説明

金属調加飾フィルム及び金属調加飾樹脂成形体並びに金属調加飾樹脂成形体の製造方法

【課題】成形加工性が良好で表面硬度が高い金属光沢に優れた金属調加飾フィルム及び、金属調加飾樹脂成形体を提供すること。
【解決手段】二枚の樹脂フィルム2,5を接着剤4で固着した内部に金属層3を有する金属調加飾フィルム1について、表面フィルム2の鉛筆硬度がH以上であり、裏面フィルム5の硬度が所定硬度内にあり、接着層4の硬度が硬化前後で異なるものとした。
このため、成形加工性に優れ、表面硬度が高い金属調加飾樹脂成形体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気製品、自動車などの外装部材である装飾成形品に用いられる金属調加飾樹脂成形体、及びこの金属調加飾樹脂成形体の加飾に用いる金属調加飾フィルム、さらにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属調に加飾された加飾成形体には、金属調加飾フィルムを樹脂成形体に被せた構成の金属調加飾樹脂成形体が知られている。この金属調加飾樹脂成形体に用いられる金属調加飾フィルムは、2枚の樹脂フィルムで金属蒸着層を挟むことで金属蒸着層に傷がつきにくい構成とされていることが多い。このような例が、特開平10−180795号公報や特開2007−030249号公報に記載されている。
すなわち、こうした金属調加飾フィルムで樹脂成形体を被覆することで、金属光沢を有し、傷つきにくい金属調加飾樹脂成形体を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−180795号公報
【特許文献2】特開2007−030249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記金属調加飾フィルムは、樹脂成形体のもたらす種々の形状に即してその表面を被覆できるように、成形加工性の良い積層フィルムであることが好ましい。そうした一方で、成形後は、樹脂成形体を保護するとともに金属調の質感を有しながら傷付いて美観を損なうことがないように、ある程度の表面硬さを備えることが要求される。
しかし、成形加工性の観点から比較的柔らかな樹脂フィルムや接着層を有する金属調加飾フィルムを用いると、表面が傷付きやすい製品となってしまう。また、反対に製品の表面を硬くするように、樹脂フィルムや接着層に硬い材料を用いると、成形加工時に亀裂が入ったり金属光沢が悪化したりして上質の製品が得られないという欠点がある。
【0005】
以上のような従来技術を背景としてなされたのが本発明である。すなわち、本発明の目的は、立体的に変形する成形加工を行っても積層フィルムの亀裂や金属光沢の悪化を起こさず、しかも表面硬度が高い金属調加飾フィルムや金属調加飾樹脂成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく本発明は以下のように構成される。
金属層が付着した金属担持フィルムと、金属層を保護するカバーフィルム、及びこの金属担持フィルムとカバーフィルムとを固着する接着層を少なくとも有する金属調加飾フィルムについて、金属担持フィルムまたはカバーフィルムの何れか一方である表面フィルムの鉛筆硬度がH以上であり、金属担持フィルムまたはカバーフィルムの何れか他方である裏面フィルムのロックウェル硬さがHRR100以上であって、表面フィルムよりも絞り成形時に変形し易い樹脂フィルムでなり、接着層が、ロックウェル硬さでHRR50より小さい硬度を有しながら、所定の硬化処理後にロックウェル硬さでHRR100以上となる硬化型接着剤でなる接着層であり、金属担持フィルムとカバーフィルムとが固着してあり、絞り成形可能なことを特徴とする金属調加飾フィルムを提供する。
【0007】
表面フィルムは、その硬さが、JIS K5600−5−4にもとづく鉛筆硬度でH以上である。鉛筆硬度でH以上としたため、表面が破壊され傷付きにくく、また、硬質感を与えることができる。なお、本明細書、特許請求の範囲において、鉛筆硬度というときはこのJIS K5600−5−4に基づく硬度をいう。裏面フィルムは、その硬さが、JIS K7202−2にもとづくロックウェル硬さがHRR100以上であって、表面フィルムよりも絞り成形時に変形し易い樹脂フィルムとする。ロックウェル硬さがHRR100以上としたため、表面フィルムを押圧した際に凹みが生じ元に戻らない現象が起きにくく、硬い表面を得ることができる。また、表面フィルムよりも絞り成形時に変形し易い樹脂フィルムとしたため、絞り形状が安定しやすく、求める立体形状に成形加工しやすい。なお、本明細書、特許請求の範囲においてロックウェル硬さというときはこのJIS K7202−2に基づく硬度をいう。
【0008】
さらに、接着層は、ロックウェル硬さでHRR50より小さい硬度を有しながら、所定の硬化処理後にロックウェル硬さでHRR100以上となる接着層であり、金属担持フィルムとカバーフィルムとがくっついて容易に剥がれない程度の固着力を有する接着剤を用いている。ロックウェル硬さでHRR50より小さい硬度であるため、金属調加飾フィルムの成形加工時に接着層が割れたり、金属担持フィルムとカバーフィルムが剥がれたりするおそれがなく成形加工性が良好である。また、所定の硬化処理後にロックウェル硬さがHRR100以上となるため、表面フィルムを押圧した際に表面に凹みが生じ元に戻らない現象が起きにくい硬い表面を得ることができる。ここで、所定の硬化処理とは、金属調加飾フィルムを樹脂成形体と一体化するなど金属調加飾フィルムの後加工時に、この金属調加飾フィルムに加熱、加圧、紫外線照射などの活性エネルギー線硬化処理など、接着層に用いられる接着剤の種類に応じてその接着剤を硬化させるのに必要な処理をいうものである。
加えて、金属担持フィルムとカバーフィルムとが容易に剥がれない程度の固着力を有するため、金属調加飾フィルムを成形加工する際に、金属担持フィルムとカバーフィルムが剥離することがなく、また、この金属調加飾フィルムを樹脂成形体と一体化する際に、表面フィルムが樹脂成形体の形状に追随して成形され、表面フィルムと裏面フィルムの何れもが樹脂成形体の形状に添って変形する樹脂フィルムと樹脂の一体性が良好な金属調加飾樹脂成形体を得ることができる。
こうした金属調加飾フィルムは、接着層を硬化させれば、表面フィルム側から鉛筆硬度でH以上となる硬さに優れた金属調加飾フィルムが得られる。
【0009】
接着層が、加熱、加圧、活性エネルギー線照射から選択される少なくとも一の硬化反応により硬化する反応硬化型接着剤でなる金属調加飾フィルムとすることができる。接着層が、加熱や加圧、活性エネルギー線照射等により反応硬化する反応硬化型接着剤でなるため、金属担持フィルムとカバーフィルムの接着とは別に、こうした硬化反応を行うことで、金属調加飾フィルムを別途硬化させることができる。そのため、金属調加飾フィルムの樹脂成形体との一体成形時や、その後に金属調加飾フィルムを硬化させて表面硬度が高い金属調加飾樹脂成形体を製造することができる。
【0010】
