説明

金属ポルフィリン錯体の重合膜、その製造法及びこれを用いるスーパーオキシドアニオンラジカル測定用電極

【課題】 広く臨床において使用しうる、電極の感度を高め、センサーをなるべく細くした生体内で使用しうるスーパーオキシドアニオンラジカル用センサーを提供すること。
【解決手段】 金属ポルフィリン錯体を、超臨界二酸化炭素を溶媒に用いる電解重合法に付すことにより得られる金属ポルフィリン錯体重合膜およびその製造方法並びに導電性部材の表面に、前記金属ポルフィリン錯体重合膜を形成してなるスーパーオキシドアニオンラジカル用電極およびこの電極および対極を含むスーパーオキシドアニオンラジカル濃度測定用センサー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内のスーパーオキシドアニオンラジカル(O・)を、感度良く測定する電極に使用することのできる金属ポルフィリン錯体の重合膜、その製造法及びこれを用いるスーパーオキシドアニオンラジカル測定用に関する。
【背景技術】
【0002】
活性酸素種であるスーパーオキシドアニオンラジカル(O・)は、生体内ではキサンチン・キサンチン酸化酵素(XOD)によるキサンチン並びにヒポキサンチンなどの尿酸への酸化及び酸素のヘモグロビンによる還元等により生成されるものであり、生体内で生理活性物質の合成、殺菌作用、老化現象などに関連して重要な役割を有している。その一方で、スーパーオキシドアニオンラジカルから派生する種々の活性酸素種はガンなどの各種疾患を引き起こすといわれており、従って生体内のスーパーオキシドアニオンラジカルを含む活性酸素種の濃度測定は、上記各種疾患を特定するためにも重要なものであると考えられる。
【0003】
このスーパーオキシドアニオンラジカルは、基質の存在しない場合には、式(1)に示されるように不均化反応により過酸化水素(H)と酸素分子(O)になる。この不均化反応は、スーパーオキシドアニオンラジカルへのプロトン付加によるHO・の生成、HO・と酸素分子の反応による過酸化水素と酸素分子の生成、及びHO・同士の衝突による過酸化水素と酸素分子の生成からなるものである(式(1)〜式(4))。
【0004】
【化7】

【0005】
近年、生体内(in vivo)のスーパーオキシドアニオンラジカルの濃度を定量的に検出する方法についての検討も行われていた。例えば、マックネイル(McNeil)ら、タリオフ(Tariov)ら、クーパー(Cooper)らは、金や白金電極の表面を酵素であるN−アセチルシステインで修飾し、その上にヘムといわれる鉄錯体を酸化還元中心とした金属蛋白質であるチトクロームcなどの蛋白質をS−Au結合させて固定化させた酵素電極(チトクロームc固定化電極)を作製し、これによりスーパーオキシドアニオンラジカルの濃度を電気化学的に検出することができると報告している(文献名:C. J. McNeil et al. Free Radical Res. Commun., 7, 89(1989); M. J. Tariov et al. J. Am. Chem. Soc. 113, 1847(1991); J. M. Cooper, K. R. Greenough and C. J. McNeil, J. Electroanal. Chem., 347, 267 (1993))。
【0006】
この検出方法の測定原理は以下のとおりである。すなわち、チトクロームc(3価)(cyt.c(Fe3+))は、スーパーオキシドアニオンラジカルと式(5)のように反応して、チトクロ−ムc(2価)(cyt.c(Fe2+))に還元される。次に、式(6)のように、Oにより還元されたチトクロームc(2価)を電気化学的に再酸化し、その際の酸化電流を測定することにより、間接的にスーパーオキシドアニオンラジカルの濃度を定量的に検出するものである。
【0007】
【化8】

【0008】
しかしながら、チトクロームcは、生体細胞内のミトコンドリアの膜上に存在する電子伝達蛋白質であるため、上記測定に十分な量のチトクロームcを固定化させた電極を作製するには、10〜10個という多量の細胞が必要とされ、また、使用する酵素が数日間で失活してしまうという問題もあった。
【0009】
本発明者は、最近、多量の酵素を必要とせず、かつ使用する酵素の失活の問題もなく、生体内(in vivo)に適用可能であり、しかも十分に高い感度を有するスーパーオキシドアニオンラジカル等の活性酸素を測定することのできる電極を開発し、特許出願した(WO 03/054536 A1およびWO 2005/088290 A1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記電極を広く臨床において、生体内で使用するスーパーオキシドアニオンラジカル用センサーに適用するためには、被験者の苦痛を最低限にすることが望まれており、そのためには、更に電極の感度を高め、センサーをなるべく細くすることが必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく、更に研究を進めた結果、特定の条件下で電解重合して得た金属ポルフィリン錯体の重合膜は、従来の重合膜に比べ、飛躍的に高い電流密度で電流を流すことができ、その結果として極めて狭い電極面の使用であっても、十分に活性酸素種の存在や濃度の検出に利用できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明は、金属ポルフィリン錯体を、超臨界二酸化炭素を溶媒に用いる電解重合法に付すことにより得られる金属ポルフィリン錯体重合膜である。
