説明

金属ベース回路基板の連鎖品形成方法及び金属ベース回路基板の連鎖品

【課題】 折割り用の構造をプレス加工しても、各回路パターン間の位置寸法を維持することを可能とする。
【解決手段】金属基板
に絶縁層5を介して回路パターン7を設定間隔で形成してそれぞれ回路パターン7を備えた回路基板9の連鎖品1を形成する連鎖品形成工程と、回路基板9を折割り分離することが予定されているライン上にプレス加工により部分的に折割り分離用のノッチ11,13を形成するノッチ形成工程と、ライン上でノッチ11,13を残してスリット15,17,19を貫通形成するスリット形成工程とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明用などの金属ベース回路基板に供される金属ベース回路基板の連鎖品形成方法及び金属ベース回路基板の連鎖品に関する。
【背景技術】
【0002】

従来の金属ベース回路基板の連鎖品として、例えば特許文献1に記載の金属基板材がある。この金属基板材は、特に第4図のように、切断線に沿ってスリットを設けて基部を形成し、この基部に折割り溝を設けたものである。
【0003】
したがって、折割り溝により各素子基板を手作業により簡単に折割り分離することができる。
【0004】
この場合、折割り溝を、プレス加工により形成することができる。
【0005】
しかし、プレスによる折割り溝の形成で余った肉が面方向に移動し、各素子基板間が面方向に伸びることになる。
【0006】
このため、各素子基板にそれぞれ回路パターンが先に形成されている場合は、各回路パターン間の位置寸法がずれることになり、素子の自動的な実装の位置障害等を招くという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7−77292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、折割り用の構造をプレス加工すると各回路パターン間の位置寸法がずれるといった点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、折割り用の構造をプレス加工しても、各回路パターン間の位置寸法を維持することを可能とするため、金属基板に絶縁層を介して回路パターンを設定間隔で形成してそれぞれ前記回路パターンを備えた回路基板の連鎖品を形成する連鎖品形成工程と、前記連鎖品を折割り分離することが予定されているライン上にプレス加工により部分的に折割り分離用のノッチを形成するノッチ形成工程と、前記ライン上で前記ノッチを残してスリットを貫通形成するスリット形成工程とを備えたことを金属ベース回路基板の連鎖品形成方法の特徴とする。
【0010】
また、金属基板に絶縁層を介して回路パターンを設定間隔で形成してそれぞれ前記回路パターンを備えた回路基板を複数連設し、前記金属ベース回路基板を分離することが予定されているライン上にプレス加工により部分的に折割り用のノッチを形成し、前記ライン上に前記ノッチを残して貫通形成したスリットとを備え、前記ノッチの端部に前記スリット形成によるバリ除去部が形成されたことを金属ベース回路基板の連鎖品の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金属ベース回路基板の連鎖品形成方法は、金属基板に絶縁層を介して回路パターンを設定間隔で形成してそれぞれ前記回路パターンを備えた回路基板の連鎖品を形成する連鎖品形成工程と、前記回路基板を折割り分離することが予定されているライン上にプレス加工により部分的に折割り分離用のノッチを形成するノッチ形成工程と、前記ライン上で前記ノッチを残してスリットを貫通形成するスリット形成工程とを備えた。
【0012】
このため、折割り用のノッチをプレス加工により形成しても、ノッチが部分的であるためノッチ形成により余った肉は、ノッチを囲む一般部に規制されて面方向への移動が抑制され、ノッチの縁部から基板面上へ突出するように盛り上がることになる。
【0013】
したがって、各回路基板間が面方向に伸びることが抑制され、各回路パターン間の位置寸法が維持され、素子の自動的な実装の精度を保持させることができる。
【0014】
本発明の金属ベース回路基板の連鎖品は、金属基板に絶縁層を介して回路パターンを設定間隔で形成してそれぞれ前記回路パターンを備えた回路基板を複数連設し、前記回路基板を分離することが予定されているライン上にプレス加工により部分的に折割り用のノッチを形成し、前記ライン上に前記ノッチを残して貫通形成したスリットとを備え、前記ノッチの端部に前記スリット形成によるバリ除去部が形成された。
【0015】
このため、ノッチのプレス加工によりノッチの端部に出現するバリをスリットの形成を利用して除去しバリ除去部を形成することができる。
【0016】
したがって、別加工を必要とせずにバリ取りを行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】金属ベース回路基板の連鎖品の平面図である。(実施例1)
【図2】図1のII-II線矢視断面図である。(実施例1)
【図3】ノッチを示す拡大断面図である。(実施例1)
【図4】図1のIV-IV線矢視断面図である。(実施例1)
【図5】バリ除去部の断面図である。(実施例1)
【図6】本発明実施例に係る金属ベース回路基板の連鎖品形成方法の工程図である。(実施例1)
【図7】ノッチ形成工程のプレス加工を示す概略断面図である。(実施例1)
