説明

金属パターン形成用転写フィルムおよび金属パターン形成方法

【課題】金属箔を用いる電極形成において、レジスト層の露光後のレジスト加熱硬化工程においてブリスターの発生がなく、レジストパターン形成工程や金属箔エッチング工程において、金属箔のガラスペースト層からの剥がれの発生がなく、金属箔の電極パターン形成後の焼成工程において、電極パターンの浮きが発生しない、良好な電極パターンを形成できる材料および方法を提供すること。
【解決手段】支持フィルム上に、(A)レジスト層、(B)金属層および(C)ガラスペースト層がこの順に積層されてなり、前記ガラスペースト層(C)の厚さが5〜30μmであって、前記ガラスペースト層(C)が、(a)ガラス粉末と、(b)ガラス転移点が−30〜30℃である結着樹脂と、(c)溶剤とを含有する(C’)ガラスペーストから形成され、ガラスペースト層(C)中の溶剤(c)の含有量が1重量%以下であることを特徴とする金属パターン形成用転写フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属パターン形成用転写フィルムおよび金属パターン形成方法に関し、さらに詳しくは、電極の形成に好適な金属パターン形成用転写フィルムおよび金属パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、回路基板やディスプレイパネルにおけるパターン加工に対して、(セル)の高密度化および高精細化の要求が高まっている。このような要求が高まっているディスプレイパネルの中でも、特にプラズマディスプレイパネル(以下「PDP」ともいう。)やフィールドエミッションディスプレイ(以下「FED」ともいう。)などのフラットパネルディスプレイ(以下「FPD」ともいう。)が注目されている。
【0003】
図1は交流型のPDPの断面形状を示す模式図である。図1において、101および102は互いに対向するよう配置されたガラス基板、103は隔壁であり、ガラス基板101、ガラス基板102、隔壁103によりセルが区画形成されている。104はガラス基板101に固定された透明電極であり、105は透明電極104の抵抗を下げる目的で該透明電極104上に形成されたバス電極であり、106はガラス基板102に固定されたアドレス電極である。107はセル内に保持された蛍光物質であり、108は透明電極104およびバス電極105を被覆するようガラス基板101の内面に形成された誘電体層であり、109はアドレス電極106を被覆するようガラス基板102の内面に形成された誘電体層であり、110は、例えば酸化マグネシウムよりなる保護膜である。また、カラーPDPにおいては、コントラストの高い画像を得るため、ガラス基板と誘電体層との間に、カラーフィルター(赤色・緑色・青色)やブラックマトリックスなどを設けたり、発光輝度を高めるために前面隔壁を設けたりすることがある。
【0004】
このようなFPDに使用される電極は、省電力化のために抵抗が低いことが望ましい。
電極の製造方法としては、一般に、導電性粉体を含有する導電性ペーストにより電極を形成する方法が用いられていた。しかし、この方法によると、導電性ペースト中に含まれるバインダーや界面活性剤等が電極中に不純物として残留することが避けられないので、これら不純物により電極の抵抗が高くなり、抵抗の低い電極を製造することは困難であった。
【0005】
そこで、抵抗の低い電極を製造する方法として、金属箔を用いて電極を形成する方法が開発された(特開昭57−40810号公報参照)。金属箔は、純粋な金属から形成されているので、電極の抵抗を低くすることが可能である。
【0006】
もっとも、金属箔は、ガラス基板に対する接着性が低い。そこで、金属箔をガラス基板に接着させるために、金属箔とガラス基板との間にガラスペースト層を介在させることにより、金属箔をガラス基板に接着させる方法が開発された(特開平8−293259号公報参照)。
【0007】
具体的には、ガラス基板上にガラスペースト層を設け、その上に金属箔の層を設け、更にその上に、レジスト層(感光性樹脂層)を積層して積層体を形成する。この積層体を露光処理して、レジスト層にレジストパターンの潜像を形成し、必要に応じてレジスト層を加熱硬化させ、さらに現像処理して、レジスト層にレジストパターンを顕在化させる。これをエッチング処理して、レジストパターンに対応する金属箔のパターンを形成する。その後、これを焼成して、レジスト層を除去することにより、電極が製造される。
【0008】
この際、電極の形成時に発生する問題が、電極形成後の断線やショートの原因となる。その問題の例としては、レジスト層の露光後の後処理(加熱硬化)時にガラスペースト層から発生するアウトガスによって、ブリスターが発生したり、また、ガラスペースト層の金属箔との接着性が不足すると、レジストパターン形成時や金属箔エッチング工程において、金属箔のガラスペースト層からの剥がれが発生したり、金属箔の電極パターン形成後の焼成時に、電極パターンの浮きが発生したりすることが挙げられる。
【特許文献1】特開昭57−40810号公報
【特許文献2】特開平8−293259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、金属箔等を電極材料に用いてFPD部材を製造する場合に生じる上記問題を解決することを目的とする。すなわち本発明の目的は、金属箔を用いる電極形成において、レジスト層の露光後のレジスト加熱硬化工程においてブリスターの発生がなく、レジストパターン形成工程や金属箔エッチング工程において、金属箔のガラスペースト層からの剥がれの発生がなく、金属箔の電極パターン形成後の焼成工程において、電極パターンの浮きが発生しない、良好な電極パターンを形成できる材料および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決する本発明は、
支持フィルム上に、(A)レジスト層、(B)金属層および(C)ガラスペースト層がこの順に積層されてなり、前記ガラスペースト層(C)の厚さが5〜30μmであって、前記ガラスペースト層(C)が、(a)ガラス粉末と、(b)ガラス転移点が−30〜30℃である結着樹脂と、(c)溶剤とを含有する(C’)ガラスペーストから形成され、ガラスペースト層(C)中の溶剤(c)の含有量が1重量%以下であることを特徴とする金属パターン形成用転写フィルムである。
【0011】
前記金属層(B)は、Ag、Au、AlおよびCuからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属により構成されていることが好ましい。
前記金属層(B)は、金属箔により形成されたものであってもよい。
【0012】
また本発明は、
(C)ガラスペースト層、(B)金属層およびレジスト層(A)がこの順に積層されてなり、前記ガラスペースト層(C)の厚さが5〜30μmであって、前記ガラスペースト層(C)が、(a)ガラス粉末と、(b)ガラス転移点が−30〜30℃である結着樹脂と、(c)溶剤とを含有する(C’)ガラスペーストから形成され、ガラスペースト層(C)中の溶剤(c)の含有量が1重量%以下である積層体を、ガラス基板上に形成する積層工程と、前記積層体を露光処理して、前記レジスト層(A)にレジストパターンの潜像を形成する露光潜像形性工程と、前記露光潜像工程を経た前記積層体を現像処理して、前記レジスト層(A)にレジストパターンを顕在化させる現像工程と、前記現像工程を経た前記積層体をエッチング処理して、レジストパターンに対応する金属層(B)のパターンを形成するエッチング工程と、前記エッチング工程を経た前記積層体を焼成する焼成工程とを含むことを特徴とする金属パターン形成方法である。
【0013】
前記エッチング工程を、前記積層体をエッチング液に浸漬することにより行うことが好ましい。
前記現像工程およびエッチング工程は、前記積層体をエッチング液に浸漬することにより一つの工程で行うことが好ましい。
【0014】
本発明の金属パターン形成方法は、さらに前記露光潜像形成工程の後かつ前記現像工程の前、または前記現像工程の後かつ前記エッチング工程の前に、前記積層体を加熱して、前記レジスト層(A)を硬化させる加熱硬化工程を含むことが好ましい。
【0015】
