説明

金属製の支持部品および防食金属被覆を具備する化学装置の構成要素の製造方法

【課題】工業的に導入可能であり、後に行われる被覆部品の変形を可能にし、大きな寸法の部品(典型的には表面が約1m2を超えるプレート)にも応用できるような、金属製の支持部品に厚みの薄い防食被覆をしっかりと定着させるための方法を提供する。
【解決手段】化学装置の構成要素100を製造するための、組み立て部品101、102、111、112の製造方法を対象とするものであり、該方法は、制御された雰囲気におけるろう付作業を含む作業によって、未加工の組み立て部品21、22に防食被覆31、32を定着させることと、場合によっては、塑性変形により被覆部品101、102を成形することを含む。ろう付の温度は、好ましくは約750℃未満、さらに好ましくは600℃と720℃の間に含まれる。この方法によって、鋼鉄製のプレートに、1mm未満の厚みを有する防食被覆をしっかりと定着することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学産業向けの化学製品の取扱い、保管および処理のための装置に関するものである。本発明は特に、濃縮された酸または塩基のような、腐食性の高い製品を取り扱うのに適している、混合器、処理装置そして輸送装置に関するものである。本出願において、「化学装置の構成要素」という用語は特に、集合的に、保管設備、タンク、熱交換器、反応器、混合器、処理装置および輸送装置を指す。
【0002】
より特定的には、本発明は、化学装置の構成要素あるいは化学装置の構成要素の製造を目的とする組み立て部品のような、メッキ製品の製造方法に関するものであり、少なくとも一つの金属製の支持部品と防食金属被覆を含んでいる。
【背景技術】
【0003】
化学産業では多くの化学装置の構成要素が用いられており、該構成要素は、腐食性の高い化学製品を取り扱い、保管し、および/または処理することが多く、したがって、これらの化学製品による腐食に抗するのに適していなければならない。
【0004】
腐食に対する良好な品質を確保するために、化学装置の構成要素はほとんどの場合、鋼鉄製の支持部品と、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニッケル主体の合金あるいはステンレス鋼のような「貴金属」と言われる金属を主成分とする、防食金属被覆を具備している。化学装置の構成要素は、前もって防食金属被覆で覆ったプレートのような組み立て部品を組み立てることによって製造可能である。防食被覆は、ローレット加工、爆発(「爆発圧着」)、熱カレンダー加工、あるいはプレートと防食被覆の間を接合しない単純な被覆など、さまざまな仕方で支持部品に定着させられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低い内圧下における装置などのいくつかの用途では、金属製の支持部品と防食被覆の間の強い結合、つまり、剥離に対する強い抵抗力を有する結合を必要とすることで、例えば防食被覆の劣化(英語での「collapsing」)の原因となりうる、これらの分離を避けるようになっている。ローレット加工、「爆発圧着」、カレンダー加工によって、支持材/被覆の非常に緊密な結合が得られるが、これらの技術は、防食被覆の厚みが0.7mm未満であるときにだけ用いることができる。
【0006】
ろう付によって、支持材/被覆の非常に強い結合が得られ、被覆の厚みを減少させることができる。その一方で、ろう付は余計な困難性をもたらす。特に、基板と被覆材料の間の熱膨張係数の違い(例えば鋼鉄の膨張係数はタンタルのそれよりもおよそ二倍高い)は、力学的応力を生じさせる。これらの応力は被覆を脆弱化させ、変形させる。さらに、ろう付作業は金属間化合物の形成を引き起こしうるものであり、該金属間化合物は支持材と被覆の間の結合を脆弱化させる可能性がある。これらの困難性は、場合によって行われる、被覆された支持部品の成形作業、特に塑性変形によって、さらに増す。
【0007】
Fansteelによる米国特許第4291104号明細書は、「convolutions」と称される事前の変形を施された被覆を用いることで、支持材と被覆の間の膨張の違いにより引き起こされる偶発的な変形の問題を解決することを教示している。この解決法では金属間化合物の形成を防ぐことができず、被覆と支持材の間の接触面積を減少させ、このことが支持材/被覆の結合の脆弱化へとつながる。さらに、この解決法は、後に行われる被覆部品の成形の際に、深刻な問題をもたらす。特に、被覆が変形を施されているとき、大きな寸法の被覆部品をローラーでカレンダー加工することは想定し難い。これらの変形はさらに、一般的には成形作業の際に受ける押しつぶしによって脆弱化する。
【0008】