接着層が、硬化剤を内包するマイクロカプセルを含む反応硬化型接着剤でなる金属調加飾フィルムとすることができる。接着層が、硬化剤を内包するマイクロカプセルを含む反応硬化型接着剤でなる金属調加飾フィルムとしたため、金属担持フィルムとカバーフィルムの接着とは別に、マイクロカプセルの破壊工程を行い金属調加飾フィルムの接着層を硬化させることで、金属調加飾フィルムを別途硬化させることができる。そのため、金属調加飾フィルムの樹脂成形体との一体成形時や、その後に金属調加飾フィルムを硬化させて表面硬度が高い金属調加飾樹脂成形体を製造することができる。また、マイクロカプセル型の硬化剤は保存安定性に優れる。圧縮してカプセルを破壊する方法では成形と同時に硬化することができるため、成形とは別に新たに硬化工程を設ける必要がなくなる。
【0011】
金属層は、インジウムでなる不連続蒸着層とすることができる。金属層をインジウムでなる不連続蒸着層としたため、金属調加飾フィルムを深絞り加工する際にも金属光沢への悪影響を及ぼさず、成形加工前の金属調の視認性を維持することができる。そのため、金属光沢に優れ、高品質の金属調加飾フィルムを得ることができる。また、優れた耐湿性を有することができる。
【0012】
裏面フィルムの厚みが表面フィルムの2倍以上であり、且つ400μm以下である金属調加飾フィルムとすることができる。裏面フィルムの厚みを表面フィルムの2倍以上としたため、裏面フィルムによって表面フィルムの応力を抑えて仮絞り後の金属調加飾フィルムの立体形状を維持し易くすることができる。また、裏面フィルムの厚さを400μm以下としたため、成形加工性が良く、精細な凹凸加工を容易に行うことができる。
【0013】
上記金属調加飾フィルムの裏面フィルムが、樹脂成形体の表面に固着して加飾する金属調加飾樹脂成形体とすることができる。上記金属調加飾フィルムの裏面フィルムが、樹脂成形体の表面に固着して加飾する金属調加飾樹脂成形体としたため、成形加工しやすく、金属光沢に優れ表面硬度が高い金属調加飾フィルムを有する金属調加飾樹脂成形体とすることができる。
【0014】
また、上記金属調加飾フィルムの裏面フィルムが、樹脂成形体の表面に固着して加飾する金属調加飾樹脂成形体の製造方法について、該金属調加飾フィルムを樹脂成形体の表面形状に沿った立体形状に仮絞りした後、仮絞りした金属調加飾フィルムと樹脂成形体とを一体化するとともに、金属調加飾フィルムの接着層に硬化処理を施して、この接着層をロックウェル硬さでHRR100以上に硬化させることを特徴とする金属調加飾樹脂成形体の製造方法を提供する。
金属調加飾フィルムの接着層に硬化処理を施して、この接着層をロックウェル硬さでHRR100以上に硬化させたため、成形加工性を悪化させることなく表面硬度の高い金属調加飾樹脂成形体とすることができる。
【0015】
さらに、上記金属調加飾フィルムの裏面フィルムが、樹脂成形体の表面に固着して加飾する金属調加飾樹脂成形体の製造方法について、該金属調加飾フィルムを平板形状のまま樹脂成形体と一体化するとともに、金属調加飾フィルムの接着層に硬化処理を施して、この接着層をロックウェル硬さでHRR100以上に硬化させることを特徴とする金属調加飾樹脂成形体の製造方法を提供する。
金属調加飾フィルムの接着層に硬化処理を施して、この接着層をロックウェル硬さでHRR100以上に硬化させたため、成形加工性を悪化させることなく表面硬度の高い金属調加飾樹脂成形体とすることができる。
【0016】
金属調加飾フィルムに対して絞り比が0.1〜0.5である深絞りを施すことができる。金属調加飾フィルムに対して絞り比が0.1〜0.5である深絞りを施しても金属調加飾フィルムの樹脂フィルムや接着層、金属層に亀裂が入らず、樹脂成形体の表面形状に添って金属調加飾フィルムが精緻に追随して付着した高品質の金属調加飾樹脂成形体を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の金属調加飾フィルムによれば、立体的な形状に変形させる成形加工を行っても金属調加飾フィルムの各層に亀裂が入らず白化などの変性を起こさず、金属光沢に優れるとともに表面硬度が鉛筆硬度でH以上の硬さを実現することができる。
また、本発明の金属調加飾樹脂成形体とその製造方法によれば、こうした金属調加飾フィルムの性質を活かした成形加工性や金属光沢に優れるとともに、表面硬度の高い金属調加飾樹脂成形体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の金属調加飾フィルムを示す断面図。
【図2】本発明の金属調加飾フィルムの製造過程で、金属担持フィルムに金属層が付着した状態を示す断面図。
【図3】本発明の金属調加飾フィルムの製造過程で、金属担持フィルムとカバーフィルムを積層する状態を示す断面図。
【図4】本発明の金属調加飾樹脂成形体の断面図。
【図5】本発明の金属調加飾樹脂成形体の製造過程で、金属調加飾フィルムを圧空成形する説明図。
【図6】本発明の金属調加飾樹脂成形体の製造過程で、金属調加飾フィルムの余分な部分を切断する説明図。
【図7】本発明の金属調加飾樹脂成形体の製造過程で、金属調加飾フィルムを金型にインサートした状態を示す説明図。
【図8】本発明の金属調加飾樹脂成形体の製造過程で、金属調加飾フィルムと樹脂成形体とを一体成形後脱型する説明図。
【図9】本発明の金属調加飾樹脂成形体の製造過程で、金属調加飾樹脂成形体を加熱処理する説明図。
【図10】本発明の金属調加飾樹脂成形体の別の製造過程で、溶融樹脂を注入する説明図。
【図11】本発明の金属調加飾樹脂成形体の別の製造過程で、紫外線を照射する説明図。
【図12】本発明の別の金属調加飾樹脂成形体の断面図。
【図13】本発明の金属調加飾樹脂成形体のさらに別の製造過程で、金属調加飾フィルムを金型に取り付ける説明図。
【図14】本発明の金属調加飾樹脂成形体のさらに別の製造過程で、金属調加飾樹脂成形体を脱型する説明図。
【図15】本発明の金属調加飾樹脂成形体のさらに別の製造過程で、余分な部分を切断する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各実施形態で共通する構成については、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0020】
第1実施形態〔図1〜図3〕;金属調加飾フィルム
本発明は、金属層が付着した金属担持フィルムと、金属層を保護するカバーフィルム、及びこの金属担持フィルムとカバーフィルムとを固着する接着層を少なくとも有する金属調加飾フィルムについて創作したものである。
従って、金属調加飾フィルムを各層に分けると、金属層を付着させる金属担持フィルム、金属層、そして、金属層を保護するカバーフィルムと、これらのフィルムを固着する接着層とを備えている。
金属層は金属調の加飾を施すために必要であり、金属担持フィルムはこの金属層を設けるための基材として必要であり、カバーフィルムは金属層を被覆するために必要であり、接着層は金属担持フィルムとカバーフィルムとを接着させるために必要だからである。
これ以外の構成要素として、金属層の色彩を補完するための着色層や、金属層を金属担持フィルムに積層させるための下地層、何れかのフィルム表面をさらに保護するためのオーバーコート層など、種々の層を設けていても良い。
【0021】