また本発明の金属パターン形成方法は、前記現像工程の後かつ前記エッチング工程の前に、前記積層体を露光して、前記レジスト層(A)を硬化させる露光硬化工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の金属パターン形成用転写フィルムおよび金属パターン形成方法では、レジスト層の露光後の後処理(加熱硬化)時のブリスター、レジストパターン形成時や金属箔エッチング工程における金属箔のガラスペースト層からの剥がれ、および金属箔の電極パターン形成後の焼成時における電極パターンの浮きの発生を抑制でき、断線やショートなどの欠陥の少ない電極を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[金属パターン形成用転写フィルム]
本発明の金属パターン形成用転写フィルムは、支持フィルム上に、(A)レジスト層、(B)金属層および(C)ガラスペースト層がこの順番に積層されてなる。以下、各層について説明する。
【0018】
<(A)レジスト層>
本発明におけるレジスト層(A)を形成する材料としては、特に制限なく、公知のフォトレジストを使用することができる。フォトレジストは、ネガ型であってもポジ型であってもよい。もっとも、ポジ型よりも硬化に必要な露光量が小さい点で、ネガ型の方が好ましい。
【0019】
本発明の金属パターン形成用転写フィルムを構成するレジスト層(A)は、たとえば、感光性モノマー、光重合開始剤および結着樹脂を含有するレジスト組成物から形成される。
【0020】
(感光性モノマー)
前記感光性モノマーは、露光により重合し現像液に対する溶解性が変化する物質であり、たとえば露光により重合し、露光部分がアルカリ不溶性またはアルカリ難溶性になる物質である。感光性モノマーとして、このような露光によりアルカリ不溶性等になる物質を用いると、露光部と未露光部とのコントラストを付けやすくなり、レジストパターンの高精細化やパターン形状をコントロールしやすくなるという利点がある。このような露光によりアルカリ不溶性等になる物質としては、たとえばエチレン性不飽和基含有化合物、好ましくは多官能性(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0021】
前記エチレン性不飽和基含有化合物の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;
両末端ヒドロキシポリブタジエン、両末端ヒドロキシポリイソプレン、両末端ヒドロキシポリカプロラクトンなどの両末端ヒドロキシル化重合体のジ(メタ)アクリレート類;
グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールアルカン、テトラメチロールアルカン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類;
3価以上の多価アルコールのポリアルキレングリコール付加物のポリ(メタ)アクリレート類;
1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ベンゼンジオール類などの環式ポリオールのポリ(メタ)アクリレート類;
ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、スピラン樹脂(メタ)アクリレート等のオリゴ(メタ)アクリレート類などを挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
これらのうち、トリメチロールプロパントリアクリレート等が特に好ましく用いられる。
上記多官能性(メタ)アクリレートの分子量は特に限定されないが、100〜2,000であることが好ましい。
【0023】
前記レジスト組成物における感光性モノマーの含有割合は、後述する結着樹脂100質量部に対して、通常5〜100質量部であり、好ましくは、10〜70質量部である。
【0024】
(光重合開始剤)
前記光重合開始剤の具体例としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−〔4’−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどのカルボニル化合物;
アゾイソブチロニトリル、4−アジドベンズアルデヒドなどのアゾ化合物あるいはアジド化合物;
メルカプタンジスルフィド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどの有機硫黄化合物;
ベンゾイルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、パラメタンハイドロパーオキシドなどの有機パーオキシド;
1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−(2−フラニル)エチレニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどのトリハロメタン類;
2,2’−ビス(2−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラフェニル1,2’−ビイミダゾールなどのイミダゾール二量体などを挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
前記レジスト組成物における光重合開始剤の含有割合は、感光性モノマー100質量部に対して、通常5〜100質量部であり、好ましくは、10〜50質量部である。
【0026】
(結着樹脂)
前記結着樹脂としては、種々の樹脂を用いることができるが、アルカリ可溶性樹脂を30〜100質量%の割合で含有する結着樹脂を用いることが好ましい。ここに、「アルカリ可溶性」とは、アルカリ性の現像液によって溶解し、目的とする現像処理(後述する本発明の金属パターン形成方法の現像工程において行われる)が遂行される程度にアルカリ溶液への溶解性を有する性質をいう。結着樹脂としてアルカリ可溶性樹脂を用いると、例えばアルカリ可溶性であるカルボキシル基含有モノマーのアルカリ可溶性樹脂における含有量を変量することにより、アルカリ現像液に対するレジスト層(A)の溶解速度やパターン形状をコントロールできるという利点がある。
【0027】
かかるアルカリ可溶性樹脂の具体例としては、例えば(メタ)アクリル系樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂などを挙げることができる。
このようなアルカリ可溶性樹脂のうち、特に好ましいものとしては、下記のモノマー(イ)とモノマー(ハ)との共重合体、モノマー(イ)、モノマー(ロ)およびモノマー(ハ)の共重合体などのアクリル樹脂を挙げることができる。
【0028】
モノマー(イ):カルボキシル基含有モノマー類
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ケイ皮酸、コハク酸モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなど。
【0029】
モノマー(ロ):OH基含有モノマー類
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有モノマー類;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレンなどのフェノール性水酸基含有モノマー類など。
【0030】
モノマー(ハ):その他の共重合可能なモノマー類
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルなどのモノマー(イ)以外の(メタ)アクリル酸エステル類;メチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレート、エチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレート、n−ブチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレートなどのα−ヒドロキシメチル基を有するアクリレート;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系モノマー類;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類;ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ベンジル等のポリマー鎖の一方の末端に(メタ)アクリロイル基などの重合性不飽和基を有するマクロモノマー類など。
