説明

金属蒸着用樹脂組成物、金属蒸着成形品及び金属蒸着成形品の製造方法

【課題】 金属被膜又は金属酸化物被膜との密着性が高い金属蒸着用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 金属蒸着成形品(電磁波シールド材など)を形成するための樹脂組成物を、ポリアミド系樹脂(好ましくは脂肪族ポリアミド樹脂)(A)と、スチレン系樹脂(好ましくはシアノ基を有するスチレン系樹脂)(B)と、フィラー(好ましくは導電性フィラー)(C)とで構成する。樹脂組成物で形成された成形品に、少なくとも金属蒸着により金属被膜又は金属酸化物被膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド材などとして好適な金属蒸着用樹脂組成物、金属蒸着成形品、金属蒸着成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電波を送受信する機器(電気機器、電子機器、携帯電話など)では、電磁波を遮蔽(入射を阻止して誤動作を防止、放出を阻止して外部への悪影響を防止)するために、ハウジングを形成する樹脂中に導電性フィラーを混入したり、樹脂製ハウジングの表面(通常は内側)に導電性被膜を形成することが知られている。導電性被膜を形成する方法としては、導電性塗料で導電性塗膜を形成する方法、湿式メッキ法(無電解メッキ法など)、金属蒸着法(真空蒸着法などのPVD法、CVD法など)などで金属被膜を形成し、さらに必要に応じて電気メッキを施す方法などが検討されている。
【0003】
例えば、特開2003−115690号公報(特許文献1)には、ABS樹脂、PC(ポリカーボネート)およびABS/PC系ポリマーアロイのうちいずれかで成形された成形品に施す電磁波シールド膜であり、Sn−Cu−Ag被膜からなる電磁波シールド膜が開示されている。この文献には、Sn−Cu−Ag被膜は、真空蒸着法で形成しても、イオンプレーティング法で形成しても、良好な性能を示すことが記載されている。しかし、ABS樹脂で形成された成形品の場合、金属被膜(電磁波シールド膜)との密着性が低い。一方、PC又はABS/PC系ポリマーアロイで形成された成形品の場合、用途によっては、寸法安定性などの特性が十分でない場合がある。
【0004】
一方、特開2003−82138号公報(特許文献2)には、ポリアミド系樹脂とスチレン系樹脂とを含有する樹脂成形体の表面に金属メッキ層を有するメッキ樹脂成形体であり、樹脂成形体が重金属を含む酸によるエッチング処理がされていないものであるメッキ樹脂成形体が開示されている。また、特開2003−166067号公報(特許文献3)には、熱可塑性樹脂と水溶性物質を含有する樹脂成形体の表面に金属メッキ層を有するメッキ樹脂成形体であり、樹脂成形体が重金属を含む酸によるエッチング処理がされていないものであるメッキ樹脂成形体が開示されている。この文献の実施例では、熱可塑性樹脂として、ポリアミド6又はポリアミド66と、AS樹脂、ABS樹脂などのスチレン系樹脂との組成物を使用している。しかし、これらの文献には、フィラーを含む樹脂組成物に金属蒸着を施すことは記載されていない。そして、これらの文献に記載の樹脂成形体は、用途によっては、寸法安定性などの特性が十分でない場合がある。
【特許文献1】特開2003−115690号公報(特許請求の範囲、段落番号[0024])
【特許文献2】特開2003−82138号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2003−166067号公報(特許請求の範囲、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、金属被膜、金属酸化物被膜(特に導電性金属酸化物被膜)との密着性が高い金属蒸着用樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、寸法安定性が高く、金属蒸着性に優れた樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、電磁波シールド性とともに寸法安定性も求められる用途(例えば、携帯電話などの光学モジュール用レンズホルダーなど)に有用な金属蒸着成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ポリアミド系樹脂(A)と、スチレン系樹脂(B)と、フィラー(C)とを組み合わせると、金属被膜又は金属酸化物被膜(特に導電性金属酸化物被膜)との密着性の高い樹脂組成物が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の金属蒸着用樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂(A)と、スチレン系樹脂(B)と、フィラー(C)とを含んでいる。ポリアミド系樹脂(A)は、ASTM D570で測定された吸水率が2重量%以下である少なくとも一種の樹脂であってもよい。
【0010】
ポリアミド系樹脂(A)は、例えば、脂肪族ポリアミド樹脂(ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6−66など)、脂環族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂で構成してもよい。ポリアミド系樹脂(A)は、アミノ基及び/又はカルボキシル基を有していてもよく、アミノ基濃度は10〜300ミリモル/kg程度、カルボキシル基濃度は0.1〜200ミリモル/kg程度であってもよい。
【0011】
前記スチレン系樹脂(B)は、少なくともスチレン系単量体とシアン化ビニル単量体との共重合体(AS樹脂など)、及びゴム成分に対して少なくともスチレン系単量体とシアン化ビニル単量体とがグラフト重合したグラフト共重合体(ABS樹脂など)から選ばれた少なくとも一種で構成してもよく、前記スチレン系樹脂(B)において、シアン化ビニル単位は、前記共重合体又は前記グラフト共重合体のマトリックスを構成する全単量体単位を基準として、単量体換算で、1〜45モル%程度含まれていてもよい。ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との割合(重量比)は、前者/後者=5/95〜95/5であってもよい。
【0012】
前記フィラー(C)は、導電性フィラー(炭素繊維、金属繊維、金属被覆繊維など)であってもよい。フィラー(C)の割合は、ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との合計100重量部に対して、1〜1000重量部程度であってもよい。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との割合(重量比)が、前者/後者=10/90〜90/10であり、フィラー(C)の割合が、ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との合計100重量部に対して3〜800重量部程度であり、かつASTM D570に準拠して測定された吸水率が1重量%以下であってもよい。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、さらに、相溶化剤、例えば、カルボキシル基及び酸無水物基から選ばれた少なくとも一種を有する相溶化剤を含んでいてもよい。
【0015】
本発明は、前記樹脂組成物で構成され、かつ少なくとも金属蒸着により金属又は金属酸化物の被膜が形成されている金属蒸着成形品(例えば、光学モジュール用レンズホルダーなど)も含む。また、本発明は、前記樹脂組成物で構成された成形品に、少なくとも金属蒸着を施す金属蒸着成形品の製造方法(例えば、金属蒸着を施した後、電気メッキを施す金属蒸着成形品の製造方法)も含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂(A)と、スチレン系樹脂(B)と、フィラー(C)とで構成されているため、金属被膜、金属酸化物被膜との密着性が高い。また、本発明の樹脂組成物は、吸水率が低く、寸法安定性が高い。
