説明

金属ナノ粒子用保護剤、金属ナノ粒子分散体及び金属ナノ粒子分散体の製造方法

【課題】 液相還元法で生成した金属ナノ粒子を成長させず、かつ安定な分散状態を維持可能な分散体を得ることのできる金属ナノ粒子用保護剤を提供することにあり、該金属ナノ粒子用保護剤を使用した金属ナノ粒子分散体及びその金属ナノ粒子分散体の製造方法を提供する。
【解決手段】 一般式(1)で表される構造を分子中に有する高分子化合物であることを特徴とする、金属ナノ粒子用保護剤。
【化0】


(一般式(1)中、Rは、
炭素原子数1〜18の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、又は、水酸基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、置換フェニルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、カルボキシ基、カルボキシ基の塩、アルコキシカルボニル基、リン酸基、アルキルリン酸基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する炭素原子数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子用保護剤、金属ナノ粒子分散体及び金属ナノ粒子分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ナノ粒子は樹脂等の媒体と混合してインキ・塗料化が可能なことから、導電材料、触媒、センサーなどの分野で応用が試みられている。中でも金、銀、白金族等の貴金属や銅の還元ナノ粒子は、導電性材料として電子デバイスの接合、配線材料、表示装置等への利用が考えられており、有機薄膜ランジスタ、太陽電池、FPDおよび有機発光デバイス、ICタグ等の具現化に必要不可欠な素材となりうる。
導電性材料用途向け金属ナノ粒子には、低温での焼結性と高導電性の発揮が求められる為、専ら100nm以下の粒子サイズが求められているが、これを達成する為には、従来のビルドダウン式製造手法では限界があり、液相還元法によるビルドアップ式製造法の開発が盛んに行われている。具体的には、例えば、金属コロイド用保護材、金属触媒、還元剤及び有機溶媒を含む混合液に、金属前駆体を投入して所定の温度に昇温させて撹拌させ、前記混合液の温度を低めてナノ粒子を得る金属ナノ粒子の製造方法(特許文献1参照)等が知られている。また該金属コロイド用保護材自体も開発がすすみ、顔料分散剤を使用するものや(例えば特許文献2〜4参照)、窒素含有基やカルボキシ基含有メタアクリレートと末端にメタアクリロイル基を有するマクロモノマーとの共重合物を使用するもの(例えば特許文献5参照)メタクリル酸とポリエチレングリコールメタクリレートの共重合物を使用するもの(例えば特許文献6参照)、分子末端にカルボキシ基、ヒドロキシル基、スルホ基、無水フタル酸残基、チオール基等を有する高分子化合物を使用するもの(例えば特許文献7、8参照)等が知られている。
【0003】
前記金属コロイド用保護材のうち、特許文献7及び8に開示の保護材は、チオール基を有する高分子または低分子チオール化合物を添加することにより金属コロイドを安定化させる。
しかしながらチオール基を有する化合物は金属への吸着が強すぎる為、金属表面から保護剤が離脱しにくく、低温焼結性を示しにくくなるという問題があった。また、チオール化合物は元来酸化され易く、空気中でも容易にジスルフィドへと変換されるため、保存性に劣るばかりでなく、それ自身が金属化合物と反応して酸化されるので、還元剤による反応速度の制御が困難であることや、酸化により生成したジスルフィドが再還元されてスルフィドに戻るような強さの還元剤を使用しなければ、チオールとしての性質を発揮することが出来ないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−13846号公報
【特許文献2】特開平11−80647号公報
【特許文献3】特開平11−76800号公報
【特許文献4】特開2004−217940号公報
【特許文献5】特開2007−8973号公報
【特許文献6】特表2007−523258号公報
【特許文献7】特開2004−75973号公報
【特許文献8】特開2005−220435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、液相還元法で生成した金属ナノ粒子を成長させず、かつ安定な分散状態を維持可能な分散体を得ることのできる金属ナノ粒子用保護剤を提供することにあり、該金属ナノ粒子用保護剤を使用した金属ナノ粒子分散体及びその金属ナノ粒子分散体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の硫黄を含む構造を有する高分子化合物が、前記課題を解決できることを見出した。
導電性が要求される用途に金属ナノ粒子を応用する場合には、低温融着現象が発現されるべく粒子径をなるべく小さく製造することが求められる。液相還元法で生成した金属ナノ粒子を成長させず、かつ安定な分散状態を維持可能な分散体を得るためには、生成粒子の比表面積に応じた量の高分子保護剤が必要となる。一方、金属粒子上に残留する保護剤は融着温度を高める要因となるため、その使用量は必要最小限とする必要もある。本発明者らは、チオール化合物から誘導されるスルフィド結合を有する構造を有する高分子化合物が、これらの特性のバランスがとれた金属ナノ粒子の保護剤として作用することを見出した。
【0007】
即ち本発明は、一般式(1)で表される構造を分子中に有する高分子化合物である金属ナノ粒子用保護剤を提供する。
【0008】
【化1】

【0009】
(一般式(1)中、Rは、
炭素原子数1〜18の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、又は、
水酸基、炭素原子数1〜18の直鎖アルコキシ基、炭素原子数1〜18の分岐状アルコキシ基、アラルキルオキシ基、置換フェニルオキシ基、炭素原子数1〜18の直鎖アルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数1〜18の分岐状アルキルカルボニルオキシ基、カルボキシ基、カルボキシ基の塩、炭素原子数1〜18の直鎖アルコキシカルボニル基、炭素原子数1〜18の分岐状アルコキシカルボニル基、リン酸基、炭素原子数1〜6の直鎖アルキルリン酸基、炭素原子数1〜6の分岐状アルキルリン酸基、スルホン酸基、炭素原子数1〜6の直鎖アルキルスルホン酸基、及び炭素原子数1〜6の分岐状アルキルスルホン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する炭素原子数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表す。)
【0010】
また本発明は、チオール化合物との反応により分子中に1つ以上の一般式(2)で表される構造を有する高分子化合物である金属ナノ粒子用保護剤を提供する。
【0011】
【化2】

【0012】
また本発明は、前記記載の金属ナノ粒子用保護剤を使用する金属ナノ粒子分散体を提供する。
【0013】
また本発明は、前記記載の金属ナノ粒子用保護剤を使用する金属ナノ粒子分散体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、液相還元法で生成した金属ナノ粒子を成長させず、かつ安定な分散状態を維持可能な分散体を得ることができる。
本発明の金属ナノ粒子用保護剤は、金属表面との相互作用(吸着能)が非常に高い硫黄含有残基を保護高分子の一部単位として有し、更に、やや強い吸着能を有するカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基または、複素芳香族基(例えばイミダゾール基)、中程度の相互作用を示し分散媒の液性によって吸着能が変化するアミノ基(例、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基)、および金属表面との相互作用が前者と比べ小さい芳香族基(たとえばベンジル基)、ヒドロキシ基(ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基)を保護高分子鎖に有しており、これらの比率を自在に変更することが可能である。例えば金属種として銀を使用した場合、公知の金属イオン還元剤がより効果的に作用し、生成時間を短縮することが可能である。また添加量も少なくて済むのでその後の精製も容易である。
【0015】
本発明の該金属ナノ粒子用保護剤を使用した金属ナノ粒子分散体は、金属種として銀を用いた場合、150℃, 30分の低温薄膜を焼成すると10−5〜10−6Ωcm(10−1〜10−2Ω/□)レベルの比抵抗率を示し、室温から100℃程度の焼成によっても導電性が現れるような、低温焼結性を達成している。また、還元剤としてトリエタノールアミン等の緩和な還元剤を使用した場合であっても、65℃の条件で2時間以内に反応が終了する等、反応時間を短縮できるという効果も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(金属ナノ粒子用保護剤)
本発明の金属ナノ粒子用保護剤は、前記一般式(1)で表される構造を分子中に有する高分子化合物である。
前記一般式(1)におけるRのうち、炭素原子数1〜18の直鎖若しくは分岐状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基が挙げられる。中でもオクチル基、デシル基、ドデシル基は、金属表面に対する吸着効果とチオール化合物の揮発性の低さ(臭気の低さ)の面から好ましい。
【0017】
