説明

金属複合基板およびその製造方法

【課題】絶縁性のフレキシブル支持体をロール・ツー・ロール方式で効率良く生産することができ、高温熱処理時の平面性に優れる、表面に陽極酸化皮膜を持つ金属複合基板を提供する。
【解決手段】300℃以上での耐熱強度がアルミニウムより高い金属よりなる芯材と、該芯材の全表面を覆うアルミニウムまたはアルミニウム合金層とを有し、前記アルミニウムまたはアルミニウム合金層の表面に陽極酸化皮膜を有する金属複合基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属複合板に関する。本発明の金属複合基板は、その表面及び裏面が陽極酸化皮膜を持つアルミニウム合金で覆われており、高温での強度特性に優れた金属複合基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体用基板は、絶縁性が要求されるとともに、放熱性が求められる。可撓性が高いことも好ましい。アルミニウム合金を半導体用基板に用いる場合は、アルミニウム合金が良導電性の材料であるため、そのままでは絶縁性を満たすことが出来ないが、表面に陽極酸化皮膜を設けることで、絶縁性が飛躍的に向上する。またアルミニウム合金は、熱伝導率が高い材料であるので、放熱性が優れ、板厚を選定すれば可撓性にも優れる。また、半導体用基板として製造する際、高温での処理がなされる場合があり、その場合には耐熱性が必要となる。
例えば、ポリイミド等比較的耐熱性の高い樹脂材料は絶縁性にすぐれるため、半導体用支持体に使用される場合があるが、過度の高温には耐えられない。この点でもアルミニウム合金基板は、有る程度の高温に耐えられるため優れている。
【0003】
特に耐熱性が必要な半導体としては、薄膜系太陽電池が知られている。太陽電池は、(1)単結晶Si太陽電池、(2)多結晶Si太陽電池、(3)薄膜系太陽電池の3種に大別される。Siウエハーを基板とする単結晶Si太陽電池および多結晶Si太陽電池に対し、薄膜系太陽電池は、ガラス基板、金属基板、樹脂基板といった多様な基板を用い、これらの基板上に薄膜の光吸収層を形成したものである。
前記光吸収層としては、アモルファスSiやナノ結晶SiのSi系薄膜、CdS/CdTe、CIS(Cu−In−Se)、CIGS(Cu−In−Ga−Se)等の化合物系薄膜が用いられる。また、可撓性を有する基板を用いることにより、基板をロールに巻き取りながら絶縁層や薄膜を形成するロール・ツー・ロール方式でフレキシブルな太陽電池セルを連続生産することが可能である。
【0004】
薄膜系太陽電池用基板としてはガラス基板が主に使用されている。但し、ガラス基板は割れやすく取り扱いに十分な注意が必要であると共に、フレキシブル性に欠ける欠点があった。最近では住宅等の建造物用の電力供給源として太陽電池が注目を集めており、十分な供給電力を確保する上で太陽電池の大型化・大面積化・軽量化が望まれている。そのため、割れにくくフレキシブルであり、軽量化を図ることのできる基板材料として、樹脂基板やアルミニウム合金基板、Feなどの基板にアルミニウムをクラッドした基板などが提案されている。
そして、そのアルミニウム合金基板上に陽極酸化皮膜などの絶縁層を設け、その上に薄膜系太陽電池層を設ける方法が知られている。
【0005】
光吸収層として上記化合物系薄膜を形成するには、基板上に化合物を配置し、化合物の種類に応じて350〜650℃で焼結する。例えば、連続生産においてCIGS層を形成するには、350〜600℃、4〜20m/分のライン速度で焼結することが好ましく、この温度に耐える基板材料が望ましい。
【0006】
しかし、アルミニウム基板では高温強度が不足して形状保持が困難であるため、高い焼結温度との両立が困難である。
高温強度の高いアルミニウム合金としては、FeやMnを添加した合金が知られており、その改善策として特許文献1には、Si:0.25〜0.35質量%、Fe:0.05〜0.3質量%、Cu:0.3〜0.5質量%、Mn:1.2〜1.8質量%、Sc:0.05〜0.4質量%、Zr:0.05〜0.2質量%を含有し、残部がAlおよび不純物からなり、さらにV:0.05〜0.2質量%するアルミニウム合金や、このうちSc濃度が0.07〜0.15質量%、Zr濃度が0.07〜0.1質量%、V濃度が0.07〜0.1質量%であるアルミニウム合金が提案されている。
【0007】
また、特許文献2にはアルミニウム合金を用いた太陽電池用フレキシブル基板上に設けた陽極酸化皮膜層の機械的強度を上げる方法として、陽極酸化皮膜のマイクロポア形状を特定したものが提案されている。その内容はアルミニウム基材表面にポアを有する陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金製絶縁材料であって、上記陽極酸化皮膜の厚さが0.5μm以上であると共に、前記陽極酸化皮膜中に上記ポアの軸心と略直角方向に延設された複数の空孔を有するものである。
【0008】
陽極酸化処理浴としてはシュウ酸浴または硫酸浴等が適用できるが、合金と処理条件によって陽極酸化皮膜の内部構造が異なり、その結果として、種々の耐電圧が得られることが特許文献2に記載されている。さらに陽極酸化処理後にポアおよび・または空孔にSi酸化物を充填した構造にすることによって、より高い耐電圧を実現可能であることが記載されている。
【0009】
