説明

金属酸化物からなる板状単結晶体、その金属酸化物薄膜、それらの製造方法、および、それらを用いた抵抗変化型素子

【課題】 金属酸化物からなる板状単結晶体、それを用いた金属酸化物薄膜、それらの製造方法、および、それらを用いた抵抗変化型素子を提供すること。
【解決手段】 本発明による板状単結晶体は、MOまたはM(ここで、Mは、Co、Fe、Ni、ZnおよびCuからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素である)で表される金属酸化物からなり、その形状は、六角形状であり、そのアスペクト比は、10〜500であり、平面方向の面は、(111)結晶面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物からなる板状単結晶体、その金属酸化物薄膜、それらの製造方法、および、それを用いた抵抗変化型素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイルドな条件下で行われる水溶液系の自己アセンブリ技術が、注目されている。このような技術に用いられるビルディングブロック、あるいは、自己アセンブリした機能性薄膜の研究が、盛んである。
【0003】
本願発明者らは、ビルディングブロックとなり得る、遷移金属を含有する層状水酸化物の合成に成功している(例えば、特許文献1および非特許文献1〜2を参照。)。特許文献1および非特許文献1〜2によれば、塩化コバルトを(必要に応じて、塩化鉄または塩化ニッケル)含有する水溶液にヘキサメチレンテトラミンを加え、還流することによって、Co(OH)、CoFe1−x(OH)、CoNi1−x(OH)(0<x<1)で表される良質な六角板状の層状結晶が得られる。このような六角板状の層状結晶は、板状方向に数マイクロメートル、および、厚さ方向に数十ナノメートルの大きさを有し、高い二次元異方性を有する。
【0004】
さらに、本願発明者らは、希土類元素を含有する層状水酸化物を用いた機能性薄膜の合成に成功している(例えば、特許文献2を参照。)。特許文献2によれば、式(R)(OH)2.50.5/m・0.125xHO((R)は機能サイト、Zは陰イオン、mはZの価数、6<x<8、(R)には、RE元素とRE元素とは異なるM元素とが固溶されていて、RE元素は、3価の希土類元素群から選択された1つの元素であり、M元素は、3価の希土類元素群および3価の金属元素群から選択された元素である)で表わされる層状希土類水酸化物を水に分散させた分散液に、ヘキサンまたはトルエンのいずれかである第1の溶媒を添加し、分散液中の水と第1の溶媒との界面を形成するステップと、アルコール類である第2の溶媒をさらに添加し、界面に層状希土類水酸化物をトラップさせるステップと、第1の溶媒を除去するステップと、第2の溶媒が添加され、第1の溶媒が除去された分散液に基材を浸漬させ、トラップされた層状希土類水酸化物を基材に移すステップとにより、高い結晶性および高い配向性を有する機能性薄膜が得られる。
【0005】
上述の特許文献1および非特許文献1〜2に記載の六角板状の層状結晶の用途の開発が望まれている。また、特許文献2の層状希土類水酸化物以外の材料からなる機能性薄膜の開発が期待される。
【0006】
一方、水酸化物から酸化物を合成する技術が知られている(例えば、特許文献3を参照。)。特許文献3によれば、配向した水酸化物薄膜を基板上に形成し、脱水反応によって特定の方位に配向した酸化物薄膜を合成できる。詳細には、MgO基板上に形成したCa(OH)膜を800℃2時間空気中で加熱することによって、(111)に強く配向したCaO膜が得られる。また、CaO膜以外にも、Mg(OH)、Ni(OH)、Co(OH)、Cd(OH)の(001)配向膜の脱水によって、(111)配向したMgO、NiO、CoO、CdO膜が得られる。しかしながら、特許文献3によれば、完全に(111)配向した酸化物膜を得ることは難しく、改善が望まれる。
【0007】
近年、上述の酸化物のうち物理的気相成長法によるNiOおよびCoOの酸化物薄膜において抵抗スイッチング効果(抵抗変化効果)が確認されている(例えば、非特許文献3を参照。)。非特許文献3によれば、Pt/Ni−O/PtおよびPt/Co−O/Ptの三層構造において抵抗スイッチング効果が確認され、抵抗変化型素子として機能し得る。
【0008】
しかしながら、非特許文献3における物理的気相成長法による酸化物薄膜は粒子の集合体からなり、酸化物薄膜中には粒界が多数存在し、完全配向ではないため、十分な抵抗スイッチング効果が得られないという問題がある。また、抵抗変化型素子の実用化に向けて、100倍以上の電気抵抗変化率(高抵抗状態と低抵抗状態との比)、数10μA程度の低電流でのスイッチング、ならびに、10ns程度の早い動作速度が要求されるが、非特許文献3の酸化物薄膜はこのような要求に応えられない。さらに、酸化物薄膜の製造には、高価な大型真空装置が必要なため、コストが高い、操作が複雑、環境負荷が高いなどの問題点もある。
【0009】
以上より、特許文献1および非特許文献1〜2を出発原料として新規な金属酸化物からなる板状単結晶体が得られれば、材料設計の観点から極めて有利であり、新しい用途が期待できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、金属酸化物からなる板状単結晶体、それを用いた金属酸化物薄膜、それらの製造方法、および、それらを用いた抵抗変化型素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による金属酸化物からなる板状単結晶体は、前記金属酸化物は、MOまたはM(ここで、Mは、Co、Fe、Ni、ZnおよびCuからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素である)で表され、前記金属酸化物からなる板状単結晶体の形状は、六角形状であり、前記金属酸化物からなる板状単結晶体のアスペクト比は、10〜500であり、前記金属酸化物からなる板状単結晶体の平面方向の面は、前記金属酸化物の(111)結晶面であり、これにより上記課題を達成する。
前記金属酸化物からなる板状単結晶体は、抵抗変化効果を有してもよい。
前記金属酸化物からなる板状単結晶体の高抵抗状態における電気抵抗は、10Ω〜1014Ωの範囲であり、低抵抗状態における電気抵抗は、10Ω〜10Ωの範囲であってもよい。
上記の金属酸化物からなる板状単結晶体の製造方法は、M(OH)(ここで、Mは、Co、Fe、Ni、ZnおよびCuからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素である)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体を加熱するステップを包含し、これにより上記課題を達成する。
前記金属水酸化物からなる板状単結晶体の形状は、六角形状であり、前記金属水酸化物からなる板状単結晶体のアスペクト比は、10〜500であり、前記金属水酸化物からなる板状単結晶体の平面方向の面は、前記金属水酸化物の(001)結晶面であってもよい。
前記加熱するステップは、真空または不活性ガス雰囲気中、200℃〜800℃の温度範囲で前記金属水酸化物からなる板状単結晶体を加熱してもよい。
前記加熱するステップは、大気中、400℃〜700℃の温度範囲で前記金属水酸化物からなる板状単結晶体を加熱してもよい。
本発明による上記の金属酸化物からなる板状単結晶体からなる金属酸化物薄膜は、前記板状単結晶体は、前記板状単結晶体の平面方向に最密充填様に配列し、前記金属酸化物薄膜は、[111]に配向し、これにより上記課題を解決する。
本発明による上記の金属酸化物薄膜の製造方法は、前記金属酸化物からなる板状単結晶体を水に分散させた分散液に、ヘキサンまたはトルエンのいずれかである第1の溶媒を添加し、前記分散液中の水と前記第1の溶媒との界面を形成するステップと、アルコール類である第2の溶媒をさらに添加し、前記界面に前記金属酸化物からなる板状単結晶体をトラップさせるステップと、前記第1の溶媒を除去するステップと、前記界面にトラップされた前記金属酸化物からなる板状単結晶体に表面圧を印加するステップと、前記第1の溶媒が除去された前記分散液に基材を浸漬させ、前記トラップされた前記金属酸化物からなる板状単結晶体を前記基材に移すステップとを包含し、これにより上記課題を達成する。
前記界面を形成するステップに先立って、M(OH)(ここで、Mは、Co、Fe、Ni、ZnおよびCuからなる群から選択される金属元素である)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体を加熱し、前記金属酸化物からなる板状単結晶体に相転移させるステップをさらに包含してもよい。
本発明による上記の金属酸化物薄膜の製造方法であって、M(OH)(ここで、Mは、Co、Fe、Ni、ZnおよびCuからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素である)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体を水に分散させた分散液に、ヘキサンまたはトルエンのいずれかである第1の溶媒を添加し、前記分散液中の水と前記第1の溶媒との界面を形成するステップと、アルコール類である第2の溶媒をさらに添加し、前記界面に前記金属水酸化物からなる板状単結晶体をトラップさせるステップと、前記第1の溶媒を除去するステップと、前記界面にトラップされた前記金属水酸化物からなる板状単結晶体に表面圧を印加するステップと、前記第1の溶媒が除去された前記分散液に基材を浸漬させ、前記トラップされた前記金属水酸化物からなる板状単結晶体を前記基材に移すステップと、前記基材に移された前記金属水酸化物からなる板状単結晶体を加熱するステップとを包含し、これにより上記課題を達成する。
本発明による抵抗変化型素子は、第1の電極と、前記第1の電極上に位置する抵抗体と、前記抵抗体上に位置する第2の電極とを含み、前記抵抗体は、上記の金属酸化物からなる板状単結晶体、または、金属酸化物薄膜であり、これにより上記課題を達成する。
前記抵抗変化型素子のリセット電流は、1mA未満であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明による板状単結晶体は、MOまたはM(ここで、Mは、Co、Fe、Ni、ZnおよびCuからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素である)で表される金属酸化物からなり、これらの金属酸化物は、抵抗変化効果を示すので、抵抗変化型素子に適用できる。これらM元素は遷移金属元素であるため、遷移金属酸化物とガス(CO、H等)との反応による物性変化(電気抵抗、光学透過率、色)を利用したガスセンサにも適用できる。また、本発明の板状単結晶体の形状は、アスペクト比10〜500を有する六角形状であり、高い二次元異方性を有するビルディングブロックとして機能するので、精密な配列制御、新規な材料の設計を可能にする。また、本発明による板状単結晶体は、平面方向の面が金属酸化物の(111)結晶面であるので、任意の基材の上に容易に配向させることができる。
【0013】
本発明による上記板状単結晶体の製造方法は、M(OH)(ここで、Mは、Co、Fe、Ni、ZnおよびCuからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素である)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体を加熱するステップを包含する。単に加熱するだけで、M(OH)を、単結晶状態を保持したままトポタクティックに酸化物に相転移できる。金属水酸化物からなる板状単結晶体は、特許文献1および非特許文献1〜2に記載されるように、板状方向に数マイクロメートル、および、厚さ方向に数十ナノメートルの大きさを有し、高い二次元異方性を有するので、得られる酸化物もまたこのような形状的特性を有することができる。好ましくは、加熱するステップにおいて、真空中、200℃〜800℃の温度範囲で加熱すれば、M(OH)をMOに、大気中、400℃〜700℃の温度範囲で加熱すれば、M(OH)をMに相変化させることができるので、製造が容易である。
