説明

金属構造体、該金属構造体を含む反射光学素子、および該反射光学素子を備える表示素子

【課題】本発明は、化学的プロセスによって簡便・安価に製造することができ、且つ、歩留まりの高い新規な反射光学素子を提供することを目的とする。
【解決手段】ナノメートルオーダーの径を有する微細な突条がブラシ状に立設する金属構造体を光透過性の上部基板と下部基板との間に封入された電解液に浸漬し、当該電解液に電圧を印加すると、電圧印加のバイアス方向の変転に応答して、微細な突条の立体構造が変化し、これに伴って、その反射特性が高い応答性をもって変化する。本発明の金属構造体を反射光学素子として利用することによって、新規な発色メカニズムを有する反射型ディスプレイ、電子ペーパが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属構造体に関し、より詳細には、化学的プロセスによって簡便に製造することができるナノスケールの金属構造体、該金属構造体を含む反射光学素子、および該反射光学素子を備える表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノ構造の光干渉特性や光反射特性を利用したMicro Electro Mechanical Systems(MEMS)方式のディスプレイが注目されている。特開2006−99106号公報(特許文献1)は、そのような反射型のMEMSディスプレイを開示する。しかしながら、MEMSの微細加工には、フォトリソグラフィー技術が必須であるため、その製造において、設備コスト・エネルギーコストが過大になるという問題があった。また、従来のMEMSディスプレイの表示方式は、精密加工された構造体を利用する極めてメカニカルな機構によるものであったため、これに起因して歩留まりが低くなるという構造的な問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−99106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、化学的プロセスによって簡便・安価に製造することができ、且つ、歩留まりの高い新規な反射光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、化学的プロセスによって簡便・安価に製造することができ、且つ、歩留まりの高い新規な反射光学素子につき鋭意検討した結果、ナノメートルオーダーの径を有する微細な突条がブラシ状に立設する金属構造体に対して、電解液中、電圧を印加すると、電圧印加のバイアス方向の変転に応答して、その反射特性が高い応答性をもって変化する現象を発見し、本発明に至ったのである。
【0006】
すなわち、本発明によれば、基底部と、該基底部から多数形成される極細の突条部であって、静電場によってその立体構造が変化する突条部とを含む金属構造体が提供される。本発明においては、前記突条部の径を400nm以下とすることが好ましい。また、本発明においては、前記突条部は、前記基底部からブラシ状に立設することができる。さらに、本発明においては、前記金属構造体は、金、白金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、スズ、またはこれらの合金からなる群より選択される金属によって形成することができる。
【0007】
また、本発明によれば、上記金属構造体と、光透過性の上部基板と下部基板との間に封入された前記金属構造体を浸漬するための電解液と、該電解液に電圧を印加するための電圧印加手段とを備える反射光学素子が提供される。さらに、本発明によれば、上記反射光学素子を備える表示素子、該表示素子を備える反射型ディスプレイ、および電子ペーパが提供される。
【発明の効果】
【0008】
上述したように、本発明によれば、化学的プロセスによって簡便・安価に製造することができ、且つ、歩留まりの高い新規な反射光学素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の反射型ディスプレイを示す図。
【図2】本発明の金属構造体の反射特性変化について説明するための概念図。
【図3】本発明の金属構造体の製造方法を説明するための概念図。
【図4】本実施例の金属構造体のFE-SEM画像を示す図。
【図5】性能評価に使用した実験装置を示す図。
【図6】照射波長(nm)と反射率(Reflactance[%])の関係を示す図。
【図7】反射光学素子の色が変化する様子を撮影した写真。
【図8】反射率(%)と経過時間(s)の関係を示す図。
【図9】テンプレートの空孔直径(nm)と反射率の変化量(%)の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜、その説明を省略するものとする。
