説明

金属製ワークの高周波焼き入れ装置および同焼き入れ方法

【課題】焼き入れ処理による金属製ワークの歪みの発生を極力抑制でき、しかも、生産性の向上を図ることができる金属製ワークの高周波焼き入れ装置および同焼き入れ方法を提供する。
【解決手段】誘導加熱用コイルヘッド23を有する高周波誘導加熱装置2と、前記誘導加熱用コイルヘッド23を支持する支持手段17と、前記支持手段が金属製ワークWの焼き入れ対象部位に沿って相対移動するように、前記支持手段または金属製ワークの少なくとも一方を移動させる移動制御手段19と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製ワークの高周波焼き入れ装置および同焼き入れ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、板金を切断するための切断加工機の刃部に用いられる金属製ワークの製造工程では、三次元切削装置等により金属製のワークを三次元方向で切削加工した後、この金属製ワークに対して焼き入れ処理を施すことが行われている。
【0003】
このような焼き入れ処理は、従来では、金属製ワークを切削加工した後、作業者がガスバーナを使用して金属製ワークの被加熱部位に火炎を放射して加熱することにより行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した従来のように、切削加工された金属製ワークをガスバーナで加熱して焼き入れ処理を施すと、加熱量のばらつきや人手による加熱位置のずれなどのために、前記金属製ワークに反りや捩れなどの歪み変形が発生しやすい傾向にある。このため、焼き入れ処理された後でも、再度、金属製ワークに対して整形加工などを施さなければならなかった。
【0005】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、焼き入れ処理による金属製ワークの歪みの発生を極力抑制でき、しかも、生産性の向上を図ることができる金属製ワークの高周波焼き入れ装置および同焼き入れ方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段によって解決される。
(1)誘導加熱用コイルヘッドを有する高周波誘導加熱装置と、前記誘導加熱用コイルヘッドを支持する支持手段と、前記支持手段が金属製ワークの焼き入れ対象部位に沿って相対移動するように、前記支持手段または金属製ワークの少なくとも一方を移動させる移動制御手段と、を備えたことを特徴とする金属製ワークの高周波焼き入れ装置。
(2)成形加工のための各種加工具を取り替え可能に保持する加工具用ホルダを有し、金属製ワークをその輪郭形状に沿って成形加工するための成形加工装置と、誘導加熱用コイルヘッドを有する高周波誘導加熱装置と、前記加工具用ホルダに保持された前記加工具が、前記金属製ワークの加工対象部位に沿って相対移動するように、前記加工具または金属製ワークの少なくとも一方を移動させる移動制御手段と、を備え、前記加工具用ホルダまたはその近傍に、前記高周波誘導加熱装置のコイルヘッドを取り外し可能に装着し、前記移動制御手段により前記コイルヘッドを前記ワークの焼き入れ対象部位に沿って相対移動させることにより、ワークの焼き入れ処理を実施することを特徴とする金属製ワークの高周波焼き入れ装置。
(3)前記高周波誘導加熱装置のコイルヘッドは、金属製ワークの複数の異なる被加熱部位の形状にそれぞれ適合する複数種のものが選択的に用いられる前項1または2に記載の金属製ワークの高周波焼き入れ装置。
(4)誘導加熱用コイルヘッドを有する高周波誘導加熱装置の前記誘導加熱用コイルヘッドを、支持手段に支持させ、前記支持手段が金属製ワークの焼き入れ対象部位に沿って相対移動するように、前記支持手段または金属製ワークの少なくとも一方を移動させることにより、ワークの焼き入れ処理を実施することを特徴とする金属製ワークの高周波焼き入れ方法。
