた。一方、ストリップの両エッジ部の伸び率差から、単純にその差を取った差分量と蛇行量の相関を示した散布図である図12と比較すると、図11に示す重み付き形状指標左右差は、蛇行量と相関が高いのみならず、同一の指標値における蛇行量のバラツキが少なく、蛇行量を推定する為の指標として、有効であることが判る。
【0024】
図8に、冷間圧延工程の出側で測定した薄板コイル全長の伸び率差の分布を輝度表示したものを示す。輝度の明るい部分が、相対的に伸びていることを示すが、ここでストリップの幅方向センタ位置を中心軸に左右の伸び率差分布に着目すれば、ストリップのエッジ部よりもクォータ部が伸びを呈しており、更にその左右差があることに起因して蛇行が生じている。実際に連続処理設備を通板するストリップの形状はクォータ伸びを呈する場合も多く、形状起因の蛇行量を推定する為には、重み付き形状指標左右差に基づいた推定が必要であると想到した。
【0025】
また、図7には、冷間圧延工程の出側で測定した薄板コイル全長の伸び率差に基づいて算出した重み付形状指標左右差と、当該コイルが連続焼鈍処理設備における加熱炉炉頂部を通板した際の蛇行量、更に蛇行を抑制するためのステアリングロールの操作量を図示した一例を示す。なお図の横軸は、連続焼鈍処理設備を通板した際のコイルトップ部を原点としている。このコイルは、ほぼ全長に渡って、重み付形状指標左右差が正値を取る方向に片伸びしており、更にコイルのトップを基点として約760m〜約1000mのボトム部において、片伸びの程度が著しく悪化している。このコイルを連続焼鈍処理設備にて通板させた時の蛇行量とステアリングロールの操作量の実績を見ると、コイルトップ部からミドル部が通板する際には、ステアリングロールにてコイルをライン中央位置に制御する操作が有効に作用し、蛇行量ラインセンタから±20mmと問題の無い範囲となっている。しかしながら片伸びの程度が悪化したボトム部に至った時点で、ステアリングロールの操作量が操作限界の100mmを超過し、その結果、蛇行量は負の方向に約80mmという危険なレベルに到達している。このような大蛇行が発生した要因は、コイルトップからミドル部での片伸びの為に、ステアリングロールが操作限界に近いレベルに到達していた状態に加え、コイルボトム部の著しい片伸びが発生したためである。このように、連続処理設備における金属ストリップの蛇行量は、蛇行した部位の形状のみならず、通板方向前段側の形状の影響を受ける。従って、蛇行予測の推定精度を向上させるためには、ストリップの通板方向の各部位における重み付き形状指標左右差の統計量を算出して、蛇行予測対象部位の前段部の統計量も考慮して蛇行量を推定するモデルを作成する必要があることを想到した。
【0026】
以上の内容を踏まえ、本発明の実施の形態の詳細について説明する。図1は、ストリップの連続処理設備の一例の概略図である。また、図2は、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援装置の概略を示すブロック図である。
【0027】
図2において、101は、重み付き形状指標左右差算出手段であり、図1に示すストリップの連続処理装置の入側、若しくは前工程の出側に設置された形状検出手段106によって測定された形状指標が入力される。重み付き形状指標左右差算出手段101は、入力された形状指標から、以下の数式(1)、(2)に基づいて重み付き形状指標左右差Mを算出して、形状統計量算出手段110に出力する。ここで形状検出手段106から入力される形状指標が、ストリップの通板方向の複数の位置における形状指標である場合は、入力された通板方向位置での形状指標に対応した位置での重み付き形状指標左右差Mを算出し、ストリップの通板方向位置座標の情報も付与して、形状統計量算出手段110に出力する。
【0028】
【数1】
【0029】
但し、Mは重み付き形状指標左右差、xは金属ストリップ幅方向中心を基準とする幅方向座標、Wは金属ストリップ幅、ε(x)は通板方向のある位置における金属ストリップの形状指標、A(x)はストリップ幅方向重み係数、R(x)はクラウンロールのストリップ幅方向プロフィールに基づく重み係数である。
【0030】
ここで形状検出手段106から出力される形状指標は、一般にストリップ幅方向に複数個配置された測定点での検出値として、幅方向に離散化された状態で出力される。このような離散化された形状指標に対して式(1)、(2)で算出するには、例えば以下のように演算処理を行えば良い。
【0031】
形状指標として伸び率差を使用する場合を例に説明する。伸び率差は、断面内で最も伸びが小さい位置で0値を取り、伸びが大きい位置ほど大きい値となる形状指標である。今、伸び率差が幅方向に2M+1(Mは1以上の整数)点に離散化されている場合、次式(3)で表すことができる。
【0032】
【数2】
【0033】
ここで添え字1から2M+1は幅方向に付与された測定点番号であり、M+1がストリップ幅方向中心位置に対応する。iはストリップの通板方向の測定点を示すもので、式(3)は通板方向同一位置の伸び率差から構成されている。
【0034】
また、測定点番号の各点と実際のストリップ幅方向の位置情報は、式(4)で表される。
【0035】
【数3】
【0036】
図3に測定点番号と伸び率差を図示した例を示す。図3では、XM+1を幅方向座標の原点としている為、ストリップ幅がWの場合、X1が−W/2、X2M+1がW/2となる。
【0037】
次にプロセスコンピュータ108より、クラウンロールのプロフィールを反映した重み係数のストリップ幅方向分布関数R(x)が入力される。形状指標が、式(3)の如く幅方向2M+1点に離散化されている場合、R(x)も同じ点での離散値が与えられれば良く、この場合は式(5)で表すことができる。
【0038】
【数4】
【0039】
R(x)の値としては、例えばストリップ幅方向中心で最もロール径が大きいM+1番目の位置に対応するrMを重み1とし、両エッジ側に掛けて、クラウンロールのプロフィール形状を反映して重みを低減させる方法がある。また、ある程度のトン数の鋼板を処理した後では搬送ロールの摩耗が発生し、クラウンロール交換直後に比べて表面粗度やプロフィールが変化することを考慮して、R(x)の値を決定しても良い。具体的には、例えばプロセスコンピュータ108のメモリに、連続処理設備の鋼板通板量と重み係数R(x)の対応テーブルを記憶させ、更に前回のクラウンロール交換以降の累積処理トン数に基づいて、対応する重み係数分布を決定し、重み付き形状指標左右差算出手段101に入力する方法がある。
【0040】
次に、上記の入力情報を用いて行う具体的な計算について説明する。式(3)で表現された伸び率差εに対して、鋼板のセンタ位置に相当するM+1位置を対称軸にして、分布をグラフの左側1〜M+1の領域と、右側M+1〜2M+1の領域に二分割する。図3の例では前者が冷間圧延工程のドライブサイド(DS)側、後者がワークサイド(WS)側に相当する為、以降の説明では、1〜M+1の領域をDS側分布、M+1〜2M+1の領域をWS側分布と呼称する。
【0041】
そして、形状検出手段106の各測定位置がカバーする測定範囲を、hj(j=1〜2M+1)と記載するものとすると、まずDS側分布に対して、伸び率差と測定範囲を乗じた下記の式(6)の指標を算出する。これによって測定範囲の大小に比例した重みを乗ずることになる。