【0014】
本発明による金属酸化物薄膜は、上述の金属酸化物からなる板状単結晶体からなり、板状単結晶体が、その平面方向に最密充填様に配列する。上述したように高い二次元異方性を有する板状単結晶体により、粒子の集合体のように配向性が不完全になることなく、完全に[111]に配向した金属酸化物薄膜を得ることができる。
【0015】
本発明による金属酸化物薄膜の製造方法は、上述の金属酸化物からなる板状単結晶体を水に分散させた分散液に、ヘキサンまたはトルエンのいずれかである第1の溶媒を添加し、分散液中の水と第1の溶媒との界面を形成するステップと、アルコール類である第2の溶媒をさらに添加し、界面に金属酸化物からなる板状単結晶体をトラップさせるステップと、第1の溶媒を除去するステップと、界面にトラップされた金属酸化物からなる板状単結晶体に表面圧を印加するステップと、分散液に基材を浸漬させ、トラップされた金属酸化物からなる板状単結晶体を基材に移すステップとを包含する。トラップさせるステップおよび表面圧を印加するステップにより、金属酸化物からなる板状単結晶体は、最密充填様に配列させることができる。また、上述の製造方法によれば、特殊な装置を不要とするので低コストで金属酸化物薄膜を提供でき、その大面積化を可能にする。
【0016】
本発明による別の金属酸化物薄膜の製造方法は、上述の金属水酸化物からなる板状単結晶体を水に分散させた分散液に、ヘキサンまたはトルエンのいずれかである第1の溶媒を添加し、分散液中の水と第1の溶媒との界面を形成するステップと、アルコール類である第2の溶媒をさらに添加し、界面に金属水酸化物からなる板状単結晶体をトラップさせるステップと、第1の溶媒を除去するステップと、界面にトラップされた金属水酸化物からなる板状単結晶体に表面圧を印加するステップと、分散液に基材を浸漬させ、トラップされた金属水酸化物からなる板状単結晶体を基材に移すステップと、基材に移された金属水酸化物からなる板状単結晶体を加熱するステップとを包含する。トラップさせるステップおよび表面圧を印加するステップにより、金属水酸化物からなる板状単結晶体が最密充填様に配列し、これを加熱することにより金属酸化物に相変化させる。このような相変化は、トポタクティックに起こるので、金属酸化物が良好に最密充填様に配列し、[111]配向した金属酸化物薄膜が得られる。また、上述の製造方法によれば、特殊な装置を不要とするので低コストで金属酸化物薄膜を提供でき、その大面積化を可能にする。
【0017】
本発明による抵抗変化型素子は、第1の電極と、第1の電極上に位置する抵抗体と、抵抗体上に位置する第2の電極とを含み、抵抗体は、上述の金属酸化物からなる板状単結晶体、または、金属酸化物薄膜である。上述の板状単結晶体および金属酸化物薄膜は、既存の物理的気相成長法によって得られる金属酸化物とは異なり、高い二次元異方性を有する単一の単結晶、あるいは、その集合体からなるので、既存の物理的気相成長法で得られる金属酸化物に比べて高い抵抗を有し、抵抗変化型素子の要件を満たすことができる。また、単一の板状単結晶を用いた抵抗変化型素子によれば、マイクロまたはナノメートルサイズの小型素子となり得、これを実装すればメモリ全体の超小型化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による金属酸化物からなる板状単結晶体の模式図
【図2】本発明による板状単結晶体の結晶構造モデルを示す図
【図3】本発明による板状単結晶体の製造工程を示すフローチャート
【図4】本発明によるMOで表される金属酸化物からなる板状単結晶体の製造工程を示す模式図
【図5】本発明によるMで表される金属酸化物からなる板状単結晶体の製造工程を示す模式図
【図6】本発明による金属酸化物からなる板状単結晶体からなる金属酸化物薄膜の模式図
【図7】本発明による金属酸化物薄膜の製造工程を示すフローチャート
【図8】本発明による金属酸化物薄膜の製造工程を示す模式図
【図9】本発明による金属酸化物薄膜の別の製造工程を示すフローチャート
【図10】本発明による金属酸化物薄膜の別の製造工程を示す模式図
【図11】本発明による抵抗変化型素子を示す模式図
【図12】本発明による別の抵抗変化型素子を示す模式図
【図13】本発明による抵抗変化型素子の動作を示す模式図
【図14】本発明の抵抗変化型素子のメモリ動作を示す模式図
【図15】Co(OH)板状単結晶体を製造する様子を示す図
【図16】実施例1によるCo(OH)板状単結晶体の外観(A)とSEM像(B)とを示す図
【図17】実施例1によるCo(OH)板状単結晶体のTEM像(A)と電子回折パターン(B)とを示す図
【図18】実施例1によるCo(OH)板状単結晶体のX線回折パターンを示す図
【図19】トラップされたCo(OH)板状単結晶体の表面圧−表面積(π−A)曲線を示す図
【図20】実施例1によるCo(OH)膜/Siの膜の断面のデジタルカメラ画像(A)およびSEM像(B)を示す図
【図21】実施例1によるCo(OH)膜/Siの膜の表面のSEM像を示す図
【図22】実施例1による別のCo(OH)膜/Siの膜の表面のSEM像を示す図
【図23】実施例1によるCo(OH)膜/Pt(a)、Co(OH)膜/Si(b)およびCo(OH)膜/石英(c)の膜のXRDパターンを示す図
【図24】実施例1による、Co(OH)膜/Si(a)およびCoO膜/Si(b)の膜のXRDパターンを示す図
【図25】実施例1によるCoO膜/Siの膜の表面のSEM像を示す図
【図26】実施例1によるCoO膜/石英のUV−vis吸収スペクトルを示す図
【図27】実施例1によるCoO膜/石英の光学バンドギャップを示す図
【図28】実施例2による抵抗変化型素子の模式図
【図29】実施例2による抵抗変化型素子のSEM像を示す図
【図30】実施例2による抵抗変化型素子のスイッチング特性(I−V)を示す図
【図31】実施例2による抵抗変化型素子のセット/リセット動作の繰り返し試験の結果を示す図
【図32】実施例3によるCoO膜/PtのAFM像を示す図
【図33】実施例3によるCoO板状単結晶体/PtのTEM像(A)および電子回折パターン(B)を示す図
【図34】実施例3による抵抗変化型素子の模式図
【図35】実施例3による抵抗変化型素子のスイッチング特性(I−V)を示す図
【図36】実施例4によるCo膜/石英のXRDパターンを示す図
【図37】実施例4によるCo膜/石英のCo2p内殻光電子スペクトルを示す図
【図38】実施例4によるCo膜/SiのTEM像を示す図
【図39】実施例5による(Co,Ni)(OH)膜/Siの膜の表面のSEM像を示す図
【図40】実施例5による(Co,Ni)(OH)膜/Si(a)およびCoNiO膜/Si(b)の膜のXRDパターンを示す図
【図41】実施例6によるCo板状単結晶体のXRDパターンを示す図
【図42】実施例6によるCo膜/石英の表面のSEM像を示す図
【図43】実施例6によるCo膜/石英のXRDパターンを示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
【0020】
(実施の形態1)
実施の形態1は、本発明の金属酸化物からなる板状単結晶体およびその製造方法について詳述する。
【0021】
図1は、本発明による金属酸化物からなる板状単結晶体の模式図である。
【0022】
本発明による板状単結晶体100は、MOまたはM(ここで、Mは、Co、Fe、Ni、ZnおよびCuからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素である)で表される金属酸化物からなる。なお、MのMとしてCuまたはZnを選択する場合には、CuおよびZnは3価を取り得ないので、Co、FeあるいはNiと組み合わせて電荷の中性をとるように設定すればよい。Mは、例えば、CoとNiとの固溶体であってもよいし、CoとFeとの固溶体であってもよいし、CoとNiとFeとの固溶体であってもよく、その固溶比に制限はない。なお、固溶しているか否かは、X線回折等によって求めた金属酸化物の格子定数がベガード則にしたがっているか否か、または、化学組成分析を確認すればよい。
【0023】
具体的な金属酸化物MOは、岩塩型構造を有し、CoO、NiO、FeO、CuO、ZnO、(Co,Ni)O、(Co,Fe)O、(Co,Cu)O、(Co,Zn)O、(Ni,Fe)O、(Ni,Cu)O、(Ni,Zn)O、(Fe,Cu)O、(Fe,Zn)O、(Cu,Zn)O、(Co,Ni,Fe)O等であるが、組み合わせはこれらに限定されない。例えば、(Co,Ni)Oにおいて、(Co,Ni)とは、CoNi1−xO(0<x<1)と同義であり、CoとNiとの固溶比が任意であることを表す。
【0024】
具体的な金属酸化物Mは、スピネル型構造を有し、Co、Ni、Fe、(Co,Ni)、(Co,Fe)、(Co,Cu)、(Co,Zn)、(Ni,Fe)、(Ni,Cu)、(Ni,Zn)、(Fe,Cu)、(Fe,Zn)、(Co,Ni,Fe)等であるが、組み合わせはこれらに限定されない。例えば、(Co,Ni)において、(Co,Ni)とは、(CoNi1−x(0<x<1)と同義であり、CoとNiとの固溶比が任意であることを表す。
【0025】
本発明による板状単結晶体100の形状は、図1に示されるように、六角形状を有し、全体で単結晶である。このような六角形状は、MOおよびMの結晶構造に依存するのではなく、後述する出発原料であるM(OH)の六方晶系の結晶構造を反映している。さらに、板状単結晶体100のアスペクト比は、10〜500であり、極めて高い二次元異方性を有する。詳細には、板状単結晶体100の横サイズLが200nm〜10μmの範囲であり、厚さサイズDが20nm〜100nmの範囲である。さらに、板状単結晶体100の平面方向の面(以降では単に板状結晶面と称する)110は、(111)結晶面である。このように、既存の物理的気相成長法で得られるような粒子の集合体ではなく、二次元異方性の高い完全な単結晶である本発明の板状単結晶体100は、新規材料のためのビルディングブロックとして機能し得る。
【0026】
図2は、本発明による板状単結晶体の結晶構造モデルを示す図である。
【0027】
図2(A)は、MOで表される金属酸化物からなる板状単結晶体の結晶モデルであり、図2(B)は、Mで表される金属酸化物からなる板状単結晶体の結晶モデルである。
【0028】
MOは、岩塩型構造の酸化物であり、面心立方格子を有するが、本発明によるMOで表される金属酸化物からなる板状単結晶体100は、図2(A)に示されるように、CdI型構造のM(OH)の六方晶系(例えば、後述する図4を参照)を反映した六角形状を有する。図2(A)は、MOを[111]方向から見た八面体ユニット配列の結晶モデルであり、八面体ユニットの中心にM原子が位置する。ここで、MOの(111)面において、Mイオンは、正八面体の各頂点に位置する6個の酸素原子に囲まれている。
【0029】
(例えば、(Co(Co2+Co3+)、Ni(Ni2+Ni3+)等)は、スピネル型構造の酸化物であるが、本発明によるMで表される金属酸化物からなる板状単結晶体100は、図2(B)に示されるように、CdI型構造のM(OH)の六方晶系を反映した六角形状を有する。図2(B)は、Mを[111]方向から見た八面体および四面体ユニット配列の結晶モデルであり、それぞれの中心にM原子が位置する。ここで、Mの(111)面において、Mイオンは、八面体ユニット配列の1/2が、M3+で占有され、四面体ユニット配列の1/8が、M2+で占有される。
【0030】
