説明

金属用研磨液及び研磨方法

【課題】層間絶縁膜の研磨速度が大きく、被研磨面に研磨傷を発生させず、被研磨面の平坦性が高い金属用研磨液を提供する。
【解決手段】砥粒、酸化金属溶解剤及び水を含有した金属用研磨液であって、前記砥粒が、平均2次粒径が異なる砥粒を2種類以上含む。また、前記砥粒の平均2次粒径が1〜1000nmであることを特徴とする金属用研磨液。及び前記砥粒が、平均2次粒径5〜39nmの第一の砥粒と平均2次粒径40〜300nmの第二の砥粒とを含むことを特徴とする金属用研磨液を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属用研磨液及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(以下、LSIと記す)の高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(以下、CMPと記す)法もその一つであり、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線形成において頻繁に利用される技術である。この技術は、例えば米国特許第4944836号明細書に開示されている。
【0003】
また、最近はLSIを高性能化するために、配線材料となる導電性物質として銅又は銅合金の利用が試みられている。しかし、銅又は銅合金は、従来のアルミニウム合金配線の形成で頻繁に用いられたドライエッチング法による微細加工が困難である。そこで、あらかじめ溝を形成してある絶縁膜上に銅又は銅合金の薄膜を堆積して埋め込み、溝部以外の前記薄膜をCMPにより除去して埋め込み配線を形成する、いわゆるダマシン法が主に採用されている。この技術は、例えば特開平2−278822号公報に開示されている。
【0004】
銅又は銅合金等の配線部用金属を研磨するCMPの一般的な方法は、円形の研磨定盤(プラテン)上に研磨パッドを貼り付け、研磨パッド表面を金属用研磨液で浸し、基板の金属膜を形成した面を押し付けて、研磨パッドの裏面から所定の圧力(以下、研磨圧力と記す)を加えた状態で研磨定盤を回し、研磨液と金属膜の凸部との機械的摩擦によって凸部の金属膜を除去するものである。
【0005】
CMPに用いられる金属用研磨液は、一般には酸化剤、砥粒及び水からなっており、必要に応じてさらに酸化金属溶解剤、金属防食剤等が添加される。まず酸化剤によって金属膜表面を酸化して酸化層を形成し、その酸化層を砥粒によって削り取るのが基本的なメカニズムと考えられている。凹部の金属膜表面の酸化層は研磨パッドにあまり触れず、砥粒による削り取りの効果が及ばないので、CMPの進行とともに凸部の金属膜が除去されて基板表面は平坦化される。この詳細についてはジャ−ナル・オブ・エレクトロケミカルソサエティ誌の第138巻11号(1991年発行)の3460〜3464頁に開示されている。
【0006】
CMPによる研磨速度を高める方法として、酸化金属溶解剤を添加することが有効とされている。砥粒によって削り取られた金属酸化物の粒を研磨液に溶解させてしまうと、砥粒による削り取りの効果が増すためであると解釈できる。酸化金属溶解剤の添加によりCMPによる研磨速度は向上するが、一方、凹部の金属膜表面の酸化層も溶解されて金属膜表面が露出すると、酸化剤によって金属膜表面がさらに酸化され、これが繰り返されると凹部の金属膜の溶解が進行してしまう。このため研磨後に埋め込まれた金属配線の表面中央部分が皿のように窪む現象(以下、「ディッシング」と記す)が発生し、平坦化効果が損なわれる。
【0007】
これを防ぐために金属用研磨液にさらに金属防食剤が添加される。金属防食剤は金属膜表面の酸化層上に保護膜を形成し、酸化層がエッチングされるのを防止するものである。
【0008】
この保護膜は砥粒により容易に削り取ることが可能で、CMPによる研磨速度を低下させないことが望まれる。
【0009】
金属膜のディッシングやエッチングを抑制し、信頼性の高いLSI配線を形成するために、グリシン等のアミノ酢酸又はアミド硫酸からなる酸化金属溶解剤及び金属防食剤としてベンゾトリアゾールを含有する金属用研磨液を用いる方法が提唱されている。この技術は、例えば特開平8−83780号公報に記載されている。
【0010】
銅又は銅合金等の配線部用金属の下層には、層間絶縁膜中への金属の拡散防止や層間絶縁膜との密着性向上のためにバリア層として、例えば、タンタル、タンタル化合物等の導体からなる層が形成される。したがって、銅又は銅合金などの配線部用金属を埋め込む配線部分以外では、露出したバリア層をCMPにより取り除く必要がある。しかし、これらのバリア層の導体は、銅又は銅合金に比べ硬度が高いために、銅又は銅合金用の研磨材料の組み合わせでは十分な研磨速度が得られず、かつ被研磨面の平坦性が悪くなる場合が多い。そこで、銅又は銅合金などの配線部用金属を研磨する第1のCMP研磨工程と、バリア層を研磨する第2のCMP研磨工程からなる2段階の研磨方法が検討されている。
【0011】
バリア層を研磨する第2のCMP研磨工程で用いる金属用研磨液には、被研磨面の平坦化を向上するために、層間絶縁膜であるシリコン系被膜または有機ポリマ膜を研磨することが要求される場合がある。層間絶縁膜の研磨速度を向上させるために、金属用研磨液に含まれる砥粒の粒径を大きくして研磨を行う方法が提案されているが、被研磨面に研磨傷が発生して電気特性不良の原因になるという問題がある。また、このような電気特性不良は、CMP後の洗浄不足により発生するといった問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、層間絶縁膜の研磨速度が大きく、被研磨面に研磨傷を発生させず、被研磨面の平坦性が高い金属用研磨液を提供することを目的とする。また、この金属用研磨液を使用して、微細化、薄膜化、寸法精度及び電気特性に優れ、信頼性が高く、低コストの半導体デバイスに好適な研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、(1)砥粒、酸化金属溶解剤及び水を含有した金属用研磨液であって、前記砥粒が、平均2次粒径が異なる砥粒を2種類以上含むことを特徴とする金属用研磨液に関する。
【0014】
また、本発明は、(2)前記砥粒の平均2次粒径が1〜1000nmであることを特徴とする前記(1)記載の金属用研磨液に関する。
【0015】
また、本発明は、(3)前記砥粒が、平均2次粒径5〜39nmの第一の砥粒と平均2次粒径40〜300nmの第二の砥粒とを含むことを特徴とする前記(1)記載の金属用研磨液に関する。
【0016】