(5)成形加工のための各種加工具を取り替え可能に保持する加工具用ホルダを有し、金属製ワークを成形加工する成形加工装置であって、前記加工具用ホルダに保持された前記加工具が、前記金属製ワークの加工対象部位に沿って相対移動するように、前記加工具または金属製ワークの少なくとも一方を移動させるものとなされた成形加工装置を用い、前記成形加工装置の加工具用ホルダまたはその近傍に、前記高周波誘導加熱装置のコイルヘッドを取り外し可能に装着し、前記コイルヘッドを前記ワークの焼き入れ対象部位に沿って相対移動させることにより、ワークの焼き入れ処理を実施することを特徴とする金属製ワークの高周波焼き入れ方法。
【発明の効果】
【0007】
前項(1)に記載の発明によれば、誘導加熱用ヘッドを支持する支持手段を金属製ワークの焼き入れ対象部位に沿って相対移動させることにより、高周波焼き入れを行うから、焼き入れ処理を効率よく自動的にしかも必要部位のみに施すことができる。しかも、ガスバーナを使うものに比して加熱量のばらつきなどもなく、歪み変形などの発生のない良好な焼き入れ状態を得ることができる。
【0008】
前項(2)に記載の発明によれば、成形加工時に、成形加工装置が駆動されると、加工具ホルダに保持された切削刃などの加工具または金属製ワークの少なくとも一方が移動し、加工具が金属製ワークの加工対象部位に沿って相対移動し、前記金属製ワークが自動的に成形される。
【0009】
加工終了後、加工具を取り外しあるいは取り外すことなく、加工具ホルダまたはその近傍に高周波誘導加熱装置のコイルヘッドを装着し、コイルヘッドまたはワークを移動させる。
【0010】
これにより、コイルヘッドは金属製ワークの焼き入れ対象部位に沿って相対移動するから、コイルヘッドにより前記金属製ワークを加熱することにより、焼き入れ処理を効率よく自動的にしかも必要部位のみに施すことができる。
【0011】
また、この焼き入れ装置によれば、成形加工工程からそのまま焼き入れ工程に入ることができ、生産効率の向上が図れる。
【0012】
しかも、ガスバーナを使うものに比して加熱量のばらつきなどもなく、歪み変形などの発生のない良好な焼き入れ状態を得ることができる。
【0013】
前項(3)に記載の発明によれば、金属製ワークの被加熱部の形状の違い、例えば直線辺部や湾曲辺部などの形状に適合するコイルヘッドを選択使用できるから、その部位の形状に沿ってコイルヘッドを移動させることができ、金属製ワークの被加熱部位に対して適正な誘導加熱を行うことができる。
【0014】
前項(4)に記載の発明によれば、焼き入れ処理を効率よく自動的にしかも必要部位のみに施すことができる。しかも、ガスバーナを使うものに比して加熱量のばらつきなどもなく、歪み変形などの発生のない良好な焼き入れ状態を得ることができる。
【0015】
前項(5)に記載の発明によれば、成形加工終了後、加工具を取り外しあるいは取り外すことなく、加工具ホルダまたはその近傍に高周波誘導加熱装置のコイルヘッドを装着し、コイルヘッドまたはワークを移動させる。これにより、コイルヘッドは金属製ワークの焼き入れ対象部位に沿って相対移動するから、コイルヘッドにより前記金属製ワークを加熱することにより、焼き入れ処理を効率よく自動的にしかも必要部位のみに施すことができる。また、成形加工工程からそのまま焼き入れ工程に入ることができ、生産効率の向上が図れる。しかも、ガスバーナを使うものに比して加熱量のばらつきなどもなく、歪み変形などの発生のない良好な焼き入れ状態を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、この発明の一実施形態に係る金属製ワークの高周波焼き入れ装置を示す概略全体斜視図である。この実施形態では、例えば、板金を切断するための切断加工機の刃部に用いられる金属製ワークに対して、成形加工装置により切削などの加工を行ったのち、この成形加工装置を利用して、高周波焼き入れを行う場合を示すものである。
【0018】
図1において、この金属製ワークの高周波焼き入れ装置は、概ね、三次元用の成形加工装置1と、高周波誘導加熱装置2と、コイルヘッド交換用ステーション3と、高周波誘導加熱装置2における加熱コイルヘッド23を成形加工装置1に取り付けるコイルヘッド装着装置4とを備えている。
【0019】
前記成形加工装置1は、例えば、基台11上に支持されて、図示しない駆動装置によりX軸方向(前後方向)へ沿って往復移動可能な第1の可動台12と、第1の可動台12上に支持されて、図示しない駆動装置によりY軸方向(左右方向)へ沿って往復移動可能な第2の可動台13と、第2の可動台13上に支持されて、図示しない駆動装置によりZ軸方向(上下方向)へ沿って往復移動可能な第3の可動台14と、この第3の可動台14の先端に保持された加工機構部15とを備えている。
