説明

金属化フィルムコンデンサ

【課題】金属化フィルムコンデンサのセルフヒーリング性は、蒸着金属の膜厚が薄いほど、低短絡エネルギーで蒸発・飛散しやすく耐電圧に対する信頼性が得やすいが、蒸着金属の膜厚が薄いほど、蒸着金属が腐食酸化しやすくなり容量減少変化が大きくなりやすい。また、高容量を得るために、誘電体フィルムを薄くするとフィルムが巻き取り中に蛇行しやすくなり、重なり状態を一定に保つことが難しく、蒸着金属とメタリコン電極との良好な電気的接続が得られない場合も生じる。本発明は、蒸着金属とメタリコン電極との良好な電気的接続が得られ、容量減少変化を軽減した金属化フィルムコンデンサを提供することを目的としている。
【解決手段】 厚さが1μmから12μmのポリエーテルイミドフィルムの少なくとも片側に、表面抵抗が0.1Ω/□から5Ω/□の電極となる金属蒸着膜を設けたフィルムコンデンサを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化フィルムコンデンサに関し、特に金属化フィルムコンデンサの電極に関する。
【背景技術】
【0002】
金属化フィルムコンデンサは、一般的にポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートなどの誘電体フィルム上に設けた蒸着金属を電極に用いる金属化したフィルムを使用し、両面を金属化したフィルムとそれより幅を狭めた非金属化したフィルムとで積層するか、または、片面を金属化したフィルムを交互にずらして積層し、その後、積層した上記の方法により生じた端面のはみ出した部分に、金属を溶射しメタリコン電極を設けている。
そして、誘電体フィルムの絶縁欠陥部で短絡が生じた場合に、短絡のエネルギーで絶縁欠陥部周辺の蒸着金属が蒸発・飛散して絶縁化し、コンデンサの機能が回復する自己回復性能(セルフヒーリング)が機能することにより耐電圧に対する信頼性が高いため、従来から広く用いられている。
また、金属化フィルムコンデンサの信頼性をさらに向上させるために、蒸着金属を格子状に分割し、各分割電極を狭幅部分(ヒューズ部分)で並列に接続した分割電極を用いることが提唱されている(特許文献1の従来の技術)。すなわち、短絡電流により絶縁欠陥部のある分割電極の上記ヒューズ部分を溶断することにより、確実に絶縁欠陥部を電気的に切り離すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−302468公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のセルフヒーリング性は、蒸着金属の膜厚が薄いほど、低短絡エネルギーで蒸発・飛散しやすく、耐電圧に対する信頼性が得やすいが、蒸着金属の膜厚が薄いほど、蒸着金属が腐食酸化しやすくなり容量減少変化が大きくなりやすい。また、蒸着金属とメタリコン電極との電気的接続が容易ではなくなる。
また、上記分割電極を用いたコンデンサは、分割電極の無いコンデンサに比べて、ヒューズ溶断による失う電極面積が大きく、容量減少変化が大きくなりやすい。
また、高容量を得るために、誘電体フィルムを薄くすると、フィルムが巻き取り中に蛇行しやすくなり、重なり状態を一定に保つことが難しく、蒸着金属とメタリコン電極との良好な電気的接続が得られない場合も生じる。
【0005】
本発明は、蒸着金属とメタリコン電極との良好な電気的接続が得られ、容量減少変化を軽減した金属化フィルムコンデンサを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、厚さが1μmから12μmのポリエーテルイミドフィルムの少なくとも片側に、表面抵抗が0.1Ω/□から5Ω/□の電極となる金属蒸着膜を設けた金属化フィルムコンデンサを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、蒸着金属とメタリコン電極との良好な電気的接続が得られ、容量減少変化を軽減した金属化フィルムコンデンサを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
金属化フィルムとしては、耐熱性であるポリエーテルイミドフィルムに金属電極として金属を蒸着したものである。そして、金属蒸着後、たとえば、巻回または積層してコンデンサ素子とし、その両端面に、金属の溶射によりメタリコン電極を設ける。そして、このメタリコン電極に外部引き出し電極を溶接又はハンダ付け後、容器に収納し、容器内に絶縁性樹脂を注入し充填するか、または、外部引き出し電極を設けた後、絶縁性樹脂液中に浸漬するディップコーティングなどにより外装を設ける。
【0009】
