説明

金属部品の洗浄方法および洗浄装置

【課題】付帯設備の少ない洗浄装置で効率よく洗浄でき、洗浄作業や保守点検作業等の経費を節減可能な金属部品の洗浄方法および洗浄装置を提供する。
【解決手段】金属製の被洗浄対象部品1の表面の付着物を除去する金属部品の洗浄方法であって、陽極8aおよび陰極8bを挿入した洗浄液中に直流電圧を印加処理して洗浄液を調製する洗浄液調製工程と、調製された洗浄液中で上記被洗浄対象部品を超音波洗浄する超音波洗浄工程とを備えてなり、洗浄液調整工程と超音波洗浄工程とが異なる槽内で行なわれ、洗浄液調製槽3での洗浄液調整工程で調整された洗浄用水溶液を、超音波洗浄工程を行なう洗浄槽4に循環供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸受を始めとする精密金属部品の製造における部品単体および組立完成品の洗浄工程に適用される金属部品の洗浄方法および洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受等の金属部品(部品単体および組立完成品を含む)の製造においては、その最終工程で金属部品の表面に付着するごみや油分を除去する洗浄工程が組み込まれる。このような洗浄工程に適用される洗浄方法として、例えば、金型の超音波洗浄を併用した電解洗浄装置において、給電機構を改良して簡単確実に洗浄作業が行なえるとともに、金型を揺動させても電極と接触する問題、導電回路への腐食発生の問題等をなくすことを狙った電解洗浄装置(特許文献1参照)が知られている。
【0003】
この電解洗浄装置は、電解洗浄液を収容する洗浄槽内に被洗浄物である金型を金属製カゴに保持して電解洗浄液に浸漬するとともに、該洗浄槽内に電極材を吊り下げ、該電極材と上記金属製カゴとを電源のプラス側とマイナス側とに接続し、上記電解洗浄液を介して通電して上記金型の電解洗浄を行なう装置であり、上記電極材は、洗浄槽の上方に架け渡される通電支持棒に所定間隔をあけて複数設けられ、各電極材は、上記金属製カゴに保持される上記金型の上方に吊り下げられるとともに、それぞれ上下高さ調整可能に取付けられ、電源側から、上記各電極材、電解洗浄液、金属製カゴに保持される金型および金属製カゴへと通電する回路中に、電解洗浄の際に上記金型が上記各電極材と接触あるいは急接近することによって設定値以上の電流が流れると通電を遮断する回路を備えている。
【特許文献1】特許第3982885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、(1)製品をマイナス極にして直流電圧を印加する必要が生じるので、このような設備を備えた特殊な洗浄容器が必要となる、(2)マイナス極に接続する製品から水素ガスが発生するので、製品の水素吸蔵量が大きくなり水素脆性の問題が生じる、(3)洗浄槽から水素、酸素ガスが発生するため洗浄槽に排気装置を設置する必要がある、(4)製品をマイナス極にするので製品に不純物が析出する、こと等が挙げられる。これらのことから、付帯設備の多い特殊な洗浄装置となるため設備費が増大することに加えて煩雑な洗浄作業や保守点検作業等の経費が増加するという問題がある。
【0005】
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、付帯設備の少ない洗浄装置で効率よく洗浄でき、洗浄作業や保守点検作業等の経費を節減可能な金属部品の洗浄方法および洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の金属部品の洗浄方法は、金属製の被洗浄対象部品の表面の付着物を除去する金属部品の洗浄方法であって、洗浄用水溶液(以下、単に「洗浄液」ともいう)中に陽極および陰極を挿入し直流電圧を印加処理して洗浄用水溶液を調製する洗浄液調製工程と、調製された洗浄用水溶液中で上記被洗浄対象部品を超音波洗浄する超音波洗浄工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記洗浄液調整工程と上記超音波洗浄工程とが異なる槽内で行なわれ、上記洗浄液調整工程で調整された洗浄用水溶液を、上記超音波洗浄工程を行なう槽内に循環供給することを特徴とする。
【0008】
上記被洗浄対象部品の表面の付着物は、金属酸化スケール、油の酸化物、研削カス、砥石カス、防錆油残渣、クーラント残渣であることを特徴とする。
【0009】
