説明

金属ベース回路基板及び金属ベース回路基板の製造方法

【課題】簡易な構成で絶縁性および放熱性に優れた金属ベース回路基板及び金属ベース回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る金属ベース回路基板は、金属板11上に配置された熱硬化性樹脂シート12a(第1の熱硬化性樹脂層)と、熱硬化性樹脂層シート12a上に配置された電子部品実装位置に開口を設けた絶縁シート13(絶縁層)と、絶縁シート13の開口に配置された熱伝導経路部材15と、絶縁シート13及び熱伝導経路部材15の上に配置された熱硬化性樹脂シート12b(第1の熱硬化性樹脂層)と、熱硬化性樹脂シート12bの電子部品実装位置に配置された放熱ランド14b及び放熱ランドから間隔をおいて配置された導電回路14aとを備え、これらを加熱加圧により一体化して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子機器のパワー半導体等を用いた電源回路や、高輝度の発光ダイオード等を用いたバックライト等の照明機器に用いられる金属ベース回路基板及び金属ベース回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化、小型化の要求に伴い、パワー半導体を用いた電源回路や、高輝度の発光ダイオードや半導体レーザを用いたバックライトのような照明機器に用いられる熱伝導性基板として金属ベース回路基板が採用されている。
【0003】
金属ベース回路基板は、熱伝導率の高い金属板(例えば、アルミ板)の表面を絶縁性樹脂で被覆し、この絶縁被覆上に接続端子を含む導電回路を形成して構成される。金属板を被覆する絶縁性樹脂には、熱伝導性の良好な接着シートや熱伝導率の高い無機充填剤を含む樹脂組成物をガラスクロスに含浸させたプリプレグが用いられる。
【0004】
パワー半導体等の発熱量の大きい回路素子は、このような金属ベース回路基板の接続端子上に実装され、回路素子で発生した熱は、絶縁性樹脂層を介して金属板に伝達され、金属板の表面から放熱される。
【0005】
このような金属ベース回路基板には、放熱性をさらに向上させるため、金属板に化学処理(エッチング処理)を施したり、機械加工(エンドミルやレーザによる加工)により放熱用のビア(サーマルビア)を形成したものが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、電子部品が接続される導体回路層と、電子部品が発生する熱を放熱するための放熱部材と、導体回路層と放熱部材を連結するための貫通孔と、この貫通孔に設けられ、導体回路層と放熱部材とを連結する熱伝導経路部材とを備えたフレキシブル配線基板が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−49062号公報
【特許文献2】特開2009−88571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の金属ベース回路基板では、絶縁樹脂層の厚さに対して放熱用ビアの高さが高いと金属ベース回路基板表面にボイドが発生しやすくなるため成形性に問題が生じる。また、絶縁樹脂層の厚さに対して放熱用ビアの高さが低いと放熱用ビアによる熱伝導性が低下する。このため、絶縁樹脂層の厚さと、放熱用ビアの高さのバランスの調整が難しいという問題がある。また、放熱性を向上させるために、絶縁樹脂層の厚さを薄くすると、絶縁性が低下してしまう。
【0009】
また、特許文献2に記載のフレキシブル配線基板は、製造工程が複雑となり製造コストが増大するという問題がある。さらに構造が複雑となるため、フレキシブル配線基板自体を薄くすることが難しくなるなどの問題がある。
【0010】
本発明は、かかる従来の課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成で絶縁性および放熱性に優れた金属ベース回路基板及び金属ベース回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係る金属ベース回路基板は、金属板上に配置された第1の熱硬化性樹脂層と、前記第1の熱硬化性樹脂層上に配置された電子部品実装位置に開口を設けた絶縁シート層と、前記絶縁層の開口に配置された熱伝導経路部材と、前記絶縁層及び前記熱伝導経路部材の上に配置された第2の熱硬化性樹脂層と、前記第2の熱硬化性樹脂層の電子部品実装位置に配置された放熱ランド及び前記放熱ランドから間隔をおいて配置された導電回路とを備え、これらが加熱加圧により一体化されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の一実施形態に係る金属ベース回路基板の製造方法は、金属板上に第1の未硬化の熱硬化性樹脂シートを配置する工程と、前記第1の未硬化の熱硬化性樹脂シート上に電子部品実装位置に開口を設けた絶縁シートを配置する工程と、前記絶縁シートの開口に熱伝導経路部材を配置する工程と、前記絶縁シート及び前記熱伝導経路部材の上に第2の未硬化の熱硬化性樹脂シートを配置する工程と、前記第2の未硬化の熱硬化性樹脂シート上に放熱ランド及び導電回路を位置決めして配置する工程と、この積層物を加熱加圧により一体に硬化する工程とを具備することを特徴とする。
