説明

金属化長尺樹脂フィルム基板の製造方法及びめっき装置

【課題】連続操業においても表面欠陥の少ない金属化長尺樹脂フィルム基板の製造方法及びこの基板を製造するためのめっき装置を提供する。
【解決手段】金属膜付長尺樹脂フィルムFの端面同士を突き合わせて、導電性テープ1を貼付して接続部分Aが形成されている。裏面テープ2は粘着テープであり、適宜用いることができる。接続部分Aでは導電性テープ1と裏面テープ2により段差dが形成される。接続部分Aが、電気めっき装置の給電ロールと接触している間は、めっき液槽内部のアノード(陽極)と給電ロールの間の電位差の最大値が、操業時の電位差の0.8倍以上1.7倍以下の範囲内になるように給電ロールに流す電流を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化長尺樹脂フィルム基板の製造方法とその製造に用いるめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムはフレキシブル性を有し、容易に加工できるので、その表面に金属膜や酸化物膜を形成して電子部品や光学部品、包装材料などとして広く産業界で用いられている。例えば、フレキシブル性を有するフレキシブル配線基板が携帯電話など小型電子機器で使用されている。
【0003】
ところで、フレキシブル配線基板は、樹脂フィルムの一種であるポリイミドフィルムと銅箔の間に接着剤を用いて両者を重ねて張り合わせた3層銅ポリイミド基板からサブトラクティブ法等によって製造される。
【0004】
近年電子部品の軽薄短小化に伴い、配線を狭ピッチ化する要求が高まっている。従来からの3層銅ポリイミド基板から接着剤を用いない金属化樹脂フィルム基板の一種である金属化ポリイミド基板が要求されている。接着剤が無いことで、接着剤の特性に影響を受けず、ポリイミド本来の安定性を利用して配線の挟ピッチ化を実現可能とした。金属化ポリイミド基板は、液晶ディスプレイのドライバ回路にCOF(Chip on Film)として採用されている。
【0005】
金属化ポリイミド基板を得る方法として、ポリイミドフィルム表面にスパッタリング法や蒸着法で金属膜を積層させた後に電気めっき法や電解めっき法を用いて金属層を厚付けする方法が知られている(例えば、特許文献1や特許文献2を参照。)。また、金属化ポリイミド基板(めっき法2層回路基材)の電解めっき方法も知られている(例えば、特許文献3参照。)。この特許文献3にはプラスチックフィルム基材を電解めっき装置で電解めっきを施す技術が開示されているが、連続操業する場合のプラスチックフィルム基材とこれに続くプラスチックフィルム基材への対応は開示されていない。
COFへの要求をみると、液晶ディスプレイの高精細化にともない微細配線化が進んでいる。このような状況で金属化ポリイミド基板の外観品質に対しての要求が厳しくなっている。このような要求としては、外観については銅メッキ層のピンホールに対して対策が先ず必要となり、さらに配線の微細化が進むにつれて金属化ポリイミド基板の銅メッキ層の表面の凹凸などの表面欠陥に対して削減が求められている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−252257号公報
【特許文献2】特開2003−334890号公報
【特許文献3】特開2007−246962号公報
【特許文献4】特開平9−289368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように金属化ポリイミド基板がCOF材料として使用され、凹凸をはじめとする表面欠陥などの外観品質を向上させることが要求されている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、連続操業においても表面欠陥の少ない金属化長尺樹脂フィルム基板の製造方法及びこの基板を製造するためのめっき装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために、金属化ポリイミドフィルム表面の欠陥の抑制方法を鋭意研究した。この結果、上記目的を達成するための金属化長尺樹脂フィルム基板の製造方法は、長尺樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属膜が形成された金属膜付長尺樹脂フィルムの前記金属膜上に、前記金属膜付長尺樹脂フィルムをその長手方向に搬送しながらめっき液槽で電気めっき膜を形成することにより金属化長尺樹脂フィルム基板を製造する製造方法において、
(1)複数の前記金属膜付長尺樹脂フィルムをその長手方向に電気的および機械的に接続させる互いに隣接する前記金属化長尺樹脂フィルムの間に接続部分を設け、
(2)該接続部分が、前記電気めっき装置の給電体と接触している間は、前記めっき液槽内部のアノード(陽極)と前記給電体の間の電位差の最大値が、操業時の電位差の0.8倍以上1.7倍以下の範囲内になるように前記給電体に流す電流を制御することを特徴とするものである。
【0010】
ここで、
(3)前記金属膜は、ニッケル、クロムおよび銅から選ばれた金属、または、ニッケル、クロムおよび銅のいずれかを含む合金であり、