【0017】
本発明の金属蒸着成形品は、電磁波シールド性を有するとともに、寸法安定性が高いので、寸法安定性の求められる用途(例えば、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話などの光学モジュール用レンズホルダーなど)での電磁波シールド材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂(アミド結合を有する樹脂)(A)と、スチレン系樹脂(B)と、フィラー(C)とを含む。
【0019】
[ポリアミド系樹脂(A)]
ポリアミド系樹脂(A)は、カルボキシル基とアミノ基との重縮合によるアミド結合を有する。ポリアミド系樹脂(A)は、アミド結合を、主鎖、末端、側鎖に有していてもよい。ポリアミド系樹脂(A)は、通常、主に主鎖にアミド結合を有している場合が多い。ポリアミド系樹脂(A)としては、例えば、脂肪族ポリアミド樹脂、脂環族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0020】
脂肪族ポリアミド樹脂としては、脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4-20アルキレンジアミンなど)と脂肪族ジカルボン酸成分(シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ヘキサデカンジカルボン酸などのC4-20アルキレンジカルボン酸など)との縮合物(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1212など);ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのC4-20ラクタムなど)又は脂肪族アミノカルボン酸成分(ω−アミノウンデカン酸などの炭素数C4-20アミノカルボン酸など)の単独重合体(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12など);これらのポリアミド成分が共重合したコポリアミド樹脂(例えば、ポリアミド6−11、ポリアミド6−12、ポリアミド6−66、ポリアミド66−11、ポリアミド66−12など)などが挙げられる。
【0021】
脂環族ポリアミド樹脂としては、前記脂肪族ジアミン成分及び/又は脂肪族ジカルボン酸成分の少なくとも一部を、脂環族ジアミン成分又は脂環族ジカルボン酸成分(シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸などのC5-10シクロアルカン−ジカルボン酸など)に置き換えたポリアミド樹脂が挙げられる。脂環族ジアミン成分としては、例えば、ジアミノシクロへキサンなどのジアミノC5-8シクロアルカン;ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロへキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロへキシル)プロパンなどのビス(アミノC5-8シクロアルキル)C1-6アルカンなどが含まれる。
【0022】
芳香族ポリアミド樹脂としては、前記脂肪族ジアミン成分及び/又は脂肪族ジカルボン酸成分の少なくとも一部を、芳香族ジアミン成分又は芳香族ジカルボン酸成分に置き換えたポリアミド樹脂が挙げられる。芳香族ポリアミド樹脂には、例えば、芳香族ジアミン成分を使用したポリアミド樹脂、芳香族ジカルボン酸成分を使用したポリアミド樹脂、芳香族ジアミン成分及び芳香族ジカルボン酸成分を使用したポリアミド樹脂[全芳香族ポリアミド樹脂(アラミド)など]などが含まれる。
【0023】
芳香族ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミンなどのジアミノアレーン;ビス(アミノC1-3アルキル)ベンゼン(メタキシリレンジアミンなど)などのビス(アミノアルキル)ベンゼン;ジアミノビフェニル、ビス(アミノフェノキシ)ビフェニルなどのビフェニル系ジアミン;ビス(アミノフェニル)C1-3アルカン[ビス(アミノフェニル)メタン、ビス(アミノフェニル)プロパンなど]、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]C1-3アルカン{ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]プロパンなど}などのビフェニルアルカン系ジアミン;ビス(アミノフェニル)スルフィドなどのビフェニルスルフィド系ジアミン;ビス(アミノフェニル)スルホン、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]スルホンなどのビフェニルスルホン系ジアミン;ビス(アミノフェニル)エーテル、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]エーテルなどのフェニルエーテル系ジアミン;ジアミノベンゾフェノン;ジアミノピリジンなどのヘテロ芳香族ジアミン;及びこれらの誘導体が例示される。前記誘導体には、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基(例えば、C1-3アルキル基)、低級アルコキシ基(例えば、C1-3アルコキシ基)などが置換した化合物(例えば、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなど)が含まれる。
【0024】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸;メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸などのアルキル置換フタル酸;2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸;4,4′−ビフェニルジカルボン酸、3,4′−ビフェニルジカルボン酸などのビフェニルジカルボン酸;4,4′−ジフェノキシベンゼンジカルボン酸などのジフェノキシベンゼンジカルボン酸;ビフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸などのビフェニルエーテルジカルボン酸;ビフェニルメタンジカルボン酸、ビフェニルプロパンジカルボン酸などのビフェニルアルカンジカルボン酸;ビフェニルケトンジカルボン酸などの炭素数8〜20程度の芳香族ジカルボン酸及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0025】
ポリアミド系樹脂(A)には、さらに、ダイマー酸をジカルボン酸成分とするポリアミド樹脂、少量の多官能性ポリアミン成分及び/又はポリカルボン酸成分を使用し、分岐鎖構造を導入したポリアミド樹脂、変性ポリアミド樹脂(N−アルコキシメチルポリアミドなど)、変性ポリオレフィンを混合又はグラフト重合させた高耐衝撃性ポリアミド系樹脂、ポリエーテルをソフトセグメントとするポリアミドエラストマーも含まれる。
【0026】
なお、ジカルボン酸成分には、反応性誘導体、例えば、ジメチルエステルなどの低級アルキル(例えば、C1-3アルキル)エステル、酸無水物、酸クロライドなどの酸ハライドなども含まれる。
【0027】
ポリアミド系樹脂(A)は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
ポリアミド系樹脂(A)としては、金属被膜、金属酸化物被膜との密着性、寸法安定性、流動性などの点より、脂肪族ポリアミド樹脂[例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6−66などの脂肪族ポリアミド樹脂(通常、C6-36アルキレン鎖、好ましくはC6-12アルキレン鎖を有する脂肪族ポリアミド樹脂)]、脂環族ポリアミド樹脂[ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環族ジアミン成分とドデカン二酸とから得られるポリアミド樹脂(ダイセルデグサ(株)製「トロガミドCX7323」など)など]及び芳香族ポリアミド樹脂(ポリアミドMXD6など)が好ましい。