【0013】
また本発明は、導電性部材を、金属ポルフィリン錯体を含有する超臨界二酸化炭素中で電解重合することを特徴とする導電性部材の表面に金属ポルフィリン錯体重合膜の製造方法である。
【0014】
更に本発明は、導電性部材の表面に、金属ポルフィリン錯体を含有する超臨界二酸化炭素中で電解重合することにより得られる金属ポルフィリン錯体重合膜を形成してなるスーパーオキシドアニオンラジカル用電極である。
【0015】
更にまた本発明は、導電性部材の表面に、金属ポルフィリン錯体を含有する超臨界二酸化炭素中で電解重合することにより得られる金属ポルフィリン錯体重合膜を形成したスーパーオキシドアニオンラジカル用電極および対極を含むスーパーオキシドアニオンラジカル濃度測定用センサーである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の金属ポルフィリン錯体重合膜は、金属ポルフィリン錯体を、超臨界二酸化炭素中に溶解し、これを電解重合することにより得られるものである(以下、この金属ポルフィリン錯体重合膜を「超臨界重合膜」と略称する)。
【0017】
本発明の、超臨界重合膜の形成に使用される金属ポルフィリン錯体の例としては、下記の式(I)または(II)で表されるものが挙げられる。
【0018】
【化9】

(式中、Mは、鉄、マンガン、コバルト、クロム、イリジウムから選ばれる金属を示し、4つのRのうち少なくとも1つは、チエニル基、ピロリル基、フリル基、メルカプトフェニル基、アミノフェニル基、ヒドロキシフェニル基から選ばれるいずれかの基であり、他のRは、前記のいずれかの基またはアルキル基、アリール(aryl)基もしくは水素を示す)
【0019】
【化10】

(式中、MおよびRは上記した意味を有し、2つのLのうち少なくとも1つは、イミダゾールおよびその誘導体、ピリジンおよびその誘導体、アニリンおよびその誘導体、ヒスチジンおよびその誘導体、トリメチルアミンおよびその誘導体等の窒素系軸配位子、チオフェノールおよびその誘導体、システインおよびその誘導体、メチオニンおよびその誘導体等の硫黄系軸配位子、安息香酸およびその誘導体、酢酸およびその誘導体、フェノールおよびその誘導体、脂肪族アルコールおよびその誘導体、水等の酸素系軸配位子であり、他のLは、前記のいずれかの軸配位子または配位子のないものを示す)
【0020】
上記式(I)または式(II)で表される金属ポルフィリン錯体は、ポルフィリン化合物に金属原子を配位させた錯体化合物である。また、このポルフィリン化合物は、4つのピロール環がα位置で4つのメチン基と交互に結合した環状化合物であり、4つの窒素原子が中心に向かい合って形成されている。この中心部に金属原子を挟み込むことで、錯体化合物(金属ポルフィリン錯体)を形成することができる。該錯体化合物を形成するには、通常使用される金属錯体の形成方法、例えばメタレーション(Metalation)等の方法を用いて、金属原子をポルフィリンの中心に導入すればよい。本発明において、ポルフィリン化合物の中心に導入できる金属としては、鉄、マンガン、コバルト、クロム、イリジウム等の各種金属を用いることができるが、鉄、マンガン、コバルト等を用いることがより好ましい。
【0021】
本発明で使用されるポルフィリン化合物は、無置換体であるポルフィンに対して、IUPAC命名法による位置番号の5、10、15、20の4位置のうち少なくとも1位置を、チエニル基、ピロリル基、フリル基、メルカプトフェニル基、アミノフェニル基、ヒドロキシフェニル基等のいずれかの基で置換したものであり、さらに他の位置を、前記の置換基またはアルキル基、アリル基若しくは水素となったものを使用するのが好ましい。その具体例としては、5,10,15,20−テトラキス(2−チエニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−チエニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−ピロリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−ピロリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−フリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−フリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、[5,10,15−トリス(2−チエニル)−20−モノ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10,15−トリス(3−チエニル)−20−モノ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10−ビス(2−チエニル)−15,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10−ビス(3−チエニル)−15,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,15−ビス(2−チエニル)−10,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,15−ビス(3−チエニル)−10,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5−モノ(2−チエニル)−10,15,20−トリ(フェニル)]ポルフィリン、[5−モノ(3−チエニル)−10,15,20−トリ(フェニル)]ポルフィリン等が例示される。