(4)前記電気めっきは、銅電気めっきであってもよい。
【0011】
また、
(5)前記金属膜は、真空成膜法で成膜されたものであってもよい。
【0012】
さらに、
(6)前記長尺樹脂フィルムはポリイミドフィルムであってもよい。
【0013】
さらにまた、
(7)前記接続部分は、導電性粘着テープの貼付または導電性接着剤での接着で形成されているものであってもよい。
【0014】
さらにまた、
(8)前記接続部分と前記金属膜付長尺樹脂フィルムで形成される各段差の高低差が100μm以下であってもよい。
【0015】
さらにまた、
(9)前記導電性粘着テープの厚みが20μmから100μmであってもよい。
【0016】
さらにまた、
(10)前記金属膜付長尺樹脂フィルムと、前記金属膜付長尺樹脂フィルムに貼付された前記導電性粘着テープの間の電気抵抗が0.1Ω以下であってもよい。
【0017】
上記目的を達成するための本発明のめっき装置は、めっき液が収容されためっき液槽と、該めっき液槽内に設置されたアノード(陽極)と、長尺樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属膜が形成された金属膜付長尺樹脂フィルムの幅方向を水平に保ってその長手方向に搬送しながら前記金属膜付長尺樹脂フィルムを前記めっき液槽に浸漬させる搬送手段と、前記めっき液槽外にあって前記金属膜付長尺樹脂フィルムの金属膜に給電する給電体と、該給電体に流す電流を制御しながら電力を供給する電源を備えためっき装置において、
(11)複数の互いに離れて隣接する前記金属膜付長尺樹脂フィルムをその長手方向に電気的および機械的に接続させる前記金属化長尺樹脂フィルムの間に配置された接続部分と、
(12)前記金属膜付長尺樹脂フィルムの搬送経路上の前記めっき浴槽の前でかつ前記給電手段の前に配置された、前記接続部分を検出する接続部検出手段と、
(13)前記接続部検出手段が前記接続部分の検出の信号を受けて、前記接続部分が給電体と接触している間は、前記給電体と前記アノード間の電位差の最大値が、操業時の電位差の0.8倍以上1.7倍以下の範囲内になるように前記電源を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするめっき装置。
【0018】
ここで、金属膜付長尺樹脂フィルムとは、樹脂フィルムの表面に金属の薄膜が形成された(付いた)フィルムをいい、金属膜はスパッタリングなどで成膜される。樹脂がポリイミドのものも含まれる。
【0019】
また、金属化長尺樹脂フィルム基板とは、金属膜付長尺樹脂フィルムの金属薄膜の上に銅などを電気めっきしたフィルムをいう。
【0020】
また、操業時とは、上記の接続部分が給電体に接していない際に電気めっきを行っている時間帯をいう。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、めっき膜に凹凸など表面欠陥が少ない金属化長尺樹脂フィルム基板を連続的に製造することができ、COFなどに見られる挟ピッチ化された配線にも対応した金属化長尺樹脂フィルム基板を歩留まり良く提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のめっき装置の一例を示す概略図である。
【図2】金属膜付長尺樹脂フィルムFの接続部分Aと給電体である給電ロールとが接触するときの位置関係を示す概略図である。
【図3】導電性テープ1を互いに隣接する金属膜付長尺樹脂フィルムF間でかつ金属膜Fa上に貼付した例を示す断面図である。
【図4】金属膜付長尺樹脂フィルムFを重ね合わせて導電性テープ1と裏面テープ2で接続部分Aを形成した例を示す断面図である。
【図5】導電性接着剤4を用いて接続部分Aを形成した金属膜付長尺樹脂フィルムの幅方向からみた例を示す断面図である。
【図6】実験例4において接続部分Aから終端方向に向かって120mまでの凹凸の出現頻度を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、ポリイミドフィルムの表面にニッケル−クロム合金の下地金属層をスパッタリング法で成膜し、下地金属層の表面に銅層をスパッタリング法で成膜して製造した金属膜付長尺樹脂フィルムに銅めっきするめっき装置に実現された。
【実施例1】
【0024】
本発明のめっき装置について図1を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明のめっき装置の一例を示す概略図である。
【0026】
めっき装置10は、金属膜付長尺樹脂フィルムFを巻き出す巻き出しロール12とめっき液Lが満たされためっき液槽11と、めっき液槽11の内部に配置されたアノード(陽極)14a,14b,14c,14d,14eと、めっき液槽11の外部にあって金属膜付長尺樹脂フィルムFに電力を給電する給電体の給電ロール(本発明にいう給電体の一例である)16a,16b,16c,16d,16eと、金属膜付長尺樹脂フィルムに電気めっきを施した金属化長尺樹脂フィルム基板Sを巻き取る巻取りロール15とを備えている。巻き出しロール12とめっき液槽11内部のロール13と給電ロール16と巻取りロール15により金属膜付長尺樹脂フィルムFの搬送手段が構成されており、金属膜付長尺樹脂フィルムFは、その幅方向を水平に保ってその長手方向に搬送されながらめっき液Lに浸漬される。