本発明による板状単結晶体100を構成するMOおよびMは、いずれも、抵抗変化効果を示すので、抵抗変化型素子に適用できる。さらに、本発明による板状単結晶体100は、初期状態(製造直後)および高抵抗状態において10Ω〜1014Ωの範囲の高い電気抵抗を有する。これは、本発明による板状単結晶体100は、上述の金属酸化物に加えて、上述のアスペクト比を有する単結晶であるので、既存の物理的気相成長法によって得られる粒子からなる金属酸化物薄膜における粒界パス等がないためである。また、本発明による板状単結晶体100は、低抵抗状態において10Ω〜10Ωの範囲の電気抵抗を有する。このような高い電気抵抗を有する本発明の板状単結晶体100を抵抗変化型素子に適用すれば、100倍以上の電気抵抗変化率、および、数10μA程度の低電流でのスイッチングを可能にし得る。また、高抵抗状態と低抵抗状態との間の抵抗のウィンドウが10以上あるため、情報を確実に記録できる。
【0031】
また、本発明による板状単結晶体100を構成するMOおよびMは、いずれも遷移金属酸化物であるため、ガス(CO、H等)と容易に反応し、物性変化(電気抵抗、光学透過率、色)を生じる。本発明による板状単結晶体100は、このような物性変化を利用したガスセンサにも適用され得る。
【0032】
次に、上述の板状単結晶体100の製造方法を説明する。
【0033】
図3は、本発明による板状単結晶体の製造工程を示すフローチャートである。
図4は、本発明によるMOで表される金属酸化物からなる板状単結晶体の製造工程を示す模式図である。
【0034】
ステップS310:M(OH)(ここで、Mは、Co、Fe、Ni、ZnおよびCuからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素である)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体を加熱する。
【0035】
ここで、金属水酸化物からなる板状単結晶体400は、六角形状の単結晶体である。また、板状単結晶体のアスペクト比は、10〜500であり、その平面方向の板状結晶面410は、M(OH)の(001)結晶面を満たす。
【0036】
ここで、M(OH)で表される金属酸化物からなる板状単結晶体400は、例えば、特許文献1および非特許文献1〜2に記載の方法によって製造され得る。具体的には、上記から選択されたMの塩、ヘキサメチレンテトラミン(HMT)または尿素を含有する水溶液中のHMTまたは尿素を分解し、Mの塩を加水分解すればよい。このような分解および加水分解は、水溶液を還流することによって達成できる。このようにして得た金属水酸化物からなる板状単結晶体400は、上述の形状およびサイズを確実に有する。
【0037】
加熱するステップS310は、好ましくは、真空または不活性ガス雰囲気中、200℃〜800℃の温度範囲で金属水酸化物からなる板状単結晶体400を加熱する。これにより、図4に示すように、M(OH)は、(111)面を有し、かつ、六角形状を有するMOに相変化する。すなわち、M(OH)をトポタクティックにMOに相転移させる。このステップは脱水反応であるため、200℃以上であれば確実に脱水が可能である。また、加熱温度が800℃を超えると高温炉が必要になりコストを要するので好ましくない。真空度は、好ましくは、10−2Pa以下である。不活性ガス雰囲気は、代表的には、Ar、Nであり得る。また、加熱の時間は、例えば、5分〜1時間である。真空または不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、M原子を酸化することなく、200℃〜800℃の温度の加熱により、M(OH)中の水が効率的に脱水され、M(OH)をトポタクティックに確実にMOに相転移させることができる。
【0038】
この脱水反応において、図4を参照すると、M(OH)およびMOにおける各Mイオンは、八面体ユニットの頂点に位置する6個の酸素原子によって囲まれている(図4)。また、MOの[111]方向から見た金属原子の配列および配位は、M(OH)の[001]方向から見たそれに極めて類似している。すなわち、MOにおける化学結合状態および配位は、M(OH)においてすでに存在していることになる。その結果、相転移は上述のようなトポタクティックであり、M(OH)のモルフォロジは維持されることになる。
【0039】
図5は、本発明によるMで表される金属酸化物からなる板状単結晶体の製造工程を示す模式図である。
【0040】
ここでも図3および図5を参照し、製造工程を詳述する。
【0041】
ステップS310:M(OH)(ここで、Mは、Co、Fe、Ni、ZnおよびCuからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素である)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体を加熱する。ここで、金属水酸化物からなる板状単結晶体400は、上述したとおりであるため説明を省略する。
【0042】
加熱するステップS310は、好ましくは、大気中、400℃〜700℃の温度範囲で金属水酸化物からなる板状単結晶体を加熱する。これにより、図5に示すように、脱水反応と酸化還元反応とを生じさせ、M(OH)は、(111)面を有し、かつ、六角形状を有するMに変化する。すなわち、M(OH)をトポタクティックにMに変化させることができる。詳細には、M原子は、一部は酸化されることなくM2+であり、一部は酸化されてM3+となる。加熱の時間は、例えば、30分〜2時間である。
【0043】
この脱水・酸化還元反応において、図5を参照すると、M(OH)における各Mイオンは、6個の酸素原子によって囲まれている八面体ユニットの中心に位置するが、MではMイオンの一部が4個の酸素原子による四面体ユニットの中心に移動する。しかし、Mの[111]方向から見た金属原子の配列および配位は、M(OH)の[001]方向から見たそれに極めて類似している。したがって、M(OH)からCoへの相転移には化学的および結晶学的な再構成を要するが、本発明の方法を採用すれば、M(OH)のモルフォロジを維持したトポタクティックな相転移を可能にする。
【0044】
図3〜図5を参照して詳述したように、本発明によれば、M(OH)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体を出発原料に用い、所定の条件で加熱するだけで、MOまたはMで表される金属酸化物からなる板状単結晶体を得ることができる。
【0045】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1で説明した板状単結晶体からなる金属酸化物薄膜およびその製造方法について詳述する。
【0046】
図6は、本発明による金属酸化物からなる板状単結晶体からなる金属酸化物薄膜の模式図である。
【0047】
図6では、基材610上に位置する単層の金属酸化物薄膜600を示す。このように基材610上に金属酸化物薄膜600があれば、取扱が簡便であるため有利である。ここで、基材610は、Si、GaAs等の半導体基板、石英基板、ガラス基板、プラスチック等の有機基板、金属基板等任意の材料の基材であり得る。また、基材610は、平板に限らず、表面に曲率あるいは凹凸を有していてもよい。
【0048】
金属酸化物薄膜600は、実施の形態1で詳述したMOまたはMで表される金属酸化物からなる板状単結晶体100からなる。板状単結晶体100は、上述したとおりであるため、説明を省略する。
【0049】
図6に示すように、板状単結晶体100が、その平面方向に最密充填様に配列し、金属酸化物薄膜600を構成する。このように、本発明による金属酸化物薄膜600は、既存の物理的気相成長法で見られるような、粒子の集合体からなる膜ではなく、板状単結晶体100の集合体からなる膜であるため、粒界の影響を無視でき、単結晶の特性を十分に発揮できる。なお、本明細書において「最密充填様」とは、完全な最密充填、ならびに、一部最密充填ではないが実質的に最密充填であり、デバイスに適用した際に特性を低下させない程度の板状単結晶体100の充填を意図する。
【0050】
本発明の金属酸化物薄膜600は、それを構成する板状単結晶体100の板状結晶面110に起因した高い結晶性および配向性を有する。詳細には、板状単結晶体100の板状結晶面110が(111)面であるため、最密充填様の配列により、[111]に配向した金属酸化物薄膜600が得られる。このように、本発明による金属酸化物薄膜600は、既存の物理的気相成長法で見られるような、粒子の集合体からなる膜ではなく、板状単結晶体100の集合体からなる膜であるため、完全な[111]配向を達成できる。
【0051】
板状単結晶体100の厚さが、20nm〜100nmの範囲であるため、単層の金属酸化物薄膜600の厚さもまた、板状単結晶体100の厚さを反映した、20nm〜100nmの範囲である。なお、本発明の金属酸化物薄膜600の膜厚は、板状単結晶体100の積層数に応じて制御可能である。
【0052】
本発明による金属酸化物薄膜600もまた、板状単結晶体100と同様の効果を有するため、抵抗変化型素子、ガスセンサ等に適用される。例えば、本発明による金属酸化物薄膜600は、上述したように、既存の物理的気相成長法と異なり膜中に粒界パス等がないため、板状単結晶体100の高い電気抵抗(10Ω〜1014Ω)を膜においても発揮できるので、既存の物理的気相成長法による薄膜に代替し得る。
【0053】
次に、上述の金属酸化物薄膜600の製造方法を説明する。
【0054】
図7は、本発明による金属酸化物薄膜の製造工程を示すフローチャートである。
図8は、本発明による金属酸化物薄膜の製造工程を示す模式図である。
【0055】
ステップS710:図1を参照して説明した板状単結晶体100を水800に分散させた分散液(図8の状態(A))に、第1の溶媒810を添加し、これにより、水800と第1の溶媒810との界面820を形成する(図8の状態(B))。例示的な第1の溶媒810は、ヘキサン、トルエンである。これらの第1の溶媒810の比重は、水のそれよりも軽いため、下層部に水800、および、上層部に第1の溶媒810となるように分液され、この結果、界面820が形成される。
【0056】
ステップS720:第2の溶媒830をさらに添加する。これにより、板状単結晶体100が、ステップS710で形成した界面820にトラップされる(図8の状態(C))。第2の溶媒830は、アルコール類であれば任意であるが、汎用性および取扱の容易性の観点から、エタノール、プロパノール、ブタノールが好ましい。
【0057】
板状単結晶体100は、界面820に対してランダムに配向するのではなく、その板状結晶面110が界面820と平行になるように自己組織化的にトラップされる。これは、板状単結晶体100がその2次元異方性ゆえ板状結晶面を界面820に平行に配列すること、すなわち界面820に対して[111]配向することがもっとも安定であるからである。また表面張力、結晶表面の電荷反発などの関係から板状単結晶体同士が重なりあうことがなく、自己組織化的にモノレイヤーとして配列する。
【0058】
ステップS730:第1の溶媒810を除去する。図8の状態(C)において第1の溶媒810を除去すると、図8の状態(D)となり、界面820にトラップされた金属酸化物からなる板状単結晶体100が膜状となり残る。
【0059】
ステップS740:トラップされた金属酸化物からなる板状単結晶体100に表面圧840を印加する(図8の状態(E))。これにより、板状単結晶体100の最密充填様の配列を確実にし得る。印加する表面圧は、好ましくは、5mNm−1〜25mNm−1の範囲である。印加する表面圧が5mNm−1を下回ると、板状単結晶体100の配列が乱れ、最密充填様の配列に到達せず、得られる金属酸化物薄膜600において板状単結晶体100間に隙間が生じ得る場合がある。印加する表面圧が25mNm−1を超えると、表面圧が高すぎることにより板状単結晶体100が一部重なりあい、得られる金属酸化物薄膜600の結晶性を低下させる場合がある。
【0060】
ステップS750:分散液に基材610(図6)を浸漬させ、界面820にトラップされた板状単結晶体100を基材610に移す(転写する)(図8の状態(E))。トラップされた板状単結晶体100は、界面820に対して[111]優先配向しているが、基材610を引上げる際も、板状単結晶体100は、基材610に対して優先配向を維持したまま基材610に移される。このようにして基材610上に[111]配向し、最密充填様に配列した板状単結晶体100からなる金属酸化物薄膜600が得られる。なお、ステップS740およびS750は同時に行われ得る。
