説明

金属細線又は金属粒子触媒含有化粧料

【課題】 老化した皮膚では過酸化脂質が増大し、柔軟性、弾力性を失い、皮膚のしわが増大し、乾燥して滑らかさのない荒れ肌症状が認められている。これらの皮膚症状が現れる原因物質の一つとして、大気中の酸素が紫外線や酵素等の影響を受けて生成するいわゆる活性酸素が考えられている。本発明の目的は優れた抗酸化力及び安定性を有する化粧料を提供する事にある。
【解決手段】 中心細孔直径が1nm以上50nm以下である細孔を有する多孔体と、前記細孔内に形成された、平均直径が1nm以上50nm以下である金属細線又は金属粒子を備えた金属触媒を含有する事により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化力を有する化粧料用金属触媒に関する
【背景技術】
【0002】
老化した皮膚では過酸化脂質が増大し、柔軟性、弾力性を失い、皮膚のしわが増大し、乾燥して滑らかさのない荒れ肌症状が認められている。これらの皮膚症状が現れる原因物質の一つとして、大気中の酸素が紫外線や酵素等の影響を受けて生成するいわゆる活性酸素が考えられている。この活性酸素は脂肪酸を酸化し、過酸化物を生成させる。その上、生成した過酸化物と活性酸素は、生体に対してコラーゲン線維の架橋、ヒアルロン酸の断片化、連鎖的ラジカルの発生による組織の損傷等の悪影響を及ぼし、その結果として、皮膚のしわや弾力の消失、脱毛といった生体の老化を促進するといわれている。従って、活性酸素を消去する事は、皮膚の老化を改善あるいは予防する点で皮膚にとって非常に重要な事であり、皮膚化粧料に求められる重要な要素である。
【0003】
従来、抗酸化剤としてはビタミンA、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類が主に使用されてきた(例えば、非特許文献1参照。)。また近年、金コロイドを抗酸化剤として使用する技術も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、これらの抗酸化剤はその安定性や機能において満足できるものではなかった。
【0004】
【非特許文献1】「化粧品の有用性」、薬事日報社、P237〜241、2001年3月31日発行
【特許文献1】特開2004−285166号公報(P1〜P9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は優れた抗酸化力を有する化粧料用金属触媒及びこれを含有する化粧料を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)平均細孔直径が1nm以上50nm以下であり無機骨格を有する多孔体と、該多孔体の細孔内に形成された、平均直径が1nm以上50nm以下である金属細線又は金属粒子を備えた化粧料用金属触媒。
(2)多孔体がX線回折パターンにおいて、d間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを持ち、該多孔体の細孔内に形成された、平均直径が1nm以上50nm以下である金属細線又は金属粒子を備えた前記(1)記載の化粧料用金属触媒。
(3)無機骨格を有する多孔体がシリケートからなる前記(1)又は(2)記載の化粧料用金属触媒。
(4)抗酸化力を有する事を特徴とした前記(1)〜(3)いずれか記載の化粧料用金属触媒。
(5)前記(1)〜(4)いずれか記載の化粧料用金属触媒を含有する化粧料。
【発明の効果】
【0007】
本発明により抗酸化力の優れた化粧料を提供する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の化粧料用金属触媒は、無機骨格を有する多孔体とその細孔内に形成された金属細線又は金属粒子から構成される。
【0009】
無機骨格を有する多孔体の平均細孔直径は1nm以上50nm以下が好ましい。平均細孔直径が1nm未満である場合は、細孔内に金属細線又は金属粒子が導入され難く細孔内への担持率が低くなり、化粧料に含有させた場合、抗酸化力を効率的に発揮できない。また平均細孔直径が50nmを超える場合は、金属細線又は金属粒子の比表面積が減少して化粧料に含有させた場合、抗酸化力を効率的に発揮できない。
【0010】
多孔体は、そのX線回折パターンにおいてd間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを持つ事が好ましく、d間隔が3nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを持つ事がより好ましい。
【0011】