【0011】
図1は、本発明の金属構造体を含む反射光学素子を利用した反射型ディスプレイ10を示す。本実施形態の反射型ディスプレイ10は、複数の反射型表示画素12の集合体として構成されている。表示画素12は、入力信号に基づいて外部光の対する反射特性が変化するように構成されており、図1(a)に示す例においては、反射型ディスプレイ10は、高反射状態の表示画素12bと低反射状態の表示画素12dによって英文字「A」を表示している。
【0012】
図1(b)は、反射型ディスプレイ10の断面の拡大図を示す。図1(b)に示されるように、反射型ディスプレイ10は、下部基板14と光透過性の透明な上部基板16とが図示しないスペーサを挟んで対向配置されており、下部基板14と上部基板16との間には、電解液18が封入されている。下部基板14および上部基板16には、それぞれ、下部電極20およびITOなどの透明電極からなる上部電極22がマトリックス状に配設されている。さらに、本実施形態においては、下部電極20の上に反射光学素子として機能する金属構造体24が配設されている。
【0013】
図1(c)は、反射型ディスプレイ10の表示画素12が反射光学素子として備える金属構造体24の拡大図を示す。金属構造体24は、導電性の高い金属によって形成されており、基底部26と、該基底部26から上方に伸びるように多数形成された、アスペクト比の高い、微細な突条部28とを含んで構成されている。突条部28は、ナノメーターオーダーからマイクロメータオーダの微細な径を有する略円柱状の構造を備えており、ブラシ状に密集して基盤である基底部26から多数立設されている。また、基底部26は、下部電極20に当接して電気的に接続されている一方、基底部26と電気的に接続された突条部28は、上部電極22とは非接触な状態に維持されている。本実施形態の反射型ディスプレイ10においては、下部電極20と上部電極22との間に電圧が印加されることによって生じる静電場に対して、突条部28が動的挙動を示し、これに起因して各画素の反射特性が変化することによって画像が形成される。以下、この点について図2を参照して説明する。
【0014】
図2は、本発明の金属構造体24の反射特性変化について説明するための概念図である。図2(a)は、上部電極22に対して正電圧を印加した状態における金属構造体24を示す。金属構造体24は電解液18に浸漬しており、金属構造体24の突条部28と電解液18の界面には電気二重層が形成されているため、突条部28の表面はマイナスに帯電している。ここで、図2(a)においては、電極間にプラス電場が発生しているため、その表面がマイナスの帯電した突条部28は、クーロン引力によって上部電極22側に引きつけられ、その立体構造が変化する。すなわち、突条部28は、クーロン引力によって上部電極22に引きつけられて起き上がるような形になり、その結果、外部光に対する反射特性が変化する。図2(a)においては、電極間にプラス電場が発生している状態において、外部光における特定波長Lの反射率が高くなっている態様を示している。
【0015】
一方、図2(b)は、上部電極22に対して負電圧を印加した状態における金属構造体24を示す。図2(b)においては、電極間にマイナス電場が発生しているため、その表面がマイナスの帯電した突条部28は、今度は、上部電極22側からクーロン斥力を受けて、その立体構造が変化する。すなわち、突条部28は、図2(b)に示すように、下部電極20側に押し倒されるような形で変形し、その結果、外部光に対する反射特性が変化する。図2(b)においては、電極間に、マイナス電場が発生している状態において、外部光における特定波長Lの反射率が低くなっている態様を示している。
【0016】
上述したように、本実施形態の反射型ディスプレイ10においては、金属構造体24を含む複数の表示画素12に対して、電解液中で電圧を印加し、その印加電圧のバイアス方向を表示画素12毎に領域選択的に異ならせることによって、表示画素12の反射特性を領域選択的に変化させて画像を形成する。静電場に応答した突条部28の立体構造の変化によって、金属構造体24の反射特性が変化するメカニズムについては明らかではないが、本発明者らは、この反射特性の変化を、突条部28がナノメータスケールでその立体構造を変化させることに起因したブラッグ回折の発生に因るものと推測する。
【0017】