【0042】
【数5】
【0043】
次に、式(6)に対して、ストリップ幅方向中心からの距離を重み係数として乗ずる処理を行う。測定点番号と幅方向の座標位置は式(4)で表される為、式(7)に示すように、幅方向中心位置に対応するM+1の点から各測定点への距離を乗ずる計算を行えば良い。
【0044】
【数6】
【0045】
ここで、"||"は、記号内の計算結果の絶対値を意味しており、座標の原点の取り方によって距離が負値となる不都合が無いように導入したものである。式(7)によって、ストリップ幅方向中心より離れた位置の伸びがストリップの蛇行に大きく影響することを反映した重み付けを行っている。
【0046】
また図3に示すように、クラウンロールのプロフィールを反映した重み係数R(x)の内、DS側分布に対応する位置の係数を選択して、式(7)の各成分に乗ずる処理を行う。下記の式(8)は、その演算結果を示す数式である。
【0047】
【数7】
【0048】
さらに、各測定位置からの蛇行への寄与分を合計して、重み付き形状指標のDS側成分、下記の式(9)を算出する。このようにストリップ幅方向中心位置から最エッジまでの伸び率差全てを考慮した指標とする事で、例えばストリップクォータ部の伸びも考慮した指標が実現できている。
【0049】
【数8】
【0050】
WS側分布に対しても、DS側分布と同様の演算処理を行って、下記の式(10)の重み付き形状指標のWS側成分を算出する。
【0051】
【数9】
【0052】
さらに、下記の式(11)の演算を行って、重み付き形状指標左右差を算出し、結果を形状統計量算出手段110に引き渡すようにする。
【0053】
【数10】
【0054】
また、形状検出手段106から入力される形状指標が、ストリップの通板方向の複数の位置における形状指標である場合は、入力された通板方向位置での形状指標それぞれに対して、上記の式(1)〜式(11)用いた演算処理を行って重み付き形状指標左右差Mを算出し、ストリップの通板方向位置座標の情報も付与して形状統計量算出手段110に引き渡すようにする。
【0055】
以上の実施の形態の説明では、形状検出手段106からの出力が式(3)で表される幅方向に離散化されたデータの場合について説明したが、重み付き形状指標左右差算出手段101の実施の形態は、この説明に限定されるものではなく、式(1)及び(2)で表される計算と本質的に等価な演算処理であれば、全て本発明の範疇に含まれる。また、形状指標として、波高さや急峻率、或いは伸び率差に定数100000を乗じたI−unit指標など、伸び率差以外の指標を用いた場合も、本発明の範疇に入ることは言うまでもない。
【0056】
図2に戻り、110は、形状統計量算出手段であり、上述したような金属ストリップの通板方向の座標情報と、対応する位置での重み付き形状指標左右差Midiffとを重み付き形状指標左右差算出手段101から出力され、それらに基づいて、金属ストリップの全長、或いは通板方向に分割された各分割区分での統計量を算出する処理を行う。
【0057】
具体的な算出方法としては、例えば予め設定された蛇行の評価単位長さに基づいて、コイルを仮想的に分割する通板方向分割位置を決定し、各分割区分における重み付き形状指標左右差の平均値、最大値、最小値、範囲値、積分値などの統計指標を計算する方法がある。すなわち、金属ストリップの全長が3000mで、評価単位長さが100mの場合、通板方向の分割位置を100m、200m、300m、…、2900mmと設定し、0mから100mの範囲における重み付き形状指標左右差の平均値、最大値、最小値、範囲値、積分値などを計算して、当該分割区分の統計量として算出する処理を、全ての分割区分に対して行えば良い。また、本発明で利用できる統計量としては、上述の平均値、最大値、最小値、範囲値、積分値に限定されるものではなく、データの特徴を表す特性指標として統計理論や信号処理理論の分野で提案された諸量を用いた場合も、本発明の範疇である。
【0058】
105は、蛇行量推定モデル作成手段であり、蛇行検出手段107にて測定された蛇行量の実績データと、前記形状統計量算出手段110で算出された重み付き形状指標左右差の統計量のデータとに基づいて、金属ストリップが連続処理設備を通過する際の蛇行量を推定するモデルを作成する。推定モデルの出力は、金属ストリップの各分割区分の蛇行量であり、入力は予測対象区分、及びその前段部の複数の分割区分それぞれにおける重み付き形状指標左右差の複数の統計量である。このような、複数の入力因子に基づいて予測を行う推定モデルとしては、例えば、IF−THENルールモデルがある。
【0059】
IF−THENルールモデルとは、「ある前提条件Aを満たした場合は、Bと判断する」、といった判断の形式で表現されたモデルである。本発明においては、前提条件に前記形状統計量に関する不等式を用い、更に複数個の不等式を論理演算子であるANDやORで組み合わせた論理式を用いる。具体的な一例を示すと、蛇行の評価単位長さを100mに設定して100m単位での蛇行量を推定するものとし、蛇行予測対象の分割区分h0、及びその100m前段の分割区分h1における重み付き形状指標左右差の平均値を入力とするモデルであって、例えば、以下のような前提条件と結論部の組合せで表現されるものである。
【0060】
前提条件A:「h1における重み付き形状指標左右差の平均値 ≧ 3」AND 「h0における重み付き形状指標左右差の平均値 ≧ 6」の場合、
結論部B:「h0に横変位量30mmを超える蛇行が発生する」
【0061】
このようなIF−THENルールモデルをデータから導出する手段としては、例えば非特許文献1に記載された相関ルール抽出アルゴリズムを用いれば良い。相関ルール抽出は、OK及びNGといったカテゴリで表現される予測変数と、数値若しくはカテゴリで表現される入力変数のセットからなる実績データを用いて、高い頻度で発生している入力変数の不等式と予測変数の組合せをIF−THENルールとして自動的に抽出するものである。本発明の場合は、蛇行実績を元に大蛇行が発生したか否かをOK/NGといったカテゴリで表される変数で表現し、重み付き形状指標左右差の統計量を入力変数としたデータセットを作成し、相関ルール抽出アルゴリズムを適用して得られるIF−THENルールを予測モデルとすることで、蛇行量推定IF−THENルールモデルを得ることができる。また、前記蛇行量推定IF−THENルールモデルの結論部は、上述の例のような大蛇行発生の有無を表すOK/NGといったカテゴリに限定されるものではなく、例えば蛇行量の平均値や最大値といった蛇行の程度を定量的に表現する数値、若しくは蛇行量の確率密度関数、或いは蛇行量の度数分布といった蛇行量の発生程度とバラツキを表現する数式やテーブルでも良い。このような蛇行の程度を表す数値指標や数式、及びテーブルは、例えば上記の相関ルール抽出アルゴリズムで導出されたIF−THENルールの条件部に適合する実績データを選択し、これらのデータの蛇行実績を用いて、平均値や最大値を算出する、或いは正規分布関数における平均値や標準偏差のような予め設定された確率密度関数のパラメータを算出する、更には蛇行量の度数分布を求めてテーブルに登録するよう装置に処理させることで得ることが出来る。
