説明

金属粉末の製造方法

キャパシタの製作に使用される金属性粉末の製造方法は、非金属化合物を、溶融塩と接触させて金属に還元するステップを含む。塩は、工程の少なくとも一部において、金属中で焼結遅延剤として作用するドーパント元素を含有する。好ましい実施例において、金属性粉末は、Ta又はNb酸化物を還元することにより製造されるTa又はNb粉末であり、ドーパントはホウ素、窒素又はリンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンタル、ニオブ、及び他の3、4、5若しくは6族の金属、又はそれらの合金の製造を含む、キャパシタの製作に使用される金属性粉末又はスポンジの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンタル又はニオブキャパシタは、一般に小型で大容量を有し、携帯電話及びパーソナルコンピュータの極めて重要な部品となっている。より高い性能、より高い信頼性、及びより低いコストの電子部品に対する要求が益々高まっており、その結果、改善された品質のタンタル及び/又はニオブ粉末、並びにより経済的な製造経路に対する要求が存在している。現在の製造方法は、多数のステップを含むためコストがかかり、また品質制御が困難である。
【0003】
一例として、タンタル金属キャパシタの陽極は、通常、凝集したタンタル粉末を、埋め込まれた陽極リードワイヤと共に、その金属の真の密度の半分未満の密度値(一般に、Taの真の密度16.6g.cmと比較して5〜7.5g.cm)に圧縮して多孔質ペレットを形成することにより製作される。次いで、ペレットを焼結して多孔質本体(即ち陽極、又は陽極本体)を形成し、この多孔質本体に好適な電解質を含浸して、タンタル表面上に連続的な誘電体酸化膜を形成することにより陽極酸化処理する。次いで、陽極酸化処理した多孔質本体に陰極材料を含浸して均一な陰極コーティングを形成し、陰極リードワイヤに接続し、樹脂ケーシングで封入する。従って、多孔質本体は、開放した、好ましくは均一な細孔を含んで、陽極酸化処理ステップのための含浸と、誘電体膜及び陰極を形成するための含浸とを可能にする必要がある。
【0004】
陽極の形成に使用される凝集タンタル粉末の表面積を(開放した多孔質構造を維持すると共に)増大することにより、タンタルキャパシタのキャパシタンスが有利に増大する。従って、大きい表面積を有する粉末又は粉末凝集体から陽極本体を形成することが望ましい。しかしながら、焼結等の加工ステップ中に粉末の表面積が減少する可能性があり、粉末又は凝集体の多孔性が低下し得る。加工中の多孔性とキャパシタ粉末の表面積との損失に対する解決法の一つは、焼結遅延剤を加える加工ステップを含めることである。それらの薬剤は、焼結中の粒の成長を抑制し、完成品のキャパシタにおいて前駆体粉末/凝集体の表面積及び多孔性を維持することを助ける。
【0005】
特許文献1には、五塩化タンタルとアルカリ土類水酸化物との混合物の燃焼によるタンタル粉末の製造方法が開示されており、ここで混合物は場合によりドーパントを含有し、ドーパントはリン及び/又は窒素(リン及び窒素は、タンタルの焼結遅延剤である)を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6193779号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、その様々な態様において、以後参照するべき添付の独立請求項に定義されているような金属粉末又はスポンジ、特にタンタル(Ta)又はニオブ(Nb)粉末又はスポンジの製造方法、金属粉末又はスポンジ、金属粉末又はスポンジを製造するためのシステム、及びキャパシタを提供する。
【0008】
従って、第一の態様は、キャパシタの製作に使用される金属粉末又はスポンジの製造方法を提供することができ、前記方法は、前駆体の非金属化合物を、溶融塩と接触させて金属に還元するステップを含み、前記塩は、工程の少なくとも一部において、金属中で焼結遅延剤として作用するドーパントを含有する。塩は、50ppm〜10000ppmのドーパントを含有することが好ましく、特に50ppm〜5000ppmのドーパントを含有することが好ましい。金属は、ある濃度のドーパントを含有する金属粉末又はスポンジを生じる。特に示されない限り、本明細書中でppmは重量百万分率という標準的な意味を有する。
【0009】