【0020】
なお、11a,11aは前記基台11上に設けられて、第1の可動台12の移動をガイドするガイド部材、12a,12bは前記第1の可動台12上に設けられて、第2の可動台13の移動をガイドするガイド部材、13aは第2の可動台13に設けられて、第3の可動台14の移動をガイドするガイド溝部である。
【0021】
前記加工機構部15は、第3の可動台14の先端に保持された駆動部16と、前記第3の可動台14の先端側に駆動部16を介して保持された加工具ホルダ17と、この加工具ホルダ17に着脱可能に保持されて、金属製ワークWを成形加工する切削刃などの加工具18とを備えている。
【0022】
前記第1の可動台12、第2の可動台13および第3の可動台14の移動は、予め設定されたプログラムを実行するコンピュータからなる制御装置19によって制御され、これら稼働台12〜14を移動制御することにより、加工具18が、前記金属製ワークの輪郭形状に沿って移動し、金属製ワークWの上面、外周面などを三次元的に加工することが可能となっている。
【0023】
勿論、この成形加工装置1は、上記のものに限定されるものではなく、例えば多関節ロボットなどを用いたものであってもよい。
【0024】
また、加工具18を三次元方向に移動させることが絶対条件でもなく、ワークWによっては、二次元方向のみに移動させるようにしたものであってもよい。
【0025】
さらにまた、前記加工具ホルダ17は、切削刃に限らず、研磨具、あるいはドリルなどの各種の加工具18を取り換え可能に保持することができるようになっている。つまり、この成形加工装置1は、金属製ワークWに対して切削加工する機能だけに限定されるものではない。
【0026】
前記高周波誘導加熱装置2は、図2および図3に示すように、成型加工装置1とは別に単独で使用可能なものであり、装置本体としての高周波発振部21と、この高周波発信部21のケースから引き出された複数、例えば3本のケーブル22(22A,22B,22C)と、これらケーブル22(22A,22B,22C)の各先端にそれぞれ設けられた手動操作可能な3個のコイルヘッド23(23A,23B,23C)とを備えている。
【0027】
前記高周波発信装置2の高周波発振部21内には、例えばLC高周波発振回路におけるコンデンサ部の他に、電源部、記憶装置(いずれも図示せず)などが収容されており、さらに、前記ケーブル22A,22B,22Cに対して、高周波出力を選択的に切り換えるために切換機構(図示せず)が設けられている。
【0028】
なお、前記高周波発振部21の前面には、図2に示すように、タッチ入力式の操作パネル部211、表示メータ212、電源ランプ213、電流ブレーカ214などが設けられている。
【0029】
前記ケーブル22(22A,22B,22C)は、高周波発振部21による高周波発振出力をコイルヘッド23(23A,23B,23C)に送出するものである。
【0030】
このケーブル22(22A,22B,22C)は、可撓性を有しており、コイルヘッド23(23A,23B,23C)を前記高周波誘導加熱装置2の向きなどに関係なく自在に移動操作が可能となっている。
【0031】
前記コイルヘッド23(23A,23B,23C)の基端部には、コイルヘッド23(23A,23B,23C)の稼働時にコイル内部に水等の冷却流体を供給してコイルヘッドを冷却するための冷却流体循環用パイプ25が付設されている。
【0032】
コイルヘッド23(23A,23B,23C)は、図4および図5に示すように、前記ケーブル22A,22B,22Cの各先端に接続されたカレント・トランス(CTという)収容部231と、このCT収容部231の先端面から前方へ突設された仕切り板232と、CT収容部231の先端面から引き出されたコイル部230とを備えている。
【0033】
なお、CT収容部231には、手動操作により高周波誘導加熱装置2の稼働をオンオフするための手元スイッチ操作部26が配備されている。
【0034】