【0062】
また、複数の入力因子に基づいて予測を行う別の推定モデルとしては、非特許文献2に記載された決定木モデルがある。決定木モデルは、図4に示すような複数の分岐点が階層的に組み合わされた木構造で表現されるモデルであって、ノード(節)と呼ばれる分岐点には入力変数に関する不等式が設定されており、一方リーフ(葉)と呼ばれる分岐の最下点には、データの予測値が設定されている。ルート(根)と呼ばれる最上部の分岐点より、データを順次ノードの不等式に基づいて分類し、最後に適合したリーフの予測値を、そのデータの予測値とする。このような決定木モデルをデータから導出する手段としては、例えば非特許文献2に記載されたC4.5アルゴリズムを用いれば良い。
【0063】
C4.5アルゴリズムは、OK及びNGといったカテゴリで表現される予測変数と、数値若しくはカテゴリで表現される入力変数のセットからなる実績データを用いて、予測変数のデータの分類の良否を情報理論の分野で提案された情報量エントロピーを尺度として評価し、決定木モデルを自動的に作成するものである。本発明の場合は、蛇行実績を元に大蛇行が発生したか否かをOK/NGといったカテゴリで表される変数で表現して、重み付き形状指標左右差の統計量を入力変数としたデータセットを作成し、C4.5アルゴリズムを適用して得られる決定木を予測モデルとすることで、蛇行量推定決定木モデルを得ることができる。また、前記蛇行量推定決定木モデルの結論部は、上述の例のような大蛇行発生の有無を表すOK/NGといったカテゴリに限定されるものではなく、例えば蛇行量の平均値や最大値といった蛇行の程度を定量的に表現する数値、若しくは蛇行量の確率密度関数、或いは蛇行量の度数分布といった蛇行量の発生程度とバラツキを表現する数式やテーブルでも良い。このような蛇行の程度を表す数値指標や数式、及びテーブルは、例えば上記のC4.5アルゴリズムで導出された決定木の各リーフの蛇行実績データを選択し、その平均値や最大値を算出する、或いは正規分布関数における平均値や標準偏差のような予め設定された確率密度関数のパラメータを算出する、更には蛇行量の度数分布を求めてテーブルに登録するよう装置に処理させることで得ることが出来る。
【0064】
蛇行量推定モデル作成手段105は、上記の何れかの手順で作成・更新した蛇行量推定モデルを、蛇行量推定手段102に出力する。
【0065】
図2に戻り、102は、蛇行量推定手段である。この蛇行量推定手段102は、蛇行量推定モデル作成手段105より出力された蛇行推定モデルを用いて、当該金属ストリップが連続処理設備を通板する時の蛇行量を推定する処理を行う。具体的には、形状統計量算出手段110で算出されたストリップの重み付き形状指標左右差の通板方向の各分割区分における統計量を蛇行推定モデルの入力とし、IF−THENルールや決定木など、モデルの種類に即した演算処理を行うことで、蛇行量を推定する。以下には、正規分布関数で近似した蛇行発生の確率密度を決定木モデルによって推定する場合を例に説明する。
【0066】
予測したいストリップの重み付き形状指標左右差の統計量を入力データとして、蛇行推定決定木モデルのルートの不等式から順次、木構造に基づいて分類する。最後に適合したリーフには、蛇行発生の確率密度を表すパラメータである正規分布関数の中心値と標準偏差が設定されており、これを取り出し、生産障害危険率推定手段103に出力する。
【0067】
103は、生産障害危険率推定手段である。この生産障害危険率推定手段103は、蛇行量推定手段102より出力された蛇行推定量に基づき、重大な生産障害の原因となる、ストリップと連続処理設備通板ラインの構造物の接触が発生する危険率を推定する。以下には、蛇行量推定手段102からは、ストリップの蛇行量推定量として、蛇行生の確率密度を正規分布関数で近似した場合のパラメータである中心値Y0と標準偏差が入力される場合を例に説明する。
【0068】
まず、プロセスコンピュータ108からは、蛇行量を推定したストリップの幅サイズが入力される。前記幅サイズを用いて、生産障害危険率推定手段103では、予め判明している連続処理設備通板ラインの構造物とストリップの距離を算出する。例えば通板ラインの幅方向両サイドにあるガイド間の距離がW2、ストリップ幅がWの場合、ストリップ幅方向中心がラインセンタに一致しているとの前提で、ストリップ両エッジとサイドガイド間の距離Dは、式(12)で算出できる。
【0069】
【数11】
【0070】
次に、推定を行う上で前提としたい確率α(例えばα=80%)を設定し、図5(a)に示すように、その確率値に対応する蛇行量の範囲Y1、Y2を、例えば正規分布関数の逆累積確率分布関数を計算することで算出する。
【0071】
さらに、確率α%の前提で推定された蛇行量の範囲Y1及びY2を、前記ストリップ両エッジ−サイドガイド間距離Dと比較する処理を行い、Y1、Y2のいずれかが距離Dよりも大きい場合は、過去の事例から推定して確率α%でストリップがサイドガイドに衝突すると判定して、アラート信号と判定結果を危険率表示手段104に出力する。
【0072】
また、蛇行量の範囲Y1、Y2の何れも±Dより小さい場合には、図5(b)に示すように、蛇行量の正規分布関数の中心位置Y0と標準偏差の情報に基づいて、蛇行量がエッジ−サイドガイド間距離Dを越える確率βを推定する。このとき確率βは、(1−α)よりも小さな確率値であって、発生する可能性は低いものの、過去の事例から推定されたストリップとサイドガイドの衝突確率を定量的に表現する値である。この確率値βを危険率表示手段104に出力する。
【0073】
危険率表示手段104においては、生産障害危険率推定手段103より出力されたストリップとサイドガイドの衝突アラート信号、或いは衝突確率βを連続処理設備の操業オペレータに提示する処理を行う。この提示された情報に基づいて、オペレータは、例えば危険率の高いストリップについてのみ搬送速度を低速に設定して操業する、といった危険回避の為のアクションをとることができる。
【0074】
次に図6に示すフローチャートを用いて、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援方法を説明する。
【0075】
ステップS201は、形状検出工程であって、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援装置においては、図2の形状検出手段106に対応する。ここでは、ストリップの連続処理装置の入側、若しくは前工程の出側でストリップの形状を連続的若しくは間欠的に測定し、定量的な形状指標として出力する処理を行う。
【0076】
ステップS202は、重み付き形状指標左右差算出工程であって、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援装置においては、図2の重み付き形状指標左右差算出手段101に対応する。形状検出工程ステップS201より出力された形状指標に対して、上記でも説明した以下の数式(1)、(2)に基づいて重み付き形状指標左右差Mを算出する処理を行う。
【0077】
【数12】
【0078】