したがって、本発明においては、金属構造体24は、導電性が高く、且つ、延性・展性の高い金属によって形成することが好ましい。本発明においては、金属構造体24を、例えば、金、白金、銀、銅などの貴金属を用いて形成することができ、パラジウム、ニッケル、スズ等を用いて形成することもできる。また、本発明においては、その応答性の向上の観点から、突条部28の径をナノメーターオーダーにすることが望ましく、その径を250nm以下にすることが好ましく、100nm以下にすることがより好ましい。また、突条部28の径をナノメーターオーダーにすることによって、プラズモン散乱の作用により、バルク状態の金属では観察されない、より視認性の高い発色(ナノ構造色)を実現することもできる。以上、本発明の金属構造体を、これを含む反射光学素子を利用した反射型ディスプレイの実施形態をもって説明してきたが、次に、本発明の金属構造体の製造方法について、以下説明する。
【0018】
図3は、本発明の金属構造体の製造方法を説明するための概念図である。本発明の金属構造体は、多孔性のテンプレート材に対して金属を無電解めっきすることによって製造することができる。以下、図3を参照しながら、金属構造体を金(Au)によって製造する場合を例にとって説明する。まず、多孔性のテンプレート材30を用意する。テンプレート材30は、薄膜状または薄板状であって、その内部に上面から下面を貫通するナノメーターオーダの貫通微細孔32を多数備えるものであれば、どのような材質のものであってもよい。本発明においては、貫通微細孔が形成された多孔性のポリマーをテンプレート材とすることができ、例えば、テンプレート材として、ポリカーボネート、ポリエステル等を用いることができる。さらに、本発明においては、ポーラスアルミナ(陽極酸化アルミナ)をテンプレート材とすることもできる。
【0019】
本発明においては、テンプレート材30が備える貫通微細孔の開口形態を選択することによって、製造される金属構造体のベース色調を規定することができる。例えば、貫通微細孔32の長手方向がランダムに形成されているテンプレート材30を使用すると、製造される金属構造体において突条部28は不織布状になり、その発色は散乱光を多く含む柔らかい色調になる。一方、ポーラスアルミナ基板のように、貫通微細孔32の長手方向が揃っているテンプレート材30を使用すると、突条部28は剣山状になり、その発色は鋭い光沢色になる。
【0020】
次に、用意したテンプレート材30の一方の面にシート34を貼付して塞ぐ。テンプレート材30の一方を塞ぐことによって、貫通微細孔32の径が200nm以下であっても好適にその内部を無電解めっきすることが可能になる。
【0021】
続いて、シート34を貼付したテンプレート材30の外表面および貫通微細孔32の内壁面に対して、自己触媒作用を持つスズ、銀、パラジウムなどの触媒金属を析出・担持させた後、金めっき浴に浸漬する。すると、担持した触媒金属を核として金がめっきされ、貫通微細孔32の内部には金が充填される。最後に、テンプレート材30からシート34を剥がして除去し、テンプレート材30の成分を適切な溶媒を使用して洗浄・除去することによって、基底部26から多数の突条部28がブラシ状に立設されてなる金属構造体24が得られる。
【0022】
上述したように、本発明においては、化学的なプロセスによって、金属構造体のナノ構造を簡便に製造することができるため、従来のMEMS方式の表示素子に比べてその製造コストを格段に低減することができる。また、本発明の金属構造体を使用した反射光学素子は、その発色メカニズムが従来のMEMS方式のそれと根本的に相違し、製造上の誤差に対する許容度が格段に大きいため、製品の歩留まりが向上する。
【0023】
以上、本発明について反射型ディスプレイの実施形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の金属構造体を含む反射光学素子は、電子ペーパの表示素子に適用することができる他、光の反射特性の変化を利用するあらゆる光学系のモジュールに適用することができる。その他、当業者が推考しうる実施態様の範囲内において、本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の金属構造体について、実施例を用いてより具体的に説明を行なうが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。
【0025】
(金属構造体の作製)
本実施例の金属構造体を以下の手順で作製した。なお、以下の作製手順は、全て、276Kの温度条件下で行なった。まず、無電解めっきの触媒金属溶液として、下記(1)〜(4)の溶液を調製した。
【0026】
(1)メタノール150mlに塩化スズ1.5g(0.022M)溶かし、攪拌しながら純水150mlを加え、さらにトリフルオロ酢酸1.5ml(0.07M)加えて溶液Aを得た。
(2)硝酸銀1.8g(0.035M)を純水300mlに溶かし、25%アンモニア水溶液を攪拌しながら加えて溶液Bを得た。
