説明

金属線の製造方法

【課題】金属線材の圧延中において金属線材の捻転を防止することができる金属線の製造方法を提供する。
【解決手段】全工程を通じての総減面率を75%以上となるように、金属線材を第1偏平成形ロールで温間圧延し、次に第1カリバーロールで拘束部分と下記式(1)及び式(2)を満たす非拘束部分とからなる断面形状を有するように温間圧延し、そして前記非拘束部分が押圧されるように第2偏平成形ロールで温間圧延し、さらに偏平率を低下させるように温間圧延する。
≧ 0.26w10 (1)
≧ 2.23w10 (2)
(式中、wは非拘束部分の両端の直線距離、w10は第1カリバーロールで温間圧延した後の金属線材の幅、rは非拘束部分の外周の曲率半径を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属線材を圧延することにより金属線を製造する方法に関し、特にボルトやねじの加工素材に用いられる金属線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧延による金属線の製造方法として、温間圧延で金属線材に大ひずみを付与することで超微細粒組織の金属線を製造する方法が知られている。例えば、特許文献1には、4つ以上の偶数個の温間圧延工程からなる金属線の製造方法であって、圧延の上手側から奇数番目の圧延工程では一対のカリバーロールを配置することで形成される孔型形状(以下、孔型形状と略すことがある。)がオーバル形状である当該一対のカリバーロール(以下、オーバルカリバーロールともいう。)の間に金属線材を通し、偶数番目の圧延工程では直前の奇数番目の圧延工程におけるカリバーロールの軸心方向と直交する軸心方向を有し且つ孔型形状がスクエア形状である一対のカリバーロール(以下、スクエアカリバーロールともいう。)の間に金属線材を通す金属線の製造方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の製造方法では、第3番目以降の奇数(2n+1,nは1以上の整数である。以下同じ。)番目の圧延工程において、圧延中に金属線材がその進行方向(以下、X軸方向ともいう。)に垂直な断面(以下、YZ断面ともいう。)で回転する、いわゆる捻転現象が発生しやすい。
【0004】
この捻転現象を防止するために、偶数(2n)番目の圧延工程におけるカリバーロールの軸心方向に対して、これに次ぐ奇数(2n+1)番目の圧延工程におけるカリバーロールの軸心方向がYZ断面で45°の角度となるように設定する方法が特許文献2に開示されている。又、45°傾ける代わりに、前記奇数(2n+1)番目の圧延工程の入側において金属線材にYZ断面で45°捻りが極めて安定且つ正確に行なわれるように、当該奇数(2n+1)番目の圧延工程入側とその1つ手前の偶数(2n)番目の圧延工程出側との間の距離(L(3))を離間させて捻転現象を防止する方法が、特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−194550号公報
【特許文献2】特開2007−136546号公報
【特許文献3】特開2008−142770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2及び特許文献3の製造方法では、次のような解決すべき課題がある。
【0007】
1)特許文献2の製造方法では、専用のコンバインドロール圧延装置が必要である。即ち、上記製造方法を行うには、偶数(2n)番目の圧延工程とこれに次ぐ奇数(2n+1)番目の圧延工程とで両カリバーロールの軸心方向の交差角を45°に設定するために、圧延装置として、奇数番目に配置されたカリバーロールと偶数番目に配置されたカリバーロールの両者の軸心方向の交差角が全て90°の角度に設定された通常のコンバインドロール圧延装置と異なり、奇数(2n−1)番目に配置されたカリバーロールの軸心方向とこれに次ぐ偶数(2n)番目に配置されたカリバーロールの軸心方向の交差角が90°の角度に設定されているとともに、当該偶数(2n)番目に配置されたカリバーロールの軸心方向とこれに次ぐ奇数(2n+1)番目に配置されたカリバーロールの軸心方向の交差角が45°の角度に設定された専用のコンバインドロール圧延装置を用いる必要がある。通常のコンバインドロール圧延装置では、カリバーロールを2つの軸心方向で配置すればよいのに対して、この専用の圧延装置は、カリバーロールを4つの軸心方向で配置する必要があるため、圧延装置の構造が複雑になって設備費用が増加するのに加えて、各圧延工程での被圧延材のX軸方向の軸線を一致させるのが困難となり、設備メンテナンスの負担が大きくなるという問題がある。
【0008】
又、上記通常のコンバインドロール圧延設備を用いて捻転のない金属線を製造する方法として、偶数(2n)番目の圧延機とこれに次ぐ奇数(2n+1)番目の圧延機の間に、金属線材のYZ断面で45°捻るツイスター(捻線機)を追加する方法が考えられる。しかしながら、ツイスターの通線速度は最大で約10m/分であるため、圧延時の通線速度が最大で約25m/分の専用のコンバインドロール圧延設備を使用した場合と比べて、生産効率が大幅に低下するという新たな問題を招来する。
【0009】
2)特許文献3の製造方法では、金属組織が十分に細粒化しなかったり、圧延長手方向で結晶粒度のばらつきが生じたりすることがある。即ち、特許文献3の製造方法では、第3番目以降の奇数(2n+1)番目の圧延工程の入側において金属線材にYZ断面で45°捻りが極めて安定且つ正確に行なわれるには、直前の工程の偶数(2n)番目の圧延機出側と当該奇数(2n+1)番目の圧延機入側との間の距離(L(3))を、二つ前の工程の奇数(2n−1)番目の圧延機出側とこれに次ぐ偶数(2n)番目の圧延機入側との間の距離(L(2))の3倍以上にする必要があるところ、より微細な金属組織が得られるように総減面率を上げる目的で圧延工程を増やした場合には、金属線材のL(3)を移動する間の放熱量はL(2)を移動する間の放熱量よりも大きいため、最終工程に近づくほど、特許文献2の製造方法と比べて、前記奇数(2n+1)番目の圧延機入側での金属線材の温度が低下して金属組織が十分に細粒化しないという問題がある。又、最終工程に近づくほど、放熱量が大きいため金属線材のX軸方向での放熱ばらつきに伴い、結晶粒度がばらつくという問題もある。
【0010】
本発明は上記の事情を鑑みてなされたものであり、上記通常のコンバインドロール圧延装置を用いて第1〜第3圧延機の配置をL(3)<3L(2)に設定し、且つ、偶数(2n)番目とこれに次ぐ奇数(2n+1)番目の両圧延機の間にツイスターを設置しない場合であっても、圧延中の金属線材の捻転を防止することができる金属線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記通常のコンバインドロール圧延装置を用いて金属線材を圧延する際に、圧延第3工程以降の金属線材の偏平率を増加させる圧延工程において、YZ断面の形状がZ軸に線対称の2k角形(但し、kは4以上の自然数であり、当該2k角形中の一対の対向する隅部は凸曲線の形状である。)である金属線材を、凸曲線形状の隅部が金属線材の圧延幅方向の中央部分になるように配置し、この変形抵抗が相対的に小さい凸曲線形状の隅部をカリバーロールで最初に押圧し、続いてこの押圧した部分を確実に拘束することで、圧延時の金属線材のX軸回りの回転を抑制できるであろうとの考えの下、カリバーロールで拘束される前記隅部の形状を検討した結果、この隅部の形状が、幅が2k角形の幅の0.26倍以上で、凸曲線が2k角形の幅の2.23倍以上の曲率半径の曲線を満足することで、捻転を防止できることを見出した。