前記一般式(1)におけるRのうち、水酸基、炭素原子数1〜18の直鎖アルコキシ基、炭素原子数1〜18の分岐状アルコキシ基、アラルキルオキシ基、置換フェニルオキシ基、炭素原子数1〜18の直鎖アルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数1〜18の分岐状アルキルカルボニルオキシ基、カルボキシ基、カルボキシ基の塩、炭素原子数1〜18の直鎖アルコキシカルボニル基、炭素原子数1〜18の分岐状アルコキシカルボニル基、リン酸基、炭素原子数1〜6の直鎖アルキルリン酸基、炭素原子数1〜6の分岐状アルキルリン酸基、スルホン酸基、炭素原子数1〜6の直鎖アルキルスルホン酸基、炭素原子数1〜6の分岐状アルキルスルホン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する炭素原子数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基とは、具体的には、
【0018】
2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、8−ヒドロキシオクチル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、
【0019】
2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−ヘキシルオキシエチル基、
【0020】
2−(2−エチルヘキシルオキシ)エチル基、2−ベンジルオキシエチル基、2−(4−メトキシベンジルオキシ)エチル基、2−フェニルオキシエチル基、2−(4−メトキシフェニルオキシ)エチル基、2−(2,4−ジメトキシフェニルオキシ)エチル基、6−(4−ヒドロキシメチルフェニルオキシ)ヘキシル基、
【0021】
2−アセトキシエチル基、2−ヘプタノイルオキシエチル基、2−オクタノイルオキシエチル基、2−オクタデカノイルオキシエチル基、
【0022】
2−イソブチリルオキシエチル基、2−ピバロイルオキシエチル基、
【0023】
カルボキシメチル基、2−カルボキシエチル基、7−カルボキシヘプチル基、1−カルボキシエチル基、1,2−ジカルボキシエチル基、およびこれらカルボン酸の無機塩、アンモニウム塩および有機アミンの塩、
【0024】
メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、オクチルオキシカルボニルメチル基、2−(メトキシカルボニル)エチル基、2−(オクチルオキシカルボニル)エチル基、2−(ドデシルオキシカルボニル)エチル基、2−(2−(メトキシエトキシ)カルボニル)エチル基、2−(メトキシエトキシエトキシカルボニル)エチル基、2−(4−メトキシブトキシカルボニル)エチル基、
【0025】
2−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)メチル基、2−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)エチル基、2−(3−メトキシブトキシカルボニル)エチル基、
【0026】
2−ホスホノオキシエチル基、2−ホスホノエチル基、2−ホスホノオキシプロピル基、2−ホスホノプロピル基、ω−ホスホノオキシエトキシエチル基、ω−ホスホノオキシプロピルオキシプロピル基、
【0027】
2−(ジメトキシホスホリルオキシ)エチル基、2−ジメトキシホスホリルエチル基、2−(ジエチトキシホスホリルオキシ)エチル基、2−(ジエトキシホスホリルオキシ)プロピル基、
【0028】
2−(ジイソプロポキシホスホリルオキシ)エチル基、2−(ジイソブトキシホスホリルオキシ)エチル基、
【0029】
2−(ヒドロキシスルホニルオキシ)エチル基、2−スルホエチル基、2−スルホプロピル基、
【0030】
2−(メトキシスルホニルオキシ)エチル基、2−(メトキシスルホニル)エチル基、2−(エトキシスルホニルオキシ)エチル基、2−(エトキシスルホニル)エチル基、2−(メトキシスルホニル)プロピル基、2−(エトキシスルホニル)プロピル基
【0031】
などが挙げられる。
中でも入手の容易さ、得られる金属ナノ粒子の導電性と薄膜を形成した時の平滑性の観点から、2−ヒドロキシエチル基、2,3−ジヒドロキシエチル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)エチル基が好ましい。
【0032】
また、本発明の金属ナノ粒子用保護剤は、チオール化合物との反応により分子中に1つ以上の一般式(2)で表される構造を有する高分子化合物である。
【0033】
【化3】

【0034】
これは前記一般式(1)を包含するものでもあるが、例えば、1,10−デカンジチオール、1,12−ドデカンジチオール、3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオール、エチレンビス(メルカプトプロパノエート)のようなニ価のチオール化合物、
【0035】
トリメチロールプロパンチオグリコール酸エステル、トリメチロールプロパンメルカプトプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールチオグリコール酸エステル、ペンタエリスリトールメルカプトプロピオン酸エステル、ジペンタエリスリトールメルカプトプロピオン酸エステル、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートメルカプトプロピオン酸エステルのような多価チオール化合物との反応で形成される高分子化合物が挙げられる。
【0036】
前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造を有する高分子化合物は、ポリエチレングリコール鎖を有することが溶媒に対する分散性を良好とする点から好ましい。ポリエチレングリコール鎖は、繰り返し単位数が2〜250であることが有機溶剤と水に対する分散性を確保する点から好ましく、5〜100が最も好ましい。
【0037】
前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造を有する高分子化合物は、アミノ基、カルボキシ基、イミダゾール基、リン酸基、スルホン酸基あるいはそれらの塩および水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有することが好ましい。これらの基は、金属ナノ粒子を合成するには金属イオンへの配位基として、合成後の安定化の際には金属表面への吸着基として働き、均一なナノ粒子を合成するのに非常に有効である。とくに、リン酸基、スルホン酸基は金属への吸着力が高い。また、これらは酸素原子を介して結合していても、炭素原子を介して結合していても同様に効果を発揮する。
【0038】
前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造を有する高分子化合物は、分子量が、数平均分子量に換算して1000〜100,000の範囲が好ましい。分子量が1000未満では、分散性の付与に必要なポリエチレングリコール鎖と、金属表面への吸着に必要なリン酸基やスルホン酸基をバランスよく配合した分子を形成することが困難で、金属コロイド保護剤としての能力を発揮することが難しい。また分子量が100,000を超える範囲では、保護剤の見かけの大きさが金属ナノ粒子に匹敵する大きさとなり、金属ナノ粒子の分散安定化に必要な分子数を制御することが困難となるばかりでなく、過剰の保護剤を除去する際にも障害となりやすい。
【0039】
本発明の金属ナノ粒子用保護剤は、具体的には、重合性化合物とチオール化合物との反応により得られた高分子化合物である。チオール化合物として、片末端に前記一般式(1)で表される基を有するチオール化合物(以下チオール化合物Aと略す)を使用することで、前記一般式(1)で表される構造を分子中に有する高分子化合物が得られる。また、図に示すような多価チオール化合物(以下チオール化合物Bと略す)を使用することで、前記一般式(2)で表される構造を有する高分子化合物が得られる。
【0040】
【化4】


【0041】
(一般式(1)で表される構造を分子中に有する高分子化合物の製造方法)
一般式(1)で表される構造を分子中に有する高分子化合物を得るために使用するチオール化合物Aは、一般に連鎖移動剤として使用されるチオール化合物を使用することができる。具体的には、チオグリコール、2−メルカプトプロパノール、3−メルカプトプロパノール、8−メルカプトオクタノール、2,3-ジヒドロキシプロパンチオール、2−メトキシエタンチオール、2−エトキシエタンチオール、2−ヘキシルオキシエタンチオール、2−(2−エチルヘキシルオキシ)エタンチオール、2−ベンジルオキシエタンチオール、2−(4−メトキシベンジルオキシ)エタンチオール、2−フェニルオキシエタンチオール、2−(4−メトキシフェニルオキシ)エタンチオール、2−(2,4−ジメトキシフェニルオキシ)エタンチオール、6−(4−ヒドロキシメチルフェニルオキシ)ヘキサンチオール、2−アセトキシエタンチオール、2−ヘプタノイルオキシエタンチオール、2−オクタノイルオキシエタンチオール、2−オクタデカノイルオキシエタンチオール、2−イソブチリルオキシエタンチオール、2−ピバロイルオキシエタンチオール、チオグリコール酸、β−メルカプトプロピオン酸、7−メルカプトオクタン酸、2−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトコハク酸、およびこれらカルボン酸の無機塩、アンモニウム塩および有機アミンの塩、
チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸オクチル、β−メルカプトプロピオン酸エチル、β−メルカプトプロピオン酸オクチル、β−メルカプトプロピオン酸ドデシル、β−メルカプトプロピオン酸−2−(メトキシエチル)、β−メルカプトプロピオン酸−2−(メトキシエトキシエトキシ)、β−メルカプトプロピオン酸−2−(4−メトキシブトキシ)、チオグリコール酸−2−エチルヘキシル、β−メルカプトプロピオン酸−2−エチルヘキシル、β−メルカプトプロピオン酸−3−メトキシブトキシ、2−メルカプトエチルホスファート、2−メルカプトエチルホスフィン酸、2−メルカプトプロピルホスファート、2−メルカプトプロピルホスフィン酸、ω−メルカプトエトキシエチルホスファート、ω−メルカプトプロピルオキシプロピルホスファート、2−メルカプトエチルジメチルホスファート、2−メルカプトエチルホスフィン酸ジメチル、2−メルカプトエチルジエチルホスファート、2−メルカプトプロピルジエチルホスファート、2−メルカプトエチルジイソプロピルホスファート、2−メルカプトエチルジイソブチルホスファート、2−メルカプトエチルサルファート、2−メルカプトエチルスルホン酸、2−メルカプトプロピルスルホン酸、2−メルカプトエチルメチルサルファート、メチル 2−メルカプトエチルスルホナート、2−メルカプトエチルエチルサルファート、エチル 2−メルカプトエチルスルホナート、メチル 2−メルカプトプロピルスルホナート、エチル 2−メルカプトプロピルスルホナート、等があげられる。中でもチオグリコール、2,3-ジヒドロキシプロパンチオール、チオグリコール酸、β―メルカプトプロピオン酸、β―メルカプトプロピオン酸エチル、β―メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルが、反応性、入手容易さおよび薄膜化した時の面平滑性の点から好ましく、β―メルカプトプロピオン酸メチルが最も好ましい。
【0042】
また、一般式(2)で表される構造を分子中に有する高分子化合物を得るために使用するチオール化合物Bは、1,10−デカンジチオール、1,12−ドデカンジチオール、3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオール、エチレンビス(メルカプトプロパノエート)のようなニ価のチオール化合物、トリメチロールプロパンチオグリコール酸エステル、トリメチロールプロパンメルカプトプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールチオグリコール酸エステル、ペンタエリスリトールメルカプトプロピオン酸エステル、ジペンタエリスリトールメルカプトプロピオン酸エステル、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートメルカプトプロピオン酸エステルのような、多価チオール化合物を挙げることができる。
【0043】
前記チオール化合物(A)やチオール化合物(B)と反応させる重合性化合物としては、特に限定はなく公知の重合性化合物を使用することができる。具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル化合物、ビニルアルコールエステル化合物、スチレン化合物、アリルアルコール化合物、アリルアミン化合物などである。
【0044】
本発明の金属ナノ粒子用保護剤は、金属との親和性を有する官能基を有する重合性化合物を適宜選択することで、使用する金属種や所望する物性に応じた保護剤を設計することが可能であり、特徴である。具体的には、金属に対しやや強い吸着能を有するカルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基、または、複素芳香族基(例えばイミダゾール基)、中程度の相互作用を示し分散媒の液性によって吸着能が変化するアミノ基(例、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基)、および金属表面との相互作用が前者と比べ小さいヒドロキシ基(ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基)、芳香族基(たとえばベンジル基)を有する重合性化合物を使用することで、金属ナノ粒子用保護剤に自在に該官能基を付与することが可能であり、またこれらの比率を自在に変更することが可能なため、その吸着性も自在に変更することができる。
例えば、重合性化合物として、ポリアルキレングリコールメタクリレート等のポリエチレングリコール鎖を有する重合性化合物を使用することで、前記一般式(1)で表される構造を分子中に有する高分子化合物にポリエチレングリコール鎖を組み込むことができる。
また同様に、重合性化合物として、(メタ)アクリル酸等を使用することでカルボキシ基を、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等を使用することでアミノ基を、メタクリロイルオキシエチルホスフェート等を使用することでリン酸基を、ヒドロキシエチルメタクリレート等を使用することでヒドロキシ基を、スルホン酸基を有する修飾(メタ)アクリル酸エステルを重合性化合物として用いるスルホン酸基を、ヘテロ芳香族ビニル化合物を用いることでヘテロ芳香族基を導入することが出来る。
【0045】
このようにして、前記一般式(1)で表される構造を分子中に有する高分子化合物にアミノ基、カルボキシ基、イミダゾール基、リン酸基、スルホン酸基等を組み込むことができる。
これらの重合性化合物の具体的な例としては、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルイミダゾール、2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が挙げられる。
【0046】
本発明の金属ナノ粒子用保護剤の重合方法は通常のラジカル重合法でよく、チオール化合物および重合性化合物を適当な溶剤に溶解し、重合開始剤として過カルボン酸エステル等を加え加熱すればよい。
【0047】
本発明の金属ナノ粒子用保護剤において、特に好ましい構造は、例えば、一般式(1)で表される構造を分子中に有する高分子化合物としては、極性基が無いか、極性基を有していてもアルキル基などの非極性基でキャッピングされているチオール化合物と、親水性セグメントを有する構造単位とリン酸基あるいは/および硫酸基を有する構造単位を共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
【0048】
また、一般式(2)で表される構造を有する高分子化合物の特に好ましい構造の例も同様で、極性基が無いか、極性基を有していても非極性基でキャッピングされている多価チオール化合物と、親水性セグメントを有する構造単位とリン酸基あるいは/および硫酸基を有する構造単位を共重合させて得られる高分子化合物が好ましい。
【0049】
(金属ナノ粒子分散体)
本発明の金属ナノ粒子分散体は、前記金属ナノ粒子用保護剤を使用して、例えば液相還元法によるビルドアップ式製造法等の方法にて得ることができる。
【0050】
本発明で使用する金属化合物は、溶媒に対する溶解性を有することが好ましく、具体的には金属塩が好ましく、金属の酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、アセチルアセトナート等が挙げられる。中でも酢酸塩または硝酸塩が好ましい。また、不溶性の塩であっても、錯化剤としてアンモニア、アミン類、また還元剤と兼用になるヒドラジン類、ヒドロキシルアミン類を添加することで溶解度を付与することができ、この場合には上記に加えて金属酸化物なども使用することができる。
【0051】
また金属種としては、いわゆる遷移金属元素が挙げられるが、とくに産業上有用な金属コロイドとなるのは、具体的には、金、銀、銅および白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金)であり、これらが使用される。
金属化合物として、例えば金属種が金、白金の場合は、テトラクロロ金酸、テトラクロロ白金を用いることが出来る。
また例えば金属種が銅の場合は、Cu(OAc)、Cu(NO、CuCl、Cu(HCOO)、Cu(CHCOO)、Cu(CHCHCOO)、CuCO、CuSO 及び CCuOのほか、カルボン酸塩を加熱して得られる塩基性塩、たとえばCu(OAc)・CuOも同様に用いることができる。
また例えば金属種が銀の場合は、硝酸銀、酸化銀、酢酸銀、塩化銀などを用いることができるが、水溶液として取り扱う場合には硝酸銀はその溶解度の点で好ましい。
【0052】
(還元剤)
本発明で使用する還元剤は、特に限定はなく金属を還元させる能力を有する公知の還元剤を使用することができる。具体的には、無機還元剤としては、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンが挙げられる。また有機還元剤としてはN,N−ジアルキルヒドロキシルアミン等のヒドロキシルアミン系化合物類、N,N−ジアルキルヒドラジン等のヒドラジン系化合物類、ハイドロキノン、アミノフェノール等のフェノール類およびフェニレンジアミン類、2−ヒドロキシアセトン、2−ヒドロキシヘキサン−1,3−ジオン、リンゴ酸等のヒドロキシケトン類やヒドロキシカルボン酸類、及びアスコルビン酸や2,3−ジヒドロキシマレイン酸等のエンジオール類を用いることが出来る。また、貴金属化合物の還元には、無電解めっき法で還元剤として用いられるトリエタノールアミンのようなアミノアルコール類も使用することが出来る。また、熱時に還元能力を発揮するエチレングリコールのようなアルコール類を溶剤として使用する場合には、別途還元剤を使用する必要がない場合もある。
【0053】
(製造方法)
