説明

金属板材の圧延機および圧延方法

【課題】上下作業ロールチョックの安定性と上下作業ロール間の開度を両立し、応答性が高く、圧延中の外乱に対しても板クラウン・形状制御範囲の大きい圧延機を提供する。
【解決手段】上下作業ロールにそれぞれインクリースベンディング力を負荷する油圧シリンダーが、圧延機ハウジングの内側に突出したプロジェクトブロックに配備され、前記下作業ロール胴部に負荷される圧延方向力が、前記プロジェクトブロックと下作業ロールチョックとの接触面によって支持され、前記上作業ロール胴部に負荷される圧延方向力が、前記プロジェクトブロックの上方に位置する圧延機ハウジングウィンドウと上作業ロールチョックとの接触面によって支持され、前記上下作業ロールそれぞれが、同一形状の凹凸状のイニシャルクラウンを、互いに点対称となるべく付与され、かつ、上下作業ロールチョックを、軸方向で互いに相反する方向に相対移動させるロールシフト手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚板圧延機あるいは薄板熱間圧延の粗圧延機として好適な、上下作業ロール間の最大開度を大きく取ることができるとともに、高応答性を有し、強力なロールベンディング力を付与できる圧延機に関する。
【0002】
本発明は、特に、イニシャルクラウンを有する上下一対の作業ロールを軸方向で相反する方向に相対移動させて、金属板材の板クラウン・形状制御を広範囲にわたって行うことができる金属板材の圧延機に関する。また、その圧延機を用いた圧延方法に関する。
【背景技術】
【0003】
金属板材の圧延作業においては、圧延板のクラウンおよび形状が重要な品質指標となっており、板クラウン・形状制御に関する技術が数多く開示されている。
【0004】
しかしながら、例えば、厚板圧延機あるいは薄板熱間圧延の粗圧延機のように板厚の厚い製品を多パスのリバース圧延で製造する圧延機では、上下作業ロール間の間隙(ロール開度)を圧延素材の板厚よりも大きくとる必要がある。このため板クラウン・形状制御装置には圧延機設備設計上の制約が課せられる。
【0005】
例えば、特許文献1には、複数パスで所定の板厚に圧延する厚板圧延において、形状制御装置として作業ロールベンディング装置を用い、前パスでの圧延実績値を基にロールベンディング力を制御する圧延方法が開示されている。
【0006】
特許文献1に開示されている圧延機型式は4段圧延機であり、その圧延機形式は図15に示す構造である。図15の圧延機にディクリースベンディング装置を配置したのが図11に示す圧延機となる。両圧延機は、基本的には同じ構造である。すなわち、上作業ロールチョック3−1を上補強ロールチョック4−1に繋がるアーム部が保持する形式である。このアーム部に上作業ロール1−1のインクリースベンディング装置6−1、6−2が組み込まれている。このような形式とすることで、大きなロール開度をとることができる。
【0007】
図11や図15の圧延機では、下作業ロール1−2のインクリースベンディング装置6−3、6−4は圧延機ハウジング9に繋がるプロジェクトブロックに組み込まれている。これ以外に大きなロール開度をとることができる圧延機形式としては、図12に示すように、上下とも補強ロールチョック4−1、4−2が作業ロールチョック3−1、3−2を保持する圧延機も存在する。
【0008】
なお、インクリースベンディング装置とは、ロール開度を大きくする方向の力を作業ロールチョックに与える油圧装置を意味している。インクリースベンディング装置とは、そのアクチュエータである油圧シリンダーを含む装置の総称である。しかし、本発明では、説明を簡単にするため、インクリースベンディング装置とは、特に断りの無い限り、そのアクチュエータである油圧シリンダーを指すものとする。インクリースベンディング装置によって作業ロールに負荷される力をインクリースベンディング力と称する。
【0009】
一方、ロール開度を小さくする方向の力を作業ロールチョックに与える油圧装置をディクリースベンディング装置、そして、これによって作業ロールに負荷される力をディクリースベンディング力と称する。また、ディクリースベンディング装置とは、そのアクチュエータである油圧シリンダーを含む装置の総称である。しかし、本発明では、説明を簡単にするため、ディクリースベンディング装置とは、特に断りの無い限り、そのアクチュエータである油圧シリンダーを指すものとする。
【0010】
特許文献2には、図13に示すように、作業ロールのインクリースベンディング装置6−1、6−2が作業ロールチョック3−1、3−2に組み込まれた圧延機が開示されている。
【0011】
特許文献3は、ロールクロス方式の圧延機が開示されている。この圧延機も、図13に示すようにインクリースベンディング装置6−1、6−2が作業ロールチョック3−1、3−2に組み込まれている。
【0012】
特許文献4には、図14に示すように、作業ロールシフト機能を有する圧延機が開示されている。この圧延機は、インクリースベンディング装置6−1、6−2が圧延機ハウジングと一体のプロジェクトブロック5−1、5−2に組み込まれている。なお、特許文献4に開示されている圧延機では、インクリースベンディング装置の油圧シリンダーがロール軸方向に複数個配備され、作業ロールシフト時に偏荷重がかからないように工夫されている。
【0013】
なお、一般的に厚鋼板の圧延機は、図15に示すようにディクリースベンディング装置がない。(特許文献1、2、3,4参照)
【0014】
しかし、本発明に係る圧延機は、広範な厚さの鋼板に対応できる圧延機にするため、ディクリースベンディング装置を有することを前提としている。そのため、図11、図12、図13、図14は、ディクリースベンディング装置を有している場合を示している。
【0015】
特許文献5には、イニシャルクラウンを有する上下一対の作業ロールを軸方向に相対移動(ロールシフト)させて、板クラウン・形状制御を行うカーブドロールシフト機能を有する圧延機および圧延方法が開示されている。
【0016】
特許文献6には、イニシャルクラウンを有する上下一対の作業ロールの軸方向への相対移動量(ロールシフト量)に応じて、上下一対の作業ロールへのベンディング力を設定する圧延機の制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平6−87011号公報
【特許文献2】特開昭62−220205号公報
【特許文献3】特開平6−198307号公報
【特許文献4】特開平4−52014号公報
【特許文献5】特公平7−41293号公報
【特許文献6】特開平5−261415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献1に開示されているような典型的な厚板圧延機(図11、図12に示す圧延機)は、ロール開度を大きくとれることを最優先として設計されている。すなわち、特許文献1に開示される圧延機は、圧下装置11によって上下位置が設定・制御される上補強ロールチョック4−1に繋がるアーム部が上作業ロールチョック3−1を保持する構造となっている。そして、特許文献1に開示される圧延機は、構造上大きさに制約のある当該アーム部にインクリースベンディング装置6−1、6−2を組み込むため、大容量の油圧シリンダーを組み込むことが困難だからである。このため、強力なロールベンディング力を付与することができない。
【0019】
例えば、作業ロール直径800mm程度のホットストリップミル仕上圧延機では2MN/チョック(200tf/チョック)を超える能力の作業ロールベンディング装置が実用化されている。これに対して、作業ロール直径1000mm程度の厚板圧延機でも2MN/チョック(200tf/チョック)程度の作業ロールベンディング装置しか実用化されていない。ロール直径の対比から、もっと大容量のロールベンディング力が必要なことは明白である。
【0020】