また、特許文献3にはフレキシブル太陽電池の製造に適した被膜付き金属材料に関し、1種のアルカリ金属または複数種のアルカリ金属の混合物を添加された絶縁層を含む被膜を有し、温度範囲0〜600℃での熱膨張係数が12×10−6−1で、絶縁層は少なくとも1種の酸化物層を含み、該酸化物層はAl、TiO、HfO、Ta、Nb、これら酸化物の混合物のうちのいずれか1種の誘電性酸化物、望ましくはAlおよび/またはTiO、から実質的に成ることを特徴とする被膜付き鋼製品が記載されている。また、その金属酸化物被膜付き鋼製品を多段ロールプロセス(roll-to-roll process)により製造する方法が記載されている。
【0010】
また、特許文献4には、基体と表面絶縁層からなる電子材料用基板で、表面絶縁層が1種以上の金属酸化物とそれ以外の非導電性物質からなる絶縁性に優れた電子材料用基板が記載されている。また、金属酸化物として、アルミ基板の表面に設けた陽極酸化皮膜金属酸化物を使うことが記載されている。
また、特許文献5には、アルミニウム合金板を含む金属板表面に厚さ0.5μm以上、中心線平均粗さRa=0.5−200μmの絶縁層を設けることが記載されている。またアルミニウム基板に陽極酸化皮膜を設けて絶縁層に使用することが記載されている。
また特許文献6には、凹凸面を設けた陽極酸化皮膜を持つアルミニウム基板を用いるアモルファス太陽電池基板について記載されている。
また特許文献7には、微細孔を持つ陽極酸化皮膜を持つ太陽電池用基板について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−81794号公報
【特許文献2】特開2000−349320号公報
【特許文献3】特表2007−502536号公報
【特許文献4】特開平11−229187号公報
【特許文献5】特開2000−49372号公報
【特許文献6】特開平11−97724号公報
【特許文献7】特開2000−286432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
半導体支持体の中でも薄膜系太陽電池に代表されるような、製造工程の中で高温処理を必要とするデバイスの基板では、従来、ガラス基板が多く用いられてきた。ただしガラス基板は、可撓性を持たないため、曲面状に配置することが困難であり、前記特許文献3、4、5、6、7のような金属基板を設ける方法が提案されてきた。しかし、特許文献4、5、6、7が記載するような、表面に絶縁性の陽極酸化被膜を設けたアルミニウムを使用したものでは、高温下での強度が不足して形状保持が困難となるため、高温で光吸収層を設けることが必要な薄膜系太陽電池にする場合、高温下でのハンドリングが困難で安定的に製造することが困難であった。
また、特許文献3が示すような鋼製品に絶縁層を設ける方法も提案されたが、その絶縁性能は不十分で、太陽電池を基板上で直列接合して発電電圧をかせぐことが出来なかった。
一方、特許文献1が示すような高強度のアルミニウム合金も提案されたが、500℃以上の高温で光吸収層を設けることが困難で、特に、平面性が維持できないという不具合が発生した。更に、アルミニウム金属中に添加したFeやMnは、アルミニウムと金属間化合物を生成しやすく、その結果、これら金属間化合物がアルミニウム金属表面に形成される陽極酸化皮膜の欠陥となって耐絶縁性を低下させるという致命的な問題点があり好ましくなかった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、薄膜系太陽電池基板などの半導体材料として好適な、高温強度に優れ、特に高温下で、平面性を良好に保ち、ハンドリングに耐える材料として、溶融メッキ法等で全面にアルミを設けた複合金属支持体に、陽極酸化処理を行った支持体または基板を提供する。これにより、表面硬度、画像記録層との密着に優れ、高温バーニング処理を行っても支持体の強度低下や平面性低下を起こさない平版印刷版用支持体や、絶縁性能と耐高温強度、高温ハンドリング性、高温熱処理後の平面性に優れる半導体用絶縁基板が得られることを知見し本発明を完成した。
本発明は、高温強度および耐電圧特性に優れた陽極酸化皮膜を有する表層がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる複合基板、およびその製造方法の提供を目的とする。
【0014】
本発明の、表層がアルミニウム合金からなる金属複合基板、及びその製造方法は、以下の構成を有する。
(1)300℃以上での耐熱強度がアルミニウムより高い金属よりなる芯材と、該芯材の全表面を覆うアルミニウムまたはアルミニウム合金層とを有し、前記アルミニウムまたはアルミニウム合金層の表面に陽極酸化皮膜を有する金属複合基板。
(2)前記芯材が耐熱鋼またはステンレス鋼である(1)に記載の金属複合基板。
(3)前記陽極酸化皮膜が、厚さ1〜50μmの多孔質陽極酸化皮膜である(1)または(2)に記載の金属複合基板。
(4)前記陽極酸化皮膜が、さらにホウ酸水溶液中で封孔処理される(1)〜(3)のいずれかに記載の金属複合基板。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の金属複合基板よりなる半導体用基板。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載の金属複合基板を有する太陽電池。
(7)(1)〜(4)のいずれかに記載の金属複合基板に、光吸収層および電極層が形成された薄膜系太陽電池。
(8)前記金属複合基板上に、裏面電極層を介して光吸収層が形成され、該光吸収層が、CdS/CdTe、CIS、CIGSのうちのいずれかの化合物を含む(7)に記載の薄膜系太陽電池。
(9)300℃以上での耐熱強度がアルミニウムより高い金属よりなる芯材を、その全表面をアルミニウムまたはアルミニウム合金でメッキし、得られるアルミニウムまたはアルミニウム合金層の表面に陽極酸化処理、水洗処理、乾燥処理を行う金属複合基板の製造方法。