【0029】
ポリアミド系樹脂(A)の数平均分子量は、例えば、6000〜100000、好ましくは7000〜80000、好ましくは8000〜50000(特に10000〜30000)程度であってもよい。
【0030】
ポリアミド系樹脂(A)としては、通常、樹脂組成物の寸法安定性の点より、吸水率が小さい樹脂が好ましい。ポリアミド系樹脂(A)の吸水率は、通常、2重量%以下であり、例えば、0.01〜1.8重量%、好ましくは0.05〜1.6重量%、さらに好ましくは0.1〜1.4重量%(特に0.15〜1.2重量%)程度であってもよい。本明細書において、吸水率は、ASTM D570に準拠して測定した値であり、水中(23℃)に24時間浸漬した試験片の重量増加率を示す。一般に、脂肪族ポリアミド樹脂の場合、構成するモノマー成分(脂肪族ジアミン成分、脂肪族ジカルボン酸成分、ラクタム、脂肪族アミノカルボン酸成分など)の炭素数が多いほど、吸水率が低い傾向がある。
【0031】
ポリアミド系樹脂(A)は、アミノ基及び/又はカルボキシル基を有していてもよい。ここでいうアミノ基には、通常、遊離アミノ基(−NH2基)が含まれる。ポリアミド系樹脂(A)は、遊離アミノ基を樹脂の側鎖及び/又は末端に有していてもよい。ポリアミド系樹脂(A)は、通常、末端アミノ基を有している。
【0032】
ポリアミド系樹脂(A)のアミノ基濃度は、特に制限されず、通常、10〜300ミリモル/kg程度であり、例えば、15〜250ミリモル/kg、好ましくは20〜200ミリモル/kg、さらに好ましくは25〜150ミリモル/kg(特に30〜100ミリモル/kg)程度であってもよい。
【0033】
ポリアミド系樹脂(A)のカルボキシル基濃度は、特に制限されず、通常、0.1〜200ミリモル/kg程度であり、例えば、0.3〜180ミリモル/kg、好ましくは0.5〜150ミリモル/kg、さらに好ましくは0.7〜130ミリモル/kg(特に1〜100ミリモル/kg)程度であってもよい。
【0034】
ポリアミド系樹脂(A)の末端アミノ基と末端カルボキシル基との割合(モル比)は、特に限定されず、通常、前者/後者=5/95〜100/0程度であり、例えば、10/90〜95/5、好ましくは15/85〜90/10、さらに好ましくは20/80〜85/15(特に25/75〜80/20)程度であってもよい。
【0035】
ポリアミド系樹脂(A)のアミノ基濃度及びカルボキシル基濃度は、例えば、ポリアミド系樹脂(A)を構成するジアミン成分及びジカルボン酸成分の割合を調整する方法などにより調整できる。
【0036】
[スチレン系樹脂]
スチレン系樹脂(B)には、ゴム成分を含まないポリスチレン系樹脂及びゴム変性スチレン系樹脂が含まれる。
【0037】
ポリスチレン系樹脂(B)を形成するスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、ビニルトルエン、ビニルキシレン、p−エチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなど)、ハロゲン置換スチレン(例えば、クロロスチレン、ブロモスチレンなど)、α−アルキル置換スチレン(例えば、α−メチルスチレンなど)などが例示できる。スチレン系単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのスチレン系単量体のうち、通常、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン(特にスチレン)などが使用される。
【0038】
スチレン系単量体は、共重合性単量体と組み合わせて使用してもよい。共重合性単量体としては、例えば、シアン化ビニル単量体(例えば、アクリロニトリルなど);アクリル系単量体[例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシC2-4アルキルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステルなど];不飽和多価カルボン酸又はその酸無水物(例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸又はそれらの酸無水物など);イミド系単量体[例えば、マレイミド、N−アルキルマレイミド(例えば、N−C1-4アルキル−マレイミドなど)、N−シクロアルキルマレイミド(例えば、N−シクロヘキシルマレイミドなど)、N−アリールマレイミド(例えば、N−フェニルマレイミドなど)など]などが例示できる。共重合性単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。共重合性単量体の割合は、通常、全単量体(スチレン系単量体と共重合性単量体との合計)の約50重量%以下であり、例えば、1〜45重量%、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは8〜30重量%程度であってもよい。
【0039】
ゴム変性スチレン系樹脂は、共重合(グラフト重合、ブロック重合など)などにより、ポリスチレン系樹脂で構成されたマトリックス(硬質成分)中にゴム成分(軟質成分)が粒子状に分散した重合体(グラフト共重合体、ブロック共重合体など)であってもよい。ゴム変性スチレン系樹脂は、通常、ゴム成分に対して、少なくともスチレン系単量体[例えば、スチレン系単量体単独、又は少なくともスチレン系単量体及び前記共重合性単量体(好ましくは、シアン化ビニル単量体)]がグラフト重合したグラフト共重合体である。
【0040】
ゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴム[ポリブタジエン(低シス型又は高シス型ポリブタジエン)、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソブチレン−ブタジエン共重合体など]、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリルゴム(ポリアクリル酸C2-8アルキルエステルを主成分とする共重合エラストマーなど)、エチレン−α−オレフィン系共重合体[エチレン−プロピレンゴム(EPR)など]、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体[エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)など]、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、水添ジエン系ゴム(水素化スチレン−ブタジエン共重合体、水素化ブタジエン系重合体など)などが挙げられる。前記各共重合体はランダム又はブロック共重合体であってもよい。ブロック共重合体には、AB型、ABA型、テーパー型、ラジアルテレブロック型などの構造を有する共重合体が含まれる。ゴム成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいゴム成分は、共役1,3−ジエン又はその誘導体の重合体、特にジエン系ゴム(ポリブタジエン、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムなど)である。
【0041】
ポリスチレン系樹脂で構成されたマトリックス中に分散するゴム成分の形態は、特に制限されず、例えば、コア/シェル構造、オニオン構造、サラミ構造などであってもよい。分散相を構成するゴム成分の体積平均粒子径は、通常、0.05〜30μm程度であり、例えば、0.1〜20μm、好ましくは0.2〜15μm、さらに好ましくは0.3〜10μm(特に0.5〜5μm)程度であってもよい。ゴム変性スチレン系樹脂のグラフト率は、通常、5〜300%程度であり、例えば、10〜250%程度であってもよい。