前記コイル部230は、良導製の金属材、例えば銅からなり、CT収容部231から引き出された一対のものが、前記仕切り板232の両面に沿って延設されるとともに、途中の交差状部230bを経て先端で互いに連成されて、金属製ワークWの所定部に沿い易い形状の先端部230aが形成されている。
【0035】
例えば、コイルヘッド23Aについては、コイル部230の先端部230aが、図4および図5に示すように、同一水平面内で平行に延びて平面形状が長円形で、正面形状が図6に示すように、直線状になっており、これは、金属製ワークWの直線辺部Waに沿いやすいものとして選択使用される。
【0036】
また、コイルヘッド23Bについては、コイル部230の先端部230aが、図7および図8に示すように、先端側での迂回を繰り返して平面形状が長円形で、正面形状が図9に示すように、弓なりになっており、これは、金属製ワークWの湾曲辺部Wbに沿いやすいものとして選択使用される。
【0037】
さらに、コイルヘッド23Cについては、図1に示すように、先端部がL形水平状に曲成されており、金属製ワークWの上面平坦部の焼き入れを行うものとして選択使用される。
【0038】
なお、コイルヘッド23(23A,23B,23C)における各コイル先端部230aの内側空所には、フェライトコア234が充填されており、高周波加熱時に発生する磁束を集中させて、加熱効率を高めるようにしてある。
【0039】
また、高周波誘導加熱装置2は、操作パネル211を介して、加熱温度、加熱時間などの加熱条件をワークWの種類やコイルヘッド23に応じて予め設定することが可能であり、設定した各種の加熱条件は加熱チャートとして記憶部(図示せず)に記憶されるものとなされている。そして、焼き入れ対象ワークの種類等に応じて、対応する加熱チャートを操作パネル等で選択指示することにより、加熱チャートを呼び出し、コンピュータ制御により、前記加熱チャートに基づいた条件で、加熱が実行されるものとなされている。
【0040】
また、加熱チャートによることなく、図1に示すように赤外線放射温度計40を設置し、コイルヘッド23による加熱部位の温度を前記赤外線放射温度計40で監視しながらPID制御を行うことも可能である。
【0041】
前記コイルヘッド交換用ステーション3は、前記高周波誘導加熱装置2における加熱コイルヘッド23を前記成形加工装置1で使用するために待機させておくものであり、例えば支持台31上の取り付け板32の前面には、3個のコイルヘッド23(23A,23B,23C)を取り外し可能に保持するコイルヘッド保持部33A,33B,33Cが一列に並んで設けられている。
【0042】
勿論、複数のコイルヘッド保持部33A,33B,33Cの構造は、任意のものを採用可能である。
【0043】
前記コイルヘッド装着装置4は、前記コイルヘッド交換用ステーション3に保持されている複数のコイルヘッド23(23A,23B,23C)から選択されたものを前記成形加工装置1に装着させるためのものであり、例えば多関節ロボットなどのアーム41先端のハンド42により、前記ステーション3からコイルヘッド23(23A,23B,23C)を掴んで取り外し、成形加工装置1側の加工具ホルダ17またはその近傍部位に装着させるようになっている。
【0044】
勿論、このコイルヘッド装着装置4は、上記多関節ロボットに限定されるものではなく、コイルヘッド23(23A,23B,23C)の着脱操作機能を持っている各種自動装置を採用可能である。
【0045】
つぎに、上記構成の金属製ワークWの高周波焼き入れ装置を用いた金属製ワークWの高周波焼き入れ方法について説明する。この実施形態では、金属製ワークWは、火炎焼き入れ鋼によって形成されている。
【0046】
前記高周波誘導加熱装置2における加熱コイルヘッド23(23A,23B,23C)は、予めコイルヘッド交換用ステーション3におけるコイルヘッド保持部33A,33B,33Cにそれぞれ保持させてある。
【0047】
まず、加工台N上に搬入された金属ワークWを、例えば切削加工を行う場合には、加工具ホルダ17に加工具として切削刃18を取り付け、成形加工装置1を駆動させる。
【0048】
前記第1〜第3の可動台12〜14の変移量が所定のプログラムに基づいてNC制御されて、それぞれが各方向へ変移することにより、加工具(切削刃)18はワークWの輪郭形状に沿って移動し、金属製ワークWが所望形状に加工成形される。