(10)前記メッキが溶融メッキである(9)に記載の金属複合基板の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の、表層にアルミニウムまたはアルミニウム合金を持つ複合基板は、高温熱処理時の平面性が優れる、表面に陽極酸化皮膜を持つ金属複合基板である。本発明の金属複合基板は、高温バーニング処理に耐える平版印刷版や、高温下での蒸着処理に耐える、太陽電池基板用などの絶縁性のフレキシブル支持体をロール・ツー・ロール方式で効率良く生産することができる。
また、本発明の金属複合基板は、芯材の全表面がアルミニウムまたはアルミニウム合金で覆われているので、一方の面や2つの主表面のみがアルミニウムまたはアルミニウム合金を有する基板と比べて、電解液中で行われる陽極酸化皮膜生成工程の途中で、端面の芯材と表面を覆うアルミ材の接合面が露出した部分にて芯材、あるいは接合面の溶解が発生する不具合を一切起こさないメリットがある。逆に、一方の面や2つの主表面のみがアルミニウムまたはアルミニウム合金を有する基板を用いて、その不具合を回避するためには、端面が電解液に接さないようにする事前工程を必要とする。具体的には、耐薬品性に優れる保護材で端面を覆うような工程が必要となる。端面を保護材で覆う場合、端部の厚さが保護材の為に厚くなる可能性が高く、その結果、パスロールに転接されハンドリングされる途中で折れが発生する可能性が高くなる不具合を伴う。また、保護材の密着が不十分だった場合は、そこから電解液が入り込んで、端面での溶解が発生する可能性が増す。本願の方法はこれらの不具合を回避することが出来る。また、端面まで絶縁性が必要な場合は、端面まで覆われたアルミニウムまたはアルミニウム合金を介して形成される陽極酸化皮膜が、端面の絶縁性も確保出来る。また、端面まで覆われたアルミニウムまたはアルミニウム合金を介して形成される陽極酸化皮膜は、陽極酸化処理以後の工程で、化学的な処理を行う場合において、端面からの腐食や溶解を防止する効果も発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の金属複合基板の断面図である。図1(A)は、全面に陽極酸化皮膜が形成された実施態様を示す。図1(B)は、一方主面と他方主面に陽極酸化皮膜が形成された実施態様を示す。
【図2】図2は、本発明の基板を用いることが可能な薄膜系太陽電池の一般的な構成の一例を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の陽極酸化処理および電気化学的な封孔処理に用いることができる装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[1.芯材]
本発明で用いる芯材はアルミニウム合金より300℃以上での耐熱強度が高い金属材料が使用される。例えば、鋼、チタン、ニッケルなどを選べるが、実用的かつ高価でないこと、フレキシブルであることが望ましいので、鋼が望ましく、軟鋼、耐熱鋼、ステンレス鋼が使用される。耐熱性の面からは、鋼の中でも耐熱鋼、ステンレス鋼がより望ましい。
軟鋼は、低炭素鋼で、SS400等が使用出来る。
耐熱鋼は、数%のクロムやニッケル、コバルト、タングステン等を含むもので、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系に分類される。板材に使用される鋼としてはオーステナイト系、フェライト系の耐熱鋼が望ましく、オーステナイト系の耐熱鋼ではSUH309,SUH310,SUH330,SUH660、SUH661等が好ましい。フェライト系の耐熱鋼では、SUH21,SUH409,SUH446等が好ましい。
【0018】
ステンレス鋼は、11%以上のクロム、あるいは11%以上のクロムを含みNiをも含む鋼である。ステンレス鋼の材質は、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系に分類される。オーステナイト系ステンレスとしてはSUS304、SUS316、SUS310、SUS309、SUS317,SUS321,SUS347等が使用できる。フェライト系ステンレスとしてはSUS430、SUS405,SUS410,SUS436、SUS444等が使用できる。マルテンサイト系ステンレスとしては、SUS403,SUS440、SUS420、SUS410等が使用できる。この内、フレキシブルな板として使用する場合は、オーステナイト系あるいはフェライト系が望ましい。特に耐熱強度を高くしたい場合はオーステナイト系を使用することが望ましい。SUS304、316が一般的だが、特に一層高い耐熱性を求める場合はSUS310、SUS309を使用することが望ましい。板の厚さは可撓性に影響するので、過度の剛性不足を伴わない範囲で薄くすることが望ましい。フレキシビリティの観点からは厚さ0.5mm以下、望ましくは0.3mm以下、さらに望ましくは0.1mm以下が望ましい。板厚を薄くすることは、原材料コストの面からも望ましい。ただし、ハンドリング時の最低限の剛性を確保する上では下限は0.03mm以上であることが好ましい。
【0019】
[2.表層材(アルミニウムまたはアルミニウム合金)]