但し、Mは重み付き形状指標左右差、xは金属ストリップ幅方向中心を基準とする幅方向座標、Wは金属ストリップ幅、ε(x)は通板方向のある位置における金属ストリップの形状指標、A(x)はストリップ幅方向重み係数、R(x)はクラウンロールのストリップ幅方向プロフィールに基づく重み係数とする。
【0079】
ステップS203は、形状統計量算出工程であって、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援装置においては、図2の形状統計量算出手段に対応する。重み付き形状指標左右差算出工程ステップS202より出力されたストリップの全長、或いは通板方向に分割された各分割区分での統計量を算出する処理を行う。
【0080】
次にステップS204において、蛇行量推定モデルが既に作成されているか、を判定する処理を行う。既に蛇行量推定モデルが作成されている場合は、重み付き形状指標左右差Mを蛇行量推定工程ステップS207に出力する。未だ蛇行量推定モデルが作成されていない場合は、重み付き形状指標左右差Mを蛇行検出工程ステップS205に出力して、さらに蛇行量実績データと共に、蛇行量推定モデル作成工程ステップS206に出力する。
【0081】
ステップS206は、蛇行量推定モデル作成工程であって、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援装置においては、図2の蛇行量推定モデル作成手段105に対応する。
【0082】
ステップS207は、蛇行量推定工程であって、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援装置においては、図2の蛇行量推定手段102に対応する。蛇行量推定モデル作成工程ステップS206より出力された蛇行量推定モデル、及び前記重み付き形状指標左右差算出工程ステップS202で算出された重み付き形状指標左右差Mに基づいて、当該金属ストリップが連続処理設備を通板する時の蛇行量を推定する処理を行う。
【0083】
ステップS208は、生産障害危険率推定工程であって、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援装置においては、図2の生産障害危険率推定手段103に対応する。蛇行量推定工程ステップS207より出力された蛇行推定量に基づき、重大な生産障害の原因となる、ストリップと連続処理設備通板ラインの構造物の接触が発生する危険率を推定する処理を行う。
【0084】
次にステップS209において、ストリップの全長に対する蛇行量推定、及び生産障害危険率推定が完了したか、を判定する処理を行い、未だであれば形状検出工程S201以降の処理を、再度実行する。全長に対する推定が完了している場合は、推定結果を危険率表示工程ステップS210に出力する。
【0085】
ステップS210は、危険率表示工程であって、本実施の形態のストリップの連続処理設備における操業支援装置においては、図2の危険率表示手段104に対応するものである。
【0086】
以上に述べた本実施の形態による金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置、及び操業支援方法によれば、処理設備入側の形状指標から重み付き形状指標左右差を算出する為、従来の技術よりも高精度で蛇行量を推定し、更には生産障害につながるストリップとライン構造物の衝突危険率を推定し、予め操業オペレータに提示することが可能である。この結果、オペレータは、蛇行する危険率の高いストリップに対してのみ低速操業を実施し、必要以上に処理能力を損なうことなく操業トラブルを回避することが可能である。
【0087】
(実施例)
以下には、鉄鋼の薄板製品の連続焼鈍処理設備について、その前段階の工程である冷間圧延工程の出側に設置された形状指標に基づき、連続焼鈍処理設備の加熱炉内で発生する薄板の蛇行量、及び薄板が加熱炉内で構造物に接触する危険率を推定し、連続焼鈍処理設備の操業オペレータに提示することで、操業支援を行った実施例について述べる。今回の実施例においては、本発明に係る操業支援装置をコンピュータ上のプログラムとして実現した。
【0088】
冷間圧延工程にて測定された伸び率差は、逐次、形状指標を処理する計算機のメモリ上にバッファリングされ、コイル全長分の測定が完了した時点で、操業支援装置を実現したコンピュータに入力される。入力された伸び率差は、通板方向に10mピッチでサンプリングされ、コイル単位のファイルに加工された上で、更に検索に使用するためのコイル番号を付与された形式で、コンピュータ内のハードディスクに保存されるものとした。
【0089】
次に連続焼鈍処理設備で熱処理を行うロットが確定した時点で、上位計算機よりロットを構成するコイルの番号が、操業支援装置に送信される。この際、同時にクラウンロールについての情報も入力されるようにしてもよい。引き渡されたコイル番号に基づいて、コンピュータ内のハードディスクより伸び率差のファイルを検索し、各コイルの重み付き形状指標左右差を10mピッチで算出するものとした。コンピュータの記憶手段であるハードディスクには、図11と同様の重み付き形状指標左右差と蛇行量の実績データのセットを保存し、10mピッチで算出された重み付き形状指標左右差に基づいて、事例ベース推論を応用して蛇行量を推定する機能を実現した。
【0090】
蛇行量の推定に当っては、事前の操業試験テストの結果を踏まえ、確率80%を前提として蛇行量が取り得る範囲を操業オペレータに提示するものとした。また、生産障害危険率としては、焼鈍設備の加熱炉内の炉壁間隔2000mmを前提とし、ストリップ幅に応じて算出される薄板のエッジと炉壁間距離に基づいて、蛇行によるストリップと炉壁の衝突による生産障害危険率を算出するものとした。
【0091】
操業オペレータに対しては、現在処理している薄板コイルも含めて、現時点以降処理予定のコイル50本について、全長の推定蛇行量と危険率を提示する機能とした。
【0092】
上記の操業支援装置によって、連続焼鈍処理設備の操業オペレータに蛇行量と危険率の推定量を提示するシステムを実現し、運用を行った結果、炉壁と薄板の接触によるスリ疵の発生率低減、ストリップ破断による操業ライン停止トラブルの回数減少、更には製品歩留まりの向上、製品手入れの省力化、品質トラブルによる納期遅れの回避などの効果を得ることができた。一方、蛇行による操業トラブル発生懸念材に対する低速操業を実施したことで、生産量が低減することが予想されたが、実際には低速操業を必要とする懸念材の発生量は軽微であり、生産量への影響は見られなかった。
【0093】
なお、今回の実施例では、コンピュータ上のプログラムとして操業支援装置を実現したが、演算装置、メモリ等を組み合わせたハードウェアによって構成されるものであっても良い。
【0094】
また、本発明の金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置は、複数の機器から構成されるものであっても、一つの機器から構成されるものであっても良い。
【0095】
また、上述した実施の形態は、コンピュータのCPU或いはMPU、RAM、ROM等で構成されるものであり、RAMやROMに記録されたプログラムが動作することで実施される。したがって、前記実施の形態の機能を実現するためのソフトウェアのプログラムコードをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムコードを格納した記録媒体は本発明の範疇に含まれる。