【0027】
金属膜付長尺樹脂フィルムFの搬送経路上での最初(一番目)の給電ロール16aと巻き出しロール12との間には、後述する接続部分Aを検出する接続部分検出手段を構成する光電センサー21と、光電センサー21から発せられる接続部分Aの検出の信号を受信して、各給電ロール16a,16b,16c,16d,16eに電力を供給する各電源23a,23b,23c,23d,23eを制御する制御器(本発明にいう制御手段の一例である)22とが備えられている。光電センサー21と制御器22の間、制御器22と各電源23の間は信号線24、25で結ばれている。各給電ロール16a,16b,16c,16d,16eと各電源23a,23b,23c,23d,23eとの間は電力線26で繋がれており、電源23aとアノード14a、電源23bとアノード14b、電源23cとアノード14c、電源23dとアノード14d、電源23eとアノード14eの間も電力線(図示せず)で結ばれている。各電源23は直流電源である。それぞれの給電ロール16a、16b、16c、16d、16eとアノード14a、14b、14c、14d、14eは対を成し、それぞれ独立した電源23a、23b、23c、23d、23eから電力を受けており、それぞれが別個の電流制御により電位差の最大値を制御している。
【0028】
また、給電ロール16a、16b、16c、16d、16eとアノード14a、14b、14c、14d、14eの対ごとに電源23a、23b、23c、23d、23eを備えるのでそれぞれの給電ロール16a、16b、16c、16d、16eとアノード14a、14b、14c、14d、14e対は電気的に独立している。同じめっき槽11内に複数のアノード14a、14b、14c、14d、14eを有していても、各給電ロール16a、16b、16c、16d、16eとアノード14a、14b、14c、14d、14eの対はそれぞれ電気的に独立している。
【0029】
制御器22が行う電源23の制御は、接続部分Aの導電性テープ1または導電性接着剤4を検出する光電センサー21を配置し、給電ロール16a、16b、16c、16d、16eと接続部分Aが接触するタイミングを把握しておき(何秒後に接触するかを把握しておき)、接続部分Aが給電ロール16a、16b、16c、16d、16eと接触する直前に電流制御を行うものである。具体的には、制御器22はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)すなわちシーケンサで構成されている。光電センサー21が導電性テープ1(または導電性接着剤4)を検出したとき、制御器22は、導電性テープ1が各給電ロール16に接触する時間を算出し、導電性テープ1が各給電ロール16に接触している間は、各給電ロール16a、16b、16c、16d、16eとこれに対応する各アノード14a、14b、14c、14d、14eとの間の電位差の最大値が、操業時の電位差の0.8倍以上1.7倍以下の範囲内になるように制御器22が電源23a、23b、23c、23d、23eを制御して各給電ロール16a、16b、16c、16d、16eに流す電流を制御する。
【0030】
金属化長尺樹脂フィルム基板Sの一種である銅ポリイミド基板を製造するプロセスをめっき装置10で製造した例を説明する。接続部分Aは、後述する図2に示す金属膜付長尺樹脂フィルムFを突合せ導電性テープ1を貼付した構造とした。
【0031】
金属膜付長尺樹脂フィルムFとして、ポリイミドフィルムの表面にニッケル−クロム合金の下地金属層をスパッタリング法で成膜し、下地金属層の表面に銅層をスパッタリング法で成膜して製造した。
【0032】
金属膜付長尺樹脂フィルムFを、金属膜付長尺樹脂フィルムFの金属膜Faの面が給電ロール16に接する向きに、巻き出しロール12、給電ロール16、ロール13を経て巻取りロール15へ至るように装着する。めっき液槽11には銅めっき液を満たした。銅めっき液としては公知の銅めっき液、例えば公知の硫酸銅めっき浴(光沢浴)を用いることができる。この硫酸銅めっき浴は、硫酸銅、硫酸、微量の塩素イオンおよび公知の添加剤等で構成されており、その組成は適宜に選択できる。アノード14a、14b、14c、14d、14eとして公知の含リン銅アノードを用いた。
【0033】
金属膜付長尺樹脂フィルムFをめっき装置10内部で搬送し、給電ロール16とアノード14a、14b、14c、14d、14eとの間に電位差を生じさせて、金属膜付長尺樹脂フィルムの被めっき面積当たりの電流密度を所望の膜厚を実現できる値にした制御で電流をながし電気めっきを行い金属化長尺樹脂フィルム基板S(銅ポリイミド基板)を得る。光電センサー21が、接続部分Aの導電性テープ1を検出したときは、導電性テープ1がそれぞれの給電ロール16a、16b、16c、16d、16eのいずれかに接触している間、制御器22が、操業時の電位差の0.8倍以上1.7倍以下の範囲内となるような電流制御を、導電性テープ1が接触している給電ロールが接続されている電源23a、23b、23c、23d、23eのいずれかに対して行う。すなわち、導電性テープ1が接触しているいずれかの給電ロール16a、16b、16c、16d、16eの電源23a、23b、23c、23d、23eのみが、操業時の電位差の0.8倍以上1.7倍以下の範囲内となるように電流制御される。従って、導電性テープ1が接触していない給電ロール16a、16b、16c、16d、16eには通常の操業時の制御を行い、すなわち、本項で説明した電位差の最大値を定めた電流制御は行われない。導電テープ1が、接触していない給電ロール16とアノード14の間は、通常の操業時の電位差であり、製品のめっき厚も前記電流制御の影響を受けない。