【0042】
スチレン系樹脂(B)は、シアノ基を有していなくてもよい。すなわち、スチレン系樹脂(B)は、例えば、ポリスチレン(GPPS)、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA樹脂)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)、スチレン−マレイミド共重合体、スチレン−N−置換マレイミド共重合体などのポリスチレン系樹脂;耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、α−メチルスチレン変性MBS樹脂などのゴム変性スチレン系樹脂などで構成してもよい。
【0043】
好ましいスチレン系樹脂(B)は、樹脂組成物の金属蒸着性(金属被膜との密着性)の点より、シアノ基を有するスチレン系樹脂で構成されている。シアノ基を有するスチレン系樹脂としては、前記共重合性単量体として、少なくともシアン化ビニル単量体を使用したスチレン系樹脂[少なくともスチレン系単量体とシアン化ビニル単量体との共重合体[スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、(メタ)アクリル酸変性AS樹脂、アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体などのポリスチレン系樹脂]、ゴム成分に対して少なくともスチレン系単量体とシアン化ビニル単量体とがグラフト重合したグラフト共重合体(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、(メタ)アクリル酸変性ABS樹脂、α−メチルスチレン変性ABS樹脂、イミド変性ABS樹脂、(メタ)アクリル酸メチル−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル−エチレン−酢酸ビニル−スチレン共重合体などのゴム変性スチレン系樹脂)など]が挙げられる。
【0044】
シアノ基を有するスチレン系樹脂は、少なくともスチレン系単量体とシアン化ビニル単量体との共重合体を構成する全単量体単位、又はゴム成分に対して少なくともスチレン系単量体とシアン化ビニル単量体とがグラフト重合したグラフト共重合体のマトリックスを構成する全単量体単位を基準として、シアン化ビニル単位を、単量体換算で、通常、1〜45モル%程度含み、樹脂組成物とメッキ被膜との密着性の点より、例えば、3〜40モル%、好ましくは5〜35モル%、さらに好ましくは7〜30モル%(特に10〜25モル%)程度含んでいてもよい。
【0045】
スチレン系樹脂(B)としては、樹脂組成物の耐衝撃性の点より、ゴム変性スチレン系樹脂(特にシアノ基を有するゴム変性スチレン系樹脂)が好ましい。ゴム変性スチレン系樹脂のゴム成分含有量は、通常、約70重量%以下であり、例えば、5〜68重量%、好ましくは10〜65重量%、さらに好ましくは15〜63重量%(特に20〜60重量%)程度であってもよい。
【0046】
スチレン系樹脂(B)は、単独で又は二種以上のブレンド品として使用できる。例えば、ゴム変性スチレン系樹脂[例えば、ゴム成分に対して、少なくともスチレン系単量体とシアン化ビニル単量体とがグラフト重合したグラフト共重合体(ABS樹脂など)など]と、ポリスチレン系樹脂[例えば、少なくともスチレン系単量体とシアン化ビニル単量体との共重合体(AS樹脂など)など]とを組み合わせて使用してもよい。ゴム変性スチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との割合(重量比)は、通常、前者/後者=100/0〜10/90程度であり、例えば、99/1〜20/80、好ましくは97/3〜30/70、さらに好ましくは95/5〜40/60(特に90/10〜50/50)程度であってもよい。
【0047】
スチレン系樹脂(B)を、少なくともゴム変性スチレン系樹脂で構成する場合、樹脂組成物のゴム成分含有量は、ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との合計100重量部に対して、通常、約60重量部以下であり、例えば、1〜55重量部、好ましくは3〜50重量部、さらに好ましくは5〜45重量部(特に7〜40重量部)程度であってもよい。
【0048】
スチレン系樹脂(ゴム変性スチレン系樹脂ではマトリックスを構成するポリスチレン系樹脂)の数平均分子量は、通常、10000〜1000000程度であり、例えば、50000〜700000、好ましくは100000〜500000程度であってもよい。スチレン系樹脂(B)のメルトインデックス(MI)は、例えば、200℃、荷重49Nで、通常、1〜10g/10分程度であり、例えば、1.5〜5g/10分程度であってもよい。
【0049】
スチレン系樹脂(B)の製造方法は、特に限定されない。スチレン系樹脂(B)は、乳化重合法による乳化重合型スチレン系樹脂又は乳化重合法以外の方法(懸濁重合法、塊状重合法、塊状懸濁重合法、溶液重合法など)による非乳化重合型スチレン系樹脂であってもよい。
【0050】
[配合割合]
ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との割合(重量比)は、通常、前者/後者=95/5〜5/95程度であり、樹脂組成物の特性[蒸着被膜との密着性、寸法安定性、耐衝撃性、流動性など]の点より、例えば、90/10〜10/90、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは70/30〜30/70(特に60/40〜40/60)程度であってもよい。
【0051】
[相溶化剤]
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)などの樹脂成分の相溶性を向上させるために、相溶化剤を含んでいてもよい。相溶化剤としては、種々の成分、例えば、オキサゾリン化合物、変性基[特に、樹脂成分(ポリアミド系樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)など)と親和性又は反応性を有する官能基(カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基(又はグリシジル基)、オキサゾニル基など)など]を有する相溶化剤、アイオノマー樹脂系相溶化剤などが挙げられる。相溶化剤は、例えば、樹脂組成物の特性(耐衝撃性など)などの点より、ポリアミド系樹脂(A)のアミノ基又はカルボキシル基に対して親和性又は反応性を有する官能基[例えば、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基(又はグリシジル基)、特にカルボキシル基又は酸無水物基]を有する相溶化剤であってもよい。
【0052】
好ましい相溶化剤としては、例えば、(1)前記カルボキシル基又はアミノ基に対して親和性又は反応性を有する官能基を有する単量体[(メタ)アクリル酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和多価カルボン酸又はその酸無水物;グリシジル(メタ)アクリレートなど]と、少なくともスチレン系単量体との共重合体[例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸変性AS樹脂、(メタ)アクリル酸変性MS樹脂などの(メタ)アクリル酸変性ポリスチレン系樹脂;スチレン−無水マレイン酸共重合体などの無水マレイン酸変性ポリスチレン系樹脂;スチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート−アクリロニトリル−スチレン共重合体などのグリシジル(メタ)アクリレート変性ポリスチレン系樹脂など]、(2)前記カルボキシル基又はアミノ基に対して親和性又は反応性を有する官能基を有する単量体で変性されたゴム変性スチレン系樹脂[例えば、(メタ)アクリル酸変性ABS樹脂など]、(3)前記カルボキシル基又はアミノ基に対して親和性又は反応性を有する官能基を有する単量体と、非スチレン系単量体との共重合体[例えば、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート−ビニルアルコール共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート−メチル(メタ)アクリレート共重合体などのエチレン−グリシジル(メタ)アクリレート系共重合体;エチレン−無水マレイン酸−エチル(メタ)アクリレート共重合体などの無水マレイン酸系共重合体など]などが挙げられる。相溶化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0053】