本発明の金属ナノ粒子分散体は、前記金属ナノ粒子用保護剤の存在下、前記金属化合物から製造される。金属化合物は、具体的には、金、銀、銅および白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金)からなる群から選ばれる1種以上の金属化合物を使用すると好ましく、粒子径が1〜400nmの金属ナノ粒子分散体が得られる。
還元剤としてトリエタノールアミンを用いた場合は、本発明に記載の保護剤の存在下で60℃に加熱して反応させると、金属化合物は穏やかに還元され、1〜400nmの金属ナノ粒子分散体を与える。また、還元剤としてヒドラジン及びヒドロキシルアミンおよびヒドラジン誘導体、ヒドロキシルアミン誘導体を用いた場合には、室温以下でも金属化合物との反応が進行し、やはり1〜400nmの金属ナノ粒子分散体が得られる。
【0054】
前記金属ナノ粒子用保護剤の存在下とは具体的には、前記金属ナノ粒子用保護剤および金属化合物を溶媒と混合することであり、これに還元剤を加えるかあるいは溶媒の有する還元力によって、金属化合物から還元金属粒子を得ることができる。溶媒としては特に限定はなく、金属化合物、金属ナノ粒子用保護剤、および還元剤が、それぞれ反応に必要な程度の溶解度を持つものを使用することができる。水、メタノール、エタノール、エチレングリコールはこれらの溶解度が高いので好ましい。この混合物に室温で、還元剤としてヒドラジン及びヒドロキシルアミンおよびヒドラジン誘導体、ヒドロキシルアミン誘導体等を加えることで反応は進行する。また、還元剤としてトリエタノールアミンのような穏やかなものを用いるに場合は、60℃程度に加熱することが必要である。
また、溶媒の還元力を利用する方法には、特開平10−330809号公報に記載のポリオール還元法があり、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましく用いられている。
【0055】
これらの溶媒に前記金属ナノ粒子用保護剤を溶解させた溶液に、前記金属化合物を添加することで、粒子径が1〜400nmの金属ナノ粒子分散体が得られる。添加方法は、金属化合物を粉体状で加えてもよく、適宜溶媒に溶解させた溶液を添加してもよい。溶解させる場合は、金属化合物が溶解する必要があることから、極性溶媒であることが好ましく、水が最も好ましい。前記金属ナノ粒子用保護剤の溶媒と金属化合物の溶媒とが相溶する場合には、金属ナノ粒子の生成は溶液中で行われ、一方、前記金属ナノ粒子用保護剤の溶媒と金属化合物の溶媒とが相溶しない場合には、金属ナノ粒子の生成は溶液間の界面で行われる。
【0056】
特に、本発明の金属ナノ粒子分散体の溶媒として水を使用する場合には、前記金属ナノ粒子用保護剤の水溶液と、前記金属化合物またはその水溶液を混合することで、金属ナノ粒子分散体が得られる。金属化合物は、具体的には、金、銀、銅および白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金)からなる群から選ばれる1種以上の金属化合物を使用すると好ましく、粒子径が1〜1000nmの金属ナノ粒子分散体が得られる。
【0057】
前記反応温度としては、特に限定されるものではないが、金属化合物の還元速度に合わせて0〜100℃の間で設定すればよい。好ましくは5〜90℃の範囲であり、15〜35℃の温度領域であれば特別な温調装置が不要であって、実用上は最も好ましい。
混合あるいは還元する際には、各種の様式を採用することが可能である。例えば、前記金属ナノ粒子用保護剤の溶液中に、金属化合物を粉体状で加えてもよく、適宜溶媒に溶解させた溶液を添加してもよいし、その逆に混合してもよい。また同時にひとつの容器中に添加していってもよい。混合する際には攪拌力を加えることが、反応をより円滑に進行させることは言うまでもない。剪断力の高い攪拌が、生成する粒子の大きさに与え、強い攪拌はより小粒径の金属ナノ粒子分散体を与える傾向がある。混合の速度は、反応温度と同様、任意に設定できるが、実用的には1分から5時間の間で両者を混合すればよい。化合物の溶解作業の容易さ、粒子径の制御性を考慮すると、前記金属ナノ粒子用保護剤の溶液中の中に金属化合物を1〜3時間で混合していくことが好ましい。
一方、前記金属ナノ粒子用保護剤の溶液中の流れる流路と金属化合物の溶液の流れる流路をY字状に連結し、連結点において反応をおこなうことも可能である。この場合、インラインミキサーによる混合は大変有効であり、混合した時点で反応はほぼ終了する。このような形態は、特別な反応容器を必要としないので好ましい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により説明する。特に断わりのない限り「部」、「%」は質量基準である。
【0059】
[金属ナノ分散体の評価方法]
(評価用薄膜の作製)
後述の方法で得た金属ナノ粒子の分散液を、5×5cmの清浄なガラス板に約0.5mL滴下し、スピンコーター(800回転、3秒)を用いて薄膜とした。または、2×5cmのポリエチレンナフタレート(PEN)の薄片上に金属ナノ粒子の分散液を数滴とり、バーコーター8番を用いて塗布し薄膜とした。
作製した薄膜を風乾した後、100℃、150℃または180℃の熱風乾燥機中で30分間加熱して焼成薄膜とした。低い焼成温度でも低い体積抵抗率を示す薄膜は「低温焼結性を有する」と判断できる。
【0060】
(薄膜電気抵抗率の測定)
上記で得られた焼成薄膜の厚みは、オプテリクスC130型リアルカラーコンフォーカル顕微鏡(レーザーテック社製)を用いて計測し、続いて表面抵抗率(Ω/□)をロレスタ−EP MCP−T360型低抵抗率計(三菱化学(株)製)を用いJIS K7194「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験」に準拠して測定した。薄膜厚みは、上記条件によればほぼ0.3μmの一定値を示し、この値と表面抵抗率(Ω/□)から体積抵抗率(Ωcm)を次式により算出した。
この体積抵抗率が10−5Ωcmレベルであれば、良好な導電性を持ったと判断され、10−6Ωcmレベルであれば、バルク銀に近いより良好な導電性を示したと判断できる。
【0061】
【数1】

【0062】
(薄膜の平滑性)
薄膜の平滑性を目視評価し、以下の基準でスコア化した。
「3」:金属光沢があり、平滑鏡面である。
「2」:金属光沢はあるが、やや曇った鏡面である。
「1」:金属光沢がなく、粗い金属面である。
【0063】
(粒子径測定)
JEM−2200FS型透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製)を用いて検鏡観察し、得られた写真像から粒子径を計測した。
【0064】
(金属含量)(TG−DTA)
後述の方法で得た金属ナノ粒子の分散液約1mLをガラスサンプル瓶にとり、沸騰水浴上で窒素気流下加熱濃縮し、残渣を更に50℃、8時間以上真空乾燥して乾固物を得た。この乾固物2〜10mgを熱重量分析用アルミパンに精密にはかり、EXSTAR TG/DTA6300型示差熱重量分析装置(セイコーインスツル株式会社製)に載せ、空気気流下、室温から500℃まで毎分10℃の割合で昇温して、加熱に伴う重量減少率を測定した。
【0065】
(実施例1)末端に2−ヒドロキシエチルチオ基を含有する保護高分子の合成例
メチルエチルケトン(以下、MEK)70部を、窒素気流中80℃に保ち、攪拌しながらメタクリル酸ジメチルアミノエチル10部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル8部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート;分子量1000を80部、チオグリコール2部、MEK80部、および重合開始剤(「パーブチル(登録商標)O」〔有効、日油(株)製〕)4部からなる混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、「パーブチル(登録商標)O」2部を添加し、80℃で22時間攪拌した。得られた反応混合物に水を加え、減圧脱溶剤した後、水で不揮発分量を調整した。このようにして、末端に2−ヒドロキシエチルチオ基を有する高分子化合物Aの水溶液を得た(不揮発分41%)。該樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量は7600、アミン価は29.8mgKOH/gであった。
【0066】
(実施例2)
チオグリコール4部とするほかは実施例1と同様にして、末端に2−ヒドロキシエチルチオ基を有する高分子化合物Bの水溶液を得た(不揮発分40%)。該樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量は5600、アミン価は28.7mgKOH/gであった。
【0067】
(実施例3)
チオグリコール10部とするほかは実施例1と同様にして、末端に2−ヒドロキシエチルチオ基を有する高分子化合物Cの水溶液を得た(不揮発分40%)。該樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量は2500、アミン価は20.2mgKOH/gであった。
【0068】
(実施例4)末端に2−ヒドロキシエチルチオ基を含有する高分子化合物の合成例
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル8部のかわりに、アクリル酸4−ヒドロキシブチル9部とする他は、実施例1と同様にして、末端に2−ヒドロキシエチルチオ基を有する高分子化合物Dの水溶液を得た(不揮発分44%)。該樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量は8900、アミン価は32.5mgKOH/gであった。
【0069】