【0022】
なお、式(II)で示された化合物のLで表される配位子のうち、イミダゾールの誘導体の例としては、メチルイミダゾール、エチルイミダゾール、プロピルイミダゾール、ジメチルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が、ピリジンの誘導体の例としては、メチルピリジン、メチルピリジルアセテート、ニコチンアミド、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン等が、アニリンの誘導体の例としては、アミノフェノール、ジアミノベンゼン等が、ヒスチジンの誘導体の例としては、ヒスチジンメチルエステル、ヒスタミン、ヒップリル−ヒスチジル−ロイシン等が、トリメチルアミンの誘導体の例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等が、チオフェノールの誘導体の例としては、チオクレゾール、メルカプトフェノール、メルカプト安息香酸、アミノチオフェノール、ベンゼンジチオール、メチルベンゼンジチオール等が、システインの誘導体の例としては、システインメチルエステル、システインエチルエステル等が、メチオニンの誘導体の例としては、メチオニンメチルエステル、メチオニンエチルエステル等が、安息香酸の誘導体の例としては、サリチル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が、酢酸の誘導体の例としては、トリフルオロ酢酸、メルカプト酢酸、プロピオン酸、酪酸等が、フェノールの誘導体の例としては、クレゾール、ジヒドロキシベンゼン等が、脂肪族アルコールの誘導体の例としては、エチルアルコール、プロピルアルコール等が挙げられる。
【0023】
上記した金属ポルフィリン錯体のうち、特に好ましいものとしては、上記式(I)および(II)において、Rの内少なくとも1つがチエニル基で、残りの基が水素原子または低級アルキル基であり、Mが鉄、マンガンまたはコバルトである化合物が挙げられる。
【0024】
本発明において、導電性部材の表面に上記の超臨界重合膜を形成させるには、超臨界二酸化炭素を溶媒とする電解重合法に付すことが必要である。具体的には、高圧力とある程度の温度を得ることのできる金属製圧力容器をもちいて電解重合装置を形成し、その圧力容器中に、二酸化炭素、金属ポルフィリン錯体、支持電解質および必要な場合は助溶媒を入れ、超臨界皮膜を形成する導電性部材を作用極、白金(Pt)電極等の貴金属電極、チタン電極、カーボン類電極、ステンレス綱電極等の不溶性電極あるいは金属製圧力容器自体を対極として、定電位、定電流、可逆電位掃引、パルス式の電解等を行い、重合させることにより導電性部材の表面に超臨界重合膜を形成させることができる。
【0025】
なお、超臨界の条件下では、従来の参照電極、例えば、飽和カロメル電極(SCE)、銀−塩化銀電極等を使用することはできないが、これに代え、白金電極等を上記参照極で較正し、擬参照極として用いることは可能である。
【0026】
上記電解重合に使用しうる重合装置の一例を模式的に図1に示すが、この電解重合装置1は、一端に可動ピストン21、他端に観察窓22を有する圧力容器2と、これに配管で連通された二酸化炭素ボンベ3、二酸化炭素を重合槽中に送り込むスクリューポンプ4、高圧コネクタ23を介して圧力容器2に取り付けられた作用極5および参照極6より形成される。そして、圧力容器2には、温度測定のための熱電対24と撹拌のためのスターラー25が備えられている。更に、二酸化炭素ボンベ3の先には、二酸化炭素中から水分を除去するための乾燥器8が設けられている。更にまた、配管には、これを適宜開閉するためのバルブ9および圧力を測定するための圧力計7が設けられている。そして、電解重合を実施するためのポテンシオスタット10およびこれをコントロールするコンピュータ11も備えられ、圧力容器2(対極として作用する)、作用極5および参照極6との間は配線で結ばれている。
【0027】
この圧力容器2中に、まず、金属ポルフィリン錯体、支持電解質および必要な助溶媒を入れる。使用することのできる金属ポルフィリン錯体は、前記したとおりであり、支持電解質としては、テトラブチルアンモニウムパークロレート(TBAP:BuNClO)、テトラプロピルアンモニウムパークロレート(TPAP:PrNClO)、テトラエチルアンモニウムパークロレート(TEAP:EtNClO)等を挙げることができ、助溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(CHCN)等を挙げることができる。
【0028】
次いで、圧力容器2内を真空とした後、2電極(作用極−対極)式の電解、あるいは、前記擬参照極を用いる3電極(作用極−対極−参照極)式の定電位、定電流、可逆電位掃引、パルス式の電解等を行い、重合させることにより導電性部材の表面に超臨界重合膜を形成させることができる。このうち、3電極式セルを用い、可逆電位掃引電解法等により行うことが好ましい。