【0061】
なお、ステップS750を複数回繰り返すことによって、多層構造の板状単結晶体100からなる金属酸化物薄膜(図示せず)が得られることは容易に理解され、ステップS750の回数は、金属酸化物薄膜の所望の膜厚に応じて、任意である。
【0062】
なお、ステップS710に先立って、M(OH)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体400(図4および図5)を加熱するステップ(図示せず)を行って、MOまたはMで表される金属酸化物からなる板状単結晶体100(図1)にトポタクティックに相転移させておいてもよい。ここでの加熱の条件は、図3〜図5を参照して詳述したとおりであるため、説明を省略する。
【0063】
以上、図7〜図8を参照して説明したように、本発明の金属酸化物薄膜600は、金属水酸化物400をトポタクティックに相転移させたMOまたはMで表される金属酸化物の板状単結晶体100の二次元異方性を利用して製造される。本発明の方法は、物理気相成長法または化学気相成長法に代表される、複雑、大規模かつ高価な装置を必要としないので、容易かつ安価に結晶性および配向性に優れた機能薄膜を提供できる。また、本発明の製造方法によれば、大きな容器さえ入手すれば、容易に大面積化も可能であるので、実用化に好適である。
【0064】
図9は、本発明による金属酸化物薄膜の別の製造工程を示すフローチャートである。
図10は、本発明による金属酸化物薄膜の別の製造工程を示す模式図である。
【0065】
ステップS910:図3〜図5を参照して説明したM(OH)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体400(図4および図5)を水800に分散させた分散液(図10の状態(A))に第1の溶媒810を添加し、これにより、水溶液中の水800と第1の溶媒810との界面820を形成する(図10の状態(B))。例示的な第1の溶媒810は、ヘキサン、トルエンである。これらの第1の溶媒810の比重は、水800のそれよりも軽いため、下層部に水800、および、上層部に第1の溶媒810となるように分液され、これにより界面820が形成される。
【0066】
ステップS920:第2の溶媒830をさらに添加する。これにより、板状単結晶体400が、ステップS910で形成した界面820にトラップされる(図10の状態(C))。第2の溶媒830は、アルコール類であれば任意であるが、汎用性および取扱の容易性の観点から、エタノール、プロパノール、ブタノールが好ましい。板状単結晶体400は、界面820に対してランダムに配向するのではなく、その板状結晶面410が界面820と平行になるように自己組織化的にトラップされる。これは、板状単結晶体400がその2次元異方性ゆえ板状結晶面410を界面820に平行に配列すること、すなわち界面820に対して[001]配向することがもっとも安定であるからである。また表面張力、結晶表面の電荷反発などの関係から板状単結晶体同士が重なりあうことがなく、自己組織化的にモノレイヤーとして配列する。
【0067】
ステップS930:第1の溶媒810を除去する。図10の状態(C)において上層部の第1の溶媒810を除去すると、状態(D)となる。
【0068】
ステップS940:トラップされた金属水酸化物からなる板状単結晶体400に表面圧840を印加する。これにより、板状単結晶体400の最密充填様の配列を確実にし得る。印加する表面圧は、好ましくは、5mNm−1〜25mNm−1の範囲である。印加する表面圧が5mNm−1を下回ると、板状単結晶体400の最密充填様の配列まで行かず、最終的に得られる金属酸化物薄膜600において板状単結晶体100間に隙間が生じ得る場合がある。印加する表面圧が25mNm−1を超えると、表面圧が高すぎることにより板状単結晶体400が一部重なりあい、得られる金属酸化物薄膜600の結晶性を低下させる場合がある。
【0069】
ステップS950:ステップS940で得られた分散液に基材610(図6)を浸漬させ、界面820にトラップされた金属水酸化物からなる板状単結晶体層400を基材610に移す(転写する)(図10の状態(E))。トラップされた板状単結晶体400は、界面820に対して[001]配向しているが、基材610を引上げる際も、板状単結晶体400は、基材610に対して[001]配向を維持したまま基材610に移される。このようにして基材610上に、[001]配向し、最密充填様に配列した金属水酸化物からなる板状単結晶体400からなる金属水酸化物膜1000が得られる。ここで金属水酸化物膜1000は、図10(F)に模式的に示されるように、板状単結晶体400のそれぞれが[001]配向しており、金属水酸化物膜1000全体として、[001]配向である。
【0070】
ステップS960:ステップS950で得られた板状単結晶体400からなる金属水酸化物膜1000(図15の状態(F))を加熱する。これにより、金属水酸化物からなる板状単結晶体400のそれぞれは、金属酸化物からなる板状単結晶体100にトポタクティックに相転移し、金属水酸化物膜1000が、板状単結晶体100からなる金属酸化物薄膜600となる(図15の状態(G))。
【0071】
ここでの加熱の条件は、図3〜図5を参照して詳述した加熱の条件と同様である。すなわち、M(OH)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体からMOで表される金属酸化物からなる板状単結晶体を得る場合の加熱の条件は、真空または不活性ガス雰囲気中、200℃〜800℃の温度範囲が好ましく、M(OH)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体からMで表される金属酸化物からなる板状単結晶体を得る場合の加熱の条件は、大気中、400℃〜700℃の温度範囲が好ましい。
【0072】
図4および図5を参照して説明したように、金属水酸化物からなる板状単結晶体400から金属酸化物からなる板状単結晶体100へのトポタクティックな相転移は、M原子の配列が基本的に維持される形で進行する。詳細には、板状単結晶体400は、[001]配向であったが、加熱によるトポタクティックな相転移により、[111]配向した板状単結晶体100になる。その結果、金属水酸化物膜1000は、板状単結晶体100からなる金属酸化物薄膜600となり、金属酸化物薄膜600は、全体として[111]に完全配向している。
【0073】
また、ステップS960の加熱によるトポタクティックな相転移において、板状単結晶体400のモルフォロジおよび基材610上での配置は、板状単結晶体100においても維持されるので、板状単結晶体100が、互いに重なることなく、最密充填様に配列した金属酸化物薄膜600が得られる。
【0074】
ステップS960は、基材610とともに加熱するので、トポタクティックな相転移に加えて、基材610と金属酸化物薄膜600との密着性を向上させる効果もある。図9および図10の製造方法によれば、基材610と金属酸化物薄膜600とを密着させるさらなるアニール等を必要としないので、実用化に向けたプロセスの省略、製造コストの削減ができる。
【0075】
なお、ステップS950を複数回繰り返すことによって、板状単結晶体400が積層された金属水酸化物膜(図示せず)が得られる。このような金属水酸化物膜にステップS960を行えば、多層構造の金属酸化物薄膜(図示せず)を得ることができる。ステップS950の回数は、金属酸化物薄膜の所望の膜厚に応じて、任意である。
【0076】
以上、図9および図10を参照して説明したように、本発明の金属酸化物薄膜600は、M(OH)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体400の二次元異方性を利用して製造される。本発明の方法は、物理気相成長法または化学気相成長法に代表される、複雑、大規模かつ高価な装置を必要としないので、容易かつ安価に結晶性および配向性に優れた機能薄膜を提供できる。また、本発明の製造方法によれば、大きな容器さえ入手すれば、容易に大面積化も可能であるので、実用化に好適である。また、本発明の方法によれば、M(OH)からMOまたはMへのトポタクティックな相転移のための加熱によって、金属酸化物薄膜600と基材610との密着性が向上するため、さらなるアニールが不要となるため好ましい。
【0077】
なお、実施の形態2では、MOおよびMで表される金属酸化物からなる板状単結晶体を、それぞれ単独で用いた金属酸化物薄膜を詳述してきたが、MOおよびMを組み合わせても用いてもよい。
【0078】
(実施の形態3)
実施の形態3は、実施の形態1および2で説明した板状単結晶体100(図1)および金属酸化物薄膜600(図6)の用途について詳述する。
【0079】
図11は、本発明による抵抗変化型素子を示す模式図である。
【0080】
抵抗変化型素子1100は、第1の電極1110と、第1の電極1110上に位置する抵抗体1120と、抵抗体1120上に位置する第2の電極1130とを含む。図11では、第1の電極1110と第2の電極1130とにパルス電圧印加装置等の電源1140が接続されている様子を示す。
【0081】
第1の電極1110は、図11では、基材1150と基材1150上に位置する電極材料1160からなる。基材1150は、例えば、シリコン基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等であり得る。電極材料1160は、Ag、Au、Pt、Ru、RuO、Ir、IrO、TiO、TiN、TiAlN、Ta、TaN、導電性ポリマー等であり得る。図11のように、第1の電極1110が、基材1150と電極材料1160とから構成されれば、抵抗変化型素子1100の取扱が容易となる。なお、基材1150が、Ag、Au、Pt等の導電性金属材料からなる金属基板、あるいは、導電性ポリマーからなる有機基板である場合には、電極材料1160は不要である。
【0082】
抵抗体1120は、実施の形態1で説明したMOまたはMで表される金属酸化物からなる板状単結晶体100(図1)である。板状単結晶体100の説明は省略する。
【0083】
第2の電極1130もまた、電極材料1160と同様に、Ag、Au、Pt、Ru、RuO、Ir、IrO、TiO、TiN、TiAlN、Ta、TaN、導電性ポリマー等であり得る。図11では、第2の電極1130は、抵抗体1120上に付与されるように示されるが、第2の電極1130として針状の電極材料を抵抗体1120と接触させてもよい。
【0084】
抵抗体1120として単一の板状単結晶体100からなる抵抗変化型素子1100の製造方法は、例えば、図7および図9の製造方法において、ステップS740またはステップS940の表面圧の印加を省略すればよい。これにより、板状単結晶体100が第1の電極1100上に最密充填様に配列することなく、ランダムに配列するので、適切に切断することによって、抵抗変化型素子1100を得ることができる。
【0085】
図12は、本発明による別の抵抗変化型素子を示す模式図である。
【0086】
抵抗変化型素子1200は、図11の抵抗変化型素子1100と同様に、第1の電極1110と、第1の電極1110上に位置する抵抗体1210と、抵抗体1210上に位置する第2の電極1130とを含む。図12では、第1の電極1110と第2の電極1130とにパルス電圧印加装置等の電源1140が接続されている様子を示す。
【0087】
抵抗変化型素子1200は、図11の抵抗体1120に代えて、実施の形態2で説明したMOまたはMで表される金属酸化物からなる板状単結晶体100(図1)からなる金属酸化物薄膜600(図6)を抵抗体1210とした以外は、抵抗変化型素子1100と同様である。
【0088】
次に、このような構成の抵抗変化型素子1100および1200の動作を説明する。
【0089】
図13は、本発明による抵抗変化型素子の動作を示す模式図である。
【0090】