したがって本出願人は、工業的に導入可能であり、後に行われる被覆部品の変形を可能にし、大きな寸法の部品(典型的には表面が約1mを超えるプレート)にも応用できるような、金属製の支持部品に厚みの薄い防食被覆をしっかりと定着させるための方法を探究した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、金属製(そして好ましくは鋼鉄製)の支持部品と防食金属被覆を含んだメッキ製品の製造方法を対象とし、防食被覆が制御された雰囲気下におけるろう付によって支持部品に定着させられることで、支持部品の所定の少なくとも一部分と被覆の所定の少なくとも一部分との間の、力学的な接合を確立することを特徴とする。
【0010】
本出願人は、本発明の方法によって、金属製、特に鋼鉄製の部品に、1mm未満、さらには0.5mm未満、場合によっては0.3mm以下の厚みを有する防食被覆をしっかりと定着させることができることを確認した。
【0011】
本発明の第一の特徴によると、メッキ製品は化学装置の構成要素の製造を目的とする組み立て部品である。本発明のこの特徴において、製造方法は以下のことを含んでいる:
−制御された雰囲気下で、ろう付によって防食被覆を支持部品(すなわち「未加工の組み立て部品」)に定着させること、
−場合によっては塑性変形によって被覆部品を成形することで、被覆組み立て部品(すなわち「成形部品」)を製造すること。
【0012】
本発明の第二の特徴によると、そのメッキ製品は化学装置の構成要素である。本発明のこの特徴において、製造方法は以下のことを含む:
−制御された雰囲気下でのろう付によって、防食被覆を、少なくとも一つの第一と第二の未加工の組み立て部品に定着させること、
−前記被覆部品を塑性変形によって成形すること、
−前記部品を組み立てることで(典型的には溶接を含む作業による)、化学装置の前記構成要素を形成すること。
【0013】
本発明は、組み立て部品が防食被覆で被覆された後に成形されるとき、つまり、防食被覆を支持部品(すなわち「未加工の組み立て部品」)に定着させた後に成形されるときに、特に有利である。本発明のこの変形例により、特に、被覆部品の取扱い、輸送、保管そして処理を単純化することが可能になる。本発明のこの有利な実施態様では、被覆される未加工の組み立て部品の表面は典型的には大部分が平らである。前記部品は、機械加工、穿孔、リーマ加工、塑性変形またはその他のあらゆる手段によって事前に成形された部分を含みうる。
【0014】
本発明の好ましい実施態様では、防食被覆の定着は、約750℃未満、好ましくは600℃と720℃の間に含まれる温度におけるろう付によって、制御された雰囲気下で行われ、該雰囲気は、好ましくは、ろう付の最中に被覆が酸化することを避けるために、不活性ガスを含んでいる。本出願人は、ろう付温度を十分に低くすることにより、ろう付作業によって引き起こされ、未加工の部品と被覆との間の膨張の差に起因する被覆の変形を、かなり抑制することができることに注目した。そうすると、膨張の差の影響を補うための被覆の事前変形を行う必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるメッキ製品の一部を概略的に示す図である。
【図2】本発明の方法の実施態様を概略的に示す図である。
【図3】本発明の実施態様による組み立て部品の製造方法を、断面図で概略的に示す図である。
【図4】本発明の実施態様による化学装置の構成要素の製造方法を、断面図で概略的に示す図である。
【図5】本発明の変形例による化学装置の構成要素の製造方法を、断面図で概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によると、組み立て部品(111、112)は、化学装置の構成要素(100)の製造を目的としたものであるが、前記部品は、金属製の支持部品(2、21、22)と、少なくとも一つの防食金属被覆(3、31、32)を具備しており、該組み立て部品の製造方法は以下のことを含んでいる:
−防食被覆(3、31、32)を支持部品(2、21、22)に、制御された雰囲気下におけるろう付作業を含む作業によって、定着させること、
−場合によっては、被覆部品(101、102)を塑性変形によって成形することで、被覆組み立て部品(111、112)(すなわち「成形部品」)を製造すること。
【0017】
本発明の好ましい実施態様によると、化学装置の構成要素(100)の製造方法は以下のことを含む:
−本発明の方法により、少なくとも一つの第一(101)と第二(102)の中間被覆組み立て部品を製造すること、
−塑性変形によって中間被覆部品(101、102)を成形することで、所定の形状を有する被覆組み立て部品(111、112)を製造すること、
−被覆組み立て部品(111、112)の組み立てにより、化学装置の構成要素(100)を製造すること。