多孔体は無機骨格を有し、該無機骨格はシリケート等の無機酸化物の高分子主鎖からなる。シリケート基本骨格中のケイ素原子に代える原子、又はシリケート骨格に付加する原子としては、アルミニウム、チタン、マグネシウム、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、モリブデン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ベリリウム、イットリウム、ランタン、ハフニウム、スズ、鉛、バナジウム、ホウ素等を挙げる事ができる。
【0012】
多孔体を構成し得るその他の無機骨格としては、非Si系のジルコニア、チタニア、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化スズ、酸化ハフニウム、アルミナ等の無機酸化物、又はそれらの無機酸化物からなる基本骨格中に上記のシリケート骨格に付加する原子を組み込んだ複合酸化物が挙げられる。
【0013】
なお、多孔体を構成する無機の基本骨格の側鎖に種々の有機基等が付与されていてもよい。かかる側鎖としては、チオール基又はチオール基を含む有機基、メチル基、エチル基等の低級アルキル基、フェニル基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基等が挙げられる。
【0014】
多孔体の無機骨格成分としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等のアルコキシシラン、ケイ酸ソーダ、カネマイト(kanemite、NaHSi・3HO)又はシリカを用いる事ができる。これらの骨格成分はシリケート骨格を形成する。なお、本発明においては、低級アルキル基やフェニル基等の官能基のシリケート骨格への導入は、相当する官能基を有するアルコキシシランを用いて行う事ができる。
【0015】
上記多孔体の製造方法については特に限定するものではないが、例えば、界面活性剤を鋳型として用いて縮重合し、その後、界面活性剤を除去する事によって得る事ができる。
【0016】
本発明において多孔体を形成するための鋳型として使用される界面活性剤は、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性のうちのいずれであってもよく、具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム(好ましくはアルキル基の炭素数が8〜22のアルキルトリメチルアンモニウム)、アルキルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム、ベンジルアンモニウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物又は水酸化物の他、脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤、一級アルキルアミン等が挙げられるが抗酸化力の観点よりアルキルトリメチルアンモニウムが好ましい。
【0017】
上記の界面活性剤のうち、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤としては、疎水性成分として炭化水素基、親水性部分としてポリエチレンオキサイド、をそれぞれ有するポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤等が挙げられる。このような界面活性剤としては、具体的には、C1633(OCHCHOH(以下、このような構造をC16EOと略して記載する)、C12EO、C16EO10、C16EO20、C18EO10、C18EO20、C1835EO10等が挙げられる。
【0018】
また、本発明においては、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸とソルビタンとのエステル、又はこれらのエステルにポリエチレンオキサイドが付加した化合物を用いる事ができる。このような界面活性剤としては、TritonX−100(アルドリッチ)、ポリエチレンオキサイド(20)ソルビタンモノラウリレート(Tween20、アルドリッチ)、ポリエチレンオキサイド(20)ソルビタンモノパルミテート(Tween40)、ポリエチレンオキサイド(20)ソルビタンモノステアレート(Tween60)、ポリエチレンオキサイド(20)ソルビタンモノオレート(Tween80)、ソルビタンモノパルミテート等が挙げられる。本発明においては、上記の界面活性剤のうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