ここで、ロールベンディング効果の指標となるロールたわみは、負荷された曲げモーメントが同じであればロールの断面二次モーメントに反比例する。したがって、作業ロール直径1000mmの厚板圧延機のロールベンディング効果は、作業ロール直径800mmのホットストリップミル仕上げ圧延機に比べて約60%も劣ることになる。
【0021】
このため、厚板圧延機の板クラウン・形状制御装置としては、ロールベンディング装置も使われているが、効果は大きくなく、ロールクロス機能やロールシフト機能が実用化され主に活用されている。
【0022】
しかしながら、ロールクロス機能やロールシフト装置は、圧延中の条件設定変更が困難であるのみならず、多パス圧延時のパス間における条件設定変更の時間も確保できない場合があり、形状制御手段としては不完全と言わざるを得ない。
【0023】
一方、特許文献2および3に開示されている圧延機(図13)のすようにインクリースベンディング装置6−1、6−2が作業ロールチョック3−1、3−2に組み込まれている場合は、油圧シリンダーのストロークを長くとることができる。これによって大きなロール開度を実現できる。さらに大容量の油圧シリンダーを組み込むことも可能となるので、厚板圧延機でも実用的な作業ロールベンディング効果を期待できる。
【0024】
一方、作業ロール1−1、1−2は圧延操業によって補強ロールより損耗しやすいために定期的なロール組み替えが必要である。このため、その組み替え作業の度にインクリースベンディング装置の油圧配管を着脱しなければならない。これによってロール組み替え時間が長くなるだけでなく、配管着脱時に油圧配管内に微小異物が混入する可能性が高くなる。
【0025】
このため、この圧延機(図13)では、高応答油圧制御のためのサーボバルブを採用することができない。また、配管着脱を容易にするために柔構造かつ着脱自在な油圧配管(フレキシブル配管等)を介してそれぞれの油圧制御弁に接続しなければならない。また、フレキシブル配管を採用すると、柔構造であるが故に油圧の変動を吸収緩和してしまうこともある。したがって、応答性の高いロールベンディング装置とすることが困難となる。
【0026】
他方、特許文献2および4に開示されている圧延機は(図14)インクリースベンディング装置6−1、6−2が圧延機ハウジング9に繋がるプロジェクトブロック5−1、5−2に組み込まれている。このため、ロール組み替え作業の度にインクリースベンディング装置の油圧配管を着脱する必要がない。したがって、この圧延機は、応答性の高いロールベンディング装置とすることができる。そのため、ホットストリップミル仕上圧延機に多用されている。
【0027】
しかしながら、この圧延機は、上作業ロール1−1に作用するオフセット分力等の圧延方向力を支持するのは作業ロールチョック3−1とプロジェクトブロック5−2との接触面である。そのため、圧下装置11を操作してロール開度を大きくすると、作業ロールの回転中心が該接触面の外側となって作業ロールチョック3−1の姿勢が不安定となる。結果として、大きなロール開度をとることができない。このため、大きなロール開度が必要な厚板圧延機ではこの圧延機が採用されることはほとんどない。
【0028】
また、特許文献5および6に開示される、イニシャルクラウンを有する上下一対の作業ロールの軸方向への相対移動量に応じて、上下一対の作業ロールへのベンディング力を設定するカーブドロールシフト機構を有する圧延機の制御方法には、次のような問題がある。
【0029】
圧延中は、上下一対の作業ロールを軸方向に相対移動させるロールシフトをすることができない。したがって、一旦設定した相対移動量(ロールシフト量)で圧延している途中に、圧延状態が変化した場合には、ロールベンディング装置で、作業ロールにロールベンディング力を追加負荷し、板クラウン・形状制御を調整する。
【0030】
しかしながら、従来の圧延機の作業ロールベンディング装置では、上述したように、最大でも2MN/チョック程度のロールベンディング力しか追加負荷できず、圧延途中での板クラウン・形状制御効果の調整範囲としては十分ではなかった。
【0031】
特に、カーブドロールシフトしている場合には、板クラウン・形状制御の効果が非常に大きい。したがって、作業ロールベンディング装置での板クラウン・形状制御効果が狭いことは、相対的な問題として、一層顕在化する。
【0032】
例えば、カーブドロールシフトでは、作業ロールに負荷するロールベンディング力の大きさに換算して、15MN/チョック相当の板クラウン・形状制御効果を比較的容易に得ることができる。
【0033】
15MN/チョック相当の板クラウン・形状制御効果を、カーブドロールシフトで得ているとき、圧延途中に圧延状態が変化して、3MNのロールベンディング力を作業ロールに追加負荷しようとしても、上述したように、従来のロールベンディング装置で負荷できるロールベンディング力は、最大でも2MN/チョック程度である。
【0034】
したがって、従来に圧延機では、圧延途中に、2MNを超える板クラウン・形状制御を追加負荷して調整を行うことはできない。よって、従来の圧延機において、カーブドロールシフトは、外乱の大きい実操業では適用しにくい板クラウン・形状制御方法である。
【0035】
しかしながら、カーブドロールシフトでは、板クラウン・形状制御効果が非常に大きいため、作業ロールに追加負荷されるロールベンディング力の小ささが問題となる。
【0036】
したがって、カーブドロールシフトを行って圧延しているときに、カーブドロールシフトで得られる板クラウン・形状制御効果に匹敵する強力なロールベンディング力を、圧延途中で追加負荷できる圧延機が望まれていた。
【0037】
即ち、本発明の解決すべき課題は、上下作業ロールを支持する上下作業ロールチョックの安定性を維持しつつ、上下作業ロール間の開度を大きく取ることができるとともに、カーブドロールシフトと、圧延途中の強力なロールベンディング力の負荷により、応答性が高く、圧延中に変動する外乱に対しても板クラウン・形状制御範囲の大きい圧延機、およびその圧延機を用いて圧延方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、ハウジングからその内側方向に突出するプロジェクトブロックを、パスラインに対して下側にシフトし、パスラインに対して上下非対称にするように設置し、かつ、イニシャルクラウンを有する上下一対の作業ロールを、軸方向で互いに相反する方向に相対移動させるロールシフト手段を設けることにより、以下のことが可能となることを見出した。
【0039】
(a)上作業ロールチョックにかかる圧延方向力を常にハウジングで受ける構造とできること。これにより、安定して作業ロールチョックを支えることができる。
【0040】
(b)インクリースベンディング装置をプロジェクトブロックに組み込むことで、油圧配管を固定化でき、サーボバルブを適用することができること。これにより高応答のインクリ−スベンディング力の制御が可能となる。
【0041】
(c)また、上記プロジェクトブロックに、上下インクリースベンディング装置を組み込むことができること。これにより、大容量・大ストロークの強力なベンディング装置を備えることができる。
【0042】
(d)そして、この強力なベンディング装置により、カーブドロールシフトしているときに、圧延途中で圧延状態が大きく変化しても、カーブドロールシフトで得られる板クラウン・形状制御効果に匹敵するロールベンディング力を、作業ロールに追加負荷することが可能となる。即ち、従来の圧延機では、ロールベンディング力が小さいため、カーブドロールシフトで得られる強力な板クラウン・形状制御の効果に見合うだけ、圧延途中で板クラウン・形状制御の調整を広範囲で行うことが不可能であったのが、本発明に係る圧延機では可能となる。
【0043】
また、この圧延機の発明により、以下の圧延機操業方法が可能となることも見出した。
【0044】