また、本発明は、(4)前記砥粒が、平均1次粒径2〜100nmの砥粒を含むことを特徴とする前記(1)記載の金属用研磨液に関する。
【0017】
また、本発明は、(5)pHが2〜5である前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の金属用研磨液に関する。
【0018】
また、本発明は、(6)前記砥粒が、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア及びゲルマニアから選ばれる少なくとも1種である前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の金属用研磨液に関する。
【0019】
また、本発明は、(7)前記酸化金属溶解剤が、有機酸、有機酸エステル、有機酸のアンモニウム塩及び無機酸から選ばれる少なくとも1種である前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の金属用研磨液に関する。
【0020】
また、本発明は、(8)さらに金属の酸化剤を含有した前記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の金属用研磨液に関する。
【0021】
また、本発明は、(9)前記金属の酸化剤が、過酸化水素、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸及びオゾン水から選ばれる少なくとも1種である前記(8)記載の金属用研磨液に関する。
【0022】
また、本発明は、(10)さらに金属防食剤を含有した前記(1)〜(9)のいずれか一つに記載の金属用研磨液に関する。
【0023】
また、本発明は、(11)さらに有機溶媒を含有した前記(1)〜(10)のいずれか一つに記載の金属用研磨液に関する。
【0024】
また、本発明は、(12)前記有機溶媒がグリコールエーテル化合物、アルコール化合物及びカーボネート化合物から選ばれる少なくとも1種である前記(11)記載の金属用研磨液に関する。
【0025】
また、本発明は、(13)重量平均分子量が500以上のポリマをさらに含有した前記(1)〜(12)のいずれか一つに記載の金属用研磨液に関する。
【0026】
また、本発明は、(14)金属用研磨液によって研磨される被研磨膜が、導電性物質層及び金属バリア層を含む被研磨膜である前記(1)〜(13)のいずれか一つに記載の金属用研磨液に関する。
【0027】
また、本発明は、(15)金属用研磨液によって研磨される被研磨膜が、導電性物質層及び層間絶縁膜を含む被研磨膜である前記(1)〜(13)のいずれか一つに記載の金属用研磨液に関する。
【0028】
また、本発明は、(16)金属用研磨液によって研磨される被研磨膜が、金属バリア層及び層間絶縁膜を含む被研磨膜である前記(1)〜(13)のいずれか一つに記載の金属用研磨液に関する。
【0029】
また、本発明は、(17)金属用研磨液によって研磨される被研磨膜が、導電性物質層、金属バリア層及び層間絶縁膜を含む被研磨膜である前記(1)〜(13)のいずれか一つに記載の金属用研磨液に関する。
【0030】
また、本発明は、(18)前記導電性物質層が、銅、銅合金、銅の酸化物及び銅合金の酸化物から選ばれる少なくとも1種である前記(14)、(15)又は(17)のいずれか一つに記載の金属用研磨液に関する。
【0031】
また、本発明は、(19)前記金属バリア層が、タンタル、タンタル化合物、チタン、チタン化合物、タングステン、タングステン化合物、ルテニウム、ルテニウム化合物、銅とマンガンとの合金、銅とマンガンと酸化ケイ素との合金から選ばれる少なくとも1種からなる1層、又は2層以上の積層である、前記(14)、(16)又は(17)のいずれか一つに記載の金属用研磨液に関する。
【0032】
また、本発明は、(20)前記層間絶縁膜が、シリコン系被膜または有機ポリマ膜である前記(15)〜(17)のいずれか一つに記載の金属用研磨液に関する。
【0033】
また、本発明は(21)前記砥粒は、金属用研磨液の総量100質量部に対して、0.001〜50質量部である前記(1)〜(20)のいずれか一つに記載の金属用研磨液に関する。
【0034】
また、本発明は(22)導電性物質層と層間絶縁膜の研磨速度比が0.72以下である前記(15)、(17)〜(21)のいずれか一つに記載の金属用研磨液に関する。
【0035】
また、本発明は、(23)研磨定盤の研磨布上に前記(1)〜(22)のいずれか一つに記載の金属用研磨液を供給しながら、被研磨膜を有する基板を研磨布に押圧した状態で研磨定盤と基板を相対的に動かすことによって被研磨膜を研磨する研磨方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の金属用研磨液を用いた研磨工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明における被研磨物は、第1のCMP研磨工程を経たパターン基板である。すなわち、表面が凹部及び凸部からなる層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を表面に沿って被覆する金属バリア層と、前記凹部を充填して金属バリア層を被覆する導電性物質層とを有する基板の導電性物質層を第1のCMP研磨工程により研磨して、前記凸部の金属バリア層を露出させ、前記凹部の導電性物質層が残存してなる所望のパターン基板である。本発明の金属用研磨液は、第2のCMP研磨工程に用いるものである。
【0038】
本発明の金属用研磨液は、砥粒、酸化金属溶解剤及び水を含有した金属用研磨液であって、前記砥粒が平均2次粒径の異なる砥粒を2種類以上含んでなることを特徴とする。本発明では、必要に応じて、金属の酸化剤、金属防食剤、有機溶媒、重量平均分子量が500以上のポリマを添加してもよい。
【0039】
本発明の金属用研磨液で用いられる砥粒は、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア、ゲルマニア、炭化珪素等の無機物砥粒、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリ塩化ビニル等の有機物砥粒などが挙げられる。これらのなかでも、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア、ゲルマニアが好ましく、シリカまたはアルミナがより好ましく、コロイダルシリカまたはコロイダルアルミナが特に好ましい。
【0040】