【0018】
より正確には、この実施態様では、化学装置の構成要素(100)は、それぞれが金属製の支持部品(21、22)と少なくとも一つの防食金属被覆(31、32)とを具備した、少なくとも一つの第一と第二の被覆組み立て部品(111、112)を具備しており、該化学装置の構成要素の製造方法は、以下のことを含んでいる:
−少なくとも一つの第一(21)と第二(22)の支持部品を用意すること、
−制御された雰囲気下におけるろう付作業を含む、少なくとも一つのろう付材料(41、42)を用いる方法により、各前記支持部品(21、22)に防食被覆(31、32)を定着させることで、中間被覆部品(101、102)を製造すること、
−塑性変形によって中間被覆部品(101、102)を成形することで、所定の形状を有する被覆組み立て部品(111、112)を製造すること。
−典型的には溶接を含む作業によって被覆組み立て部品(111、112)を組み立てることで、化学装置の前記構成要素(100)を製造すること。
【0019】
前記室(10)内の制御された雰囲気は、好ましくは主として不活性ガスで構成される。不活性ガスの雰囲気は、好ましくは所定の圧力Pの下にある。この雰囲気は、典型的には室の最初の雰囲気を排出すること(典型的には約0.1Paと1Paの間に含まれる残留圧力になるまで)と、前記不活性ガスを所定の圧力Pに達するまで導入することで形成される。このパージ作業は一回以上繰り返してもよい。不活性ガスは、希ガス(典型的にはアルゴンまたはヘリウム)あるいは窒素ガス、またはこれらの混合物であってよい。室(10)内の不活性ガスの圧力は、典型的には約10Paと10Paの間(つまり1mbarから1barの間)に含まれる。弱い圧力Pにより、産業用の不活性ガスの中に場合によっては存在している反応体(水や酸素など)の好ましくない影響を抑制することができるようになる。
【0020】
塑性変形による被覆部品(101、102)の成形は、典型的には圧延またはカレンダー加工によって行われる。
【0021】
本発明の好ましい実施態様では、前記ろう付作業は、典型的には以下のことを含む:
−少なくとも一つのろう付材料(4、41、42)を、金属製の支持部品(2、21、22)と防食被覆(3、31、32)の間に介在させることで、初期の組み立て品(5、51、52)を形成すること、
−場合によっては、前記初期の組み立て品(5、51、52)にメッキのための圧力を加えること、
−初期の組み立て品(5、51、52)を、抵抗器のような、少なくとも一つの加熱手段(11)を備えた、制御された雰囲気の室(10)に導入すること、
−前記室(10)に(より特徴的には前記組み立て品の近傍に)不活性ガスの雰囲気を形成すること、
−前記ユニット(5、51、52)を、少なくとも前記ろう付材料(4、41、42)のろう付温度と等しい温度まで加熱すること。
【0022】
支持部品(2、21、22)と防食被覆(3、31、32)の間へろう付材料(4、41、42)を介在させることは、二つの過程で行うことができる。特に、介在は以下のことを含むことができる:
−ろう付材料(4、41、42)を支持部品(2、21、22)に、「結合用の」と呼ばれる面に対して堆積させること、
−支持部品(2、21、22)に防食被覆(3、31、32)を位置付けることで、前記初期の組み立て品(5、51、52)を形成すること。
【0023】
この本発明の好ましい実施態様では、化学装置の構成要素(100)の製造方法は、以下のことを含むことを特徴としている:
・以下のことを含むろう付作業を含む方法によって、中間被覆組み立て部品(101、102)を製造すること:
−支持部品(21、22)、防食被覆(31、32)、および支持部品と被覆の間にある少なくとも一つのろう付材料(41、42)を含んでいる、初期の組み立て品(51、52)を形成すること、
−初期の組み立て品(51、52)を、制御された雰囲気のろう付の室(10)に導入すること、
−前記室(10)に制御された雰囲気を形成すること、
−前記ユニット(51、52)を、少なくとも前記ろう付材料(41、42)のろう付温度と等しい温度まで加熱することで、ろう付によって防食被覆(31、32)を支持部品(21、22)に定着させること、
・塑性変形によって前記中間被覆部品(101、102)を成形することで、前記被覆組み立て部品(111、112)を得ること、
・被覆組み立て部品(または「成形部品」)(111、112)を組み立てることで、化学装置の前記構成要素(100)を得ること。
【0024】
ある場合においては、まず、ろう付材料(4、41、42)を防食被覆(3、31、32)の上に、「結合用の」と呼ばれる面に対して堆積させ、次に、支持部品(2、21、22)を防食被覆に位置付けることで、前記初期の組み立て品(5、51、52)を形成することが有利となりうる。
【0025】