【0029】
本発明の超臨界重合膜を形成させる導電性部材としては、一般に電極用として使用される部材であれば特に制限なく使用でき、例えばグラッシーカーボン(Glassy Carbon:GC)、グラファイト、パイロリティックグラファイト(PG)、ハイリーオリエンティッドパイロリティックグラファイト(HOPG)、活性炭等のカーボン類、又は白金、金、銀等の貴金属、又はIn/SnO(ITO)等を使用することができるが、特に経済性、加工性、軽量性などを考慮して、グラッシーカーボンを用いることが好ましい。また、導電性部材の形状は、電極として使用できる形状であれば特には制限はなく、円柱状、角柱状、ニードル状、繊維(ファイバー)状等の各種形状とすることができるが、例えば、生体内での利用を考慮した場合には、下記のニードル状の形状とすることが好ましい。
【0030】
すなわち、生体内測定、複合化測定、臨床での診断・治療などを考慮した場合には、単純化したニードル型の電極を使用しても良い。この電極は、例えば金属線や、金属線と接合された炭素線等の電極素材を電気絶縁性材料で被覆し、これを対極となる金属筒(例えば、注射針)などに通し、接着剤等で固定した後、超臨界重合膜を形成させたものである。このものの具体的な作り方は、WO 03/054536 A1に記載してあるので、これを参酌すればよいが、超臨界条件下という条件下で電解するため、電気絶縁性被覆としてこれに耐えうる材料、例えば、トル・シール(TORR SEAL RESIN SEALANT; VARIAN, INC.社製)等を使用する必要がある。
【0031】
本発明の電極をスーパーオキシドアニオンラジカルの測定、特にその濃度の測定に使用するには、この電極に、(1)対極と参照極(3電極式)または(2)対極(2電極式)を組み合わせることが好ましい。この対極の構成材料としては、白金、金、銀等の貴金属、チタン、ステンレス綱、鉄−クロム合金等の耐食性合金、カーボン類等の材料を使用することができるが、対極は生体内に入ることが多いため、安全性の高い材料(例えば白金、金、銀等の貴金属、チタン、ステンレス綱、カーボン類等)で構成することが好ましい。
また、参照電極としては、通常、銀/塩化銀電極、水銀/塩化第二水銀等の各種参照電極を用いることができ、また、固体の基準電極を用いることもできる。
【0032】
しかしながら、生体内での使用を考慮した場合は、本発明のスーパーオキシドアニオンラジカル用電極を作用極(測定極)、ステンレス、白金等を対極とした2電極式の一体型のもの(ニードル型)を利用することが好ましい。この構成のスーパーオキシドアニオンラジカル濃度測定用センサーを、例えば、スーパーオキシドアニオンラジカルが存在する測定系で使用すると、重合膜を形成する金属ポルフィリン錯体中の金属がスーパーオキシドアニオンラジカルにより還元される。例えば、該金属が鉄であれば、スーパーオキシドアニオンラジカルにより、Fe3+からFe2+に還元される(式(7))。
【0033】
そして、スーパーオキシドアニオンラジカルにより還元されたFe2+を、酸化されうる程度に測定電極の電圧((2)の2電極式の場合)を保持した状態で電気化学的に再酸化し(式(8))、この時に流れる電流(酸化電流)を測定すれば、その電流値は、スーパーオキシドアニオンラジカル濃度と対応するため、該酸化電流から試料溶液中に溶解しているスーパーオキシドアニオンラジカルの濃度を定量的に検出することができる。すなわち、上記した式(5)及び式(6)と同様の原理により、スーパーオキシドアニオンラジカルの濃度測定が可能とされるものである。
【化11】

(式(7)及び式(8)中、「Por」はポルフィリンを意味する)
【0034】
以上説明した本発明のスーパーオキシドアニオンラジカル用電極は、金属ポルフィリン錯体の臨界重合膜を導電性部材の表面に形成してなるのであるため、従来のチトクロームcを固定した電極はもとより、一般の条件で電解した金属ポルフィリン電解膜を有する電極に比べ、電流密度を高くすることができるものである。
【0035】
従って、本発明のスーパーオキシドアニオンラジカル用電極は、生体外(in vitro)はもちろん、生体内(in vivo)の環境であっても、スーパーオキシドアニオンラジカルの検出や、対極や参照電極と組み合わせることにより、これを定量測定できるので、各種分野で広く利用することができる。
【0036】
すなわち、生体内(in vivo)では、各種疾病は生体内の活性酵素種や他のラジカル活性種により特定することができるので、例えば血液中の活性酸素種の濃度を測定することにより、ガン等の疾患の特定を行うことが可能とされる。
【0037】
一方、生体外(in vitro)でも、食品内の活性酸素種やその濃度を測定することにより、該食品の腐敗状態を観察することができる。また、水道水や下水等の水中の活性酸素種やその濃度を測定することにより、水質汚染の状態を観察することができる。
【0038】
さらに、スーパーオキシドアニオンラジカル及び該アニオンを消去するはたらきを持つ酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ(Superoxide Dismutase:以下、「SOD」とする)の濃度も、SODを含む試料を加えたときのスーパーオキシドアニオンラジカルの消失程度を測定することにより、測定することが可能である。
【実施例】
【0039】