金属用研磨液中での分散安定性が良く、CMPにより発生する研磨傷(スクラッチ)の発生数が少ない点で、平均2次粒径が1〜1000nmの砥粒が好ましく、平均2次粒径が3〜300nmの砥粒がより好ましく、平均2次粒径が1〜1000nmのコロイダルシリカまたはコロイダルアルミナがさらにより好ましく、平均2次粒径が3〜300nmのコロイダルシリカまたはコロイダルアルミナが特に好ましい。
【0041】
本発明では、前記砥粒の平均2次粒径が異なる砥粒を2種類以上含むことを特徴としており、それによって層間絶縁膜の研磨速度を向上させることができる。平均2次粒径が異なる砥粒を2種類以上含む砥粒の好ましい一例として、平均2次粒径が5〜39nmの第一の砥粒と平均2次粒径が40〜300nmの第二の砥粒とを含む砥粒が挙げられる。より好ましい一例として、平均2次粒径が10〜39nmの第一の砥粒と平均2次粒径が40〜150nmの第二の砥粒とを含む砥粒が挙げられる。さらにより好ましい一例として、平均2次粒径が12〜39nmの第一の砥粒と平均2次粒径が40〜90nmの第二の砥粒とを含む砥粒が挙げられる。砥粒は、平均2次粒径が異なる2種だけでなく、3種以上含むことも好ましい形態であり、その場合は、平均2次粒径が小さい順から、第一の砥粒、第二の砥粒、第三の砥粒・・・と定義する。なお、第三の砥粒等を加えた場合も個々の平均2次粒径及び砥粒全体の平均2次粒径が1〜1000nmであることが好ましい。前記範囲の平均2次粒径を有する砥粒を2種類以上組み合わせることによって、研磨中、砥粒が被研磨面と接触する際、細密充填の状態となることから、層間絶縁膜絶縁膜の研磨速度をより向上させることができ、且つ研磨傷の発生を防止することができる。平均2次粒径が異なる2種類以上の砥粒は、同じ種類の砥粒の組合せでも、異なる種類の砥粒の組合せでもよい。
【0042】
平均2次粒径が異なる2種の砥粒を用いる場合、第一の砥粒の平均2次粒径が5nm以下の砥粒である場合は、層間絶縁層に対して十分な研磨速度が得られない可能性がある。また、第二の砥粒の平均2次粒径が300nm以上の砥粒では、分散性が悪化し、また研磨傷を発生する可能性を有し、この観点で第二の砥粒の平均2次粒径の最大値は150nm以下が好ましく、90nm以下が特に好ましい。
【0043】
本発明で用いられる砥粒は、平均2次粒径が異なる砥粒を2種類以上含む砥粒であるが、平均2次粒径が大きい第二の砥粒の含有量が多い方が好ましい。例えば、砥粒全体に対して、平均2次粒径5〜39nmの第一の砥粒1〜50質量%と平均2次粒径40〜300nmの第二の砥粒50〜99質量%とを含む砥粒が好適である。前記平均2次粒径5〜39nmの第一の砥粒が1質量%未満である場合は、層間絶縁膜として用いるオルガノシリケートグラス又は二酸化ケイ素を形成したブランケット基板の研磨速度が小さい傾向にある。また、50質量%を超える場合も層間絶縁膜として用いるシリコン系被膜や有機ポリマ膜を形成したブランケット基板の研磨速度が小さい傾向にある。
【0044】
また、平均2次粒径が異なる砥粒を3種以上で含有する場合は、平均2次粒径1〜1000nmの範囲の大きい砥粒を多く含むことが、機械的作用が大きくなり研磨速度が大きくなる点から好ましい。
【0045】
本発明において、砥粒の平均1次粒径は2〜100nmが好ましい。より好ましくは、砥粒の1次平均粒径が5〜40nm、さらに好ましくは2〜39nmである。砥粒の平均1次粒径が2nm未満であると、層間絶縁膜の研磨速度が低下する傾向がある。一方、砥粒の平均1次粒径が100nmを超えると、傷が増加する傾向がある。
【0046】
平均2次粒径の測定法は、特に制限はないが、既存の平均2次粒径の測定法が挙げられ、特に動的散乱法に基づいたサブミクロン粒子アナライザーを用いて測定することができる。平均1次粒径の測定法は、特に制限はないが、既存の平均1次粒径の測定法が挙げられ、例えば、TEMやSEM写真を実測する方法が挙げられる。また、BET比表面積を測定しそれを換算する方法(比表面積換算法)でも良い。
【0047】
なお、本発明において「平均2次粒径」とは、一次粒子が凝集して二次粒子を形成したものの平均粒径である。「平均1次粒径」とは、一次粒子の平均粒径である。
【0048】
砥粒として好適なコロイダルシリカは、シリコンアルコキシドの加水分解または珪酸ナトリウムのイオン交換による公知の製造方法により得ることが出来、粒径制御性やアルカリ金属不純物の点で、シリコンアルコキシドの加水分解による製造方法によるものが最も利用される。シリコンアルコキシドとしては、TEMS(テトラメトキシシラン)又はTEOS(テトラエトキシシラン)が一般に用いられる。アルコール溶媒中で加水分解する方法において、粒径に影響するパラメータとしては、シリコンアルコキシドの濃度、触媒として用いられるアンモニア濃度とpH、反応温度、アルコール溶媒の種類(分子量)及び反応時間などがある。これらのパラメータを調整することによって、所望の粒径及び凝集度のコロイダルシリカ分散液を得ることができる。また、コロイダルアルミナは硝酸アルミニウムの加水分解による公知の製造方法により得ることが出来る。
【0049】
本発明で用いる酸化金属溶解剤は、特に制限はないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコ−ル酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等の有機酸、これらの有機酸エステルが挙げられ、特にアミノ基を含まない酸化金属溶解剤であることが好ましい。アミノ基を含む酸化金属溶解剤ではpHが中性領域となり、pHを低く調節するのが困難となる可能性が高く、pHが中性領域では十分な金属類(金属バリア層及び/又は導電性物質層)の研磨速度が得られない可能性がある。本発明で用いる酸化金属溶解剤としては、上記有機酸のアンモニウム塩等が挙げられ、また塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、これら無機酸のアンモニウム塩類、例えば過硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム等、クロム酸等が挙げられる。これらの中では、実用的なCMP速度を維持しつつ、エッチング速度を効果的に抑制できるという点でギ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などの有機酸が好ましく、銅、銅合金、銅の酸化物及び銅合金の酸化物から選ばれた少なくとも1種を含む導電性物質層に対してより好適に用いられる。これらは1種類単独で、もしくは2種類以上混合して用いることができる。