【0034】
操業時の電位差の0.8倍以上1.7倍以下の範囲内となるように制御されている際に電気めっきされた金属膜付長尺樹脂フィルムFはめっき工程終了後に通常の製品から切り離される。例えば、接続部分A(導電性テープ1)が給電ロール16に接している間に電流制御した時間あたりの搬送長さが1mならば、金属膜付長尺樹脂フィルムFの終端(0m)から1m〜2mの範囲および他方の金属膜付樹脂フィルムFの終端(0m)から1m〜2m範囲は、金属膜厚が不足するので製品として使用を控える。
【0035】
これまで説明したとおり、めっき装置10は、複数の金属膜付長尺樹脂フィルムFに上述の立ち上げ制御や立ち下げ制御を接続部分Aの度に行うことなく、連続して電気めっきを行うことができる。
【0036】
さらに、めっき装置10では、多段めっきであり、めっき回数が増えるにつれて印加される電流値が上昇するように運転される。めっき装置のめっきの段数(給電ロールとアノード対の数)にもよるが、最初から半分(中間)までの前半の段数のめっきでは電流値が低く設定されるので、スパーク発生の懸念が無く、接続部分A(導電性テープ1)が給電ロールに接触していても電位差の最大値を定める制御は不要である。しかし、半分(中間)から数段のめっきでは電流値が高くなっており、スパークの懸念があるので、接続部分A(導電性テープ1)が給電ロールに接触している間は、電位差の最大値を定める制御が必要である。さらに電気めっきが進むと金属膜付長尺樹脂フィルムの銅めっき膜厚も厚くなり、導電性テープの表面にも電気めっきが施されるので、導電性テープによる段差が解消しスパークの懸念も無くなる。このように、めっき装置10の多段めっきでは、中間の数段には、接続部分A(導電性テープ1)が給電ロールに接触している間は、電位差の最大値を定める制御を行なってもよい。
【0037】
めっき装置10では、金属膜付長尺樹脂フィルムFを数m〜数十m/分で搬送させながらめっき液L内を移動させて銅めっき層を形成した。
【0038】
本発明の金属化長尺樹脂フィルム基板の製造方法は、長尺樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属膜が形成された金属膜付長尺樹脂フィルムの金属膜上に、金属膜付長尺樹脂フィルムをその長手方向に搬送してめっき液槽で電気めっき膜を行うめっき装置にて金属化長尺樹脂フィルム基板の製造方法において、複数の前記金属膜付長尺樹脂フィルムをその長手方向に電気的および機械的に接続させる隣接する前記金属化長尺樹脂フィルムの間に接続部分を設け、この接続部分が前記電気めっき装置の給電体と接触している間は前記めっき液槽内部のアノード(陽極)と前記給電体の間の電位差の最大値が、操業時の電位差の0.8倍以上1.7倍以下の範囲内になるように給電体に流す電流を制御することを特徴とする金属化長尺樹脂フィルム基板の製造方法である。すなわち、金属膜付長尺樹脂フィルムをロール等の搬送手段によりめっき液槽に浸漬させ、前記アノードと給電体(図1に示すめっき装置10では給電ロール16a,16b,16c,16d,16e)との電位差で金属化長尺樹脂フィルムの金属膜上に電気めっきを施して金属化長尺樹脂フィルム基板を製造する製造方法であり、特に、複数の金属膜付長尺樹脂フィルムが連続的に供給される場合に金属膜付長尺樹脂フィルムとこれに隣接する(続く)金属膜付長尺樹脂フィルムの間にその長手方向で電気的および機械的に接続する接続部分を設け、この接続部分が前記給電体と接触している間は前記アノードと前記給電体の電位差の最大値を操業時の電位差の0.8倍以上1.7倍以下の範囲内にさせるように給電体に流す電流を制御することを特徴とする製造方法である。なお、ここに操業時とは、接続部分が給電体に接していない際に電気めっきを行う時間帯を言う。
【0039】
互いに隣接する金属膜付長尺樹脂フィルムをその長手方向で電気的に接続するように接続部分を設けることにより、複数の前記金属膜付長尺樹脂フィルムがその長手方向において電気的に導通が常に確保される。導通が常に確保されることにより、めっき膜に電気めっきに起因する凹凸等の表面欠陥の発生を抑制することが可能となる。
【0040】