【0049】
この後、金属製ワークWの焼き入れを行うが、その前に加工具18を自動であるいは手動で取り外し、次いで、前記コイルヘッド装着装置4がコイルヘッド交換用ステーション3に保持されている3つのコイルヘッド23(23A,23B,23C)のうちから、金属製ワークWの被加熱部の形状に適したコイルヘッド23、例えばコイルヘッド23Cを取り出し、成形加工装置1における加工具ホルダ17またはその近傍に装着する。
【0050】
この場合、コイルヘッド23Aが加工具ホルダ17と略同軸上で適正方向に向くように装着される。
【0051】
勿論、前記コイルヘッド装着装置4は必須のもではなく、作業者が前記コイルヘッド23をコイルヘッド交換用ステーション3から外して、成形加工装置1の所定部位に取り付けるようにしてもよい。
【0052】
そして、高周波誘導加熱装置2を稼働させる。
【0053】
前記コイルヘッド23Cは、金属製ワークWの上面平坦部に適合しているものであるから、そのコイルヘッド23Cを加工具18で設定されている移動制御プログラムを利用して、前記金属製ワークWの上面平坦部に沿って相対移動させると、金属製ワークWの上面平坦部が誘導加熱されて、自動的に焼き入れが行われる。
【0054】
ワークWの上面平坦部の焼き入れ後、コイルヘッド装着装置4により、コイルヘッド23Cを成形加工装置1から取り外して、コイルヘッド交換用ステーション3に戻し、次いで別のコイルヘッド23Bを取り出して成形加工装置1に装着する。
【0055】
そして、図10に示すように、金属製ワークWの直線辺部Waに沿うように相対移動させれば、コイルヘッド23Aの誘導加熱により、金属製ワークWの直線辺部Waが誘導加熱されて自動的に焼き入れが行われる。
【0056】
次いで、コイルヘッド装着装置4により、コイルベッド23Aを弓なり状のコイルヘッド23Bに交換装着して、金属製ワークWの湾曲辺部Wbに沿って移動させながら湾曲辺部Wbを加熱し、焼き入れ処理を行う。
【0057】
このように、高周波誘導加熱装置2におけるコイルヘッド23(23A,23B,23C)を前記成形加工装置1の加工具ホルダ17またはその近傍に装着できるようにしたから、前記金属製のワークWの切削などの成形加工が終了すれば、そのまま所望のコイルヘッド23を選択使用して焼き入れ工程に移ることでき、生産効率が高められる。また、前記加工具18に対して設定された移動制御プログラムを利用して、前記コイルヘッド23を前記ワークWの輪郭形状に沿って移動させるから、コイルヘッド23の移動のためのプログラムを一から新たに設定する必要はなくなり、効率的である。
【0058】
さらに、高周波誘導加熱装置2におけるコイルヘッド23の誘導加熱により自動的に焼き入れ処理が施されるとともに、金属製ワークWに対して深くしかも必要部位のみが均一に加熱されるから、従来のガスバーナを用いて焼き入れを行う方法に比べて、加熱量のばらつきや加熱位置のずれなどをなくし得て歪みの発生を極力抑制でき、これにより、焼き入れ後に歪みを是正する作業が不要ないし軽微となる。
【0059】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることはない。例えば、金属製ワークに対して加工具18またはコイルヘッド23を移動させるものとしたが、金属製ワークWの側を移動させる構成であっても良い。
【0060】
また、前記高周波誘導加熱装置2には、誘導加熱した金属製ワークWを冷却するための冷却流体を噴射する冷却流体噴出口を設け、冷却流体の噴出により金属製ワークWの焼き入れ状態の実現を、自然冷却の場合に比べて早めるものとしても良い。
【0061】
また、3本のコイルヘッド23A〜23Cを用いた場合を示したが、単純形状の場合には1本でも良いし、2本でも良い。より複雑な形状の場合には、4本以上を使用しても良い。
【0062】
また、成形加工装置1を利用して高周波焼き入れを行う場合を説明したが、成形加工装置を兼用するものでなくても良く、コイルヘッド23を支持してワークWの焼き入れ対象部位に沿って相対移動しうる構成であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】この発明の実施形態に係る金属製ワークの高周波焼き入れ装置を示す概略全体斜視図でる。