【0050】
本発明の金属用研磨液のpHは特に制限はないが、好ましくは2〜5、より好ましくは2〜4である。前記pHが2未満である場合は、導電性物質層の金属の腐食が進行し配線抵抗の悪化を招く可能性がある。前記pHが5を超える場合は、導電性物質層の研磨速度が十分に得られない場合がある。
【0051】
本発明の金属用研磨液は金属の酸化剤を含有することができる。金属の酸化剤としては、特に制限されず、例えば、過酸化水素(H)、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸、オゾン水等が挙げられる。これらのなかでも、過酸化水素が特に好ましい。これらは1種類単独で、もしくは2種類以上混合して用いることができる。
【0052】
本発明の金属用研磨液が適用される基板が集積回路用素子を含むシリコン基板である場合、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物などによる汚染は望ましくないので、不揮発成分を含まない酸化剤が望ましい。但し、オゾン水は時間の経過と共に組成が激しく変化するので、過酸化水素が最も適している。但し、適用対象の基板が半導体素子を含まないガラス基板などである場合は不揮発成分を含む酸化剤であっても差し支えない。
【0053】
本発明の金属用研磨液は金属防食剤を含有することができる。金属防食剤としては、特に制限されず、例えば、トリアゾール骨格を有する化合物、ピラゾール骨格を有する化合物、ピリミジン骨格を有する化合物、イミダゾール骨格を有する化合物、グアニジン骨格を有する化合物、チアゾール骨格を有する化合物などが挙げられる。
【0054】
トリアゾール骨格を有する化合物としては、例えば、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール、2,3−ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾール、4−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾール、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾールメチルルエステル、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾールブチルエステル、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾールオクチルエステル、5−ヘキシルベンゾトリアゾール、[1,2,3−ベンゾトリアゾリル−1−メチル][1,2,4−トリアゾリル−1−メチル][2−エチルヘキシル]アミン、トリルトリアゾール、ナフトトリアゾール、ビス[(1−ベンゾトリアゾリル)メチル]ホスホン酸等が挙げられる。
【0055】
ピラゾール骨格を有する化合物としては、例えば、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ピラゾロン、3−アミノ−5−メチルピラゾール、3−アミノ−5−ヒドロキシピラゾール、3−アミノ−5−メチルピラゾール等が挙げられる。
【0056】
ピリミジン骨格を有する化合物としては、例えば、ピリミジン、1,2,4−トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン、1,3−ジフェニル−ピリミジン−2,4,6−トリオン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、2,4,5,6−テトラアミノピリミジンスルファート、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4,6−トリクロロピリミジン、2,4,6−トリメトキシピリミジン、2,4,6−トリフェニルピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシルピリミジン、2,4−ジアミノピリミジン、2−アセトアミドピリミジン、2−アミノピリミジン、2−メチル−5,7−ジフェニル−(1,2,4)トリアゾロ(1,5−a)ピリミジン、2−メチルスルファニリル−5,7−ジフェニル−(1,2,4)トリアゾロ(1,5−a)ピリミジン、2−メチルスルファニリル−5,7−ジフェニル−4,7−ジヒドロ−(1,2,4)トリアゾロ(1,5−a)ピリミジン、4−アミノピラゾロ[3,4−d]ピリミジン等が挙げられる。
【0057】
イミダゾール骨格を有する化合物としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−アミノイミダゾール、メルカプトベンゾイミダゾール等が挙げられる。
【0058】
グアニジン骨格を有する化合物としては、例えば、1,3−ジフェニルグアニジン、1−メチル−3−ニトログアニジン等が挙げられる。
【0059】
チアゾール骨格を有する化合物としては、例えば、2−アミノチアゾール、4,5−ジメチルチアゾール、2−アミノ−2−チアゾリン、2,4−ジメチルチアゾール、2−アミノ−4−メチルチアゾール等が挙げられる。
【0060】
これらのなかでも、トリアゾール骨格を有する化合物が好ましく、ベンゾトリアゾールが特に好ましい。また、これら金属防食剤は1種類単独で、もしくは2種類以上混合して用いることができる。
【0061】
本発明の金属用研磨液は有機溶媒を含有することができる。有機溶媒としては、特に制限されず、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート化合物;ブチロラクトン、プロピロラクトン等のラクトン化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール化合物;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ポリエチレンオキサイド、エチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、イソプロパノール等のアルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;その他フェノール;ジメチルホルムアミド;n−メチルピロリドン;酢酸エチル;乳酸エチル;スルホラン;等が挙げられる。
【0062】