(実施例5)末端にカルボキシメチルチオ基を含有する含有高分子化合物の合成例
メタクリル酸ジメチルアミノエチル10部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル8部、チオグリコール2部のかわりに、メタクリル酸10部、メタクリル酸ベンジル10部、チオグリコール酸2部とする他は、実施例1と同様にして、末端に2−カルボキシメチルチオ基を有する高分子化合物Eの水溶液を得た(不揮発分33%)。該樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量は10000、酸価は76.5mgKOH/gであった。
【0070】
(実施例6)イミダゾール基含有高分子化合物の合成
メタクリル酸ジメチルアミノエチル10部のかわりに、ビニルイミダゾール10部、とする他は、実施例5と同様にして、末端に2−カルボキシメチルチオ基を有する高分子化合物Fの水溶液を得た(不揮発分33%)。該樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量は7800、酸価は57.5mgKOH/gであった。
【0071】
(実施例7)イオウ含有残基が2,3−ジヒドロキシプロピルチオ基である高分子化合物の合成
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル8部、チオグリコール2部とするところを、アクリル酸4−ヒドロキシブチル9部、チオグリセリン2部とする他は、実施例1と同様にして、末端に2,3−ジヒドロキシプロピルチオ基を有する高分子化合物Gの水溶液を得た(不揮発分64.9%)。該樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量は17000、酸価は26.1mgKOH/gであった。
【0072】
(実施例8)イオウ含有残基がドデシルチオ基である高分子化合物の合成
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル8部、チオグリコール2部のかわりに、アクリル酸4−ヒドロキシブチル9部、ドデシルメルカプタン2部とし、他は実施例1と同様にして、ドデシルチオ基を有する高分子化合物Hの水溶液を得た(不揮発分64.9%)。該樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量は10000、アミン価は29.5mgKOH/gであった。
【0073】
(実施例9)イオウ含有残基がメトキシカルボニルエチルチオ基である高分子化合物の合成
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル8部、チオグリコール2部のかわりに、アクリル酸4−ヒドロキシブチル9部、β−メルカプトプロピオン酸メチル2部とする他は、実施例1と同様にして、末端に2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基を有する高分子化合物Iの水溶液を得た(不揮発分59.1%)。該樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量は12000、アミン価31.0mgKOH/gであった。
【0074】
(実施例10)イオウ含有残基を2−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)エチルチオ基である高分子化合物の合成
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル8部、チオグリコール2部のかわりに、アクリル酸4−ヒドロキシブチル9部、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル2部とし、他は実施例1と同様にして、末端に2−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)エチルチオ基を有する高分子化合物Jの水溶液を得た(不揮発分83.3%)。該樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量は10000、アミン価は25.7mgKOH/gであった。
【0075】
(実施例11)イオウ含有残基が1,10−デカンジチオ基である高分子化合物の合成
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル8部、チオグリコール2部のかわりに、アクリル酸4−ヒドロキシブチル9部、1,10−デカンジチオール2部とし、他は実施例1と同様にして、1,10−デカンジチオ基を有する高分子化合物Kの水溶液を得た(不揮発分71.9%)。該樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量は13000、アミン価は28.1mgKOH/gであった。
【0076】
(実施例12)イオウ含有残基が2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基であり、リン酸官能基を有する高分子化合物の合成
MEK70部を、窒素気流中80℃に保ち、攪拌しながら2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート5部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート;分子量100、15部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート;分子量1000、80部およびβ−メルカプトプロピオン酸メチル2部、MEK80部からなる混合物、および重合開始剤「パーブチル(登録商標)O、日油(株)」0.5部、MEK5部からなる混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、「パーブチル(登録商標)O」1部を添加し、80℃で12時間攪拌した。得られた樹脂溶液に水を加え、減圧脱溶剤した後、水を加えて不揮発分を調製した。このようにして、末端に2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基を有する高分子化合物Lの水溶液を得た(不揮発分40%)。該樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量は7700、酸価は27.5mgKOH/gであった。
【0077】
(実施例13)イオウ含有残基が2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基であり、リン酸官能基を有する高分子化合物の合成
β−メルカプトプロピオン酸メチル2部のかわりに、β−メルカプトプロピオン酸メチル5部を用いるほかは実施例12と同様にして、末端に2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基を有する高分子化合物Mの水溶液を得た(不揮発分40%)。該樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量は5900、酸価は27.8mgKOH/gであった。
【0078】
(実施例14)イオウ含有残基が2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基であり、リン酸官能基を有する高分子化合物の合成
2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート5部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート;分子量100 15部、β−メルカプトプロピオン酸2部のかわりに、2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート2部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート;分子量100 18部、β−メルカプトプロピオン酸5部をもちいる他は、実施例12と同様にして、末端に2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基を有する高分子化合物Nの水溶液を得た(不揮発分40%)。該樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量は5700、酸価は13.6mgKOH/gであった。
【0079】
(実施例15)イオウ含有残基が2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基であり、スルホン酸官能基を有する高分子化合物の合成
70w/w%エタノール40部を、窒素気流中80℃に保ち、攪拌しながら2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸10部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート;分子量100 5部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート;分子量1000 85部、β−メルカプトプロピオン酸メチル5部、70w/w%エタノール80部からなる混合物、および重合開始剤「パーブチル(登録商標)O、日油(株)」0.5部、エタノール5部からなる混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、「パーブチル(登録商標)O」1部を添加し、80℃で12時間攪拌した。