異なるドーパントは、焼結遅延剤としての異なる有効性を有する。従って、塩中のドーパントのレベルは、高い有効性を有するドーパントの場合は低くてもよく、例えば60ppm〜400ppm、好ましくは70ppm〜200ppmである。
【0010】
化合物が連続工程により還元される場合、塩中のドーパントのレベルは連続的に維持されてもよく、又はシステム内の塩の全質量は、ドーパントレベルが反応中に効果的に一定に維持される程度に、還元される化合物の質量を超えてもよい。工程がバッチ工程の場合でも同様であり得るが、反応に使用される塩の質量は、還元される化合物の質量よりも十分に大きい。
【0011】
還元がバッチ反応として行われ、還元される化合物の質量に対するシステム内の塩の質量の比が低い場合、その結果、反応が進行するにつれて塩中のドーパントの濃度が低下する可能性があり、ドーパントは化合物/還元金属により消費される。そのような環境下では、最初のドーパントの濃度は、還元金属中で所望のドーパントレベルを提供するように、より高い必要があり得る。代替的に、反応中に、必要であれば追加のドーパントを加えてもよい。塩中のドーパントレベルがどのように制御されようとも、還元金属中のドーパントレベルは、金属中で焼結遅延剤として作用するように十分である必要がある。
【0012】
本方法により製造される好ましい金属は、Ta又はNbの粉末又はスポンジであり、非金属化合物は、Ta又はNbを実質的に含有する非金属化合物、又は溶融塩中でTa又はNbに還元されることが可能な化合物が好ましい。代替的に、キャパシタとして使用するのに好適な任意の金属、例えば周期律表の3、4、5又は6族の金属を、本方法により製造してもよい。
【0013】
前駆体非金属化合物は固体化合物が好ましく、粉末粒子若しくは凝集体の形態を有してもよく、又は代替的に、粉末若しくは凝集体から構成された多孔質プリフォーム又はペレットの形態を有してもよい。そのようなプリフォームは、任意の公知の手段、例えば粉末の加圧、又は押出しにより製造されてもよい。使用される場合、プリフォームは、後の加工のために焼結されて十分な強度を提供してもよい。
【0014】
工程の少なくとも一部における溶融塩中のドーパントの存在は、ドーパントを焼結遅延剤として作用するのに十分なレベルで含む還元金属を有利にもたらすことができる。このことは、金属が粉末形態で製造される場合、後の加工中に粒成長が遅延し得るため有利である。金属がスポンジの形態で製造される場合、焼結遅延剤の存在は、例えばバルク金属を脱酸し又は陽極酸化処理してスポンジの表面積に誘電体酸化物を被覆する等の後の操作中に、尚大きい表面積を維持することを助け得る。
【0015】
化合物の還元は、例えば国際公開第99/64638号又は国際公開第03/076690号に記載されているように、化学的に又は電気的に行うことができる。陰極及び陽極を溶融塩と接触させて配置し、化合物を陰極と接触させて配置することが好ましく、次いで方法は、陰極と陽極との間に、化合物が金属に還元されるに十分な電位を加える更なるステップを含む。
【0016】
有利には、非金属化合物は酸素を含有してもよく、そのため金属への還元は電解脱酸により行われ得る。電解脱酸の工程は、国際公開第99/64638号に記載されている。電解脱酸の工程下で、電解槽電圧は、陰極から、又は陰極と接触した化合物から酸素を除去するのに十分であるが、電解質中の陽イオンを金属として陰極にて堆積させるのには十分でない電位を維持することが好ましい。
【0017】
溶融塩は、バリウム、カルシウム、セシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、ストロンチウム及びイットリウムを含む群から選択される一つ又はそれ以上の元素を含有することが好ましい。特に好ましくは、溶融塩は、ハロゲン化金属を含み、好ましくは塩化カルシウムを含む。
【0018】
ドーパントは任意の焼結遅延元素、若しくは焼結遅延元素の組み合わせであってもよく、又は還元金属中で組み合わされた焼結遅延効果を有する元素の組み合わせであってもよい。塩は、所定の量のドーパント元素を、塩、好ましくは高純度等級の塩に加えることにより生成されることが好ましい。
【0019】
ドーパントは、全工程の間、塩中に存在してもよく、このことは加工を有利に簡素化し得る。ドーパントは、化合物の金属への還元に影響を及ぼすのに十分な量で溶融塩中に存在し得ないが、還元金属と反応するか、又は還元金属中に拡散するのに十分な量で存在する。
【0020】