本発明に用いるアルミニウムまたはアルミニウム合金は、不要な金属間化合物を含まないことが望ましい。具体的には不純物の少ない、99質量%以上の純度のアルミであることが望ましい。例えば、99.99質量%Al、99.96質量%Al、99.9質量%Al、99.85質量%Al、99.7質量%AL、99.5質量%Al等が望ましい。あるいは、金属間化合物を作りにくい元素を添加することも出来る。例えば99.9質量%のAlにマグネシウムを2.0〜7.0質量%添加したアルミ合金にすることも出来る。マグネシウム以外では、Cu、Siなど、固溶限界の高い添加元素を選ぶことが出来る。平版印刷版用支持体に適用する場合は、表層のアルミに、電気化学的粗面化性を制御可能な元素を添加することが出来る。例えば、CuやSiはその代表例である。また絶縁性のある半導体支持体に適用する場合は、Alの純度を高め、析出物に起因する金属間化合物を避け、絶縁層の健全性を増すことが出来る。これはアルミニウム合金の陽極酸化を行った場合、金属間化合物が起点となって、絶縁不良を起こす可能性が増えるからである。
表層の厚さは、設ける陽極酸化皮膜の厚みより大きくすることが必要で、最低10μm以上である。望ましくは20μm以上、更に望ましくは30μm以上が良い。厚さの上限は、溶融メッキで形成される場合は工程上の制約を受けるが、100μm以下が好ましい。
【0020】
[3.複合材]
芯材に高温強度の高い材料、表層材にアルミニウムまたはその合金を有する複合材を作る方法として、実用上知られている製造方法は、クラッド圧延と、溶融メッキがあるが、端面の保護がしやすい溶融メッキ法がより好ましい。
複合材の厚さは好ましくは20〜5000μmであり、板幅は100〜2000mmである。
アルミニウム板の表面は鏡面仕上げされていることが好ましく、その表面粗さRaが0.1nm〜2μmであることが好ましく、1nm〜0.3μmであることが特に好ましい。
複合材の強度は、500℃以上に熱処理をされている中での引っ張り強度が5MPa以上あることが必要で、望ましくは10MPa以上あることが望ましい。
また、500℃以上で熱処理されている中で、クリープを起こさないため、500℃、10分間保持された際、最大0.1%の塑性変形を起こす強度が0.2MPa以上あることが好ましく、望ましくは0.4MPa以上、更に望ましくは1MPa以上である。
アルミ溶融メッキ法の複合材としては、日新製鋼社のアルスター鋼板、アルスターステンレス、新日本製鐵社のアルシートが知られている。
アルミニウム表層材は鏡面仕上げされていてもよく、その方法の一例としては、特許第4212641号公報、特開2003−341696号公報、特開平7−331379号公報、特開2007−196250号公報、特開2000−223205号公報に記載がある。
【0021】
[4.表面処理方法(陽極酸化皮膜の形成)]
表層のアルミニウムは、必要に応じて、汚れ等を除去するための洗浄処理を、酸あるいは有機溶剤などを用いて行われることが好ましい。
その後、硫酸、リン酸、シュウ酸などの酸性溶液中で陽極酸化処理を行う。陽極酸化皮膜の厚みは5μm以上が望ましく、10μm以上が更に望ましい。ただし過度に分厚い陽極酸化皮膜は、皮膜生成に要するコスト、時間がかかるため好ましくない。現実的には最大50μm以下、望ましくは30μm以下が望ましい。
陽極酸化処理に用いる電解液は、望ましくは、硫酸またはシュウ酸水溶液を用いる。皮膜の健全性はシュウ酸皮膜が優れる。一方、連続処理生産性は硫酸が優れる。
【0022】
好ましい陽極酸化処理条件を以下に示す。
陽極酸化処理に用いる電流は、交流、直流、交直重畳電流を用いることが可能であり、電流の与え方は、電解初期から一定でも漸増法を用いてもよいが、直流を用いる方法が特に好ましい。
陽極酸化処理は、表面処理を簡略化する上で複合材板の表裏、2側面同時に行うことが好ましいが、表裏同時に、次に2側面で行ってもよいし、または片面ずつ逐次おこなってもよい。
アルミニウム表面の電解液流速並びに流速の与え方、電解槽、電極、電解液の濃度制御方法は、公知の陽極酸化処理方法を用いることが可能である。
たとえば、特開2002-362055号公報、特開2003-001960号公報、特開平6−207299号公報、特開平6−235089号公報、特開平6−280091号公報、特開平7−278888号公報、特開平10−109480号公報、特開平11−106998号公報、特開2000−17499号公報、特開2001−11698号公報、特開2005−60781号公報、の記載が一例である。複合材板の対極としては、アルミニウムを陽極としたときの対極(陰極)としてアルミニウム、カーボン、チタン、ニオブ、ジルコニウム、ステンレスなどを用いることが可能である。アルミニウムを陰極としたときの対極(陽極)として、鉛、白金、酸化イリジウムなどを用いることが可能である。
【0023】
図3に、本発明の陽極酸化処理および電気化学的な封孔処理に用いることができる装置の一例を示す。装置は、芯材の表層にアルミニウムまたはその合金を有する複合材板2を複数のパスロール20を介して電解液22の入った電解層24中を走行させながら、直流電源26を複合材板2に対抗する位置に置かれた陽極28、および陰極30に印加して、アルミニウム合金板2の対抗面を電気化学的処理するものである。
(a)硫酸水溶液中での陽極酸化処理
硫酸100〜300g/L、更に好ましくは120〜200g/L(アルミニウムイオンを0〜10g/L含む)、液温10〜55℃(特に好ましくは20〜50℃)、電流密度10〜100A/dm(特に好ましくは20〜80A/dm)、電解処理時間5〜300秒(特に好ましくは5〜120秒)で、複合材板を陽極として陽極酸化処理する。このときの複合材板と対極間の電圧は、10〜150Vであることが好ましく、電圧は電解浴組成、液温、アルミニウム界面の流速、電源波形、複合材板と対極との間の距離、電解時間などによって変化する。
アルミニウムイオンは電解液中に、電気化学的または化学的に溶解するが、予め硫酸アルミニウムを添加しておくことが特に好ましい。また、アルミニウム合金中に含まれる微量元素が溶解していても良い。