【0096】
さらに、今回の実施例では、鉄鋼の薄板製品の連続焼鈍処理設備について、その前段階の工程である冷間圧延工程出側の形状指標に基づきガイダンスを行う操業支援装置を実現したが、操業支援の対象となる設備、及びその前段階の工程である設備は、これらに限定されるものではない。例えば、亜鉛メッキ処理設備に対し、その前段階の工程である冷間圧延工程出側の形状指標に基づきガイダンスを行う操業支援装置、或いは錫メッキ処理設備に対し、その前段階の工程である連続焼鈍処理設備出側の形状指標に基づきガイダンスを行う操業支援装置なども、本発明の範疇に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施の形態に係る金属ストリップの連続処理設備の一例の概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置の概略を示すブロック図である。
【図3】重み付き形状指標左右差を計算する処理を説明する図である。
【図4】決定木モデルを説明する図である。
【図5】蛇行発生の確率密度をモデルによる推定量とした場合の生産障害発生率推定処理を説明する図であり、(a)は、蛇行量の度数分布を正規分布と仮定した場合に、蛇行量を推定する処理を模式的に説明する図であり、(b)は蛇行量の正規分布関数の情報に基づいて、蛇行量がエッジ−サイドガイド間距離Dを越える確率βを推定する処理を模式的に説明する図である。
【図6】本発明の金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法の実施の一形態の処理フローの概略を示すフローチャートである。
【図7】ストリップ全長における重み付き形状指標左右差と、連続処理設備を通板した際の蛇行量及びステアリング操作量を示す図である。
【図8】冷間圧延工程の出側で測定した薄板コイル全長の伸び率差分布を表示した図である。
【図9】金属ストリップの典型的な形状不良の例を説明する図である。
【図10】伸び率差の概念を示す説明図である。
【図11】金属ストリップの形状指標から算出した重み付き形状指標左右差と、金属ストリップ蛇行量の散布図である。
【図12】金属ストリップ両エッジ部の伸び率の差分量と、金属ストリップ蛇行量の散布図である。
【符号の説明】
【0098】
101 重み付形状指標左右差算出手段
102 蛇行量推定手段
103 生産障害危険率推定手段
104 危険率表示手段
105 蛇行量推定モデル作成手段
106 形状検出手段
107 蛇行検出手段
108 プロセスコンピュータ
109 クラウンロール
110 形状統計量算出手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属ストリップをクラウンロールを用いて連続的に通板しながら処理する金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置であって、
前記連続処理設備の入側において金属ストリップの形状を連続的若しくは間欠的に測定し、定量的な形状指標を金属ストリップ通板方向位置と対応させて出力する形状検出手段と、
前記クラウンロールの幅方向のプロフィールならびに金属ストリップの幅を取り込む入力手段と、
前記形状指標に対して金属ストリップの幅方向センタを基準軸として、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールから該金属ストリップの幅方向位置の重み付けを行い、重み付けした該金属ストリップの左右差の指標である重み付き形状指標左右差の実績データを算出する重み付き形状指標左右差算出手段と、
金属ストリップの通板方向の複数位置で算出された前記重み付き形状指標左右差から、金属ストリップの全長、或いは金属ストリップを通板方向に分割した各分割区分における複数の形状統計量を算出する形状統計量算出手段と、
前記連続処理設備内を前記金属ストリップが通過する際の進行方向と直交する方向への蛇行量を検出する蛇行検出手段と、
重み付き形状指標左右差の実績データと蛇行量の実績データとを紐付けして保存する記憶手段と、
複数の金属ストリップについての該蛇行量の実績データと、前記重み付き形状指標左右差から算出された金属ストリップ全長、或いは通板方向の各分割区分における複数の形状統計量とに基づいて、当該ストリップが前記連続処理設備を通過する際の蛇行量を推定する蛇行量推定モデルを作成する蛇行量推定モデル作成手段と、
新たな金属ストリップに対して得られた前記重み付き形状指標左右差、及び前記複数の形状統計量に基づいて、前記蛇行量推定モデルを用いて前記連続処理設備を前記新たな金属ストリップが通板する際の蛇行量を推定する蛇行量推定手段と、
該蛇行量の推定値に基づいて、予め設定した種類の生産障害を前記新たな金属ストリップが発生させる危険率を推定する生産障害危険率推定手段と、
前記危険率を連続処理設備の操業オペレータに提示する危険率表示手段とを備えることを特徴とする金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置。
【請求項2】
前記重み付き形状指標左右差算出手段は、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールに基づく該金属ストリップの幅方向位置の重み付けから得られた金属ストリップ幅方向重み係数を前記幅方向位置xの関数A(x)で表し、式(1)で定義される定積分により前記重み付き形状指標左右差を算出することを特徴とする請求項1に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置。
【数1】
但し、Mは重み付き形状指標左右差、xは金属ストリップ幅方向中心を基準とする幅方向座標、Wは金属ストリップ幅、ε(x)は通板方向のある位置における金属ストリップの形状指標、A(x)は金属ストリップ幅方向重み係数である。
【請求項3】
前記金属ストリップ幅方向重み係数A(x)は、式(2)で表されることを特徴とする請求項2に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置。
【数2】
但し、R(x)はクラウンロールの幅方向プロフィールに基づく重み係数である。
【請求項4】
前記蛇行量推定モデル作成手段は、形状統計量と蛇行量の実績に基づいて前記形状統計量の範囲を表した不等式が複数個組み合わされたルールを条件部とし、前記条件部に合致した場合の蛇行量、若しくは蛇行量の確率密度関数、或いは蛇行量の度数分布を、結論部とするIF−THENルールで表現される蛇行量推定モデルを作成し、
前記蛇行量推定手段は、この蛇行量推定IF−THENルールモデルに基づいて蛇行量を推定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置。
【請求項5】
前記蛇行量推定モデル作成手段は、形状統計量と蛇行量の実績に基づいて前記形状統計量の範囲を表した不等式を階層的に組み合わせて、蛇行量、若しくは蛇行量の確率密度関数、或いは蛇行量の度数分布を予測する決定木モデルを作成して蛇行量推定決定木モデルとし、