こうした金属調加飾フィルムは、樹脂成形体に金属調の装飾を施すために、樹脂成形体の表面に固着されて用いられる。そのため、樹脂成形体への一体化の際には、薄い平面形状のフィルムが、樹脂成形体の形状に即して立体的に成形加工される。従って、好ましい成形加工性を備える必要がある。好ましい成形加工性を有するというためには、金属調加飾フィルムを絞り加工した際に部分的に引き延ばされる箇所に白化が起きなかったり、成形後に元の形状に戻ろうとするスプリングバック現象が起きにくかったりすることが必要であり、また、フィルムを製品形状にカットする際にフィルムが割れにくいことなどが必要である。
【0022】
また、金属調加飾フィルムは、樹脂成形体に固着すると、その一方面が外部に露出し、他方面が樹脂成形体に固着することになる。そこで、外部に露出する側に位置するフィルムを表面フィルム、樹脂成形体と固着する側に位置するフィルムを裏面フィルムとして以下説明する。
【0023】
そして、この金属調加飾フィルムを樹脂成形体の表面に固着させて使用する際の形態により、樹脂成形体と固着させた後でも表面に表れる側の金属担持フィルムかカバーフィルムの何れか一方を表面フィルムとし、樹脂成形体と固着させる側にくる金属担持フィルムかカバーフィルムの何れか他方を裏面フィルムとそれぞれ呼ぶことにする。
金属担持フィルムやカバーフィルムの表面に別の層が設けられたり、さらに別のフィルムが積層される場合であっても、また、金属担持フィルムとカバーフィルムのどちらを表面フィルムとしても良いが、必ず、金属担持フィルムとカバーフィルムの何れか一方を表面フィルムとし何れか他方を裏面フィルムと呼ぶものとする。
【0024】
金属調加飾フィルムの硬さは、JIS K5600−5−4に基づく鉛筆硬度に従って評価することができる。円筒状の芯をそのまま表出させた鉛筆を45度に傾け、750gの荷重をかけて水平に動かすときに、表面の状態を観察する。
金属調加飾フィルムについては、表面が破壊され傷がつく現象と、表面に窪みが生じ元に戻らない現象が起きることがあり、種々検討した結果、これらの現象は、表面フィルムの材質特有の硬さだけでなく、積層している他の層の影響を受ける場合があることがわかった。即ち、表面が破壊され傷がつく現象は、表面フィルムの材質固有の硬さが影響しているとみることができるが、表面に窪みが生じ元に戻らない現象は、表面フィルムの厚みがまず影響し、次にその厚みが薄くなるほど下層にある接着層、さらには裏面フィルムの硬さや厚みにも影響を受けることが判明した。
【0025】
金属調加飾フィルム1の断面図を図1に示す。また、その製造過程を図2及び図3に示す。この例では、金属調加飾フィルム1は、表面フィルム2、金属層3、接着層4、裏面フィルム5がこの順に積層しており、金属担持フィルムを表面フィルム2とし、カバーフィルムを裏面フィルム5としている。
【0026】
表面フィルム2: 表面フィルム2は、内側の金属層3が透過して外部から視認できるように透明な樹脂フィルムで形成される。また、表面が傷付きにくいように、また、金属調の質感を付与するように硬質の樹脂フィルムでなることが好ましい。そのため、表面フィルム2の鉛筆硬度はH以上である。H以上としたため、表面が破壊され傷付きにくく、また、硬質感を与えることができる。鉛筆硬度がHより柔らかいと、表面フィルム2の表面に傷が付き易く凹み易い。
表面フィルム2の厚さは、10μm〜150μmが好ましい。10μmより薄くなると、その下層の接着層がHRR100以上の接着層であっても、その影響を受けて表面硬度が低下するおそれがある。一方、150μmを超えると成形加工性が悪くなるおそれがある。
表面フィルム2の材質としては、例えば、上記特徴を備えたポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。なお、樹脂フィルムの材質の鉛筆硬度がH未満であっても、鉛筆硬度がH以上となるハードコート層を表面に設けたり、樹脂を変性したりすることによって、鉛筆硬度がH以上の表面フィルム2とすることが可能である。例えば、ポリカーボネート樹脂であれば一般的には鉛筆硬度でH未満であるが、この樹脂にハードコート層を設けることで、あるいは、この樹脂を変性することで、鉛筆硬度がH以上の表面フィルム2を得ることができる。
さらに、表面フィルム2は、非結晶性または低結晶性の熱可塑性樹脂フィルムを用いると成形加工性の観点から好ましい。
【0027】
金属層3: 金属層3は、金属調の加飾を施すために設けられる層であり、真空蒸着法、スパッターリング法、イオンプレーティング法、めっきなどで形成することができる。用いられる金属の種類には、インジウム、錫、銀、亜鉛、鉛、ビスマス、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、チタニウム、ゲルマニウムなどの金属、これらの合金を用いることができる。こうした中でも深絞り加工が施される場合には、蒸着法またはスパッタリング法で形成した不連続蒸着層3とすることが好ましい。不連続蒸着層とすれば、深絞りを施しても金属層の視認性に変化がなく、高品質の金属光沢を成形加工の前後で維持することができる。
ここで不連続蒸着層とは、蒸着膜を電子顕微鏡で観察するとフィルムの表面に無数の小さな金属粒子が散在し全体的に一様に見えるのではなく、金属粒子がまとまった島状部分が生じ、蒸着膜の表面にクラックが入ったように見える層をいうものである。不連続金属層として形成できる金属の種類には、インジウムの他、錫、亜鉛、鉛、ビスマス、および、これらの金属を含む合金が挙げられる。なお、上記島状部分の粒径は平均して100nm〜300nm程度が好ましい。
金属層の厚さは、20nm〜100nmが好ましい。20nmより薄いと金属調といえる程度に十分な金属光沢を得ることができず、黒みがかった発色を呈してしまうことがある。100nmを超えると連続層が形成され始め、金属調加飾フィルムを深絞り加工する際に金属層にマイクロクラックが生じてしまい白濁した金属光沢になるおそれがある。
なお、深絞りとは、所定の成形部分に対する絞り程度が高いことをいい、例えば、成形部位を円に換算した場合の口径に対する絞り高さの比を絞り比として、その値が0.1以上であることをいう。例えば、断面凸状の押釦スイッチ用キートップで、円形の天面の直径を8mmとし、その高さを2mmとすれば、絞り比は0.25となる。
【0028】
金属層3と表面フィルム2との固着力を高めるために、必要に応じて、両者間にベースコート層を設けることができる。このベースコート層は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、エーテル樹脂、硝化綿(ニトロセルロース)樹脂などでなり、蒸発乾燥型、紫外線硬化型、加熱硬化型などの種々のタイプから選択して用いることができる。なかでも、金属調加飾フィルムの変形に追従できロックウェル硬さがHRR100以上となるアクリル樹脂、ウレタン樹脂が好ましい。
【0029】
裏面フィルム5: 裏面フィルム5は、金属調加飾フィルム1を樹脂成形体に固着させるために必要な層として設けられるものである。また、裏面フィルム5は、表面フィルム2が比較的硬く成形性が悪いフィルムを用いるため、その成形性の悪さを補い、さらに戻り変形を起こし難い性質の樹脂フィルムが利用される。