【0013】
前記放熱ランド及び前記導電回路の位置決めは、転写基材上に前記放熱ランドと前記導電回路を、第2の未硬化の熱硬化性樹脂シート上に所定のパターンで配置し、剥離可能に固定する方法を採ることができる。
【0014】
具体的には、転写基材上に、銅箔のような導電金属箔を剥離可能に貼着し、周知のフォトリソグラフィ技術により、銅箔により放熱ランドと導電回路を形成し、これを第2の未硬化の熱硬化性樹脂シート上に転写する方法を採ることができる。
【0015】
以下、本発明に使用する金属板、熱硬化性樹脂シート、絶縁シート及び熱伝導経路部材について説明する。
【0016】
(金属板)
金属板11は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)またはこれらの合金からなる。特に、熱伝導率が高く放熱性に優れるアルミニウム、銅またはこれらの合金を用いるのが好ましい。
【0017】
(熱硬化性樹脂シート)
本発明に使用する未硬化の熱硬化性樹脂シートとしては、例えば熱伝導性の良好な無機充填剤を配合したBステージのエポキシ樹脂シートを使用できる。第1及び第2の熱硬化性樹脂シートは、組成が同一のものでも異なるものであってもよい。熱硬化性樹脂脂シートは、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)エラストマーおよび(E)無機充填剤からなるものが好ましい。
【0018】
(A)成分のエポキシ樹脂としては、1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が使用できる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、またはビフェニル骨格を含有する多官能エポキシ樹脂のいずれか、もしくは、これらエポキシ樹脂を2種以上混合したものを使用できる。
【0019】
(B)成分の硬化剤としては、ジシアンジアミド、芳香族ジアミンなどのアミン系硬化剤、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤等を使用できる。
【0020】
(C)成分の硬化促進剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、三フッ化ホウ素アミン錯体、トリフェニルホスフィン等を使用できる。
【0021】
(D)成分のエラストマーとしては、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム等の各種合成ゴム、ゴム変性の高分子量化合物、高分子量エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリイミド、変性ポリアミドイミド、ポリビニルアセタール等のいずれか、もしくは、これらを2種以上混合したものを使用できる。
【0022】
(E)成分の無機充填剤としては、公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、アルミナ(Al)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、酸化ケイ素(SiO)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化マグネシウム(MgO)等が使用できるが、特に、熱伝導率の高い窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナの使用が好ましい。(E)成分として、これらを2種以上混合したものを使用できる。
【0023】
(E)成分の形状は、凝集粒状であることが好ましい。(E)成分の粒度は、JIS K3362で規定される標準篩分け機械による篩分け方法によって測定される粒度から求められる重量平均粒径D50が1〜30μmであることが好ましい。(E)成分を、上述した形状及び粒径とすることにより、良好な熱的接合を得ることができる。
【0024】
(絶縁性シート)
絶縁性シートは、熱硬化性樹脂シートとの接着性が良好で、打ち抜き加工性が良好で可撓性があり、一体化の際の加熱加圧により破断しない強度をもつ電気絶縁性のシートが用いられる。絶縁性シートには、電子部品実装位置に対応させて後述する熱伝導経路部材を配置するための開口が形成される。