前記蛇行量推定手段は、該蛇行量推定決定木モデルに基づいて蛇行量を推定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置。
【請求項6】
前記形状指標は、金属ストリップの通板方向伸び率差の幅方向分布、波高さの幅方向分布、金属ストリップ急峻率の幅方向分布、又はこれらの各指標を定数倍することで定義される指標であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置。
【請求項7】
前記金属ストリップ連続処理装置は、鉄鋼薄板コイルの連続焼鈍設備、又は亜鉛メッキや錫メッキによる表面処理設備であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置。
【請求項8】
複数の金属ストリップをクラウンロールを用いて連続的に通板しながら処理する金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法であって、
前記連続処理設備の入側において金属ストリップの形状を連続的若しくは間欠的に測定し、定量的な形状指標を金属ストリップ通板方向位置と対応させて出力する形状検出工程と、
前記クラウンロールの幅方向のプロフィールならびに金属ストリップの幅を取り込む入力工程と、
前記形状指標に対して金属ストリップの幅方向センタを基準軸として、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールから該金属ストリップの幅方向位置の重み付けを行い、重み付けした該金属ストリップの左右差の指標である重み付き形状指標左右差の実績データを算出する重み付き形状指標左右差算出工程と、
金属ストリップの通板方向の複数位置で算出された前記重み付き形状指標左右差から、金属ストリップの全長、或いは金属ストリップを通板方向に分割した各分割区分における複数の形状統計量を算出する形状統計量算出工程と、
前記連続処理設備内を前記金属ストリップが通過する際の進行方向と直交する方向への蛇行量を検出する蛇行検出工程と、
重み付き形状指標左右差の実績データと蛇行量の実績データとを紐付けして保存する記憶工程と、
複数の金属ストリップについての該蛇行量の実績データと、前記重み付き形状指標左右差から算出された金属ストリップ全長、或いは通板方向の各分割区分における複数の形状統計量とに基づいて、当該ストリップが前記連続処理設備を通過する際の蛇行量を推定する蛇行量推定モデルを作成する蛇行量推定モデル作成工程と、
新たな金属ストリップに対して得られた前記重み付き形状指標左右差、及び前記複数の形状統計量に基づいて、前記蛇行量推定モデルを用いて前記連続処理設備を前記新たな金属ストリップが通板する際の蛇行量を推定する蛇行量推定工程と、
該蛇行量の推定値に基づいて、予め設定した種類の生産障害を前記新たな金属ストリップが発生させる危険率を推定する生産障害危険率推定工程と、
前記危険率を連続処理設備の操業オペレータに提示する危険率表示工程とを有することを特徴とする金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法。
【請求項9】
前記重み付き形状指標左右差算出工程は、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールに基づく該金属ストリップの幅方向位置の重み付けから得られた金属ストリップ幅方向重み係数を前記幅方向位置xの関数A(x)で表し、式(1)で定義される定積分により前記重み付き形状指標左右差を算出することを特徴とする請求項8に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法。
【数3】
但し、Mは重み付き形状指標左右差、xは金属ストリップ幅方向中心を基準とする幅方向座標、Wは金属ストリップ幅、ε(x)は通板方向のある位置における金属ストリップの形状指標、A(x)は金属ストリップ幅方向重み係数である。
【請求項10】
前記金属ストリップ幅方向重み係数A(x)は、式(2)で表されることを特徴とする請求項9に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法。
【数4】
但し、R(x)はクラウンロールの金属ストリップ幅方向プロフィールに基づく重み係数である。
【請求項11】
前記蛇行量推定モデル作成工程は、形状統計量と蛇行量の実績に基づいて前記形状統計量の範囲を表した不等式が複数個組み合わされたルールを条件部とし、前記条件部に合致した場合の蛇行量、若しくは蛇行量の確率密度関数、或いは蛇行量の度数分布を、結論部とするIF−THENルールで表現される蛇行量推定モデルを作成し、
前記蛇行量推定工程は、この蛇行量推定IF−THENルールモデルに基づいて蛇行量を推定することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法。
【請求項12】
前記蛇行量推定モデル作成工程は、形状統計量と蛇行量の実績に基づいて前記形状統計量の範囲を表した不等式を階層的に組み合わせて、蛇行量、若しくは蛇行量の確率密度関数、或いは蛇行量の度数分布を予測する決定木モデルを作成して蛇行量推定決定木モデルとし、
前記蛇行量推定工程は、該蛇行量推定決定木モデルに基づいて蛇行量を推定することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法。
【請求項13】
前記形状指標は、金属ストリップの通板方向伸び率差の幅方向分布、波高さの幅方向分布、金属ストリップ急峻率の幅方向分布、又はこれらの各指標を定数倍することで定義される指標であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法。
【請求項14】
前記金属ストリップの連続処理設備は、鉄鋼薄板コイルの連続焼鈍設備、又は亜鉛メッキや錫メッキによる表面処理設備であることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法。
【請求項15】
複数の金属ストリップをクラウンロールを用いて連続的に通板しながら処理する金属ストリップの連続処理設備における操業支援のためのコンピュータプログラムであって、
前記連続処理設備の入側において金属ストリップの形状を連続的若しくは間欠的に測定し、定量的な形状指標を金属ストリップ通板方向位置と対応させて出力する形状検出処理と、
前記クラウンロールの方向のプロフィールならびに金属ストリップの幅を取り込む入力処理と、
前記形状指標に対して金属ストリップの幅方向センタを基準軸として、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールから該金属ストリップの幅方向位置の重み付けを行い、重み付けした該金属ストリップの左右差の指標である重み付き形状指標左右差の実績データを算出する重み付き形状指標左右差算出処理と、
金属ストリップの通板方向の複数位置で算出された前記重み付き形状指標左右差から、金属ストリップの全長、或いは金属ストリップを通板方向に分割した各分割区分における複数の形状統計量を算出する形状統計量算出処理と、