本発明の金属用研磨液は重量平均分子量が500以上のポリマを含有することができる。前記重量平均分子量は、より好ましくは1500以上、特に好ましく5000以上である。重量平均分子量の上限は特に規定するものではないが、溶解性の観点から500万以下である。重量平均分子量が500未満では、金属への保護効果が高すぎるために金属バリア層に対する高い研磨速度が発現しない傾向にある。本発明では、重量平均分子量が500以上である少なくとも1種以上の水溶性ポリマを用いることが好ましい。かかる重量平均分子量が500以上のポリマとしては、特に制限されず、例えば、アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、カードラン及びプルラン等の多糖類;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p−スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩及びポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸及びその塩;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクロレイン等のビニル系ポリマ;等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上混合して用いることができる。
【0063】
但し、本発明の金属用研磨液を適用する基板が半導体集積回路用シリコン基板などの場合はアルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物等による汚染は望ましくないため、前記ポリマはアルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物を含まないものが好適であり、ペクチン酸、寒天、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン、それらのエステル及びそれらのアンモニウム塩などが特に好ましい。但し、基板がガラス基板などである場合はその限りではない。
【0064】
前記ポリマの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレンの検量線を用いて測定することができる。
【0065】
本発明で用いる砥粒の配合量は、砥粒、酸化金属溶解剤、及び水の総量100質量部に対して、好ましくは0.001〜50質量部、より好ましくは0.01〜45質量部、特に好ましくは0.1〜40質量部である。前記砥粒の配合量が0.001質量部未満である場合は、層間絶縁膜として用いるシリコン系被膜や有機ポリマ膜を形成したブランケット基板の研磨速度が小さい傾向にある。前記砥粒の配合量が50質量部を超える場合は、研磨傷が多く発生する傾向にある。
【0066】
本発明で用いる酸化金属溶解剤の配合量は、砥粒、酸化金属溶解剤、及び水の総量100質量部に対して、好ましくは0.001〜20質量部、より好ましくは0.002〜15質量部、特に好ましくは0.005〜15質量部である。前記酸化金属溶解剤の配合量が0.001質量部未満である場合は、導電性物質層の研磨速度が低くなる傾向にあり、20質量部を超える場合は、エッチングの抑制が困難となり被研磨面に荒れが生じる傾向がある。
【0067】
本発明で用いる金属の酸化剤の配合量は、砥粒、酸化金属溶解剤、及び水の総量100質量部に対して、好ましくは0〜50質量部、より好ましくは0.001〜45質量部、特に好ましくは0.002〜40質量部である。前記金属の酸化剤の配合量が50質量部を超える場合は、被研磨面に荒れが生じる傾向がある。
【0068】
本発明で用いる金属防食剤の配合量は、砥粒、酸化金属溶解剤、及び水の総量100質量部に対して、好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0.001〜8質量部、特に好ましくは0.002〜5質量部である。前記金属防食剤の配合量が10質量部を超える場合は、導電性物質層の研磨速度が低くなる傾向がある。
【0069】
本発明で用いる有機溶媒の配合量は、砥粒、酸化金属溶解剤、及び水の総量100質量部に対して、好ましくは0〜95質量部、より好ましくは0.2〜60質量部、特に好ましくは0.5〜50質量部である。前記有機溶媒の配合量が80質量部を超える場合は、引火の可能性がでてくるため製造プロセス上好ましくない。
【0070】
本発明で用いる重量平均分子量が500以上のポリマの配合量は、砥粒、酸化金属溶解剤、及び水の総量100質量部に対して好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0.01〜8質量部、特に好ましくは0.02〜5質量部である。前記ポリマの配合量が10質量部を超える場合は、導電性物質層、金属バリア層、層間絶縁膜の全ての膜の研磨速度が低下する傾向がある。
【0071】
本発明の金属用研磨液には、上述した材料のほかに界面活性剤、ビクトリアピュアブルー等の染料、フタロシアニングリーン等の顔料等の着色剤を含有させてもよい。
【0072】
本発明の金属用研磨液によって研磨される被研磨膜は、導電性物質層、金属バリア層、層間絶縁膜から選ばれる少なくとも2種類を含む被研磨膜であり、例えば、導電性物質層及び金属バリア層を含む被研磨膜、導電性物質層及び層間絶縁膜を含む被研磨膜、金属バリア層及び層間絶縁膜を含む被研磨膜、導電性物質層、金属バリア層及び層間絶縁膜を含む被研磨膜である。
【0073】
本発明の金属用研磨液は、第1のCMP研磨工程後のパターン基板を対象とした第2のCMP研磨工程に用いる。具体的には、本発明の金属用研磨液は、図1に示すように、表面が凹部及び凸部からなる層間絶縁膜3と、前記層間絶縁膜3を表面に沿って被覆する金属バリア層2と、前記凹部を充填して金属バリア層2を被覆する導電性物質層1とを有する基板(図1における(a))の導電性物質層1を第1のCMP研磨工程により研磨して、前記凸部の金属バリア層2を露出させ、前記凹部の導電性物質層1が残存してなる所望のパターン基板(図1における(b))を対象としている。なお、第1のCMP研磨工程に用いられる研磨液は、通常、第1のCMP研磨工程に用いる研磨液、例えば、アルミナ系研磨液、シリカ系研磨液等を用いることができる。
【0074】