(e)金属板材の長手方向板厚を変化させる差厚鋼板(LP鋼板)の製造においては、圧延中の板厚変更によって圧延荷重の大幅な変化が生じ、また、同時に、ロール撓みの変化が生じる。この課題に対して、本発明に係る圧延機は、圧延中のロール撓みの制御範囲を大きくすることができる。したがって、本発明に係る圧延機は、金属板材の長手方向の板厚差が、従来の圧延機では得ることができない大きさである差厚鋼板(LP鋼板)を、製造することが可能となる。
【0045】
本発明は、これらの知見を基に成されたものであり、その要旨は、以下のとおりである。
【0046】
(1)上作業ロールと下作業ロールとからなる上下一対の作業ロールと、これらをそれぞれ支持する上下一対の補強ロールを有する金属板材の圧延機であって、
前記上下作業ロールにそれぞれインクリースベンディング力を負荷する油圧シリンダーが、圧延機ハウジングの内側に突出したプロジェクトブロックに配備され、
前記下作業ロール胴部に負荷される圧延方向力が、前記プロジェクトブロックと下作業ロールチョックとの接触面によって支持され、
前記上作業ロール胴部に負荷される圧延方向力が、前記プロジェクトブロックの上方に位置する圧延機ハウジングウィンドウと上作業ロールチョックとの接触面によって支持され、
前記上作業ロールと前記下作業ロールそれぞれが、同一形状の凹凸状のイニシャルクラウンを、互いに点対称となるべく付与され、かつ、
前記上作業ロールチョックと、前記下作業ロールチョックを、前記上下一対の作業ロールの軸方向で互いに相反する方向に相対移動させるロールシフト手段を有することを特徴とする金属板材の圧延機。
前記したように、インクリースベンディング装置とは、そのアクチュエータである油圧シリンダーを含む装置の総称である。しかし、本発明では、説明を簡単にするため、インクリースベンディング装置とは、特に断りの無い限り、そのアクチュエータである油圧シリンダーを指すものとする。
【0047】
(2)上作業ロールにインクリースベンディング力を負荷する油圧シリンダーと、下作業ロールにインクリースベンディング力を負荷する油圧シリンダーとが、前記プロジェクトブロック内において平面図上で異なる位置に配備されていることを特徴とする上記(1)に記載の金属板の圧延機。
【0048】
(3)上作業ロールにディクリースベンディング力を負荷する油圧シリンダーが、上補強ロールチョックに配備されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の金属板の圧延機。
インクリースベンディング装置と同様に、本発明では、ディクリースベンディング装置とは、そのアクチュエータである油圧シリンダーを含む装置の総称である。しかし、本発明では、説明を簡単にするため、ディクリースベンディング装置とは、特に断りの無い限り、そのアクチュエータである油圧シリンダーを指すものとする。
【0049】
(4)下作業ロールにディクリースベンディング力を負荷する油圧シリンダーが、下補強ロールチョックまたは前記プロジェクトブロックの下方に位置する第2のプロジェクトブロック(例えば、図5の5−3,5−4)に配備されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属板の圧延機。
【0050】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の金属板材の圧延機を用いて行う金属板材の圧延方法であって、
圧延開始前に、前記上下一対の作業ロールを、作業ロールの軸方向で互いに相反する方向に相対移動させ、板クラウン・形状制御を行い、
圧延途中の圧延状態の変動による、板クラウン・形状制御の調整は、前記上下作業ロールそれぞれインクリースベンディング力を負荷する油圧シリンダーで行うことを特徴とする金属板材の圧延方法。
【0051】
(6)上記(3)または(4)に記載の金属板材の圧延機を用いて行う金属板材の圧延方法であって、
圧延開始前に、インクリースベンディング力とディクリースベンディング力の双方を作用させ、合力としてロールバランス力に相当するロールベンディング力を作業ロールチョックに作用させ、
その後、圧延開始時に、ディクリースベンディング力を前記所定の圧延中ディクリースベンディング力を保持する制御を継続しつつインクリースベンディング力を変化させ、合力として所定の圧延中作業ロールベンディング力が作業ロールチョックに作用する状態にし、
圧延中は、前記所定の圧延中作業ロールベンディング力を維持するように圧延を行い、
その後、圧延終了時に、インクリースベンディング力を変化させ、ディクリースベンディング力との合力としてロールバランス力に相当するロールベンディング力を作業ロールチョックに作用させ、この状態で金属板材の圧延を終了することを特徴とする金属板材の圧延方法。
【0052】
(7)前記ディクリースベンディング力を発生する油圧シリンダー内あるいは該油圧シリンダーにつながる油圧配管内の油圧を測定し、その測定値に基づき、合力として作業ロールチョックに作用するロールベンディング力が所定の値になるように前記インクリースベンディング力を制御することを特徴とする上記(6)に記載の金属板材の圧延方法。
【発明の効果】
【0053】
本発明に係る圧延機は、図1に示すように、上作業ロール1−1の胴部に負荷される圧延方向力を、上作業ロールチョック3−1とプロジェクトブロック5−2より上方のハウジングウィンドウとの接触面によって支持する構造である。そのため、大きなロール開度をとることができるとともに、強力なロールベンディング力も得ることができる。また、ロールを水平方向にも安定して支持することができる。
【0054】
また、この強力なロールベンディング力により、イニシャルクラウンを付与した上下一対の作業ロールを、軸方向で互いに相反する方向に相対移動させたとき(カーブドロールシフトしたとき)に得られる板クラウン・形状制御の範囲と同等またはそれ以上の広い範囲で、圧延途中の板クラウン・形状制御の調整を行うことができる。
【0055】
したがって、圧延材入側板厚や圧延材温度等、圧延中に変動する外乱が大きい場合であっても、良好な板クラウン・形状を造り込むことが可能であり、製品品質および歩留を大きく改善することができる。
【0056】
そして、作業ロールの組み替え作業の度にインクリースベンディング装置の油圧配管を着脱する必要がない。このために、インクリースベンディング装置に固定油圧配管を介してそれぞれの油圧制御弁に接続することができ、高応答油圧制御のためのサーボバルブを採用することができ、応答性の高いインクリースベンディング装置とすることができる。
【0057】
また、本発明に係る圧延機を用いた圧延方法は、カーブドロールシフトで板クラウン・形状制御を行い、インクリースベンディング装置を用いて、圧延中に上下一対の作業ロール間距離を増加させることができるため、例えば、金属板長手方向の板厚差が、従来の圧延機では得ることができない大きさである差厚鋼板を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る圧延機の構造の一例を示す側面図である。
【図2】上下のインクリースベンディング装置の配置例を示す透視平面図である。
【図3】上下のインクリースベンディング装置の配置例を示す透視平面図である。
【図4(a)】本発明に係る圧延機が有するロールシフト手段の構造の一例を示す上面図であり、カーブドロールシフト前の状態を示す。
【図4(b)】本発明に係る圧延機が有するロールシフト手段の構造の一例を示す上面図であり、カーブドロールシフト後の状態を示す。
【図5】本発明に係る圧延機の構造の別の一例を示す側面図である。
【図6】本発明に係る圧延方法の操作フローの一例を示す図である。
【図7】図6の操作フローに伴うロールベンディング力等の時系列変化を示す図である。
【図8】ディクリースベンディング装置の応答性が低い場合のロールベンディング力等の時系列変化を示す図である。
【図9】本発明に係る圧延方法の操作フローの別の一例を示す図である。
【図10】図9の操作フローに伴うロールベンディング力等の時系列変化を示す図である。
【図11】従来技術に係る圧延機の構造を示す側面図である。
【図12】従来技術に係る圧延機の構造を示す側面図である。