【0012】
本発明は、金属線材を圧延することにより金属線を製造する方法として、前記金属線材を一対の第1偏平成形ロールの間に通すことにより、当該金属線材の進行方向に垂直な断面であるYZ断面において偏平な形状に温間圧延する第1工程と、ロール軸方向の両端から中央に向かうに従って縮径する一対の円錐台面である第1圧延面及び第2圧延面と、第1圧延面と第2圧延面の間に介在し第1圧延面及び第2圧延面それぞれの小径側端に対して鈍角で交差する第3圧延面とを持つ周面をそれぞれ備え、当該周面同士が対向するように配置された一対の第1カリバーロールの間に、第1工程で圧延された金属線材を通すことにより、各第1カリバーロールの第1圧延面、第2圧延面及び第3圧延面に面接触して当該カリバーロールにそれぞれ拘束される拘束部分と、これら拘束部分に挟まれる部分であって第1カリバーロールに拘束されないとともに下記式(1)及び式(2)を満たす二つの非拘束部分とからなる断面形状を有するように温間圧延する第2工程と、第2工程で圧延された金属線材の進行方向に沿って前記両非拘束部分の外表面に、当該両非拘束部分のYZ断面における外周長さよりも長く且つYZ断面において平行な円筒面又は当該両非拘束部分のYZ断面における外周の曲率半径よりも大きい曲率半径を有し内側に凸の一対の曲面を含む周面を持つとともに第1カリバーロールの軸心方向と直交する軸心方向を有する一対の第2偏平成形ロールの当該円筒面又は当該曲面を接触させて、当該両非拘束部分が押圧されるように第2工程で圧延された金属線材を温間圧延することにより、偏平率を増加させる第3工程と、第3工程で圧延された金属線材を、その偏平率を低下させるように温間圧延する第4工程とを少なくとも備え、全工程を通じての総減面率が75%以上としたものである。
【0013】
≧ 0.26w10 (1)
≧ 2.23w10 (2)
(式中、wは第2工程で圧延された金属線材のYZ断面における非拘束部分の両端の直線距離を示し、w10は第2工程で圧延された金属線材のYZ断面において、第3圧延面に面接触して形成された両部分の最短距離を示し、rは第2工程で圧延された金属線材のYZ断面における非拘束部分の外周の曲率半径を示す。)
【0014】
この方法によれば、第3工程において、金属線材のうち、まず、上記式(1)及び式(2)を満たす第2工程で形成された非拘束部分を第2偏平成形ロールで押圧する。非拘束部分は拘束部分と比べて変形抵抗が小さいので、押圧された部分は比較的容易にロール形状に沿った形状に成形される。圧延の進行につれて、第2工程で形成された非拘束部分の中で、第2偏平成形ロールによって拘束される部分が圧延幅方向の中央部から外側へと順次拡大していく。そして、非拘束部分を全て押圧して金属線材がもはや捻転できなくなった後に、変形抵抗が比較的大きい第2工程で形成された拘束部分を第2偏平成形ロールで押圧することで、金属線材の偏平率を増加させていく。これにより、全工程の中で捻転が最も発生しやすい第3工程においても、金属線材の捻転を抑制することができる。
【0015】
前記第4工程は、ロール軸方向の両端から中央に向かうに従って縮径する一対の円錐台面である第1圧延面及び第2圧延面と、第1圧延面と第2圧延面の間に介在し第1圧延面及び第2圧延面それぞれの小径側端に対して鈍角で交差する第3圧延面とを持つ周面をそれぞれ備え、当該周面同士が対向するように配置された一対の第2カリバーロールの間に、第3工程で圧延された金属線材を通すことにより、各第2カリバーロールの第1圧延面、第2圧延面及び第3圧延面に面接触して当該カリバーロールにそれぞれ拘束される拘束部分と、これら拘束部分に挟まれる部分であって第2カリバーロールに拘束されないとともに下記式(3)及び式(4)を満たす二つの非拘束部分とからなる断面形状を有するように温間圧延する第1サブ工程と、第1サブ工程で圧延された金属線材の進行方向に沿って前記両非拘束部分の外表面に、当該両非拘束部分のYZ断面における外周長さよりも長く且つYZ断面において平行な円筒面又は当該両非拘束部分のYZ断面における外周の曲率半径よりも大きい曲率半径を有し内側に凸の一対の曲面を含む周面を持つとともに第2カリバーロールの軸心方向と直交する軸心方向を有する一対の第3偏平成形ロールの当該円筒面又は当該曲面を接触させて、当該両非拘束部分が押圧されるように第1サブ工程で圧延された金属線材を温間圧延することにより、偏平率を増加させる第2サブ工程と、第2サブ工程で圧延された金属線材を、その偏平率を低下させるように温間圧延する第3サブ工程とからなる工程であることが好ましい。
【0016】
≧ 0.26w20 (3)
≧ 2.23w20 (4)
(式中、wは第1サブ工程で圧延された金属線材のYZ断面における非拘束部分の両端の直線距離を示し、w20は第1サブ工程で圧延された金属線材のYZ断面において、第3圧延面に面接触して形成された両部分の最短距離を示し、rは第1サブ工程で圧延された金属線材のYZ断面における非拘束部分の外周の曲率半径を示す。)
【0017】
この第4工程によれば、第2工程と第3工程に続いて、これらと同様な加工である第1サブ工程と第2サブ工程を繰り返すことで、金属線材の全工程を通じての総減面率を高めることができる。その結果、金属線の結晶粒度をより微細にすることができ、金属線の強度を向上させることができる。
【0018】
前記第3サブ工程は、ロール軸方向の両端から中央に向かうに従って縮径する一対の円錐台面である第1圧延面及び第2圧延面と、第1圧延面と第2圧延面の間に介在し第1圧延面及び第2圧延面それぞれの小径側端に対して鈍角で交差する第3圧延面とを持つ周面をそれぞれ備え、当該周面同士が対向するように配置された一対の第3カリバーロールの間に、前記第2サブ工程で圧延された金属線材を通して温間圧延するサブ工程であることが好ましい。
【0019】
この第3サブ工程によれば、第2サブ工程に続いて、第1サブ工程と同様な圧延面をもつカリバーロールで金属線材を押圧するので、最終工程に至るまで金属線材に新たな結晶生成を促し、金属線の結晶粒度をより一層微細にすることができる。又、この第3サブ工程によれば、YZ断面が2k角形(但し、kは4以上の自然数であり、当該2k角形中の一対の対向する隅部は凸曲線の形状である。)の偏平率の低い加工素材を得ることができる。
【0020】
前記第3サブ工程は、前記第2サブ工程で圧延された金属線材を、互いに対向し且つYZ断面において両者で円を形成する円弧回転面からなる周面を持つ一対の円周成形ロールの間に通して温間圧延するサブ工程であることも好ましい。
【0021】
この第3サブ工程によれば、円周成形ロールによって金属線材に対してYZ断面での形状が円形になる圧延を施すので、巻き取り性に優れるとともにボルトやねじの加工素材に適した金属線を得ることができる。
【0022】
この金属線の製造方法において、前記第2工程における一対の第1カリバーロールの軸心方向が、前記第1工程における一対の第1偏平成形ロールの軸心方向に対して直交していることが好ましい。又、前記第1サブ工程における一対の第2カリバーロールの軸心方向が、前記第3工程における一対の第2偏平成形ロールの軸心方向に対して直交し、且つ、前記第3サブ工程における一対の第3カリバーロールの軸心方向が、前記第2サブ工程における一対の第3偏平成形ロールの軸心方向に対して直交していることが好ましい。