しかしながら、工程の最終段階の間、例えば還元が完了している最中、又は金属への還元が行われた後に、塩にドーパントを加えることが有利であり得る。ドーパントは好適な形態で(即ち、元素状態、又は溶融塩中に溶解し若しくは分解する化合物の一部として)溶融塩に加えられてもよく、又は溶融塩を、必要なレベルのドーパントを含有する新しい塩と交換してもよい。ドーパントは、工程の最終段階にのみ存在する場合、工程全体に存在する場合に所望されるであろうよりも多い量で加えられ得る。
【0021】
ドーパントを加える時を制御することにより、還元金属中のドーパントレベルを制御することが容易になり得る。
【0022】
場合により、元素形態のドーパント、又はドーパント元素を含有する化合物の一部としてのドーパントを、化合物と混合して溶融塩中に導入してもよい。この場合、ドーパントはその後塩に溶解する可能性がある。例えば、金属酸化物とホウ素、窒素又はリン含有化合物との混合物からプリフォーム又はペレットを形成してもよく、このプリフォームは次いで溶融塩中に導入されてもよい。次いで、ホウ素、窒素又はリン含有化合物は溶融塩中に溶解して、塩中のホウ素又はリンのドーパント濃度を提供し得る。
【0023】
ドーパントは、金属に作用して金属の焼結を抑制する元素である必要がある。Ta及びNbの場合、好適なドーパントとしては、ホウ素、窒素及びリンが挙げられる。窒素は、Taの積層発火温度を上昇させる更なる利点を有する。本方法は、金属をホウ素及び/又はリンでドーピングするのに特に有利である。
【0024】
第二の態様は、非金属化合物の還元による金属性粉末又はスポンジの製造のためのシステムを提供することができ、前記システムは、陽極及び陰極、並びにアルカリ金属塩又はアルカリ土類塩を有する電解槽を備え、前記塩は、金属性粉末中で焼結遅延ドーパントとして作用する10〜10000ppmの元素を含有する。塩は50ppm〜5000ppmのドーパントを含有することが特に好ましい。ドーパントは、ホウ素、リン又は窒素が好ましい。
【0025】
このシステムは、Ta又はNbの粉末又はスポンジの製造に使用されることが好ましく、Ta又はNb酸化物の脱酸による焼結遅延Ta又はNb粉末の形成用であることが特に好ましい。塩中のドーパントのレベルは、粉末中で焼結遅延効果を生成するのに十分である必要がある。
【0026】
好ましくは、例えば塩の非金属化合物に対する比(質量による)が15:1又は20:1より大きく、好ましくは25:1又は40:1より大きい場合、比は十分高いため、工程中に塩中のドーパントの枯渇が最小限である。
【0027】
有利には、システムは上述した任意の方法に使用され、又は下述する任意の粉末の製造に使用され得る。
【0028】
第三の態様は、上述した方法若しくはシステムで使用される塩、又は上述したような粉末の製造のための塩を提供することができる。そのような塩は、溶融塩の反応物に対する質量比に応じて、10ppm〜10000ppmのドーパント元素、好ましくは50ppm〜5000ppm、例えば60ppm〜500ppm又は70ppm〜200ppmのドーパント元素を含有する。ドーパントは、ホウ素、リン及び窒素を含む群からのドーパント元素が好ましい。塩は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類塩、好ましくはハロゲン化物塩であってもよい。
【0029】
塩のドーピングレベルは、塩にドーパント組成物又はドーパント合金を加えて、ドーパント元素の割合を所望のレベルに上昇させることにより制御されることが好ましい。
【0030】
塩は、ホウ素、リン及び窒素を含む群から選択されたドーパントを含有するCaCl塩が好ましい。場合により、そのようなCaCl塩はCaO、例えば0.1重量%〜0.8重量%のCaOを含有してもよい。
【0031】
第四の態様は、キャパシタの製作に使用される金属性粉末又はスポンジの代替的な製造方法を提供し、前記方法は、金属性粉末又はスポンジに還元可能な非金属化合物を選択するステップと、前記非金属化合物を、溶融塩と接触させて金属に還元するステップとを含む。前記非金属化合物は、還元前に、金属中で焼結遅延剤として作用する50ppm〜10000ppmのドーパント、例えば7000ppm又は8000ppmのドーパントを含有する。
【0032】