これらの相溶化剤の官能基(カルボキシル基など)の濃度は、単量体換算で、相溶化剤を構成する全単量体に対して、通常、0.01〜50モル%程度であり、例えば、0.05〜40モル%、好ましくは0.1〜30モル%、さらに好ましくは0.5〜20モル%(特に1〜10モル%)程度であってもよい。
【0054】
樹脂組成物の特性(耐衝撃性など)などの点より、これらの相溶化剤の中でも、特に(1)前記カルボキシル基又はアミノ基に対して親和性又は反応性を有する官能基を有する単量体と、少なくともスチレン系単量体との共重合体[スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸変性AS樹脂、(メタ)アクリル酸変性MS樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体など]、前記カルボキシル基又はアミノ基に対して親和性又は反応性を有する官能基を有する単量体で変性されたゴム変性スチレン系樹脂[例えば、(メタ)アクリル酸変性ABS樹脂など]などが好ましい。
【0055】
相溶化剤の割合は、ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)[相溶化剤がスチレン系樹脂(B)に該当する場合には、相溶化剤も含む]との合計100重量部に対して、通常、約50重量部以下であり、例えば、0.5〜45重量部、好ましくは1〜40重量部、さらに好ましくは3〜35重量部(特に5〜30重量部)程度であってもよい。
【0056】
[フィラー]
本発明の樹脂組成物は、フィラー(C)を含んでいてもよい。フィラーは、無機フィラー又は有機フィラーのいずれであってもよい。フィラーは、繊維状フィラー又は非繊維状フィラーのいずれであってもよい。繊維状フィラーは、例えば、チョップドストランドなどであってもよい。
【0057】
フィラーは、非導電性フィラー[繊維状フィラー(ガラス繊維;ウォラストナイトなどの鉱物繊維;チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウムなどのウイスカー類などの無機繊維;アラミド繊維などの有機繊維)、非繊維状フィラー(タルク、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムなどの無機フィラー;フェノール樹脂粒子、架橋スチレン系樹脂粒子、架橋アクリル系樹脂粒子などの有機フィラー)など]で構成されていてもよいが、通常、樹脂組成物と、金属被膜又は金属酸化物被膜との密着性の点より、少なくとも導電性フィラー[繊維状フィラー(炭素繊維;ステンレススチール(SUS)繊維などの金属繊維;金属被覆炭素繊維(ニッケル被覆炭素繊維など)などの金属被覆繊維などの無機繊維)、非繊維状フィラー(カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末;Al粉末、Ti粉末などの金属粉末などの無機フィラー)]で構成されていることが好ましい。
【0058】
非繊維状フィラー(例えば、粉末状又は粒子状フィラー)の数平均粒子径は、通常、10nm〜300μm程度であり、例えば、20nm〜200μm、好ましくは30nm〜100μm、さらに好ましくは50nm〜50μm(特に100nm〜10μm)程度であってもよい。繊維状フィラーの平均径は、通常、0.1〜100μm程度であり、例えば、0.5〜80μm、好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは2〜30μm(特に3〜10μm)程度であってもよい。繊維状フィラーの平均長さは、通常、0.05〜50mm程度であり、例えば、0.1〜40mm、好ましくは0.15〜30mm、さらに好ましくは0.18〜20mm(特に0.2〜15mm)程度であってもよい。
【0059】
これらのフィラーは、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0060】
フィラーの割合は、ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との合計100重量部に対して、通常、1〜1000重量部程度であり、例えば、3〜800重量部、好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは8〜300重量部(特に10〜100重量部)程度であってもよい。
【0061】
[難燃剤]
本発明の樹脂組成物は、必ずしも難燃剤を含む必要はないが、含んでいてもよい。難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤(ブロム化ビスフェノール型エポキシ樹脂、ブロム化フェノキシ樹脂、ブロム化ポリスチレン系樹脂、ブロム化ポリフェニレンエーテル系難燃剤、ハロゲン化ビスフェノール型ポリカーボネート系難燃剤など)、有機酸金属塩系難燃剤(パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩、トリハロベンゼンスルホン酸金属塩、ジフェニルスルホン−ジスルホン酸金属塩、ジフェニルスルホンスルホン酸金属塩などの有機カルボン酸又は有機スルホン酸のアルカリ金属(Na、K)塩、アルカリ土類金属塩など)、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、ホスファゼン系難燃剤、金属酸化物(酸化アンチモンなど)などが挙げられる。難燃剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0062】
ハロゲン化ビスフェノール型ポリカーボネート系難燃剤としては、例えば、テトラクロロビスフェノールAをベースとしたポリカーボネート型難燃剤(例えば、テトラクロロビスフェノールAのホモポリカーボネート樹脂、テトラクロロビスフェノールAとビスフェノールAとの共重合ポリカーボネート樹脂など)などが挙げられる。
【0063】
リン系難燃剤としては、例えば、芳香族リン酸エステル系難燃剤、赤リン系難燃剤(赤リン、赤リン表面を熱硬化性樹脂及び/又は無機化合物で被覆した安定化赤リンなど)などが挙げられる。芳香族リン酸エステル系難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリス(トリル)ホスフェート、トリス(キシレニル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジキシレニルホスフェート)、4,4'−ビフェノールビス(ジフェニルホスフェート)、4,4'−ビフェノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)のビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)のビス(ジキシレニルホスフェート)などが挙げられる。芳香族リン酸エステル系難燃剤は、ハロゲン化芳香族リン酸エステル系難燃剤も含む。ハロゲン化芳香族リン酸エステル系難燃剤としては、例えば、前記芳香族リン酸エステル系難燃剤のハロゲン化物、例えば、トリス(4−ブロモフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(2,4,6−トリブロモフェニル)ホスフェート、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン−トリクロロホスフィンオキシド重縮合物(重合度1〜3)のフェノール縮合物(旭電化工業(株)「アデカスタブFP−700」「アデカスタブFP−750」)などが挙げられる。