こうした樹脂フィルムの性質の指標として、戻り応力(残留応力)の小ささが挙げられる。戻り応力が大きいと変形しても元に戻ろうとして金属調加飾フィルム1の絞り形状が安定しなくなるからである。こうした観点から、裏面フィルム5には表面フィルム2より戻り応力の小さい低結晶性の樹脂を用いるか、非結晶性の樹脂を用いることが望ましい。
そうした一方で、裏面フィルム5の硬度もまた製品硬度に影響を及ぼすため、ロックウェル硬さでHRR100以上であることが要求される。ロックウェル硬さがHRR100以上でないと、本来充分な硬さを備える表面フィルムを用いても表面に凹みが生じ元に戻らない現象が起きることがあり、こうした現象を起こしにくくして硬い表面を得るためである。
【0030】
裏面フィルム5の厚さは、成形加工性の観点から10μm〜500μmとすることができるが、表面フィルム2の厚さの2倍以上であり、且つ400μm以下であることが好ましい。表面フィルムの厚さの2倍以上としたのは、表面フィルム2の成形性の悪さを補うことができ、深絞り成形後の形状を維持しやすくすることができるからである。また、裏面フィルム5の厚さを400μm以下としたのは、400μmを超えると成形加工性が悪くなり、また、金属調加飾フィルム1全体の厚みが厚くなってしまい、精細な凹凸加工が困難になるからである。
裏面フィルム5の材質としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、APET樹脂、ABS樹脂、またはこれらを含むアロイ樹脂や変性樹脂などが挙げられる。
さらに、裏面フィルム5は、その成形加工性の観点から見ると、非結晶性の樹脂フィルムを用いることが好ましい。
【0031】
接着層4: 接着層4は、金属担持フィルムとカバーフィルムとを固着するものであるが、より具体的には金属層3とカバーフィルムとを固着する層である。すなわち、金属層3とカバーフィルムとの固着力を有する接着剤で形成されることが必要である。また、後に金属調加飾フィルム1は樹脂成形体と一体化加工されるため、立体形状に絞り加工されても耐えるだけの柔軟性が要求される。さらに、金属調加飾樹脂成形体となった場合には、その表面硬度が求められることから、ある程度の硬さを備えることも要求される。
したがって、まず、金属担持フィルム(ここでは表面フィルム2)とカバーフィルム(ここでは裏面フィルム5)の固着後の接着層の硬度が、ロックウェル硬さでHRR50より小さい硬度であることが必要である。HRR50以上であると、仮絞りや、樹脂成形体と一体化する際の成形加工時に接着層4が割れを起こしたり、金属担持フィルムとカバーフィルムが剥がれたりするおそれがあり、成形加工性が悪くなって、十分な成形ができずに不良品を製造するおそれがあるからである。
【0032】
さらに接着層4には、金属調加飾フィルム1として取扱い可能であるように、金属担持フィルムとカバーフィルムとは容易に剥離しない程度の固着力が要求される。そのため、表面フィルム2と裏面フィルム5との剥離試験を行った際の剥離強度は0.016kN/m以上であることが好ましい。0.016kN/mより小さいと、金属調加飾フィルム1の取扱い時に表面フィルム2と裏面フィルム5とが剥がれるおそれがあり、また、成形加工時に表面フィルム2が樹脂成形体の形状に追随せず、いびつな形状になる可能性があるからである。ここで剥離強度は、JIS K6854−3に基づいたT型はく離試験によって測定した値である。
さらに、所定の硬化処理後のロックウェル硬さでHRR100以上となることが必要である。HRR100以上でなければ、表面フィルム2の硬度がいくら硬くとも表面に凹みが生じ元に戻らない現象が起きることがあるからであり、こうした現象を起こしにくくして硬い表面を得るためである。即ち、HRR100以上でなければ、金属調加飾樹脂成形体となった際の表面硬度が不足し、充分な耐久性の加飾成形体を与えることができないからである。
【0033】
こうした接着層4に用いられる接着剤には次のようなものが挙げられる。以下、タイプに分けて説明するが、いずれのタイプにおいても、金属調加飾フィルム1の製造時、即ち、金属担持フィルムと、カバーフィルムを固着して金属調加飾フィルム1が得られた際の性状(第1段階)と、樹脂成形体と一体化する際、またはその後など、金属調加飾フィルム1に対してさらに後工程を施して所定の硬化反応をおこした際の性状(第2段階)とに分けて説明する。
(1)ワンタイプ型接着剤;
まず第1のタイプとして、一種類の接着剤でなり、第1段階では硬化反応を起こさずとも金属担持フィルムとカバーフィルムを固着する粘着性または接着性を有し、第2段階では所定の硬化反応により硬化する種類の接着剤が挙げられる。
なお、二液反応型接着剤であっても二液で接着剤となる場合には二液で一種類の接着剤であり、また、複数の異なる反応が組み合わされて連動して硬化が起こるような場合でも、そうした一連の反応をまとめた一つの反応と見ることができれば、こうした反応を起こす全ての原料を含めて一種類の接着剤ということができる。
(2)固着型+硬化型→接着剤;
次に第2のタイプとして、少なくとも二種類の接着剤でなり、第1段階では粘着性を有するか、または溶剤の揮発など未反応で固化して固着性を有する第一の接着剤が寄与してフィルムどうしを固着し、第2段階では所定の硬化反応により硬化する第二の接着剤が寄与して接着剤全体を硬化するような、複数の接着剤を混合したタイプの接着剤が挙げられる。
反応硬化型接着剤一種類では、硬化前の状態で金属担持フィルムとカバーフィルムとの接着力がない場合に、通常の接着剤を併用する場合などがあり得るため、こうしたタイプの接着剤には、反応硬化型接着剤に、通常の粘着剤や溶剤揮発型接着剤を混合してなる接着剤が挙げられる。
(3)硬化型+硬化型→接着剤;
次に第3のタイプとして、少なくとも二種類の接着剤でなり、第1段階で所定の硬化反応を起こして固着性を有する第一の接着剤が寄与して金属担持フィルムとカバーフィルムとを固着し、第2段階では、第1段階とは異なる硬化反応により硬化する第二の接着剤が寄与して接着層全体を硬化するような、複数の接着剤を混合したタイプの接着剤が挙げられる。
こうしたタイプの接着剤には、硬化反応が異なる2種の接着剤を混合した接着剤が挙げられ、例えば熱硬化型接着剤と紫外線硬化型接着剤とを混合した接着剤や、硬化反応の条件が異なる2種の接着剤を混合した接着剤が挙げられる。後者については、ある温度で硬化する熱硬化型接着剤と、その温度より高温で硬化する熱硬化型接着剤とを混合した接着剤が挙げられる。
【0034】
第1のタイプの接着剤としては、粘着性があるか、溶剤に希釈して塗布した場合に溶剤が揮発するまでにフィルムとの接着性を備え、2液硬化型、熱硬化型、紫外線硬化型などの活性エネルギー線硬化型などの種々の硬化反応で硬化するウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂などでなる反応硬化型接着剤が挙げられる。