さらに、本発明においては、トリブロックコポリマー型のポリアルキレンオキサイドを用いる事ができ、中でもポリエチレンオキサイド鎖−ポリプロピレンオキサイド鎖−ポリエチレンオキサイド鎖型、又はポリプロピレンオキサイド鎖−ポリエチレンオキサイド鎖−ポリプロピレンオキサイド鎖型のトリブロックコポリマーが好適に使用される。ここで、ポリエチレンオキサイド鎖−ポリプロピレンオキサイド鎖−ポリエチレンオキサイド鎖型のトリブロックコポリマーを(EO)(PO)(EO)と表すと、各アルキレンオキサイドのユニット数は好ましくはx=5〜110、y=15〜70であり、より好ましくはx=15〜20、y=50〜60である。他方、ポリプロピレンオキサイド鎖−ポリエチレンオキサイド鎖−ポリプロピレンオキサイド鎖型のトリブロックコポリマーを(PO)(EO)(PO)と表すと、各アルキレンオキシドのユニット数は、好ましくはx=5〜110、y=15〜70であり、より好ましくはx=15〜20、y=50〜60である。このようなトリブロックコポリマーとしては、具体的には、(EO)(PO)70(EO)、(EO)13(PO)30(EO)13、(EO)20(PO)30(EO)20、(EO)26(PO)39(EO)26、(EO)17(PO)56(EO)17、(EO)17(PO)58(EO)17、(EO)20(PO)70(EO)20、(EO)80(PO)30(EO)80、(EO)106(PO)70(EO)106、(EO)100(PO)39(EO)100、(EO)19(PO)33(EO)19、(EO)26(PO)39(EO)26等が挙げられ、これらのトリブロックコポリマーはBASF社等より商業的に入手可能であり、また、小規模製造レベルで所望のx値とy値とを有するものを得る事もできる。さらに、これらのトリブロックコポリマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
さらにまた、本発明においては、エチレンジアミンの2つの窒素原子にそれぞれ2つのポリエチレンオキサイド鎖−ポリプロピレンオキサイド鎖が結合したスターダイブロックコポリマーをテンプレートとして使用する事ができる。このようなスターダイブロックコポリマーとしては、具体的には、{(EO)113(PO)22NCHCHN{(PO)22(EO)113、{(EO)(PO)18NCHCHN{(PO)18(EO)、{(PO)19(EO)16NCHCHN{(EO)16(PO)19等が挙げられる。また、本発明においては、上記のスターダイブロックコポリマーのうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記の界面活性剤を用いて上記の骨格成分を縮重合させる場合、溶媒として水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合物等を使用する事ができる。また、反応に用いる骨格成分と界面活性剤とのモル比(骨格成分/界面活性剤比)は好ましくは60以上であり、より好ましくは90以上であり、さらに好ましくは120以上である。骨格成分/界面活性剤比を前記の範囲内とすると、得られる多孔体細孔径が小さくなるとともに、細孔壁厚が厚くなり、また細孔容積が小さくなる傾向にある。
【0022】
本発明においては、上記の各成分を混合する方法について特に制限はないが、界面活性剤を溶媒と混合し、同時に、又は引き続いて酸を添加して好ましい酸性とした後、骨格成分を添加する事が好ましい。ここで、界面活性剤及び酸を混合する際の温度は特に制限されないが、0〜100℃である事が好ましく、30〜100℃である事がより好ましい。また、骨格成分を添加する際の温度は特に制限されないが、35〜80℃である事が好ましく、40℃〜45℃である事がより好ましい。さらに、骨格成分を添加する際には、骨格成分全量を一度に添加してもよく、混合液を攪拌しながら少量ずつ添加してもよいが、攪拌しながら1分以上にわたって少量ずつ添加する事が好ましい。
【0023】
上記の手順により各成分を混合した後、反応混合物を所定の温度に保持して縮重合反応を行う事により、多孔体前駆体(界面活性剤が細孔内に充填されたままのもの)を得る事ができる。ここで、本発明においては、縮重合反応の反応温度は使用する界面活性剤や骨格成分の種類や濃度によって異なるが、通常0〜100℃であり、好ましくは35〜80℃である。特に、界面活性剤として上記のトリブロックコポリマーを使用する場合、反応温度は40〜45℃である事が好ましい。縮重合反応の反応温度が前記範囲内であると、得られる多孔体の構造の規則性が高くなるとともに、細孔径が小さく、細孔壁厚が厚くなる傾向にある。なお、上記の縮重合反応においては、反応の進行状況に応じて反応温度を適宜変更する事もできる。