以下に参考例、実施例、比較例および試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら制約されるものではない。
【0040】
参 考 例 1
モノマー溶液(1)の調製:
容量30mlのバイアル瓶に、鉄 5−(3−チエニル)−10,15,20−トリエチルポルフィリン(FeThTEtP) 0.0954g、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(TBAPF) 708mg、脱水DMF 8.47gを取り、ふたを閉めて超音波処理を行ない、モノマー溶液を得た。
【0041】
参 考 例 2
モノマー溶液(2)の調製:
FeThTEtP 0.0954を、鉄 5,10,15,20−テトラキス(3−チエニル)ポルフィリン(FeT3ThP) 0.124gに代える以外は、参考例1と同様にしてモノマー溶液(2)を得た。
【0042】
実 施 例 1
スーパーオキシドセンサー電極の作成(1):
スーパーオキシドセンサー用の電極を、前記図1に示す装置により、下記手順で作製した。
【0043】
(a)作用極の作成:
(1) カーボン芯(外径:φ 0.39mm、全長10mm)と、テフロン(登録商標)被覆線銀メッキ銅線(径0.8mm)の5mm突出した先端銅線部分とを、銀ペーストより接合した。
(2) トル・シール(TORR SEAL RESIN SEALANT; VARIAN, INC.社製)により、銀ペーストでの被覆部分および銅線部分を完全に被覆し、カーボン芯のみが突出する状態とした。
(3) トル・シールが完全に固まった後、テスターでカーボン芯とテフロン(登録商標)被覆線銀メッキ銅線との導通の確認をした。
(4) カーボン芯部分を、トル・シール部分まで研磨し、カーボン芯端面部分のみを平滑になるように突出させ、作用極部とした。カーボン芯端面部分の直径は、0.39mmであり、その面積は、0.12mmであった。
【0044】
(b)参照極の作成:
(1) Pt線(純度99.9%、φ:1mm)をコイル状に巻き、その一端と、テフロン(登録商標)被覆線銀メッキ銅線(径0.8mm)の5mm突出させた先端銅部分とを、ハンダゴテによりハンダで接着させた。
(2) 以下、(a)と同様に、トル・シールにより被覆し、電極を作成した。(電極の面積は、0.158mmであった。)
(3) 得られた電極について、ヘキサシアノ鉄(III)酸イオンの酸化還元反応を用い、既存のAg/AgCl電極との間で電位較正を行い、可逆反応系に対し正常に作用していることを確認し、Pt疑似電極(参照極)とした。
【0045】
(c)作用極への超臨界重合皮膜の形成:
(1) 高圧ステンレス容器(内容積 45ml)中に、可動ピストンを設置し、圧力容器2とした。
(2) 圧力容器2中に、上記(a)で調製した2つの作用極(カーボン芯電極)5および上記(b)で調製した参照極7を、高圧コネクタ23を介して設置し、更にスターラー25も仕込んだ。また、この時、作用極5および参照極7が対極となる圧力容器2に触れないように十分注意した。
(3) 参考例1で調製したモノマー溶液(1)を、バイアル瓶のふたを開け、圧力容器2内に流し出すことにより仕込んだ。
(4) 圧力容器2の外部に、加熱のためのマントルヒーターを巻きつけた。
(5) 更に、各配管、配線を結合することにより、最終的に電解重合装置1を作製した。
(6) まず、圧力容器2内の溶存酸素を除去するために、真空ライン(図示せず)につなぎ、圧力容器2内を真空状態にした。
(7) 次いで、(4)で設置したマントルヒーターにより、圧力容器2内を50℃まで加熱した。
(8) バルブ9aおよび9bが完全にしまっている事を確認し、二酸化炭素ボンベ3のコックを開き、ゼオライトが充填された乾燥器8中に一時的に溜め、約30分間、二酸化炭素中に含まれる水の除去を行った。
(9) バルブ9aを開け、スクリューポンプ4に二酸化炭素を導入後、バルブ9aを閉めた。
(10) バルブ9bおよび9eを開き、スクリューポンプ4を用い、二酸化炭素を圧力容器2中に導入した。この時、圧力容器2は50℃で安定していることを確認し、また圧力容器2内においてスターラー25を激しく攪拌しておいた。
(11) 圧力が10Mpaとなるまで二酸化炭素を導入後、バルブ9bおよび9eを閉め、30〜60分間攪拌し続け、圧力が一定であること、また観察窓22より、内部が均一相になっていることを確認した。
(12) スターラー25の攪拌を止め、作用極5、参照極6、対極2をポテンショスタット10につなぎ、電解を開始した。
(13) 掃引速度100mV/sec、電位0〜1.8V vs PtQREとし、60サイクルの条件で、36分間電解重合を行った。
(14) 電解重合終了後、バルブ9e、9cおよび9dを開け、二酸化炭素を圧力容器2の外へ除去し、常圧および常温に戻した。
(15) 圧力容器2内から作用極5、参照極6を取り出し、アセトンにより良く洗浄した。
(16) 臨界重合膜で被覆された作用極は、空気雰囲気下で保存し、スーパーオキシドセンサー電極とした。
【0046】
なお、電極を作製した際の電解重合時のCV曲線を、図2に示す。
【0047】
実 施 例 2
高感度スーパーオキシドセンサー電極の作成(2):
上記(C)の工程(3)、参考例2で得たモノマー溶液(2)を用い、工程(13)での電解 を40サイクルで行う以外は、実施例2と同様にして、スーパーオキシドセンサー電極(2)を得た。
【0048】
比 較 例 1