【0025】
絶縁性シートには、例えば、樹脂フィルム、繊維材料あるいはこれらの複合材料が使用される。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミドフィルムやポリエステルフィルムを使用できる。繊維材料としては、例えば、ガラス繊維やアラミド繊維などの織布もしくは不織布、またはこれらガラス繊維やアラミド繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを使用できる。
【0026】
(熱伝導経路部材)
熱伝導経路部材は、後述の放熱ランドを介して伝達される金属ベース回路基板に実装された電子部品で発生する熱を金属板へ伝達する熱伝導路を形成するもので、熱伝導性の良好なシート材料、例えば金属板を所定の大きさに切断又は打ち抜いて用いられる。
【0027】
上記絶縁性シートの厚みが0.2mm以下の場合は、熱伝導経路部材は金属箔で形成し、絶縁性シートの厚みが0.2mmを超える場合は、熱伝導経路部材を金属板表面に形成された金属板と一体の凸部とすることが好ましい。金属箔で形成する場合、熱伝導率の高い銅箔等を使用するのが好ましい。
【0028】
(放熱ランド及び導電回路)
放熱ランド及び導電回路は、第2の熱硬化性樹脂シート上に、例えば共通の金属箔からホトリソグラフィを用いて形成される。放熱ランドは、熱伝導経路部材上に形成され、導電回路は、放熱ランドから間隔をおいて形成される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、簡易な構成で絶縁性および放熱性に優れた金属ベース回路基板及び金属ベース回路基板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施形態に係る金属ベース回路基板の断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る金属ベース回路基板の一部拡大断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る絶面性シートの上面図である。
【図4】第1の実施形態に係る金属ベース回路基板の製造工程を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る転写回路の製造工程を示す図である。
【図6】第1の実施形態に係る金属ベース回路基板へ電子部品を実装した例を示す図である。
【図7】第1の実施形態に係る金属ベース回路基板へ電子部品を実装した他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
この第1の実施形態に係る金属ベース回路基板1は、金属板11上に配置された熱硬化性樹脂シート12a(第1の熱硬化性樹脂層)と、熱硬化性樹脂層シート12a上に配置された電子部品実装位置に開口を設けた絶縁シート13(絶縁層)と、絶縁シート13の開口に配置された熱伝導経路部材15と、絶縁シート13及び熱伝導経路部材15の上に配置された熱硬化性樹脂シート12b(第1の熱硬化性樹脂層)と、熱硬化性樹脂シート12bの電子部品実装位置に配置された放熱ランド14b及び放熱ランド14bから間隔をおいて配置された導電回路14aとを備え、これらを加熱加圧により一体化して形成される。
以下、図1〜3を参照して、金属ベース回路基板1について詳細に説明する。
【0032】
(金属板11)
金属板11は、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)またはこれらの合金からなる。熱伝導率が高く放熱性に優れるアルミニウム、銅またはこれらの合金を用いるとより好ましい。金属板11の厚みは、取り扱いの観点から0.025〜10mmが好ましく、0.05〜5mmがより好ましいが、用途に応じて適宜変更してもよい。金属板11の厚みが、0.025mm以上あれば、取り扱い時におけるしわ、歪み等の発生を防止できる。
【0033】
なお、金属板11と熱硬化性樹脂シート12aの密着性を向上させるために、金属板11の熱硬化性樹脂シート12aとの接着面を表面処理してもよい。脱脂処理、サンドブラスト加工、エッチング処理、めっき処理、カップリング剤処理などが表面処理として利用できる。
【0034】
(熱硬化性樹脂シート12a,12b)
熱硬化性樹脂シート12aは、金属板11上に配置される。熱硬化性樹脂シート12bは、絶縁性シート13上に配置される。熱硬化性樹脂シート12a,12bは、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)エラストマーおよび(E)無機充填剤を必須成分として含むことが好ましい。
【0035】