ろう付温度は、典型的にはろう付材料の溶融温度と等しいものであるが、材料が溶けて、それと接触する構成要素(金属製の支持部品および/または防食被覆)との緊密な結合を発生させるような温度である。ろう付温度は、好ましくは約750℃未満であり、さらに好ましくは600℃と720℃の間に含まれる。これらの温度によって、ろう付作業の時間を短縮することができるようになる。
【0026】
ろう付作業は、通常は間隔Dを得るように、前述した所定の部分を近づけることを含むが、該間隔は、好ましくは、ろう付作業の際に結合面の間に気泡または結合不良が発生することを避けるように選択される。間隔Dは、典型的には0.1mm未満である。
【0027】
本方法は、好ましくは、ろう付作業の全体または一部の間、前記初期の組み立て品(5、51、52)に、メッキのための圧力を加えることを含んでいる。より正確には、前記加熱の前および/または間に、前記組み立て品にメッキのための力学的圧力を加えることが有利である。このメッキのための圧力は、支持部品と防食被覆が互いに押圧され、そして、ろう付材料を圧縮するように行うものであり、このことによって、特に、支持部品と被覆の間の間隔Dに対する所望の値が得られるようになる。メッキのための圧力は、バネの突っ張り棒と押圧プレートによるシステムまたは空気システム(膨張可能なクッションなど)のような、力学的な押圧システム(12)によって加えることができる。本発明の好ましい実施態様による低温でのろう付作業によって、力学的な押圧システム(12)の劣化が抑制される。メッキのための圧力は、典型的には0.1MPaを上回り、好ましくは0.3MPaを上回り、さらに好ましくは0.5MPaを上回る。
【0028】
前記所定の部分を結合面と言う。支持部品と被覆の間の接合は、複数の結合面によって確立することができる。
【0029】
支持部品(21、22)および/または被覆(31、32)の表面(より正確には、一つまたは複数の結合面)を、好ましくはろう付作業の前に事前に処理して、特に表面の酸化物を除去する。例えば、化学処理、電気化学処理、物理化学処理および機械処理(化学的または電気化学的な表面除去、機械加工または研磨)の中から選ばれる、少なくとも一つの処理を行うことができる。これらの処理を組み合わせてもよい。支持部品の場合は、少なくとも、被覆される表面に関する処理を行う。
【0030】
接合の堅牢度を高めるために、本発明による方法はまた、ろう付材料の接着を強め、脆弱化を引き起こす化合物の形成を抑制するのに適している、少なくとも一つの層の堆積も含んでいてもよい。堆積は、化学的方法で、電解法で、または気相において(気相での化学的堆積または気相での物理的堆積)行うことができる。前記層は典型的には金属製であり、例えばチタンまたは銅である。堆積は、支持部品(2、21、22)、金属被覆(3、31、32)、またはその両方に行ってよい。堆積はろう付作業の前に行われる。
【0031】
ろう付材料が、好ましくは支持部品と防食被覆の間に均一に配分されることで、均一な結合層が得られ、これら二つの構成要素の間の接触表面を増大させることになる。
【0032】
支持部品(2、21、22)は好ましくは鋼鉄製である。用いられる鋼鉄は、一般的には炭素鋼またはステンレス鋼である。
【0033】
防食金属被覆(3、31、32)は、典型的にはチタン製、チタン合金製、タンタル製、タンタル合金製、ジルコニウム製、ジルコニウム合金製、ニッケル主体の合金製またはステンレス鋼製である。
【0034】
ろう付材料(4、41、42)は融解可能な合金(典型的には共晶合金)または融解可能な金属である。前記材料(4、41、42)は、場合によってはフラックスを含む。ろう付材料は、それが接触する構成要素の中に拡散できることが有利であり、このことにより、前記構成要素の間での非常に強い結合が保証される。ろう付材料は、典型的には粉末状、薄片状または格子状である。実験において、本出願人は、格子が、場合によって起こる結合面間の間隔Dの変化を、効果的に補正するという利点を有することを確認した。
【0035】
ろう付材料(4、41、42)は、典型的には銀、銅、亜鉛、カドミウムまたは錫、あるいはこれらの元素の混合物を含有する材料であり、該材料のろう付温度は約750℃未満であり、好ましくは600℃と720℃の間に含まれる。
【0036】
支持部品(2、21、22)と防食被覆(3、31、32)は、典型的にはプレートまたは薄板の形状である。特に開口部と出入管を形成するために、これらの構成要素を事前に裁断してもよい。
【0037】
支部部品または未加工の組み立て部品(21、22)はさらに、突起部(211、212、221、222)のような、組み込まれた組み立て手段を含んでいてもよい。
【0038】
被覆された成形部品(111、112)は、典型的には中高にされた形状、半円筒形またはその他の形状である。