化合物は、50ppm〜5000ppm、例えば100ppm〜300ppm又は200ppm〜500ppm又は250ppm〜1000ppmのドーパントレベルを有することが好ましい。化合物中のドーパントレベルは、還元金属中で必要なドーパントの濃度に応じて変動し得る。例えば、化合物中の好ましいリンレベルは50ppm〜500ppmであり得る一方、好ましい窒素及びホウ素レベルは50ppm〜10000ppmであり得る。
【0033】
いくつかのドーパント元素は、化合物が金属に還元される間に化合物から除去され得る。従って、還元前の化合物中のドーパントの濃度は、焼結遅延効果を提供するために金属中に必要とされるドーパントの濃度よりも高いことが有利であり得る。
【0034】
ドーパントは、ホウ素、リン又は窒素のうちの一つ又はそれ以上であることが好ましい。ドーパントが窒素の場合、100〜10000ppmの窒素を含有する化合物を選択して、又は化合物をドープして100〜10000ppmの窒素レベルを提供して、還元金属生成物中、50〜5000ppm、例えば約250ppmの窒素レベルを得ることが有利であり得る。
【0035】
化合物は、粉末又は凝集粉末の形態で還元されてもよい。代替的に、化合物は還元前に公知の経路によりプリフォーム又はペレットに成形されてもよい。
【0036】
非金属化合物中のドーパント濃度を決定した後、ドーピング工程又は反応を行って化合物中のドーパント濃度を所望のレベルに上昇させることが有利であり得る
【0037】
非金属化合物が還元前にプリフォーム又はペレットに成形される場合、化合物中のドーパント濃度を上昇させるドーピング工程は、プリフォームの製造前、又は製造後に行われてもよい。
【0038】
所定のドーパントレベルは、非金属化合物の形成中に加工ステップを制御することにより化合物中に達成されてもよく、例えばTa中の窒素レベルは、Taの形成中に加工ステップを制御することにより所定の限界内で制御されてもよい。
【0039】
代替的に、ドーピング工程は、非金属化合物を、ドーパントからなる又はドーパントを含有する固体、液体又は気体と反応させることにより行われてもよい。例えば、化合物を窒素雰囲気中にて高温で処理して、化合物中に窒素をドーパントとして拡散させてもよい。更なる例として、化合物をリン酸で処理して、リンドーピングを提供してもよい。
【0040】
非金属化合物は酸素を含有することが好ましく、例えば化合物は金属酸化物であってもよい。化合物の有利な還元方法は、FFC Cambridgeの電解脱酸工程を用いることによるものであってもよい。
【0041】
第五の態様は、5μm〜500μmの平均粒径と、BET法で測定した際に0.1〜10m/gの比表面積とを有する多孔質粒子又は凝集体を含む、キャパシタの製作のための金属粉末、特にタンタル又はニオブ粉末であって、前記粒子が5〜5000ppm、例えば10〜2000ppm又は20〜1000ppmの焼結遅延ドーパントを含有することを特徴とする、粉末を提供し得る。
【0042】
粉末は、15〜500ppm又は20〜250ppmの焼結遅延ドーパントを含有することが好ましい。粉末は、45〜200ppmの焼結遅延ドーパントを含有することが好ましく、50〜100ppmの焼結遅延ドーパントを含有することが特に好ましい。有利には、焼結遅延ドーパントはホウ素、窒素及びリンを含む群から選択される一つ又はそれ以上の元素である。
【0043】
この第二の態様による粉末は、粉末の粒サイズを有意に増大させ又は比表面積を有意に低下させることなく、例えば脱酸等のキャパシタ等級粉末を製造するのに必要な任意の工程ステップを経ることが可能であり得る。この粉末はまた、キャパシタの形成に必要な任意の更なる焼結ステップを経る際に、表面積の低下に抵抗し得る。
【0044】
第六の態様は、キャパシタの陽極又は陽極本体を提供することができ、この陽極は、BET(Micromeritics Tristar)で測定した際に0.1〜10m/g、好ましくは0.1〜5m/gの比表面積を有し、10〜2000ppmのドーパントを含み、ドーパントは窒素、リン及びホウ素を含む群から選択される元素である。陽極はTa又はNbから形成されることが好ましく、また陽極は、Ta又はNbの粉末又は凝集体を焼結することにより形成されることが好ましい。陽極の製造は、上述した任意の方法による粉末の製作、又は上述した任意の粉末の使用を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の態様による方法を実行するための電気還元装置。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の特定の実施形態を、添付の図面を参照して、以下に実施例により記載する。