第2のタイプの接着剤としては、第1の接着剤としてポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリアミド系、ポリ塩化ビニル系、スチレン−ブタジエンゴム系、アクリル系、スチレン系、セルロース系、アルキド系、ポリ酢酸ビニル系、エチレン酢酸ビニル共重合体系、ポリビニルアルコール系、エポキシ系、シリコーン系、天然ゴム、合成ゴムなどの樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどでなる粘着剤や溶剤揮発型接着剤などが挙げられ、第2の接着剤として、2液硬化型、熱硬化型、紫外線硬化型などの活性エネルギー線硬化型などの種々の硬化反応で硬化するウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂などの反応硬化型接着剤が挙げられるので、これらの第1の接着剤と第2の接着剤を混合した接着剤が挙げられる。
第3のタイプの接着剤としては、第1の接着剤として2液硬化型、熱硬化型、紫外線硬化型などの活性エネルギー線硬化型などの種々の硬化反応で硬化するウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂などの反応硬化型接着剤に、第2の接着剤として、これら第1の接着剤とは異なる反応で硬化する二液硬化型、熱硬化型、紫外線硬化型などの活性エネルギー線硬化型などの種々の硬化反応で硬化するウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂などの反応硬化型接着剤が挙げられるので、これらの第1の接着剤と第2の接着剤を混合した接着剤が挙げられる。
また、硬化温度が異なる2種類の接着剤を混合した接着剤が挙げられる。
接着層4の厚さは10μm〜100μm程度である。10μmより薄いと接着力が不十分になることが多く、100μmを超えると成形加工性が悪くなるからである。
【0035】
金属調加飾フィルム1の製造方法について説明する。
先ず図2で示すように、ここでは表面フィルム2となる金属担持フィルムの片面に、真空蒸着法、スパッタリング法などで金属層3を形成する。次に、裏面フィルム5となるカバーフィルムの片面に、接着層4となる接着剤を塗布する。最後に図3で示すように、金属層3と接着層4とを対向させて表面フィルム2と裏面フィルム5とを固着して金属調加飾フィルム1を得る。
なお、この工程の中で、用いる接着剤の種類によって次のような処理を付加する必要がある。即ち、上記第3のタイプの接着剤では、表面フィルム2と裏面フィルム5とを固着する際にその接着剤の材質に応じた固化反応を行う必要があるため、両フィルムをラミネートしたり、圧着したり、紫外線照射をしたりして固着する必要がある。
【0036】
金属調加飾フィルム1によれば、所定の接着層4を備えるため、立体的な形状に変形させても接着層4に亀裂が生じにくく、金属層3の金属光沢が悪化し難い。
そして金属調加飾フィルム1を樹脂成形体12と一体化させて接着層4を硬化させることができ、金属調加飾フィルム1の表面硬度を高くすることができる。よって金属光沢に優れ表面硬度の高い金属調加飾フィルム1を実現することができる。
【0037】
第2実施形態〔図4〜図15〕;金属調加飾樹脂成形体
金属調加飾フィルム1を備える金属調加飾樹脂成形体11について説明する。
図4には金属調加飾樹脂成形体11の断面図を示す。
金属調加飾樹脂成形体11は、金属調加飾フィルム1と樹脂成形体12とを備えている。即ち、金属調加飾フィルム1の裏面フィルム5が樹脂成形体12の表面に固着し、金属調加飾フィルム1で樹脂成形体12を加飾している。
【0038】
樹脂成形体12は、金属調加飾樹脂成形体11の基体となる部分であり、この実施形態では円錐台形状としている。
樹脂成形体12には、熱可塑性樹脂や反応硬化性樹脂を用いることができる。こうした樹脂には、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
樹脂成形体12と金属調加飾フィルム1とを固着しにくい場合には、両者を接着剤で固着することができる。しかしながら、樹脂成形体12を裏面フィルム5と同材質のもの、あるいは、樹脂成形体12を接着性があるものとすれば、接着剤を用いることなく、金属調加飾フィルム1と樹脂成形体12との一体成形を行うこともできる。
【0039】
金属調加飾樹脂成形体11の製造方法について、いくつかの例を示して説明する。
製造方法(1);〔図5〜図9〕
先ず、大判でシート状の金属調加飾フィルム1を、圧縮ボックス13を用いた圧空成形法で仮絞りする工程を実行する。
最初にシート状の金属調加飾フィルム1をヒーターなどにより加熱軟化させる。次に図5で示すように、圧縮ボックス13の内部に加熱軟化した金属調加飾フィルム1と雄型14をセットして、圧縮ボックス13の注入口13aより圧縮空気を矢示方向に流し込み、金属調加飾フィルム1の裏面フィルム5を雄型14に密着させる。この雄型14は、樹脂成形体12の外形形状と略同形状の頭部14aを有している。その後金属調加飾フィルム1を冷却して圧縮ボックス13から取り出す。こうして金属調加飾フィルム1を樹脂成形体12に対応する立体形状に仮絞りする。なお、こうした圧空成形法を用いているが、プレス成形法、真空成形法を用いることもできる。
その後、図6で示すように、切断具15を用いて金属調加飾フィルム1の余分な部分を切断する。
【0040】
次に、絞り変形した金属調加飾フィルム1と樹脂成形体12との一体成形工程を実行する。
図7で示すように、立体形状の金属調加飾フィルム1を、移動側の成形金型16に設けたキャビティ16aにインサートする。そして、成形金型16を固定側の成形金型17に移動する。成形金型16,17を閉じた後に、成形金型17の注入口17aより溶融樹脂を流し込み、樹脂成形体12を成形して、金属調加飾フィルム1と樹脂成形体12とを一体成形する。その後、図8で示すように、成形金型16を移動して成形金型16,17を開き、金属調加飾フィルム1と樹脂成形体12との一体成形品を脱型する。
本実施形態では、こうした射出成形法で樹脂成形体12を形成しているが、圧縮成形法で樹脂成形体12を形成することもできる。
【0041】
最後に、金属調加飾フィルム1の最終硬化工程を実行する。ここでは金属調加飾フィルム1の接着層4に熱硬化型の接着剤を含む第1のタイプの接着剤を用いている場合について説明する。
図9で示すように、金属調加飾フィルム1と樹脂成形体12との一体成形品を硬化金型18の凹部18aにセットし、硬化金型18,19を閉じる。そして硬化金型18,19を特定温度以上に加熱し、金属調加飾フィルム1の接着層4を最終硬化させる。その後、硬化金型18,19を開き、金属調加飾樹脂成形体11を脱型する。こうして金属調加飾樹脂成形体11を得る。
なお、本実施形態では、金属調加飾フィルム1と樹脂成形体12との一体成形工程の後に最終硬化工程を実行しているが、一体成形工程の際に、溶融樹脂が金属調加飾フィルム1を特定温度以上に加熱できる場合は、一体成形工程と最終硬化工程とを同時に実行することができる。また、最終硬化工程では、硬化金型を用いずに高温槽などで加熱処理することもできる。
【0042】
なお、金属調加飾フィルム1の接着層、4に紫外線硬化型の接着剤を含む第1のタイプの接着剤を用いるような場合には、図9で示す上述の熱硬化処理に代えて、紫外線硬化処理を行う。
【0043】