【図13】従来技術に係る圧延機の構造を示す側面図である。
【図14】従来技術に係る圧延機の構造を示す側面図である。
【図15】従来技術に係る圧延機の構造を示す側面図である。
【図16】広幅鋼板圧延時の板クラウン制御範囲を示す図である。
【図17】狭幅鋼板圧延時の板クラウン制御範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、図1〜15を参照して、本発明に係る圧延機および該圧延機を用いた圧延方法について説明する。
【0060】
図1は本発明に係る圧延機の構造の一例を示す側面図である。当該図に示すように、本発明に係る圧延機は、上下一対の作業ロール1−1、1−2とこれらをそれぞれ支持する上下一対の補強ロール2−1、2−2を備えた圧延機である。なお、図1には、説明を簡単にするため、後述するロールシフト手段を省略してある。
【0061】
そして、本発明に係る圧延機は、上作業ロール1−1にインクリースベンディング力を負荷する上インクリースベンディング装置6−1、6−2と、下作業ロール1−2にインクリースベンディング力を負荷する下インクリースベンディング装置6−3、6−4を、ハウジング9の内側に突出したプロジェクトブロック5−1、5−2に配備した圧延機である。
【0062】
この点については、図14に示す従来の圧延機と同じである。しかしながら、本発明に係る圧延機は、抜本的な見直しを行って、図14に示す従来の圧延機の問題点を解決している。即ち、圧延機の構造設計上の観点、特にロール開度を大きくとるための観点から、プロジェクトブロック5−1、5−2の位置、ならびに上作業ロールチョック3−1の形状などを変えた。
【0063】
図14に示す従来の圧延機では、大きなロール開度をとることができない。この圧延機は、プロジェクトブロック5−1、5−2を被圧延材10の通過する位置(パスライン)に対してほぼ上下対称になるように配置している。このため、上作業ロールチョック3−1とプロジェクトブロック5−2とが接触する接触面によって、上作業ロール1−1に作用するオフセット分力等の圧延方向力、すなわち、被圧延材10や上補強ロール2−1等から上作業ロール1−1の胴部に負荷される圧延方向力を支持する構造だからである。
【0064】
この構造では、ロール開度を大きくするにしたがい、上作業ロール1−1の回転中心位置(圧延方向力の作用点)と上作業ロールチョック3−1が上方に移動し、前記圧延方向力を支持するプロジェクトブロック5−2との接触面積が減少する。したがって、ロール開度を大きくするにしたがって上作業ロールチョック3−1の姿勢が不安定となり、大きなロール開度をとることができない。
【0065】
本発明に係る圧延機は上記問題点を解決する。本発明に係る圧延機は、図1に示すように、ハウジング9からその内側方向に突出するプロジェクトブロック5−1、5−2を、パスラインに対して下側にシフトした位置に配置する。すなわち、図14に示す従来の圧延機とは異なり、パスラインに対して上下非対称になるように、プロジェクトブロック5−1、5−2を配置する。さらに、上作業ロールチョック3−1は、プロジェクトブロック3−1に接触するのではなく、ハウジングウィンドウに接触し、圧延方向力を支えるようにした。
【0066】
これにより、本発明に係る圧延機では、上作業ロールチョック3−1とプロジェクトブロック5−2より上方のハウジングウィンドウ12との接触面によって、上作業ロール1−1に作用するオフセット分力等の圧延方向力、すなわち、被圧延材10や上補強ロール2−1等から上作業ロール1−1の胴部に負荷される圧延方向力を支持する。
このような構造にすれば、圧延機の圧下装置11を操作してロール開度を大きくしても、上作業ロールチョック3−1とハウジングウィンドウとが接触する面積は一切変化しない。したがって、上作業ロールチョック3−1の姿勢は、ロール開度にかかわらず常に安定して保持されることになる。
【0067】
図14に示すように、上下のインクリースベンディング装置をプロジェクトブロックに配備した圧延機は周知ではある。しかし、本発明に係る圧延機は、プロジェクトブロック5−1、5−2の位置、ならびに上作業ロールチョック3−1の形状について抜本的な見直しを行って、上作業ロール1−1の胴部に負荷される圧延方向力を、上作業ロールチョック3−1とプロジェクトブロック5−2の上方のハウジングウィンドウ12との接触面で支持する構造としたので、大きなロール開度をとることができる。
【0068】
さらに、本発明に係る圧延機では、上作業ロール1−1にインクリースベンディング力を負荷する上インクリースベンディング装置6−1、6−2と、下作業ロール1−2にインクリースベンディング力を負荷する下インクリースベンディング装置6−3、6−4を、ハウジング9の内側に突出したプロジェクトブロック5−1、5−2に配備している。そのため、作業ロールの組み替え作業の度にインクリースベンディング装置の油圧配管を着脱する必要がなく、応答性の高いインクリースベンディング装置とすることができる。これは、固定配管された油圧配管を介してそれぞれの油圧制御弁に接続することができ、高応答油圧制御のためのサーボバルブを採用することができるからである。
【0069】
なお、本発明に係る圧延機において、下作業ロール1−2の胴部に負荷される圧延方向力は、下作業ロールチョック3−2とプロジェクトブロック5−2との接触面によって支持される。このため、図1に示す本発明に係る圧延機は、下作業ロールチョック3−2のプロジェクトブロック5−1、5−2に挟み込まれる部分の高さを大きくしている。
【0070】
また、ロール開度は、主に上作業ロールチョックを上下に移動させることにより調整するので、下作業ロールチョックの上下の移動量は少ない。そのため、ロール開度が大きくなるにしたがい、下作業ロールの姿勢が不安定になることはない。
【0071】
図2は上下のインクリースベンディング装置の配置例を示す断面平面図である。つまり、プロジェクトブロック5−1、5−2のパスライン高さの断面図である。なお、図2には、説明を簡単にするため、後述するロールシフト手段は省略してある。
【0072】
本発明に係る圧延機では、上下のインクリースベンディング装置を、プロジェクトブロックの断面平面図上で互いにずらして配備することが望ましい。例えば、図2に示すように、上インクリースベンディング装置6−1、6−2と、下インクリースベンディング装置6−3、6−4とを、作業ロール1−2の軸方向にシフトした位置関係となるように配備することが望ましい。このようにすれば、上下のインクリースベンディング装置が互いに干渉しない。上インクリースベンディング装置6−1、6−2のストロークを大きくして、さらに大きなロール開度をとることができる。
【0073】
なお、図2では下インクリースベンディング装置6−3、6−4は入側、出側それぞれ油圧シリンダーを2本としている。しかし、油圧シリンダーを1本として上インクリースベンディング装置6−1、6−2と干渉しないように作業ロール1−2の軸方向に異なる位置に配置することでも同様の効果を得ることができる。
【0074】
図3も上下のインクリースベンディング装置の配置例を示す断面平面図である。つまり、プロジェクトブロック5−1、5−2のパスライン高さの断面図である。なお、図3も、図2と同様に、ロールシフト手段は省略してある。
【0075】
図3に示すように、上インクリースベンディング装置6−1、6−2と、下インクリースベンディング装置6−3、6−4とを、圧延方向にシフトした位置関係としてもよい。このような配置でも上下のインクリースベンディング装置は互いに干渉しない。上インクリースベンディング装置6−1、6−2のストロークを大きくして、さらに大きなロール開度をとることができる。
【0076】
ここまでは、主に解決課題の一つである大きなロール開度を得る観点から、本発明に係る圧延機の構造について説明してきた。次に、この構造によれば、もう一つの解決課題である強力なロールベンディング力の付与についても容易に達成できることを説明する。