【0047】
<実施例1>
第一の実施例は、Taの直接電解脱酸による、ホウ素ドープTa粉末の製造について記載する。本方法で使用する装置の概略を、図1に示す。
【0048】
使用した装置は、塩20で満たされた容器又はるつぼ10を備えていた。塩は塩化カルシウム塩であった。塩は、更に約50ppmのホウ素を含有していた。
【0049】
加熱要素(図示せず)は、塩の温度をその融点を超えて上昇させるよう作用した。次いで、陰極30及び炭素陽極40を溶融塩中に配置し、電源50を介して接続した。
【0050】
Ta粉末を、加圧及び焼結工程により前駆凝集体に形成した。これらの前駆凝集体は、代替的にプリフォーム、粒子又はペレットとして記載されてもよい。
【0051】
Taの凝集体(前駆材料)35を、陰極30と接触させて配置した。この接触は、凝集体を陰極30の一部を形成するバスケット31内に配置することにより達成された。凝集体と陰極との接触は、例えば、陰極の一部であり、若しくは陰極と接触したプレートの表面上に凝集体を配置すること、又は陰極に電気的に結合したロッド若しくはワイヤ上に凝集体を装着することを含む、任意の他の好適な手段により達成されてもよい。
【0052】
前処理プロトコルの一部として、最初に塩の温度を16時間で400℃に上昇させて塩を乾燥した後、更に920℃に上昇させた。しかしながら、任意の好適な前処理プロトコルを用いて、本発明による方法に使用される塩を調製できることが理解される。
【0053】
電解脱酸は、Ta凝集体35に対して前記凝集体が金属Taに還元されるよう行われた。この電解脱酸は、Cambridge FFC工程(国際公開第99/64638号に記載)に従って行われた。電解槽の電極(30、40)を横切って電圧2.8Vを56時間印加して、酸化物のTa金属への完全な還元を確実にした。次いで、還元金属を収容する、陰極に関連したバスケット31と共に陰極30をアルゴンブランケット下で溶融塩から引き抜き、冷却させた。
【0054】
陰極及び還元金属を水中で濯いで過剰の塩を除去した後、金属を最初に熱脱イオン水(80℃)中、次いで1M HCL酸中で徹底的に洗浄して、塩及び酸化カルシウムを除去した。乾燥後、キャパシタ等級のTa粉末を得た。得られた粉末は、250ppmのホウ素含有量、約1m/gの比表面積、及び約50×10μF.V/g(CV/g)の比電荷を有した。
【0055】
次いで、得られた粉末を公知の経路で加工して、キャパシタを製作することができた。キャパシタの製作経路の典型的な例は、上記の本発明の背景技術にて記載されている。
【0056】
<実施例2>
第二の実施例は、Taの直接電解脱酸による、リンドープTa粉末の製造について記載する。
【0057】
ペレットが取り扱いの際に十分な強度を有し、かつ約60〜65%の多孔性を有するように、Ta粉末を加圧した後、焼結することによってTaペレットを製造した。これらの基準を達成するために必要な焼結温度及び焼結時間は、使用されるTa粉末のバッチの特有の焼結特性に応じて変動するであろう。
【0058】
実質的に実施例1に関連して上述した(及び図1に示した)装置を使用して、ペレットを還元した。しかしながら、電解脱酸反応は、実施例1で使用したホウ素ドープ塩ではなくリンドープ溶融塩中で行った。
【0059】
LP等級のCaClにリン酸カルシウム(Ca(PO)1000ppmを加えることにより、リンドープ塩化カルシウム塩を生成した。塩中の酸化カルシウム(CaO)のレベルを約4000重量ppmに調整した。電解槽内の塩の質量の、還元される酸化物の質量に対する比はおよそ36:1であった。
【0060】
使用前、ドープした塩化カルシウム塩は予備加工プロトコルを経て、実施例1に関連して上述したように乾燥された。任意の好適な塩予備加工プロトコルを用いて、使用される塩を調製することができる。
【0061】
Taペレットの電解脱酸は、Taペレットが金属Taに還元されるよう陽極と陰極との間に約3Vの電圧を24時間印可することにより行った。電解脱酸反応の間、塩の温度を約830℃に維持した。
【0062】
次いで、電解槽を冷却し、還元金属を移し、洗浄して過剰の塩を除去した。得られたTa金属を分析し、484ppmのリンを含有することが見出された(ICP−MS)。
【0063】
<実施例3>
第三の実施例は、Taの直接電解脱酸による、リンドープTa粉末の製造について記載する。
【0064】