【0039】
被覆組み立て部品(111、112)の組み立て作業は、化学装置の構成要素(100)を製造するために、典型的には、既知のあらゆる手段にしたがった溶接作業によって、前記部品の間に接合部(60、60a、60b、70、70a、70b)を形成することを含む。支持部品(21、22)の間の接合部は、普通は被覆部品(31、32)の間の接合部とは個別に製作される。これらの接合部の製作のために、本出願人は本発明による方法の特に有利な変形例を開発したのだが、該変形例において、金属製部品(21、22)の端部(61、61a、61b、62a、62b)は、図5に示されているように、典型的には機械加工によって、被覆の定着前に、事前に切り取られる。この変形例により、組み立て部品の間の接合部の形成がかなり容易になる。該変形例によって、特に、支持部品の間の接合を行うために必要となりうる、ろう付後の支持部品の機械加工を省くことができるようになる。
【0040】
本発明のこの有利な変形例の望ましい実施態様によると、化学装置の構成要素の製造方法は以下のことを含む:
−ろう付作業の前に、接合部となる前記支持部品(21、22)の端部(61、62)に切り取り部(81、82)を形成することで、前記切り取り部については、各被覆(31、32)と各支持部品(21、22)の間のろう付を避けるようになっていること、
−ろう付作業の後に、典型的にはこれらの端部(71、72)を持ち上げることで、各被覆(31、32)の端部(71、72)を剥き出しにすること、
−典型的には溶接によって、前記支持部品(21、22)の端部(61、62)の間に接合部(60)を形成すること、
−典型的には溶接によって、前記被覆(31、32)の端部(71、72)の間に接合部(70)を形成すること。
【0041】
被覆を支持部品の上に定着させることは、上に説明した方法によって行われる。
【0042】
切り取り部(81、82)は、切り取り部が形成される箇所における、支持部品(21、22)と被覆(31、32)の間のろう付を避ける機能を有しており、該箇所をこれ以降、分離区域(91、92)と呼ぶ。この目的のため、前記切り取り部(81、82)の深さPは比較的小さく、すなわち典型的には1mmと5mmの間であって、このことにより、支持部品(21、22)の力学的特性を損なうことが避けられる。前記切り取り部(81、82)の幅Lは、支持部品の間の接合区域を容易に剥き出しにすることができるように固定される。長さLは、典型的には10mmと50mmの間に含まれる。切り取り部(81、82)は、典型的には、平らで、支持部品(21、22)の端部(61、62)の面に平行な面の形状である。
【0043】
より明確には、本発明のこの有利な変形例による化学装置の構成要素(100)の製造方法は以下のことを含む:
−少なくとも一つの第一(21)と第二の支持部品(22)を用意すること、
−接合部となる前記支持部品(21、22)の端部(61、62)に、切り取り部(81、82)を形成すること、
−制御された雰囲気(好ましくは750℃未満、さらに好ましくは600℃と720℃の間に含まれる温度)におけるろう付により、被覆(31、32)を各支持部品(21、22)に定着させ、中間被覆部品(101、102)を製造すること、
−中間被覆部品(101、102)を成形し(典型的には圧延加工またはカレンダー加工による)、そして被覆組み立て部品(111、112)を製造すること、
−各被覆(31、32)の端部(71、72)を、典型的にはこれらの端部(71、72)を持ち上げることによって剥き出しにすること
−典型的には溶接作業によって、前記支持部品(21、22)の端部(61、62)の間に接合部(60)を形成すること、
−典型的には溶接作業によって、前記被覆(31、32)の端部(71、72)の間に接合部(70)を形成すること。
化学装置の前記構成要素(100)は、典型的には、保管設備、タンク、熱交換器、反応器、混合器、処理装置および輸送装置を含むグループに含まれる。
【実施例1】
【0044】
本発明の方法による被覆組み立て部品の製造実験を、炭素鋼製のプレートとタンタル製の防食被覆に基づいて行った。ろう付材料は、銅、亜鉛、そして錫を含有する、銀を主成分とする合金であった。ろう付作業の間、力学的圧力を継続的に加えた。ろう付温度は700℃未満であった。
【0045】
鉄鋼製のプレートとタンタル製の薄板の間の接合は、ろう付の後、ほとんど不良がなく、150Hvを超えない硬度を有していた。小さな曲率半径での成形試験で、接合に破断がないことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の方法で得られる被覆製品は、結合面の大部分における支持部品と防食被覆の間の密接な結合によって、横断方向の熱伝導率が高いという利点を有しており、このことは、例えば結合のための線を形成するだけのローレット加工によって得られる結合では見られない。横断方向の熱伝導率は、交換器または冷却もしくは加熱のための二重被覆物のような、熱伝達手段を含む化学装置において特に有利である。
