説明

金属板を処理する装置および方法

本発明は、剥離装置と組み合わされて用いられる、析出金属(3)用の回転装置に関するものである。本装置は、剥離装置の下方で、少なくとも1つのコンベヤ(10)に近接して回転軸(8)に取り付けられた少なくとも1つの回転可能な受部(5)と、回転装置として作用する受部(5)に析出金属(3)を案内する案内手段(6)と、受部(5)を回転させる手段とを含む。本発明はまた、析出金属(3)を処理する方法に関するものである。


【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、金属板を処理する装置および方法に関するものである。本発明はとくに、陰極から析出金属を剥離する装置に関連して使用される、金属板の回転装置および回転方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
銅、亜鉛、およびニッケルなど、さまざまな金属の精錬には、生成される金属から有害な不純物を分離する電解処理が含まれる。電解処理中に生成される金属は、電流によって陰極に収集される。通常、電解処理は、硫酸を含有する電解液を満たしたタンク内で行われ、数種の導電性材料からなる複数のプレート状の陽極と陰極を、交互に配列して液中に浸漬する。陽極および陰極は、上端部において取っ手または棒を取り付けて、それらをタンクの縁に懸架し、またそれらを電力回路に接続する。電解処理に使用する陰極、すなわちマザープレートは、たとえば、ステンレス鋼、アルミニウム、またはチタン製である。
【0003】
電解処理が済むと、陽極をタンクから取り外し、次の工程のために、その表面から金属を除去する。陽極から金属を除去するには、いろいろな方法を利用できる。たとえば、金属板を陽極板の一端から少し開けて、把持部材で掴んで陽極から引き剥がす。あるいは、金属を陽極の表面から切刃で切り離すこともできる。
【0004】
生成を継続的に維持するために、陰極から析出金属を剥離するために開発された装置がある。これらの装置は概して2つの部位、剥離部および回転部で構成される。剥離部で金属を陽極から剥離して、回転部で剥離した金属部分を回転させて次の処理へと移動させる。
【0005】
米国特許第5,149,410号および国際公開第00/32846号に、このような従来技術が記載されている。米国特許第5,149,410号は、電界析出式金属板を永久陰極から剥離する方法および装置について記載している。この装置は回転式コンベヤを含み、この回転コンベヤは、電界析出式金属板が付着した、懸架された永久陰極を受け取り、コンベヤに対して設けられた複数のステーションに順次送る。ステーションには、積載ステーションと、金属板の上端を陰極から離す打撃ステーションと、金属板を陰極から剥離する開始ステーションと、対の金属板を排出する排出ステーションと、剥離した陰極を撤去する降荷ステーションとを含む。剥離した対の金属板は、好ましくは底部から縦型容器に排出する。この容器は、金属板を撤去するために水平に回転する。
【0006】
国際公開第00/32846号は、電解処理において陰極として使用するマザープレートから析出金属を剥離する別の装置について記載している。この装置では、金属板を剥離すると、同時に、湾曲した案内部材に案内される把持部材によって、金属板を垂直位から水平位に傾斜させて、装置から排出する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、信頼性を高くし、小型にして、少数の可動部品を有する装置を製造することを目的とする。また、この装置は従来の装置よりも高速で、剥離工程の迅速化の可能性をもたらし、かつ、静音性に優れる。また、金属板の処理方法に関しても、同様の利点がもたらされる。
【0008】
本発明のもう1つの目的は、剥離装置を回転装置と組み合わせることで、小型に設計し、および金属板の処理方法をより効率的にすることである。
【0009】
本発明の一実施例において、金属板を剥離装置の両側で交互に降ろすことができる。それにより、後続の処理に有利な、より良く、より多くのまとまった束が形成される。
【0010】
これらの上述した目的は、上記の独立請求項における装置および方法によって達成できる。従属請求項では、本発明の他の有利な実施例を提示する。
【0011】
次に、好適な実施例を、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【最良の形態の詳細な説明】
【0012】
図1において、プレート状の永久陰極1は、懸架棒2から所定の位置に保持され、析出金属3がこの永久陰極の両面を取り巻いている。析出金属3の剥離は、上方に待機する2枚の上下動刃4によって行われる。刃4が割り込んで、永久陰極1の両面を析出金属3から離す。また、析出金属3の剥離には、他の既知の方法を用いてもよい。
【0013】
受部5が、永久陰極1の下で、剥離される析出金属3を待ち受けている。この受部は、析出金属3を受け易いようにV字形の構造になっているが、その設計はこの例に限らず、自由に変更可能である。永久陰極1の両側には、たとえばローラ6などの案内手段が配置されている。永久陰極1の下の受部5は、開放可能な底部7を有する。
【0014】
図2において、刃4は、下方に動いて析出金属3を永久陰極1から切り離し、離された析出金属は支持ローラ6へと傾く。次に、刃4は上部位置に戻り、析出金属3はその重みによって永久陰極1の下にある受部5へと移る。
【0015】
図3において、受部5は回転装置として作用し、矢印9が示すように、回転軸8を中心として縦位置から横位置へ90度傾く。そして受部5の底部7が開く。受部5は、析出金属3をコンベヤ10に置き、このコンベヤは析出金属をさらなる処理工程へと移送する。同時に、別の底部が塞がれた受部5が析出金属3の剥離工程へと移行し、他の永久陰極1が剥離装置に付け替えられる。これは、2つの受部5が互いに90度の角度をなして組み合わされて、前後に90度動くためである。そのため、一方の装置が析出金属3をコンベヤ10に降ろしているときは常に、もう一方の装置が次の析出金属が剥離されるのを待ち受ける。回転装置の構造体は、1つの受部5だけでなされることも当然可能であるが、その処理は、2つの受部を有する装置で行う場合よりも遅くなる。また、この構造体は、析出金属3を回転装置から2つの対向する方向に移送する2つのコンベヤ10を有していてもよく、この場合、どちらの受部5も塞いだ底部を有してよい。受部5の回転は、既知のいかなる機械構造体によっても行われる。たとえば、モータおよび変速装置、または液圧シリンダで動かすことができる。