(A)成分のエポキシ樹脂としては、1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に制限なく使用できる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、またはビフェニル骨格を含有する多官能エポキシ樹脂のいずれか、もしくは、これらエポキシ樹脂を2種以上混合したものを使用できる。
【0036】
(B)成分のエポキシ樹脂硬化剤としては、ジシアンジアミド、芳香族ジアミンなどのアミン系硬化剤、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤といった、通常、エポキシ樹脂硬化剤として使用されている化合物が使用できる。
【0037】
(C)成分の硬化促進剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、三フッ化ホウ素アミン錯体、トリフェニルホスフィン等、通常、硬化促進剤として使用されるものを使用できる。
【0038】
(D)成分のエラストマーとしては、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム等の各種合成ゴム、ゴム変性の高分子量化合物、高分子量エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリイミド、変性ポリアミドイミド、ポリビニルアセタール等のいずれか、もしくは、これらを2種以上混合したものを使用できる。
【0039】
(D)成分の含有量は、(A)〜(E)成分の合計量に対して、3〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。(D)成分の含有量が、3質量%未満であると、接着力やシート状に成形した際の取り扱い性が悪くなる。また、(D)成分の含有量が、50質量%を超えると、耐熱性および熱伝導率が低下する。
【0040】
(E)成分としては、公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、アルミナ(Al)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、酸化ケイ素(SiO)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化マグネシウム(MgO)等が使用できるが、特に、熱伝導率の高い窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナの使用が好ましい。(E)成分として、これらを2種以上混合したものを使用することもできる。
【0041】
(E)成分の含有量は、(A)成分〜(E)成分の合計量に対して30〜85質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。(E)成分の含有量を30質量%以上とすることにより、熱伝導率を向上できる。また、(E)成分の含有量を85質量%未満とすることにより、接着剤が脆くなることを抑制して、接着力の低下を防止できる。
【0042】
(E)成分の形状は、凝集粒状、つまり実質的に球状であることが好ましい。2種以上混合したものを使用する場合には、少なくとも1種が凝集粒状であることが好ましい。(E)成分の粒度は、JIS K3362で規定される標準篩分け機械による篩分け方法によって測定される粒度から求められる重量平均粒径D50が1〜30μmであることが好ましい。(E)成分を、上述した形状及び粒径とすることにより、良好な熱的接合を得ることができる。
【0043】
上述したように、(E)成分は、凝集粒状であることが好ましいことから、凝集粒状である窒化ホウ素を含有することが好ましい。窒化ホウ素の含有量は、(A)成分〜(E)成分の合計量に対して20〜70質量%が好ましく、25〜65質量%がより好ましい。窒化ホウ素の含有量を20質量%以上とすることにより、熱伝導率を向上できる。また、窒化ホウ素の含有量を70質量%未満とすることにより、接着剤が脆くなることを抑制して、接着力の低下を防止できる。
【0044】
なお、熱硬化性樹脂シート12a,12bには、必要に応じてレベリング剤、老化防止剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、酸化防止剤等を添加できる。
【0045】
熱硬化性樹脂シート12a,12bは、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)エラストマーおよび(E)無機充填剤からなる樹脂組成物各種有機溶媒に溶解または分散させて塗工液を調整してフィルム基材に塗布、乾燥することで得られる。塗布および乾燥は、周知の方法を用いればよい。
【0046】