【0024】
また、上記の縮重合反応の反応時間は使用する界面活性剤や骨格成分の種類や濃度によって異なるが、通常、8〜24時間である。また、上記の縮重合反応は、静置状態、攪拌状態のいずれで行ってもよく、またそれらを組み合わせて行ってもよい。さらに、上記の縮重合反応においては、界面活性剤に加えてトリメチルベンゼンやトリイソプロピルベンゼン等の疎水性を有する化合物を添加する事によって、得られる多孔体の細孔径を制御する事ができる。
【0025】
本発明においては、上記の縮重合反応の後、得られた多孔体前駆体に対して水熱処理を行う事が好ましい。水熱処理を行うと、界面活性剤除去後の多孔体の強度及び構造規則性が向上し、細孔安定性及び細孔径分布の均一性に優れた多孔体が得られる傾向にある。
【0026】
本発明における水熱処理は以下の手順で行う事ができる。すなわち、縮重合反応に使用したものと同様の界面活性剤を含む水溶液(好ましくは縮重合反応時と同等以下の界面活性剤濃度である)中に多孔体前駆体を分散させて得られる反応液をそのまま、又は必要に応じてさらに希釈して加熱し、所定の時間経過後、反応液を濾過し、得られた多孔体前駆体を乾燥させる。ここで、本発明における水熱処理温度は、通常50〜200℃であり、好ましくは60〜100℃であり、より好ましくは70〜80℃である。また、本発明における水熱処理は弱アルカリ条件下で行う事が好ましく、pH8〜8.5で行う事がより好ましい。反応液のpHは塩酸又は水酸化ナトリウムを用いて調整する事ができる。さらに、本発明における水熱処理時間は特に制限されないが、好ましくは1時間以上であり、より好ましくは3〜8時間である。水熱処理時間が1時間未満であると処理が不十分となる傾向にあり、他方、8時間を超えても処理時間に見合う効果が得られない傾向にある。さらにまた、本発明における水熱処理は攪拌しながら行う事が好ましい。なお、上記の水熱処理を行う際には、反応液を加熱する前に予め室温で数時間攪拌処理を行うと、水熱処理によって得られる上記の効果がより高められる傾向にあるので好ましい。
【0027】
上記の縮重合反応後又は水熱処理後に得られる多孔体前駆体から界面活性剤を除去する事によって、目的の多孔体を得る事ができる。ここで、多孔体前駆体からの界面活性剤の除去は、焼成による方法、水やアルコール等の溶媒で処理する方法等により行う事ができる。
【0028】
焼成による方法を用いる場合、多孔体前駆体を通常300〜1000℃、好ましくは400〜700℃に加熱し、通常30分以上、好ましくは1時間以上保持する事によって界面活性剤を除去する事ができる。なお、上記の焼成は空気を流通させた雰囲気で行う事もできるが、多量の燃焼ガスが発生するため、焼成初期は窒素等の不活性ガスを流通させた雰囲気で行う事が好ましい。
【0029】
また、溶媒で処理する方法を用いる場合、多孔体前駆体に含まれる界面活性剤に対して溶解度の大きい溶媒に多孔体前駆体を分散させ、攪拌した後に固形分を回収する事によって、目的の多孔体を得る事ができる。ここで、本発明において界面活性剤の除去に使用される溶媒としては特に制限はないが、好ましくはメタノール、エタノール、アセトン等が親水性有機溶媒が挙げられる。界面活性剤の抽出効率を十分に得るため、塩酸、硝酸等を少量(好ましくは0.1〜10mol/L)添加する事が好ましい。有機溶媒には、水を添加しても用いられる。また、多孔体前駆体の分散量は溶媒100mlに対して0.5〜50gである事が好ましい。なお、本発明においては、粉砕、ふるい分け、成形等の各工程は、界面活性剤を除去する前の多孔体前駆体に対して行ってもよく、界面活性剤除去後に得られる多孔体に対して行ってもよい。
【0030】
(金属細線)本発明において金属細線とは、多孔体の細孔を鋳型として形成される原子集団(クラスター)のうち、細孔に沿って線状に形成されたものをいう。金属細線の平均直径は抗酸化力の観点から1nm以上50nm以下が好ましく、1nm以上30nm以下がより好ましく、1nm以上10nm以下がさらに好ましい。金属細線の平均直径が1nm未満である場合には、抗酸化力が不十分となる。他方、金属細線の平均直径が50nmを超える場合には、金属細線における表面原子の割合が減少して金属細線表面の特異性がマクロな物性として発現しにくくなる。
【0031】
(金属粒子)本発明において金属粒子とは、多孔体の細孔を鋳型として形成される原子集団(クラスター)のうち、細孔に沿って一定の間隔で球状に形成されたものをいい、その平均直径は抗酸化力の観点から好ましくは1nm以上50nm以下である。
【0032】