【0077】
図11、図12はいずれも従来技術に係る圧延機であり、いずれの圧延機もロール開度を大きくとることができる。
【0078】
しかしながら、これらの従来の圧延機では、強力なロールベンディング力を付与することができない。これは、上補強ロールチョック4−1から下方に突出したアーム部に、上インクリースベンディング装置6−1、6−2を組み込む構造であるため、大容量および大ストロークの上インクリースベンディング装置6−1、6−2を配備することができないからである。また、これらの圧延機は、上補強ロールチョックからアーム部を出すため、上ディスクリートベンディング装置の設置スペースがロールの軸心に寄ってしまう。そのため、上補強ロールの軸受けと干渉するので、大容量・大ストロークの上ディクリースベンディング装置7−1、7−2を配備することができないからである。
【0079】
一方、図1に示すように本発明に係る圧延機では、圧延機のハウジング9からその内側方向に突出するプロジェクトブロック5−1、5−2に、大容量・大ストロークの上インクリースベンディング装置6−1、6−2を配備することができる。
【0080】
また、本発明に係る圧延機は、上補強ロールチョック4−1には図11、図12に示す圧延機のようなアーム部を備えない。このため、上補強ロールチョック4−1の上補強ロールの軸受けと干渉しない位置に、大容量・大ストロークの上ディクリースベンディング装置7−1、7−2を配備することができる。これにより、上作業ロール1−1に大きなディクリースベンディング力を負荷することが可能となる。
【0081】
すなわち、プロジェクトブロック5−1、5−2の位置、ならびに上作業ロールチョック3−1の形状について抜本的な見直しを行って、上作業ロール1−1の胴部に負荷される圧延方向力を、上作業ロールチョック3−1とハウジングウィンドウ12との接触面によって支持する構造とした本発明に係る圧延機によれば、大きなロール開度をとることができるとともに、強力なロールベンディング力の付与もできる。
【0082】
また、作業ロールの組み替え作業の度にインクリースベンディング装置の油圧配管を着脱する必要がない。このために、それぞれのインクリースベンディング装置6−1〜6−4には、固定油圧配管を介してそれぞれの油圧制御弁に接続することができ、高応答油圧制御のためのサーボバルブを採用することができる。したがって、応答性の高いインクリースベンディング装置とすることができる。
【0083】
さらに、本発明に係る圧延機では、上下一対の作業ロールそれぞれにイニシャルクラウンが付与されており、かつ、ロールシフト手段を備える。図4は、本発明に係る圧延機が有するロールシフト手段の構造の一例を示す上面図である。図4(a)はカーブドロールシフト前の状態を示す。図4(b)はカーブドロールシフト後の状態を示す。
【0084】
図4は、上作業ロール1−1の一方の端部について示してあるが、他方の端部についても同様の構造を有する。また、下作業ロール1−2についても、上作業ロール1−1と同様の構造を有する。
【0085】
上作業ロール1−1の表面は、図4に示すようにイニシャルクラウンが付与されている。下作業ロール1−2には、上作業ロール1−1と互いに点対称となるべく同一のイニシャルクラウンが付与されている。
【0086】
イニシャルクラウンの曲線は、常法に従えばよい。即ち、イニシャルクラウンの曲線は、上作業ロール1−1と下作業ロール1−2を軸方向に相互移動させたときに、上作業ロール1−1と下作業ロール1−2の表面間隔が、広くなる部位と狭くなる部位ができるような凹凸形状であればよい。これは、カーブドロールシフトしたときに、圧延中の金属板材に、板クラウンを矯正するための力を負荷させるためである。なお、図4中のhはイニシャルクラウン量である。
【0087】
作業ロール1−1の端部は、ラジアルベアリング20、スラストベアリング21を介して、上作業ロールチョック3−1に連結されている。上作業ロールチョック3−1は、プロジェクトブロック5−1、5−2に、上インクリースベンディング装置6−1、6−2を介して配設される。
【0088】
上作業ロール1−1の圧延機側面側端部は、クランプ装置36でクランプされ、ロールシフト手段30に連結される。ロールシフト装置30は、ロールシフト装置固定プレート31でハウジング9に固定される。
【0089】
ロールシフト手段30は、クランプされた上作業ロールチョック3−1の圧延機側面側端部を、上作業ロール1−1の軸方向に移動させる。ロールシフト手段30は、シフト駆動外シリンダー32、シフト駆動内シリンダー33、シフト駆動プランジャ34を有する。ロールシフト手段30の構成は、クランプされた上作業ロールチョック3−1の圧延機側面側端部を、上作業ロール1−1の軸方向に移動させることができれば、これに限られるものではない。
【0090】
クランプ装置36は、クランプ装置36に連結された回転駆動シリンダー38を動作させることで、上作業ロールチョック3−1の圧延機側面側端部をクランプまたはアンクランプする。クランプ装置36の構成は、上作業ロールチョック3−1の圧延機側面側端部をクランプ、アンクランプできるものであれば、これに限られるものではない。
【0091】
図5は本発明に係る圧延機の別の一例を示す側面図である。なお、前述した図4に示したロールシフト手段は、図5に示した圧延機にも備えられている。
【0092】
図5に示す圧延機は、上ロール系は図1と同じ構成であるが、下ロール系が異なる構成となっている。図1に示す圧延機は、下作業ロールにディクリースベンディング力を負荷する下ディクリースベンディング装置7−3、7−4を下補強ロールチョック4−2に配備している。それに対し、図5に示す圧延機は、下ディクリースベンディング装置7−3、7−4を、プロジェクトブロック5−1、5−2の下方に位置する専用のプロジェクトブロック5−3、5−4に配備している。
【0093】
ところで、図1に示す圧延機のように下ディクリースベンディング装置7−3、7−4を下補強ロールチョック4−2に配備すると、下補強ロール2−2を組み替える際にはディクリースベンディング装置の油圧配管を着脱しなければならない。つまり、着脱時には油圧配管内に微小な異物が混入する可能性が高い。
【0094】
このために、一般に高応答油圧制御のためのサーボバルブを採用することが困難となる上、フレキシブル配管を一部に採用しなければならない場合もある。
【0095】
したがって、図1に示した圧延機が備えるロールベンディング装置の油圧回路は、固定配管やサーボバルブを採用することができない。よって、固定油圧配管やサーボバルブを採用したロールベンディング装置を備える圧延機と比較すると、図1に示した圧延機が備えるロールベンディング装置の応答性は低くならざるを得ない。
【0096】
これに対し、図5に示す圧延機によれば、下補強ロール2−2を組み替える際に生じる上記問題を解決することができる。専用のプロジェクトブロックに配備する下ディクリースベンディング装置の油圧配管には高応答油圧制御のためのサーボバルブを採用でき、フレキシブル配管を使用せずに済むからである。このために、下補強ロール2−2の組み替えが容易になるとともに応答性の高いロールベンディング装置とすることができる。
【0097】
次に、本発明に係る圧延方法について説明する。図1、図5に示すように上ディクリースベンディング装置7−1、7−2を上補強ロールチョック4−1に配備した場合、上補強ロール2−1を組み替える際にはディクリースベンディング装置の油圧配管を着脱しなければならず、着脱時には油圧配管内に微小な異物が混入する可能性が高い。
【0098】
このため、一般に高応答油圧制御のためのサーボバルブを採用することが比較的困難となる。また、配管着脱を容易にするためにフレキシブル配管等のように柔構造かつ着脱自在な油圧配管を介してそれぞれの油圧制御弁に接続しなければならない。フレキシブル配管等の柔構造かつ着脱自在な油圧配管を採用する場合には、柔構造であるが故に油圧の変動を吸収し、または緩和してしまうこともある。