電気めっき工程を考察すると、金属化長尺樹脂フィルム基板を製造工程中の電気めっき工程では、金属膜付長尺樹脂フィルム先頭部分(先端部分)と金属膜付長尺樹脂フィルム終了部分(終端部分)では、金属膜付長尺樹脂フィルムの中間部分のめっき条件の制御(電流制御)とは異なる立上げ制御および立下げ制御が必要となる。電気めっきでは、めっき液槽中での被めっき物の面積に対する電流密度を一定に保つことが、めっき膜の膜厚を一定に保つために必要である。かかる立上げ制御および立下げ制御は、被めっき面積の増加および減少に対応する電流制御を行うので、急激な電流の増減に起因する電気めっきによる表面欠陥の発生を引き起こす起点となる事が多い。しかし、互いに隣接する金属膜付長尺樹脂フィルムの間にこれら両者を電気的および機械的に接続させる接続部分を設けることにより、複数の金属膜付長尺樹脂フィルムが長手方向において電気的に導通が常に確保されるので、立上げ制御および立下げ制御の頻度を減らし、表面欠陥を抑制することができる。また、接続部分が給電体に接触する場合には、接触の前後の時期に金属膜付長尺樹脂フィルムと接続部分により形成される段差で給電体との接触が不安定となるので給電が不安定となってスパークが発生する恐れがある。しかし、アノードと給電体の間の電位差の最大値を、操業時の電位差の0.8倍以上1.7倍以下の範囲内になるように制御することにより、高電圧スパークの発生を抑制させることが可能となる。また、接続部分が給電体に接触視する場合に操業時の電位差の0.8倍以上とするのは、電位差を低下させる際の上述の立上げ制御又は立ち下げ制御と同様の電流制御を行うことを避けるためである。すなわち、電位差を操業時の0.8倍未満とすれば、電流値を増減させる範囲が広くなり、急激な電流の増減による表面欠陥の発生に影響する。
【0041】
図2を参照して、金属膜付長尺樹脂フィルムFの接続部分Aと給電ロール16の位置関係を説明する。図2(a)及び(b)は、金属膜付長尺樹脂フィルムFの接続部分Aと給電体である給電ロール16とが接触するときの位置関係を示す概略図である。スパークは、接続部分Aによって生じる段差と給電ロール16の間で発生する。さらに詳しく説明すると、接続部分Aの段差によって生じた接触面積が狭い部分などの高抵抗部分が給電ロール16に接触する際に、この狭い部分に一定値の電流を流そうとして高電圧となってスパークが発生する。スパーク痕は、金属膜付長尺樹脂フィルムFの接続部分Aの付近に発生する。スパークが発生した場合、給電ロール16の表面に汚れが発生し、この汚れに起因して金属化長尺樹脂フィルム基板に表面欠陥が発生する。
【0042】
給電ロール16とアノード間の電位差は、適宜に選択される。例えば、上述した図1のめっき装置10では、通常の操業すなわち接続部分ではない金属膜付長尺樹脂フィルムに電気めっきをする際にはアノードと給電ロールの間の電位差は3Vであるが、接触部分が給電ロールに接触している際には、最大電位差を5Vに抑制する(電流制御をかける)ことにより、スパークの発生を防ぐことができる。結果的にはスパークが発生しないので、表面欠陥が発生しない。なお、本発明の製造方法によらないでスパークを発生させた場合のスパークの電位は不明であるが、スパークが発生していない給電体は電圧が落ちていることから、相当な高い電位差が生じていると思われる。
【0043】
図3から図5までを参照して、接続部分Aの各種例について説明する。
【0044】
図3から図5までは、接続部分Aの金属膜付長尺樹脂フィルムFの幅方向からみた側面の概略を示す断面図である。
【0045】
図3は、導電性テープ1を互いに隣接する金属膜付長尺樹脂フィルムF間でかつ金属膜Fa上に貼付した例を示す断面図である。図3の例では、金属膜付長尺樹脂フィルムの端面同士を突き合わせて、導電性テープ1を貼付して接続部分Aが形成されている。裏面テープ2は粘着テープであり、適宜用いることができる。図3の接続部分Aでは導電性テープ1と裏面テープ2により段差dが形成される。
【0046】
図4は、金属膜付長尺樹脂フィルムFを重ね合わせて導電性テープ1と裏面テープ2で接続部分を形成した例を示す断面図である。図4の例では、金属膜付長尺樹脂フィルムFの重なり部分は両面粘着テープ3で貼り合わされている。導電性テープ1は金属膜Fa上に貼付する。
【0047】
図5は、導電性接着剤4を用いて接続部分を形成した金属膜付長尺樹脂フィルムの幅方向からみた例を示す断面図である。図5の例では、金属膜付長尺樹脂フィルムFの長手方向端部を重ね合わせて金属膜Faの導電性が確保できるように導電性接着剤4で接着すればよい。また、金属膜付長尺樹脂フィルムFの重ね合わせ部分には導電性接着剤4で適宜に接着してもよい。
【0048】
導電性接着剤4としては、めっき液に化学的に耐えることに留意して、公知の導電性接着剤を用いることができる。導電性接着剤4は、銀粉末や銅粉末などの導電粉末と、フェノール樹脂やエポキシ樹脂等の混合物で、金属膜付長尺樹脂フィルムに塗布して加熱等で硬化させることができる。
【0049】
導電性テープ1としては、粘着部分と金属箔から構成される市販の金属箔テープを用いることができる。また、金属箔テープの導電性を考慮して銅箔の金属箔テープとすることが望ましい。金属箔テープの粘着部分は、めっき液に化学的に耐えることがでればよい。また、導電性テープ1は、その粘着部分が導電性を有することが必要である。
【0050】
上記の接続部分Aと金属膜付長尺樹脂フィルムFにより生じる段差dは複数の段差が形成されても良いが、1つの段差dの高低差が100μmを超えないことが望ましい。この理由は、1つの段差の高低差が100μmを超えた場合、段差の影響で給電体との接触が不安定になりスパークが発生する恐れがあるからである。ここで、段差dの高低差とは、金属膜付長尺樹脂フィルムFの面の法線方向の高低差をいう。