本発明における金属細線又は金属粒子の材料は目的に応じて適宜選択されるが、具体的には、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)等の貴金属を用いると、触媒活性がより高水準で両立される傾向にあるので好ましく、その中でも白金が最も好ましい。
【0033】
本発明において、多孔体の細孔内に金属細線又は金属粒子を形成する際に用いる原料化合物としては特に制限されないが、例えば、上記の貴金属の塩又は錯塩を用いる事ができる。より具体的には、白金のクラスターの原料化合物として、HPtCl、Pt(NO(NH、[Pt(NH]Cl、HPt(OH)、PtCl(NH、Pt(NHCl、Pt(NH(OH)、Pt(NH(OH)、KPtCl、PtCl、PtCl等が挙げられる。
【0034】
上記の金属細線又は金属粒子の原料化合物を多孔体の細孔内に導入する方法としては、液相法、固相法、気相法等が挙げられる。気相法においては、クラスターの原料化合物を水、エタノール、ベンゼン等の溶媒に溶解させ、その溶液中に多孔体を加えて攪拌混合する事により;固相法では、固体状の金属細線の原料化合物と多孔体(通常、粉末状である)とを固相で混合し、密閉容器中で加熱した後、過剰の原料化合物を洗浄等により除去する事により;気相法では、金属アルコキシド等の蒸気を発生するものや昇華しやすいものを原料に用い、それらの蒸気を多孔体と接触させる事により、それぞれ原料化合物が多孔体の細孔内に導入される。ここで、金属の塩又は錯塩を水蒸気の存在下で水素等の還元剤で接触させると金属細線が生じ、水蒸気を除去した状態で水素等の還元剤で接触させると金属粒子が生じる。
【0035】
本発明において化粧料とは特に限定するものでないが、例えば、化粧水、エモリエントローション、エモリエントクリーム、モイスチャージェル、パウダリーファンデーション等が挙げられる。
【0036】
本発明の化粧料用金属触媒に担持されている白金、金、銀等の貴金属量は特に限定されるものではないが、0.1重量%〜5重量%が好ましく、0.3重量%〜3重量%がより好ましい。
【0037】
得られた金属細線又は金属粒子触媒に添加剤を加えて、金属触媒含有化粧料を調製する事ができる。添加剤を配合する方法は特に限定されず、金属触媒含有化粧料の抗酸化力を損なわない範囲で、一般的な方法に従って行う事ができる。また添加剤の配合量も、抗酸化力を損なわない範囲で決定する事ができる。
【0038】
本発明の化粧料に含まれる化粧料用金属触媒量は特に限定されるものではないが、0.00001重量%〜100重量%が好ましく、0.00005重量%〜100重量%がより好ましく、0.0001重量%〜100重量%がさらに好ましい。
【0039】
本発明の抗酸化力は特に限定するものではないが、一般的な抗酸化力評価法のひとつであるDPPH法を用いて評価する事ができる。
【0040】
抗酸化力は、安定なラジカルをもつ1, 1−diphenyl−2−picrylhydrazyl(DPPH)の520nmにおける極大吸収が試料添加後に減少する割合によりラジカル消去率を算出し評価した。
【0041】
すなわち、DPPH0.0016g、メタノール50mlを30分間攪拌し、DPPHを溶解させた。この溶液を5mMピロリン酸緩衝液49.5mlに各濃度の試料0.5mlを添加し、室温で20分間反応させた後に520nmの吸光度を測定した(Abs(S))。DPPH0.0016g、メタノール50ml、5mMピロリン酸緩衝液50mlを対照として同様に吸光度を測定し、(Abs(C))、式1によりラジカル消去率を算出した。
【0042】
式1
ラジカル消去率=[Abs(C)−Abs(S)]/Abs(C)×100
【0043】
本発明の化粧料用金属触媒の抗酸化力はDPPH法によるラジカル消去率において、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、70%以上が最も好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら制限されるものではない。
【0045】
製造例1
(多孔体の合成)
粉末ケイ酸ソーダ(SiO/NaO=2.00)を700℃で6時間、空気中で焼成してジケイ酸ソーダ(δ−NaSi)の結晶とし、この結晶50gを水500ml中に分散させて3時間攪拌した後、濾過により固形分を回収してカネマイト結晶を得た。このカネマイト結晶の乾燥重量換算で50g相当を、乾燥させずに0.1Mヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド水溶液1000mlに加えて分散させ、70℃で3時間加熱攪拌した。その後、2規定の塩酸を用いて分散液のpHを8.5とし、さらに70℃で3時間加熱攪拌した。分散液を室温まで放冷した後、分散液中の固形分を濾取し、1000mlのイオン交換水に分散させて攪拌した。この濾過と分散・攪拌とを5回繰り返した後、固形分を60℃で24時間乾燥し、窒素ガス中、450℃で3時間加熱し、さらに空気中、550℃で6時間焼成する事により目的の多孔体(平均細孔直径:2.7nm)を得た。この多孔体はX線回折パターンにおいて、d間隔が3.8nmの位置に1つのピークを有していた。