【0031】
上記モノマー(イ)とモノマー(ハ)との共重合体や、モノマー(イ)、モノマー(ロ)およびモノマー(ハ)の共重合体は、モノマー(イ)に由来する共重合成分の存在により、アルカリ可溶性を有するものとなる。中でもモノマー(イ)、モノマー(ロ)およびモノマー(ハ)の共重合体は、後述するアルカリ現像液への溶解性の観点から特に好ましい。
【0032】
この共重合体におけるモノマー(イ)に由来する共重合成分の含有率は、好ましくは5〜60質量%、特に好ましくは10〜40質量%であり、モノマー(ロ)に由来する共重合成分の含有率は、好ましくは1〜50質量%、特に好ましくは5〜30質量%であり、モノマー(ハ)に由来する共重合成分の含有率は、好ましくは10〜94質量%、特に好ましくは30〜85質量%である。
【0033】
またモノマー(イ)とモノマー(ハ)との共重合体におけるモノマー(イ)に由来する共重合成分の含有率は、好ましくは5〜60質量%、特に好ましくは5〜40質量%であり、モノマー(ハ)に由来する共重合成分の含有率は、好ましくは40〜95質量%、特に好ましくは60〜95質量%である。
【0034】
レジスト組成物に用いられるアルカリ可溶性樹脂として特に好ましい組成としては、メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸/メタ
クリル酸2−ヒドロキシプロピル/メタクリル酸n−ブチル、およびメタクリル酸/コハク酸モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)/メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル/メタクリル酸n−ブチル等が挙げられる。
【0035】
上記アルカリ可溶性樹脂の分子量は、重量平均分子量が5,000〜5,000,000であることが好ましく、さらに好ましくは10,000〜300,000である。なお、本明細書において重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を指す。
【0036】
また前記レジスト組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、任意成分として、顔料、増粘剤、可塑剤、分散剤、現像促進剤、接着助剤、ハレーション防止剤、レベリング剤、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、連鎖移動剤などの各種添加剤を含有させてもよい。
【0037】
本発明の金属パターン形成用転写フィルムを構成するレジスト層(A)は、加熱または露光により硬化しうることが好ましい。レジスト層(A)を硬化させることができると、後述する露光潜像形成工程の後かつエッチング工程の前にレジスト層(A)を硬化させることにより、レジスト層(A)と金属層(B)との接着が強固になり、強い条件でエッチング処理を行っても、レジスト層(A)が金属層(B)から剥離することを防止することができる。
【0038】
本発明のレジスト層(A)の厚さは、通常0.1〜40μmであり、好ましくは、0.5〜20μmである。
【0039】
(B)金属層
本発明の金属パターン形成用転写フィルムを構成する金属層(B)は、実質的に金属以外の成分を含まない(99質量%以上が金属である)層である。
【0040】
本発明における金属層(B)は、その厚さが0.5〜20μmであることが望ましい。金属層(B)の厚さが0.5μmより小さいと、電極の抵抗値を小さくすることが困難になる場合がある。一方金属層(B)の厚さが20μmより大きいと、エッチング時に金属層(B)を溶解除去するのに長時間を要し、その間にレジスト層(A)が金属層(B)から剥離する等の問題が生じやすくなる傾向がある。
【0041】
金属層(B)を構成する金属の種類には、電極を形成することができる限り特に制限はないが、パターン配線形成の容易性の点からAg、Au、AlおよびCuからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属であることが好ましい。これらの元素をベースとする合金であってもよい。
【0042】
金属層(B)の形成方法に特に制限はなく、種々の方法により形成された金属層を用いることができる。たとえば、本発明の金属パターン形成用転写フィルムを構成する金属層(B)は、アルミ箔等の金属箔を用いて形成されたものでもよい。この場合、金属箔は数枚積層されていてもよい。金属箔を用いて金属層(B)を形成する場合、用いる金属箔の厚さは通常1〜20μmであり、好ましくは3〜15μmであり、さらに好ましくは5〜12μmである。また前記金属層(B)は、真空蒸着法およびスパッタ法等の真空製膜法により形成されたものでもよい。なお、本発明の効果が顕著に奏されることから、金属層(B)は金属箔により形成されていることが好ましい。
【0043】
<(C)ガラスペースト層>
ガラスペースト層(C)は、本発明の金属パターン形成用転写フィルムにより電極が製
造される際に、金属層(B)とガラス基板との間に介在し、金属層(B)をガラス基板に接着させる機能を有する。
【0044】
本発明の金属パターン形成用転写フィルムを構成するガラスペースト層(C)は、厚さが5〜30μmであって、(a)ガラス粉末と、(b)ガラス転移点(Tg)が−30〜30℃である結着樹脂と、(c)溶剤とを含有する(C’)ガラスペーストから形成される。また、ガラスペースト層(C)中の溶剤(c)の含有量は、1重量%以下である。以下前記ガラス粉末(a)、結着樹脂(b)および溶剤(c)について説明する。
【0045】
((a)ガラス粉末)
前記ガラスペースト(C’)に含まれるガラス粉末(a)としては、軟化点が400〜600℃の範囲内にあるガラス粉末が好ましく、450〜580℃の範囲内にあるガラス粉末が特に好ましい。軟化点が400℃未満または600℃を超えるガラス粉末であっても、良好なパターン形状の電極の形成は可能ではあるが、ガラス粉末(a)の軟化点が400℃未満である場合には、焼成工程において、結着樹脂(b)などの有機物質が完全に分解除去されない段階でガラス粉末(a)が溶融してしまうため、形成されるガラス焼結体中に有機物質の一部が残留し、この結果、得られるガラス焼結体が着色してしまったり、揮発物がパネルに悪影響を及ぼす場合がある。一方、ガラス粉末(a)の軟化点が600℃を超える場合には、600℃より高温で焼成する必要があるために、ガラス基板に歪みなどが発生しやすくなる傾向がある。
【0046】
好適なガラス粉末の具体例としては、酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素および酸化カルシウム(PbO−B23−SiO2−CaO)系;酸化亜鉛、酸化ホウ素および酸化ケイ
素(ZnO−B23−SiO2)系;酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素および酸化アルミ
ニウム(PbO−B23−SiO2−Al23)系;酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素およ
び酸化ケイ素(PbO−ZnO−B23−SiO2)系;酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素
、酸化ケイ素および酸化チタン(PbO−ZnO−B23−SiO2−TiO2)系;酸化ビスマス、酸化ホウ素および酸化ケイ素(Bi23−B23−SiO2)系;酸化亜鉛、
酸化リンおよび酸化ケイ素(ZnO−P25−SiO2)系;酸化亜鉛、酸化ホウ素およ
び酸化カリウム(ZnO−B23−K2O)系;酸化リン、酸化ホウ素および酸化アルミ
ニウム(P25−B23−Al23)系;酸化亜鉛、酸化リン、酸化ケイ素および酸化アルミニウム(ZnO−P25−SiO2−Al23)系;酸化亜鉛、酸化リンおよび酸化
チタン(ZnO−P25−TiO2)系;酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素および酸化