【0024】
(b)シュウ酸水溶液中での陽極酸化処理
シュウ酸10〜150g/L(特に好ましくは30〜100g/L)、アルミニウムイオンを0〜10g/Lを含むことが好ましい。液温10〜55℃(特に好ましくは10〜30℃)、電流密度0.1〜50A/dm(特に好ましくは0.5〜10A/dm)、電解処理時間1〜100分(特に好ましくは30〜80分)で、複合材板を陽極として陽極酸化処理する。このときの複合材板と対極間の電圧は、10〜150Vであることが好ましく、電圧は電解浴組成、液温、アルミニウム界面の流速、電源波形、複合材板と対極との間の距離、電解時間などによって変化する。
アルミニウムイオンは電解液中に、電気化学的または化学的に溶解するが、予めシュウ酸アルミニウムを添加しておいても良い。また、アルミニウム合金中に含まれる微量元素が溶解していても良い。
【0025】
[ホウ酸電解処理(封孔処理)]
陽極酸化処理したアルミニウム合金板は、特に絶縁性を高めたい場合には、次にホウ酸液中で封孔処理することが望ましい。
封孔処理は、電気化学的な方法、化学的な方法が知られているが、複合材板のアルミニウムを陽極にした電気化学的な方法(陽極処理)が特に好ましい。
電気化学的な方法は、アルミニウムまたはその合金を陽極にして直流電流を加え、封孔処理する方法が好ましい。電解液はホウ酸水溶液が好ましく、ホウ酸水溶液にナトリウムを含むホウ酸塩を添加した水溶液が好ましい。ホウ酸塩としては、八ほう酸二ナトリウム、テトラフェニルほう酸ナトリウム、テトラフルオロほう酸ナトリウム、ペルオキソほう酸ナトリウム、四ほう酸ナトリウム、メタほう酸ナトリウムなどがある。これらのホウ酸塩は、無水または水和物として入手することができる。
【0026】
封孔処理に用いる電解液として、特には、0.1〜2mol/Lのホウ酸水溶液に、0.01〜0.5mol/Lの四ほう酸ナトリウムを添加した水溶液を用いることが特に好ましい。アルミニウムイオンは0〜0.1mol/L溶解していることが好ましい。アルミニウムイオンは、電解液中へ封孔処理により化学的または電気化学的に溶解するが、予めホウ酸アルミニウムを添加して電解する方法が特に好ましい。また、アルミニウム合金中に含まれる微量元素が溶解していても良い。
好ましい封孔処理条件は、液温10〜55℃(特に好ましくは10〜30℃)、電流密度0.01〜5A/dm(特に好ましくは0.1〜3A/dm)、電解処理時間0.1〜10分(特に好ましくは1〜5分)である。
電流は、交流、直流、交直重畳電流を用いることが可能であり、電流の与え方は、電解初期から一定でも漸増法を用いてもよいが、直流を用いる方法が特に好ましい。電流の与え方は、定電圧法、定電流法どちらを用いても良い。
このときの複合材板と対極間の電圧は、100〜1000Vであることが好ましく、電圧は電解浴組成、液温、アルミニウム界面の流速、電源波形、複合材板と対極との間の距離、電解時間などによって変化する。
封孔処理は、表面処理の簡略化の為、複合材板の表裏、端面を同時におこなうことが望ましいが、片面ずつ逐次おこなってもよい。
アルミニウム表面の電解液流速並びに流速の与え方、電解槽、電極、電解液の濃度制御方法は、前記陽極酸化処理に記載の公知の陽極酸化処理方法、並びに封孔処理の方法を用いることが可能である。ホウ酸ナトリウムを含むホウ酸水溶液中で陽極酸化処理する際の膜厚は100nm以上が望ましく、更に望ましくは300nm以上である。上限は多孔質陽極酸化皮膜の膜厚になるが、生産コストの面からは1μm以下が現実的な上限となる。
これにより、半導体基板用金属複合材、特に高温強度が必要で、可とう性のメリットがある、薄膜太陽電池基板用金属複合材を提供できる。
【0027】
また、化学的な好ましい方法は、陽極酸化処理後にポアおよび・または空孔にSi酸化物を充填した構造にすることも可能である。Si酸化物による充填はSi−O結合を有する化合物を含む溶液を塗布、または、珪酸ソーダ水溶液(1号珪酸ソーダまたは3号珪酸ソーダ、1〜5質量%水溶液、20〜70℃)に、1〜30秒間浸せき後に水洗・乾燥し、更に200〜600℃で1〜60分間焼成する方法も可能である。
化学的な好ましい方法として、前記珪酸ソーダ水溶液のほかに、フッ化ジルコン酸ソーダおよび・またはリン酸2水素ナトリウムの単体または混合比率が重量比で5:1〜1:5の混合水溶液の、濃度1〜5質量%の液に、20〜70℃で1〜60秒浸せきすることで封孔処理をおこなう方法を用いることも可能である。
【0028】
[5.半導体用基板の製造方法]
本発明の、望ましい半導体用基板の製造方法は、芯材が、300℃以上での耐熱強度がアルミニウムより高い金属で、その表層がアルミニウムまたはその合金により全面メッキされた、表層がアルミニウムまたはその合金からなる複合材板の表面に、陽極酸化処理、水洗処理、乾燥処理を行う半導体用金属複合基板の製造方法である。
あるいは、芯材が、300℃以上での耐熱強度がアルミニウムより高い金属であり、その表層がアルミニウムまたはその合金により全面メッキされた、表層がアルミニウムまたはその合金からなる複合材板の表面に、第1の陽極酸化処理、水洗処理、第二の陽極酸化処理、水洗処理、乾燥処理を行う半導体用金属複合基板の製造方法である。第1の陽極酸化処理はシュウ酸、または硫酸が望ましく、第2の陽極酸化処理はホウ酸ナトリウムを含むホウ酸水溶液が望ましい。
本発明の金属複合基板は図1(A)、(B)に示すように芯材の全面にアルミニウムまたはアルミニウム合金を有するものであるが、この基板を用いてデバイスの基板とする場合は必要な場合は側面や底面のアルミニウムやアルミニウム合金または陽極酸化処理されたアルミニウムやアルミニウム合金を、溶解したり切削することにより除去して、一部の面に芯材が露出していてもよく、その場合も本発明の金属複合材基板に含まれる。