【図8】ノッチ形成工程を示す連鎖品の平面図である。(実施例1)
【図9】スリット形成工程を示す連鎖品の平面図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0018】
折割り用の構造をプレス加工しても、各回路パターン間の位置寸法を維持することを可能とするという目的を、折割り用のノッチを先に形成し、その後ノッチを残してスリットを貫通形成することで実現した。
【実施例】
【0019】
[金属ベース回路基板の連鎖品]
図1は、金属ベース回路基板の連鎖品の平面図、図2は、図1のII-II線矢視断面図、図3は、ノッチを示す拡大断面図、図4は、図1のIV-IV線矢視断面図、図5は、バリ除去部の断面図である。
【0020】
図1、図2のように、金属ベース回路基板の連鎖品1は、金属基板3に絶縁層5を介して回路パターン7が設定間隔で形成され、それぞれ前記回路パターン7を備えた回路基板9が複数、図面では2個連設されている。
【0021】
金属基板3は、例えばSECC或いはケイ素鋼板などの鉄製であり、厚みは、0.8mm程度に形成されている。金属基板3は、アルミニウムなどで形成することもできる。
【0022】
絶縁層5は、金属基板3が鉄製の場合、いわゆるガラスエポキシ樹脂であり、強度を保持するガラスクロスにエポキシ樹脂を浸み込ませた形態のものである。絶縁層5は、金属基板3がアルミニウム製の場合、例えばエポキシ樹脂に無機フィラーを混入させたものが用いられる。
【0023】
回路基板9,9を折割り分離することが予定されているライン上には、プレス加工により部分的に折割り用のノッチ11,13が金属基板3の両面に形成されている。ノッチ11,13は、断面がV字形状に形成されたVノッチである。
【0024】
図2、図3のように、ノッチ11,13は、部分的であるためノッチ11,13形成により余った肉は、ノッチ11,13を囲む一般部3aに規制されて面方向への移動が抑制され、ノッチ11,13の縁部から基板3面上へ突出するように盛り上がる。
【0025】
図1、図4のように前記ライン上に前記ノッチ11,13を残して貫通形成したスリット15,17,19が備えられている。ノッチ11,13の前記ライン方向の端部には、前記スリット15,17,19形成によるバリ除去部11a,11b、13a,13bが形成されている。
【0026】
図5は、バリ除去部を示す断面図であり、図5は、バリ除去部11aを代表して示し、他のバリ除去部11b、13a,13bはバリ除去部11aと同一形状である。この図5のように、バリ除去部11a,11b、13a,13bは、肉の盛り上がり等がスリット15,17,19により除去され、平面からみてアール形状に形成されている。
【0027】
ここで、ノッチ11,13の長さL、厚みtは、折割り可能であれば、その設定は自由である。本実施例において、折り割り易さを考慮すると、金属の剪断強度により決定され、金属基板3が鉄製の場合、ノッチ11,13の長さLの合計は折割り部全体の長さBの10%程度、厚みtは、金属基板3の板厚Tの40%程度、金属基板3がアルミニウムの場合、ノッチ11,13の長さLの合計は折割り部全体の長さBの30%程度、厚みtは、金属基板3の板厚Tの40%程度がよい。
【0028】
本実施例では、D=22.5mm、L=2.5mm、T=0・8mm、t=0.3mmとしている。その他、ノッチ11,13の開き角αは、特に限定はされないが、本実施例においてα=45度に設定されている。スリット15,17,19の幅Wは、W=3mm、連鎖品1のたて横の寸法Bは、B=50mmとしている。
【0029】
連鎖品1の回路パターン7,7には、ノッチ11,13を形成した後、自動で素子が実装され、例えばLED照明用の回路として用いることができる。
【0030】
各回路基板9の分離は、手作業によりノッチ11,13を折割ることで行うことができる。
[金属ベース回路基板の連鎖品形成方法]
図6は、本発明実施例に係る金属ベース回路基板の連鎖品形成方法の工程図である。
【0031】
図6のように、金属ベース回路基板の連鎖品形成方法は、連鎖品形成工程S1、ノッチ形成工程S2、スリット形成工程S3を備えている。
【0032】
連鎖品形成工程S1は、金属基板3に絶縁層5を介して回路パターン7を設定間隔で連設形成してそれぞれ前記回路パターン7を備えた回路基板9,9の連鎖品1を形成する。
【0033】
ノッチ形成工程S2は、連鎖品形成工程S1後、回路基板9,9を折割り分離することが予定されているライン上にプレス加工により部分的に折割り用のノッチ11,13を形成する。
【0034】
スリット形成工程S3は、ノッチ形成工程S2後、前記ライン上で前記ノッチ11,13を残してスリット15,17,19を貫通形成する。
【0035】
図7は、ノッチ形成工程のプレス加工を示す概略断面図である。
【0036】
図7のように、プレス加工機21は、一般的なものであり、上金型23及び下金型25からなっている。上金型23は、上ダイセット23a、上ノッチパンチ23b、上プッシュバック23cからなり、下金型25は、下ダイセット25a、下ノッチパンチ25b、下プッシュバック25cからなっている。
【0037】
プレス加工に際しては、下金型25に図のように連鎖品1をセットし、上金型23を油圧等で下降させ、上下ノッチパンチ23b、25bにより前記ノッチ11,13を形成する。
【0038】
図8は、ノッチ形成工程を示す連鎖品の平面図、図9は、スリット形成工程を示す連鎖品の平面図である。
【0039】