前記連続処理設備内を前記金属ストリップが通過する際の進行方向と直交する方向への蛇行量を検出する蛇行検出処理と、
重み付き形状指標左右差の実績データと蛇行量の実績データとを紐付けして保存する記憶処理と、
複数の金属ストリップについての該蛇行量の実績データと、前記重み付き形状指標左右差から算出された金属ストリップ全長、或いは通板方向の各分割区分における複数の形状統計量とに基づいて、当該ストリップが前記連続処理設備を通過する際の蛇行量を推定する蛇行量推定モデルを作成する蛇行量推定モデル作成処理と、
新たな金属ストリップに対して得られた前記重み付き形状指標左右差、及び前記複数の形状統計量に基づいて、前記蛇行量推定モデルを用いて前記連続処理設備を前記新たな金属ストリップが通板する際の蛇行量を推定する蛇行量推定処理と、
該蛇行量の推定値に基づいて、予め設定した種類の生産障害を前記新たな金属ストリップが発生させる危険率を推定する生産障害危険率推定処理と、
前記危険率を連続処理設備の操業オペレータに提示する危険率表示処理とをコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
複数の金属ストリップをクラウンロールを用いて連続的に通板しながら処理する金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置であって、
前記連続処理設備の入側において金属ストリップの形状を連続的若しくは間欠的に測定し、定量的な形状指標を金属ストリップ通板方向位置と対応させて出力する形状検出手段と、
前記クラウンロールの幅方向のプロフィールならびに金属ストリップの幅を取り込む入力手段と、
前記形状指標に対して金属ストリップの幅方向センタを基準軸として、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールから該金属ストリップの幅方向位置の重み付けを行い、重み付けした該金属ストリップの左右差の指標である重み付き形状指標左右差の実績データを算出する重み付き形状指標左右差算出手段と、
金属ストリップの通板方向の複数位置で算出された前記重み付き形状指標左右差から、金属ストリップの全長、或いは金属ストリップを通板方向に分割した各分割区分における複数の形状統計量を算出する形状統計量算出手段と、
前記連続処理設備内を前記金属ストリップが通過する際の進行方向と直交する方向への蛇行量を検出する蛇行検出手段と、
重み付き形状指標左右差の実績データと蛇行量の実績データとを紐付けして保存する記憶手段と、
複数の金属ストリップについての該蛇行量の実績データと、前記重み付き形状指標左右差から算出された金属ストリップ全長、或いは通板方向の各分割区分における複数の形状統計量とに基づいて、当該ストリップが前記連続処理設備を通過する際の蛇行量を推定する蛇行量推定モデルを作成する蛇行量推定モデル作成手段と、
新たな金属ストリップに対して得られた前記重み付き形状指標左右差、及び前記複数の形状統計量に基づいて、前記蛇行量推定モデルを用いて前記連続処理設備を前記新たな金属ストリップが通板する際の蛇行量を推定する蛇行量推定手段と、
該蛇行量の推定値に基づいて、予め設定した種類の生産障害を前記新たな金属ストリップが発生させる危険率を推定する生産障害危険率推定手段と、
前記危険率を連続処理設備の操業オペレータに提示する危険率表示手段とを備えることを特徴とする金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置。
【請求項2】
前記重み付き形状指標左右差算出手段は、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールに基づく該金属ストリップの幅方向位置の重み付けから得られた金属ストリップ幅方向重み係数を前記幅方向位置xの関数A(x)で表し、式(1)で定義される定積分により前記重み付き形状指標左右差を算出することを特徴とする請求項1に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置。
【数1】
但し、Mは重み付き形状指標左右差、xは金属ストリップ幅方向中心を基準とする幅方向座標、Wは金属ストリップ幅、ε(x)は通板方向のある位置における金属ストリップの形状指標、A(x)は金属ストリップ幅方向重み係数である。
【請求項3】
前記金属ストリップ幅方向重み係数A(x)は、式(2)で表されることを特徴とする請求項2に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置。
【数2】
但し、R(x)はクラウンロールの幅方向プロフィールに基づく重み係数である。
【請求項4】
前記蛇行量推定モデル作成手段は、形状統計量と蛇行量の実績に基づいて前記形状統計量の範囲を表した不等式が複数個組み合わされたルールを条件部とし、前記条件部に合致した場合の蛇行量、若しくは蛇行量の確率密度関数、或いは蛇行量の度数分布を、結論部とするIF−THENルールで表現される蛇行量推定モデルを作成し、
前記蛇行量推定手段は、この蛇行量推定IF−THENルールモデルに基づいて蛇行量を推定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置。
【請求項5】
前記蛇行量推定モデル作成手段は、形状統計量と蛇行量の実績に基づいて前記形状統計量の範囲を表した不等式を階層的に組み合わせて、蛇行量、若しくは蛇行量の確率密度関数、或いは蛇行量の度数分布を予測する決定木モデルを作成して蛇行量推定決定木モデルとし、
前記蛇行量推定手段は、該蛇行量推定決定木モデルに基づいて蛇行量を推定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置。
【請求項6】
前記形状指標は、金属ストリップの通板方向伸び率差の幅方向分布、波高さの幅方向分布、金属ストリップ急峻率の幅方向分布、又はこれらの各指標を定数倍することで定義される指標であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置。
【請求項7】
前記金属ストリップ連続処理装置は、鉄鋼薄板コイルの連続焼鈍設備、又は亜鉛メッキや錫メッキによる表面処理設備であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援装置。
【請求項8】
複数の金属ストリップをクラウンロールを用いて連続的に通板しながら処理する金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法であって、
前記連続処理設備の入側において金属ストリップの形状を連続的若しくは間欠的に測定し、定量的な形状指標を金属ストリップ通板方向位置と対応させて出力する形状検出工程と、
前記クラウンロールの幅方向のプロフィールならびに金属ストリップの幅を取り込む入力工程と、
前記形状指標に対して金属ストリップの幅方向センタを基準軸として、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールから該金属ストリップの幅方向位置の重み付けを行い、重み付けした該金属ストリップの左右差の指標である重み付き形状指標左右差の実績データを算出する重み付き形状指標左右差算出工程と、