【0016】
回転装置を前後に回転させて、析出金属3を剥離装置の両側に降ろす。これは、後で析出金属3を束ねるのに有利である。その束は、析出金属3を連続的に同一方向に降ろす場合よりも、より良く、より多くのまとまったものになる。回転装置は、コンベヤ10の横断方向にて1つ以上の個別部品からなるもので、降荷コンベヤの両側および/または中間部に設置される。
【0017】
図4は、回転装置の他の実施例を示す。回転装置は、回転軸8を中心に90度間隔で組み合わされた4つの受部5を有している。回転装置は一方向にのみ回転して、析出金属3を1つのコンベヤ10に降ろす。先順の受部が析出金属をコンベヤ10に降ろしているとき、同時に、次順の受部5が次の析出金属3に対する位置に自動的に移動する。ここでは受部5を4つ有する実施例のみを示したが、受部の数を、たとえば8、12といった具合に増やすことも可能である。回転装置と剥離装置との間の作業を円滑にするために唯一制限する点は、1つの受部5が析出金属をコンベヤ10に降ろしているとき、同時に、次の析出金属3のために待機している別の空の受部5があることである。
【0018】
図5は、降下装置11の実施例を示す。本実施例では、析出金属3は、矢印12に示すように、制御された手段で受部5まで降ろされる。降下した際の位置を点線で示す。析出金属3を受部5まで降ろすことで、装置の騒音が低減される。その後、受部5は、回転装置として動作し、析出金属3をコンベヤ10へと渡す。受部5がコンベヤ10側に回転すると同時に、降下装置11は、次順の受部5に降ろすべき次順の析出金属3を受けるために上方の位置へと上昇して戻る。
【0019】
上述の装置および方法は、電解処理に使用するあらゆる種類の陰極に適している。上述のように、回転装置は剥離装置と組み合わされて、よりコンパクトな設計を実現できる。これによって、可動部品の総量が従来の装置に比べて削減される。また、剥離装置の速度を上げることができる。
【0020】
本発明は、好ましい実施例を参照して説明したが、当業者によって修正または変更し得るものと解される。このような修正または変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内であるように意図する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、回転装置の第1の実施例の簡略図である。
【図2】図2は、第1の実施例の別の図である。
【図3】図3は、第1の実施例のさらに別の図である。
【図4】図4は、回転装置の第2の実施例の簡略図である。
【図5】図5は、回転装置の第3の実施例の簡略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離装置と組み合わされて用いられる、析出金属(3)用の回転装置において、該装置は、前記剥離装置の下方で、少なくとも1つのコンベヤ(10)に近接して回転軸(8)に取り付けられた少なくとも1つの回転可能な受部(5)と、回転装置として作用する受部(5)に析出金属(3)を案内する案内手段(6)と、前記受部(5)を回転させる手段とを含むことを特徴とする回転装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転装置において、該装置は、互いに90度の角度をなして組み合わされた2つの受部(5)を有し、該受部(5)の一方が開放可能な底部(7)を有して、該装置が1つのコンベヤ(10)に近接して組み込まれることを特徴とする回転装置。
【請求項3】
請求項1に記載の回転装置において、該装置は、互いに90度の角度をなして組み合わされて2つのコンベヤ(10)に近接して組み込まれた2つの受部(5)を有することを特徴とする回転装置。
【請求項4】
請求項1に記載の回転装置において、該装置は、互いに90度の角度をなして組み合わされた4つの受部(5)を有して、該装置が1つのコンベヤ(10) に近接して組み込まれることを特徴とする回転装置。
【請求項5】
請求項1に記載の回転装置において、該装置は、降下装置(11)を有することを特徴とする回転装置。
【請求項6】
析出金属(3)の処理方法において、該方法は、
− 前記析出金属(3)を永久陰極(1)から剥離する工程と、
− 少なくとも1つの受部(5)を剥離装置の下に配置する工程と、
− 前記析出金属を前記剥離装置の下で待ち受ける前記受部(5)へと移す工程と、
− 前記受部(5)を回転させる手段を配置する工程と、
− 前記受部(5)を軸(8)を中心に90度回転して、前記析出金属(3)を前記受部(5)に近接するコンベヤ(10)へと放つ工程と、
− 前記析出金属(3)を前記コンベヤ(10)でさらなる処理工程へと移送する工程と、
− 前記剥離装置、回転装置、およびコンベヤ(10)を1つの完全体として組み立てる工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、該方法はさらに、
− 一方が開放可能な底部(7)を有して互いに90度の角度をなす2つの受部(5)と、1つのコンベヤ(10)とを配設する工程と、
− 互いに90度の角度をなす4つの受部(5)と1つのコンベヤ(10)とを配設する工程と、
− 前記剥離した析出金属(3)を降下装置(11)で前記受部(5)に降ろす工程とのうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−510886(P2008−510886A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528897(P2007−528897)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【国際出願番号】PCT/FI2005/000368
【国際公開番号】WO2006/021617
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(506397453)オウトクンプ テクノロジー オサケイティオ ユルキネン (6)
【氏名又は名称原語表記】OUTOKUMPU TECHNOLOGY OYJ
【Fターム(参考)】