カリウム(ZnO−B23−SiO2系−K2O)系;酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化カリウムおよび酸化カルシウム(ZnO−B23−SiO2−K2O−CaO)系;酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化カリウムおよび酸化アルミニウム(ZnO−B23−SiO2−K2O−Al23)系;酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化カリウム、酸化カルシウムおよび酸化アルミニウム(ZnO−B23−SiO2−K2O−CaO−Al23)系;酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化カリウム、酸化アルミニウム、酸化カルシウムおよび酸化ストロンチウム(ZnO−B23−SiO2−K2O−Al2
3−CaO−SrO)系などを例示することができる。
【0047】
ガラス粉末(a)の平均粒径(D50)は特に制限されないが、通常0.1〜5μmであ
る。
【0048】
((b)結着樹脂)
前記ガラスペースト(C’)に含まれる結着樹脂(b)は、ガラス転移点(Tg)が−30℃〜30℃の範囲にある重合体である。Tgが−30℃未満であると、本発明の金属パターン形成用転写フィルムの作成時などにレジスト層(A)、金属層(B)およびガラスペースト層(C)がこの順に積層されている積層体を形成した際、ガラスペースト層(
C)の硬度が低く、外力に弱いため、積層体にシワや打痕などの不良が発生しやすい。また、Tgが30℃より上であると、ガラスペースト層(C)の靭性や柔軟性が低く、膜に亀裂が発生するなど脆性破壊が起こりやすい。Tgは、フィルムのハンドリング性の点から−20〜25℃であることが好ましく、−18〜20℃であることがより好ましい。
【0049】
本明細書において、ガラス転移点(Tg)とは、結着樹脂(b)が単独重合体の場合、POLYMER HANDBOOK 4thEdition VI/199〜253に記載されている値である。また、結着樹脂
(b)が共重合体の場合、Phys. Rev., Vol.86, 652(1952)などに記載されているよう
に、共重合体を生成する比より計算した値であり、下記数式(1)より求められる。
【0050】
【数1】

【0051】
[式(1)のwiは成分iの重量分率、Tgiは成分iの単独重合体のガラス転移温度[K]である。]
前記結着樹脂(b)としては、種々の樹脂を用いることができるが、例えば以下に示すモノマーの重合体が挙げられる。
スチレン、α−メチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニルフタル酸およびビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物類;
アミノエチルアクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル類;
グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル類;
酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;
(メタ)アクリロニトリルおよびα−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物類;
1,3−ブタジエンおよびイソプレンなどの脂肪族共役ジエン類;
(メタ)アクリル酸およびクロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;
イタコン酸、マレイン酸およびフマル酸などの不飽和ジカルボン酸;
その他の不飽和カルボン酸;
ビニルベンジルメチルエーテルおよびビニルグリシジルエーテルなどのビニルエーテル類;
末端に(メタ)アクリロイル基を有する、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレートおよびポリシリコーンなどのマクロモノマー類;
下記一般式(b10)で示される(メタ)アクリレート化合物(以下、「(メタ)アクリレート化合物(b10)」ともいう。);など。
【0052】
【化1】

【0053】
式(b10)中、Zは水素原子またはメチル基を表し、R2は1価の有機基を表す。
これらのモノマーの中では、生成するポリマーの燃焼性の点で、(メタ)アクリレート化合物(b10)およびグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0054】
(メタ)アクリレート化合物(b10)の具体例としては、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキルグリシジル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒ
ドロフルフリル(メタ)アクリレートおよびポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0055】
上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートおよびイソステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0056】
上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0057】
上記フェノキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、フェノキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0058】
上記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0059】
上記アルキルグリシジル(メタ)アクリレートとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記シクロアルキル(メタ)アクリレートとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびトリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0060】
上記ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートおよびノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0061】
これらの(メタ)アクリレート化合物(b10)の中では、ハンドリング性の良好なFilm形成の点からブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートおよび2−エトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0062】
以上例示したモノマーは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、他の共重合性モノマーを共重合成分として用いてもよい。
これらのモノマーを適当な割合で重合または共重合させることにより、Tgが−30〜30℃の範囲にある結着樹脂(b)を得ることができる。具体的には、ブチル(メタ)アクリレートなどの重合割合を増加させると結着樹脂のTgを上げることができ、ラウリル(メタ)アクリレート等の重合割合を増加させると、反対に結着樹脂のTgを下げることができる。
【0063】
また、結着樹脂(b)のガラスペースト(C’)における含有量について、ガラスペースト(C’)における結着樹脂(b)の量が過剰であると、焼成時の電極パターンの浮きの原因となりやすく、過少であると、ガラス基板と金属層(B)との密着が不良となる傾向がある。以上のことを考慮すると、結着樹脂(b)の含有割合は、ガラス粉末(a)100重量部に対して、通常25〜200重量部であり、好ましくは、40〜100重量部である。
【0064】