【0029】
[6.太陽電池の製造方法]
太陽電池は、(1)単結晶Si太陽電池、(2)多結晶Si太陽電池、(3)薄膜型太陽電池の3種に大別される。本発明のようなフレキシブルな金属複合基板を用いる場合、薄膜型太陽電池への適用が適している。薄膜型太陽電池としては、光吸収層の種類によって、薄膜Si型、化合物型の2種類が代表的である。
薄膜Si型は、CVD法等でアモルファスSi、又は微結晶Siの薄膜を設ける方法で、化合物型にはGaAs型太陽電池、CIS(カルコバイライト系)型太陽電池等が知られている。CIS型は、Siの替わりに、Cu、In,Ga、Se、S等の化合物を用いる太陽電池で、化合物によってCIS、CIGS、CIGSS等の略称を持つ。
【0030】
[薄膜系太陽電池]
薄膜系太陽電池の製作は、本願の支持体を用いるとロール・ツー・ロール方式で行うことができる。即ち、所定厚さに成形されてロールに巻かれた金属複合基板は、巻き出しロールから巻き取りロールに巻き取られる間に後述する各層の形成が順次行われ、あるいは巻き取り毎に各層の形成が行われる。
本発明に用いる複合材板は、ロールツーロールプロセスにより、陽極酸化処理、封孔処理までおこなわれることが特に好ましい。
その後、前記処理をおこなって一旦巻き取られた複合材板を再送り出しして後述する各層の形成が順次行われ、太陽電池を形成し、その後裁断処理して太陽電池とする方法が好ましい。また、陽極酸化処理、封孔処理をおこなった後に裁断し、その後太陽電池を形成する方法も好ましい。
【0031】
図2は本発明の基板を用いることが可能な薄膜系太陽電池11の一般的な構成の一例を示す断面図である。
芯材3上にアルミニウムまたはアルミニウム合金5とその表層の陽極酸化皮膜7を絶縁層13として有する本発明の金属複合材基板1を用いる。さらに絶縁層13を介して裏面電極層14が積層され、さらに光吸収層15、バッファー層16、透明電極層17が順次積層され、透明電極層17および裏面電極層14に取り出し電極18、19が積層されている。さらに、透明電極層17の露出部分は反射防止膜21で被覆されている。
また、図2に例示した薄膜系太陽電池において、裏面電極層14、光吸収層15、バッファー層16、透明電極層17、取り出し電極18、19の材料や厚さは何ら限定されない。例えば、CISまたはCIGSを用いた薄膜系太陽電池において、各層は以下の材料と厚さを例示できる。
裏面電極層14の材料は導電性を有する材料で厚さは0.1〜1μmである。積層には、太陽電池の製造に一般的に使用される手法を用いればよく、例えば、スパッタリング法や蒸着法などを用いればよい。材料は、導電性を有する限り特に 限定されず、例えば、体積抵抗率が6×106 Ω・cm以下の金属、半導体などを用いればよい。具体的には、例えば 、Mo(モリブデン)を積層すればよい。形状は特に限定されず、太陽電池として必要な形状に応じて任意の形状に積層すればよい。
【0032】
前記光吸収層15は、発電効率を高めるために、効率良く光を吸収し、そこで励起されたエレクトロン・ホールペアを再結合させずにどれだけ外部に取出せるかが要求される機能であり、光吸収係数が大きいものを用いることが高い発電効率を得るうえで重要である。かかる光吸収層15として 、アモルファスSiやナノ結晶SiのSi系薄膜、または各種化合物からなる薄膜が用いられる。化合物の種類は限定されず、CdS/CdTe、CIS(Cu−In−Se)、CIGS(Cu−In−Ga−Se)、SiGe、CdSe、GaAs、GaN、InP等を使用できる。これらの化合物からなる薄膜は、焼結、化学析出、スパッタ、近接昇華法、多元蒸着法、セレン化法等によって形成することが可能である。
CdS/CdTeからなる薄膜は、CdS膜、CdTe膜を順次形成した積層薄膜であるが、CdS膜の厚さにより2種類に分けられ、(a)20μm程度のもの、(b)0.1μm以下で基板との間に透明導電膜が形成されているものがある。(a)の構造では、基板上にCdSペースト、CdTeペーストを順次塗布して600℃以下で焼結する。(b)の構造では、化学析出またはスパッタ等によりCdS膜を形成し、近接昇華法によりCdTe膜を形成する。
また、CISまたはCIGS薄膜は化合物半導体を用いるものであり、長期間の使用に対して安定性が高いという特徴がある。これらの化合物薄膜の膜厚は例えば0.1〜4μmであり、化合物ペーストを塗布して350〜550 ℃で焼結することにより形成される。
【0033】
積層には、太陽電池の製造に一般的に使用される手法を用いればよく、例えば、蒸着法やセレン化法などを用いればよい。材料は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とを主要な構成元素とし、カルコパイライト構造を有する化合物半導体材料などが挙げられる。例えば、Cu(銅)と、InおよびGaから選ばれる少なくとも1つの元素と、Se(セレン)およびS(硫黄 )から選ばれる少なくとも1つの元素とを含むp型半導体層を光吸収層として積層すればよい。より具体的には、例えば、CuInSe2 やCu(In,Ga)Se2、あるいは、Seの一部をSで置換した化合物半導体を積層すればよい。このような製造方法ではCISあるいはCIGSの太陽電池が得られるため、より変換効率に優れる太陽電池を製造することができる。
【0034】