こうした製造方法によれば、金属調加飾フィルム1を立体的に変形する際に、接着層4に亀裂が入りにくく、金属層3の金属光沢を維持することができる。そして、表面硬度を高くすることができる。
【0044】
製造方法(2);〔図10、図11〕
また、こうした製造方法に代えて、樹脂成形体12に紫外線硬化型樹脂を用いると、次の方法で金属調加飾樹脂成形体21を得ることができる。
まず、上述の製造方法と同様に、図5〜図6に示した工程を実行し金属調加飾フィルム1を仮絞りする。次に、図10で示すように、立体形状の金属調加飾フィルム1を、樹脂成形体12を成形する成形治具22の凹部22aにセットする。そして、立体形状の金属調加飾フィルム1内にディスペンサー23を用いて紫外線硬化型接着剤である液状樹脂を注入する。図11で示すように、紫外線ランプ24を用いて液状樹脂および金属調加飾フィルム1に紫外線を照射し、樹脂成形体12の成形、金属調加飾フィルム1と樹脂成形体12との一体成形、金属調加飾フィルム1の最終硬化を同時に行う。その後、成形治具22から金属調加飾樹脂成形体21を取り出す。こうして既に接着層4が硬化した金属調加飾樹脂成形体21を得ることができる。
【0045】
なお、接着層4が他の反応硬化型接着剤を含む場合は、上述の熱硬化処理や紫外線照射処理に代えて、その接着剤の種類に応じた硬化反応を行わせる処理を行う。
【0046】
こうした製造方法によれば、金属調加飾フィルム1を立体的に変形する際に、接着層4に亀裂が入りにくく、金属層3の金属光沢を維持することができる。そして、表面硬度を高くすることができる。
【0047】
製造方法(3);〔図12〜図15〕
図12で示した金属調加飾樹脂成形体31の製造方法について説明する。
樹脂成形体12は、円錐台形状に形成され、下端には外方へ突出する環状の鍔部32aが設けられた構造をしており、金属調加飾フィルム1の裏面フィルム5が鍔部32aを含む樹脂成形体12の表面に固着している。
【0048】
ここで示す製造方法では、金属調加飾フィルム1と樹脂成形体12との一体成形工程と金属調加飾フィルム1の最終硬化工程を同時に実行する。
先ず図13で示すように、樹脂成形体12を成形する移動側の成形金型33を固定側の成形金型34へ移動させ、大判でシート状の金属調加飾フィルム1を表面フィルム2が成形金型33に対向するように挟持して成形金型33,34を閉じる。そして、成形金型34の注入口34aより溶融樹脂を流し込み、この溶融樹脂の熱と圧力で金属調加飾フィルム1を成形金型33のキャビティ面33aと沿うように変形させながら樹脂成形体12を成形して、金属調加飾フィルム1と樹脂成形体12とを一体成形する。
金属調加飾フィルム1の接着層4には、マイクロカプセル中に硬化剤を含んでおり、マイクロカプセルの破壊によって硬化剤が硬化反応を開始するマイクロカプセル化硬化剤を含んでいる。そのため、溶融樹脂の圧力を受けてマイクロカプセルが壊れ金属調加飾フィルム1の硬化剤を最終硬化させる。その後、図14で示すように、成形金型33を開き、金属調加飾フィルム1と樹脂成形体12との一体成形品を脱型する。
なお、射出成形法に代えて圧縮成形法を用いることもできる。
最後に図15で示すように、抜き刃35を用いて金属調加飾フィルム1と樹脂成形体12との一体成形品から金属調加飾フィルム1の余分な部分を切断する。こうして金属調加飾樹脂成形体31を得る。
【0049】
こうした製造方法によれば、金属調加飾フィルム1を立体的に変形する際に、接着層4に亀裂が入りにくく、金属層3の金属光沢を維持することができる。そして、表面硬度を高くすることができる。
【0050】
上記製造方法(1),(2)で鍔部のない金属調加飾樹脂成形体11,21を製造し、上記製造方法(3)で鍔部32aのある金属調加飾樹脂成形体31を製造する例をそれぞれ示したが、金属調加飾樹脂成形体の形状は任意であり、例えば、上記製造方法(1),(2)で金属調加飾樹脂成形体31を製造することができるし、上記製造方法(3)で金属調加飾樹脂成形体11,21も製造することができる。
このように、各製造方法で示した各過程も、各製造方法ごとに適宜、変更、追加して
行うことができる。
【実施例】
【0051】
次に、実験例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
【0052】
実験例1;金属調加飾フィルム(1)の製造
次に示す材料にて例1−1〜例1−8で示すように金属調加飾フィルム(1)を製造した。
表面フィルム(2)には、鉛筆硬度2Hで、厚さ75μmの透明なポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを、金属層(3)には、厚さ50nm〜60nmのインジウムでなる不連続蒸着層を、裏面フィルム(5)には、ロックウェル硬さがHRR123で、厚さが200μmの透明なポリカーボネート樹脂フィルムを、それぞれ用いた。また、接着層(4)を構成する接着剤には、次に示す例ごとに異なる接着剤を用いた。
【0053】
例1−1
先ず、表面フィルム(2)の片面に、真空蒸着法で金属層(3)を形成した。次に、裏面フィルム(5)の片面に、120℃以上で反応を開始するブロックイソシアネート硬化剤を含み粘着性を有するウレタン系熱硬化型接着剤を、厚さが15μmに塗布形成して接着層(4)を得た。そして、金属層(3)と接着層(4)とを対向させ、表面フィルム(2)と裏面フィルム(5)とを100℃以下でラミネートし、ブロックイソシアネート硬化剤は硬化反応させずに接着層(4)の粘着性で金属層(3)と裏面フィルム(5)とを固着した。こうして、金属調加飾フィルム(1)を試料1として得た。なお、表面フィルム(2)と裏面フィルム(5)との剥離試験によれば、その剥離強度は0.016kN/m以上であった。また、別途接着層(4)と同様のウレタン系熱硬化型接着剤を厚さ15μmに塗布形成して得た皮膜の硬化前のロックウェル硬さはHRR50未満であり、120℃以上で硬化させた後のロックウェル硬さはHRR100以上であった。
【0054】
例1−2
例1−1で用いた接着層(4)となる接着剤に代えて、120℃以上で溶解するマイクロカプセル内に常温で反応するイソシアネートを封入したマイクロカプセル化硬化剤を含み粘着性を有するウレタン系熱硬化型接着剤を用いた。
それ以外は例1−1と同様にして試料2とする金属調加飾フィルム(1)を得た。
試料2は、表面フィルム(2)と裏面フィルム(5)との剥離試験によれば、その剥離強度は0.016kN/m以上であった。また、別途この接着剤を塗布形成して得た皮膜の硬化前のロックウェル硬さはHRR50未満であり、120℃以上で硬化させた後のロックウェル硬さはHRR100以上であった。
【0055】
例1−3
例1−1で用いた接着層(4)となる接着剤に代えて、圧力で壊れるマイクロカプセル内に常温で反応するイソシアネートを封入したマイクロカプセル化硬化剤を含み粘着性を有するウレタン系熱硬化型接着剤を用いた。
それ以外は例1−1と同様にして試料3とする金属調加飾フィルム(1)を得た。
試料3は、表面フィルム(2)と裏面フィルム(5)との剥離試験によれば、その剥離強度は0.016kN/m以上であった。また、別途この接着剤を塗布形成して得た皮膜の硬化前のロックウェル硬さはHRR50未満であり、圧力を加えて硬化させた後のロックウェル硬さはHRR100以上であった。