(c)溶剤
溶剤(c)は、ガラスペースト(C’)に適当な流動性または可塑性、良好なガラスペースト層の膜形成性を付与するために添加される。用いられる溶剤としては、ガラス粉末(a)との親和性および結着樹脂(b)の溶解性が良好で、ガラスペースト(C’)に適度な粘性を付与することができると共に、乾燥されることにより蒸発除去できるものであることが好ましい。
【0065】
溶剤(c)の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系アルコール類;酢酸−n−ブチル、酢酸アミルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;乳酸エチル、乳酸−n−ブチルなどの乳酸エステル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのエーテル系エステル類、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールなどを挙げることができる。
【0066】
前述のようにレジスト層(A)を後述する露光潜像形成工程の後かつエッチング工程の前に加熱硬化させる場合、その加熱中にガラスペースト層(C)に含まれる溶剤が揮発し、金属層(B)表面に泡状の突起物、いわゆるブリスターが発生する場合がある。そこで、このような溶剤(c)の揮発を防止するために、加熱温度よりも10〜120℃高い沸点を有する溶剤、好ましくは20〜100℃高い沸点を有する溶剤、さらに好ましくは30〜70℃高い沸点を有する溶剤を使用することが好ましい。
【0067】
たとえば、溶剤(c)として沸点が150℃以上のエチル−3−エトキシプロピオネート等を使用する場合、加熱温度を120℃とすれば、レジスト層(A)の加熱硬化時に、溶剤の揮発を防止することができ、かつレジスト層(A)の加熱硬化を確実なものとすることができる。
【0068】
上記各成分を含有するガラスペースト(C’)は、塗布に適した流動性を有するペースト状の組成物であり、その粘度は、通常1,000〜30,000cPとされ、好ましくは3,000〜10,000cPとされる。
【0069】
また、ガラスペースト(C’)における溶剤(c)の含有量は、ガラスペースト(C’)が塗布に適した流動性を有するように調整される。その含有割合は、ガラス粉末(a)
100質量部に対して、通常5〜50質量部であり、好ましくは10〜40質量部である。
【0070】
また、ガラスペースト(C’)には、任意成分として分散剤、可塑剤などの各種添加剤を含有させてもよい。
【0071】
(ガラスペースト層)
本発明の金属パターン形成用転写フィルムを構成するガラスペースト層(C)は、たとえば前記ガラスペースト(C’)を支持フィルム上レジスト層(A)が積層され、その上に積層された金属層(B)上に塗布、乾燥することにより形成される。
【0072】
ガラスペースト層(C)の厚さは、5〜30μmである。ガラスペースト層(C)の厚さが5μmより薄いと、後述する本発明の金属パターン形成方法において、ガラス基板上にガラスペースト層(C)、金属層(B)およびレジスト層(A)がこの順に積層されている積層体を形成した際、該積層体の各層間の密着性やガラス基板への密着性が不足し、金属層(B)のエッチング工程や焼成工程において金属パターン剥がれが発生し、良好な電極パターンが得られない。また、ガラスペースト層(C)の厚さが30μmより厚いと、焼成時にガラスペースト層(C)から発生するアウトガスが増加し、電極パターンの浮きが発生し、良好な電極パターンが得られない。
【0073】
ガラスペースト層(C)の厚さは、ガラス基板への密着性とアウトガス発生とのバランスの観点から5〜25μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。
【0074】
また本発明のガラスペースト層(C)中の溶剤(c)の含有量は、1重量%以下である。溶剤(c)が1重量%より多く残っている場合、レジスト層(A)の加熱硬化の工程において、ブリスターが発生し、良好な電極パターンが得られない。
【0075】
なお、本明細書においてガラスペースト層(C)中の溶剤(c)の含有量は、ガラスペースト層(C)を、150℃に加熱したAS ONE製熱風乾燥機(商品名DO−450PC)に30分間投入した際の重量減少量(ガラスペースト層(C)を基準(100重量%)とした際の減少量)である。この熱風乾燥機内の条件は、後述するレジスト層(A)を露光潜像形性工程の後かつエッチング工程の前に加熱硬化させる際にガラスペースト層(C)がさらされる条件とは雰囲気などの点において異なるため、該熱風乾燥機は、溶剤の沸点以下の加熱でも、完全に溶剤を揮発させることができる。
【0076】
また、ガラスペースト層(C)に含まれる溶剤(c)の含有量は、ガラスペースト(C’)を金属層(B)上に塗布した後の乾燥工程の条件によって調整できる。用いる乾燥炉に特に制限はないが、例えば、熱風乾燥炉・IR乾燥炉などを用いることができる。例えば、溶剤がエチル−3−エトキシプロピオネートの場合、70〜120℃の熱風乾燥炉・乾燥時間5〜10分の条件で、ガラスペースト層(C)中の溶剤(c)の含有量は、1重量%以下となる。
【0077】
<金属パターン形成用転写フィルム>
本発明の金属パターン形成用転写フィルムは、支持フィルム上にレジスト層(A)を積層し、このレジスト層(A)の上に金属層(B)を積層し、この金属層(B)の上にガラスペースト層(C)を積層することにより形成される。
【0078】
前記支持フィルムは、耐熱性および耐溶剤性を有すると共に可撓性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムが可撓性を有することにより、ロールコータによ
ってペースト状組成物を塗布することができ、本発明の金属パターン形成用転写フィルムをロール状に巻回した状態で保存し、供給することができる。
【0079】
支持フィルムを形成する樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフロロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロン、セルロースなどを挙げることができる。
【0080】
支持フィルムの厚さは、例えば20〜100μmとすることができる。
また、支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましい。これにより、後述する本発明の金属パターン形成方法における積層工程で本発明の金属パターン形成用転写フィルムを利用する場合の転写工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
【0081】
本発明の金属パターン形成用転写フィルムは、たとえば次のようにして製造することができる。
レジスト層(A)に含有される上記成分を混練してペースト状のレジスト組成物を調製し、これを支持フィルム上に塗布して、レジスト層(A)を形成する。レジスト組成物を塗布する方法としては、スクリーン印刷法、ロール塗布法、回転塗布法、流延塗布法等種々の方法を挙げることができる。塗布した後、必要に応じレジスト組成物を乾燥させる。
【0082】
次に、前記レジスト層(A)の上に金属層(B)を積層する。レジスト層(A)の上に金属層(B)を積層する方法としては、たとえばアルミ箔等の金属箔をレジスト層(A)上にラミネートする方法、およびレジスト層(A)上に真空蒸着法およびスパッタ法等により金属を真空製膜する方法等を挙げることができる。
【0083】
次に、前記金属層(B)の上にガラスペースト層(C)を積層する。ガラスペースト層(C)は、前記ガラスペースト(C’)を調製し、これを金属層(B)の上に塗布することにより形成することができる。ガラスペースト(C’)を塗布する方法としては、厚みの均一性に優れ、厚みの大きい塗膜を効率よく形成することができるものが好ましく、具体的には、ロールコータによる塗布方法、ドクターブレードによる塗布方法、カーテンコーターによる塗布方法、ワイヤーコーターによる塗布方法などを挙げることができる。
【0084】