上記有機溶媒としては、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノアセテートのようなエステル類、プロパノールやブタノールのようなアルコール類、トルエンやキシレンのような芳香族炭化水素類、ジメチルフォルムアミドのようなアミド類等が使用できる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0047】
なお、硬化前の熱硬化性樹脂シート12a,12bの厚みは、取り扱いの観点から5〜100μmが好ましく、10〜60μmがより好ましいが、用途に応じて適宜変更してもよい。
【0048】
(絶縁性シート13)
絶縁性シート13は、熱硬化性樹脂シート12a,12bとの接着性が良好で、打ち抜き加工性が良好で可撓性があり、一体化の際の加熱加圧により破断しない強度をもつ電気絶縁性のシートが用いられる。
【0049】
絶縁性シート13には、柔軟性に優れる樹脂材料または繊維材料が使用される。樹脂材料はフィルム状(以下、「樹脂フィルム」と称する)にして使用される。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミドフィルムやポリエステルフィルムなど、フレキシブルプリント配線板として使用できる樹脂フィルムが使用できる。また、繊維材料としては、ガラス繊維やアラミド繊維などの織布もしくは不織布、またはこれらガラス繊維やアラミド繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを使用できる。
【0050】
絶縁性シート13には、図3に示すように、後述する熱伝導経路部材15を形成するための開口13aが形成される。開口13aの形成方法は、特に限定されないが、例えば、打ち抜きジグ(ビク型)を用いて、プレス打ち抜き加工により簡単に開口13aを形成できる。
【0051】
(熱伝導経路部材15)
熱伝導経路部材15は、後述の放熱ランド14bを介して伝達される金属ベース回路基板1上に実装される電子部品で発生する熱を金属板11へ伝達する放熱経路として機能する。絶縁性シートの厚みが0.2mm以下の場合は、熱伝導経路部材15は金属箔(熱伝導率の高い金属、例えば銅の使用が好ましい)で形成し、絶縁性シートの厚みが0.2mmを超える場合は、熱伝導経路部材15を金属板表面に形成された金属板と一体の凸部することが好ましい。
【0052】
(導電回路14a及び放熱ランド14b)
導電回路14a及び放熱ランド14bは、熱硬化性樹脂シート12b上に、例えば共通の金属箔からホトリソグラフィを用いて形成される。放熱ランド14bは、熱伝導経路部材15上に形成され、導電回路14aは、放熱ランド14bから間隔をおいて形成される。
【0053】
導電回路14aは、金属ベース回路基板1上に実装される電子部品用の回路である。放熱ランド14bは、金属ベース回路基板1上に実装される電子部品で発生する熱を金属板11へ伝達する。放熱ランド14bは、熱伝導経路部材15上に形成されるので、上記電子部品で発生する熱を効率良く熱伝導経路部材15を介して金属板11へ伝達される。なお、以下の説明では、導電回路14a及び放熱ランド14bを合わせて「回路14」と称する。
【0054】
この第1の実施形態では、転写法により金属箔を転写して回路14を形成するが、回路14を形成する方法は、転写法に限定されず周知の方法を使用できる。また、回路14は、転写用基材に金属箔を貼着した後にエッチング処理を施して形成することが好ましいが、パターンめっき法を用いて形成してもよい。金属箔としては、電気伝導率及び熱伝導率の高い銅箔が好ましい。なお、回路パターンが微細な場合には、パターンめっき法を用いるのが好ましい。
【0055】
エッチング処理により回路14を形成する場合、転写基材としてPETフィルム等からなる転写用基材を使用することが好ましい。具体的には、マスタックPC−801(製品名:フジモリ工業社製)やパナプロテクトET−50B、パナプロテクトET−K50B(製品名:パナック社製)などの高耐熱再剥離フィルムを使用するとよい。なお、転写基材の厚みは、25〜200μmが好ましく、取り扱い易さの観点からは、50〜100μmであることがより好ましい。
【0056】
転写基材と金属箔の接着方法は、熱ロールによる貼り付けが好ましいが、該方法に限定されるものではない。熱ロールによる貼り付けを行う場合、ロール温度は、室温程度、ロール圧力は、0.1〜1.0MPaが好ましい。また、エッチングレジストは、印刷法又は写真法により形成し、エッチング液等により金属箔の不要部分をエッチングして導電回路14aを形成する。
【0057】
パターンめっき法により回路14を形成する場合、転写基材として金属基材、特にステンレス基材の使用が好ましい。ステンレス基材としては、SUS304、SUS301の使用が好ましい。特に、SUS301は、めっきの密着性に優れる。ステンレス基材の厚みは、50〜200μmであることが好ましく、取り扱い性の観点からは、100μmとすることがより好ましい。