図13(A)は、本発明による板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600における抵抗状態の変化を模式的に示す。図13(A)は、板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600を電極で挟んだ状態である。図13(A)の左図に示すように、例えば、初期状態において、板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600の電気抵抗(10Ω〜1014Ω)は極めて高く、絶縁体のような状態である。一方、図13(A)右図に示すように、板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600に所定の電圧を印加すると、板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600にフィラメントのような線状の導通パス1310が生成され、電気抵抗が小さくなる。
【0091】
図13(B)は、本発明による板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600における電流と電圧との関係を模式的に示す。
【0092】
プロファイル(1)に示すように、板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600の初期状態では電圧を印加しても実質的に電流が流れず、絶縁体のような状態である。しかしながら、電圧が所定の電圧(V)に達すると、導通パス1310が生成し、板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600に急激に電流が流れ、低抵抗状態になる。このプロファイル(1)の動作をフォーミング動作という。
【0093】
プロファイル(2)に示すように、フォーミング動作後の低抵抗状態にある板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600に電圧を印加すると、電圧が所定の電圧(V)に達すると、板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600中の導通パス1310が破断され、急激に電流が流れなくなり、高抵抗状態に戻る。したがって、高抵抗状態を情報「0」とすると、プロファイル(2)により、情報「0」が板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600に記録されたことになる。一旦板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600が高抵抗状態になると電圧を取り去っても高抵抗状態を維持する。すなわち、書き込まれた情報は不揮発性である。
【0094】
このプロファイル(2)の動作をリセット動作といい、リセット動作において流れる電流をリセット電流(I)という。ここで本発明の板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600を用いた抵抗変化型素子のリセット電流Iは、1mA未満であり、動作速度を向上させるだけでなく、抵抗変化型素子の発熱を抑制できるので有利である。
【0095】
プロファイル(3)に示すように、リセット動作後の高抵抗状態にある板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600に電圧を印加すると、電圧が所定の電圧(V)に達すると、板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600に再度導通パス1310が生成され、急激に電流が流れだし、低抵抗状態になる。したがって、低抵抗状態を情報「1」とすると、プロファイル(3)により、情報「1」が板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600に記録されたことになる。一旦板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600が低抵抗状態になると電圧を取り去っても低抵抗状態を維持する。すなわち、書き込まれた情報は不揮発性である。このプロファイル(3)の動作をセット動作という。
【0096】
このように、板状単結晶体100および金属酸化物薄膜600は、抵抗変化効果を有し、高抵抗状態と低抵抗状態とを繰り返しメモリ動作を実現する。
【0097】
図14は、本発明の抵抗変化型素子のメモリ動作を示す模式図である。
【0098】
フォーミング動作後、抵抗変化型素子1100および1200は低抵抗状態にある。高抵抗状態を情報「0」とし、低抵抗状態を情報「1」とする。この情報「0」および「1」の割り当ては、任意である。
【0099】
抵抗変化型素子1100、1200に情報「0」を記録する場合、電源1140により電圧パルスP(Pの電圧値はVに等しい)を印加する。これにより、抵抗変化型素子1100、1200の抵抗体1120、1210は、低抵抗状態から高抵抗状態へと変化する。この結果、抵抗変化型素子1100、1200には情報「0」が記録される(リセット動作)。
【0100】
抵抗変化型素子1100、1200に情報「1」を記録する場合、電源1140により電圧パルスP(Pの電圧値はVに等しい)を印加する。これにより、抵抗変化型素子1100、1200の抵抗体1120、1210は、高抵抗状態から低抵抗状態へと変化する。この結果、抵抗変化型素子1100、1200には情報「1」が記録される(セット動作)。
【0101】
以降は、リセット動作とセット動作とを繰り返し行うことによってメモリ動作する。ここで、電圧パルスPとPとは、異なる方向の電圧であり、本発明の抵抗変化型素子1100および1200をバイポーラ型で動作させたが、ユニポーラ型で動作させてもよい。
【0102】
次に、このような抵抗変化型素子1100、1200に記録された情報を読み出す場合には、電源1140を介して抵抗が変化しない電圧(<<V、V)を抵抗変化型素子1100、1200に印加すればよい。その際に抵抗変化型素子1100、1200に流れる電流は、抵抗体1120、1210の状態(高抵抗状態または低抵抗状態)に応じて異なるので、これらの電流値から容易に情報を読み出すことができる。
【0103】
さらに、本発明の抵抗変化型素子1100、1200は、電源を切っても抵抗体1120、1210の電気抵抗は変化しないので、不揮発性である。
【0104】
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
【実施例1】
【0105】
実施例1では、MがCoであるCo(OH)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体(以降では単にCo(OH)板状単結晶体と呼ぶ)を出発原料として、図9および図10の製造方法を用いて、CoOで表される金属酸化物からなる板状単結晶体からなる金属酸化物薄膜(以降では単にCoO膜と呼ぶ)を製造した。
【0106】
実施例1によるCoO膜の製造に先立って、Co(OH)板状単結晶体を製造した。
【0107】
図15は、Co(OH)板状単結晶体を製造する様子を示す図である。
【0108】
図15に示すように、非特許文献1を参照し、CoCl・6HOとヘキサメチレンテトラミン(HMT)とを含有する水溶液(CoCl・6HO濃度は5mMと7.5mMとであった)を還流する均一沈殿法によりCo(OH)板状単結晶体を製造した。
【0109】
このようにして得られた生成物がCo(OH)板状単結晶体であることを観察および構造解析により確認した。具体的には、生成物の外観等を、デジタルカメラ、走査型電子顕微鏡SEM(Keyence VE8800)および透過型電子顕微鏡TEM(JEOL JEM−3100F)を用いて観察した。また、TEMを用いた電子回折パターン、および、粉末X線回折装置(Rigaku RINT−2200、モノクロメータで単色化したCuKα線(λ=0.15405nm))を用いたX線回折パターンにより、生成物の構造解析をした。これらの結果を図16〜図18に示す。図16〜図17は、CoCl・6HO濃度が5mMの水溶液から製造された生成物の結果を示す。
【0110】
図16は、実施例1によるCo(OH)板状単結晶体の外観(A)とSEM像(B)とを示す図である。
【0111】
図16(A)によれば、均一沈殿法によって得られた生成物は、乳白色を帯びたピンク色であった。図16(B)によれば、生成物が六角形状であり、その横サイズLが約4μmであることを確認した。厚さサイズは約30nmであり、アスペクト比が約111であった。
【0112】
図17は、実施例1によるCo(OH)板状単結晶体のTEM像(A)と電子回折パターン(B)とを示す図である。
【0113】
図17(A)によれば、図16(B)と同様に、生成物が六角形状を有することが分かった。図17(B)は、完璧な六角形に並ぶ回折スポットを示し、二次元の面内回折として(100)、(110)および(010)に指数付けでき、[001]方向に沿って得られた電子回折パターンであることが分かった。
【0114】
図18は、実施例1によるCo(OH)板状単結晶体のX線回折パターンを示す図である。
【0115】
回折ピークは、いずれも、ブルーサイト型Co(OH)(空間群P ̄3m1)に指数付けされ(JCPDSカードNo.74−1057)、それ以外の回折ピークは見られなかった。
【0116】
なお図示しないが、CoCl・6HO濃度が7.5mMの水溶液から製造されたCo(OH)板状単結晶体は、横サイズが2μmであった以外は、図16〜18と同様であった。
【0117】
以上、図16〜図18より、得られた乳白色を帯びたピンク色の生成物が、Co(OH)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体であることを確認した。
【0118】
このようにして得られたCo(OH)板状単結晶体(横サイズ4μm、2μm)を重力沈降および遠心分離(500rpm、10分)を7〜10回繰り返し行い、横サイズの単分散性を向上させた。
【0119】
次に、Co(OH)板状単結晶体を用いて、本発明のCoO膜を基材上に製造した。基材には、(100)Si基板、石英基板および導電性Pt基板を用いた。Si基板および石英基板を、HCl/CHOH溶液(1:1)、次いで、濃HSOにそれぞれ30分間浸漬させ、洗浄した。Pt基板は、接着Ti層を付与した熱酸化Si基板上にPtを蒸着することによって得た。Pt基板を、オゾン雰囲気中、UV光を照射することにより、光化学的に洗浄した。
【0120】
下水相として水(ミリQ水、80cm)が入ったラングミュアトラフ(Filgen、LB40−KBC)に、単分散性を向上させたCo(OH)板状単結晶体(80mg)を分散させ、分散液を得た(図10(A))。なお、ラングミュアトラフは、テフロン(登録商標)コーティングされており表面圧を測定するためのウィルヘルミーバランスを備えている。ラングミュアトラフの有効トラフ表面積、および、トラフ容積は、それぞれ、24.3×5cm、および、100cmであった。
【0121】
次いで、第1の溶媒としてヘキサン(8cm)を分散液に添加し、水とヘキサン(第1の溶媒)との界面を形成した(図9のステップS910および図10(B))。
【0122】
シリンジポンプ(Harvard Apparatus、MA170−228)で操作させたハミルトンシリンジを用いて、第2の溶媒としてブタノール(1.5cm)を、0.1cm/分の速度で界面にゆっくり添加した(図9のステップS920および図10(C))。ブタノール添加前の分散液中のCo(OH)板状単結晶体は、界面に対して90°を下回る接触角を有していたが、ブタノール添加後、Co(OH)板状単結晶体は、表面エネルギーの変化により界面に対して90°の接触角を有した。これにより、下水相に分散していたCo(OH)板状単結晶体が、ただちに、水とヘキサンとの界面にトラップされ、連続する膜(トラップされたCo(OH)板状単結晶体、または、単にCo(OH)膜と呼ぶ)が形成されることを確認した。