上記洗浄用水溶液は、塩基性成分を含有することを特徴とする。特に、上記塩基性成分は、水酸化ナトリウムであることを特徴とする。
【0010】
上記金属部品は、軸受であることを特徴とする。
【0011】
本発明の金属部品の洗浄装置は、上記金属部品の洗浄方法を行なうための洗浄装置であって、該洗浄装置は、陽極および陰極を挿入した洗浄用水溶液中に直流電圧を印加処理して洗浄用水溶液を調製する洗浄液調製槽と、該洗浄液調製槽から供給される調製済みの洗浄用水溶液中で上記被洗浄対象部品を超音波洗浄する洗浄槽とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属部品の洗浄方法は、金属製の被洗浄対象部品の表面の付着物を除去する金属部品の洗浄方法であって、陽極および陰極を挿入した洗浄用水溶液中に直流電圧を印加処理して洗浄用水溶液を調製する洗浄液調製工程と、調製された洗浄用水溶液中で上記被洗浄対象部品を超音波洗浄する超音波洗浄工程とを備えるので、以下に示すように、洗浄能力の高い洗浄用水溶液を調製することができ、この洗浄用水溶液を用いて効率よく洗浄することができる。また、金属部品に通電する必要がないので、金属部品表面における水素脆性、不純物の析出の問題が生じない。
【0013】
洗浄用水溶液に対し直流電圧を印加処理することで洗浄用水溶液中に陰極より水素、陽極より酸素の気泡が発生できるようになる。この気泡は直径が数μm 程度まで含んでおり、浮上力が小さいために直ぐには上昇せずに洗浄液中に溶解したり、長時間滞在できるようになる。この現象を利用し気体溶存率を急激に高くすることで洗浄液中のヒドロキシラジカル、水素ラジカルの量を大きくでき、かつ超音波洗浄を行なうと洗浄対象部品表面で水素および酸素のバブルが発生しやすくなり洗浄能力を向上できると考えられる。この結果、例えば、軸受の焼入れ工程で発生する金属酸化スケール、油の酸化物などの強固な付着物であっても簡易に除去できる。
【0014】
本発明の金属部品の洗浄装置は、陽極および陰極を挿入した洗浄用水溶液中に直流電圧を印加処理して洗浄用水溶液を調製する洗浄液調製槽と、該洗浄液調製槽から供給される調製済みの洗浄用水溶液中で上記被洗浄対象部品を超音波洗浄する洗浄槽とを備えるので、洗浄槽に製品に直流電圧を印加する設備が必要なく、また、電気分解は洗浄液調整層で行なうため、洗浄槽に排気装置を設置する必要がない。このため、付帯設備の少ない洗浄装置で効率よく洗浄でき、洗浄作業や保守点検作業等の経費を節減可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の金属部品の洗浄方法は、金属部品の表面に強固に付着している汚れを超音波洗浄する際に、予め洗浄液調製工程において調製した高い洗浄能力を有する洗浄液を用いて、効率よく金属部品の表面の汚れを除去することに特徴がある。また、上記の工程後に、超音波洗浄した被洗浄対象部品に付着している洗浄液残渣を水洗して水洗済み部品を得る水洗工程と、水洗済み部品を乾燥する乾燥工程を適宜行なう。
【0016】
本発明の金属部品の洗浄方法および洗浄装置の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の洗浄装置の一実施形態を示す模式図である。図1に示す洗浄液調製槽3にて上記洗浄液調製工程が、洗浄槽4にて上記超音波洗浄工程が、水洗槽5にて上記水洗工程が、乾燥槽6にて上記乾燥工程が、逐次実施される。なお、図2は水洗工程を、図3は乾燥工程を示す模式図である。
【0017】
本発明の金属部品の洗浄装置の一実施形態である洗浄装置は、図1に示すように、オーバーフロー液戻槽2および12と、洗浄液調製槽3と、洗浄槽4と、水洗槽5と、乾燥槽6とを備える。オーバーフロー液戻槽2および洗浄液調製槽3と、洗浄槽4との間の隔壁は底部に開口部を有する。また、この洗浄装置は、所定数量の被洗浄対象部品1を支持しこれら各槽3、4、5、6間を移動する部品支持部材7と、この部品支持部材7を支持し、この部品支持部材7を走行可能に支持する搬送装置7dとを備える。
【0018】
洗浄液調製槽3には、洗浄液(洗浄用水溶液)が常時満たされており、洗浄液調製槽3の側部近傍には、洗浄液調製用の陽極8aと、陰極8bと、その電源装置8が配備されている。洗浄液調製槽3は開口部を有する隔壁を介してオーバーフロー液戻槽2に内包される。
【0019】