【0056】
例1−4
例1−1で用いた接着層(4)となる接着剤をそのまま塗布形成することに代えて、溶剤に溶解して塗布して接着層(4)を形成した以外は例1−1と同様にして、試料4とする金属調加飾フィルム(1)を得た。試料4のフィルムの剥離強度、接着層(4)のロックウェル硬さは、試料1と同じであった。
【0057】
例1−5
例1−1で用いた接着層(4)となる接着剤に代えて、紫外線で硬化反応を開始する紫外線硬化剤を含むウレタン系紫外線硬化型接着剤を用い、溶剤で溶解して塗布した。ラミネートの際に、この接着剤が加熱軟化して発現する接着性にて金属層(3)と裏面フィルム(5)とを固着した。それ以外は例1−1と同様にして試料5とする金属調加飾フィルム(1)を得た。
試料5は、表面フィルム(2)と裏面フィルム(5)との剥離試験によれば、その剥離強度は0.016kN/m以上であった。また、別途この接着剤を塗布形成して得た皮膜の硬化前のロックウェル硬さはHRR50未満であり、紫外線照射して硬化させた後のロックウェル硬さはHRR100以上であった。
【0058】
例1−6
例1−1で用いた接着層(4)となる接着剤に代えて、常温で反応するイソシアネート硬化剤と120℃以上で硬化反応を開始するブロックイソシアネート硬化剤とを含むウレタン系熱硬化型接着剤を用いた。なお、このウレタン系熱硬化型接着剤は、例1−1で用いたウレタン系熱硬化型接着剤と異なり、硬化前は金属層(3)に対する接着性がほとんどない接着剤である。
ラミネートの際に常温で反応するイソシアネート硬化剤が反応し硬化して金属層(3)と裏面フィルム(5)とを固着した。それ以外は例1−1と同様にして試料6とする金属調加飾フィルム(1)を得た。
試料6は、表面フィルム(2)と裏面フィルム(5)との剥離試験によれば、その剥離強度は0.016kN/m以上であった。また、別途この接着剤を塗布形成して得た皮膜の硬化前のロックウェル硬さはHRR50未満であり、120℃以上で硬化させた後のロックウェル硬さはHRR100以上であった。
【0059】
例1−7
例1−1で用いた接着層(4)となる接着剤に代えて、紫外線で硬化反応を開始する紫外線硬化剤と120℃以上で反応を開始するブロックイソシアネート硬化剤とを含み、ポリオールの一部にアクリロイル基を備えたウレタン系硬化型接着剤を用いた。ラミネートは紫外線を照射しながら行った。この接着剤が紫外線硬化剤で硬化反応をし金属層(3)と裏面フィルム(5)とを固着した。それ以外は例1−1と同様にして試料7とする金属調加飾フィルム(1)を得た。
試料7は、表面フィルム(2)と裏面フィルム(5)との剥離試験によれば、その剥離強度は0.016kN/m以上であった。また、別途この接着剤を塗布形成して得た皮膜の熱硬化前のロックウェル硬さはHRR50未満であり、120℃以上で硬化させた後のロックウェル硬さはHRR100以上であった。
【0060】
例1−8
例1−1で用いた接着層(4)となる接着剤に代えて、常温で反応するイソシアネート硬化剤と紫外線で硬化反応を開始する紫外線硬化剤とを含み、ヒドロキシル基を備えた紫外線硬化型接着剤を用いた。ラミネートの際にこのイソシアネート硬化剤の硬化反応で金属層(3)と裏面フィルム(5)とを固着した。それ以外は例1−1と同様にして試料8とする金属調加飾フィルム(1)を得た。
試料8は、表面フィルム(2)と裏面フィルム(5)との剥離試験によれば、その剥離強度は0.016kN/m以上であった。また、別途この接着剤を塗布形成して得た皮膜の紫外線硬化前のロックウェル硬さはHRR50未満であり、紫外線を照射して硬化させた後のロックウェル硬さはHRR100以上であった。
【0061】
次に、例1−1〜例1−8で示す材料に代えてさらに別の金属調加飾フィルムを製造した。
例1−9
例1−1で用いた裏面フィルム(5)に代えて、ロックウェル硬さがHRR70であり厚さが200μmのポリプロピレンフィルムを用いた以外は例1−1と同様にして試料9とする金属調加飾フィルムを得た。試料9の表面フィルム(2)と裏面フィルムとの剥離強度、接着層(4)のロックウェル硬さは、試料1と同じであった。
例1−10
例1−1で用いたインジウム金属層(3)に代えて、インジウム金属層と同様にその層厚が50nm〜60nmとなるようにして、アルミニウム蒸着によるアルミニウム金属層(3)を設けた。それ以外は例1−1と同様にして試料10とする金属調加飾フィルム(1)を得た。試料10の表面フィルム(2)と裏面フィルム(5)との剥離強度、接着層(4)のロックウェル硬さは、試料1と同じであった。
例1−11
例1−1で用いた裏面フィルム(5)に代えて、その材質、硬さは同じであるが、その厚さが120μmである裏面フィルム(5)を用いた以外は例1−1と同様にして試料11とする金属調加飾フィルム(1)を得た。試料11の表面フィルム(2)と裏面フィルムとの剥離強度、接着層(4)のロックウェル硬さは、試料1と同じであった。
【0062】
実験例2;金属調加飾樹脂成形体(11)の製造
実験例1で製造した試料1〜試料11の金属調加飾フィルムを用い、樹脂成形体(12)と一体化して金属調加飾樹脂成形体を製造した。製造方法は後述するが、得られた金属調加飾樹脂成形体をそれぞれ、試料101〜試料111とした。
また、試料1と試料9については、これらの金属調加飾フィルム(1)を140℃で熱硬化させて接着層(4)を硬化させた別の金属調加飾フィルムを作製して、それぞれ試料12,試料13とし、これらの試料を樹脂成形体(12)と一体化して金属調加飾樹脂成形体を製造した。この金属調加飾樹脂成形体をそれぞれ試料112及び試料113とした。なお、試料12,試料13の接着層(4)のロックウェル硬さはHRR100以上であった。
【0063】
例2−1
大判でシート状の試料1,2,4,6,7,9,10,11及び、熱硬化後の試料12,13について圧空成形法による仮絞り工程を行った後、射出成形金型(16,17)にこれらの試料をインサートし、樹脂成形体(12)となる溶融樹脂をこの金型(16,17)に注入して金属調加飾フィルムと樹脂成形体(12)との一体成形工程を実行した。
脱型後、これら樹脂一体化試料を硬化金型(18,19)にセットし、120℃以上に加熱して試料に含まれるブロックイソシアネート硬化剤を硬化させて、それぞれ試料101,102,104,106,107,109,110,111,112,113とする金属調加飾樹脂成形体(11)を得た。
試料101,102,104,106,107,110,111の金属調加飾樹脂成形体(11)は、その表面に固着した試料1,2,4,6,7,10,11の金属光沢に優れ、フィルムや接着層(4)の割れや欠け、変色がなく、しかも表面の鉛筆硬度がH以上あり、鉛筆で表面を押圧しても凹みが観察されない金属調加飾樹脂成形体であった。
裏面フィルム(5)に軟らかいフィルムを用いた試料109の金属調加飾樹脂成形体は、その表面に固着した試料9の金属調加飾フィルムの金属光沢に優れ、フィルムや接着層(4)の割れや欠け、変色がなかったが、表面を硬度Hの鉛筆で鉛筆試験を行うと凹みが観察されて元に戻らないという不都合を生じた。