【0064】
難燃剤の割合は、ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との合計100重量部に対して、通常、50重量部程度以下であり、例えば、0.5〜45重量部、好ましくは1〜40重量部、さらに好ましくは3〜35重量部(特に5〜30重量部)程度であってもよい。
【0065】
難燃剤は、難燃助剤と組み合わせて用いてもよい。難燃助剤は、例えば、ドリップ防止剤又はフッ素系樹脂で構成してもよい。難燃助剤は、通常、粉粒状の形態で使用してもよい。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などが挙げられる。
【0066】
難燃助剤の割合は、ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との合計100重量部に対して、通常、約30重量部以下であり、例えば、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部(特に0.7〜3重量部)程度であってもよい。
【0067】
[他の添加剤]
本発明の樹脂組成物は、さらに、種々の添加剤、例えば、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、離型剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤などを含んでいてもよい。
【0068】
熱安定剤としては、例えば、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸、これらのエステルなどが挙げられる。熱安定剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。熱安定剤の使用量は、ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との合計100重量部に対して、通常、約2重量部以下であり、例えば、0.01〜1.5重量部、好ましくは0.05〜1重量部、さらに好ましくは0.1〜0.5重量部程度であってもよい。
【0069】
酸化防止剤としては、慣用の酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン類、リン系酸化防止剤など)を利用してもよい。酸化防止剤の使用量は、ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との合計100重量部に対して、通常、約2重量部以下であり、例えば、0.001〜1.5重量部、好ましくは0.005〜1重量部、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部程度であってもよい。
【0070】
紫外線吸収剤としては、慣用の紫外線吸収剤(例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤など)を使用してもよい。さらに、ヒンダードアミン系光安定剤などの光安定剤を使用してもよい。紫外線吸収剤及び光安定剤の使用量は、合計で、ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との合計100重量部に対して、通常、約7重量部以下であり、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部程度であってもよい。
【0071】
離型剤としては、例えば、ワックス類(ポリエチレンワックス、高級脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなど)、シリコーンオイルなどが挙げられる。離型剤の使用量は、ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との合計100重量部に対して、通常、約3重量部以下であり、例えば、0.01〜2.5重量部、好ましくは0.05〜2重量部、さらに好ましくは0.1〜1.5重量部程度であってもよい。
【0072】
本発明の樹脂組成物には、無機炭酸塩、無機酸化物などの無機固体を添加することができる。
【0073】
[吸水率]
本発明の樹脂組成物の吸水率は、通常、約1重量%以下であり、寸法安定性の点より、例えば、0.01〜0.9重量%、好ましくは0.03〜0.8重量%、さらに好ましくは0.05〜0.7重量%(特に0.1〜0.5重量%)程度であってもよい。樹脂組成物の吸水率は、ポリアミド系樹脂(A)の吸水率と同様、ASTM D570に準拠して測定した値であり、水中(23℃)に24時間浸漬した試験片の重量増加率を示す。
【0074】
[製造方法]
本発明の樹脂組成物は、慣用の方法で調製できる。樹脂組成物の製造方法としては、例えば、(1)混合機(タンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、リボンミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機など)で各成分[ポリアミド系樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)、フィラー(C)など]を予備混合し、溶融混練機(一軸又はベント式二軸押出機など)で溶融混練し、ペレット化手段(ペレタイザーなど)でペレット化する方法、(2)所望の成分[例えば、フィラー(C)、ポリアミド系樹脂(A)及びスチレン系樹脂(B)の一部など]のマスターバッチを製造し、他の成分[ポリアミド系樹脂(A)及びスチレン系樹脂(B)の残部など]と混合し、溶融混練機で溶融混練し、ペレット化する方法、(3)各成分を溶融混練機に供給して溶融混練し、ペレット化する方法、(4)溶融混練機の上流部分で所定の成分だけを供給して溶融混練し、途中部で他の成分を供給して溶融混練する方法などが例示できる。溶融混練温度は、特に限定されず、通常、180〜350℃程度であり、例えば、200〜300℃程度であってもよい。
【0075】
本発明の樹脂組成物は、金属被膜又は金属酸化物被膜との密着性が高いので、その成形品は、金属又は金属酸化物被覆成形体(特に金属蒸着による電磁波シールド材)の構成材料として好適である。本発明の樹脂組成物は、種々の成形法(例えば、射出成形、押出成形など)により成形し、種々の形態の成形品とすることができる。
【0076】
例えば、本発明の樹脂組成物(例えば、前記製造方法により、ペレット化された樹脂組成物など)を、例えば、230〜350℃(好ましくは240〜300℃)程度の温度で溶融・混練し、高圧(例えば、0.5×108Pa〜2×108Pa程度)で、金型中に射出し、充填した後、冷却・固化してもよい。
【0077】
[金属蒸着法]
本発明の樹脂組成物及びその成形品は、金属被膜又は金属酸化物被膜との密着性が高いので、種々の蒸着法によって、蒸着を施し、金属被膜又は金属酸化物被膜で被覆することができる。
【0078】
金属被膜を形成する金属は、金属蒸着可能であれば、特に限定されず、例えば、第4族金属(Ti、Zr、Hfなど)、第5族金属(V、Nb、Taなど)、第6族金属(Cr、Mo、Wなど)、第7族金属(Mn、Tc、Reなど)、第8族金属(Fe、Ru、Osなど)、第9族金属(Co、Rh、Irなど)、第10族金属(Ni、Pd、Pt)、第11族金属(Cu、Ag、Au)、第12族金属(Zn、Cdなど)、第13族金属(Al、Ga、In、Tlなど)、第14族金属(Ge、Sn、Pbなど)、第15族金属(Sb、Biなど)などが例示される。金属酸化物被膜は、前記金属に対応する金属酸化物(例えば、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛など)であってもよい。これらの金属は、単独で又は二種以上の合金又は複合体[酸化インジウム/酸化スズ複合体(ITO)など]として金属被膜又は金属酸化物被膜を形成できる。これらの中でも、金属被覆又は金属酸化物被覆成形品の電磁波シールド性や導電性などの点より、導電性の高い金属[Ag、Cu、Alなど(特にAl)]が好ましい。