このようにして本発明の金属パターン形成用転写フィルムを製造することができるが、この後、必要に応じて前記転写フィルムを乾燥させる。乾燥温度は、通常50〜150℃であり、乾燥時間は通常0.5〜120分間である。沸点の高い溶剤を用いた場合には温度を高くすることや乾燥時間を長くすることによって乾燥させることができる。
【0085】
本発明の金属パターン形成用転写フィルムでは、そのガラスペースト層(C)の上に、保護フィルムを設けることもできる。保護フィルムとしては、たとえばポリエチレンフィルムおよびポリビニルアルコール系フィルムなどを挙げることができる。
【0086】
[金属パターン形成方法]
本発明の金属パターン形成方法は、(C)ガラスペースト層、(B)金属層および(A)レジスト層がこの順に積層されてなり、前記ガラスペースト層(C)の厚さが5〜30μmであって、前記ガラスペースト層(C)が、(a)ガラス粉末と、(b)ガラス転移点が−30〜30℃である結着樹脂と、(c)溶剤とを含有する(C’)ガラスペーストから形成され、ガラスペースト層(C)中の溶剤(c)の含有量が1重量%以下である積層体を、ガラス基板上に形成する積層工程と、前記積層体を露光処理して、前記レジスト層(A)にレジストパターンの潜像を形成する露光潜像形成工程と、前記露光潜像形成工
程を経た前記積層体を現像処理して、前記レジスト層(A)にレジストパターンを顕在化させる現像工程と、前記現像工程を経た前記積層体をエッチング処理して、レジストパターンに対応する金属層(B)のパターンを形成するエッチング工程と、前記エッチング工程を経た前記積層体を焼成する焼成工程とを含む。以下これら各工程について説明する。
【0087】
<(i)積層工程>
積層工程は、ガラスペースト層(C)の上に金属層(B)が積層され、その金属層(B)の上にレジスト層(A)が積層されてなる積層体をガラス基板上に形成する工程である。レジスト層(A)、金属層(B)およびガラスペースト層(C)の構成成分については、上記本発明の金属パターン形成用転写フィルムにおいて述べた通りである。
【0088】
前記ガラス基板としては、耐熱性を有するガラスから形成されたものが好ましく、たとえばセントラル硝子(株)製CP600Vを好適に使用することができる。またガラス基板の表面には、必要に応じて、シランカップリング剤などによる薬品処理、プラズマ処理、並びにイオンプレーティング法、スパッタリング法、気相反応法および真空蒸着法などによる薄膜形成処理のような前処理を施してもよい。前記薬品処理をする場合、処理液濃度は通常0.1〜5質量%であり、乾燥温度は通常80〜140℃であり、乾燥時間は通常10〜60分間である。
【0089】
前記積層体の形成方法としては、電極が製造可能である限り特に制限はなく、たとえば本発明の金属パターン形成用転写フィルムを用いて、そのレジスト層(A)、金属層(B)およびガラスペースト層(C)をガラス基板上に、ガラスペースト層(C)がガラス基板に接するようにして、加熱ローラなどにより転写する方法を挙げることができる。ここで転写条件としては、例えば、加熱ローラの表面温度が40〜140℃、加熱ローラによるロール圧が0.1〜10kg/cm2、加熱ローラの移動速度が0.1〜10m/分と
される。このような操作(転写工程)は、たとえば加熱ローラを備えたラミネータ装置により行うことができる。なお、基板は予熱されていてもよく、予熱温度は、例えば40〜140℃とすることができる。
【0090】
またレジスト層(A)、金属層(B)およびガラスペースト層(C)のうちの1層または2層を備えた支持フィルムを用いて、これらを順次ガラス基板上に転写してもよい。または、上記本発明の金属パターン形成用転写フィルムの製造方法の場合と同様に、ガラス基板上にガラスペースト(C’)を塗布してガラスペースト層(C)を形成し、その上に、金属箔または真空製膜法等により金属層(B)を形成し、その上にレジスト組成物を塗布してレジスト層(A)を形成してもよい。
【0091】
<(ii)露光潜像形成工程>
レジスト層(A)の表面に露光用マスクを介して紫外線などの放射線の選択的照射(露光)を行う方法や、レーザー光を走査する方法などで、レジスト層(A)にレジストパターンの潜像を形成する。
【0092】
前記放射線を照射する装置としては、フォトリソグラフィー法で一般的に使用されている紫外線照射装置、半導体および液晶表示装置を製造する際に使用されている露光装置、レーザー装置などを用いることができ、特に限定されるものではない。
【0093】
光源出力は、通常1〜100mW/cm2であり、好ましくは0.1〜5mW/cm2である。露光時間は、通常0.05〜1分間である。露光量は通常100mJ/cm2である。
前記露光用マスクの露光パターンは、使用されるパネル設計によって異なるが、一般的に10〜500μm幅のストライプである。
【0094】
<(iii)現像工程>
前記積層体を現像処理して、レジスト層(A)にレジストパターンを顕在化させる。
現像処理条件については特に制限はなく、レジスト層(A)の種類に応じて、現像液の種類・組成・濃度、現像時間、現像温度、現像方法(例えば浸漬法、揺動法、シャワー法、スプレー法、パドル法など)、現像装置などを適宜選択することができる。
【0095】
なお、現像温度は通常20〜50℃である。現像時間は通常1〜20分である。
本発明の金属パターン形成方法における現像工程で使用される現像液としては、アルカリ現像液が好ましい。
【0096】
アルカリ現像液の有効成分としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、アンモニアなどの無機アルカリ性化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エタノールアミンなどの有機アルカリ性化合物などを挙げることができる。
【0097】
アルカリ現像液は、前記アルカリ性化合物の1種または2種以上を水などに溶解させることにより調製することができる。アルカリ現像液におけるアルカリ性化合物の濃度は、通常0.001〜10質量%である。アルカリ現像液による現像処理がなされた後は、通常、水洗処理が施される。
【0098】
<(iv)エッチング工程>
前記現像工程を経た前記積層体をエッチング処理して、金属層(B)の不要部分を溶解除去することにより、レジストパターンに対応する金属層(B)のパターンを形成する。
【0099】
エッチング処理条件については特に制限はなく、金属層(B)の種類などに応じて、エッチング液の種類・組成・濃度、処理時間、処理温度、処理方法(例えば浸漬法、揺動法、シャワー法、スプレー法、パドル法)、処理装置などを適宜選択することができる。
【0100】
金属層を用いた金属パターン形成方法においては、エッチング工程において、実質的に純粋な金属からなる金属層も溶解除去する必要があるので、エッチングは、感光性ペースト法等の金属層を用いない方法よりも強い条件で行う必要がある。本発明におけるエッチング処理方法としては、強力なエッチングが必要である点から前記積層体をエッチング液に浸漬する浸漬法が好適である。この浸漬法において用いるエッチング液の種類としては、上記金属層(B)を形成する金属をエッチング可能な溶液であれば特に限定はされないが、たとえば酸性水溶液、アルカリ水溶液を用いることができる。
【0101】
前記酸性水溶液としては、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸およびこれらの混合水溶液などを用いることができる。前記アルカリ基性水溶液としては、前記アルカリ現像液と同様のものなどを用いることができる。その濃度は、たとえば、0.01〜10質量%とすることができる。
【0102】
また、そのようなエッチング液に前記積層体を浸漬する際の温度は、たとえば20〜50℃とすることができ、浸漬する時間は、たとえば10〜60分間とすることができる。
また、エッチング液として、現像工程で使用した現像液と同一の溶液を使用することが
できるようにレジスト層(A)の種類を選択しておくと、現像工程とエッチング工程とを連続的に一つの工程で行うことが可能となり、工程の簡略化による製造効率の向上を図ることができる。前述のようにレジスト層(A)に含有させる結着樹脂にアルカリ可溶性樹脂を用いると、レジスト層(A)のアルカリへの溶解性を調整することができる。これにより、現像液とエッチング液とを同一のアルカリ性溶液とすることができる。この場合、前記理由により、エッチング液であり、かつ現像液である溶液に積層体を浸漬することにより、現像工程およびエッチング工程を行うことが好ましい。