【0123】
ヘキサン(第1の溶媒)を蒸発により除去した(図9のステップS930および図10(D))。続いて、トラップされたCo(OH)板状単結晶体(Co(OH)膜)に表面圧を印加した(図9のステップS940および図10(E))。Co(OH)膜の表面圧が、15mNm−1になるまで3mm/分で印加された。
【0124】
図19は、トラップされたCo(OH)板状単結晶体の表面圧−表面積(π−A)曲線を示す図である。
【0125】
図19は、15mNm−1の一定表面圧下における膜が基材に転写される挙動を示す。図19の横軸は、表面圧を印加する前かつ膜が基材に転写される前の面積に対する表面の割合を示す。
【0126】
次いで、分散液に基材(Si基板、石英基板、導電性Pt基板)を浸漬させ、垂直引上法(引上速度3mm/分)により、トラップされたCo(OH)板状単結晶体(Co(OH)膜)を基材に転写した(図9のステップS950および図10(E))。この際、表面圧は15mNm−1に維持した。このようにして各基板上にトラップされたCo(OH)板状単結晶体(Co(OH)膜)を得た。簡単のため、以降では、Si基板上のCo(OH)膜、石英基板上のCo(OH)膜、および、Pt基板上のCo(OH)膜を、それぞれ、Co(OH)膜/Si、Co(OH)膜/石英、および、Co(OH)膜/Ptと称する。
【0127】
Co(OH)膜/Siについて膜の断面および表面をデジタルカメラおよびSEMで観察した。観察結果を図20〜図22に示す。Co(OH)膜/Si、Co(OH)膜/石英、および、Co(OH)膜/PtについてX線回折パターンを測定した。測定結果を図23に示す。
【0128】
Co(OH)膜/Si、Co(OH)膜/石英、および、Co(OH)膜/Ptを、赤外線イメージ炉(MILA−3000)を用いて真空中、600℃、10分加熱し、Co(OH)をCoOに相転移させた(図9のステップS960、図3のステップS310)。
【0129】
加熱後のCo(OH)膜/Siについて、X線回折パターンを測定し、SEMによる表面観察を行った。結果を図24および図25に示す。加熱後のCo(OH)膜/石英について、分光光度計(Hitachi、U−4100)を用いてUV−vis吸収スペクトルを測定した。測定結果を図26に示す。また、UV−vis吸収スペクトルから光学的バンドギャップを算出した。結果を図27に示す。
【0130】
図20〜図27の結果について詳述する。
【0131】
図20は、実施例1によるCo(OH)膜/Siの膜の断面のデジタルカメラ画像(A)およびSEM像(B)を示す図である。
【0132】
図20の試料は、横サイズ4μmのCo(OH)板状単結晶体を用いたCo(OH)膜である。図20(A)および(B)によれば、Si基板上にCo(OH)板状単結晶体からなる連続した膜が得られたことが分かった。その膜厚は、Co(OH)板状単結晶体の厚さサイズを反映し、約30nmであった。図示しないが、横サイズ4μmのCo(OH)板状単結晶体を用いた場合も同様の結果であった。
【0133】
図21は、実施例1によるCo(OH)膜/Siの膜の表面のSEM像を示す図である。
図22は、実施例1による別のCo(OH)膜/Siの膜の表面のSEM像を示す図である。
【0134】
図21および図22の試料は、それぞれ、横サイズ4μmおよび2μmのCo(OH)板状単結晶体を用いたCo(OH)膜である。図21および図22によれば、いずれも、Co(OH)板状単結晶体の横サイズに関わらず、六角形状のCo(OH)板状単結晶体は、その平面がSi基板の表面と平行になるように位置していた。詳細には、Co(OH)板状単結晶体のエッジ同士が接触するように、すなわち、Co(OH)板状単結晶体の平面方向に最密充填様に配列していることが分かった。
【0135】
図23は、実施例1によるCo(OH)膜/Pt(a)、Co(OH)膜/Si(b)およびCo(OH)膜/石英(c)の膜のXRDパターンを示す図である。
【0136】
図23(a)〜(c)のいずれも、基板からの回折ピーク(Pt(111)およびSi(400))を除くすべての回折ピークが、ブルーサイトCo(OH)(JCPDS74−1057)に指数付けされる底面反射系列00l(l=1、2、3)に一致した。面間隔は4.6Åであった。図17で示すCo(OH)板状単結晶体の粉末X線回折パターンに見られた、面内反射(例えば、(100)、(110))は、図23(a)〜(c)のXRDパターンには一切見られなかった。
【0137】
ブルーサイト型水酸化物において、6個のヒドロキシル基が配位したCoイオンからなる八面体ユニットは、稜を共有し、無限に広がった電荷中性層を形成する。
【0138】
以上の図20〜図23より、Co(OH)板状単結晶体の横サイズあるいは基材の種類に関わらず、Co(OH)板状単結晶体が平面方向に最密充填様に配列し、かつ、Co(OH)板状単結晶体のそれぞれが[001]方向に配向した、Co(OH)膜(膜は[001]に完全に配向している)が得られたことが確認された。
【0139】
図24は、実施例1による、Co(OH)膜/Si(a)およびCoO膜/Si(b)の膜のXRDパターンを示す図である。
【0140】
図24(a)は、図23(b)と同一である。図24(a)と(b)とを比較すると、真空中、600℃、10分の加熱により、XRDパターンは劇的な変化をした。図24(b)のXRDパターンによれば、図24(a)の回折ピークはすべて消失し、異なる位置に2つの回折ピークのみを示した。
【0141】
これら2つの回折ピークは、岩塩型コバルト酸化物I(CoO、JCPDS75−0418)の(111)および(222)反射に指数付されることが分かった。この結果は、[001]配向したCo(OH)膜/Siが、上記加熱により、[111]完全配向したCoO膜/Siに相転移したことを示す。なお、図示しないが、加熱したCo(OH)膜/石英およびCo(OH)膜/Ptにおいても、同様のXRDパターンが得られた。
【0142】
図25は、実施例1によるCoO膜/Siの膜の表面のSEM像を示す図である。
【0143】
図25の試料は、横サイズ2μmのCo(OH)板状単結晶体を用いたCo(OH)膜を加熱した試料である。図25によれば、横サイズ2μmおよび厚さ30nmである六角形状の板状単結晶体の平面がSi基板の表面と平行になるように位置していた。図24より試料全体がCoOであることが分かっているので、この六角形状の板状単結晶体はCoOで表される金属酸化物からなる板状単結晶体(CoO板状単結晶体と呼ぶ)である。図25によれば、加熱したCo(OH)膜/Siは、Si基板上に、CoO板状単結晶体のエッジ同士が接触するように、すなわち、CoO板状単結晶体がその平面方向に最密充填様に配列していることが分かった。
【0144】
図21と図25とを比較すると、上記加熱によっても、出発原料に用いたCo(OH)板状単結晶体のサイズ、モルフォロジ、ならびに、その最密充填様の配列が維持されることが確認された。なお、図示しないが、加熱したCo(OH)膜/石英およびCo(OH)膜/Ptにおいても、同様であった。
【0145】
簡単のため、Co(OH)膜/Si、Co(OH)膜/石英、および、Co(OH)膜/Ptを加熱して相転移した試料を、それぞれ、CoO膜/Si、CoO膜/石英、および、CoO膜/Ptと称する。
【0146】
以上図24および図25より、図3のステップS310および図9のステップS960の加熱により、M(OH)がMOにトポタクティックに相転移されることが示された。また、図9の製造方法を用いれば、MOで表される金属酸化物からなる板状単結晶体が、その平面方向に最密充填様に配列し、[111]完全配向した金属酸化物薄膜が得られることが示された。
【0147】
図26は、実施例1によるCoO膜/石英のUV−vis吸収スペクトルを示す図である。
図27は、実施例1によるCoO膜/石英の光学バンドギャップを示す図である。
【0148】
バンドギャップEgは次式から算出できる。
αhν=A(hν―Eg)
ここで、αは吸収係数であり、hνは光子エネルギーであり、Aは材料固有の定数であり、nは2(間接遷移の場合)または1/2(許容直接遷移の場合)である。(αhν)1/nをhν(eV)に対してプロットすると、図27に示されるように、直線部分が得られる。
【0149】
図27に示されるように、n=1/2の場合にもっともよく直線部分にフィットした。したがって、CoO膜が許容直接遷移であることが分かった。直線部分を(αhν)=0まで掃引することにより、CoO膜の光学バンドギャップは2.6eVと算出された。この値は、モット型絶縁体として報告されているCoOのそれ(約2.5±0.3eV)によく一致した。
【0150】
以上、図26および図27より、図3のステップS310および図9のステップS960の加熱により得られたMOは、初期状態において絶縁体であることが示された。また、図9の製造方法を用いれば、MOで表される金属酸化物からなる板状単結晶体が、その平面方向に最密充填様に配列し、[111]完全配向し、絶縁性に優れた金属酸化物薄膜が得られることが示された。
【実施例2】
【0151】
実施例2では、実施例1で得たCoO膜/Pt基板を用いて、抵抗変化型素子を製造した。抵抗変化型素子の模式図を図28に示す。
【0152】
図28は、実施例2による抵抗変化型素子の模式図である。
【0153】
抵抗変化型素子2800は、第1の電極1110と、第1の電極1110上に置する抵抗体1210と、抵抗体1210上に位置する第2の電極1130とを含む。ここで、第1の電極1110は、接着Ti層を付与した熱酸化Si基板上にPtを蒸着することによって得た、上述のPt基板である。抵抗体1210は、図9の製造方法を用いてPt基板上に製造したCoO膜(出発原料に用いたCo(OH)板状単結晶体の横サイズは2μmであった)である。抵抗体1210上に第2の電極1130としてTaまたはPt金属を、シャドウマスク(Φ=100μm)を用いて蒸着した。このような抵抗変化型素子2800を電源1140としてパルス電圧印加装置に接続した。
【0154】
抵抗変化型素子2800をSEMで観察し、パルスジェネレータを備えた半導体パラメータアナライザ(Keithley、4200−SCS)を用いて電気特性を測定した。結果を図29〜図31に示す。
【0155】
図29は、実施例2による抵抗変化型素子のSEM像を示す図である。
【0156】
図29においてコントラストが明るく示される円形部分が、第2の電極1130として蒸着したTa(Pt)金属であることを確認した。なお、第2の電極1130の径Φが100μmであることから、第2の電極1130は、CoO膜中の数百個のCoO板状単結晶体を覆っていることになる。
【0157】
図30は、実施例2による抵抗変化型素子のスイッチング特性(I−V)を示す図である。
【0158】
第1の電極1110と第2の電極1130との間に電源1140を接続し、Wプローブを用いて、電気特性(I−V)を測定した。抵抗変化型素子2800に0Vから5Vまで電圧を印加し(プロファイルa)、次いで、0Vから1.5Vまで電圧を印加し(プロファイルb)、再度、0Vから3Vまで電圧を印加した(プロファイルc)際の電流変化を調べた。
【0159】
図30において、CoO膜は、初期状態(プロファイルaの低電圧側)において1013Ω以上の高抵抗を有することが分かった。CoO膜がこのような高抵抗を有することから、CoO膜には、CoO板状単結晶体の配列に起因した明確なリークパスは存在せず、膜全体に均一な特性を有することが分かった。プロファイルaによれば、0Vから約4.5Vまで電圧を増大すると、抵抗変化型素子2800は、高抵抗状態から低抵抗状態に突然抵抗変化を示した。低抵抗状態におけるCoO膜の電気抵抗は、約1×10Ωであった。この挙動からプロファイルaがフォーミング動作であることを確認した。
【0160】