図1における(b)のパターン基板の金属バリア層2を本発明の金属用研磨液を用いて研磨し、導電性物質1に発生したディッシング4を有するパターン基板(図1における(c1))を解消するように、そのまま続けて層間絶縁膜3、金属バリア層2、導電性物質層1の表面を研磨することで、パターン基板を平坦化することができる(図1における(c2))。なお、ディッシングを回避するよう層間絶縁膜の研磨を終了させるには、研磨速度比を調整しつつ、且つ研磨時間を適宜調整すればよい。研磨時間は、例えば、予めブランケットウエハ等における研磨速度を算出し、層間絶縁膜が凡そ500−1000Å削れ込む時間を測定しておき、それを元に研磨時間を調整する。
【0075】
導電性物質層としては、例えば、銅、銅合金、銅の酸化物、又は銅合金の酸化物、タングステン、タングステン合金、銀、金等が挙げられ、これらのなかでも、銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物等が好ましい。導電性物質層として公知のスパッタ法、メッキ法により前記物質を成膜した膜を使用できる。
【0076】
金属バリア層は、層間絶縁膜中への導電性物質が拡散するのを防止するため、及び層間絶縁膜と導電性物質との密着性を向上させるために形成される。金属バリア層の組成は、タングステン、窒化タングステン、タングステン合金等のタングステン化合物;チタン、窒化チタン、チタン合金等のチタン化合物;タンタル、窒化タンタル、タンタル合金等のタンタル化合物;ルテニウム、ルテニウム合金等のルテニウム化合物;銅とマンガンとの合金、銅とマンガンと酸化ケイ素との合金;等から選ばれるのが好ましい。バリア層は、これらの1種からなる単層構造であっても、2種以上からなる積層構造であってもよい。
【0077】
層間絶縁膜としては、例えば、シリコン系被膜や有機ポリマ膜が挙げられる。シリコン系被膜としては、二酸化ケイ素、フルオロシリケートグラス、トリメチルシランやジメトキシジメチルシランを出発原料として得られるオルガノシリケートグラス、シリコンオキシナイトライド、水素化シルセスキオキサン等のシリカ系被膜や、シリコンカーバイド及びシリコンナイトライドが挙げられる。また、有機ポリマ膜としては、全芳香族系低誘電率層間絶縁膜が挙げられる。これらのなかでも、オルガノシリケートグラスが好ましい。
【0078】
これらの膜は、CVD法、スピンコート法、ディップコート法、又はスプレー法によって成膜される。層間絶縁膜の具体例としては、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜等が挙げられる。
【0079】
本発明の研磨方法は、研磨定盤の研磨布上に本発明の金属用研磨液を供給しながら、被研磨膜を有する基板を研磨布に押圧した状態で研磨定盤と基板を相対的に動かすことによって被研磨膜を研磨する研磨方法である。
【0080】
研磨する装置としては、基板を保持するホルダと研磨布を貼り付けた(回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある)定盤を有する一般的な研磨装置が使用できる。研磨布としては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用でき、特に制限がない。
【0081】
研磨条件には制限はないが、定盤の回転速度は基板が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましい。被研磨膜を有する基板の研磨布への押し付け圧力は1〜100kPaであることが好ましく、研磨速度の被研磨面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、5〜50kPaであることがより好ましい。研磨している間、研磨布には本発明の金属用研磨液をポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨布の表面が常に金属用研磨液で覆われていることが好ましい。研磨終了後の基板は、流水中でよく洗浄後、スピンドライ等を用いて基板上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。
【0082】
本発明は、図1の(a)に示した導電性物質層1(例えば、銅膜)を金属バリア層2が露出するまで研磨して図1の(b)の状態とした(第1のCMP研磨工程)後、発生したディッシングを次の金属バリア層2の研磨工程(第2のCMP研磨工程)で解消することを目的としている。銅などの配線金属となる導電性物質層1を研磨する第1のCMP研磨工程に使用する研磨液としては、これまで種々のものが提案されており、近年はディッシングの量を低減する研磨液が提案されているが、ディッシングを完全になくすことは実質上不可能である。つまり、図1の(b)に示すように、どのような研磨液を使用し、どのように研磨条件を変えたとしても、多少なりとも銅の過剰研磨が生じて、ディッシング4が生じてしまう。
【0083】
本発明の金属用研磨液は、上記のディッシングを第2のCMP研磨工程で改善することが可能である。図1の(b)におけるパターン基板に対し、本発明の金属用研磨液を用いて第2のCMP研磨工程を行い、溝部以外の金属バリア層を研磨し、第1のCMP研磨工程で発生したディッシング4を有するパターン基板(図1における(c1))を研磨過程において一旦得るものの、続けて研磨することで、図1の(c2)に示すような、表面が平坦化したパターン基板を得ることができる。このような状態に研磨するためには、導電性物質層(銅膜)及び層間絶縁膜の研磨速度の比を調節することが重要である。
【0084】
すなわち、ディッシングを解消するためには、導電性物質層の研磨速度が層間絶縁膜の研磨速度よりも低いことが重要であり、その選択比は、導電性物質層/層間絶縁膜の研磨速度の比が0.72以下であることが好ましく、特にその研磨速度の比が0.35〜0.70であることが好ましい。
【0085】
本発明において、導電性物質層(例えば、銅膜)の研磨速度を調整するためには、酸化剤(例えば、過酸化水素)の量で調整する方法を挙げることができ、具体的には例えば、加える酸化剤が増量するほど導電性物質層(銅膜)の研磨速度が大きくなる。さらに具体的な例としては、30%過酸化水素水の量が1%付近で、銅膜の研磨は約300Å/分となる。なお、酸化剤が多くなると、金属バリア層の研磨速度も大きくなる。
【0086】
一方、層間絶縁膜の研磨速度は、砥粒の粒径や砥粒の配合量で調整することが可能であり、具体的には、粒径が大きい方が研磨速度は高まる傾向にあり、砥粒の配合量が多い方が研磨速度は高まる傾向にある。また、シリコン系被膜や有機ポリマ膜を高速で研磨するためには、有機溶媒を配合し濡れ性を高める方法が好ましく、シリコン系被膜や有機ポリマ膜の研磨速度を抑制するためには有機溶媒を配合しないか、有機溶媒の配合量を小さくする方法が有効である。
【0087】