【0099】
したがって、上ディクリースベンディング装置7−1、7−2を上補強ロールチョック4−1に配備したような場合には、固定配管やサーボバルブを採用した場合と比較すると、ロールベンディング装置の応答性は低くならざるを得ない。
【0100】
ところで、ディクリースベンディング力は圧延荷重が負荷されていないアイドル時に負荷することができない。そのため、ディクリースベンディング力を適用する場合は、ロールバランスをとるアイドル状態から圧延開始までに、迅速にディクリースベンディング力を設定し、さらに圧延終了時に迅速にロールバランス状態に戻す必要がある。
【0101】
したがって、ロールベンディング力の変更を応答性に劣るディクリースベンディング装置による制御で実施すると、圧延材の先尾端において所定のディクリースベンディング力が負荷されずに形状不良部が長くなる可能性がある。
【0102】
本発明に係る圧延方法は上記課題を解決するものである。すなわち、上ディクリースベンディング装置7−1、7−2を上補強ロールチョック4−1に配備した本発明に係る圧延機を用いた圧延方法であって、当該圧延機に生じ得る上記課題を解決する圧延方法である。
【0103】
前記したように、上ディクリースベンディング装置7−1、7−2を上補強ロールチョック4−1に配備した圧延機においては、ディクリースベンディング装置の応答性が悪くなる場合がある。
【0104】
しかし、本発明に係る圧延機では、ハウジング9からその内側方向に突出するプロジェクトブロック5−1、5−2に、上インクリースベンディング装置6−1、6−2を配備する構造であるため、大容量・大ストロークの上インクリースベンディング装置6−1、6−2とすることができる。
【0105】
しかもロール組み替え作業の度にインクリースベンディング装置の油圧配管を着脱する必要がないので、固定油圧配管やサーボバルブを採用することができ、これにより応答性の高いインクリースベンディング装置とすることができる。
【0106】
本発明に係る圧延方法は、板クラウン・形状制御の目的で作業ロールにディクリースベンディング力を作用させる場合に、圧延開始時および圧延終了時のロールベンディング力の変更を、応答性の高いインクリースベンディング装置を用いて行い、ディクリースベンディング装置の応答性を補償するものである。
【0107】
図6は本発明に係る圧延方法の操作フローの一例を示す図である。つまり、応答性の高いインクリースベンディング装置とこれに比べてやや応答性の低いディクリースベンディング装置の操作フローを示す図である。
【0108】
また、図7にこの圧延方法における、一本の圧延材に対するロールベンディング力等の時系列変化を示す。図7は上から、圧延荷重、インクリースベンディング装置の出力、ディクリースベンディング装置の出力、それらの合力である作業ロールベンディング力の時系列変化を示している。以下、図6、7に基づいて説明する。
【0109】
まずは圧延開始前に、次に圧延する圧延材に対応する圧延中作業ロールベンディング力の設定値Fを演算・出力する。ここではFが負の値、すなわちディクリースベンディング力と演算されたものとする。なお、本発明では、インクリースベンディング力(インクリース方向(ロールを開く方向)の力)を正の値、ディクリースベンディング力(ディクリース方向(ロールを押し付ける方向)の力)を負の値とする。
【0110】
圧延開始前は、インクリースベンディング力とディクリースベンディング力の双方を作用させ、合力としてロールバランス力(F)に相当するインクリース側のロールベンディング力が作業ロールチョックに作用するようにする。
【0111】
すなわち、圧延前のアイドル時には、インクリースベンディング装置出力をI(>0)、ディクリースベンディング装置出力をD(<0)とし、I+Dがロールバランス力F(>0)として作用する。
【0112】
ロールバランス力Fは、空転状態においても電動機で駆動される作業ロールと従動となる補強ロールがスリップしない力として決められている。この時Dはディクリースベンディング装置のアクチュエータが作業ロールチョックから離れてしまわない程度の最小の油圧で設定すればよい。
【0113】
そして圧延開始前のあるタイミング(時間軸上のa点)において、圧延中作業ロールベンディング力Fを作用させるのに十分な所定の圧延中ディクリースベンディング装置出力DをD=F−Iによって演算する。そして、ロールバランス力(F)が一定となるように、DおよびIを同時に出力する。ここで、Iは圧延中のインクリースベンディング装置出力であり、Dの絶対値が過大にならないように制御可能な最小値に近い値を予め決めておく。IはI+D=Fとなるインクリースベンディング装置出力である。したがって、設定タイミングにおいては、合力としての作業ロールベンディング力はFのままで実質的に変化しない。
【0114】
次に、圧延開始直後に、ディクリースベンディング力は一定値を保持しつつ、インクリースベンディング力を低下させ、合力として所定の圧延中作業ロールベンディング力Fが作業ロールチョックに作用するようにする。圧延する金属板材が圧延機に噛み込む前にインクリースベンディング力が低下すると、ロールギャップが閉じて金属板材を咬み込めなくなるからである。
【0115】
すなわち、圧延開始時(時間軸上のb点)において、インクリースベンディング装置出力をIからIに変更する。このようにすることで応答の遅いディクリースベンディング装置出力はDのままで、応答の速いインクリースベンディング装置の制御によって、合力としての作業ロールベンディング力をロールバランス力F(>0)から圧延中作業ロールベンディング力F(<0)に迅速に切り換えることができる。
【0116】
なお、圧延開始時(b)とは、圧延を開始した時点をさし、その検出は、例えば圧延機の圧延荷重測定用ロードセルによって検出される荷重が、予測圧延荷重の、30%を超えた時とする方法で決めれば良い。
【0117】
そして、圧延終了直前に、ロールベンディング力を圧延開始前の状態に戻すため、合力としてロールバランス力(F)に相当するロールベンディング力を作業ロールチョックに作用させ、圧延を終了する。インクリースベンディング装置の動作が遅れると、圧延後の金属板材の終端部が圧延機から抜けたとき、上下作業ロール同志が衝突するからである。
【0118】
すなわち、圧延終了時(時間軸上のc点)において、ディクリースベンディング装置出力はDのままで応答の速いインクリースベンディング装置出力をIからIに変化させる。このようにすることで、合力としての作業ロールベンディング力を圧延中作業ロールベンディング力(F(<0))からロールバランス力(F(>0))に迅速に切り換えることができる。
【0119】
なお、圧延終了時(c)とは、圧延終了時点をさし、その検出は、例えば圧延機の圧延荷重測定用ロードセルによって検出される荷重が、実績圧延荷重平均値の、60%を下回ったタイミングとする方法で決めれば良い。好ましくは、50%を下回ったタイミングとする方法で決めるのが良い。
【0120】
そして圧延終了時(c)から、例えば、1〜3秒経過した時点を作業完了タイミング(時間軸上のd点)とし、このタイミングで、インクリースベンディング装置出力をIに、ディクリースベンディング装置出力をDに変更する。この変更でも、合力としての作業ロールベンディング力はロールバランス力(F)にほぼ維持される。
【0121】
図6、7に示すように、本発明に係る圧延方法では、圧延開始時および圧延終了時のロールベンディング力の変更を、応答性の高いインクリースベンディング装置を用いて行う。このために、比較的応答性の低いディクリースベンディング装置を配備せざるを得ない場合であっても、これを応答性の高いインクリースベンディング装置が補償するので、高応答かつ強力な板クラウン・形状制御機能を付与することができる。
【0122】
さらに、圧延中に種々の要因(外乱)により圧延荷重が変化する場合であっても、高応答なインクリースベンディング装置で、最適な作業ロールベンディング力を維持するように迅速に制御することが可能である。