この工程においてZnをドープすることもおこなわれるが、この場合層の一部の領域にZnをドープすればよい。例えば、含まれるZnの濃度が層の膜厚方向に、電極層14側から高濃度になるように(濃度勾配を有するように)Znをドープすることができる。なかでも、電極層14と反対側の近傍に、Znをドープすることが好ましい。このような製造方法によって、変換効率などの特性により優れる太陽電池を製造することができる。なお、電極層14と反対側の近傍とは、反対側の面から、例えば、3nm〜30nm程度の範囲をいう。ドープ距離は、全域において一定である必要はなく、部分的にばらつきがあってもよい。ドープするZnの量は特に限定されないが、例えばZnのドープ量が、1(at%)〜15(at%)程度の範囲であればよい。Znをドープする方法は特に限定されない。例えば、Znをイオン照射すればよい。このとき、照射するZnイオンのエネルギーなどを制御することによって、ドープ距離やドープ量を制御することができる。このほかに、Znを含む溶液と接触させることによって、Znをドープしてもよい。このとき、Znを含む溶液の濃度や、上記溶液と接触させる時間などを制御することによって、Znのドープ距離やドープ量を制御することができる。また、このような製造方法では、Znをより均一にドープすることができる。また、ドープ距離をより小さくすることができる。浸せきする方法により簡便にZnをドープすることができるため、製造コストに優れる製造方法とすることができる。Znを含む溶液は特に限定されず、例えば、Znイオンを含む溶液であればよい。具体的には、例えば、Znの硫酸化物(硫酸亜鉛)、塩化物(塩化亜鉛)、ヨウ化物(ヨウ化亜鉛)、臭化物(臭化亜鉛)、硝酸化物(硝酸亜鉛)および酢酸化物(酢酸亜鉛)から選ばれる少なくとも1つの化合物の水溶液であればよい。上記水溶液の濃度は特に限定されない。例えば、上記水溶液におけるZnイオンの濃度が0.01mol/L〜0.03mol/Lの範囲であればよい。上記濃度範囲において、より良好なZnドープ層を形成することができる。なお、Znを含む溶液に浸せきする時間は特に限定されず、必要なドープ距離(あるいは、必要なZnドープ層の厚さ)に応じて任意に設定すればよい。
【0035】
更に、前記層の上に、ZnMgO膜をスパッタリングによって0.05〜4μmの厚さで生成することが好ましい。
バッファー層16の材料はZnO/CdSの積層であり、合計厚さは0.05〜4μmである。
積層には、太陽電池の製造に一般的に使用される手法、例えば、蒸着法やスパッタリング法を用いればよい。
【0036】
透明電極層17の材料はAlをドープしたZnOやITO (インジウム・スズ酸化物)で厚さが0.1〜0.3μmである。積層には、太陽電池の製造に一般的に使用される手法、例えば、スパッタリング法を用いればよい。例えば、透光性を有する導電材料を積層すればよい。具体的には、例えば、インジウム・スズ酸化物(ITO)やZnO、あるいは、これらの材料の積層膜を積層すればよい。
取り出し電極18、19の材料はAl/Ni等である。取り出し電極を形成する場合、取り出し電極の材料は特に限定されず、太陽電池に一般的に用いる材料であればよい。例えば、NiCr、Ag、Au、Alなどを配置して取り出し電極を形成すればよい。形成には、一般的に用いられる方法を用いればよい。
【0037】
なお、本発明の基板は、CIGSまたはCIS系の太陽電池のみならず、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコン太陽電池、HIT太陽電池、CdTe太陽電池、多接合太陽電池、宇宙用太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、半導体の量子ドットを利用した太陽電池、などの基板に用いても、本発明の目的と同じ効果を発揮する。
【実施例】
【0038】
以下に実施例、比較例により、本発明を説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されない。以下の実施例中の%は特に断らない限り質量%である。
芯材に厚み100μmの金属材料(ステンレス鋼と鋼)を用い、厚み70μmのアルミニウム合金(Al純度99.9%)を全面に溶融メッキ法で設けた。
表1に示すように、実施例1,2は芯材にステンレス鋼 SUS304、実施例3,4は芯材に耐熱鋼SUH309、実施例5,6は軟鋼SS400とし、Al純度が99.9%、添加元素無しの溶融アルミ中を通し、厚み240μmの複合材を作った。
比較材として、複合材ではないアルミ合金、ステンレス、耐熱鋼、軟鋼を比較例1〜5に用いた。
【0039】
各板の表面は鏡面ロールで圧延することでRa=0.05μmになるように仕上げた。
まず、表面を硫酸15%、液温度30℃にて10秒洗浄後、水洗を行い、シュウ酸(1mol/L液)中で直流による陽極酸化処理を行い、陽極酸化皮膜20μmの皮膜を生成し、水洗した。
一部の試料は更に、ホウ酸(1mol/L液)中で、電圧400Vで直流陽極酸化を行い、厚さ400nmの封孔処理を行い、水洗乾燥を行った。
各基板を180度折り曲げることで、陽極酸化皮膜を割り、その破面を同様に電子顕微鏡観察することで、陽極酸化皮膜の厚みを測定した。
複合材の実施例1、2、3、4、5、6と、複合材ではないがアルミ単独の比較例1、2は陽極酸化皮膜が形成できていたが、比較例3、4、5では測定可能な陽極酸化皮膜は形成されていなかった。
【0040】
【表1】

【0041】
次に各金属複合基板を300mm×300mmの大きさに切り出し、表面の絶縁性評価を100箇所行った結果、本発明の実施例3、4、5、6と比較例5、6はいずれも絶縁性に問題がなかった。絶縁性は抵抗値が1MΩ以上あった場合をOKとして判断した。1〜10MΩの場合○、10MΩ以上の場合を◎、1MΩ未満を×とした。