【0079】
蒸着法としては、例えば、PVD法(真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、分子線エピタキシー法など)、CVD法[熱CVD法、プラズマCVD法、有機金属気相成長法(MOCVD法)、光CVD法など]、イオンビームミキシング法、イオン注入法などの気相法などが例示される。これらの蒸着法による金属被膜又は金属酸化物被膜は、単独の被膜又は二種以上の複合被膜(積層膜)であってもよい。例えば、Al被膜などを単独で形成してもよく、また、Cu被膜上にその他の金属被膜(Zn被膜、Sn被膜など)を形成してもよい。
【0080】
特に厚膜の金属被膜を形成する場合、蒸着法によって薄膜の金属被膜又は導電性の金属酸化物被膜を形成した後、電気メッキを施してもよい。電解メッキは、慣用のメッキ法により行うことができる。例えば、形成する被膜の種類に応じて、各種のメッキ浴を使用できる。例えば、クロムメッキの場合、サージェント浴、低濃度クロムメッキ浴、フッ化物添加浴(例えば、クロム酸−ケイフッ化ナトリウム−硫酸浴など)、SRHS浴、テトラクロメート浴、マイクロクラッククロムメッキ浴などを使用でき、ニッケルメッキの場合、無光沢ニッケルメッキ法(ワット浴、スルファミン酸ニッケル浴、塩化物浴など)、光沢ニッケルメッキ法(有機光沢ニッケルメッキなど)などを使用でき、銅メッキの場合、酸性浴(硫酸銅浴、ホウフッ化銅浴など)、アルカリ性浴(シアン化銅浴、ピロリン酸銅浴など)などを使用でき、亜鉛メッキの場合、例えば、ジンケート浴、アミン浴、ピロリン酸浴、硫酸浴、ホウフッ化浴、塩化物浴などを使用できる。
【0081】
金属被膜又は金属酸化物被膜の厚みは、通常、0.01〜200μm程度であり、例えば、0.05〜180μm、好ましくは0.1〜150μm、さらに好ましくは0.3〜130μm(特に0.5〜100μm)程度であってもよい。金属被膜又は金属酸化物被膜の厚みが小さすぎると、電磁波シールド性が低下する傾向があり、前記範囲を超えて金属被膜又は金属酸化物被膜の厚みを大きくしても、さほど電磁波シールド性が向上しない場合がある。蒸着法によって金属被膜又は導電性の金属酸化物被膜を形成した後、電気メッキを施す場合、蒸着法による金属被膜又は導電性の金属酸化物被膜と、電気メッキによる金属被膜との厚みの比は、例えば、前者/後者=0.1/9.9〜6/4、好ましくは0.3/9.7〜5/5、さらに好ましくは0.5/9.5〜4/6(特に1/9〜3/7)程度であってもよい。
【0082】
本発明の成形品は、少なくとも一部が金属蒸着されていればよく、成形品の表面の一部(例えば、板状の成形品の片面又は片面の一部)に金属被膜又は金属酸化物被膜が形成されていてもよく、また、全面に亘って金属被膜又は金属酸化物被膜が形成されていてもよい。
【0083】
[光学モジュール]
図1は、本発明の金属蒸着成形品であるレンズホルダーを備えた携帯電話用光学モジュールの一例の断面図である。
【0084】
レンズホルダー1は、底面が開口し、上面中央部に光の入射孔2を有する円筒状のホルダー本体3と、このホルダー本体3の底面の開口にはめ込まれた円環状支持部材4とを備えている。ホルダー本体3内に対物レンズ5が装着され、対物レンズ5の上面がホルダー本体3の上面内側に接触している。ホルダー本体3の底面の開口に円環状支持部材4がはめ込まれ、円環状支持部材4の上面が対物レンズ5の下面に接触している。ホルダー本体3の上面の入射孔2から入射した光は、対物レンズ5を透過し、円環状支持部材4の開口を通過する。対物レンズ5は、円盤状であり、直径が、ホルダー本体3の底面の開口径よりも小さく、入射孔2の孔径及び円環状支持部材4の開口径よりも大きい。ホルダー本体3は、側壁外周の上端部に鍔部(円環状の突起)6を有してもよい。ホルダー本体3の上面の外側、鍔部6の外周面及び入射孔2の外周面に金属被膜(Al被膜など)7が形成されている。
【0085】
光学モジュールは、主要な構成要素として、対物レンズ5、この対物レンズ5を保持するレンズホルダー1、前記対物レンズ5を透過した光(画像)を撮像するための固体撮像素子(CCD型素子など)8、この固体撮像素子8からの信号を処理するための信号処理大規模集積回路(LSI)9、前記固体撮像素子(CCD型素子など)8及び信号処理大規模集積回路(LSI)9を搭載するプリント配線基板10を有する。例えば、プリント配線基板10の上面に固体撮像素子8を搭載し、裏面(前記固体撮像素子8が搭載された面と反対側の面)に信号処理大規模集積回路(LSI)9を搭載してもよい。
【0086】
光学モジュールは、対物レンズ5を透過した光(画像)から赤外線を除去するための赤外線フィルタ11を有してもよい。例えば、固体撮像素子8を囲繞する筒状ハウジング12によって、赤外線フィルタ11を固体撮像素子8の上方に保持するとともに、レンズホルダー1を赤外線フィルタ11の上方に固定してもよい。対物レンズ5を透過した光(画像)は、赤外線フィルタ11を透過した後に、固体撮像素子8に撮像される。
【0087】
前記筒状ハウジング12は、例えば、上面及び底面が開口した円筒状であってもよく、側壁内面の中段部に赤外線フィルタ11を保持するための円環状(鍔状)の突起13を有してもよい。また、例えば、筒状ハウジング12の上面開口部(側壁内面の上段部)を雌ネジとし、レンズホルダー1の側壁外面の鍔部より下方の部分を雄ネジとして、筒状ハウジング12に、レンズホルダー1を固定する構造であってもよい。
【0088】
プリント配線基板10は、例えば、フレキシブルプリント配線基板14を介して外部回路に接続されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の樹脂組成物は、金属被膜又は金属酸化物被膜との密着性が高いので、金属蒸着製品が使用されている各種の産業分野、例えば、精密機器(携帯電話、デジタルカメラ、携帯型情報端末など)、オフィスオートメーション(OA)機器(パーソナルコンピュータ、表示装置、レーザープリンター、複写機、ファクシミリなど)などのハウジング部品又はケーシング部品(特に電波を送受信する機器の電磁波シールド材)などに利用できる。
【実施例】
【0090】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下の実施例及び比較例においては、以下の材料を使用した。
【0091】
[ポリアミド系樹脂]
PA−a:ポリアミド6(宇部興産(株)製1013B、吸水率1.8重量%、アミノ基濃度30ミリモル/kg、カルボキシル基濃度30ミリモル/kg)
PA−b:ポリアミド66(公知の方法により合成;吸水率1.2重量%、アミノ基濃度40ミリモル/kg、カルボキシル基濃度40ミリモル/kg)
PA−c:ポリアミド6−66(宇部興産(株)製5013B、吸水率1.5重量%、アミノ基濃度35ミリモル/kg、カルボキシル基濃度35ミリモル/kg)
PA−d:ポリアミド12(公知の方法により合成;吸水率0.25重量%、アミノ基濃度20ミリモル/kg、カルボキシル基濃度20ミリモル/kg)。
【0092】
[スチレン系樹脂]
ABS−1:乳化重合(硫酸凝固)によるABS樹脂[ゴム成分含有量60重量%、アクリロニトリル単位/スチレン単位(重量比)=27/73]
ABS−2:乳化重合(塩化カルシウム凝固)によるABS樹脂[ゴム成分含有量60重量%、アクリロニトリル単位/スチレン単位(重量比)=27/73]
ABS−3:塊状重合法によるABS樹脂[ゴム成分含有量20重量%、アクリロニトリル単位/スチレン単位(重量比)=25/75]
AS:塊状重合法によるAS樹脂[アクリロニトリル単位/スチレン単位(重量比)=27/73]。