【0058】
エッチング除去して導電回路を形成する場合、導体回路が薬液の吐出圧力に晒されるため、高耐熱再剥離フィルム(転写基材)と転写回路(回路14)の間で高い密着強度が必要となる。このため、エッチング処理に適用される高耐熱再剥離フィルム(転写基材)と回路14との密着強度は、1.5〜20.0N/mとすることが好ましく、2.0〜15.0N/mとすることがより好ましい。密着強度が、1.5N/m未満では、転写基材と回路14との密着性が不十分となり、製造中に転写基材と回路14とが剥離する虞がある。また、密着強度が、20.0N/mを超えると、転写基材と回路14との密着性が強すぎ、回路14を転写基材から完全に剥離できない虞がある。
【0059】
これに対して、パターンめっき法により導電回路を形成する場合は、導電性の金属転写基材の表面を粗面化しておき、その表面に回路となる導電性金属を析出させていくため、エッチング法ほど高い密着強度は必要ない。このため、パターンめっき法に適用される金属材料からなる転写基材と回路14と密着強度は、0.02〜0.10N/mが好ましい。密着強度が、0.02N/m未満では、転写基材と回路14との密着性が不十分となり、製造中に転写基材と回路14とが剥離する虞がある。また、密着強度が、0.10N/mを超えると、転写基材と回路14との密着性が強すぎ、転写基材を回路14から完全に剥離できない虞がある。
【0060】
なお、従来の製造方法では、金属ベース回路基板1を折り曲げる際に、形成した回路14が損傷する懸念があるが、この第1の実施形態では、先に金属板11を折り曲げてから転写基材に形成した回路14を、熱硬化性樹脂シート12上に転写するので回路14の損傷を防止できる。
【0061】
次に、金属ベース回路基板1の作成工程について、図4,5を参照して説明する。
【0062】
(回路14の作成)
初めに、図4を参照して、回路14の作成工程について説明する。
(工程a)
図4(a)に示すように、熱ラミネータを用いて、転写基材16と銅箔17とを貼り合わせて一体にする。貼り付けの条件は、ロール温度は室温で、圧力は0.1〜1MPaが好ましい。
【0063】
(工程b)
図4(b)に示すように、銅箔17表面に印刷法または写真法によりエッチングレジスト18を形成する。
【0064】
(工程c)
図4(c)に示すように、銅箔17をエッチング液でエッチングする。エッチングレジスト18が形成されている部分は、銅箔17がエッチングされずに残る。この残った銅箔部分が回路14となる。
【0065】
(工程d)
図4(d)に示すように、エッチングレジスト18を除去すると、回路14が転写基材16上に形成された状態となる。
【0066】
(金属ベース回路基板1の作成)
次に、金属ベース回路基板1の作成工程について、図5を参照して説明する。
(工程A)
図5(A)に示すように、転写基材16上に形成された回路14と、熱硬化性樹脂シート12b、絶縁性シート13、熱伝導経路部材15、熱硬化性樹脂シート12a、金属板11を積層して位置合わせする。
【0067】
(工程B)
図5(B)に示すように、積層した材料(転写基材16、回路14、熱硬化性樹脂シート12b、絶縁性シート13、熱伝導経路部材15、熱硬化性樹脂シート12a及び金属板11)をプレスにて一体に成形する。このプレスによる成形は、位置合わせした材料の両面(金属板11の裏面11aおよび転写基材16の上面16a)に、例えば、ステンレス鋼(SUS)等からなる金属板(図示せず)および熱板(図示せず)を同順に重ね合わせて、上下方向から加熱加圧して行う。この際、金属板と金属板11の裏面11aとの間、および金属板と転写基材16の上面16aとの間にクラフト紙等のクッション材を介在させてプレスすることが好ましい。プレス温度、プレス時間およびプレス圧力は、それぞれ100〜180℃、10〜100分、5〜50MPaとすることが好ましい。
【0068】
(工程C)
図5(C)に示すように、転写基材16を剥離する。
【0069】
(工程D)
図5(D)に示すように、導電回路14a上にソルダーレジスト19を形成して金属ベース回路基板1を得る。
【0070】
(金属ベース回路基板1への電子部品の実装例)
図6は、第1の実施形態に係る金属ベース回路基板1へ電子部品20を実装した例を示す図である。図7は、第1の実施形態に係る金属ベース回路基板へ電子部品を実装した他の例を示す図である。
【0071】
図6,7に示した例では、電子部品20を放熱ランド14b上へ配置し、電子部品20の図示しない端子をボンディングワイヤ(金線)21で導電回路14aへ接続している。なお、図6には、金属箔で熱伝導経路部材15を形成した場合を示し、図7には、金属板11に凸部を設けて熱伝導経路部材15を形成した場合を示した。