導電性テープ1の厚みは、テープ厚が20μmから100μmが望ましい。この理由は、テープ厚みが20μm未満では、金属箔が薄くなり、導電性テープ1の導電率が小さく(抵抗率が大きく)なり電気的な導通性が損なわれる一方、テープ厚みが100μmを超えたときは、テープ段差の影響でスパークの発生が懸念されるからである。
【0051】
さらに、導電性テープ1と金属膜付長尺樹脂フィルムFとの間の電気抵抗値は、0.1Ω以下となることが望ましい。導電性テープ1を使用することによりスパーク発生の防止、外観品質の安定性を保つ事としており、接触抵抗値が満足するのであれば、導電性テープ1としては接着剤など別種を使用してもかまわないし、材質も金属性である事を特定はしない。
【0052】
長尺樹脂フィルムについて説明する。
【0053】
長尺樹脂フィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、液晶ポリマーフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム等を用いることができる。これらの樹脂フィルムのうちポリイミドフィルムが、電気絶縁性、耐熱性、フレキシブル性で望ましい。なお、上述の図3に示す接続部分の構造によれば、長尺樹脂フィルムの問題となる。金属膜付長尺樹脂フィルムを重ね合わせて接続部分を構成する場合には、長尺樹脂フィルムの厚みは、金属膜の膜厚と接続部分の段差を考慮して50μm以下が望ましい。
【0054】
金属膜付長尺樹脂フィルムFについて説明する。
【0055】
金属膜付長尺樹脂フィルムFとは、上述の長尺樹脂フィルムの表面に金属膜を形成した(付した)長尺樹脂フィルムをいう。長尺樹脂フィルムの表面に金属膜を形成するとは、接着剤を用いずに金属膜を形成することをいう。すなわち、金属膜付長尺樹脂フィルムFは、長尺樹脂フィルムの表面に真空成膜法などで金属膜を形成した長尺樹脂フィルムである。金属膜付長尺樹脂フィルムFは、後述するように電気めっき工程を経て金属化長尺樹脂フィルム基板になる。
【0056】
金属膜付長尺樹脂フィルムFは、上述の通り、真空成膜法で長尺樹脂フィルムの金属膜を成膜して製造される。真空成膜法には、真空蒸着法、スパッタリング法等の物理的成膜法、化学的気相成長法(CVD)等の化学的成膜法がある。具体的に説明すると、真空蒸着法は、抵抗加熱や電子銃照射により蒸発源の成膜材料を加熱蒸発させ、基材上に薄膜を形成する方法である。蒸着の際に、薄膜の密着性、緻密化を目的として、蒸発源と基材の間にプラズマを形成するプラズマアシスト蒸着法も知られている。
【0057】
真空成膜法のうち、スパッタリング法が望ましい。スパッタリング法は、成膜材料をプレート状に成形したターゲットを用い、このターゲットを放電用電極として上記プラズマ発生方法を用いて基材とターゲットの間にプラズマを発生させ、電位勾配を用いてターゲット表面にイオンを照射衝突させることによって、ターゲット物質を叩き出して基材上にターゲット物質の薄膜を形成する方法である。スパッタリング法が望ましい理由は、磁場などでプラズマを制御できるからである。
【0058】
金属膜付長尺樹脂フィルムFの金属膜は、ニッケル、クロムおよび銅から選ばれた金属または、ニッケル、クロムおよび銅のいずれかを含む合金を選択することができる。例えば、上述の金属化ポリイミド基板(最表面の金属が銅である場合には、銅ポリイミド基板という。)であれば、ポリイミドフィルムの表面に真空成膜法で付する金属には、ニッケルおよびクロムまたは、ニッケルまたはクロムのいずれかを含む合金とすることが望ましい。ニッケルまたはクロムのいずれかを含む合金の組成は、公知の合金組成を銅ポリイミド基板の用途などから適宜に選択できる。ニッケルやクロムまたはそれらの合金を用いる理由は、ポリイミドフィルムと金属との密着性を向上させるためである。銅ポリイミド基板では、ニッケルやクロムまたはこれらのいずれかを含む合金の膜の表面に、銅層を真空成膜法で成膜する。銅層を成膜する理由は、電気めっきを行う際の導電性を確保するためである。電気めっきは、金属膜付長尺樹脂フィルムの銅層の表面に行われるからであり、銅はニッケルやクロムまたはそれらの合金などからすれば抵抗値が低いからである。
【0059】
ここでは、銅ポリイミド基板用の金属膜付長尺樹脂フィルムについて説明したが、銅ポリイミド基板用の金属膜付長尺樹脂フィルムは、ポリイミドフィルム、ニッケルやクロムまたはこれらのいずれかを含む合金膜、銅層の順に積層されている。ここで、ニッケルやクロムまたはこれらのいずれかを含む合金膜を下地金属層と呼ぶ。下地金属層と銅層の積層膜が金属膜となる。
【0060】
金属膜付長尺樹脂フィルムの製法で真空成膜法の他には、無電解めっき法などを行うこともできる。
【0061】
金属化長尺樹脂フィルム基板について説明する。
【0062】