(3)0.05%PdCl/2%塩酸溶液(溶液C)を調製した。
(4)炭酸水素ナトリウム0.21g(0.025M)と亜硫酸ナトリウム1.6g(0.127M)を純水100mlに溶かして溶液Dを得た。
【0027】
次に、テンプレートとして、空孔直径220 nmのポリカーボネート膜(GE Osmonics Labstore社、K02CP04700)を用意し、当該ポリカーボネート膜(以下、PC膜として参照する)をメタノールに浸漬して超音波洗浄器で洗浄した。洗浄したPC膜を溶液Aに45分間浸漬したのち、純水で洗浄し、PC膜の片面に液晶保護フィルム(イノマタ化学株式会社製)を貼り付けて塞いだ。片面を液晶保護フィルムで塞いだPC膜を溶液Bに7分30秒浸漬したのち、純水で洗浄し、さらに、溶液Cに5分間浸したのち、純水で洗浄した。
【0028】
溶液DがpH9以下であることを確認したのち、これにホルマリン5ml(0.67M)とSodium Gold Sulfite(金溶液)6ml(0.39 gに相当)を攪拌しながら加えた。その後、当該溶液に1M硫酸を添加してpH10に調整した金めっき溶液に、片面を液晶保護フィルムで塞いだPC膜を浸漬し、約55時間無電解めっきを行なった。
【0029】
その後、金めっきされたPC膜(以下、金めっき膜として参照する)を24時間、純水で浸漬洗浄した後、金めっき膜の片面を塞いでいた液晶保護フィルムを剥がした。さらに、金めっき膜に付着した金以外の金属を除去するために、金めっき膜を25%硝酸水溶液に3時間浸漬し、5時間純水に浸漬洗浄したのち、室温で乾燥させた。
【0030】
紫外線硬化樹脂を使用して金めっき膜(1cm×2cm)をスライドガラスに固定した。これをクロロホルムに約30分間浸漬して、テンプレート成分を除去したのち、最後に室温で乾燥させて、本実施例の金属構造体を得た。
【0031】
上述した手順で作製した金属構造体(金めっき膜)にイオンマイルドスパッタ(E-1030,HITACHI)でPtを6 nmスパッタした後、電界放射型走査型電子顕微鏡(Field Emission scanning electron microscope S-5000,HITACHI)で観察を行った。図4は、上述した手順で作製した本実施例の金属構造体のFE-SEM画像を示す。図4(a)および(b)に示されるように、金属構造体の表面には、直径220 nmの円柱状の構造体(金)が無数に林立していることが確認された。
【0032】
(反射光学素子としての性能評価)
上述した手順で作製した金属構造体を使用して反射光学素子を作製し、以下の手順で、その性能評価を行なった。図5は、性能評価に使用した実験装置50を示す。スライドガラス52に固定した金属構造体54の上にシリコンオーリング56を載置し、シリコンオーリング56の内側に電解溶液58を滴下したのち、上から、ITO透明電極60、ガラス基板62の順で載置して電解溶液58を封入したものを本実施例の反射光学素子70とした。なお、本実験においては、電解溶液58として、過塩素酸リチウム0.1 Mを炭酸プロピレンに溶かしたものを用いた。また、金属構造体54とITO透明電極60とをDC電源64に接続して、両電極間に電圧を印加し、スイッチング・デバイス66によって電極間に印加する電圧のバイアス方向を切り換えた。
【0033】
上述した構成を備える反射光学素子70に対して、光照射装置68(EX250UV LIGHT SOURCE ,HOYA-SCHOTT)を使用して光プローブ72から光を照射した。同時に、電極間に1.5Vの電圧を印加し、分光光度計74を使用して光の反射率の変化について測定した。
【0034】
図6は、照射した光の波長(nm)と反射率(Reflactance[%])の関係を示し、ITO透明電極60に対し正電圧を印加した場合(+)と、負電圧を印加した場合(−)とを併せて示す。なお、図6における反射率は、電圧を印加していない状態で測定された反射率を100%として換算した(以下、図8においても同様)。図6に示されるように、印加電圧のバイアス方向の変転に伴う反射率の変化量は、波長410 nmおよび波長600 nm において極大値を示し、波長410 nmにおける変化量は、約7%であった。
【0035】
図7は、印加電圧のバイアス方向の変転に伴って反射光学素子70の色が変化する様子を撮影した写真であり、図7(a)は、ITO透明電極60に対し正電圧を印加した場合(+)における反射光学素子70を示し、図7(b)は、ITO透明電極60に対し負電圧を印加した場合(−)における反射光学素子70を示す。図7に示されるように、本実施例の反射光学素子70においては、可視光領域の波長の光について、人間が視認しうる量的レベルで反射率の変化が生じていることが確認された。