【0072】
金属ベース回路基板1に実装された電子部品20で発生した熱は、放熱ランド14bおよび熱伝導経路部材15を介して金属板11へ放熱される。また、熱伝導シート12は、(E)無機充填剤を含有しているため、放熱ランド14bから熱伝導経路部材15へ(E)無機充填剤を介して効率良く熱が伝達される(図2参照)。なお、この放熱ランド14bから熱伝導経路部材15への熱の伝達は液晶パネルの透明電極とドライバICとのACF接合による電気伝導と同様の原理によるものである。
【実施例】
【0073】
次に、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
(実施例1)
この実施例1では、以下のようにして金属ベース回路基板を作成した。
(金属板11)
金属板11として、厚み3mmのアルミ板(Al)を使用した。
【0074】
(熱硬化性樹脂シート12a,12b)
(A)成分として、ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂[ジャパンエポキシレジン社製、商品名:jER YX4000H、エポキシ当量195]を23質量部、(B)成分として、ジシアンジアミドを1.2質量部、(C)成分として、2−エチル−4−メチルイミダゾールを0.05質量部、(D)成分として、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン社製、商品名:ニポール(登録商標)1072)を10質量部、(E)成分として、窒化ホウ素(電気化学工業社製、商品名:SGPS、重量平均粒径12μmの凝集粒状粒子)を25部およびアルミナを40質量部を、メチルエチルケトン/ジメチルホルムアミド=6/4(質量比)の混合溶媒に溶解もしくは分散させたものを、厚みが38μmのポリエステルフィルム[フジモリ工業社製]の離型剤が付与された面に塗布し、150℃で3分間乾燥させ、厚さ20μmの熱硬化性樹脂シート12a,12bを作成した。
【0075】
(熱伝導経路部材15)
熱伝導経路部材15として、厚み35μmのHTE−06−18(製品名;三井金属鉱業株式会社製)を、3cm×3cmの大きさに切断したものを使用した。
【0076】
(絶縁性シート13)
絶縁性シート13として、厚み7.5μmのポリイミドフィルムであるカプトン30EN(製品名;東レ・デュポン社製)を使用した。なお、熱伝導経路部材15を形成する部分を、ビク型で3cm×3cmの大きさに打ち抜き開口13aを形成した。
【0077】
(回路14)
転写基材16として厚み50μmのパナプロテクトET−50B(製品名;パナソニック社製)上に、銅箔17として厚み35μmのHTE−06−18(製品名;三井金属鉱業株式会社製)を、ラミネータを使用して貼り付けた。貼り付け温度、圧力は、それぞれ室温、0.5MPaである。さらに、銅箔17上にエッチングレジスト18を形成してエッチング処理を行った後、エッチングレジスト18を除去して、転写基材16上に回路14を形成した。
【0078】
上述のように形成した金属板11、転写基材16上に形成された回路14と、熱硬化性樹脂シート12a,12b、絶縁性シート13、熱伝導経路部材15を積層して位置合わせした後、プレス成形して金属ベース回路基板1を作成した。なお、プレスは、温度160℃、圧力2.5MPa、時間50分の条件下で行った。また、クッション材として、190g/mのクラフト紙を4枚使用した。
【0079】
(実施例2)
絶縁性シート13として、厚み20μmのガラスクロスA1020(商品名;旭シユエーベル社製)を使用した。それ以外は実施例1と同じ材料および条件で金属ベース回路基板を作成した。
【0080】
(比較例1)
実施例1と同様にして作成した厚み50μmの熱硬化性樹脂シート12a,12bを使用し、かつ、絶縁性シート13および熱伝導経路部材15を使用せずに金属ベース回路基板を作成した。それ以外は実施例1と同じ材料および条件で金属ベース回路基板1を作成した。
【0081】
(比較例2)
厚さ18μmの銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名:HTE-06-18)と厚さ0.2mmのガラスエポキシプリプレグ(京セラケミカル社製、商品名:TLP551)と厚さ3mmのアルミ板とを重ね合わせて成形した後、銅箔をエッチングして金属ベース回路基板を作成した。
【0082】
上記のようにして得られた実施例1,2および比較例1,2の金属ベース回路基板に対して絶縁破壊電圧および温度上昇の測定を行った。測定は、JIS C 5012 7.5層間耐電圧に準拠する。具体的には、金属ベース回路基板の表面にφ10mmの電極を形成し、該電極に60Hzの正弦波交流電圧を印加して、その層間耐電圧を調べた。