【0123】
また、本発明に係る圧延機は、前述したように、カーブドロールシフトにより、板クラウン・形状制御を強力に行うことができるが、それに加えて、圧延途中における板クラウン・形状制御の調整も、この高応答かつ強力なインクリースベンディング装置で行うことができる。
【0124】
すなわち、本発明に係る圧延方法によれば、各パスの開始前に設定されるカーブドロールシフトの設定により、強力な板クラウン・形状制御をすることができる。そして、それに加えて、圧延開始後も、圧延材入側板厚や圧延材温度等の圧延途中に変動する外乱に対して、強力なインクリースベンディング装置で、広範囲の作業ロールベンディング力を追加負荷することができる。この追加負荷により、広範囲に板クラウン・形状制御を補償することが可能となる。その結果、良好な板クラウン・形状を造り込むことが可能で、ひいては、製品品質および歩留を大きく改善することができる。
【0125】
図8はディクリースベンディング装置の応答性が低い場合(特に反力が抜けると圧力が下がってしまう油圧特性を持つ場合)のロールベンディング力等の時系列変化を示す図である。図7と同様に、図6に示すインクリースベンディング装置とディクリースベンディング装置の操作フローに従い一本の圧延材に対する圧延操業に伴うロールベンディング力等の時系列変化を示している。すなわち、図6、7の場合に比べてディクリースベンディング装置の応答速度が遅い場合の例を示している。
【0126】
タイミングbおよびcにおいて応答性の高いインクリースベンディング装置の出力が急激に変化するため、応答性の悪いディクリースベンディング装置の出力が変動する。その結果、合力としての作業ロールベンディング力は、タイミングbでFに到達するのが遅れ、タイミングcでFに到達するのが遅れることになる。図9に示す圧延方法は、この問題を解決するものである。
【0127】
図9は、応答性の高いインクリースベンディング装置と応答性の低いディクリースベンディング装置を有する場合の操作フローを示す図である。以下、当該図に基づいて説明する。
【0128】
図9に示す圧延方法では、ディクリースベンディング装置に設置したロードセルでディクリースベンディング力を、あるいは該装置につながる油圧配管内の油圧を常時測定し、この測定値に基づいてインクリースベンディング装置を制御する。すなわち、圧延前後は作業ロールベンディング力がロールバランス力Fとなるように、圧延中は作業ロールベンディング力がFとなるように、インクリースベンディング装置の出力を、ディクリースベンディング力またはディクリースベンディング装置の油圧に応じて制御する。なお、これ以外の制御は図6に示す圧延方法と同様である。
【0129】
図9に示す圧延方法で圧延することで、図10に示すように、ディクリースベンディング装置の出力の変動をインクリースベンディング装置が補償して、作業ロールベンディング力を最適に、高応答な制御を実現することができる。
【0130】
また、圧延中のディクリースベンディング力の測定や、油圧測定によるフィードバック制御をしなくても、ディクリースベンディング装置の出力の変動を予め予測し、それを補償するインクリースベンディング装置の出力を設定することでも、同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0131】
次に、本発明を実施例でさらに説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0132】
(実施例1)
図4のロールシフト手段を有する、図1の本発明に係る圧延機で、板幅3800mm、板厚20mmの鋼板を、板厚16mmに圧延した。この場合における、板クラウンの制御範囲を調査した。なお、この圧延機のロール幅は4700mmである。
【0133】
また、圧延条件は次のとおりである。なお、イニシャルクラウン量は、図4で示したhである。
・圧延荷重:44.5MN(4540tf)
・作業ロールベンディング力:±3.4MN(±350tf/チョック)
・イニシャルクラウン量:2mm
・相互移動量(カーブドロールシフト量):200mm
【0134】
板クラウンの制御範囲を調査した結果を図16に示す。図16には、比較のために、図15に示した従来の圧延機で1.2〜2.0MN(120〜200tf/チョック)の作業ロールベンディング力を負荷したときの、板クラウンの制御範囲を調査した結果を付記した。従来の圧延機での圧延条件は、作業ロールベンディング力の大きさ以外は、本発明に係る圧延機での圧延条件と同一である。また、従来の圧延機では、ロールシフトおよびカーブドロールシフトのいずれも行っていない。
【0135】
板クラウンの制御範囲は、作業ロールベンディング効果、カーブドロールシフト効果に分けて調査した。
【0136】
なお、図16に示した本発明に係る圧延機の作業ロールベンディング効果において、無地で示す部分は、インクリースベンディング効果、斜線で示す部分は、ディクリースベンディング効果を示す。
【0137】
また、図16には、圧延荷重を±9.8MNの範囲で変化させたときの、板クラウンの制御範囲の調査結果も付記した。圧延時において、圧延荷重は±9.8MNの範囲で変化し得る。したがって、作業ロールベンディング効果を評価する際、作業ロールベンディング効果が、圧延荷重を±9.8MNの範囲で変化させたときの、板クラウンの制御範囲を超えるかどうかが判断基準の1つとなるからである。また、±9.8MNの範囲で圧延荷重が変化しても板クラウンを制御できれば、金属板長手方向の板厚差が、従来の圧延機では得ることができない大きさである差厚鋼板を製造することができるからである。
【0138】
図16から明らかなように、本発明に係る圧延機の作業ロールベンディング効果は、カーブドロールシフト効果と同等であることが確認できた。そして、本発明に係る作業ベンディング効果は、圧延荷重を±9.8MNの範囲で変化させたときの、板クラウンの制御範囲を超えていることを確認できた。一方、従来の圧延機の作業ロールベンディング効果は、本発明と比べて、約1/9であることを併せて確認できた。
【0139】
実施例1の圧延条件において、本発明に係る圧延機は、約850μmもの広範囲の板クラウン制御を、カーブドロールシフト効果で得ることができる。それに加え、作業ロールベンディング効果が、カーブドロールシフト効果と同等の約800μmという広範囲の板クラウン制御を圧延途中に追加することができる。したがって、本発明に係る圧延機は、カーブドロールシフト効果による板クラウン・形状制御に見合うだけの、圧延中のさまざまな外乱に容易に対応できることが確認できた。
【0140】
即ち、本発明に係る圧延機は、外乱の多い圧延環境においても、作業ロールベンディング力の追加負荷による板クラウンの広範囲の補償が可能である。したがって、カーブドロールシフトを行っても、圧延される金属板材の板クラウンや形状に関する品質を向上させることが容易であることが確認できた。
【0141】
一方、従来の圧延機のように、作業ロールベンディング効果による板クラウン制御範囲が約80μmと大変狭いことは、圧延中における外乱への対応が難しいことを意味する。したがって、外乱の多い圧延環境においては、従来の圧延機は、カーブドロールシフトを行うことは難しい。そして、その結果、従来の圧延機では、圧延される金属板材の板クラウンや形状に関する品質を向上させることが難しい。
【0142】
さらに、図16から明らかなように、本発明に係る圧延機では、ディクリースベンヂィング効果が大きいことも確認できた。
【0143】
(実施例2)
図4のロールシフト手段を有する、図1の本発明に係る圧延機で、板幅2200mm、板厚20mmの鋼板を、板厚16mmに圧延した。この場合における、板クラウンの制御範囲を調査した。なお、この圧延機のロール幅は4700mmである。
【0144】
圧延条件は次のとおりである。なお、イニシャルクラウン量は、図4で示したhである。
・圧延荷重:25.7MN(2630tf)