比較電極の調製:
WO 03/054536の実施例1に準じて、実施例1の工程(a)で調製した作用極上に、FeThTEtPまたはFeT3ThPの電解重合皮膜を形成した。これにより得られた電極を、それぞれ比較電極(1)および(2)とした。
【0049】
試 験 例 1
スーパーオキシドアニオンラジカル量の測定試験(1):
スーパーオキシドセンサー電極(1)(本発明品1)及びスーパーオキシドセンサー電極(2)(本発明品2)の電極を用い、スーパーオキシドアニオンラジカル量の測定を行った。まず、本発明品1または2の電極を作用極、ステンレス線を対極および参照電極として用い、試験用3電極式セルを構成した。この試験用3電極式セル中に、0.15mMキサンチン溶液を入れ、液をマグネチックスターラーで撹拌した。作用極、対極および参照極をPCと結合したポテンシオスタットにそれぞれ接続し、印加電圧0.5Vでの電流の測定を開始した。電流が安定してから約15秒後に、この溶液中に30mUのキサンチンオキシダーゼ(XOD;Sigma社製)を添加し、その後の酸化電流の経時変化を記録した。比較としては、上記0.15mMキサンチンに、10Uのスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)を加えたものを用いた。
【0050】
本発明品1についての結果を図3に、本発明品2についての結果を図4に示す。
【0051】
試 験 例 2
スーパーオキシドアニオンラジカル量の測定試験(2):
比較例1で調製した、従来のスーパーオキシドセンサー電極と、本発明の超臨界重合膜を利用した本発明品の電極について、そのスーパーオキシドアニオンラジカル量の測定能について比較を行った。
【0052】
比較試験は、試験例1と同様に行ない、セル中に0.15mMキサンチン溶液を入れた後、30mUのXODを添加し、その後の酸化電流の経時変化を調べた。本発明品1と比較品1の結果を図5に、本発明品2と比較品2の結果を図6にそれぞれ示す。また、電極表面上での電流密度の比較を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
この結果から明らかなように、超臨界電解重合膜を利用する本発明品は、従来の電解重合膜を利用する比較品に比べ、20〜100倍以上の電流密度を得ることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の活性酸素種用電極は、生体外(in vitro)および生体内(in vivo)のいずれの環境であっても、スーパーオキシドアニオンラジカルの検出を行うことができるものである。
【0056】
そして、その感度は、従来の電解重合膜を使用したものと比べ、格段に高いものであるので、従来のセンサーに比べより細くすることができ、例えば、生体内(in vivo)での使用により、生体内のスーパーオキシドアニオンラジカルの定量や、これに基づく各種疾病を特定するために広く利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】超臨界重合を行うために用いる装置の一例を示す図面である。
【図2】FeThTEtPの電極作製における電解重合時のCV曲線を示すグラフである。
【図3】FeThTEtPのXOD添加時の酸化電流の経時変化を示すグラフである。
【図4】FeT3ThPのXOD添加時の酸化電流の経時変化を示すグラフである。
【図5】FeThTEtPについて、超臨界条件で電解重合させた場合と一般条件下で電解重合させた場合の、XOD添加時の電流密度の経時変化を示すグラフである。
【図6】FeT3ThPについて、超臨界条件で電解重合させた場合と一般条件下で電解重合させた場合の、XOD添加時の電流密度の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
1 … … 電解重合装置
2 … … 圧力容器
21 … … 可動ピストン
22 … … 観察窓
23 … … 高圧コネクタ
24 … … 熱電対
25 … … スターラー
3 … … 二酸化炭素ボンベ
4 … … スクリューポンプ
5 … … 作用極
6 … … 参照極
7 … … 圧力計
8 … … 乾燥器
9 … … バルブ
10 … … ポテンシオスタット
11 … … コンピュータ
以 上


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ポルフィリン錯体を、超臨界二酸化炭素を溶媒に用いる電解重合法に付すことにより得られる金属ポルフィリン錯体重合膜。
【請求項2】
金属ポルフィリン錯体が下記(I)または(II)
【化1】

(式中、Mは、鉄、マンガン、コバルト、クロム、イリジウムから選ばれる金属を示し、4つのRのうち少なくとも1つは、チエニル基、ピロリル基、フリル基、メルカプトフェニル基、アミノフェニル基、ヒドロキシフェニル基から選ばれるいずれかの基であり、他のRは、前記のいずれかの基またはアルキル基、アリール(aryl)基もしくは水素を示す)
【化2】

(式中、MおよびRは上記した意味を有し、2つのLのうち少なくとも1つは、イミダゾールおよびその誘導体、ピリジンおよびその誘導体、アニリンおよびその誘導体、ヒスチジンおよびその誘導体、トリメチルアミンおよびその誘導体等の窒素系軸配位子、チオフェノールおよびその誘導体、システインおよびその誘導体、メチオニンおよびその誘導体等の硫黄系軸配位子、安息香酸およびその誘導体、酢酸およびその誘導体、フェノールおよびその誘導体、脂肪族アルコールおよびその誘導体、水等の酸素系軸配位子であり、他のLは、前記のいずれかの軸配位子または配位子のないものを示す)