また、これまで説明した構成のうち、上記のような研磨速度比、研磨特性を有するためには、研磨液に平均2次粒径の異なる砥粒を2種類以上含ませ、且つ研磨液のpHの値を2〜5とすること、酸化金属溶解剤を適切に選択すること(具体的には、アミノ基を含まない酸化金属溶解剤、特にギ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸が好ましい)、酸化剤を含むことのいずれかを満たすことが好ましい。または、研磨液に平均2次粒径の異なる砥粒を2種類以上含ませ、且つ上記のうち2つ以上を組み合わせることがより好ましい。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0089】
<実施例1〜8、比較例1〜2>
(研磨液作製方法)
表1に示す材料をそれぞれの配合(質量部)で混合して、実施例1〜8及び比較例1〜2に使用する金属用研磨液を調製した。この金属用研磨液を用いて下記の研磨条件で、下記で得た基板の研磨を行った。
【0090】
(平均2次粒径の測定方法)
砥粒の平均2次粒径は、動的散乱法に基づいたサブミクロン粒子アナライザー(BECKMAN COULTER社製、機種名:N5 Submicron Particle Size Analyzer)を用いて測定した。
【0091】
(平均1次粒径の測定方法)
砥粒の平均1次粒径は、超高分解能電子顕微鏡(SEM)(日立協和エンジニアリング株式会社製、機種名:日立 S−4800)を用いて撮影し大きさを実測した。
【0092】
(基板)
以下の基板を用意した。
【0093】
(A)ブランケット基板:
ブランケット基板(a1):シリコン基板上にトリメチルシランを出発原料としてCVD法で成膜されたオルガノシリケートグラス(厚さ:1000nm)を形成。
【0094】
ブランケット基板(a2):シリコン基板上に厚さ1000nmの二酸化ケイ素を形成。
【0095】
ブランケット基板(a3):シリコン基板上に厚さ200nmのタンタルを形成。
【0096】
ブランケット基板(a4):シリコン基板上に厚さ1600nmの銅を形成。
【0097】
(B)パターン基板:
パターン基板(b1):シリコン基板上に層間絶縁膜絶縁膜層としてトリメチルシランを出発原料としたオルガノシリケートグラスをCVD法で成膜した。このオルガノシリケートグラスに公知の方法を用いて深さ0.5μmの溝(凹部)を形成して、この表面に沿ってスパッタ法により金属バリア層として厚さ200nmのタンタル膜を形成した。前記タンタル膜の上に、スパッタ法により前記溝を埋めるように導電性物質層として銅膜を1.0μm形成した。突出している該銅膜だけをシリカ系研磨液(日立化成社製、製品名:HS-C500-10)を用いて第1のCMP工程における研磨を行い、被研磨面に凸部のバリア層を露出させ、パターン基板(b1)を得た。
【0098】
パターン基板(b2):層間絶縁膜絶縁膜層として、オルガノシリケートグラスに変えて二酸化ケイ素を用いること以外は上記と同様に操作してパターン基板(b2)を得た。
【0099】
(研磨条件)
研磨パッド:発泡ポリウレタン樹脂(ロデール社製、型番:IC1000)
研磨圧力:140g/cm(13.73kPa)
研磨定盤及びウエハホルダーの回転数:90rpm
研磨液の供給量:150ml/min
【0100】
(評価項目)
(1)研磨速度:各ブランケット基板(a1)〜(a4)を上記条件で、金属用研磨液を用い60秒研磨した。オルガノシリケートグラス及び二酸化ケイ素の研磨速度は研磨前後での膜厚差を大日本スクリーン製造株式会社製、膜厚測定装置(製品名:ラムダエース)を用いて測定し求めた。また、タンタル及び銅の研磨速度は研磨前後での膜厚差を電気抵抗値から換算して求めた。
【0101】
(2)平坦性(ディッシング量):各パターン基板(b1)〜(b2)を上記条件で、金属用研磨液を用い90秒間研磨した。パターン基板に形成された幅100μmの配線金属部、幅100μmの絶縁膜部が交互に並んだストライプ状パターン部の表面形状を触針式段差計により測定し、層間絶縁膜部に対する配線金属部の膜減り量を求め、平坦性の指標とした。
【0102】
(3)平坦性(エロージョン量):各パターン基板(b1)〜(b2)を上記条件で、金属用研磨液を用い90秒間研磨した。パターン基板に形成された幅4.5μmの配線金属部、幅0.5μmの絶縁膜部が交互に並んだ総幅2.5mmのストライプ状パターン部の表面形状を触針式段差計により測定し、ストライプ状パターン部周辺の層間絶縁膜部に対するパターン中央付近の層間絶縁膜部の膜減り量を求め、平坦性の指標とした。
【0103】
実施例1〜8及び比較例1〜2の金属用研磨液を用いて上記評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
なお、表1及び表2に示すコロイダルシリカA〜Eの粒径は以下の通りである。
【0106】
コロイダルシリカA:平均2次粒径:22nm、平均1次粒径:11nm
コロイダルシリカB:平均2次粒径:28nm、平均1次粒径:13nm
コロイダルシリカC:平均2次粒径:50nm、平均1次粒径:26nm
コロイダルシリカD:平均2次粒径:70nm、平均1次粒径:43nm
コロイダルシリカE:平均2次粒径:90nm、平均1次粒径:50nm
【0107】
【表2】

【0108】
比較例1及び比較例2では、層間絶縁膜絶縁膜であるオルガノシリケートグラス又は二酸化ケイ素を形成したブランケット基板(a1)又は(a2)に対する研磨速度が小さいためにディッシング量及びエロージョン量が大きくなっている。それに対し、実施例1〜8では、層間絶縁膜絶縁膜であるオルガノシリケートグラス又は二酸化ケイ素を形成したブランケット基板(a1)又は(a2)に対する研磨速度が大きいため、ディッシング量及びエロージョン量が少ない。この実施例で見出したような金属用研磨液は、微細化、薄膜化、寸法精度、電気特性に優れ、信頼性が高く、低コストの可能であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明により、層間絶縁膜の研磨速度が大きく、被研磨面の平坦性が高い金属用研磨液を得ることができる。この金属用研磨液は微細化、薄膜化、寸法精度、電気特性に優れ、信頼性が高く、低コストの半導体デバイスに好適である。
【0110】
また、本発明により、上記の発明の効果に加え、さらに金属バリア層の研磨速度を低下させずに層間絶縁膜の研磨速度を維持できるため、被研磨面の平坦性が高く、生産性の良い金属用研磨液を得ることができる。
【0111】