洗浄槽4の側部近傍の底壁部には超音波発振装置10が設置されている。この超音波発振装置10の設置箇所は側壁部であってもよい。洗浄槽4は被洗浄対象部品1を収容する部品支持部材7を洗浄液に浸漬可能なスペースを有し、部品支持部材7の浸漬、洗浄に伴い油分や異物を含んでオーバーフローする洗浄液を受け入れるためのオーバーフロー液戻槽12に隣接している。オーバーフローした洗浄液中の油分は洗浄液調整槽3を経由しオーバーフロー液戻槽2の洗浄液の上層に浮上する。
【0020】
これらオーバーフロー液戻槽2、オーバーフロー液戻槽12、洗浄液調製槽3、洗浄槽4の隔壁に設けられた開口部の矢印方向に、洗浄液が移送循環ポンプ(図示せず)を介して移送循環される。オーバーフロー液戻槽12から洗浄液調製槽3、オーバーフロー液戻槽2から洗浄液調製槽3の移送循環ポンプは洗浄液中の異物を濾過する濾過手段(図示せず)を備える。また、洗浄液の印加処理により発生した微細な気泡が気体溶存率をこえて洗浄液を上昇して飛散するため、この飛散する気体を排出するための排出装置3aを備える。また洗浄槽4の底部には廃液タンク(図示せず)に通じる排出口4aが設けられている。
【0021】
水洗槽5には、洗浄水が常時満たされており、水洗槽5の底部に設けられた排出口5aと上部に設けられた供給口5bに配管接続された濾過・イオン除去・循環手段9により、水洗液内の浮遊異物が除去され、清浄化された水洗液が循環供給されるようになされている。濾過・イオン除去・循環手段9は、濾過・イオン除去装置9aと、給液ポンプ9bと、上記排出口5aおよび供給口5bと濾過・イオン除去装置9aおよび給液ポンプ9bとを繋ぐ配管9cとよりなる。また水洗槽5の底部には廃液タンク(図示せず)に通じる排出口5cが設けられている。
【0022】
乾燥槽6の近傍側部には、後記するように部品支持部材7の搬入と同期して乾燥槽6内に導入される上記エアブローノズル11が配備されている(図3参照)。乾燥槽6の側壁部には、エアブローによって飛散するミストを吸引するミスト吸引口6aが設けられ、底部には廃液タンク(図示せず)に通じる排出口6bが設けられている。
【0023】
上記洗浄槽4、水洗槽5および乾燥槽6の上方には、これらの並設ラインに沿った搬送装置7dが架設されている。部品支持部材7は搬送装置7dによって、洗浄槽4、水洗槽5および乾燥槽6の間を往復走行可能に支持される。部品支持部材7は、昇降フレーム7aを上下昇降可能に支持するモータ等からなる昇降駆動源7bと、昇降フレーム7aの下端を介して揺動可能に支持する揺動駆動源(揺動装置)7cとを備える。図示の部品支持部材7は、籠に限らず被洗浄対象部品1を載せて支持できるものであればその他の形状のものでもよい。
【0024】
本発明の金属部品の洗浄方法の一実施形態として、図1に示す上記洗浄装置を用いて、被洗浄対象部品1としての深溝玉軸受の外輪(以下、外輪1という)を洗浄する方法を説明する。なお、本発明において洗浄対象となる被洗浄対象部品の表面の付着物は、軸受の焼入れ工程で発生する金属酸化スケール、油の酸化物、軸受の研削工程などで発生する研削カス、砥石カス、防錆油残渣、クーラント残渣などである。
【0025】
洗浄液調製工程として、洗浄液調製槽3に洗浄液(洗浄用水溶液)を張り込み、洗浄液調整槽3の側部近傍に配備され、洗浄液に浸漬している陽極8aと、陰極8bとに、電源装置8に直流電圧を印加して陽極8aより酸素、陰極8bより水素の気泡を発生させる。発生した気泡は直径が数μm 程度の微細な気泡が含まれており浮上力が小さいために直ぐには上昇せず洗浄液中に溶存または長時間滞在する。この微細な気泡の生成処理により気体の溶存率を増加させ、微細な気泡を含有する洗浄液を調整する。この調製された洗浄液を循環手段により洗浄液調整槽3から洗浄槽4に循環供給する。
【0026】
本発明に用いる洗浄液(洗浄用水溶液)は、洗浄液を電解処理して微細な気泡を発生させることができ、金属部品を腐食させることのない塩基性成分を含有するものが好ましい。この塩基性成分として、経済的に有利な水酸化ナトリウムを用いることが特に好ましい。また、界面活性剤などを含有してもよい。
【0027】