で表される請求項第1項記載の金属ポルフィリン錯体重合膜。
【請求項3】
金属ポルフィリン錯体を形成するポルフィリン化合物が、5,10,15,20−テトラキス(2−チエニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−チエニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−ピロリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−ピロリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−フリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−フリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、[5,10,15−トリス(2−チエニル)−20−モノ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10,15−トリス(3−チエニル)−20−モノ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10−ビス(2−チエニル)−15,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10−ビス(3−チエニル)−15,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,15−ビス(2−チエニル)−10,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,15−ビス(3−チエニル)−10,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5−モノ(2−チエニル)−10,15,20−トリ(フェニル)]ポルフィリンおよび[5−モノ(3−チエニル)−10,15,20−トリ(フェニル)]ポルフィリンなる群から選ばれるものである請求項第1項または第2項記載の金属ポルフィリン錯体重合膜。
【請求項4】
導電性部材の表面に、金属ポルフィリン錯体を含有する超臨界二酸化炭素中で電解重合することにより得られる金属ポルフィリン錯体重合膜を形成してなるスーパーオキシドアニオンラジカル用電極。
【請求項5】
金属ポルフィリン錯体が下記式(I)または(II)
【化3】

(式中、Mは、鉄、マンガン、コバルト、クロム、イリジウムから選ばれる金属を示し、4つのRのうち少なくとも1つは、チエニル基、ピロリル基、フリル基、メルカプトフェニル基、アミノフェニル基、ヒドロキシフェニル基から選ばれるいずれかの基であり、他のRは、前記のいずれかの基またはアルキル基、アリール(aryl)基もしくは水素を示す)
【化4】

(式中、MおよびRは上記した意味を有し、2つのLのうち少なくとも1つは、イミダゾールおよびその誘導体、ピリジンおよびその誘導体、アニリンおよびその誘導体、ヒスチジンおよびその誘導体、トリメチルアミンおよびその誘導体等の窒素系軸配位子、チオフェノールおよびその誘導体、システインおよびその誘導体、メチオニンおよびその誘導体等の硫黄系軸配位子、安息香酸およびその誘導体、酢酸およびその誘導体、フェノールおよびその誘導体、脂肪族アルコールおよびその誘導体、水等の酸素系軸配位子であり、他のLは、前記のいずれかの軸配位子または配位子のないものを示す)
である請求項第4項記載のスーパーオキシドアニオンラジカル用電極。
【請求項6】
金属ポルフィリン錯体を形成するポルフィリン化合物が、5,10,15,20−テトラキス(2−チエニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−チエニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−ピロリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−ピロリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−フリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−フリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、[5,10,15−トリス(2−チエニル)−20−モノ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10,15−トリス(3−チエニル)−20−モノ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10−ビス(2−チエニル)−15,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10−ビス(3−チエニル)−15,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,15−ビス(2−チエニル)−10,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,15−ビス(3−チエニル)−10,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5−モノ(2−チエニル)−10,15,20−トリ(フェニル)]ポルフィリンおよび[5−モノ(3−チエニル)−10,15,20−トリ(フェニル)]ポルフィリンなる群から選ばれるものである請求項第4項または第5項記載のスーパーオキシドアニオンラジカル用電極。