【0046】
製造例2
上記の多孔体3gをシュレンク管に入れて100℃に加熱し、1×10−4mmHgで2時間真空脱気を行った。その後、多孔体を200mlナス型フラスコに移し、水100mlを加えて分散液を調製した。
【0047】
一方、50mlナス型フラスコに塩化白金酸六水和物(HPtCl・6HO)80mgと水100mlとを入れて混合し、塩化白金酸水溶液を調製した。
【0048】
このようにして得られた分散液と塩化白金酸水溶液とを混合して24時間攪拌した(Pt担持量:1重量%)。その後、40℃に加熱しながらエバポレータを用いて水を留去し、さらに25℃、1×10−4mmHgの条件下で24時間真空脱気して水を完全に除去した。
【0049】
(金属粒子触媒の形成)
次に、得られた残留物を乾燥水素で還元する事により本発明の化粧料用金属触媒Aを1.9g得た。透過電子顕微鏡観察により平均直径3nmの白金金属粒子が細孔内に細孔に沿って一定の間隔で並んでいる様子が観察された。
【0050】
製造例3(金属細線触媒の形成)
乾燥水素で還元する代わりに水蒸気で飽和した水素で還元する以外は製造例2と同様にして本発明の化粧料用金属触媒Bを1.9g得た。透過電子顕微鏡観察により平均直径2.5nmの白金金属細線が細孔内に形成されている事が確認された。
【0051】
製造例4(金属粒子触媒の形成)
添加する塩化白金酸六水和物の量を8mgとした以外は製造例2と同様の方法で、粒子状の白金が0.1重量%担持された化粧料用金属触媒Cを得た。透過電子顕微鏡観察により平均直径2.5nmの白金金属粒子が細孔内に沿って一定の間隔で並んでいる様子が観察された。
【0052】
製造例5(金属粒子触媒の形成)
添加する塩化白金酸六水和物の量を400mgとした以外は製造例2と同様の方法で、粒子状の白金が5重量%担持された化粧料用金属触媒Dを得た。透過電子顕微鏡観察により平均直径2.5nmの白金金属粒子が細孔内に細孔に沿って一定の間隔で並んでいる様子が観察された。
【0053】
(多孔体の合成)
製造例6
ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリドを使用する以外は製造例1と同様な方法にて多孔体(平均細孔直径:4.0nmを)得た。この多孔体はX線回折パターンにおいて、d間隔が5.0nmの位置に1つのピークを有していた。
【0054】
(金属粒子触媒の合成)
製造例7
製造例6で得られた多孔体を使用する以外は製造例2と同様な方法にて、本発明の化粧料用金属触媒Eを1.8g得た。透過電子顕微鏡観察により平均直径3nmの白金金属粒子が細孔内に沿って一定の間隔で並んでいる様子が観察された。
【0055】
比較品の製造例1
多孔体の代わりにシリカゲルA型を使用した以外は製造例2と同様にして触媒aを得た。得られた触媒aは細孔内に金属細線又は金属粒子は形成されていない事を透過電子顕微鏡観察により確認した。また、シリカゲルA型はX線回折パターンにおいてd間隔が2nmより大きい位置にピークを有さなかった。
【0056】
比較品の製造例2
アリーン冷却管と三方コックを接続した200mL二口ナス型フラスコにポリ(1−ビニル−2−ピロリドン)(和光純薬工業株式会社製)3gを入れ、蒸留水200mLで溶解した。この溶液を10分間撹拌した後、塩化白金酸(HPtCl・6HO、和光純薬工業株式会社製)80mgを加えてさらに30分間撹拌した。反応系内を窒素置換し、特級エタノール25mLを加えて窒素雰囲気下を保ちながら100℃で2時間還流した。反応液のUVを測定し、白金イオンピークの消失と、金属固体特有の散乱によるピークの飽和から還元反応の終了を確認した。有機溶媒を減圧留去して、白金ナノコロイド金属触媒bを作製した。
【0057】
実施例1
製造例2で得られた化粧料用金属触媒A0.5mgに水1000mlを加えて金属触媒含有化粧料A(白金濃度1mmol/L)を調製した。
【0058】
実施例2
製造例3で得られた化粧料用金属触媒B0.5mgに水1000mlを加えて金属触媒含有化粧料B(白金濃度1mmol/L)を調製した。
【0059】
実施例3
製造例4で得られた化粧料用金属触媒C5mgに水1000mlを加えて金属触媒含有化粧料C(白金濃度1mmol/L)を調製した。
【0060】
実施例4
製造例5で得られた化粧料用金属触媒D0.1mgに水1000mlを加えて金属触媒含有化粧料D(白金濃度1mmol/L)を調製した。