【0023】
これら方法によれば、第1工程から第3工程まで、又は第1工程から最終工程である第3サブ工程まで各工程間のロールの軸心方向が互いに直交するので、第2工程以降で金属線材のうち、変形抵抗が最も小さい部分である前工程の非拘束部分を最初に押圧して、新たな結晶生成を促すことができる。その結果、直交させない場合と比べて金属線の結晶粒度をより微細にして、金属線の強度をより向上させることができる。
【0024】
前記第1カリバーロールとしては、第3圧延面が前記第1カリバーロールの中心軸に平行な円筒面、互いに連続する二つの円錐台面からなる回転面、互いに連続する三つの円錐台面からなる回転面及び互いに連続する四つの円錐台面からなる回転面のうちのいずれかであることが好ましい。前記第2カリバーロールとしては、第3圧延面が前記第2カリバーロールの中心軸に平行な円筒面、互いに連続する二つの円錐台面からなる回転面、互いに連続する三つの円錐台面からなる回転面及び互いに連続する四つの円錐台面からなる回転面のうちのいずれかであることが好ましい。又、前記第3カリバーロールとしては、第3圧延面が前記第3カリバーロールの中心軸に平行な円筒面、互いに連続する二つの円錐台面からなる回転面、互いに連続する三つの円錐台面からなる回転面及び互いに連続する四つの円錐台面からなる回転面のうちのいずれかであることが好ましい。
【0025】
これら第1〜第3カリバーロールによれば、それぞれの孔型形状は線対称の六角、八角、十角及び十二角の中のいずれかになり、孔型形状が線対称の四角である従来のスクエアカリバーロールと比べて、圧延時の金属線材の非拘束部分が増加するので、ロール寿命を向上させることができる。
【0026】
前記金属線材として鋼線材を用いることができる。この場合、第1〜第4工程を通じて鋼線材に逐次大ひずみを付与するので、平均粒径が2μm以下の超微細粒組織を有する鋼線を得ることができる。又、全工程を通じての総減面率が75%以上なので、直径18〜55mmの鋼線材を用いれば、直径9〜27mmのねじやボルトの加工素材に好適な鋼線を得ることができる。
【0027】
前記鋼線材は、C:0.01〜0.2質量%と、Si:0.35質量%以下と、Mn:0.3〜1.5質量%と、P:0.02質量%以下(0質量%を含む)と、S:0.01質量%以下(0質量%を含む)と、Ti:0.001〜0.01質量%及びNb:0.01〜0.03質量%の中の少なくともいずれか一方とを含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼線材であることが好ましい。この鋼線材を用いれば、Ni、Cr、Moなどの合金元素を添加していないにも拘わらず、本発明の製造方法から得られた鋼線を冷間圧造又は輾造することで強度区分が10.9T以上の高強度小ねじや高強度マイクロねじを得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明では、通常のコンバインドロール圧延装置で第1〜第3圧延機の配置をL(3)<3L(2)に設定し、且つ、偶数(2n)番目とこれに次ぐ奇数(2n+1)番目の両圧延機の間にツイスターを設置しない場合であっても、圧延中の金属線材の捻転を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態で用いられる温間圧延設備1の概略構成を示した図である。
【図2】一対の圧延ロールで形成される孔型形状の模式図である。
【図3】第1工程の圧延出側におけるYZ断面の模式図である。
【図4】第2工程の圧延出側におけるYZ断面の模式図である。
【図5】第3工程の圧延出側におけるYZ断面の模式図である。
【図6】第1サブ工程の圧延出側におけるYZ断面の模式図である。
【図7】第2サブ工程の圧延出側におけるYZ断面の模式図である。
【図8】第3サブ工程の圧延出側におけるYZ断面の模式図である。
【図9】本発明の実施例の第1工程、第2工程、第3工程、第1サブ工程、第2サブ工程及び第3サブ工程で用いた一対の圧延ロールで形成される孔型形状の図である。
【図10】試験No.5の圧延幅方向断面における金属組織を示す電子顕微鏡写真(図面代用写真)である。
【図11】試験No.5の圧延長手方向断面における金属組織を示す電子顕微鏡写真(図面代用写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る金属線の製造方法の一実施形態を、図1〜図8を参照しながら説明する。
【0031】
〔圧延設備の構成〕
図1は、この実施形態に用いられる温間圧延設備1の概略構成を示した図である。図2は、温間圧延設備1に配置された一対の圧延ロールで形成される孔型形状の模式図である。図中、(a)は第1スタンドに配置された一対の第1偏平成形ロール41で形成される孔型形状を、(b)は第2スタンドに配置された一対の第1カリバーロール42で形成される孔型形状を、(c)は第3スタンドに配置された一対の第2偏平成形ロール43で形成される孔型形状を、(d)は第4スタンドに配置された一対の第2カリバーロール44で形成される孔型形状を、(e)は第5スタンドに配置された一対の第3偏平成形ロール45で形成される孔型形状を、(f)は第6スタンドに配置された一対の第3カリバーロール46で形成される孔型形状を示す。
【0032】
まず、温間圧延設備1を図1に基づいて説明する。温間圧延設備1は、上流側から順に、金属線材Mを供給する線材供給装置10と、巻き戻された金属線材Mを直線状に矯正する矯正機20と、圧延前に金属線材Mを所定の温間圧延開始温度に加熱する線材加熱装置30と、金属線材Mを所定の線径まで圧延するコンバインドロール圧延装置40と、コンバインドロール圧延装置40によって圧延された金属線Pを巻き取る線材巻取装置50をと備えている。
【0033】
コンバインドロール圧延装置40は、圧延上手側から順に、圧延ロールの軸心方向が交互に直交する第1〜6スタンドと、各スタンドにそれぞれ配置された一対の圧延ロール41〜46とを備えている。各スタンドは、前後する2つのスタンドの間隔が、第2スタンドの出側から第3スタンドの入側までの距離L2及び第4スタンドの出側から第5スタンドの入側までの距離L4を第1スタンドの出側から第2スタンドの入側までの距離L1の1.2倍に、第3スタンドの出側から第4スタンドの入側までの距離L3及び第5スタンドの出側から第6スタンドの入側までの距離L5をL1と等倍になるように設置されている。
【0034】
図2において、第1偏平成形ロール41は、その圧延面が楕円面S0からなるオーバルカリバーロールである。第1カリバーロール42、第2カリバーロール44、第3カリバーロール46は、各々圧延面がロール軸方向の両端から中央に向かうに従って縮径する一対の円錐台面である第1圧延面S1及び第2圧延面S2と、第1圧延面S1と第2圧延面S2の間に介在し第1圧延面S1及び第2圧延面S2それぞれの小径側端に対して鈍角で交差し且つロールの中心軸に平行であって前工程で圧延されて形成された非拘束部分の外表面のYZ断面における長さ(外周長さ)よりも円筒長さが短い円筒面である第3圧延面S3とからなるカリバーロール(以下、六角カリバーロールともいう。)である。そして、第2偏平成形ロール43、第3偏平成形ロール45は、各々圧延面がロール軸方向の両端から中央に向かうに従って縮径する一対の円錐台面である第4圧延面S4及び第5圧延面S5と、第4圧延面S4と第5圧延面S5の間に介在し第4圧延面S4及び第5圧延面S5それぞれの小径側端に対して鈍角で交差し且つロールの中心軸に平行であって前工程で圧延されて形成された非拘束部分の外表面のYZ断面における長さ(外周長さ)よりも円筒長さが長い円筒面である第6圧延面S6からなるカリバーロール(以下、ボックスカリバーロールともいう。)である。