・作業ロールベンディング力:±3.4MN/チョック(±350tf/チョック)
・イニシャルクラウン量:2mm
・相互移動量(シフト量):200mm
【0145】
板クラウンの制御範囲を調査した結果を図17に示す。図17には、比較のために、図15に示した従来の圧延機で1.2〜2.0MN(120〜200tf/チョック)の作業ロールベンディング力を負荷したときの、板クラウンの制御範囲を調査した結果を付記した。従来の圧延機での圧延条件は、作業ロールベンディング力の大きさ以外は、本発明に係る圧延機での圧延条件と同一である。また、従来の圧延機では、ロールシフトおよびカーブドロールシフトのいずれも行っていない。
【0146】
また、図17には、圧延荷重を±7.8MNの範囲で変化させたときの、板クラウンの制御範囲の調査結果も付記した。圧延時において、圧延荷重は±7.8MNの範囲で変化し得る。したがって、作業ロールベンディング効果を評価する際、作業ロールベンディング効果が、圧延荷重を±7.8MNの範囲で変化させたときの、板クラウンの制御範囲を超えるかどうかが判断基準の1つとなるからである。また、±7.8MNの範囲で圧延荷重が変化しても板クラウンを制御できれば、金属板長手方向の板厚差が、従来の圧延機では得ることができない大きさである差厚鋼板を製造することができるからである。
【0147】
図17から明らかなように、本発明に係る圧延機の作業ロールベンディング効果は、カーブドロールシフト効果よりも高い。これは、実施例2では、実施例1と比べて、ロール幅に対して板幅が小さいので、カーブドロールシフト効果が低下するからである。そして、本発明に係る作業ベンディング効果は、圧延荷重を±7.8MNの範囲で変化させたときの、板クラウンの制御範囲を超えていることを確認できた。一方、従来の圧延機の作業ロールベンディング効果は、本発明に係る圧延機の作業ロールベンディング効果よりも著しく小さいことを確認できた。
【0148】
また、本発明に係る圧延機において、実施例2のように、ロール幅に対して板幅が小さい場合には、図16の斜線部に示すディクリースベンディング効果が、相対的に大きいことも併せて確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、鋼板の圧延、特に大開度を必要とするリバース圧延機などに利用することができる。
【符号の説明】
【0150】
1−1 上作業ロール
1−2 下作業ロール
2−1 上補強ロール
2−2 下補強ロール
3−1 上作業ロールチョック
3−2 下作業ロールチョック
4−1 上補強ロールチョック
4−2 下補強ロールチョック
5−1 入側プロジェクトブロック
5−2 出側プロジェクトブロック
5−3 入側下プロジェクトブロック
5−4 出側下プロジェクトブロック
6−1 入側上インクリースベンディング装置
6−2 出側上インクリースベンディング装置
6−3 入側下インクリースベンディング装置
6−4 出側下インクリースベンディング装置
7−1 入側上ディクリースベンディング装置
7−2 出側上ディクリースベンディング装置
7−3 入側下ディクリースベンディング装置
7−4 出側下ディクリースベンディング装置
8−1 入側補強ロールバランス装置
8−2 出側補強ロールバランス装置
9 ハウジング
10 被圧延材
11 圧下装置
12 ハウジングウィンドウ
20 ラジアルベアリング
21 スラストベアリング
30 ロールシフト手段
31 ロールシフト装置固定プレート
32 シフト駆動外シリンダー
33 シフト駆動内シリンダー
34 シフト駆動プランジャ
36 クランプ装置
38 回転駆動シリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上作業ロールと下作業ロールとからなる上下一対の作業ロールと、これらをそれぞれ支持する上下一対の補強ロールを有する金属板材の圧延機であって、
前記上下作業ロールにそれぞれインクリースベンディング力を負荷する油圧シリンダーが、圧延機ハウジングの内側に突出したプロジェクトブロックに配備され、
前記下作業ロール胴部に負荷される圧延方向力が、前記プロジェクトブロックと下作業ロールチョックとの接触面によって支持され、
前記上作業ロール胴部に負荷される圧延方向力が、前記プロジェクトブロックの上方に位置する圧延機ハウジングウィンドウと上作業ロールチョックとの接触面によって支持され、
前記上作業ロールと前記下作業ロールそれぞれが、同一形状の凹凸状のイニシャルクラウンを、互いに点対称となるべく付与され、かつ、
前記上作業ロールチョックと、前記下作業ロールチョックを、前記上下一対の作業ロールの軸方向で互いに相反する方向に相対移動させるロールシフト手段を有することを特徴とする金属板材の圧延機。
【請求項2】
前記上作業ロールにインクリースベンディング力を負荷する油圧シリンダーと、前記下作業ロールにインクリースベンディング力を負荷する油圧シリンダーとが、前記プロジェクトブロック内において平面図上で異なる位置に配備されていることを特徴とする請求項1に記載の金属板材の圧延機。
【請求項3】
前記上作業ロールにディクリースベンディング力を負荷する油圧シリンダーが、前記上補強ロールの上補強ロールチョックに配備されていることを特徴とする請求項1または2に記載の金属板材の圧延機。
【請求項4】
前記下作業ロールにディクリースベンディング力を負荷する油圧シリンダーが、前記下補強ロールの下補強ロールチョックまたは前記プロジェクトブロックの下方に設置する第2のプロジェクトブロックに配備されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属板材の圧延機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属板材の圧延機を用いて行う金属板材の圧延方法であって、
圧延開始前に、前記上下一対の作業ロールを、作業ロールの軸方向で互いに相反する方向に相対移動させ、板クラウン・形状制御を行い、
圧延途中の圧延状態の変動による、板クラウン・形状制御の調整は、前記上下作業ロールそれぞれインクリースベンディング力を負荷する油圧シリンダーで行うことを特徴とする金属板材の圧延方法。
【請求項6】
請求項3または4に記載の金属板材の圧延機を用いて行う金属板材の圧延方法であって、
圧延開始前に、インクリースベンディング力とディクリースベンディング力の双方を作用させ、合力としてロールバランス力に相当するロールベンディング力を作業ロールチョックに作用させ、
その後、圧延開始時に、ディクリースベンディング力を前記所定の圧延中ディクリースベンディング力を保持する制御を継続しつつインクリースベンディング力を変化させ、合力として所定の圧延中作業ロールベンディング力が作業ロールチョックに作用する状態にし、
圧延中は、前記所定の圧延中作業ロールベンディング力を維持するように圧延を行い、
その後、圧延終了時に、インクリースベンディング力を変化させ、ディクリースベンディング力との合力としてロールバランス力に相当するロールベンディング力を作業ロールチョックに作用させ、この状態で金属板材の圧延を終了することを特徴とする金属板材の圧延方法。
【請求項7】
前記ディクリースベンディング力を発生する油圧シリンダー内あるいは該油圧シリンダーにつながる油圧配管内の油圧を測定し、その測定値に基づき、合力として作業ロールチョックに作用するロールベンディング力が所定の値になるように前記インクリースベンディング力を制御することを特徴とする請求項6に記載の金属板材の圧延方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−152819(P2012−152819A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16552(P2011−16552)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】