金属化長尺樹脂フィルム基板は、上述の金属膜付長尺樹脂フィルムFの金属膜上に電気めっきでめっき膜を形成して製造される。例えば、金属化長尺樹脂フィルム基板の一種である上述の銅ポリイミド基板では、ポリイミドフィルムに真空成膜法の一種であるスパッタリング法でニッケルやクロムまたはこれらのいずれかを含む合金層からなる前記下地金属層と前記下地金属層の上に銅層をポリイミドフィルムに積層した金属膜付長尺樹脂フィルムFに、前記銅層の上に銅電気めっきで銅めっき膜を成膜して製造する。金属膜付長尺樹脂フィルムFの下地金属層と銅層は合わせて数Åから数千Åまでの厚みであり、銅めっき膜の厚みは数μmから数百μmまでの厚みを形成する。なお、銅電気めっきに先立ち、前記銅層の上に無電解めっき法を適宜行うことができる。
(実験例1)
【0063】
図1のめっき装置10で電気めっきを行った。
【0064】
長尺樹脂フィルムに東レ・デュポン製のポリイミドフィルム150EN−F(厚さ38μm、幅524mm)の表面にスパッタリング法でニッケル7%クロムの下地金属層を膜厚75Åに成膜し、下地金属層の表面に銅層を成膜して金属膜(合計膜厚1100Å)を積層した金属膜付長尺樹脂(ポリイミド)フィルムを得た。接続部分Aは、金属膜付長尺樹脂フィルムFを図2に示すようにつき合わせて導電性テープ(銅テープ:大日本インキ化学工業株式会社製、薄型銅箔テープ E−1100LC 18μm厚銅箔、粘着層22μm 幅50mm)で接続して形成した。金属膜付長尺樹脂フィルムFには膜厚8μmとなるように銅めっき膜を形成して金属化長尺ポリイミドフィルム基板Sとした。通常のめっきの電位差は3Vととした。電流密度は、電源23aが0.01A/cm、電源23bが0.02A/cm、電源23cが0.03A/cm、電源23dが0.04A/cm、電源23eが0.04A/cmとなるように設定した。導電性テープ1(接続部分A)が給電ロール16と接触している間の電圧が5Vを超えない様に電流制御し連続製造したところ、接続部分の0〜10m間(一対の給電ロールとアノードにより電気めっきが施される範囲。すなわち電流密度が保持される範囲)の50mm×50mmあたりの20〜50μm径の凹凸個数が0.2個/50mm□となった。接続部分から10m〜20m離れた箇所でも0.2個/50mm□であった。さらに接続部分から20m〜30m離れた箇所では、0.3個/50mm□であった。従って接続部分の表面欠陥としては実用の範囲であった。
【0065】
なお、上述の表面欠陥の評価結果は、めっきの開始時や終了時の立ち上げ制御や立ち下げ制御時の評価結果ではない。めっきを開始した立ち上げ制御では金属化ポリイミドフィルムSでは先端(0m)から20mまでは、20μm〜50μm径の凹凸が1.0個/50mm□以上であり、実用に耐えず、廃棄する必要がある。また、立ち下げ制御でも終端(0m)から20mまでの凹凸の発生状況は同様であった。本発明の金属化長尺樹脂(ポリイミド)フィルム基板の製造方法を用いることで、金属化ポリイミドフィルム基板を連続して操業でき、立ち上げ制御および立ち下げ制御の回数を減らすことが可能となり、製品の廃棄量が激減する。
(実験例2)
【0066】
実験例1と同様の方法で金属化ポリイミドフィルムSを製造した場合、外観検査で白ムラ状の20μm以下の微小凹凸発生が面積費で0%のものが製造された。
(比較例1)
【0067】
図2に示されるように金属膜付長尺樹脂フィルムFと金属膜付長尺樹脂フィルムFとを突き合わせて形成する接続部分Aに導電性テープ1を使用せずに導電性テープ1に代えて非導電性のマスキングテープで接続して電流制御を行わず連続製造したところ、給電ロール16cと接続部分で瞬間電流が50Aを超えるスパークが発生し、接続部分Aの近傍の基板表面欠陥が激増した。表面欠陥が多く、実用に耐えないものであった。
(実験例3)
【0068】
図2に示される金属膜付長尺樹脂フィルムFと金属膜付長尺樹脂フィルムFとを突き合わせて形成された接続部分Aの導電性テープ1に35μm厚銅箔、粘着層35μm 幅25mmのスリーエム製導電性テープを用いた以外は実験例1と同様の方法で金属化ポリイミドフィルムを製造した。この場合、外観検査でも白ムラ状の凹凸20μm以下の微小凹凸発生が面積比で23%発生するものが出来た。しかし、凹凸が20μm以下の表面欠陥の微小凹凸なので銅ポリイミド基板としては実用可能な範囲である。
(実験例4)
【0069】
スリーエム製導電性テープの貼付を金属膜付長尺樹脂フィルムに実験例3よりも密着するよう押さえ付けた以外は実験例3と同じ条件で、電気めっきした。接続部分から10m〜20m離れた箇所でも0.3個/50mm□であった。接続部分から0m〜10m離れた箇所では、0.4個/50mm□であった。
【0070】
図6を参照して、実験例4において、金属化長尺樹脂フィルム基板Sにおける直径20μm〜50μmの凹凸の平均出現頻度について説明する。図6は、接続部分Aから終端方向に向かって120mまでの凹凸の出現頻度を表すグラフである。
【0071】
図6の横軸は、接続部分Aによって連続させられた金属化長尺樹脂フィルム基板の先端部又は接続部分からの距離(m)を表し、縦軸は、直径20μm〜50μmの凹凸の50mm×50mmでの平均出現頻度を表す。図6に表す平均出現頻度は、金属化長尺樹脂フィルム基板Sを長手方向10mごとの直径20μm〜50μmの凹凸の個数を測定(画像処理)し、その凹凸が50mm×50mm面積あたりどのくらい出現するかを示す指標である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、接続部分Aを設けなければ、それぞれの金属化長尺樹脂フィルム基板の先端と終端は比較例のように凹凸が多数発生するが、互いに分離している金属膜付長尺樹脂フィルムFを接続部分Aを設けて接続することにより複数の金属化樹脂フィルム基板が電気的及び機械的に接続されるので、比較例のような凹凸の多発は、連続した金属化長尺樹脂フィルム基板Sの先端と終端にのみ発生して、それぞれの金属化長尺樹脂フィルム基板Sでの先端や終点での凹凸の多発を防ぐ効果がある。