【0035】
線材加熱装置30は、室温の金属線材Mを所定の温間圧延開始温度まで加熱できる装置である。例えば、抵抗加熱方式、中周波加熱方式や高周波加熱方式のものを用いることができる。又、線材供給装置10、矯正機20及び線材巻取装置50として、公知のものを用いることができる。
【0036】
尚、本実施形態では、コンバインドロール圧延装置として6スタンドのものを用いたが、75%以上の総減面率が確保できるのであれば、4スタンドのものでも、5スタンドのものでもよい。又、7スタンド以上のものでもよい。
【0037】
〔金属線材の構成〕
次に、金属線材Mについて説明する。金属線材Mは、例えば、チタン、銅などの金属単体であってもよいし、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、合金鋼、マグネシウム合金、アルミニウム合金、チタン合金などの各種合金であってもよい。炭素鋼としては、化学組成がC:0.01〜0.2質量%と、Si:0.35質量%以下と、Mn:0.3〜1.5質量%と、P:0.02質量%以下(0質量%を含む)と、S:0.01質量%以下(0質量%を含む)と、Ti:0.001〜0.01質量%及びNb:0.01〜0.03質量%の中の少なくともいずれか一方とを含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼(以下、鋼種Aという。)が好ましい。Ti及び/又はNbを添加した炭素鋼は、Ti及び/又はNbの窒化物が鋼の結晶の成長を抑制するので、粒径のばらつきが小さく(即ち均質で)且つ平均粒径が1μm以下の超微細粒組織を有する例えば線径1.25mmの鋼線を得ることができ、Ni、Cr、Mo、V、Bなどの強度向上元素を添加しなくともよいからである。
【0038】
金属線材Mの線径は温間圧延設備1で圧延できる線径であればよい。例えば、ロール径(直径)が500mmのカリバーロールを用いた場合には、線径(直径)25mm以上35mm以下の金属線材Mを圧延することができる。ロール径が225mmのカリバーロールを用いた場合には、線径12mm以上25mm未満の金属線材Mを圧延することができる。ロール径が160mmのカリバーロールを用いた場合には、線径5mm以上12mm未満の金属線材Mを圧延することができる。ロール径が100mmのカリバーロールを用いた場合には、線径2mm以上5mm未満の金属線材Mを圧延することができる。金属線材Mを線材加熱装置30で加熱する前に、その外周面に付着するスケールを除去する点から酸洗又はショットブラストを行うことが好ましい。又、圧延後の金属線Pの結晶粒度をより微細にする点及び金属線Pの寸法精度を向上させる点から、金属線材Mに例えばダイスを用いて減面率10〜40%の伸線加工を行うことが好ましい。
【0039】
〔圧延工程〕
次に、本実施形態の各圧延工程の詳細を説明する。
1.第1工程(オーバルカリバーロールによる圧延加工)
まず、線材加熱装置30で所定の温間圧延開始温度まで加熱された金属線材Mを、第1スタンドに設置された一対の第1偏平成形ロール(オーバルカリバーロール)41の間に通す。これにより、金属線材MのYZ断面形状を円形から偏平な形状に成形する。図3は、第1工程の圧延出側におけるYZ断面の模式図である。具体的には、図3に示すように、YZ断面形状が略真円形の金属線材M0を第1偏平成形ロール41の圧延面S0で押圧することにより、YZ断面形状がX軸に軸対称であって圧延幅方向に非拘束部分F1を有する偏平な形状の金属線材M1に成形する。第1工程で偏平な形状の金属線材M1を得ることによって、次工程(第2工程)での減面率を高めることができる。
【0040】
ここで、偏平な形状とは、YZ断面において、圧延幅方向(Y軸上の方向)の長さWが、圧延幅方向と直交する方向(Z軸上の方向)の長さHよりも長い形状をいい、第2工程での動的再結晶を促進させる点から、偏平率FL(=H÷W×100)は50〜70%が好ましく、55〜60%がより好ましい。偏平率FLを50%以上にすることで、金属線材が強圧下されて結晶粒はより微細になる傾向を示す。一方、偏平率FLを70%以下にすることで、金属線材の中で非拘束部分は所定の割合を占めることができ、これにより、次工程(第2工程)において、金属線材が第1カリバーロール42の第1圧延面S1及び第2圧延面S2と面接触する前に、第3圧延面S3と面接触する部分が相対的に多くなる。その結果、次工程(第2工程)での金属線材の捻転をより確実に抑制することができる。
【0041】
第1工程における減面率R1は10〜30%が好ましく、20〜27%がより好ましい。減面率R1を10%以上にすることで、金属線材が強圧下されて結晶粒はより微細になる傾向を示す。一方、減面率R1を30%以下にすることで、金属線材中の非拘束部分でのシワ疵の発生を抑制することができる。尚、減面率とは、金属線材Mが圧延によって減少した面積の比率であり、圧延前の面積をAin、圧延後の面積をAoutとして、減面率Rは(Ain−Aout)÷Ain×100(%)で表される。
【0042】
2.第2工程(六角カリバーロールによる圧延加工)
次に、第1工程で圧延された金属線材M1を、第2スタンドに設置された一対の第1カリバーロール(六角カリバーロール)42の間に通す。これにより、金属線材M1のYZ断面形状を、各第1カリバーロール42の第1圧延面S1、第2圧延面S2及び第3圧延面S3に面接触してこれら圧延面に拘束される二つの拘束部分と、これら拘束部分に挟まれる部分であって第1カリバーロール42に拘束されないとともに上記式(1)及び式(2)を満たす二つの非拘束部分F2とからなる形状に成形する。
【0043】
具体的には、第2工程の圧延出側におけるYZ断面の模式図である図4に示すように、まず金属線材M1の非拘束部分F1を第3圧延面S3で押圧し、続いて第1圧延面S1と第2圧延面S2で金属線材M1の非拘束部分F1の両端部を押圧する。そして、第1カリバーロール42に押圧されない部分(非拘束部分F2)が上記式(1)及び式(2)を満たすまで、金属線材M1の拘束部分を第1圧延面S1と第2圧延面S2で押圧する。これにより、YZ断面形状が偏平な形状である金属線材M1を、YZ断面形状がX軸に軸対称であって圧延幅方向に非拘束部分F2を有する2k角形(但し、k=4で、当該2k角形中の一対の対向する隅部が非拘束部分F2で凸曲線の形状である。)である金属線材M2に成形する。押圧で生じた余肉は、圧延幅方向(Z軸上の方向)の中央部から順次外側への流動するため、第2工程では金属線材の捻転が抑制され、これに起因した折込み疵も抑制される。
【0044】
尚、第2工程で金属線材M2に上記式(1)及び式(2)を満たす非拘束部分F2を形成することによって、次工程(第3工程)での捻転を防止することができる。
【0045】
第2工程における減面率R2は20〜40%が好ましく、25〜30%がより好ましい。減面率R2を20%以上にすることで、金属線材が強圧下されて結晶粒はより微細になる傾向を示す。一方、減面率R2を40%以下にすることで、金属線材中の非拘束部分でのシワ疵の発生を抑制することができる。