【0083】
温度上昇の測定は、導体幅2mm、全長20mmの挟隙部を有する導体幅10mmの線路導体に10Aの電流を導通した状態で3分間保持した後、該挟隙部における線路導体の表面温度を測定することで行った。なお、表1には、室温での該挟隙部における線路導体の表面温度と、10Aの電流を導通した状態で3分間保持した後における表面温度との差を記載している。
【0084】
測定結果を表1に示す。実施例1,2および比較例1,2の層間耐電圧は、それぞれ6.1kV、4.2kV、3.2kV、8kVであった。また、実施例1,2および比較例1,2の温度上昇は、それぞれ5℃、5℃、5℃、15℃であった。表1より、比較例1は、放熱性は良好であるが、層間耐電圧に劣ることがわかる。また、比較例2の層間耐電圧は良好であるが放熱性に劣ることが分かる。以上のように、層間耐電圧および放熱性を考慮した場合、実施例1,2の試料が優れていることがわかる。
【0085】
【表1】

【符号の説明】
【0086】
1…金属ベース回路基板、11…金属板、12…高熱伝導性樹脂シート(熱硬化性樹脂シート)、13…絶縁性シート、14a…導電回路、14b…放熱ランド、15…熱伝導経路部材、16…転写基材、17…銅箔、18…エッチングレジスト、19…ソルダーレジスト、20…電子部品、21…ボンディングワイヤ(金線)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板上に配置された第1の熱硬化性樹脂層と、
前記第1の熱硬化性樹脂層上に配置された電子部品実装位置に開口を設けた絶縁層と、
前記絶縁層の開口に配置された熱伝導経路部材と、
前記絶縁層及び前記熱伝導経路部材の上に配置された第2の熱硬化性樹脂層と、
前記第2の熱硬化性樹脂層の電子部品実装位置に配置された放熱ランド及び前記放熱ランドから間隔をおいて配置された導電回路とを備え、
前記第1,第2の熱硬化性樹脂層、前F記絶縁層、前記熱伝導経路部材、前記放熱ランド及び導電回路が加熱加圧により一体化されていることを特徴とする金属ベース回路基板。
【請求項2】
前記第1,第2の熱硬化性樹脂層は、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)エラストマーおよび(E)無機充填剤を含み、
[(A)成分+(B)成分+(C)成分+(D)成分+(E)成分]に対して、前記(E)無機充填剤を30〜85質量%含むことを特徴とする請求項1記載の金属ベース回路基板。
【請求項3】
前記(E)無機充填剤は、窒化ホウ素、窒化アルミニウムまたはアルミナから選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項2記載の金属ベース回路基板。
【請求項4】
前記熱伝導経路部材は、前記絶縁層の開口に銅箔を嵌合して形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の金属ベース回路基板。
【請求項5】
前記熱伝導経路部材は、前記金属板の前記絶縁層の開口に対応する位置に凸部を設けて形成されることを特徴とする請求項1乃至至請求項3のいずれか1項記載の金属ベース回路基板。
【請求項6】
金属板上に第1の未硬化の熱硬化性樹脂シートを配置する工程と、
前記第1の未硬化の熱硬化性樹脂シート上に電子部品実装位置に開口を設けた絶縁シートを配置する工程と、
前記絶縁シートの開口に熱伝導経路部材を配置する工程と、
前記絶縁シート及び前記熱伝導経路部材の上に第2の未硬化の熱硬化性樹脂シートを配置する工程と、
前記第2の未硬化の熱硬化性樹脂シート上に放熱ランド及び導電回路を位置決めして配置する工程と、
前記前記第1,第2の熱硬化性樹脂シート、前記絶縁シート、前記熱伝導経路部材、前記熱ランド及び導電回路を加熱加圧により一体に硬化する工程と
を具備することを特徴とする金属ベース回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記熱伝導経路部材は、前記絶縁シートの開口に銅箔を嵌合して形成されることを特徴とする請求項6記載の金属ベース回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記熱伝導経路部材は、前記金属板の前記絶縁シートの開口に対応する位置に凸部を設けて形成されることを特徴とする請求項6記載の金属ベース回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−210948(P2011−210948A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77097(P2010−77097)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】