次に超音波洗浄工程を説明する。まず、部品支持部材7に所定数の外輪1を支持させ、走行装置7dを駆動して、部品支持部材7を洗浄槽4に移動させる。次いで、昇降駆動源7bの駆動により、昇降フレーム7aを下降させ、部品支持部材7を外輪1とともに洗浄液に浸漬させる。洗浄液中に含有される微細な気泡が外輪1に衝突することとヒドロキシラジカル、水素ラジカルによる効果により外輪1表面に強固に付着しているごみや油分等の汚れを掻きとり、洗浄液内に分離浮遊する。この洗浄工程の間、超音波発振装置10および揺動装置7cを作動させる。超音波発振装置10の作動によって洗浄液が振動して、上記汚れの分離浮遊がより助長される。また、揺動装置7cの作動により部品支持部材7が揺動し、これによっても上記汚れの分離浮遊が助長される。
【0028】
上記超音波洗浄工程が終了すると、上記電源装置8の作動を停止し、昇降駆動源7bの駆動により昇降フレーム7aを上方の待機位置まで上昇させ、その後走行装置7dを再度駆動して走行させ、外輪1を支持した状態で部品支持部材7を水洗槽5の上方に移動させる。次いで、図2に示すように、昇降駆動源7bの駆動により、昇降フレーム7aを再度下降させ、部品支持部材7を外輪1とともに洗浄水が入っている水洗槽5内に浸漬させる。濾過・イオン除去・循環手段9を作動させ、純水を循環させて外輪1の表面に残存する洗浄液を除去する。濾過・イオン除去・循環手段9において、水洗槽5の底部に設けられた排出口5aから吸引し、給液ポンプ9bから配管9cを経て水洗槽5の上部に設けられた供給口5bに供給する。その際、排出口5aと、給液ポンプ9bとの間に設けられた濾過・イオン除去装置9aにより洗浄水中の異物を捕集・除去する。
【0029】
上記水洗工程が終了すると、上記濾過・イオン除去・循環手段9の作動を停止し、昇降駆動源7bの駆動により昇降フレーム7aを上方の待機位置まで上昇させ、その後走行装置7dを再度駆動して走行させ、外輪1を支持した状態で部品支持部材7を乾燥槽6の上方に移動させる。次いで、図3に示すように、昇降駆動源7bの駆動により、昇降フレーム7aを再度下降させ、部品支持部材7を外輪1とともに乾燥槽6内に配置させる。同時に、乾燥槽6の側部近傍に待機していたエアブロー装置11を乾燥槽6内に導入し、その各エアブローノズル11の噴出口を各外輪1に近接配置させる。
【0030】
この状態でエアブロー装置(図示せず)を作動させ、エアブローノズル11よりエアを噴出させて外輪1の表面に付着する水洗液を吹き飛ばすようにして除去する。除去されたミストは吸引口6aより逐次吸引排出される。また、外輪1より滴下する水洗液は、排出口6bより上記廃液タンクに回収される。このエアブローによる乾燥工程が完了すると、エアブロー装置の作動を停止し、待機位置に退避させ、部品支持部材7を上昇させて上方待機位置に待機させた状態で洗浄処理がされた外輪1を取り出す。
【0031】
本発明の洗浄方法において、図1に示した洗浄液調製槽3と、洗浄槽4とを別の槽に分けて実施する上述の方法の他に、これら洗浄液調製槽3と、洗浄槽4とを同一の槽を用いて、(1)洗浄液に直流電圧を印加しその後、電圧を止め製品を入れ超音波洗浄を行なう方法、(2)洗浄液に直流電圧を印加しながら、超音波洗浄を行なう方法がある。これらの方法の中で(2)の方法は、直流電圧を印加し発生する気泡の中には、粒径が大きいものも含まれているので超音波が製品表面まで伝わりにくくなり洗浄能力が低減する。また、(1)の方法は洗浄液の調製作業と、洗浄作業との間で印加電源のオン−オフ操作等の煩雑な作業が必要となり作業効率がよくない。これらのことから、本発明においては、洗浄液調製槽3と、洗浄槽4とを別の槽に分けて実施する上述の方法を用いることが好ましい。
【0032】
本発明の洗浄方法では、調製された洗浄液中に存在する微細な気泡が複雑な形状の部品であっても隅々まで浸透できるので、被洗浄対象部品となる金属部品として、上述の軸受の他、自在継手、クラッチ、歯車、スピンドルなどの機械部品などの洗浄にも好適に利用できる。
【実施例】
【0033】
実施例1
5 重量%の水酸化ナトリウム水溶液に直流電流 5 A にて印加処理した洗浄液を用いて、深溝玉軸受(型番6207U)の内輪をヴェルヴォクリーア社製:超音波洗浄機(型番VS−02RD)に入れ、22 kHz と30 kHz との混合周波数にて 200 W で 4分間、超音波洗浄した。洗浄後の深溝玉軸受(型番6207U)の内輪に残存する粒子径 2μm 以上のごみ量(個数)をLPC(リキッドパーティクルカウンター)にて計量した。結果を表1に示す。
【0034】
比較例1