【0047】
本発明によるメッキ製品はまた、良好な成形適性も有し、したがって、化学装置の構成要素を容易に製造できるようになる。
【0048】
本製造方法により、化学装置の構成要素を製造するために後に行われる溶接作業の際に、支持部品の機械加工の過程を省くことができるようになる。
【符号の説明】
【0049】
1 メッキ製品
100 化学装置の構成要素
101、102 中間被覆組み立て部品
111、112 被覆組み立て部品
2 金属製の支持部品
21、22 支持部品または未加工の組み立て部品
211、212、221、222 備え付けの組み立て手段
3、31、32 被覆
4、41、42 ろう付材料
5、51、52 初期の組み立て品
60 支持プレート間の接合部
61、61a、61b、62、62a、62b 組み立て部品の端部
70 被覆間の接合部
71、71a、71b、72、72a、72b 被覆の端部
81、82 切り取り部
91、92 分離区域
10 制御された雰囲気の室
11 加熱手段
12 押圧システム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】米国特許第4291104号明細書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが金属製の支持部品(21、22)と、少なくとも一つの金属製の防食被覆(31、32)を含む、少なくとも一つの第一と第二の被覆組み立て部品(111、112)を具備する化学装置の構成要素(100)を製造する方法であって、以下の連続する過程を含むことを特徴とする方法:
・以下のことを含むろう付作業を含む方法によって、中間被覆組み立て部品(101、102)を製造すること:
−支持部品(21、22)、防食被覆(31、32)、および支持部品と被覆の間にある少なくとも一つのろう付材料(41、42)を含んでいる、初期の組み立て品(51、52)を形成すること、
−初期の組み立て品(51、52)を、制御された雰囲気のろう付の室(10)に導入すること、
−前記室(10)に制御された雰囲気を形成すること、
−前記ユニット(51、52)を、少なくとも前記ろう付材料(41、42)のろう付温度と等しい温度まで加熱することで、ろう付によって防食被覆(31、32)を支持部品(21、22)に定着させること、
・前記中間被覆部品(101、102)を成形することで、前記被覆組み立て部品(111、112)を得ること、
・被覆組み立て部品(111、112)を組み立てることで、化学装置の前記構成要素(100)を得ること。
【請求項2】
ろう付の温度が約750℃未満であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ろう付の温度が600℃と720℃の間に含まれることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
制御された雰囲気が主に不活性ガスで構成されることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項5】
不活性ガスが、希ガス、窒素ガスおよびこれらの混合物を含むグループから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
室(10)の制御された雰囲気が、ろう付の間、約10と10Paの間に含まれる圧力Pであることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項7】
さらに、ろう付作業の全体あるいは一部の間に、前記初期の組み立て品(51、52)に、メッキのための圧力を加えることを含むことを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項8】
メッキのための圧力が0.1MPaを上回り、好ましくは0.3MPaを上回り、さらに好ましくは0.5MPaを上回ることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
さらに、少なくとも、被覆される前記支持部品(21、22)の表面を前もって処理することを含み、その処理が、化学処理、電気化学処理、物理化学処理、機械処理およびこれらの組み合わせを含むグループから選ばれることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項10】