【図2】同じく金属製ワークの高周波焼き入れ装置における高周波誘導加熱装置を示す正面図である。
【図3】同じく高周波誘導加熱装置における側面図である。
【図4】高周波誘導加熱装置におけるコイルヘッドの一例を示す平面図である。
【図5】図4のコイルヘッドを示す側面図である。
【図6】図4のA−A線に沿った断面図である。
【図7】高周波誘導加熱装置におけるコイルヘッドの別の例を示す平面図である。
【図8】図7のコイルヘッドを示す側面図である。
【図9】図7のB−B線に沿った断面図である。
【図10】金属製ワークに対する加熱時の説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1・・・・・成形加工装置
2・・・・・高周波誘導加熱装置
21・・・・高周波発振部
17・・・・加工具用ホルダ(支持手段)
18・・・・加工具
19・・・・制御手段(移動制御手段)
22(22A,22B,22C)・・・ケーブル
23(23A,23B,23C)・・・コイルヘッド
W・・・・・金属製ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱用コイルヘッドを有する高周波誘導加熱装置と、
前記誘導加熱用コイルヘッドを支持する支持手段と、
前記支持手段が金属製ワークの焼き入れ対象部位に沿って相対移動するように、前記支持手段または金属製ワークの少なくとも一方を移動させる移動制御手段と、
を備えたことを特徴とする金属製ワークの高周波焼き入れ装置。
【請求項2】
成形加工のための各種加工具を取り替え可能に保持する加工具用ホルダを有し、金属製ワークをその輪郭形状に沿って成形加工するための成形加工装置と、
誘導加熱用コイルヘッドを有する高周波誘導加熱装置と、
前記加工具用ホルダに保持された前記加工具が、前記金属製ワークの加工対象部位に沿って相対移動するように、前記加工具または金属製ワークの少なくとも一方を移動させる移動制御手段と、
を備え、
前記加工具用ホルダまたはその近傍に、前記高周波誘導加熱装置のコイルヘッドを取り外し可能に装着し、前記移動制御手段により前記コイルヘッドを前記ワークの焼き入れ対象部位に沿って相対移動させることにより、ワークの焼き入れ処理を実施することを特徴とする金属製ワークの高周波焼き入れ装置。
【請求項3】
前記高周波誘導加熱装置のコイルヘッドは、金属製ワークの複数の異なる被加熱部位の形状にそれぞれ適合する複数種のものが選択的に用いられる請求項1または2に記載の金属製ワークの高周波焼き入れ装置。
【請求項4】
誘導加熱用コイルヘッドを有する高周波誘導加熱装置の前記誘導加熱用コイルヘッドを、支持手段に支持させ、
前記支持手段が金属製ワークの焼き入れ対象部位に沿って相対移動するように、前記支持手段または金属製ワークの少なくとも一方を移動させることにより、ワークの焼き入れ処理を実施することを特徴とする金属製ワークの高周波焼き入れ方法。
【請求項5】
成形加工のための各種加工具を取り替え可能に保持する加工具用ホルダを有し、金属製ワークを成形加工する成形加工装置であって、前記加工具用ホルダに保持された前記加工具が、前記金属製ワークの加工対象部位に沿って相対移動するように、前記加工具または金属製ワークの少なくとも一方を移動させるものとなされた成形加工装置を用い、
前記成形加工装置の加工具用ホルダまたはその近傍に、前記高周波誘導加熱装置のコイルヘッドを取り外し可能に装着し、前記コイルヘッドを前記ワークの焼き入れ対象部位に沿って相対移動させることにより、ワークの焼き入れ処理を実施することを特徴とする金属製ワークの高周波焼き入れ方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−92094(P2007−92094A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279336(P2005−279336)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(505361587)株式会社オー・イー・ティー (9)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】