【0093】
[相溶化剤]
COM−1:乳化重合法(塩化カルシウム凝固)によるメタクリル酸変性ABS樹脂[ゴム成分含有量60重量%、メタクリル酸単位/アクリロニトリル単位/スチレン単位(重量比)=3/25/72]
COM−2:乳化重合法(塩化カルシウム凝固)によるメタクリル酸変性AS樹脂[メタクリル酸/アクリロニトリル単位/スチレン単位(重量比)=3/25/72]。
【0094】
[フィラー]
CF−1:炭素繊維(東邦テナックス(株)製ベスファイトHTA−C6−UE)
CF−2:ニッケル被覆炭素繊維(東邦テナックス(株)製ベスファイトMC)
SUS:ステンレススチール(SUS)繊維(チョップドストランド)(ベカルト社製ベキシードGR75/C16)
W:ウォラストナイト(ナイコミネラルズ社製NYGLOS4)
GF:ガラス繊維(チョップドストランド)(公知の方法により製造;繊維径13μm、繊維長3mm)。
【0095】
[添加剤]
ADD:MC100B(三共有機合成(株)製)。
【0096】
実施例1〜14及び比較例1〜2
表1に示す組成で各成分を配合し、ヘンシェルミキサーで混合し、押出機を使用して210℃で溶融混練し、ペレットを得た。このペレットを250℃で射出成形し、以下の判定基準にしたがってメッキ被膜との密着性を調べた。また、得られた射出成形体について、吸水率及び耐衝撃性を測定した。結果を表1に示す。
【0097】
[蒸着性]
試験片の表面に、真空蒸着法によってアルミニウムを蒸着させて、膜厚10μmのアルミニウム被膜(蒸着膜)を形成させた。
【0098】
蒸着膜に、粘着テープをしっかりと貼ったのち、剥がし、蒸着膜の剥離の状態を調べた。評価基準は以下の通りである。
【0099】
3:全く剥離しない
2:少し剥離する
1:剥離する。
【0100】
[吸水率]
樹脂組成物の吸水率は、ASTM D570に準拠して、水中に24時間浸漬した試験片の重量増加率で評価した。
【0101】
[耐衝撃性]
シャルピー衝撃試験(ノッチ付き)によって評価した。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
表1及び表2から明らかなように、実施例の樹脂組成物は、いずれも、金属被膜との密着性が高く、吸水率が低く、耐衝撃性が高い。これに対して、比較例の樹脂組成物は、金属被膜との密着性が低く、吸水率も高い。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の樹脂組成物を使用した携帯電話用光学モジュールの一例の断面図である。
【符号の説明】
【0106】
1…レンズホルダー
2…入射孔
3…ホルダー本体
4…円環状支持部材
5…対物レンズ
6…鍔部
7…金属被膜(Al被膜)
8…固体撮像素子
9…信号処理大規模集積回路(LSI)
10…プリント配線基板
11…赤外線フィルタ
12…ハウジング
13…円環状の突起
14…フレキシブルプリント配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系樹脂(A)と、スチレン系樹脂(B)と、フィラー(C)とを含む金属蒸着用樹脂組成物。
【請求項2】
ASTM D570に準拠して測定したポリアミド系樹脂(A)の吸水率が2重量%以下である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアミド系樹脂(A)が、脂肪族ポリアミド樹脂、脂環族ポリアミド樹脂及び芳香族ポリアミド樹脂から選ばれた少なくとも一種で構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ポリアミド系樹脂(A)が、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612及びポリアミド6−66から選ばれた少なくとも一種の脂肪族ポリアミドで構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項5】
ポリアミド系樹脂(A)が、アミノ基濃度10〜300ミリモル/kg及び/又はカルボキシル基濃度0.1〜200ミリモル/kgのポリアミド系樹脂で構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項6】
スチレン系樹脂(B)が、少なくともスチレン系単量体とシアン化ビニル単量体との共重合体、及びゴム成分に対して少なくともスチレン系単量体とシアン化ビニル単量体とがグラフト重合したグラフト共重合体から選ばれた少なくとも一種で構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項7】
スチレン系樹脂(B)が、少なくともスチレン系単量体とシアン化ビニル単量体との共重合体、及びゴム成分に対して少なくともスチレン系単量体とシアン化ビニル単量体とがグラフト重合したグラフト共重合体から選ばれた少なくとも一種で構成され、前記共重合体又は前記グラフト共重合体のマトリックスを構成する全単量体単位を基準として、シアン化ビニル単位を、単量体換算で、1〜45モル%含む請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項8】
ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との割合(重量比)が、前者/後者=5/95〜95/5である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、カルボキシル基及び酸無水物基から選ばれた少なくとも一種を有する相溶化剤を含む請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項10】
フィラー(C)が、少なくとも導電性フィラーで構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項11】
フィラー(C)が、炭素繊維、金属繊維及び金属被覆繊維から選ばれた少なくとも一種で構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項12】
フィラー(C)の割合が、ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との合計100重量部に対して1〜1000重量部である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項13】
ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との割合(重量比)が、前者/後者=10/90〜90/10であり、フィラー(C)の割合が、ポリアミド系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との合計100重量部に対して3〜800重量部であり、かつ、ASTM D570に準拠して測定された吸水率が1重量%以下である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1記載の樹脂組成物で構成され、かつ少なくとも金属蒸着により金属又は金属酸化物の被膜が形成されている金属蒸着成形品。
【請求項15】
光学モジュール用レンズホルダーである請求項14記載の成形品。
【請求項16】
請求項1記載の樹脂組成物で形成された成形品に、少なくとも金属蒸着を施す金属蒸着成形品の製造方法。
【請求項17】
請求項1記載の樹脂組成物で形成された成形品に、金属蒸着を施した後、電気メッキを施す金属蒸着成形品の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−131821(P2006−131821A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324869(P2004−324869)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】