プロファイルbによれば、0Vから1.0Vまで電圧を増大すると、抵抗変化型素子2800は、低抵抗状態から高抵抗状態に再度抵抗変化を示した。この挙動からプロファイルbがリセット動作であることを確認した。ここでリセット電流は、数10−4Aであり1mA未満であった。このような低いリセット電流は、抵抗変化型素子の動作速度を向上させるだけでなく、抵抗変化型素子の発熱を抑制できるので有利である。
【0161】
プロファイルcによれば、0Vから約2Vまで電圧を増大すると、抵抗変化型素子2800は、高抵抗状態から低抵抗状態に再度抵抗変化を示した。この挙動からプロファイルcがセット動作であることを確認した。
【0162】
高抵抗状態と低抵抗状態との間の抵抗のウィンドウ(RHRS/RLRS)は、約1×10であり、既存の物理的気相成長法で製造したCoO膜を用いたそれを超える、あるいは、匹敵する性能を持つことが分かった。したがって、本発明の製造方法によって得られたMO膜を抵抗変化型素子に適用すれば、広いウィンドウにより情報(「1」または「0」)を確実に区別できる。
【0163】
以上のプロファイルa〜cにより、本発明によるMOで表される金属酸化物薄膜は、フォーミング動作またはセット動作により金属酸化物薄膜中に局所的な導電性フィラメントが形成され、リセット動作により形成された導電性フィラメントが破断される、既存の二元系酸化物と同じメカニズムの抵抗変化効果を有することが分かった。しかしながら、本発明の金属酸化物薄膜は、MOで表される金属酸化物の板状単結晶体が所定の配列をした薄膜であるため、既存物理的気相成長法で得られる二元系酸化物と異なり、極めて低いリセット電流(1<mA)でリセット可能であり、まったく新しい特性を発揮することが確認された。
【0164】
図31は、実施例2による抵抗変化型素子のセット/リセット動作の繰り返し試験の結果を示す図である。
【0165】
抵抗変化型素子2800にセット動作の2.8V/20nsの電圧と、リセット動作の−3.0V/20nsの電圧とを50回まで繰り返し印加した。リセット動作が生じない微小電圧(0.1V)を用いて、繰り返しの間の抵抗変化型素子2800の抵抗状態を読み出した。
【0166】
図31に示されるように、セット動作およびリセット動作を繰り返しても、高抵抗状態および低抵抗状態を安定して示すことが分かった。このことから、本発明の抵抗変化型素子は、動作の安定性に優れ、低電圧駆動の不揮発性のメモリとなり得ることが示された。
【実施例3】
【0167】
実施例3では、実施例1で得た単一のCoO板状単結晶体(出発原料に用いたCo(OH)板状単結晶体の横サイズは4μmであった)を用いた抵抗変化型素子を製造した。実施例3は、実施例1と同じPt基板を用い、図9のステップS940(表面圧の印加)を省略した以外は、実施例1と同様の手順であった。
【0168】
実施例3は、表面圧を印加することなくPt基板に転写された、界面にトラップされたCo(OH)板状単結晶体が、その板状結晶面がPt基板の平面と平行になるように位置するが、その平面方向に最密充填様に配列せず、ランダムかつ隙間を有して配列している点が、実施例1と異なる。このようにして得たPt基板上のCoO膜の表面を原子間力顕微鏡AFM(SIIナノテクノロジー、E−Sweep)により観察した。観察には、導電性Pt/IrでコートされたSiカンチレバーを用いた。観察結果を図32に示す。
【0169】
図32は、実施例3によるCoO膜/PtのAFM像を示す図である。
【0170】
図32によれば、CoO膜は、CoO板状単結晶体の最密充填様の配列ではなくCoO板状単結晶体間に隙間を有するランダムな配列からなっていることが分かった。このことから、表面圧の印加(図7のステップS740あるいは図9のステップS940)は、板状単結晶体を最密充填様に配列させるに好適であることが示された。
【0171】
次に、得られたCoO膜/Ptを適切に切断等することにより個々のCoO板状単結晶体を用いた抵抗変化型素子を製造した。切断後のPt基板上のCoO板状単結晶体をTEMで観察した。観察結果を図33に示す。
【0172】
図33は、実施例3によるCoO板状単結晶体/PtのTEM像(A)および電子回折パターン(B)を示す図である。
【0173】
図33(A)によれば、図17(A)と同様に、CoO板状単結晶体が、六角形状を有することが分かった。図33(B)は、完璧な六角形に並ぶ回折スポットを示し、二次元の面内回折として(101 ̄)、(21 ̄1 ̄)および(11 ̄0)に指数付けでき、[111]方向に沿って得られた電子回折パターンであることが分かった。なお、記号「 ̄」は、直前の数字の上に付されていることを意味する。
【0174】
単一のCoO板状単結晶体を用いた抵抗変化型素子の電気特性を測定した。測定には、AFMを用いた。抵抗変化型素子の構成を図34に示し、電気特性を図35に示す。
【0175】
図34は、実施例3による抵抗変化型素子の模式図である。
【0176】
抵抗変化型素子3400は、第1の電極1110と、第1の電極1110上に置する抵抗体1120と、抵抗体1120上に位置する第2の電極1130とを含む。ここで、第1の電極1110は、接着Ti層を付与した熱酸化Si基板上にPtを蒸着することによって得た、上述のPt基板である。抵抗体1120は、図9の製造方法(ただしステップS940を除く)を用いてPt基板上に製造したCoO板状単結晶体である。抵抗体1120上に第2の電極1130として導電性のPt/IrコートされたSiカンチレバーを用いた。このような抵抗変化型素子3400を電源(図示せず)に接続した。
【0177】
図35は、実施例3による抵抗変化型素子のスイッチング特性(I−V)を示す図である。
【0178】
第1の電極1110と第2の電極1130との間に直流電圧掃引装置(図示せず)を接続し、電気特性(I−V)を測定した。抵抗変化型素子3400に0Vから5Vまで電圧を印加し(プロファイルa)、次いで、0Vから1.0Vまで電圧を印加し(プロファイルb)、0Vから−3Vまで電圧を印加し(プロファイルc)、−3Vから3Vまで電圧を印加した(プロファイルd)際の電流変化を調べた。
【0179】
図35において、CoO板状単結晶体は、初期状態(プロファイルaの低電圧側)において1012Ωの高抵抗を有することが分かった。CoO板状単結晶体がこのような高抵抗を有することから、モット型絶縁体の性質に良好に一致する。プロファイルaによれば、0Vから約3Vまで電圧を増大すると、抵抗変化型素子3400は、高抵抗状態から低抵抗状態に突然抵抗変化を示した。低抵抗状態において抵抗変化型素子3400は100nAを示し、この値がコンプライアンス電流となる。低抵抗状態におけるCoO膜の抵抗は、約1×10Ωであった。この挙動からプロファイルaがフォーミング動作であることを確認した。
【0180】
プロファイルbによれば、0Vから1.0Vまで電圧を増大しても、抵抗変化型素子3400は低抵抗状態を維持した。すなわち、フォーミング動作後、1.0V以下の電圧であれば、一定のコンプライアンス電流を達成するので、情報を不揮発性に保存できる。
【0181】
プロファイルcによれば、0Vから−3.0Vまで電圧を増大すると、抵抗変化型素子3400は、印加電圧が−2.8Vにおいて低抵抗状態から高抵抗状態に再度抵抗変化を示した。この挙動からプロファイルcがリセット動作であることを確認した。ここでリセット電流は、100nAであり、1mA未満であった。このような低いリセット電流は、抵抗変化型素子の動作速度を向上させるだけでなく、抵抗変化型素子の発熱を抑制できるので有利である。
【0182】
プロファイルdによれば、−3.0Vから約3.0Vまで電圧を増大すると、抵抗変化型素子3400は、高抵抗状態から低抵抗状態に再度抵抗変化を示した。この挙動からプロファイルdがセット動作であることを確認した。
【0183】
このように、実施例3によれば、単一のCoO板状単結晶体であっても、高抵抗状態(すなわち、情報「0」またはオフ)と低抵抗状態(情報「1」またはオン)との間の遷移を外部電界によって誘起することができることが確認された。以上より、本発明の単一のMO板状単結晶体は、抵抗変化型素子に適用でき、不揮発性メモリとして機能し得る。
【実施例4】
【0184】
実施例4では、MがCoであるCo(OH)板状単結晶体(横サイズは4μmであった)を出発原料として、図9および図10の製造方法を用いて、Coで表される金属酸化物からなる板状単結晶体からなる金属酸化物薄膜(以降では単にCo膜と呼ぶ)を製造した。
【0185】
実施例4は、実施例1における赤外線イメージ炉を用いた加熱条件(真空中、600℃、10分)を、マッフル炉を用いた大気中、800℃、2時間に変更した以外は同様であった。加熱後のCo(OH)膜/石英について、X線回折パターンを測定し、TEMにより観察した。結果を図36および図38に示す。また、加熱後のCo(OH)膜/石英について、SPring−8(BL15XU、hν=5.95eV@300K)にて硬X線光電子分光法を行った。結合エネルギーを金薄膜のフェルミ準位を用いて算出した。
【0186】
図36は、実施例4によるCo膜/石英のXRDパターンを示す図である。
【0187】
図36(a)のXRDパターンは、加熱前のCo(OH)膜/石英のXRDパターンであり、図36(b)のXRDパターンは、加熱後のCo(OH)膜/石英のXRDパターンである。図36(a)のXRDパターンは、図23(a)のそれと同様に、(001)、(002)、(003)の回折ピークを示し、[001]配向したCo(OH)膜であることを確認した。
【0188】
図36(b)によれば、3つの回折ピークを示したが、これら3つの回折ピークは、スピネル型コバルト酸化物(Co、JCPDS74−2120)の(111)、(222)および(333)反射に指数付されることが分かった。このことから、加熱後のCo(OH)はCoであり、[111]完全配向したCo膜/石英が得られることが確認された。
【0189】
図37は、実施例4によるCo膜/石英のCo2p内殻光電子スペクトルを示す図である。
【0190】
図37(a)および(b)は、それぞれ、実施例1によるCoO膜/石英および実施例4によるCo膜/石英の内殻光電子スペクトルである。図37(a)によれば、メインピークの結合エネルギーは780.1eVであり、Coが2価の状態であることを示した。一方、図37(b)によれば、メインピークは、図37(a)のそれと比べて、低エネルギー側にシフトし、778.6eVの結合エネルギーを有した。このことからも、Coの一部が3価の状態にあることを示し、上記加熱により、Co(OH)がCoに相転移したことが示された。
【0191】
図38は、実施例4によるCo膜/SiのTEM像を示す図である。
【0192】
図38によれば、実施例4で得たCo膜もまた、六角形状を有するCo板状単結晶体からなることが分かった。図示しないが、SEMによる観察により、実施例4で得たCo膜もまた、六角形状を有するCo板状単結晶体が最密充填様に配列していることを確認した。しかしながら、Co板状単結晶体は、実施例1のCoO板状単結晶体と異なり、表面が荒れており、ポーラスであった。これは、図2および図5を参照して説明したように、Coは、一部Co2+からCo3+へ酸化する必要があり、Co(OH)からCoへの相転移には化学的および結晶学的な再構成が生じるためである。しかしながら、このような再構成が生じたにもかかわらず、本発明の加熱条件(図3および図5)を採用すれば、Co(OH)板状単結晶体の六角形状を維持したまま、Co板状単結晶体を得ることができることが示された。
【実施例5】
【0193】
実施例5では、MがCoおよびNiであるCo0.67Ni0.33(OH)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体(以降では単に(Co,Ni)(OH)板状単結晶体と呼ぶ)を出発原料として、図9および図10の製造方法を用いて、CoNiOで表される金属酸化物からなる板状単結晶体からなる金属酸化物薄膜(以降では単にCoNiO膜と呼ぶ)を製造した。
【0194】
Co0.67Ni0.33(OH)で表される金属水酸化物((Co,Ni)(OH))の板状単結晶体は、CoCl・6HOに加えて、NiCl・6HOを加えた以外は、実施例1と同様の手順で製造された。このようにして得た(Co,Ni)(OH)板状単結晶体(横サイズは2μmであった)を出発原料として、実施例4と同様の手順でCoNiO膜をSi基板およびガラス基板上に製造した。