【0073】
本発明の金属化ポリイミドフィルムはフレキシブルプリント配線板に好適に利用される。
【符号の説明】
【0074】
10 めっき装置
11 めっき液槽
12 巻き出しロール
14a,14b,14c,14d,14e アノード(陽極)
15 巻取りロール
16a,16b,16c,16d,16e 給電ロール
21 光電センサー
22 制御器
23a、23b、23c、23d、23e 電源
A 接続部分
L めっき液
F 金属膜付長尺樹脂フィルム
S 金属化長尺樹脂フィルム基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属膜が形成された金属膜付長尺樹脂フィルムの前記金属膜上に、前記金属膜付長尺樹脂フィルムをその長手方向に搬送しながらめっき液槽で電気めっき膜を形成することにより金属化長尺樹脂フィルム基板を製造する製造方法において、
複数の前記金属膜付長尺樹脂フィルムをその長手方向に電気的および機械的に接続させる互いに隣接する前記金属化長尺樹脂フィルムの間に接続部分を設け、
該接続部分が、前記電気めっき装置の給電体と接触している間は、前記めっき液槽内部のアノード(陽極)と前記給電体の間の電位差の最大値が、操業時の電位差の0.8倍以上1.7倍以下の範囲内になるように前記給電体に流す電流を制御することを特徴とする金属化長尺樹脂フィルム基板の製造方法。
【請求項2】
前記金属膜は、ニッケル、クロムおよび銅から選ばれた金属、または、ニッケル、クロムおよび銅のいずれかを含む合金であり、
前記電気めっきは、銅電気めっきであることを特徴とする請求項1に記載の金属化長尺樹脂フィルム基板の製造方法。
【請求項3】
前記金属膜は、真空成膜法で成膜されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属化長尺樹脂フィルム基板の製造方法。
【請求項4】
前記長尺樹脂フィルムはポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1,2,又は3に記載の金属化長尺樹脂フィルム基板の製造方法。
【請求項5】
前記接続部分は、導電性粘着テープの貼付または導電性接着剤での接着で形成されているものであることを特徴とする請求項1から4までのうちのいずれか一項に記載の金属化長尺樹脂フィルム基板の製造方法。
【請求項6】
前記接続部分と前記金属膜付長尺樹脂フィルムで形成される各段差の高低差が100μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の金属化長尺樹脂フィルム基板の製造方法。
【請求項7】
前記導電性粘着テープの厚みが20μmから100μmであること特徴とする請求項5又は6に記載の金属化長尺樹脂フィルム基板の製造方法。
【請求項8】
前記金属膜付長尺樹脂フィルムと、前記金属膜付長尺樹脂フィルムに貼付された前記導電性粘着テープの間の電気抵抗が0.1Ω以下であることを特徴とする請求項5から7に記載の金属化長尺樹脂フィルム基板の製造方法。
【請求項9】
めっき液が収容されためっき液槽と、該めっき液槽内に設置されたアノード(陽極)と、長尺樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属膜が形成された金属膜付長尺樹脂フィルムの幅方向を水平に保ってその長手方向に搬送しながら前記金属膜付長尺樹脂フィルムを前記めっき液槽に浸漬させる搬送手段と、前記めっき液槽外にあって前記金属膜付長尺樹脂フィルムの金属膜に給電する給電体と、該給電体に流す電流を制御しながら電力を供給する電源を備えためっき装置において、
複数の互いに離れて隣接する前記金属膜付長尺樹脂フィルムをその長手方向に電気的および機械的に接続させる前記金属化長尺樹脂フィルムの間に配置された接続部分と、
前記金属膜付長尺樹脂フィルムの搬送経路上の前記めっき浴槽の前でかつ前記給電手段の前に配置された、前記接続部分を検出する接続部検出手段と、
前記接続部検出手段が前記接続部分の検出の信号を受けて、前記接続部分が給電体と接触している間は、前記給電体と前記アノード間の電位差の最大値が、操業時の電位差の0.8倍以上1.7倍以下の範囲内になるように前記電源を制御する制御手段を備えたことを特徴とするめっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−168597(P2010−168597A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9453(P2009−9453)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】