実施例3で使用した装置及び電解脱酸方法は、実施例2に記載したものと実質的に同一であったが、一つの相違点は塩をより高いレベルのリンでドープしたことであった。
【0065】
この第三の実施例で使用された塩は、LP等級の塩化カルシウム塩に約3000重量ppmのリン酸カルシウムを加えることにより生成した。塩の総CaO含有量が約4000重量ppmとなるよう調整した。電解槽内の塩の質量の、還元される酸化物の質量に対する比は、およそ36:1であった。
【0066】
Taペレットを約3Vの電位差で24時間還元した。得られたTa金属を分析し、1400ppmのリン含有量を有することが見出された。
【0067】
<実施例4>
第四の実施例は、窒素ドープTaの直接電解脱酸による、窒素ドープTa粉末の製造について記載する。使用した装置は、実質的に実施例1に関連して上述したようなものであった。使用した溶融塩は、0.4重量%のCaOを有するCaCl塩であった。
【0068】
783ppmの窒素含有量を有する(Eltra ON900窒素分析機で測定して)Ta粉末を選択し、加圧してペレットとし、焼結した。装置内にペレットを配置し、陽極と陰極との間に約3Vの電圧を24時間印可することによりペレットの電解脱酸を行って、ペレットを金属Taに還元した。電解脱酸反応の間、塩の温度を約830℃に維持した。得られた金属粉末を分析し、252ppmの窒素を含有することが見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャパシタの製作に使用される金属性粉末又はスポンジの製造方法であって、
非金属化合物(35)を、溶融塩(20)と接触させて金属に還元するステップを含み、
前記塩が、工程の少なくとも一部において、前記金属中で焼結遅延剤として作用するドーパントを含有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記塩が、50〜10000ppmのドーパントを含有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属性粉末又はスポンジが、Ta又はNbからなる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
陰極(30)及び陽極(40)が前記溶融塩と接触して配置され、化合物(35)が前記陰極と接触して配置され、前記化合物を金属に還元するのに十分な電位を前記陰極と前記陽極との間に加える更なるステップを含む請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記非金属化合物が酸素を含有し、金属への還元が電解脱酸により行われることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶融塩が、バリウム、カルシウム、セシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、ストロンチウム及びイットリウムを含む群から選択される一つ又はそれ以上の元素を含有する請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶融塩が、ハロゲン化金属を含み、好ましくは塩化カルシウムを含む請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ドーパントが、ホウ素、窒素及びリンを含む群から選択される元素である請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
二種以上のドーパントが存在する請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ドーパントが、全工程の間、前記塩中に存在する請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ドーパントが、工程の最終段階の間に前記塩に加えられる請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ドーパントが、前記化合物と混合されて前記溶融塩中に導入され、その後前記塩に溶解する請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