図8のように、本実施例では、回路基板9,9の連鎖品1が金属基板3に対して3組形成された連鎖品27となっている。
【0040】
この連鎖品27に対し、前記ノッチ形成工程S2において図8のノッチ11,13を連鎖品1ごとに順次形成する。
【0041】
その後、スリット形成工程S3により、図9のように、外形29を打ち抜くと同時に前記スリット15,17,19を形成する。
【0042】
図8、図9において6個の回路基板9を連鎖品とし、6個の回路基板9間にノッチ11,13を形成することもできる。
[実施例の効果]
本発明実施例の金属ベース回路基板の連鎖品形成方法は、金属基板3に絶縁層5を介して回路パターン7を設定間隔で形成してそれぞれ前記回路パターン7を備えた回路基板9の連鎖品1を形成する連鎖品形成工程S1と、前記回路基板9を折割り分離することが予定されているライン上にプレス加工により部分的に折割り分離用のノッチ11,13を形成するノッチ形成工程S2と、前記ライン上で前記ノッチ11,13を残してスリット15,17,19を貫通形成するスリット形成工程S3とを備えた。
【0043】
このため、折割り用のノッチ11,13をプレス加工により形成しても、ノッチ11,13が部分的であるためノッチ形成により余った肉は、ノッチ11,13を囲む一般部3aに規制されて面方向への移動が抑制され、ノッチ11,13の縁部から基板3面上へ突出するように盛り上がることになる。
【0044】
したがって、各回路基板9,9間が面方向に伸びることが抑制され、各回路パターン7,7間の位置寸法が維持され、素子の自動的な実装の精度を保持させることができる。
【0045】
金属基板3が鉄製であるとき、アルミニウム製等の金属基板と異なり素材に硬度があるため、専用機であるV溝カッターを用いても折割り用の溝をカットするのは容易ではなく、ほとんど形成することができない。金属基板をボルト固定し潤滑油を供給しながらV溝カッターによりV溝を形成すれば加工は可能であるものの、時間とコストがかかり、加工機としても高価な専用機であり、現実的ではない。
【0046】
これに対し、ノッチ11,13をプレス加工すれば、金属基板3が鉄製であるときでも、折割り用のVノッチ11,13を簡単に形成することができ、プレス加工機、材料のコストも含めて回路基板9のコスト低減に寄与することができる。
【0047】
本発明実施例の金属ベース回路基板の連鎖品1は、金属基板3に絶縁層5を介して回路パターン7を設定間隔で形成してそれぞれ前記回路パターン7を備えた回路基板9を複数連設し、前記回路基板9を分離することが予定されているライン上にプレス加工により部分的に折割り用のノッチ11,13を形成し、前記ライン上に前記ノッチ11,13を残して貫通形成したスリット15,17,19とを備え、前記ノッチ11,13の端部に前記スリット15,17,19形成によるバリ除去部11a,11b,13a,13bが形成された。
【0048】
このため、ノッチ11,13のプレス加工によりノッチ11,13の端部に出現するバリをスリット15,17,19の形成を利用して除去しバリ除去部11a,11b,13a,13bを形成することができる。
【0049】
したがって、別加工を必要とせずにバリ取りを行わせることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 連鎖品
3 金属基板
5 絶縁層
7 回路パターン
9 回路基板
11,13 ノッチ
11a,11b,13a,13b バリ除去部
15,17,19 スリット
S1 連鎖品形成工程
S2 ノッチ形成工程
S3 スリット形成工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板に絶縁層を介して回路パターンを設定間隔で形成してそれぞれ前記回路パターンを備えた回路基板の連鎖品を形成する連鎖品形成工程と、
前記回路基板を折割り分離することが予定されているライン上にプレス加工により部分的に折割り用のノッチを形成するノッチ形成工程と、
前記ライン上で前記ノッチを残してスリットを貫通形成するスリット形成工程と、
を備えたことを特徴とする金属ベース回路基板の連鎖品形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の金属ベース回路基板の連鎖品形成方法であって、
前記金属基板は、鉄製である、
ことを特徴とする金属ベース回路基板の連鎖品形成方法。
【請求項3】
金属基板に絶縁層を介して回路パターンを設定間隔で形成してそれぞれ前記回路パターンを備えた回路基板を複数連設し、
前記回路基板を折割り分離することが予定されているライン上にプレス加工により部分的に折割り用のノッチを形成し、
前記ライン上に前記ノッチを残して貫通形成したスリットとを備え、
前記ノッチの端部に前記スリット形成によるバリ除去部が形成された、
ことを特徴とする金属ベース回路基板の連鎖品。
【請求項4】
請求項3記載の金属ベース回路基板の連鎖品であって、
前記金属基板は、鉄製である、
ことを特徴とする金属ベース回路基板の連鎖品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−243813(P2011−243813A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115805(P2010−115805)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】