【0046】
3.第3工程(ボックスカリバーロールによる圧延加工)
次に、第2工程で圧延された金属線材M2を、第3スタンドに設置された一対の第2偏平成形ロール(ボックスカリバーロール)43の間に通す。これにより、金属線材M2の非拘束部分F2を各第2偏平成形ロール43の円筒面である第6圧延面S6に接触させて押圧し、YZ断面形状における偏平率が第2工程で圧延された金属線材M2と比べて増加した形状に成形する。
【0047】
具体的には、第3工程の圧延出側におけるYZ断面の模式図である図5に示すように、第3工程では、まず、金属線材M2の非拘束部分F2を第6圧延面S6で押圧する。これにより、上記式(2)を満たす非拘束部分F2は、第6圧延面S6に接する部分が押圧中に圧延幅方向(Y軸上の方向)に殆ど蛇行することなく、円筒面である第6圧延面S6に沿った形状に容易に成形される。そして、圧延の進行とともに、金属線材M2の非拘束部分F2のうち、第6圧延面S6に拘束される部分が圧延幅方向外側に増加していく。金属線材M2の非拘束部分F2は上記式(1)を満たし、非拘束部分F2全体が第6圧延面S6に押圧された時点で、金属線材M2は圧延幅方向(Y軸上の方向)で1/4を超えて第2偏平成形ロール43に面接触して拘束されるので、金属線材M2は捻転しなくなる。次に、第6圧延面S6の圧延幅方向外側の部分で金属線材M2の拘束部分を押圧する。金属線材M2が第6圧延面S6に押圧されている間、余肉は圧延幅方向外側に流動していくのでシワ疵の発生は抑制される。又、捻転も生じていないので折込み疵の発生も抑制される。その後、金属線材M2の拘束部分の残りの部分(圧延幅方向の両端部分)を第4圧延面S4と第5圧延面S5で押圧する。これにより、金属線材はYZ断面における偏平率をさらに増加させていき、最終的に、YZ断面形状が上記2k角形(k=4、一対の対向する隅部は凸曲線の形状)である金属線材M2を、YZ断面形状がX軸に軸対称であって圧延幅方向に非拘束部分F3を有する前工程の金属線材M2よりもYZ断面における偏平率が高い形状である金属線材M3に成形する。
【0048】
尚、金属線材M2が第1カリバーロール42の第3圧延面S3押圧されて形成した部分の長さ(金属線材M2の両端の高さ)HS3は、一対の第2偏平成形ロール43の第4圧延面S4のうちこの部分を押圧する両第4圧延面S4間の距離HS4より小さいので、肉余りは殆ど発生しない。
【0049】
このように、第3工程では、捻転起因の折込み疵及び肉余り起因のシワ疵を抑制することができる。
【0050】
第3工程における減面率R3は20〜35%が好ましく、25〜30%がより好ましい。減面率R3を20%以上にすることで、金属線材が強圧下されて結晶粒はより微細になる傾向を示す。一方、減面率R3を35%以下にすることで、金属線材中の非拘束部分でのシワ疵の発生をさらに抑制することができる。
【0051】
4.第4工程
次に、第3工程で圧延された金属線材M3を、その偏平率を低下させるように、以下の第1〜3サブ工程で温間圧延する。
【0052】
4−1.第1サブ工程(六角カリバーロールによる圧延加工)
まず、第2工程と同様に、第3工程で圧延された金属線材M3を、第4スタンドに設置された一対の第2カリバーロール(六角カリバーロール)44の間に通す。これにより、第1サブ工程の圧延出側におけるYZ断面の模式図である図6に示すように、YZ断面形状が、各第2カリバーロール44の第1圧延面S1、第2圧延面S2及び第3圧延面S3に面接触してこれら圧延面に拘束される二つの拘束部分と、これら拘束部分に挟まれる部分であって第2カリバーロール44に拘束されないとともに上記式(1)及び式(2)を満たす二つの非拘束部分F4とからなる形状に成形された金属線材M4を、捻転を生じさせることなく得ることができる。
【0053】
尚、第1サブ工程において押圧で生じた余肉は、圧延幅方向(Z軸上の方向)の中央部から順次外側への流動するため、第1サブ工程では金属線材の捻転が抑制され、これに起因した折込み疵も抑制される。又、第1サブ工程において金属線材M4に上記式(1)及び式(2)を満たす非拘束部分F4を形成することによって、次のサブ工程である第2サブ工程での捻転を防止することができる。
【0054】
第1サブ工程における減面率R41は20〜40%が好ましく、30〜35%がより好ましい。減面率R41を35%以上にすることで、金属線材が強圧下されて結晶粒はより微細になる傾向を示す。一方、減面率R41を40%以下にすることで、金属線材中の非拘束部分でのシワ疵の発生をさらに抑制することができる。
【0055】
4−2.第2サブ工程(ボックスカリバーロールによる圧延加工)
次に、第3工程と同様に、第1サブ工程で圧延された金属線材M4を、第5スタンドに設置された一対の第3偏平成形ロール(ボックスカリバーロール)45の間に通す。これにより、第2サブ工程の圧延出側におけるYZ断面の模式図である図7に示すように、金属線材M4の非拘束部分F4が各第3偏平成形ロール45の円筒面である第6圧延面S6に押圧されて、金属線材M4は捻転することなく、YZ断面形状における偏平率が第1サブ工程で圧延された金属線材M4と比べて増加した形状に成形された金属線材M5を得ることができる。尚、第3工程と同様に、第2サブ工程の圧延時にシワ疵及び折込み疵の発生は抑制される。
【0056】
第2サブ工程における減面率R42は15〜30%が好ましく、20〜30%がより好ましい。減面率R42を15%以上にすることで、金属線材が強圧下されて結晶粒はより微細になる傾向を示す。一方、減面率R42を30%以下にすることで、金属線材中の非拘束部分でのシワ疵の発生をさらに抑制することができる。
【0057】
4−3.第3サブ工程(六角カリバーロールによる圧延加工)
次に、第1サブ工程と同様に、第2サブ工程で圧延された金属線材M5を、第6スタンドに設置された一対の第3カリバーロール(六角カリバーロール)46の間に通す。これにより、第3サブ工程の圧延出側におけるYZ断面の模式図である図8に示すように、YZ断面形状が、各第3カリバーロール44の第1圧延面S1、第2圧延面S2及び第3圧延面S3に面接触してこれら圧延面に拘束される二つの拘束部分と、これら拘束部分に挟まれる部分であって第3カリバーロール44に拘束されない二つの非拘束部分F6とからなる形状に成形された金属線Pを、捻転を生じさせることなく得ることができる。
【0058】
尚、第3サブ工程において押圧で生じた余肉は、圧延幅方向(Z軸上の方向)の中央部から順次外側への流動するため、第3サブ工程では金属線材の捻転が抑制され、これに起因した折込み疵も抑制される。
【0059】
第3サブ工程における減面率R43は20〜35%が好ましく、25〜30%がより好ましい。減面率R43を20%以上にすることで、金属線材が強圧下されて結晶粒はより微細になる傾向を示す。一方、減面率R43を35%以下にすることで、金属線材中の非拘束部分でのシワ疵の発生を抑制することができる。
【0060】
〔その他の圧延条件〕
上記全圧延工程を通じての総減面率Rは75%以上である。総減面率Rを75%以上にすることで、金属線材として例えば、炭素含有量が0.01〜0.2質量%の炭素鋼線材を用いた場合には、金属組織の平均粒径が2μm以下の鋼線を製造することができ、チタン合金線材を用いた場合には、平均粒径が2μm以下のチタン合金線を製造することができ、アルミニウム合金線材を用いた場合には、平均粒径が2μm以下のアルミニウム合金線を製造することができる。