【請求項7】
導電性部材の表面に、金属ポルフィリン錯体を含有する超臨界二酸化炭素中で電解重合することにより得られる金属ポルフィリン錯体重合膜を形成したスーパーオキシドアニオンラジカル用電極および対極を含むスーパーオキシドアニオンラジカル濃度測定用センサー
【請求項8】
金属ポルフィリン錯体が下記式(I)または(II)
【化5】

(式中、Mは、鉄、マンガン、コバルト、クロム、イリジウムから選ばれる金属を示し、4つのRのうち少なくとも1つは、チエニル基、ピロリル基、フリル基、メルカプトフェニル基、アミノフェニル基、ヒドロキシフェニル基から選ばれるいずれかの基であり、他のRは、前記のいずれかの基またはアルキル基、アリール(aryl)基もしくは水素を示す)
【化6】

(式中、MおよびRは上記した意味を有し、2つのLのうち少なくとも1つは、イミダゾールおよびその誘導体、ピリジンおよびその誘導体、アニリンおよびその誘導体、ヒスチジンおよびその誘導体、トリメチルアミンおよびその誘導体等の窒素系軸配位子、チオフェノールおよびその誘導体、システインおよびその誘導体、メチオニンおよびその誘導体等の硫黄系軸配位子、安息香酸およびその誘導体、酢酸およびその誘導体、フェノールおよびその誘導体、脂肪族アルコールおよびその誘導体、水等の酸素系軸配位子であり、他のLは、前記のいずれかの軸配位子または配位子のないものを示す)
である請求項第7項記載のスーパーオキシドアニオンラジカル濃度測定用センサー。
【請求項9】
金属ポルフィリン錯体を形成するポルフィリン化合物が、5,10,15,20−テトラキス(2−チエニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−チエニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−ピロリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−ピロリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−フリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−フリル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−メルカプトフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−アミノフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(2−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(3−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、[5,10,15−トリス(2−チエニル)−20−モノ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10,15−トリス(3−チエニル)−20−モノ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10−ビス(2−チエニル)−15,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,10−ビス(3−チエニル)−15,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,15−ビス(2−チエニル)−10,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5,15−ビス(3−チエニル)−10,20−ジ(フェニル)]ポルフィリン、[5−モノ(2−チエニル)−10,15,20−トリ(フェニル)]ポルフィリンおよび[5−モノ(3−チエニル)−10,15,20−トリ(フェニル)]ポルフィリンなる群から選ばれるものである請求項第7項または第8項記載のスーパーオキシドアニオンラジカル濃度測定用センサー。
【請求項10】
導電性部材を、金属ポルフィリン錯体を含有する超臨界二酸化炭素中で電解重合することを特徴とする導電性部材の表面に金属ポルフィリン錯体重合膜の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−302913(P2007−302913A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129598(P2006−129598)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(501490818)
【Fターム(参考)】