また、本発明により、上記の発明の効果に加え、さらに研磨後の洗浄性に優れるため、被研磨面の平坦性が高く、生産性の良い金属用研磨液を得ることができる。
【0112】
また、本発明により、上記の発明の効果に加え、さらに金属バリア層の研磨速度及び層間絶縁膜の研磨速度が高まり、被研磨面の平坦性が高く、生産性の良い金属用研磨液を得ることができる。
【0113】
また、本発明により、上記の発明の効果に加え、さらに研磨傷の発生を抑制した金属用研磨液を得ることができる。
【0114】
また、本発明により、上記の発明の効果に加え、さらに銅又は銅合金などの導電性物質層の研磨速度を調整できる金属用研磨液を得ることができる。
【0115】
また、本発明により、上記の発明の効果に加え、さらに銅又は銅合金などの導電性物質層の研磨速度を調整でき、銅などの導電性物質の残渣を取り除ける金属用研磨液を得ることができる。
【0116】
また、本発明により、上記の発明の効果に加え、さらに銅又は銅合金などの導電性物質層、金属バリア層及び層間絶縁膜の研磨均一性に優れる金属用研磨液を得ることができる。
【0117】
また、本発明により、銅又は銅合金などの導電性物質層用として上記の発明の効果を有する金属用研磨液を得ることができる。
【0118】
また、本発明により、タンタル、タンタル化合物、チタン、チタン化合物、タングステン、タングステン化合物から選ばれる金属バリア層用として上記の発明の効果を有する金属用研磨液を得ることができる。
【0119】
また、本発明により、微細化、薄膜化、寸法精度、電気特性に優れ、信頼性が高く、低コストの半導体デバイスの製造における研磨方法を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒、酸化金属溶解剤及び水を含有した金属用研磨液であって、前記砥粒が、平均2次粒径が異なる砥粒を2種類以上含むことを特徴とする金属用研磨液。
【請求項2】
前記砥粒の平均2次粒径が1〜1000nmであることを特徴とする請求項1記載の金属用研磨液。
【請求項3】
前記砥粒が、平均2次粒径5〜39nmの第一の砥粒と平均2次粒径40〜300nmの第二の砥粒とを含むことを特徴とする請求項1記載の金属用研磨液。
【請求項4】
前記砥粒が、平均1次粒径2〜100nmの砥粒を含むことを特徴とする請求項1記載の金属用研磨液。
【請求項5】
pHが2〜5である請求項1〜4のいずれか一項記載の金属用研磨液。
【請求項6】
前記砥粒が、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア及びゲルマニアから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか一項記載の金属用研磨液。
【請求項7】
前記酸化金属溶解剤が、有機酸、有機酸エステル、有機酸のアンモニウム塩及び無機酸から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか一項記載の金属用研磨液。
【請求項8】
さらに金属の酸化剤を含有する請求項1〜7のいずれか一項記載の金属用研磨液。
【請求項9】
前記金属の酸化剤が、過酸化水素、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸及びオゾン水から選ばれる少なくとも1種である請求項8記載の金属用研磨液。
【請求項10】
さらに金属防食剤を含有する請求項1〜9のいずれか一項記載の金属用研磨液。
【請求項11】
さらに有機溶媒を含有する請求項1〜10のいずれか一項記載の金属用研磨液。
【請求項12】
前記有機溶媒がグリコールエーテル化合物、アルコール化合物及びカーボネート化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項11記載の金属用研磨液。
【請求項13】
重量平均分子量が500以上のポリマをさらに含有する請求項1〜12のいずれか一項に記載の金属用研磨液。
【請求項14】
金属用研磨液によって研磨される被研磨膜が、導電性物質層及び金属バリア層を含む被研磨膜である請求項1〜13のいずれか一項記載の金属用研磨液。
【請求項15】
金属用研磨液によって研磨される被研磨膜が、導電性物質層及び層間絶縁膜を含む被研磨膜である請求項1〜13のいずれか一項記載の金属用研磨液。
【請求項16】
金属用研磨液によって研磨される被研磨膜が、金属バリア層及び層間絶縁膜を含む被研磨膜である請求項1〜13のいずれか一項記載の金属用研磨液。
【請求項17】
金属用研磨液によって研磨される被研磨膜が、導電性物質層、金属バリア層及び層間絶縁膜を含む被研磨膜である請求項1〜13のいずれか一項記載の金属用研磨液。
【請求項18】
前記導電性物質層が、銅、銅合金、銅の酸化物及び銅合金の酸化物から選ばれる少なくとも1種から成る層である請求項14、15又は17のいずれか一項記載の金属用研磨液。
【請求項19】
前記金属バリア層が、タンタル、タンタル化合物、チタン、チタン化合物、タングステン、タングステン化合物、ルテニウム、ルテニウム化合物、銅とマンガンとの合金、銅とマンガンと酸化ケイ素との合金から選ばれる少なくとも1種からなる1層、又は2層以上の積層である、請求項14、16又は17のいずれか一項記載の金属用研磨液。
【請求項20】
前記層間絶縁膜が、シリコン系被膜又は有機ポリマ膜である請求項15〜17のいずれか一項記載の金属用研磨液。
【請求項21】
前記砥粒は、金属用研磨液の総量100質量部に対して、0.001〜50質量部である請求項1〜20のいずれか一項に記載の金属用研磨液。
【請求項22】
導電性物質層と層間絶縁膜の研磨速度比が0.72以下である請求項15、17〜21のいずれか一項に記載の金属用研磨液。
【請求項23】
研磨定盤の研磨布上に請求項1〜22のいずれか一項記載の金属用研磨液を供給しながら、被研磨膜を有する基板を研磨布に押圧した状態で研磨定盤と基板を相対的に動かすことによって被研磨膜を研磨する研磨方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−231170(P2012−231170A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−157758(P2012−157758)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【分割の表示】特願2009−501221(P2009−501221)の分割
【原出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】