【0061】
実施例5
製造例7で得られた化粧料用金属触媒E0.1mgに水1000mlを加えて金属触媒含有化粧料E(白金濃度1mmol/L)を調製した。
【0062】
比較例1
化粧料用金属触媒の代わりに比較品の製造例1の触媒aを使用した以外は実施例1と同様にして化粧料を得た。(白金濃度1mmol/L)
【0063】
比較例2
化粧料用金属触媒の代わりに比較品の製造例2の白金ナノコロイド金属触媒bを使用した以外は実施例1と同様にして化粧料を得た。(白金濃度1mmol/L)
【0064】
比較例3
化粧料用金属触媒の代わりに比較品の製造例1の触媒aを使用した以外は実施例1と同様にして化粧料を得た。(白金濃度1mmol/L)
【0065】
比較例4
金属触媒の代わりに比較品の製造例1の触媒aを使用した以外は実施例1と同様にして化粧料を得た。(白金濃度1mmol/L)
【0066】
試験例1
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた化粧料について、以下のように、DPPH法により抗酸化力を評価した。結果を表1に示す。
【0067】
DPPH0.0016g、メタノール50mlを30分間攪拌し、DPPHを溶解させた。一方、実施例1〜4で得られた金属触媒含有化粧料A〜D及び比較例1〜4で得られた化粧料0.5mlにそれぞれ5mMピロリン酸緩衝液49.5mlを加え白金濃度1×10−2mmol、50mlとした。ここに前記DPPHメタノール溶液を添加し、室温で20分間反応させた後に520nmの吸光度を測定した(Abs(S))。DPPH0.0016g、メタノール50ml、5mMピロリン酸緩衝液50mlを対照として同様に吸光度を測定し(Abs(C))、式1:ラジカル消去率=[Abs(C)−Abs(S)]/Abs(C)×100によりラジカル消去率を算出した。
【0068】
【表1】

【0069】
表1より実施例1、2、3、4、5で得られた金属触媒含有化粧料はラジカル消去率50%以上であった。一方比較例1、2、3、4で得られたものはラジカル消去率15%以下であった。
【0070】
実施例6
下記成分(1)〜(5)を混合し、フェイスパック剤100gを得た。
(1) 尿素 2g
(2) グリセリン 0.4g
(3) 金属触媒含有化粧料A(白金濃度1mmol/L)0.5g
(4) パセリエキス 0.5g
(5) 精製水 96.6g
【0071】
実施例7
下記成分(1)〜(5)を混合し、フェイスパック剤100gを得た。
(1) 尿素 2g
(2) グリセリン 0.4g
(3) 金属触媒含有化粧料B(白金濃度1mmol/L)0.5g
(4) パセリエキス 0.5g
(5) 精製水 96.6g
【0072】
実施例8
下記成分(3)、(4)、及び(8)〜(10)を混合した溶液と、下記成分(1)、(2)(5)〜(7)及び(11)を混合溶解した溶液とを混合して化粧水100gを得た。
(1) グリセリン 5g
(2) 1,3−ブチレングリコール 6.5g
(3) ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル 1.2g
(4) エチルアルコール 8.0g
(5) 金属触媒含有化粧料A(白金濃度1mmol/L) 0.5g
(6) 乳酸 0.05g
(7) 乳酸ナトリウム 0.1g
(8) パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル 3.0g
(9) 防腐剤 適量
(10)香料 適量
(11)精製水 75.5g
【0073】
実施例9
下記成分(13)に(7)〜(10)を混合し70℃とした水相に、下記成分(1)〜(6)及び(11)、(12)を70℃に混合溶解した油相とをホモミキサーで均一に乳化混合してエモリエントローション100gを得た。
(1) ステアリン酸 2.0g
(2) セチルアルコール 1.5g
(3) ワセリン 4.0g
(4) スクワラン 5.0g
(5) MCT 2.0g
(6) ソルビタンモノオレイン酸エステル 2.0g
(7) ジプロピレングリコール 5.0g
(8) PEG1500 3.0g
(9) トリエタノールアミン 1.0g
(10) 金属触媒含有化粧料A(白金濃度1mmol/L)0.5g
(11) 防腐剤 適量
(12) 香料 適量
(13) 精製水 73.9g
【0074】
実施例10
下記成分(13)に(11)、(12)を混合し70℃とした水相に、下記成分(1)〜(10)を70℃に混合溶解した油相とをホモミキサーで均一に乳化混合して、脱気、ろ過、冷却を行いエモリエントクリーム100gを得た。