【0103】
また本発明においては、前述の通り、強い条件でエッチングを行う必要があることから、エッチング工程中に、レジスト層(A)が金属層(B)から剥離するという現象が起こることがある。これを防止するために、レジスト層(A)を硬化させて、レジスト層(A)と金属層(B)との接着を強固にする処理を行うことが有効である。
【0104】
レジスト層(A)を硬化させる方法としては、積層体を加熱してレジスト層(A)を硬化させる加熱硬化(ポストベーク)、および積層体を露光してレジスト層(A)を硬化させる露光硬化等を挙げることができる。すなわち本発明においては、露光潜像形成工程の後かつ現像工程の前、または現像工程の後かつエッチング工程の前に加熱硬化(ポストベーク)工程を行うか、または現像工程の後かつエッチング工程の前に露光硬化工程を行うことが好ましい。
【0105】
加熱硬化の温度は、通常100〜300℃であり、好ましくは120〜300℃である。硬化時間は、10〜120分間である。
露光硬化の条件としては、紫外線などの放射線の照射(露光)を行う方法が好ましい。放射線照射装置としては、上記露光潜像形成工程で使用されるものと同様のものを用いることができる。
【0106】
レジスト層(A)を硬化させる方法としては、レジスト層(A)の金属層(B)からの剥離をより効果的に防止することができる点で、露光硬化より加熱硬化の方が好ましい。
また前述の通り、レジスト層(A)を加熱硬化させる際に、ガラスペースト層(C)に含まれる溶剤(c)が揮発し、金属層(B)表面に泡状の突起物、いわゆるブリスターが発生する場合がある。このような溶剤の揮発を防止するために、前述のように、加熱温度よりも高い沸点を有する溶剤(c)を使用することが好ましい。なお、前述のように、熱風乾燥機を使用した場合には、レジスト層(A)の加熱硬化の場合とは雰囲気などの点において条件が異なるため、溶剤(c)の沸点以下の加熱でも、完全に溶剤(c)を揮発させることができる。
【0107】
<(v)焼成工程>
エッチング工程を経た積層体を焼成して、レジスト層(A)中の有機物質を焼失させて、パターン形成された金属層(B)の上に残存するレジスト層(A)を除去する。この工程により、金属パターンである電極などが形成される。またこの焼成により、ガラスペースト層(C)とガラス基板とは一体化する。
【0108】
焼成処理の温度は、レジスト層(A)中の有機物質が焼失する温度であることが必要であり、通常、400〜600℃である。また、焼成時間は、通常10〜90分間である。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下において「部」は「質量部」を示す。まず、実施例における各評価方法を下記に示す。
【0110】
[アルカリ可溶性樹脂の分子量]
東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(商品名HLC−802A)によりポリスチレン換算の重量平均分子量を測定した。
【0111】
[ガラスペースト層(C)に含有される溶剤量]
形成したガラスペースト層を150℃に加熱したAS ONE製熱風乾燥機(商品名DO−450PC)に30分間投入し、その際の重量減少量(ガラスペースト層を基準(100重量%)とした際の減少量)を溶剤量とした。この乾燥により、ガラスペースト層に含まれる溶剤は完全に揮発する。
【0112】
[ガラスペースト層のハンドリング性]
支持フィルム上に形成したガラスペースト層に1Nの外力を与え、該当箇所について目視で観察した。打痕などの変形が発生するものを×、変形がないものを○とした。
【0113】
[ガラスペースト層の靭性]
ガラスペースト層を長さ35mm、幅4mmに切断し、300mm/minの速度で延伸し、破断時の伸びが20mm以上のものを○、20mm未満のものを×とした。
【0114】
[ポストベーク後のブリスターの発生]
ポストベーク後の、ガラスペースト層、金属層およびレジスト層がこの順に積層されてなる積層体がその上に形成されたガラス基板を目視にて観察し、ブリスターの発生が確認されない場合を○、確認された場合を×と評価した。
【0115】
[エッチング後のガラスペースト層の剥れ]
エッチング工程後の、前記積層体がその上に形成されたガラス基板にエアーを吹きかけ、ガラスペースト層が剥がれない場合を○、ガラスペースト層がガラス基板から剥がれる場合を×と評価した。
【0116】
[焼成後のAl箔(金属層)の剥がれ]
焼成後のガラス基板にエアーを吹きかけ、Al箔がガラス基板から剥がれない場合を○、Al箔が剥がれる場合を×と評価した。
【0117】
<合成例1>
2−エチルヘキシルメタクリレート60部、n−ブチルメタクリレート40部、およびN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部を、撹拌機付きオートクレーブに仕込み、窒素雰囲気下・室温において均一になるまで撹拌した。
【0118】
撹拌後、75℃で3時間重合させ、さらにN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.25部を加えて1時間重合させ、さらに100℃で1時間重合させた後、室温まで冷却してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液は重合率が98%であり、このポリマー溶液から析出した共重合体(以下、「樹脂(1)」ともいう。)のMwは75000、Tgは1℃であった。
【0119】
<合成例2>
表1に記載の成分を表1に記載の割合で使用した以外は、合成例1と同様にしてポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液は重合率が98%であり、このポリマー溶液から析出した共重合体(以下、「樹脂(2)」ともいう。)のMwは75000、Tgは−18℃であった。
【0120】
<合成例3>
表1に記載の成分を表1に記載の割合で使用したこと以外は、合成例1と同様にしてポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液は重合率が98%であり、このポリマー溶液から析出した共重合体(以下、「樹脂(3)」ともいう。)のMwは75000、Tgは−35℃であった。
【0121】
<合成例4>
表1に記載の成分を表1に記載の割合で使用したこと以外は、合成例1と同様にしてポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液は重合率が98%であり、このポリマー溶液から析出した共重合体(以下、「樹脂(4)」ともいう。)のMwは75000、Tgは20℃であった。
【0122】
<合成例5>
表1に記載の成分を表1に記載の割合で使用したこと以外は、合成例1と同様にしてポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液は重合率が98%であり、このポリマー溶液から析出した共重合体(以下、「樹脂(5)」ともいう。)のMwは75000、Tgは34℃であった。
【0123】
【表1】

【0124】
<実施例1>
(1)金属パターン形成用転写フィルムの作成
ガラス粉末として、ZnO−B23−SiO2系フリット(軟化点485℃、粒径(D50)2.5um)100部、結着樹脂として樹脂(1)を72部、および溶剤としてエチル−3−エ
トキシプロピオネート15部を用い、これらをビーズミルで分散することにより、ガラスペーストを調製した。このガラスペーストを、PETフィルムからなる支持フィルム(幅200mm、長さ300mm、厚さ50μm)上にブレードコーターにより塗布して、100℃の熱風乾燥炉で5分間乾燥させて、厚さ15μmのガラスペースト層を形成した。
【0125】
これとは別にガラスペースト層の評価用に、支持フィルム(幅200mm、長さ300mm、厚さ50μm)上に上記と同じ条件でガラスペースト層を形成し、このガラスペースト層に含まれる溶剤量を測定したところ、0.3重量%であった。また、さらに別に支持フィルム(幅200mm、長さ300mm、厚さ50μm)上にガラスペースト層を同じ条件で形成し、これのハンドリング性評価・靭性評価を行った。結果を表2に示した。