【0061】
より微細な金属組織を製造する点から、総減面率Rは80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。例えば、金属線材として炭素含有量が0.01〜0.2質量%の炭素鋼線材を用いたときには、総減面率Rを80%以上にすることで平均粒径1μm以下の鋼線を得ることができ、総減面率Rを85%以上にすることで平均粒径0.8μm以下の鋼線を得ることができる。
【0062】
一方、所定の圧延速度を確保する点から、総減面率Rは90%以下が好ましい。例えば、金属線材として鋼線材を用いたときには、総減面率Rを90%以下にすることで圧延速度を37m/分以上にすることができ、総減面率Rを85%以下にすることで圧延速度を40m/分以上にすることができる。
【0063】
全圧延工程を通じての通線速度(圧延速度)は、圧延中の金属線材Mの温度低下を防止する点から20m/分以上であることが好ましく、30m/分以上であることがより好ましく、生産効率を高める点から35m/分以上であることが好ましい。一方、加工熱の発生を抑制する点から、通線速度は200m/分以下であることが好ましく、100m/分以下であることがより好ましい。
【0064】
次に、温間圧延開始温度、終了温度について説明する。
【0065】
温間圧延前に、線材加熱装置30で金属線材Mを加熱する際の温間圧延開始温度とは、金属線材Mを圧延することで再結晶が起こる温度、即ち動的再結晶温度である。より具体的には、金属線材Mを圧延した後の平均結晶粒径が、圧延前の平均結晶粒径よりも小さくなる温度である。例えば、C含有量が0.45質量%以下の炭素鋼では400〜700℃であり、鋼種Aでは550〜700℃が好ましい。マグネシウム合金では200〜300℃であり、亜鉛−アルミニウム合金では100〜275℃である。線材加熱装置30では、金属線材Mの内部まで温間圧延開始温度に上昇するまで加熱することが好ましい。例えば、抵抗加熱方式や中周波加熱方式線材加熱装置を用いて、線径6〜25mmの鋼線材を温間圧延開始温度600℃まで加熱する場合には、室温から温間圧延開始温度までの加熱時間は5〜10秒である。加熱時間はさらに長くてもよい。
【0066】
一方、圧延最終工程での圧延出側における金属線Pの温度(温間圧延終了温度)は、金属線Pの金属組織を全長に亘って超微細化させる点から、温間圧延開始温度よりも30〜100℃低いことが好ましい。例えば、鋼種Aでは480〜600℃が好ましい。
【0067】
このように、所定の温間圧延開始温度まで加熱した金属線材Mに対して、所定の総減面率となるように第1工程から第4工程までの圧延を行うことで、捻転を抑制して超微細粒組織の金属線Pを製造することができる。
【0068】
〔変形例〕
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0069】
上記実施形態では、L1=L3=L5、L2=L4=1.2×L1となるように各スタンドを設置しているが、L1、L2、L3、L4及びL5の全てが等しくなるように各スタンドを設置してもよいし、全て異なるように各スタンドを設置してもよい。又、L1、L2、L3、L4及びL5のうちの2〜4つが等しくなるように各スタンドを設置してもよい。
【0070】
上記実施形態では、第1カリバーロール42、第2カリバーロール44、第3カリバーロール46として、六角カリバーロールを用いた例を示したが、これに以外に、第1〜3カリバーロールの第3圧延面が互いに連続する二つの円錐台面からなる回転面である八角カリバーロール、第1〜3カリバーロールの第3圧延面が互いに連続する三つの円錐台面からなる回転面である十角カリバーロール、第1〜3カリバーロールの第3圧延面が互いに連続する四つの円錐台面からなる回転面である十二角カリバーロールを用いてもよい。第1〜3カリバーロールとして、八角カリバーロール、十角カリバーロール及び十二角カリバーロールのいずれか1種のみを用いてもよいし、六角カリバーロール、八角カリバーロール、十角カリバーロール及び十二角カリバーロールの2種以上を併用してもよい。
【0071】
上記実施形態では、第1工程で用いる一対の第1偏平成形ロールとして、オーバルカリバーロールを用いているが、第1工程で金属線材Mを偏平な形状に成形できて、全工程を通じた総減面率Rを75%以上にできる圧延ロールであればよく、例えば、オーバルカリバーロールに代えて、クラウンロールやボックスカリバーロールなどを用いてもよい。
【0072】
上記実施形態では、第3工程で用いる一対の第2偏平成形ロールとして、ボックスカリバーロールを用いているが、金属線材M2の非拘束部分F2全体を拘束できる圧延面を有し、全工程を通じた総減面率Rを75%以上にできる第2偏平成形ロールであればよい。例えば、上記実施形態で用いたボックスカリバーロール43の円筒面(第6圧延面S6)を、圧延面の長さが金属線材M2の非拘束部分F2の外周長さよりも長く、且つ、YZ断面において金属線材M2の非拘束部分F2の曲率半径よりも曲率半径が大きい曲面に変更したバレルカリバーロールを用いてもよい。
【0073】
上記実施形態では、第2サブ工程で用いる一対の第3偏平成形ロールとして、ボックスカリバーロールを用いているが、金属線材M4の非拘束部分F4全体を拘束できる圧延面を有し、全工程を通じた総減面率Rを75%以上にできる第3偏平成形ロールであれば、例えば、上記実施形態で用いたボックスカリバーロール45の円筒面(第6圧延面S6)を、圧延面の長さが金属線材M4の非拘束部分F4の外周長さよりも長く、且つ、YZ断面において金属線材M4の非拘束部分F4の曲率半径よりも曲率半径が大きい曲面に代えたバレルカリバーロールを用いてもよい。
【0074】
上記実施形態では、第3サブ工程において、六角カリバーロールである第3カリバーロールを用いて、金属線Pに対してYZ断面形状が2k角形(k=4、一対の対向する隅部は凸曲線の形状)となる成形を行ったが、巻き取り性を向上させる点又はボルトやねじの加工素材に適した形状に成形する点から、円弧回転面を備えた円周成形ロールを用いて、金属線Pに対してYZ断面形状が円形となる成形を行ってもよい。
【0075】
上記実施形態では、第1〜6スタンドに配置された各圧延ロールの軸心方向が交互に直交しているが、第1スタンドと第2スタンドに配置された圧延ロールは軸心方向が直交していなくてもよいし、第3スタンドと第4スタンドに配置された圧延ロールは軸心方向が直交していなくてもよいし、第5スタンドと第6スタンドに配置された圧延ロールは軸心方向が直交していなくてもよい。
【0076】
上記実施形態では、第1〜6スタンドに圧延ロールを配置して圧延を行ったが、総減面率Rを75%以上にできるのであれば、4つのスタンド又は5つのスタンドのみに圧延ロールを配置して圧延を行ってもよい。例えば、第5スタンドのボックスカリバーロール45と第6スタンドの六角カリバーロール46を配置せずに圧延してもよいし、第5スタンドのボックスカリバーロール45を円周成形ロールに変更するとともに第6スタンドの六角カリバーロール46を配置せずに圧延してもよい、第4スタンドの六角カリバーロール44を円周成形ロールに変更するとともに第5スタンドのボックスカリバーロール45と第6スタンドの六角カリバーロール46を配置せずに圧延してもよい。
【0077】
上記実施形態では、金属線材Mとして、YZ断面が略真円状のものを用いたが、YZ断面が楕円状のものや六角以上の多角形状のものを用いてもよい。