得られた樹脂溶液に、イオン交換水を加え、減圧脱溶剤により除去した後、水を加えて不揮発分を調製した。このようにして、末端に2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基を有する高分子化合物Oの水溶液を得た(不揮発分40%)。該樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量5,800、酸価は54.1mgKOH/gであった。
【0080】
(比較例1)イオウ残基を含まない高分子化合物の合成
チオグリコール2部を加えず、反応温度を95℃に変更した他は、実施例1と同様にし、イオウ残基を有しない高分子化合物Pの水溶液を得た(不揮発分33%)。該樹脂の質量平均分子量は7200、アミン価は27.6mgKOH/gであった。
【0081】
【表1】


DM:2−ジメチルアミノエチルメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
4HBA:4−ヒドロキシブチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
BnMA:ベンジルメタクリレート
VIm:ビニルイミダゾール
PEGM1000:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート (メトキシポリエチレングリコール鎖分子量1000)
PEGM100:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート (メトキシポリエチレングリコール鎖分子量100)
MEP:2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート
ATBS:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
【0082】
(実施例16)(銀−水分散液:2−ヒドロキシエチルチオ基、ジメチルアミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基を含有した保護剤を用いた例)
実施例1で得た2−ヒドロキシエチルチオ基を末端に有する高分子化合物A(固形分に換算して)1.86gを、水59mLに溶解し、1mol/L硝酸59mLと硝酸銀10.00g(58.87mmol)を水100mLに溶解したものを加えた。これにトリエタノールアミン44.09g(295.5mmol)を加えて60℃で2.5時間攪拌した。得られた混合物を限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社ビバスピン20、分画分子量5万、8個)に分け入れ、遠心力(5800G)により濾過を行った。濾過残渣に精製水を加えて再び遠心濾過することを4回繰り返し、得られた残渣に水を加えて20gの水分散液とした。この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)し、風乾した後150℃で30分焼成すると、6.5×10−6Ωcmの体積抵抗率を示す薄膜が得られた。
【0083】
(実施例17)(銀−水分散液:2−ヒドロキシエチルチオ基、ジメチルアミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基を含有した保護剤を用いた例)
実施例2で得た2−ヒドロキシエチルチオ基を末端に有する高分子化合物B(固形分に換算して0.20g)を水6mLに溶解し、1mol/L硝酸6mLと硝酸銀1.00g(5.89mmol)を水10mLに溶解したものを加えた。これにトリエタノールアミン4.41g(29.6mmol)を加えて60℃で2.5時間攪拌した。得られた混合物を限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社ビバスピン20、分画分子量5万、2個)に分け入れ、遠心力(5800G)により濾過を行った。濾過残渣に精製水を加えて再び遠心濾過することを4回繰り返し、得られた残渣に水を加えて2gの水分散液とした。この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)し、風乾した後150℃で30分焼成すると、1.7×10−5Ωcmの体積抵抗率を示す薄膜が得られた。
【0084】
(実施例18)(銀−水分散液:2−ヒドロキシエチルチオ基、ジメチルアミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基を含有した保護剤を用いた例)
実施例3で得た2−ヒドロキシエチルチオ基を末端に有する高分子化合物C(固形分0.20g)を用いた他は、実施例17と同様にし、2gの水分散体が得られた。この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)し、風乾した後150℃で30分焼成すると、6.8×10−4Ωcmの体積抵抗率を示す薄膜が得られた。
【0085】
(実施例19)(銀−水分散液:2−ヒドロキシエチルチオ基、ジメチルアミノエチル基、4−ヒドロキシブチル基を含有した保護剤を用いた例)
実施例4で得た2−ヒドロキシエチルチオ基を末端に有する高分子化合物D(固形分に換算して2.94g)を水150mLに溶解し、これに1mol/L硝酸150mLを加えて30分窒素を通じて脱気攪拌した。硝酸銀25.00g(147.2mmol)を水438mLに溶解したものを前記の樹脂溶液に加え、30分窒素を通じて脱気攪拌した後、トリエタノールアミン109.8g(735.9mmol)を加えて60℃で2.5時間攪拌した。得られた懸濁液を限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社ビバフロー50、分画分子量10万、4個)に通し、限外濾過ユニットから約4.5Lの滲出液がでるまで精製水を通過させて精製した。精製水の供給を止め、濃縮すると50gの分散液が得られた(固形分約30 w/w%、固形分中の銀含量97.5%(TG−DTA)、粒子径40 nm(TEM))。
この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後150℃で30分焼成すると、5.7×10−6Ωcmの体積抵抗率を示す塗膜となった。
【0086】
(実施例20)(銀−水分散液:2−ヒドロキシエチルチオ基、ジメチルアミノエチル基、4−ヒドロキシブチル基を含有した保護剤を用いた例)
実施例4で得た2−ヒドロキシエチルチオ基を末端に有する高分子化合物D(固形分に換算して0.73g)を水10mLに溶解し、これに硝酸銀5.00g(29.43mmol)を水20mLに溶解したものをこれに加え、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン3.94g(44.2mmol)と高分子化合物Dの水溶液(固形分に換算して0.73g)を加えた。得られた懸濁液を限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社ビバスピン20、分画分子量10万、8個)で濾過した。濾過残渣に精製水を加えて再び遠心濾過することを4回繰り返し、得られた残渣に水を加えて10gの分散液とした(固形分約30w/w%、固形分中の銀含量96.8%(TG−DTA)、粒子径40〜80nm(TEM))。この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後150℃で30分間焼成すると、7.7×10−6Ωcmの体積抵抗率を示す薄膜となった。
【0087】
(実施例21)(銀−水分散液:2−ヒドロキシエチルチオ基、カルボキシ基を含有した保護剤を用いた例)
実施例5で得た末端に2−ヒドロキシエチルチオ基を有する高分子化合物E(固形分に換算して0.578g)を水12mLに溶解し、これに1mol/L硝酸12mLを加えた。硝酸銀2.00g(11.77mmol)を水35mLに溶解したものをこれに加え、トリエタノールアミン8.78g(58.85mmol)を加えて60℃で2.5時間攪拌した。得られた懸濁液を限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社ビバスピン20、分画分子量10万、4個)で濾過した。濾過残渣に精製水を加えて再び遠心濾過することを4回繰り返し、得られた残渣に水を加えて4.23gの分散液とした(固形分約30w/w%、固形分中の銀含量94.8%(TG−DTA)、粒子径5〜40 nm(TEM))。この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後150℃で30分焼成すると、2.8×10−5Ωcmの体積抵抗率を示す塗膜となった。
【0088】
(実施例22)(銀−水分散液:2−ヒドロキシエチルチオ基、ビニルイミダゾール含有保護剤を用いた例)
実施例6で得た末端に2−ヒドロキシエチルチオ基を有する高分子化合物F(固形分に換算して2.94g)を水150mLに溶解し、これに1mol/L硝酸150mLを加えて30分窒素を通じて脱気攪拌した。硝酸銀25.00g(147.2mmol)を水438mLに溶解したものを前記の樹脂溶液に加え、30分窒素を通じて脱気攪拌した後、トリエタノールアミン109.8g(735.9mmol)を加えて60℃で2.5時間攪拌した。得られた懸濁液を限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社ビバフロー50、分画分子量10万、4個)に通し、限外濾過ユニットから約4.5Lの滲出液がでるまで精製水を通過させて精製した。精製水の供給を止め、濃縮すると50gの分散液が得られた(固形分約30w/w%、固形分中の銀含量97.5%(TG−DTA)、粒子径40 nm(TEM))。