タンタル又はニオブ化合物を還元することによりタンタル又はニオブ粉末を製造するためのシステムであって、陽極及び陰極、並びにアルカリ金属塩又はアルカリ土類塩を有する電解槽を備え、前記塩が、ある割合のホウ素及び/又はリン及び/又は窒素を含有するシステム。
【請求項14】
前記塩が、50ppm〜10000ppmのホウ素、リン又は窒素を含有する請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のシステムに使用される塩。
【請求項16】
キャパシタの製作に使用される金属性粉末又はスポンジの製造方法であって、
金属性粉末又はスポンジに還元可能な非金属化合物を選択するステップと、
前記非金属化合物を、溶融塩と接触させて金属に還元するステップと、を含み、
前記非金属化合物が、還元前に、金属中で焼結遅延剤として作用する50ppm〜10000ppmのドーパントを含有することを特徴とする方法。
【請求項17】
前記選択された非金属化合物が、金属性粉末又はスポンジに還元される前に、50ppm〜5000ppmの焼結遅延ドーパントでドープされる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記非金属化合物が、前記ドーパントを含有する固体、液体又は気体と反応して、前記ドーパントが前記化合物中に拡散することによりドープされる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ドーパントが、ホウ素、リン又は窒素である請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記非金属化合物が、電解槽内の陰極と接触するよう配置され、前記電解槽が更に陽極及び溶融塩を含み、前記陽極と前記陰極との間に十分な電位が加えられて前記化合物を金属に還元することを特徴とする請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記非金属化合物が酸素を含有し、前記反応が電解脱酸により行われる請求項20に記載の方法。
【請求項22】
5μm〜500μmの平均粒径と、BETで測定した際に0.1m/g〜10m/gの比表面積とを有する多孔質粒子又は凝集体を含む、キャパシタの製作のためのタンタル又はニオブ粉末であって、前記粒子が50〜5000ppmの焼結遅延ドーパントを含有することを特徴とする粉末。
【請求項23】
60〜2000ppmの焼結遅延ドーパント、好ましくは100〜1000ppmの焼結遅延ドーパント、特に好ましくは200〜1500ppmの焼結遅延ドーパントを含有することを特徴とする請求項22に記載の粉末。
【請求項24】
前記焼結遅延ドーパントが、ホウ素、窒素及びリンを含む群から選択される一つ又はそれ以上の元素であることを特徴とする請求項22又は23に記載の粉末。
【請求項25】
焼結されたタンタル又はニオブの陽極であって、前記陽極が、BETで測定した際に0.1〜5m/gの比表面積を有し、50〜5000ppmのドーパントを含み、前記ドーパントが、窒素、リン及びホウ素を含む群から選択される元素である陽極。
【請求項26】
タンタル又はニオブから形成され、かつ10×10μF.V/g〜250×10μF.V/gの比電荷を有するキャパシタであって、前記キャパシタ中のタンタル又はニオブが50〜5000ppmのドーパントを含有し、前記ドーパントが、窒素、リン及びホウ素を含む群から選択される元素であるキャパシタ。
【請求項27】
実質的に本明細書に図面を参照して記載されたような方法。
【請求項28】
実質的に本明細書に図面を参照して記載されたようなシステム。
【請求項29】
実質的に本明細書に図面を参照して記載されたような粉末。

【図1】
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【公表番号】特表2012−518083(P2012−518083A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549656(P2011−549656)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000266
【国際公開番号】WO2010/092358
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(511185520)メタリシス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】