ポリエーテルイミドフィルムとしては、ポリエーテルイミド樹脂単独か、またはポリエーテルイミド樹脂に、ポリイミド樹脂系樹脂、ポリサルホン系樹脂、またはポリサルフィド系樹脂等の公知の樹脂を添加したり、無機または有機の充填剤を必要に応じて添加したりした樹脂をフィルム状に成形したものである。成形厚さは、1μmから12μmのものを使用する。好ましくは2μmから6μmのものを使用する。より好ましくは2μmから4μmのものを使用する。厚さが1μmより薄いと取り扱いが困難になりやすくまたフィルム欠陥も増加し、厚いほど厚さ分高容量が得られ難い。
また、ポリエーテルイミドフィルムに微細な凹凸を形成すると、フィルムの走行性が改善される。
【0010】
金属蒸着膜の金属としては、アルミニウム、銅、亜鉛またはそれらの合金などが限定なく使用できる。またそれらに添加するものとして、ケイ素、チタンなどが使用できる。一般的には、真空蒸着などにより製膜できる。製膜された薄膜金属の表面抵抗は、0.1Ω/□から5Ω/□が使用でき、0.1Ω/□から0.9Ω/□が好ましく、0.1Ω/□から0.4Ω/□がより好ましい。0.1Ω/□より小さいと金属化フィルムのセルフヒーリングが困難となりやすい。また、その分蒸着速度を増加させると、フィルムが蒸着時、熱負けやたるみが発生しやすくなりやすい。また、逆に表面抵抗が大きいと耐湿性の改善や、蒸着金属とメタリコン電極との接続面積が減り、電気的接続が困難となりやすい。
【0011】
金属蒸着膜の被着体であるポリエーテルイミドフィルムは、通常コンデンサに使用されるポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートよりも耐熱性が高く、フィルム厚さを薄くしても、熱負けせず金属蒸着膜を厚く堆積させることができる。フィルム厚さを薄くすることにより高容量化が達成でき、また、金属蒸着膜を厚くしてもフィルムが蒸着時、熱負けによるたるみが発生し難く、そのため、巻き取り中に蛇行しにくく、重なり状態を一定に保つことが容易なためや、端面のはみ出した部分も一定に保つことが容易で、蒸着金属とメタリコン電極との良好な電気的接続が得られやすい。また、金属蒸着膜を厚くすることにより、耐湿性の改善や、蒸着金属とメタリコン電極との接続面積が増え、電気的接続が容易となる。また、金属蒸着膜を厚くすることにより、コンデンサとしての等価直列抵抗が小さくなり、耐リプル電流特性が向上する。
【0012】
コンデンサ素子の形状は、巻回した場合は断面形状が円形、それをつぶした場合は偏平形、積層した場合は四角形となるが、偏平形や四角形の方が平面となる側面ができ、収納効率、放熱性が向上する。
メタリコン電極は、コンデンサ素子の電極の端部に接続する素子外部電極で、亜鉛、銅またはアルミニウムなどの金属を溶射により付着させたものが使用できる。また、メタリコン電極には、たとえば、外部との接続のための外部引き出し電極を接続し、開放端部を有するケースに収納し、樹脂含侵したり、外部引き出し電極付きコンデンサ素子を樹脂に浸漬して樹脂外装部を設けたりする。
【実施例】
【0013】
まず、表1に示すように、所定の厚さのポリエーテルイミドフィルムに、所定の表面抵抗になるように片面にアルミニウムを蒸着して、金属電極を形成した。次に、この蒸着フィルムを2枚重ね合わせて巻回し、端面が円形の柱状体とした。次に、その柱状体の両端面に、銅、その表面に錫の溶射によるメタリコン電極を設けた。
次に、コンデンサ素子のメタリコン電極に、0.3mm厚の銅箔からなる引き出し電極をはんだ付けする。そして一端が開放したケースにコンデンサ素子を収納し、樹脂封止した。
同様に、比較例を表1に示す条件のポリエーテルイミドフィルムの膜厚と、所定の表面抵抗になるように蒸着する以外実施例と同様に金属化フィルムコンデンサを作成した。
次に、得られた金属化フィルムコンデンサの、絶縁破壊電圧と静電容量変化率を測定した。絶縁破壊電圧は、電圧を100V/秒の昇圧速度で印加し、コンデンサが絶縁破壊し、5mA以上の電流が流れた時点の電圧とした。また、静電容量変化率は、充放電回数1000回後との比較とし、表1に結果を示した。
【0014】
【表1】

【0015】
表1に示す結果の通り、本発明品は、比較例と比べ、絶縁破壊電圧と静電容量変化率のバランスに優れた特性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが1μmから12μmのポリエーテルイミドフィルムの少なくとも片側に、表面抵抗が0.1Ω/□から5Ω/□の電極となる金属蒸着膜を設けた金属化フィルムコンデンサ。

【公開番号】特開2013−26586(P2013−26586A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162725(P2011−162725)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(309035062)日立エーアイシー株式会社 (47)
【Fターム(参考)】