この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後150℃で30分焼成すると、5.7×10−6Ωcmの体積抵抗率を示す塗膜となった。
【0089】
(実施例23)(銀−水分散液:2,3−ジヒドロキシプロピルチオ基、ジメチルアミノエチル基、4−ヒドロキシブチル基を含有する保護剤を用いた例)
実施例7で得た2,3−ジヒドロキシプロピルチオ基を有する高分子化合物G(固形分に換算して2.94g)を用いた他は、実施例Eと同様に操作し、4.23gの分散液を得た(固形分約30w/w%、固形分中の銀含量94.9%(TG−DTA)、粒子径5〜40 nm(TEM))。この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後150℃で30分焼成すると、3.3×10−5Ωcmの体積抵抗率を示す塗膜となった。
【0090】
(実施例24)(銀−水分散液:ドデシルチオ基、ジメチルアミノエチル基、4−ヒドロキシブチル基を含有する保護剤を用いた例)
実施例8で得たドデシルチオ基を末端に有する高分子化合物H(固形分に換算して2.94g)を用いた他は、実施例Eと同様に操作し、4.23gの分散液を得た(固形分約30w/w%、固形分中の銀含量93.5%(TG−DTA)、粒子径5〜40nm(TEM))。この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後150℃で30分焼成すると、2.2×10−4Ωcmの体積抵抗率を示す塗膜となった。
【0091】
(実施例25)(銀−水分散液:メトキシカルボニルエチルチオ基、ジメチルアミノエチル基、4−ヒドロキシブチル基を含有する保護剤を用いた例)
実施例9で得たメトキシカルボニルエチルチオ基を末端に有する高分子化合物I(固形分に換算して2.94g)を用いた他は、実施例Eと同様に操作し、4.23gの分散液を得た(固形分約30w/w%、固形分中の銀含量95.7%(TG−DTA)、粒子径5〜40 nm(TEM))。この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後150℃で30分焼成すると、2.1×10−5Ωcmの体積抵抗率を示す塗膜となった。
【0092】
(実施例26)(銀−水分散液:2−エチルヘキシルオキシカルボニルエチルチオ基、ジメチルアミノエチル基、4−ヒドロキシブチル基を含有する保護剤を用いた例)
実施例10で得た2−エチルヘキシルオキシカルボニルエチルチオ基を末端に有する高分子化合物J(固形分に換算して2.94g)を用いた他は、実施例Eと同様に操作し、4.23gの分散液を得た(固形分約30w/w%、固形分中の銀含量93.5%(TG−DTA)、粒子径5〜40 nm(TEM))。この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後150℃で30分焼成すると、4.2×10−5Ωcmの体積抵抗率を示す塗膜となった。
【0093】
(実施例27)(銀−水分散液:1,10−デカンジチオ基、ジメチルアミノエチル基、4−ヒドロキシブチル基を含有する保護剤を用いた例)
実施例11で得た1,10−デカンジチオ基を有する高分子化合物K(固形分に換算して2.94g)を用いた他は、実施例20と同様に操作し、4.23gの分散液を得た(固形分約30w/w%、固形分中の銀含量93.5%(TG−DTA)、粒子径5〜40 nm(TEM))。この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後150℃で30分焼成すると、7.2×10−5Ωcmの体積抵抗率を示す塗膜となった。
【0094】
(実施例28)(銀−水分散体:2−カルボキシエチルチオ基、カルボキシ基含有保護剤を用いた例)
実施例5で得た2−カルボキシエチルチオ基を末端に有する高分子化合物E(固形分に換算して2.00g)を水40mLに溶解し、硝酸銀2.00g(11.77mmol)を水35mLに溶解したものをこれに加えた。この溶液に、室温で5%ヒドロキシルアミン水溶液38.9g(58.9mmol)をゆっくり滴下した。得られた溶液を、濾紙で濾過して黒色の粗粒を除き、さらに孔径0.45ミクロンのメンブレンフィルターで濾過した後、限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社ビバスピン20、分画分子量10万、2個)で濾過した。濾過残渣に精製水を加えて再び遠心濾過することを4回繰り返し、得られた残渣に水を加えて3.00gの分散液とした(固形分約20w/w%、固形分中の銀含量94.1%(TG−DTA)、粒子径5〜80nm(TEM))。この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後150℃で30分焼成すると、7.8×10−4Ωcmの体積抵抗率を示す塗膜となった。
【0095】
(実施例29)(銀−水分散体:2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基、リン酸基含有保護剤を用いた例)
実施例12で得た末端に2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基を有する高分子化合物M(固形分に換算して0.196g)を水6mLに溶解し、これに1mol/L硝酸6mLを加えた。硝酸銀1.00g(5.89mmol)を水17.5mLに溶解したものをこれに加え、トリエタノールアミン4.39g(29.43mmol)を加えて60℃で2.5時間攪拌した。得られた懸濁液を限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社ビバスピン20、分画分子量10万、2個)で濾過した。濾過残渣に精製水を加えて再び遠心濾過することを4回繰り返し、得られた残渣に水を加えて2.1gの分散液とした(固形分約30w/w%、固形分中の銀含量96.2%(TG−DTA)、粒子径40〜50nm(TEM))。この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後100℃、150℃、180℃で30分間焼成すると、それぞれ、3.0×10−4、8.8×10−5、1.3×10−5Ωcmの体積抵抗率を示す平滑性のよい薄膜となった。
【0096】
(実施例30)(銀−水分散体:2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基、リン酸基含有保護剤を用いた例)
実施例12で得た末端に2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基を有する高分子化合物M(固形分に換算して0.117g)を水12mLに溶解し、これに1mol/L硝酸6mLを加えた。硝酸銀1.00g(5.89mmol)を水10mLに溶解したものをこれに加え、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン0.79g(7.53mmol)を加えて70℃で2.5時間攪拌した。得られた懸濁液を限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社ビバスピン20、分画分子量10万、2個)で濾過した。濾過残渣に精製水を加えて再び遠心濾過することを4回繰り返し、得られた残渣に水を加えて2.1gの分散液とした(固形分約30w/w%、固形分中の銀含量96.5%(TG−DTA)、粒子径40〜70nm(TEM))。この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後150℃で30分間焼成すると、1.6×10−5Ωcmの体積抵抗率を示す、平滑性のよい薄膜となった。
【0097】
(実施例31)(銀−水分散体:2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基、リン酸基含有保護剤を用いた例)
実施例13で得た末端に2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基を有する高分子化合物M(固形分に換算して0.196g)を用いた他は実施例29と同様にし、2.1gの分散液とした(固形分約30w/w%、固形分中の銀含量97.8%(TG−DTA)、粒子径40〜50nm(TEM))。この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後100℃、150℃、180℃で30分間焼成すると、それぞれ、1.9×10−4、1.4×10−5、6.8×10−6Ωcmの体積抵抗率を示す平滑性のよい薄膜となった。
【0098】
(実施例32)(銀−水分散体:2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基、リン酸基含有保護剤を用いた例)
実施例14で得た末端に2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基を有する高分子化合物N(固形分に換算して0.196g)を用いた他は実施例29と同様に行い、2.1gの分散液とした(固形分約30w/w%、固形分中の銀含量98.0%(TG−DTA)、粒子径40〜50nm(TEM))。この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後100℃、150℃、180℃で30分間焼成すると、それぞれ、2.6×10−5、8.9×10−6、7.1×10−6Ωcmの体積抵抗率を示す平滑性のよい薄膜となった。
【0099】
(実施例33)(銀−水分散体:2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基、スルホン酸基含有保護剤を用いた例)