【0036】
さらに、反射光学素子70について、反射率変化の時間応答性について検証した。具体的には、印加電圧のバイアス方向を7秒毎に切り換えることを繰り返し、その間の反射光学素子70の反射率を経時的に測定した。図8は、波長410nmおよび波長600nmのそれぞれの波長光における反射率(%)と経過時間(s)の関係を示す。印加電圧のバイアス方向を5760 回切り換えた結果、切り換えタイミングに対する反射率変化の平均遅延時間は82 ms であり、5760 回の試行を通して、常時、安定した時間応答性を示した。
【0037】
さらに、空孔直径の異なるPC膜をテンプレートとして用いて作製した金属構造体を使用して5種類の反射光学素子(空孔直径:800nm,600nm,400nm,220nm,100nm)のサンプルを作製し、各サンプルについて、波長650nmの反射率の変化量(%)を上述したのと同様の手順で測定した。図9は、使用したテンプレートの空孔直径(nm)と反射率の変化量(%)の関係を示す。図9に示されるように、テンプレートの空孔直径(すなわち、金属構造体のロッドの直径)が400nm以下になると反射率の変化量(%)が大きくなり、空孔直径が220nm以下になると、反射率の変化量(%)が格段に大きくなることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上、説明したように、本発明によれば、化学的プロセスによって簡便・安価に製造することができ、且つ、歩留まりの高い新規な反射光学素子が提供される。本発明の反射光学素子によって、反射型ディスプレイ方式における新たなパラダイムの展開が期待される。
【符号の説明】
【0039】
10…反射型ディスプレイ、12…表示画素、14…下部基板、16…上部基板、18…電解液、20…下部電極、22…上部電極、24…金属構造体、26…基底部、28…突条部、30…テンプレート材、32…貫通微細孔、34…シート、50…実験装置、52…スライドガラス、54…金属構造体、56…シリコンオーリング、58…電解溶液、60…ITO透明電極、62…ガラス基板、64…DC電源、66…スイッチング・デバイス、68…光照射装置、70…反射光学素子、72…光プローブ、74…分光光度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基底部と、該基底部から多数形成され、静電場によって立体構造が変化する突条部とを含む金属構造体。
【請求項2】
前記突条部の径が、400nm以下である、請求項1に記載の金属構造体。
【請求項3】
前記突条部は、前記基底部からブラシ状に立設する、請求項1または2に記載の金属構造体。
【請求項4】
前記金属構造体は、金、白金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、スズ、またはこれらの合金からなる群より選択される金属によって形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属構造体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属構造体と、光透過性の上部基板と下部基板との間に封入された前記金属構造体を浸漬するための電解液と、該電解液に電圧を印加するための電圧印加手段とを備える、反射光学素子。
【請求項6】
請求項5に記載の反射光学素子を備える表示素子。
【請求項7】
請求項5に記載の反射光学素子を表示素子として備える、反射型ディスプレイ。
【請求項8】
請求項5に記載の反射光学素子を表示素子として備える、電子ペーパ。
【請求項9】
外部光を利用する画像形成方法であって、
基底部と、該基底部から多数形成され、静電場によって立体構造が変化する突条部とを含む金属構造体に対して、電解液中で電圧を印加し、その印加電圧のバイアス方向を領域選択的に異ならせることによって、前記金属構造体の反射特性を領域選択的に変化させて画像を形成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−237448(P2010−237448A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85480(P2009−85480)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 東京工芸大学卒業研究論文発表会 平成20年度(2008年度)にて発表、主催者は東京工芸大学、開催日は2009年2月19日(木)、20(金)
【出願人】(597040902)学校法人東京工芸大学 (28)
【Fターム(参考)】