【0078】
本発明に係る金属線の製造方法によって製造された金属線は、例えば、小ねじ、マイクロねじなどの携帯電話機、情報家電、事務機器などで用いられる微小締結部材、バルブスプリング、シャシースプリング、溶接ボルト、長尺ボルトなどの自動車、工作機械、建設機械などで用いられる高強度又は高靭性付勢部材、高力ボルト、アンカーボルトなどの建物、橋梁などで用いられる高強度締結部材などの加工素材として用いることができる。
【0079】
以下に、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【実施例】
【0080】
上記第3工程において、捻転が発生するときの金属線材の形状を調べるため、下記捻転試験を行った。
【0081】
〔捻転試験〕
直径7.48mmで下記表1に示す化学成分の鋼線材を、抵抗加熱方式線材加熱装置で580℃まで加熱した後に、図9(a)に示す孔型形状の一対のオーバルカリバーロールの間に通して、YZ断面が偏平な形状の試験母材を得た。
【0082】
【表1】

【0083】
続いて、上記試験母材を通線速度及び押圧量を変えながら、図9(b)に示す孔型形状の一対の第1カリバーロールの間に通して、w10、w、rが表2に示す値となる試験材No.1〜8を得た。尚、w10は試験材No.1〜8の第1カリバーロールの第3圧延面S3間の幅をノギスで測定した。wについては、w10を測定した各試験材をYZ断面で切断して、2%ナイタールで腐食させて、拘束部分と非拘束部分の境界(押圧による金属光沢のある部分とない部分の境目)を明瞭にさせた後に、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、型番VHX−900)を用いて測定した。wの測定後に、続いて上記マイクロスコープを用いてrを測定した。
【0084】
次に、試験材No.1〜8を抵抗加熱方式線材加熱装置で580℃まで加熱した後に、図9(c)に示す孔型形状の一対の第2偏平成形ロールの間に通して、捻転の有無を確認した。結果を表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
表2より明らかなように、wが0.26w10より小さい場合(試験材No.1、2)又はrが2.23w10より小さい場合(試験材No.1、4)には、試験材は捻転した。これに対して、wが0.26w10と等しいか大きく且つrが2.23w10と等しいか大きい場合、即ち、上記式(1)及び式(2)を同時に満たす場合(試験材No.3、5〜8)には、試験材は捻転しなかった。
【0087】
〔圧延試験〕
次に、直径7.48mmで表1に示す化学成分の鋼線材を、抵抗加熱方式線材加熱装置で580℃まで加熱した後に、図9(a)〜(f)に示す孔型形状の一対の圧延ロール61、62、63、64、65、66の間に通線速度37m/分で連続して通して、YZ断面形状が2k角形(但し、k=4で、当該2k角形中の一対の対向する隅部が凸曲線の形状である。)で最大幅が3.1mmの鋼線を得た。その際、第2工程では、YZ断面形状が上記試験材No.5となる圧延条件で行った。その結果、いずれの工程においても捻転は発生せず、得られた鋼線には、0.50mm以上の折込み疵及び0.02mm以上のシワ疵は見られなかった。上記直径7.48mmの鋼線材及び上記最大幅が3.1mmの鋼線の断面積はそれぞれ43.9mm及び6.36mmであり、総減面率Rは85.5%であった。尚、鋼線の金属組織を確認したところ、平均粒径は、0.8μmであった。平均粒径の測定方法は以下の通りである。
【0088】
得られた鋼線のYZ断面において、外側表面から0.7mm以上離れた領域(90μm×90μm)を任意に3つ決めて、各領域内のポリゴナルフェライトに対して、有効結晶粒界で囲まれたフェライト相の面積を画像ソフト(株式会社キーエンス製、品名VE6800)を用いて測定し、各結晶粒の面積から円相当径を求め、その平均粒径を算出した。この値を鋼線の平均粒径とした。
【0089】
参考までに、試験材No.5の圧延幅方向断面(C断面)における金属組織の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図10(図面代用写真)に、同試験材の圧延長手方向断面(L断面)における金属組織のSEM写真を図11(図面代用写真)にそれぞれ示す。これらSEM写真から、本発明の製造方法によって得られた金属線の結晶粒は、圧延幅方向及び長手方向のいずれにおいても異方性がなく、均質であることが分かる。尚、これら金属組織は、試験材No.5の圧延幅方向及び高さ(厚さ)方向のそれぞれ中央位置において観察したものである。
【0090】
尚、図9は、本発明の実施例の第1工程、第2工程、第3工程、第1サブ工程、第2サブ工程及び第3サブ工程で用いた一対の圧延ロールで形成される孔型形状の図である。図中、(a)は第1スタンドに配置された一対のオーバルカリバーロール61で形成される孔型形状を、(b)は第2スタンドに配置された一対の六角カリバーロール62で形成される孔型形状を、(c)は第3スタンドに配置された一対のバレルカリバーロール63で形成される孔型形状を、(d)は第4スタンドに配置された一対の六角カリバーロール64で形成される孔型形状を、(e)は第5スタンドに配置された一対のバレルカリバーロール65で形成される孔型形状を、(f)は第6スタンドに配置された一対の六角カリバーロール66で形成される孔型形状を示す。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る金属線の製造方法によって、ボルトやねじの加工素材に用いられる平均結晶粒径が2μm以下の金属線を、捻転を生じることなく製造することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 温間圧延設備
10 線材供給装置
20 矯正機
30 線材加熱装置
40 コンバインドロール圧延装置
41 第1スタンドのカリバーロール
42 第2スタンドのカリバーロール
43 第3スタンドのカリバーロール
44 第4スタンドのカリバーロール
45 第5スタンドのカリバーロール
46 第6スタンドのカリバーロール
50 線材巻取装置
M 金属線材
P 金属線
S1 第1圧延面
S2 第2圧延面
S3 第3圧延面
S4 第4圧延面
S5 第5圧延面
S6 第6圧延面
F1 第1工程で形成される非拘束部分
F2 第2工程で形成される非拘束部分
F3 第3工程で形成される非拘束部分
F4 第1サブ工程で形成される非拘束部分
F5 第2サブ工程で形成される非拘束部分
M0 第1工程で圧延される前の金属線材
M1 第1工程で圧延された後の金属線材
M2 第2工程で圧延された後の金属線材
M3 第3工程で圧延された後の金属線材
M4 第1サブ工程で圧延された後の金属線材
M5 第2サブ工程で圧延された後の金属線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線材を圧延することにより金属線を製造する方法であって、
前記金属線材を一対の第1偏平成形ロールの間に通すことにより、当該金属線材の進行方向に垂直な断面であるYZ断面において偏平な形状に温間圧延する第1工程と、