接着層(4)の硬化処理を施した金属調加飾フィルムを用いた試料112及び試料113の金属調加飾樹脂成形体は、樹脂成形体(12)との一体成形時に接着層(4)の割れを起こしてしまい、金属層(3)にもむらが見える不都合を生じた。また、裏面フィルム(5)に軟らかいフィルムを用いた試料113の金属調加飾樹脂成形体は、接着層(4)に割れを生じただけでなく、表面を硬度Hの鉛筆で鉛筆試験を行うと凹みが観察されて元に戻らないという不都合も生じた。
【0064】
例2−2
例2−1と同様にして、大判でシート状の試料5,8を仮絞り成形した。
次に、立体形状の試料5,8を、樹脂成形体(12)を成形する成形治具(22)の凹部(22a)にセットし、試料5,8内にディスペンサー(23)を用いて紫外線硬化型接着剤の液状樹脂を注入した。そして、紫外線ランプ(24)を用いて液状樹脂および試料5,8に紫外線を照射し、樹脂成形体(12)の成形、試料5,8と樹脂成形体(12)との一体成形に加え、試料5,8の接着層(4)を硬化させて、それぞれ試料105及び試料108とする金属調加飾樹脂成形体(11)を得た。
この金属調加飾樹脂成形体(11)は、その表面に固着した試料5,8の金属光沢に優れ、フィルムや接着層(4)の割れや欠け、変色がなく、しかも表面の鉛筆硬度がH以上あり、鉛筆で表面を押圧しても凹みが観察されない金属調加飾樹脂成形体であった。
【0065】
例2−3
大判でシート状の試料3について、樹脂成形体(12)との一体成形工程と、試料3の接着層(4)の硬化工程を同時に実行した。
まず、この試料3を表面フィルム(2)が成形金型(33)に対向するように挟持して成形金型(33,34)を閉じ、それに溶融樹脂を流し込み、この溶融樹脂の熱と圧力で試料3を成形金型(33)のキャビティ面(33a)に沿うように変形させながら樹脂成形体(12)を成形した。
この際、試料3と樹脂成形体(12)との一体成形に加え、溶融樹脂の圧力にてマイクロカプセル化硬化剤が硬化した。最後に余分な部分を切断して試料103とする金属調加飾樹脂成形体(11)を得た。
この金属調加飾樹脂成形体(11)は、その表面に固着した試料13の金属光沢に優れ、フィルムや接着層(4)の割れや欠け、変色がなく、しかも表面の鉛筆硬度がH以上あり、鉛筆で表面を押圧しても凹みが観察されない金属調加飾樹脂成形体であった。
【0066】
実験例3;深絞りした金属調加飾樹脂成形体(11)の製造
実験例2で用いた試料1〜試料13の金属調加飾フィルムを使って、実験例2と同様にして金属調加飾樹脂成形体を製造したが、実験例2と異なり本実験例では、金属調加飾樹脂成形体の絞り成形において、絞り比が0.25となるような深絞りを行った。
アルミニウム金属層を用いた試料10、裏面フィルムの層厚を120μmと薄くした試料11を用いて製造した試料110及び試料111以外は、実験例1と同じ結果であった。
しかしながら、試料110については、金属層(3)が割れたように、白化して見える部分が生じてしまった。また、試料111については、深絞りした仮絞り工程後、樹脂成形体(12)と一体化する前に試料111が戻り変形してしまっていた。そのため射出成形金型(16,17)の形状と合わず、射出成形した際に金属調加飾成形体の角部分などが白化し、成形体の一部にしわが入った金属調加飾樹脂成形体となった。
【符号の説明】
【0067】
1 金属調加飾フィルム(第1実施形態)
2 表面フィルム
3 金属層
4 接着層
5 裏面フィルム
11,21,31 金属調加飾樹脂成形体(第2実施形態)
12 樹脂成形体
12a 鍔部
13 圧縮ボックス
13a 注入口
14 雄型
14a 頭部
15 切断具
16 成形金型
16a キャビティ
17 成形金型
17a 注入口
18 硬化金型
18a 凹部
19 硬化金型
22 成形治具
22a 凹部
23 ディスペンサー
24 紫外線ランプ
33 成形金型
33a キャビティ面
34 成形金型
34a 注入口
35 抜き刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層が付着した金属担持フィルムと、金属層を保護するカバーフィルム、及びこの金属担持フィルムとカバーフィルムとを固着する接着層を少なくとも有する金属調加飾フィルムにおいて、
金属担持フィルムまたはカバーフィルムの何れか一方である表面フィルムの鉛筆硬度がH以上であり、
金属担持フィルムまたはカバーフィルムの何れか他方である裏面フィルムのロックウェル硬さがHRR100以上であって、表面フィルムよりも絞り成形時に変形し易い樹脂フィルムでなり、
接着層が、ロックウェル硬さでHRR50より小さい硬度を有しながら、所定の硬化処理後にロックウェル硬さでHRR100以上となる硬化型接着剤でなる接着層であり、
金属担持フィルムとカバーフィルムとが固着してあり、絞り成形可能なことを特徴とする金属調加飾フィルム。
【請求項2】
接着層が、加熱、加圧、活性エネルギー線照射から選択される少なくとも一の硬化反応により硬化する反応硬化型接着剤でなる請求項1記載の金属調加飾フィルム。
【請求項3】
接着層が、硬化剤を内包するマイクロカプセルを含む反応硬化型接着剤でなる請求項1または請求項2記載の金属調加飾フィルム。
【請求項4】
金属層がインジウムでなる不連続蒸着層である請求項1〜請求項3何れか1項記載の金属調加飾フィルム。
【請求項5】
裏面フィルムの厚みが表面フィルムの2倍以上であり、且つ400μm以下である請求項1〜請求項4何れか1項記載の金属調加飾フィルム。
【請求項6】
請求項1〜請求項5何れか1項記載の金属調加飾フィルムの裏面フィルムが、樹脂成形体の表面に固着して加飾する金属調加飾樹脂成形体。
【請求項7】
請求項1〜請求項5何れか1項記載の金属調加飾フィルムの裏面フィルムが、樹脂成形体の表面に固着して加飾する金属調加飾樹脂成形体の製造方法において、
該金属調加飾フィルムを樹脂成形体の表面形状に沿った立体形状に仮絞りした後、仮絞りした金属調加飾フィルムと樹脂成形体とを一体化するとともに、金属調加飾フィルムの接着層に硬化処理を施して、この接着層をロックウェル硬さでHRR100以上に硬化させることを特徴とする金属調加飾樹脂成形体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項5何れか1項記載の金属調加飾フィルムの裏面フィルムが、樹脂成形体の表面に固着して加飾する金属調加飾樹脂成形体の製造方法において、
該金属調加飾フィルムを平板形状のまま樹脂成形体と一体化するとともに、金属調加飾フィルムの接着層に硬化処理を施して、この接着層をロックウェル硬さでHRR100以上に硬化させることを特徴とする金属調加飾樹脂成形体の製造方法。
【請求項9】
金属調加飾フィルムに対して絞り比が0.1〜0.5である深絞りを施す請求項7または請求項8記載の金属調加飾樹脂成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−857(P2011−857A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147701(P2009−147701)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】