(1) ステアリン酸 2.0g
(2) ステアリルアルコール 7.0g
(3) 還元ラノリン 2.0g
(4) スクワラン 5.0g
(5) オクチルドデカノール 6.0g
(6) POE(20)セチルアルコールエーテル 2.0g
(7) プロピレングリコールモノステアリン酸エステル 3.0g
(8) 防腐剤 適量
(9) 香料 適量
(10)酸化防止剤、防腐剤 適量
(11)プロピレングリコール 5.0g
(12)金属触媒化粧料A(白金濃度1mmol/L)0.5g
(13)精製水 67.4g
【0075】
実施例11
下記成分(13)に(3)、(4)を均一に溶解させた後、(2)、(8)〜(10)及び(12)を添加し水相を得る。一方、(1)に(5)を加え、55℃で溶解し、これに(7)及び(11)を加えた。先に調製した水相を攪拌しながら、徐々にこれを加えた。最後に(6)を加えて十分に攪拌し、モイスチャージェル100gを得た。
【0076】
(1) ジプロピレングリコール 7.0g
(2) PEG1500 8.0g
(3) カルボキシビニルポリマー 0.4g
(4) メチルセルロース 0.2g
(5) POE(15)オレイルアルコールエーテル 1.0g
(6) 水酸化カリウム 0.1g
(7) 防腐剤 適量
(8) 褐色防止剤 適量
(9) 色剤 適量
(10)キレート剤 適量
(11)香料 適量
(12)金属触媒含有化粧料A(白金濃度1mmol/L)0.5g
(13)精製水 82.7g
【0077】
実施例12
下記成分(1)〜(10)及び(16)をブレンダーで均一に混合した。次に(11)〜(15)及び(17)を添加した後(18)を噴霧し均一に混ぜた。これを粉砕機で粉砕した後、ふるいを通し、圧縮成形する事でパウダリーファンデーション100gを得た。
(1) タルク 20.3g
(2) マイカ 35.0g
(3) カオリン 5.0g
(4) 二酸化チタン 10.0g
(5) 雲母チタン 3.0g
(6) ステアリン酸亜鉛 1.0g
(7) ベンガラ 1.0g
(8) 黄酸化鉄 3.0g
(9) 黒酸化鉄 0.2g
(10)ナイロンパウダー 9.4g
(11)スクワラン 6.0g
(12)酢酸ラノリン 1.0g
(13)ミリスチン酸オクチルドデシル 2.0g
(14)ジイソオクタン酸ネオペンチルグリコール 2.0g
(15)モノオレイン酸ソルビタン 0.5g
(16)金属触媒含有化粧料A 0.5g
(17)防腐剤、酸化防止剤 適量
(18)香料 適量
【0078】
比較例5
金属触媒含有化粧料の代わりに比較品の製造例1で得られた触媒aを使用した以外は実施例9と同様な方法でエモリエントローションを得た。
【0079】
試験例2
実施例9、比較例5で得られたエモリエントローションを10人のパネラー(20代女性10名)にて1ヶ月間使用し、使用後の肌のはり・顔色のくすみの改善効果を5段階評価し、10人の平均を算出した。結果を表2に示す。(5:著しく高い改善効果が体感された、4:高い改善効果が体感された、3:改善効果が体感された、2:僅かながら改善効果が体感された、1:改善効果が体感されなかった
【0080】
【表2】

【0081】
表2に示すように実施例9で得られたエモリエントローションは比較例5で得られたエモリエントローションより、高い改善効果が体感された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均細孔直径が1nm以上50nm以下であり無機骨格を有する多孔体と、該多孔体の細孔内に形成された、平均直径が1nm以上50nm以下である金属細線又は金属粒子を備えた化粧料用金属触媒
【請求項2】
請求項1に記載の多孔体がX線回折パターンにおいて、d間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを持ち、該多孔体の細孔内に形成された、平均直径が1nm以上50nm以下である金属細線又は金属粒子を備えた請求項1記載の化粧料用金属触媒
【請求項3】
無機骨格を有する多孔体がシリケートからなる請求項1又は2記載の化粧料用金属触媒
【請求項4】
抗酸化力を有する事を特徴とした請求項1〜3いずれか記載の化粧料用金属触媒
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の化粧料用金属触媒を含有する化粧料

【公開番号】特開2009−67756(P2009−67756A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240481(P2007−240481)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】