実施例15で得た末端に2−(メトキシカルボニル)エチルチオ基を有する高分子化合物O(固形分に換算して0.098g)を用いた他は実施例29と同様に行い、2.1gの分散液とした(固形分約30w/w%、固形分中の銀含量97.5%(TG−DTA)、粒子径40〜50nm(TEM))。この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後100℃、150℃、180℃で30分間焼成すると、それぞれ、1.3×10−5、8.2×10−5、6.1×10−6Ωcmの体積抵抗率を示す平滑性のよい薄膜となった。
【0100】
(実施例34)(金−水分散体:ジメチルアミノエチル基含有保護剤を用い、ジメチルアミノエタノールで還元した例)
実施例1で得た2−ヒドロキシエチルチオ基を末端に有する高分子化合物A(固形分に換算して0.102g)を水5mLに溶解し、テトラクロロ金酸・三水和物1.00g(2.54mmol)を水5mLに溶解したものを加えた。これにジメチルアミノエタノール1.81g(20.31mmol)の水溶液5mLを加えて室温で2時間攪拌すると、暗赤色の溶液が得られた。これを限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社ビバスピン20、分画分子量5万、2個)に分け入れ、遠心力(5800G)により濾過を行った。濾過残渣に精製水を加えて再び遠心濾過することを4回繰り返し、得られた残渣に水を加えて4.0gの水分散液とした(固形分約12w/w%)。この分散液一滴をエタノール(50mL)に溶解して紫外可視吸収スペクトルを測定すると、530nm付近にプラズモン共鳴に由来する吸収がみられた。
【0101】
(実施例35)(銅−水分散体:2−ヒドロキシエチルチオ基を末端に有し、カルボキシ基を含有する保護剤を用いて、ヒドラジン水溶液で還元した例)
実施例5で得た2−ヒドロキシエチルチオ基を末端に有する高分子化合物E(固形分に換算して2.00g)を水40mLに溶解し、酢酸銅水和物10.0g(50.09mmol)を水500mLに溶解したものを加えた。これに穏やかに発泡が起こるよう80%ヒドラジン水溶液10g(約160mmol)を約2時間かけて滴下し、発泡得が止むまで室温で更に1時間攪拌すると、濃褐色の溶液が得られた。
これを限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社ビバスフロー50、分画分子量5万、1個)に通し、更に限外濾過ユニットから約1Lの滲出液がでるまで脱気水を通過させて精製した。脱気水の供給を止め、濃縮すると15gの分散液が得られた(固形分約20w/w%)。この分散液一滴をエタノール(50mL)に溶解して紫外可視吸収スペクトルを測定すると、600 nm付近にプラズモン共鳴に由来する吸収がみられた。
【0102】
(比較例2)(イオウ残基を含まない保護剤を用いた例)
比較例1で得た末端にイオウ残基を有しない高分子化合物P(固形分に換算して0.578g)を水12mLに溶解し、これに1mol/L硝酸12mLを加えた。硝酸銀2.00g(11.77mmol)を水35mLに溶解したものをこれに加え、トリエタノールアミン8.78g(58.85mmol)を加えて60℃で2.5時間攪拌した。反応終点確認をすると、還元がやや不足であることが分かった。得られた懸濁液を限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社ビバスピン20、分画分子量10万、4個)で濾過した。濾過残渣に精製水を加えて再び遠心濾過することを4回繰り返し、得られた残渣に水を加えて4.23 gの分散液とした(固形分約30 w/w%、固形分中の銀含量96.0%(TG−DTA)、粒子径30nm(TEM))。
この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後150℃で30分焼成しても導通のある塗膜は得られなかった。また、180℃で30分焼成した場合は、8.7×10−4Ωcmの体積抵抗率を示す塗膜となった。
【0103】
(比較例3)(市販分散剤Disperbyk−190を用いた例)
市販分散剤Disperbyk−190(ビックケミー社製)2.80gを1mol/L硝酸58.8mLに溶かし、硝酸銀9.989g(58.8mmol)を水30mLに溶解したものを加え、トリエタノールアミン43.64g(292.5mmol)を加えて60℃で2.5時間攪拌した後、一夜放置した。得られた懸濁液を限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社ビバスピン20、分画分子量10万、16個)で濾過し、残渣に精製水を加えて再び遠心濾過することを4回繰り返し、得られた残渣に水を加え、6.1gの分散体とした(固形分約30w/w%、固形分中の銀含量87.1%(TG−DTA)、粒子径20〜30nm(TEM))。
この分散液をスピンコーターでガラス板に塗布(塗布厚約0.3マイクロメートル)、風乾した後150℃で30分焼成しても導通のある塗膜は得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される構造を分子中に有する高分子化合物であることを特徴とする、金属ナノ粒子用保護剤。
【化1】

(一般式(1)中、Rは、
炭素原子数1〜18の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、又は、
水酸基、炭素原子数1〜18の直鎖アルコキシ基、炭素原子数1〜18の分岐状アルコキシ基、アラルキルオキシ基、置換フェニルオキシ基、炭素原子数1〜18の直鎖アルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数1〜18の分岐状アルキルカルボニルオキシ基、カルボキシ基、カルボキシ基の塩、炭素原子数1〜18の直鎖アルコキシカルボニル基、炭素原子数1〜18の分岐状アルコキシカルボニル基、リン酸基、炭素原子数1〜6の直鎖アルキルリン酸基、炭素原子数1〜6の分岐状アルキルリン酸基、スルホン酸基、炭素原子数1〜6の直鎖アルキルスルホン酸基、及び炭素原子数1〜6の分岐状アルキルスルホン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する炭素原子数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記高分子化合物がポリエチレングリコール鎖を有する請求項1に記載の金属ナノ粒子用保護剤。
【請求項3】
前記高分子化合物が、アミノ基、カルボキシ基、イミダゾール基、リン酸基、スルホン酸基、及びそれらの塩並びに水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する請求項1または2に記載の金属ナノ粒子用保護剤。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される構造を主鎖の末端に有する高分子化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の金属ナノ粒子用保護剤。
【請求項5】
チオール化合物との反応により分子中に1つ以上の一般式(2)で表される構造を有する高分子化合物であることを特徴とする、金属ナノ粒子用保護剤。
【化2】

【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の金属ナノ粒子用保護剤を使用することを特徴とする金属ナノ粒子分散体。
【請求項7】
前記金属ナノ粒子用保護剤の存在下、金、銀、銅および白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金)からなる群から選ばれる1種以上の金属化合物から製造される粒子径が1〜1000nmの請求項6に記載の金属ナノ粒子分散体。
【請求項8】
前記金属ナノ粒子用保護剤の水溶液と、金、銀、銅および白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金)からなる群から選ばれる1種以上の金属化合物またはその水溶液を混合し、製造される粒子径が1〜1000nmの請求項6に記載の金属ナノ粒子分散体。
【請求項9】
前記金属化合物の還元に、還元剤を用いる請求項7または8記載の金属ナノ粒子分散体。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の金属ナノ粒子用保護剤を使用することを特徴とする金属ナノ粒子分散体の製造方法。
【請求項11】
前記金属ナノ粒子用保護剤の存在下、金、銀、銅および白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金)からなる群から選ばれる1種以上の金属化合物から粒子径が1〜1000nmの粒子を製造する請求項10に記載の金属ナノ粒子分散体の製造方法。
【請求項12】
前記金属ナノ粒子用保護剤の水溶液と、金、銀、銅および白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金)からなる群から選ばれる1種以上の金属化合物またはその水溶液を混合し、粒子径が1〜1000nmの粒子を製造する請求項10に記載の金属ナノ粒子分散体の製造方法。
【請求項13】
前記金属化合物の還元に、還元剤を用いる請求項11または12記載の金属ナノ粒子分散体の製造方法。

【公開番号】特開2010−209421(P2010−209421A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57829(P2009−57829)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】