さらに、ろう付材料の接着を強め、脆弱化を引き起こす化合物の形成を抑制するのに適した、少なくとも一つの層の堆積を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項11】
前記層が金属製であることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
堆積が、化学的方法で、電解法で、または気相において行われることを特徴とする、請求項10または請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記被覆(31、32)の厚みが1mm未満であることを特徴とする、請求項1〜請求項12のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項14】
前記被覆(31、32)の厚みが0.5mm未満であることを特徴とする、請求項1〜請求項12のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項15】
前記被覆(31、32)が、タンタル、タンタル合金、チタン、チタン合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、ニッケル主体の合金およびステンレス鋼を含むグループから選ばれる金属でできていることを特徴とする、請求項1〜請求項14のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項16】
ろう付材料(41、42)が銀、銅、亜鉛、カドミウムまたは錫、あるいはこれらの元素の混合物を含有することを特徴とする、請求項1〜請求項15のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項17】
ろう付材料が粉末状、薄片状または格子状であることを特徴とする、請求項1〜請求項16のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項18】
前記支持部品(21、22)が鋼鉄製であることを特徴とする、請求項1〜請求項17のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項19】
前記鋼鉄が炭素鋼またはステンレス鋼であることを特徴とする、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記支持部品(21、22)がプレートまたは薄板の形状であることを特徴とする、請求項1〜請求項19のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項21】
前記被覆(31、32)がプレートまたは薄板の形状であることを特徴とする、請求項1〜請求項20のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項22】
−ろう付作業の前に、接合部となる各支持部品(21、22)の端部(61、62)に切り取り部(81、82)を形成することで、前記切り取り部については、各被覆(31、32)と各支持部品(21、22)の間のろう付を避けるようになっていること、
−ろう付作業の後に、各被覆(31、32)の端部(71、72)を剥き出しにすること、
−前記支持部品(21、22)の端部(61、62)の間に接合部(60)を形成すること、
−前記被覆(31、32)の端部(71、72)の間に接合部(70)を形成すること、
をさらに含んでいることを特徴とする、請求項1〜請求項21のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項23】
前記支持部品(21、22)の端部(61、62)の間の接合部(60)と、前記被覆(31、32)の端部(71、72)の間の接合部(70)が、溶接によって形成されることを特徴とする、請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
化学装置の前記構成要素(100)が、保管設備、タンク、熱交換器、反応器、混合器、処理装置および輸送装置を含むグループから選ばれること特徴とする、請求項1〜請求項23のいずれか一つに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−221216(P2010−221216A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88298(P2010−88298)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【分割の表示】特願2004−504618(P2004−504618)の分割
【原出願日】平成14年4月29日(2002.4.29)
【出願人】(502438880)
【Fターム(参考)】