金属ストリップの通板方向の複数位置で算出された前記重み付き形状指標左右差から、金属ストリップの全長、或いは金属ストリップを通板方向に分割した各分割区分における複数の形状統計量を算出する形状統計量算出工程と、
前記連続処理設備内を前記金属ストリップが通過する際の進行方向と直交する方向への蛇行量を検出する蛇行検出工程と、
重み付き形状指標左右差の実績データと蛇行量の実績データとを紐付けして保存する記憶工程と、
複数の金属ストリップについての該蛇行量の実績データと、前記重み付き形状指標左右差から算出された金属ストリップ全長、或いは通板方向の各分割区分における複数の形状統計量とに基づいて、当該ストリップが前記連続処理設備を通過する際の蛇行量を推定する蛇行量推定モデルを作成する蛇行量推定モデル作成工程と、
新たな金属ストリップに対して得られた前記重み付き形状指標左右差、及び前記複数の形状統計量に基づいて、前記蛇行量推定モデルを用いて前記連続処理設備を前記新たな金属ストリップが通板する際の蛇行量を推定する蛇行量推定工程と、
該蛇行量の推定値に基づいて、予め設定した種類の生産障害を前記新たな金属ストリップが発生させる危険率を推定する生産障害危険率推定工程と、
前記危険率を連続処理設備の操業オペレータに提示する危険率表示工程とを有することを特徴とする金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法。
【請求項9】
前記重み付き形状指標左右差算出工程は、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールに基づく該金属ストリップの幅方向位置の重み付けから得られた金属ストリップ幅方向重み係数を前記幅方向位置xの関数A(x)で表し、式(1)で定義される定積分により前記重み付き形状指標左右差を算出することを特徴とする請求項8に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法。
【数3】
但し、Mは重み付き形状指標左右差、xは金属ストリップ幅方向中心を基準とする幅方向座標、Wは金属ストリップ幅、ε(x)は通板方向のある位置における金属ストリップの形状指標、A(x)は金属ストリップ幅方向重み係数である。
【請求項10】
前記金属ストリップ幅方向重み係数A(x)は、式(2)で表されることを特徴とする請求項9に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法。
【数4】
但し、R(x)はクラウンロールの金属ストリップ幅方向プロフィールに基づく重み係数である。
【請求項11】
前記蛇行量推定モデル作成工程は、形状統計量と蛇行量の実績に基づいて前記形状統計量の範囲を表した不等式が複数個組み合わされたルールを条件部とし、前記条件部に合致した場合の蛇行量、若しくは蛇行量の確率密度関数、或いは蛇行量の度数分布を、結論部とするIF−THENルールで表現される蛇行量推定モデルを作成し、
前記蛇行量推定工程は、この蛇行量推定IF−THENルールモデルに基づいて蛇行量を推定することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法。
【請求項12】
前記蛇行量推定モデル作成工程は、形状統計量と蛇行量の実績に基づいて前記形状統計量の範囲を表した不等式を階層的に組み合わせて、蛇行量、若しくは蛇行量の確率密度関数、或いは蛇行量の度数分布を予測する決定木モデルを作成して蛇行量推定決定木モデルとし、
前記蛇行量推定工程は、該蛇行量推定決定木モデルに基づいて蛇行量を推定することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法。
【請求項13】
前記形状指標は、金属ストリップの通板方向伸び率差の幅方向分布、波高さの幅方向分布、金属ストリップ急峻率の幅方向分布、又はこれらの各指標を定数倍することで定義される指標であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法。
【請求項14】
前記金属ストリップの連続処理設備は、鉄鋼薄板コイルの連続焼鈍設備、又は亜鉛メッキや錫メッキによる表面処理設備であることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の金属ストリップの連続処理設備における操業支援方法。
【請求項15】
複数の金属ストリップをクラウンロールを用いて連続的に通板しながら処理する金属ストリップの連続処理設備における操業支援のためのコンピュータプログラムであって、
前記連続処理設備の入側において金属ストリップの形状を連続的若しくは間欠的に測定し、定量的な形状指標を金属ストリップ通板方向位置と対応させて出力する形状検出処理と、
前記クラウンロールの方向のプロフィールならびに金属ストリップの幅を取り込む入力処理と、
前記形状指標に対して金属ストリップの幅方向センタを基準軸として、前記クラウンロールの幅方向のプロフィールから該金属ストリップの幅方向位置の重み付けを行い、重み付けした該金属ストリップの左右差の指標である重み付き形状指標左右差の実績データを算出する重み付き形状指標左右差算出処理と、
金属ストリップの通板方向の複数位置で算出された前記重み付き形状指標左右差から、金属ストリップの全長、或いは金属ストリップを通板方向に分割した各分割区分における複数の形状統計量を算出する形状統計量算出処理と、
前記連続処理設備内を前記金属ストリップが通過する際の進行方向と直交する方向への蛇行量を検出する蛇行検出処理と、
重み付き形状指標左右差の実績データと蛇行量の実績データとを紐付けして保存する記憶処理と、
複数の金属ストリップについての該蛇行量の実績データと、前記重み付き形状指標左右差から算出された金属ストリップ全長、或いは通板方向の各分割区分における複数の形状統計量とに基づいて、当該ストリップが前記連続処理設備を通過する際の蛇行量を推定する蛇行量推定モデルを作成する蛇行量推定モデル作成処理と、
新たな金属ストリップに対して得られた前記重み付き形状指標左右差、及び前記複数の形状統計量に基づいて、前記蛇行量推定モデルを用いて前記連続処理設備を前記新たな金属ストリップが通板する際の蛇行量を推定する蛇行量推定処理と、
該蛇行量の推定値に基づいて、予め設定した種類の生産障害を前記新たな金属ストリップが発生させる危険率を推定する生産障害危険率推定処理と、
前記危険率を連続処理設備の操業オペレータに提示する危険率表示処理とをコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−184644(P2008−184644A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18446(P2007−18446)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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