ロール軸方向の両端から中央に向かうに従って縮径する一対の円錐台面である第1圧延面及び第2圧延面と、第1圧延面と第2圧延面の間に介在し第1圧延面及び第2圧延面それぞれの小径側端に対して鈍角で交差する第3圧延面とを持つ周面をそれぞれ備え、当該周面同士が対向するように配置された一対の第1カリバーロールの間に、第1工程で圧延された金属線材を通すことにより、各第1カリバーロールの第1圧延面、第2圧延面及び第3圧延面に面接触して当該カリバーロールにそれぞれ拘束される拘束部分と、これら拘束部分に挟まれる部分であって第1カリバーロールに拘束されないとともに下記式(1)及び式(2)を満たす二つの非拘束部分とからなる断面形状を有するように温間圧延する第2工程と、
第2工程で圧延された金属線材の進行方向に沿って前記両非拘束部分の外表面に、当該両非拘束部分のYZ断面における外周長さよりも長く且つYZ断面において平行な円筒面又は当該両非拘束部分のYZ断面における外周の曲率半径よりも大きい曲率半径を有し内側に凸の一対の曲面を含む周面を持つとともに第1カリバーロールの軸心方向と直交する軸心方向を有する一対の第2偏平成形ロールの当該円筒面又は当該曲面を接触させて、当該両非拘束部分が押圧されるように第2工程で圧延された金属線材を温間圧延することにより、偏平率を増加させる第3工程と、
第3工程で圧延された金属線材を、その偏平率を低下させるように温間圧延する第4工程と
を少なくとも備え、全工程を通じての総減面率が75%以上である金属線の製造方法。
≧ 0.26w10 (1)
≧ 2.23w10 (2)
(式中、wは第2工程で圧延された金属線材のYZ断面における非拘束部分の両端の直線距離を示し、w10は第2工程で圧延された金属線材のYZ断面において、第3圧延面に面接触して形成された両部分の最短距離を示し、rは第2工程で圧延された金属線材のYZ断面における非拘束部分の外周の曲率半径を示す。)
【請求項2】
前記第2工程における一対の第1カリバーロールの軸心方向が、前記第1工程における一対の第1偏平成形ロールの軸心方向に対して直交している請求項1に記載の金属線の製造方法。
【請求項3】
前記第1カリバーロールの第3圧延面が前記第1カリバーロールの中心軸に平行な円筒面、互いに連続する二つの円錐台面からなる回転面、互いに連続する三つの円錐台面からなる回転面及び互いに連続する四つの円錐台面からなる回転面のうちのいずれかである請求項1又は2に記載の金属線の製造方法。
【請求項4】
前記第4工程は、
ロール軸方向の両端から中央に向かうに従って縮径する一対の円錐台面である第1圧延面及び第2圧延面と、第1圧延面と第2圧延面の間に介在し第1圧延面及び第2圧延面それぞれの小径側端に対して鈍角で交差する第3圧延面とを持つ周面をそれぞれ備え、当該周面同士が対向するように配置された一対の第2カリバーロールの間に、第3工程で圧延された金属線材を通すことにより、各第2カリバーロールの第1圧延面、第2圧延面及び第3圧延面に面接触して当該カリバーロールにそれぞれ拘束される拘束部分と、これら拘束部分に挟まれる部分であって第2カリバーロールに拘束されないとともに下記式(3)及び式(4)を満たす二つの非拘束部分とからなる断面形状を有するように温間圧延する第1サブ工程と、
第1サブ工程で圧延された金属線材の進行方向に沿って前記両非拘束部分の外表面に、当該両非拘束部分のYZ断面における外周長さよりも長く且つYZ断面において平行な円筒面又は当該両非拘束部分のYZ断面における外周の曲率半径よりも大きい曲率半径を有し内側に凸の一対の曲面を含む周面を持つとともに第2カリバーロールの軸心方向と直交する軸心方向を有する一対の第3偏平成形ロールの当該円筒面又は当該曲面を接触させて、当該両非拘束部分が押圧されるように第1サブ工程で圧延された金属線材を温間圧延することにより、偏平率を増加させる第2サブ工程と、
第2サブ工程で圧延された金属線材を、その偏平率を低下させるように温間圧延する第3サブ工程と
からなる工程である請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属線の製造方法。
≧ 0.26w20 (3)
≧ 2.23w20 (4)
(式中、wは第1サブ工程で圧延された金属線材のYZ断面における非拘束部分の両端の直線距離を示し、w20は第1サブ工程で圧延された金属線材のYZ断面において、第3圧延面に面接触して形成された両部分の最短距離を示し、rは第1サブ工程で圧延された金属線材のYZ断面における非拘束部分の外周の曲率半径を示す。)
【請求項5】
前記第2カリバーロールの第3圧延面が前記第2カリバーロールの中心軸に平行な円筒面、互いに連続する二つの円錐台面からなる回転面、互いに連続する三つの円錐台面からなる回転面及び互いに連続する四つの円錐台面からなる回転面のうちのいずれかである請求項4に記載の金属線の製造方法。
【請求項6】
前記第3サブ工程が、
ロール軸方向の両端から中央に向かうに従って縮径する一対の円錐台面である第1圧延面及び第2圧延面と、第1圧延面と第2圧延面の間に介在し第1圧延面及び第2圧延面それぞれの小径側端に対して鈍角で交差する第3圧延面とを持つ周面をそれぞれ備え、当該周面同士が対向するように配置された一対の第3カリバーロールの間に、前記第2サブ工程で圧延された金属線材を通して温間圧延するサブ工程である請求項4又は5に記載の金属線の製造方法。
【請求項7】
前記第3カリバーロールの第3圧延面が前記第3カリバーロールの中心軸に平行な円筒面、互いに連続する二つの円錐台面からなる回転面、互いに連続する三つの円錐台面からなる回転面及び互いに連続する四つの円錐台面からなる回転面のうちのいずれかである請求項6に記載の金属線の製造方法。
【請求項8】
前記第3サブ工程が、
前記第2サブ工程で圧延された金属線材を、互いに対向し且つYZ断面において両者で円を形成する円弧回転面からなる周面を持つ一対の円周成形ロールの間に通して温間圧延するサブ工程である請求項4又は5に記載の金属線の製造方法。
【請求項9】
前記第1サブ工程における一対の第2カリバーロールの軸心方向が、前記第3工程における一対の第2偏平成形ロールの軸心方向に対して直交し、且つ、前記第3サブ工程における一対の第3カリバーロールの軸心方向が、前記第2サブ工程における一対の第3偏平成形ロールの軸心方向に対して直交している請求項4〜8のいずれか一項に記載の金属線の製造方法。
【請求項10】
前記金属線材が鋼線材である請求項1〜9のいずれか一項に記載の金属線の製造方法。
【請求項11】
前記鋼線材が、C:0.01〜0.2質量%と、Si:0.35質量%以下と、Mn:0.3〜1.5質量%と、P:0.02質量%以下(0質量%を含む)と、S:0.01質量%以下(0質量%を含む)と、Ti:0.001〜0.01質量%及びNb:0.01〜0.03質量%の中の少なくともいずれか一方とを含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼線材である請求項10に記載の金属線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−101885(P2011−101885A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256673(P2009−256673)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(592171290)大阪精工株式会社 (4)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】