【0126】
上記の、溶剤量の測定やハンドリング性評価・靭性評価に使用していないガラスペースト層の上に、厚さ12μmのアルミ箔をラミネートして、厚さ12μmの金属層を形成した。
【0127】
アルカリ可溶性樹脂として、メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸シクロへキシル/メタクリル酸=50/35/15(質量%)共重合体(Mw=30,000)100部、感
光性モノマーとしてポリプロピレングリコールアクリレート(n≒12、東亜合成製「M270」)33.3部およびトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(n≒2、東亜合成製「M360」)16.6部、並びに光重合開始剤として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(チバ・スペシャル・ケミカルズ社製「IRG.369」)15部を用い、これらを攪拌脱泡装置で混練りした後、三本ロールで分散することにより、レジスト組成物を調製した。このレジスト組成物を、PETフィルムからなる支持フィルム(幅200mm、長さ30m、厚さ38μm)上にブレードコーターにより塗布して、厚さ10μmのレジスト層を形成した。
【0128】
前記厚さ12μmの金属層の上に、このレジスト層をラミネートして、厚さ125μmの金属パターン形成用転写フィルムを形成した。
【0129】
(2)電極の形成
(i)積層工程
前記金属パターン形成用転写フィルムをガラス基板上に転写することにより、ガラス基板上に、ガラスペースト層、金属層、およびレジスト層がこの順で積層されてなる積層体を形成した。すなわち、前記金属パターン形成用転写フィルムのガラスペースト層に接している支持フィルムを剥離し、このガラスペースト層がガラス基板に接するように転写した。
【0130】
(ii)露光潜像形成工程
前記積層体のレジスト層に対して、ライン幅60μm、スペース幅60μmのストライプ状ネガ用露光用マスクを介して、超高圧水銀灯により、i線(波長365nmの紫外線)を照射した。その際の露光量は、365nmのセンサーで測定した照度換算で100mJ/cm2とした。
【0131】
(iii)現像工程
前記露光潜像形成工程を経た積層体に対して、液温30℃の0.3質量%炭酸ナトリウム水溶液を現像液として、シャワー法により現像処理を60秒間行い、続いて、超純水を用いて水洗を行った。
【0132】
(iv)加熱硬化工程
前記現像工程の後、前記積層体を120℃で60分間加熱して、前記レジスト層を硬化させた。このポストベーク後に、ブリスターの発生を評価した。結果を表2に示した。
【0133】
(v)エッチング工程
前記加熱硬化工程を経た積層体を、液温25℃、4質量%水酸化ナトリウム水溶液のエッチング液中に20分間浸漬した。このエッチング工程後のガラスペースト層の剥れ、およびAl箔の剥がれを評価した。結果を表2に示した。
【0134】
(vi)焼成工程
前記エッチング工程を経た積層体を焼成炉内で570℃の温度雰囲気下で20分間焼成した。
【0135】
以上により、ガラス基板上にパターン幅60μm、厚み12μmの電極を得ることができた。
【0136】
<実施例2〜実施例13および比較例1〜比較例17>
使用する樹脂、ガラスペースト層の厚み、ガラスペースト層に含まれる溶剤量および使用するアルミ箔の厚さを表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして金属パ
ターン形成用転写フィルムを形成し、該転写フィルムを使用して実施例1と同様に電極を形成した。また、実施例1と同様にしてガラスペースト層に含まれる溶剤量、ガラスペースト層のハンドリング性及び靭性、ポストベーク後のブリスターの発生、エッチング後のガラスペースト層の剥がれ、焼成後のAl箔の剥がれを評価した。結果を表2に示す。 なお、実施例10においては、ガラスペーストを塗布した後の乾燥を100℃熱風乾燥炉・乾燥時間3分に変更することにより、比較例17においては、ガラスペーストを塗布した後の乾燥を100℃熱風乾燥炉・乾燥時間2分に変更することにより、ガラスペースト層に含まれる溶剤量を変えた。
【0137】
以下の表2において、「樹脂」は使用した樹脂の番号を、「膜厚」はガラスペースト層の厚さを示す。
【0138】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】交流型FPD(具体的には、PDP)の断面形状を示す模式図である。
【符号の説明】
【0140】
101 ガラス基板
102 ガラス基板
103 隔壁
104 透明電極
105 バス電極
106 アドレス電極
107 蛍光物質
108 誘電体層
109 誘電体層
110 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フィルム上に、(A)レジスト層、(B)金属層および(C)ガラスペースト層がこの順に積層されてなり、
前記ガラスペースト層(C)の厚さが5〜30μmであって、
前記ガラスペースト層(C)が、(a)ガラス粉末と、(b)ガラス転移点が−30〜30℃である結着樹脂と、(c)溶剤とを含有する(C’)ガラスペーストから形成され、ガラスペースト層(C)中の溶剤(c)の含有量が1重量%以下であることを特徴とする金属パターン形成用転写フィルム。
【請求項2】
前記金属層(B)が、Ag、Au、AlおよびCuからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属パターン形成用転写フィルム。
【請求項3】
前記金属層(B)が、金属箔により形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の金属パターン形成用転写フィルム。
【請求項4】
(C)ガラスペースト層、(B)金属層および(A)レジスト層がこの順に積層されてなり、前記ガラスペースト層(C)の厚さが5〜30μmであって、前記ガラスペースト層(C)が、(a)ガラス粉末と、(b)ガラス転移点が−30〜30℃である結着樹脂と、(c)溶剤とを含有する(C’)ガラスペーストから形成され、ガラスペースト層(C)中の溶剤(c)の含有量が1重量%以下である積層体を、ガラス基板上に形成する積層工程と、
前記積層体を露光処理して、前記レジスト層(A)にレジストパターンの潜像を形成する露光潜像形成工程と、
前記露光潜像形成工程を経た前記積層体を現像処理して、前記レジスト層(A)にレジストパターンを顕在化させる現像工程と、
前記現像工程を経た前記積層体をエッチング処理して、レジストパターンに対応する金属層(B)のパターンを形成するエッチング工程と、
前記エッチング工程を経た前記積層体を焼成する焼成工程と
を含むことを特徴とする金属パターン形成方法。
【請求項5】
前記エッチング工程を、前記積層体をエッチング液に浸漬することにより行うことを特徴とする請求項4に記載の金属パターン形成方法。
【請求項6】
前記現像工程およびエッチング工程を、前記積層体をエッチング液に浸漬することにより一つの工程で行うことを特徴とする請求項4に記載の金属パターン形成方法。
【請求項7】
さらに前記露光潜像形成工程の後かつ前記現像工程の前、または前記現像工程の後かつ前記エッチング工程の前に、前記積層体を加熱して、前記レジスト層(A)を硬化させる加熱硬化工程を含むことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の金属パターン形成方法。
【請求項8】
さらに前記現像工程の後かつ前記エッチング工程の前に、前記積層体を露光して、前記レジスト層(A)を硬化させる露光硬化工程を含むことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の金属パターン形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−99951(P2010−99951A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274025(P2008−274025)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】