更に、550℃×30分間の加熱を行った後、徐冷し、室温にて、ガラス定盤上で平面性を評価した。平面性は浮き上がり量を金尺で測定した。3mm以下の物についてはテーパゲージを使用して測定した。本願実施例の複合材と、複合材ではない比較例3、4、5のステンレス鋼板、耐熱鋼板は平面性が良好なことが分かる。表2に結果を示す。
【0042】
【表2】

【0043】
次に、絶縁性がOKであった金属複合基板(300mm)を用いて、CIGS型の太陽電池を作成した。基板には実施例、1、2、3、4、5、6と比較例1、2を用いた。
この陽極酸化アルミニウム基板上に、RFスパッタリング(高周波スパッタリング)によって、Mo層を形成した後、RFスパッタリングによって、NaF層を形成し、更にRFスパッタリングによって、Mo層を形成した。このようにして堆積したMo/NaF/Mo多層膜の厚みは約1.0μmの厚さであった。前記Mo上にCuInGaSe2薄膜を真空容器内部で堆積した。CuInGaSe2薄膜の堆積は、真空容器内部にCuInGaSe2の主成分であるCuの蒸着源、Inの蒸着源、Gaの蒸着源、およびSeの蒸着源を用意し、真空度約10-7Torrのもとで、Cu、In、Ga、およびSeの蒸着源ルツボを加熱し、各元素を蒸発させた。その際、ルツボの温度は適宜調節した。CuInGaSe2薄膜は、以下に示すように2層構成とした。すなわち、1層目はInとGaの合計の原子組成に対してCuの原子組成が過剰になるように膜を形成し、続く2層目はCuの原子組成に対してInとGaの合計の原子組成が過剰になるように膜を形成した2層構造である。基板温度は550℃で一定とした。1層目を約2μm蒸着した。この際、原子組成比はCu/(In+Ga)=約1.0〜1.2であった。次に2層目を約1μm蒸着し、最終的な原子組成比がCu/(In+Ga)=0.8〜0.9になるよう蒸着した。
【0044】
次に、窓層として、複層の半導体膜を形成した。まず、約50nmの厚さのCdS膜を化学析出法により堆積した。化学析出法は、硝酸Cd、チオ尿素およびアンモニアを含む水溶液を約80℃に温め、上記光吸収層をこの水溶液に浸漬することにより行った。さらに、CdS膜の上に約80nmの厚さのZnO膜をMOCVD法で形成した。
次に、MOCVD法により、透明導電膜として、約200nmの厚さのAl添加ZnO膜を堆積した。
最後に、取り出し電極として、Alを蒸着法で形成し、太陽電池を作製した。
得られた太陽電池について、Air Mass(AM)=1.5、100mW/cm2の擬似太陽光を用いて太陽電池特性を評価したところ、変換効率10.0%が得られた。この結果から、本発明の陽極酸化アルミニウム基板を用いて太陽電池を形成しても、十分な光電変換効率を示すことがわかった。
その際、比較例1はMo製膜の途中で、比較例2はCIGS製膜の途中で板が反り、表面にクラックが入る不具合がおこり、太陽電池に仕上げることが出来なかった。表3に結果を示す。
【0045】
【表3】

【符号の説明】
【0046】
1 金属複合基板
2 芯材の表層にアルミニウムまたはその合金を有する複合材板
3 芯材
5 アルミニウムまたはアルミニウム合金
7 陽極酸化皮膜
11 薄膜系太陽電池
13 絶縁層
14 裏面電極層
15 光吸収層
16 バッファー層
17 透明電極層
18、19 取り出し電極
21 反射防止膜
20 パスロール
22 電解液
24 電解槽
26 直流電源
28 陽極
30 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
300℃以上での耐熱強度がアルミニウムより高い金属よりなる芯材と、該芯材の全表面を覆うアルミニウムまたはアルミニウム合金層とを有し、前記アルミニウムまたはアルミニウム合金層の表面に陽極酸化皮膜を有する金属複合基板。
【請求項2】
前記芯材が鋼である請求項1に記載の金属複合基板。
【請求項3】
前記陽極酸化皮膜が、厚さ1〜50μmの多孔質陽極酸化皮膜である請求項1または2に記載の金属複合基板。
【請求項4】
前記陽極酸化皮膜が、さらにホウ酸水溶液中で封孔処理される請求項1〜3のいずれかに記載の金属複合基板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の金属複合基板よりなる半導体用基板。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の金属複合基板を有する太陽電池。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の金属複合基板に、光吸収層および電極層が形成された薄膜系太陽電池。
【請求項8】
前記金属複合基板上に、裏面電極層を介して光吸収層が形成され、該光吸収層が、CdS/CdTe、CIS、CIGSのうちのいずれかの化合物を含む請求項7に記載の薄膜系太陽電池。
【請求項9】
300℃以上での耐熱強度がアルミニウムより高い金属よりなる芯材を、その全表面をアルミニウムまたはアルミニウム合金でメッキし、得られるアルミニウムまたはアルミニウム合金層の表面に陽極酸化処理、水洗処理、乾燥処理を行う金属複合基板の製造方法。
【請求項10】
前記メッキが溶融メッキである請求項9に記載の金属複合基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−263037(P2010−263037A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111862(P2009−111862)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】