5 重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて深溝玉軸受(型番6207U)の内輪をヴェルヴォクリーア社製:超音波洗浄機(型番VS−02RD)に入れ、22 kHz と30 kHz との混合周波数にて 200 W で 4分間、超音波洗浄した。洗浄後の深溝玉軸受(型番6207U)の内輪に残存する粒子径 2μm 以上のごみ量(個数)をLPC(リキッドパーティクルカウンター)にて計量した。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示すように、同種の洗浄液を用いて超音波洗浄を行なう場合でも、予め洗浄液に直流電圧を印加して調整した実施例1では、当該調整を行なわない比較例1に対して洗浄能力が大幅に向上していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の洗浄方法は、洗浄能力の高い洗浄液を調製することができ、この洗浄液を用いて効率よく洗浄することができる。このため、軸受などの金属部品の洗浄に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の洗浄装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】水洗工程を示す模式図である。
【図3】乾燥工程を示す模式図である。
【符号の説明】
【0039】
1 被洗浄対象部品(外輪)
2 オーバーフロー液戻槽
3 洗浄液調製槽
4 洗浄槽
5 水洗槽
6 乾燥槽
7 部品支持部材
8 電源装置
8a 陽極
8b 陰極
9 濾過・イオン除去・循環手段
10 超音波発振装置
11 エアブローノズル
12 オーバーフロー液戻槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の被洗浄対象部品の表面の付着物を除去する金属部品の洗浄方法であって、
洗浄用水溶液中に陽極および陰極を挿入し直流電圧を印加処理して洗浄用水溶液を調製する洗浄液調製工程と、
調製された洗浄用水溶液中で前記被洗浄対象部品を超音波洗浄する超音波洗浄工程とを備えることを特徴とする金属部品の洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄液調整工程と前記超音波洗浄工程とが異なる槽内で行なわれ、前記洗浄液調整工程で調整された洗浄用水溶液を、前記超音波洗浄工程を行なう槽内に循環供給することを特徴とする請求項1記載の金属部品の洗浄方法。
【請求項3】
前記被洗浄対象部品の表面の付着物は、金属酸化スケール、油の酸化物、研削カス、砥石カス、防錆油残渣、またはクーラント残渣であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の金属部品の洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄用水溶液は、塩基性成分を含有することを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の金属部品の洗浄方法。
【請求項5】
前記塩基性成分は、水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項4記載の金属部品の洗浄方法。
【請求項6】
前記金属部品は、軸受であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の金属部品の洗浄方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項記載の金属部品の洗浄方法を行なうための金属部品の洗浄装置であって、
該洗浄装置は、陽極および陰極を挿入した洗浄用水溶液中に直流電圧を印加処理して洗浄用水溶液を調製する洗浄液調製槽と、該洗浄液調製槽から供給される調製済みの洗浄用水溶液中で前記被洗浄対象部品を超音波洗浄する洗浄槽とを備えてなることを特徴とする金属部品の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−82591(P2010−82591A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256799(P2008−256799)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】