【0195】
界面にトラップされた(Co,Ni)(OH)板状単結晶体を基材としてSi基板に移した試料((Co,Ni)(OH)膜/Si)をSEMで観察し、X線回折パターンを測定した。結果を図39および図40に示す。
【0196】
(Co,Ni)(OH)膜/Siを、マッフル炉を用い、大気中、800℃、2時間加熱した試料(CoNiO膜/Si)のX線回折パターンを測定した。結果を図40に示す。
【0197】
図39は、実施例5による(Co,Ni)(OH)膜/Siの膜の表面のSEM像を示す図である。
【0198】
図39によれば、横サイズ2μmおよび厚さ30nmを有し、六角形状の(Co,Ni)(OH)板状単結晶体が、その平面がSi基板の表面と平行になるように位置していた。詳細には、(Co,Ni)(OH)板状単結晶体のエッジ同士が接触するように、すなわち、(Co,Ni)(OH)板状単結晶体は、その平面方向に最密充填様に配列していることが分かった。
【0199】
図40は、実施例5による(Co,Ni)(OH)膜/Si(a)およびCoNiO膜/Si(b)の膜のXRDパターンを示す図である。
【0200】
図40(a)によれば、すべての回折ピークが、ブルーサイトCo(OH)(JCPDS74−1057)に指数付けされる底面反射系列00l(l=1、2、3)に一致した。回折ピークの位置は、図23(b)(Co(OH)膜/Si)に示される回折ピークの位置からわずかにシフトしていた。これは、Co(OH)のCoサイトにNiが固溶したためである。図示しないが、(Co,Ni)(OH)膜から得られる格子定数が、Ni(OH)膜のXRDパターンから得られる格子定数と、図23(b)のXRDパターンから得られる格子定数とによるベガード則にしたがっていることを確認した。
【0201】
図40(b)によれば、3つの回折ピークを示したが、これら3つの回折ピークは、スピネル型コバルト酸化物(Co、JCPDS74−2120)の(111)、(222)および(333)反射に指数付されることが分かった。回折ピークの位置は、図36(b)(Co膜/石英)に示される回折ピークの位置からわずかにシフトしていた。これは、CoのCoサイトにNiが固溶したためである。図示しないが、加熱後の(Co,Ni)(OH)膜から得られる格子定数が、Ni膜のXRDパターンから得られる格子定数と、図36(b)のXRDパターンから得られる格子定数とによるベガード則にしたがっており、加熱後の(Co,Ni)(OH)膜がCoNiO膜であることを確認した。
【0202】
以上、図39および図40によれば、Mが2種以上の固溶系であるM(OH)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体を出発原料として、図9および図10の製造方法を用い、所定の加熱条件を採用することによって、Mが2種以上の固溶系であるMで表される金属酸化物からなる板状単結晶体からなる金属酸化物薄膜を製造できることが確認された。
【実施例6】
【0203】
実施例6では、実施例1と同様にCo(OH)板状単結晶体(横サイズ2μm)を出発原料として、図7および図8の製造方法を用いて、Co膜を製造した。
【0204】
実施例1と同様の手順で製造したCo(OH)板状単結晶体を、マッフル炉を用い、大気中、800℃、2時間加熱した。加熱後の試料(Co板状単結晶体)のX線回折パターンを測定した。結果を図41に示す。
【0205】
図41は、実施例6によるCo板状単結晶体のXRDパターンを示す図である。
【0206】
図41によれば、すべての回折ピークは、スピネル型コバルト酸化物(Co、JCPDS74−2120)の(111)、(220)、(211)、(222)、(400)、(422)、(511)および(440)反射に指数付されることが分かった。図示しないが、加熱後のCo板状単結晶体のSEMによる観察により、横サイズ2μmおよび厚さ30nmを有し、六角形状である板状単結晶体を確認した。したがって、上記加熱によって、Co(OH)板状単結晶体は、トポタクティックにCo板状単結晶体に相変化することが示された。
【0207】
次に、このようにして得られたCo板状単結晶体を用いて、本発明の金属酸化物薄膜を基材(石英基板)上に製造した。石英基板を、HCl/CHOH溶液(1:1)、次いで、濃HSOにそれぞれ30分間浸漬させ、洗浄した。
【0208】
下水相として水(ミリQ水、80cm)が入ったラングミュアトラフに、単分散性を向上させたCo板状単結晶体(80mg)を分散させ、分散液を得た(図8(A))。
【0209】
次いで、第1の溶媒としてヘキサン(8cm)を分散液に添加し、水とヘキサン(第1の溶媒)との界面を形成した(図7のステップS710および図9(B))。
【0210】
シリンジポンプで操作させたハミルトンシリンジを用いて、第2の溶媒としてブタノール(1.5cm)を、0.1cm/分の速度で界面にゆっくり添加した(図7のステップS720および図9(C))。ブタノール添加前の分散液中のCo板状単結晶体は、界面に対して90°を下回る接触角を有していたが、ブタノール添加後、Co板状単結晶体は、表面エネルギーの変化により界面に対して90°の接触角を有した。これにより、下水相に分散していたCo板状単結晶体が、ただちに、水とヘキサンとの界面にトラップされ、連続する膜(トラップされたCo板状単結晶体またはCo膜)が形成されることを確認した。
【0211】
ヘキサン(第1の溶媒)を蒸発により除去した(図7のステップS730および図8(D))。続いて、トラップされたCo板状単結晶体(Co膜)に表面圧を印加した(図7のステップS740および図8(E))。Co膜の表面圧が、15mNm−1になるまで3mm/分で印加された。
【0212】
次いで、分散液に石英基板を浸漬させ、垂直引上法(引上速度3mm/分)により、トラップされたCo板状単結晶体(Co膜)を石英基板に移した(図7のステップS750および図8(E))。この際、表面圧は15mNm−1に維持した。このようにして石英基板上にトラップされたCo板状単結晶体(Co膜)(Co膜/石英)を得た。Co膜/石英をSEMで観察し、X線回折パターンを測定した。結果を図42および図43に示す。
【0213】
図42は、実施例6によるCo膜/石英の表面のSEM像を示す図である。
【0214】
図42によれば、横サイズ2μmである六角形状のCo板状単結晶体が、その平面が石英基板の表面と平行になるように位置していた。また、一部配列の乱れが見られるものの、Co板状単結晶体のエッジ同士が接触するように、すなわち、Co板状単結晶体の平面方向に最密充填様に配列していることが分かった。
【0215】
図43は、実施例6によるCo膜/石英のXRDパターンを示す図である。
【0216】
図43(a)のXRDパターンは、図41のXRDパターンと同一であり、図43(b)のXRDパターンは、Co膜/石英のXRDパターンである。図43(b)のXRDパターンは、図43(a)のXRDパターンと異なり、2つの回折ピークのみを示した。これら2つの回折ピークは、スピネル型コバルト酸化物(Co、JCPDS74−2120)の(111)および(222)反射に指数付され、[111]完全配向したCo膜/石英であることが分かった。
【0217】
以上、図42および図43によれば、Mで表される金属水酸化物からなる板状単結晶体を出発原料として、図7および図8の製造方法を用いることによって、Mで表される金属酸化物からなる板状単結晶体からなる金属酸化物薄膜を製造できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明による板状単結晶体は、ビルディングブロック、超小型抵抗変化型素子、センサに適用される。本発明の金属酸化物薄膜は、抵抗変化型素子およびセンサに適用される。
【符号の説明】
【0219】
100 金属酸化物からなる板状単結晶体
110、410 板状結晶面
400 金属水酸化物からなる板状単結晶体
600 金属酸化物薄膜
610 基材
800 水
810 第1の溶媒
820 界面
830 第2の溶媒
840 表面圧
1000 金属水酸化物膜
1100、1200、2800、3400 抵抗変化型素子
1110 第1の電極
1120、1210 抵抗体
1130 第2の電極
1140 電源
1310 導通パス
【先行技術文献】
【特許文献】
【0220】
【特許文献1】特開2008−290913号公報
【特許文献2】特開2010−229007号公報
【特許文献3】特開平6−256959号公報
【非特許文献】
【0221】
【非特許文献1】Liuら, J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 13869
【非特許文献2】Liangら, Chem. Mater. 2010, 22, 371
【非特許文献3】Shimaら, Appl. Phys. Lett. 2008, 93, 113504

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物からなる板状単結晶体であって、
前記金属酸化物は、MOまたはM(ここで、Mは、Co、Fe、Ni、ZnおよびCuからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素である)で表され、
前記金属酸化物からなる板状単結晶体の形状は、六角形状であり、
前記金属酸化物からなる板状単結晶体のアスペクト比は、10〜500であり、
前記金属酸化物からなる板状単結晶体の平面方向の面は、前記金属酸化物の(111)結晶面である、板状単結晶体。
【請求項2】
前記金属酸化物からなる板状単結晶体は、抵抗変化効果を有する、請求項1に記載の板状単結晶体。
【請求項3】
前記金属酸化物からなる板状単結晶体の高抵抗状態における電気抵抗は、10Ω〜1014Ωの範囲であり、低抵抗状態における電気抵抗は、10Ω〜10Ωの範囲である、請求項1に記載の板状単結晶体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属酸化物からなる板状単結晶体の製造方法であって、
M(OH)(ここで、Mは、Co、Fe、Ni、ZnおよびCuからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素である)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体を加熱するステップを包含する、方法。
【請求項5】
前記金属水酸化物からなる板状単結晶体の形状は、六角形状であり、
前記金属水酸化物からなる板状単結晶体のアスペクト比は、10〜500であり、
前記金属水酸化物からなる板状単結晶体の平面方向の面は、前記金属水酸化物の(001)結晶面である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱するステップは、真空または不活性ガス雰囲気中、200℃〜800℃の温度範囲で前記金属水酸化物からなる板状単結晶体を加熱する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱するステップは、大気中、400℃〜700℃の温度範囲で前記金属水酸化物からなる板状単結晶体を加熱する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属酸化物からなる板状単結晶体からなる金属酸化物薄膜であって、
前記板状単結晶体は、前記板状単結晶体の平面方向に最密充填様に配列し、
前記金属酸化物薄膜は、[111]に配向している、金属酸化物薄膜。
【請求項9】
請求項8に記載の金属酸化物薄膜の製造方法であって、
請求項1〜3のいずれかに記載の金属酸化物からなる板状単結晶体を水に分散させた分散液に、ヘキサンまたはトルエンのいずれかである第1の溶媒を添加し、前記分散液中の水と前記第1の溶媒との界面を形成するステップと、
アルコール類である第2の溶媒をさらに添加し、前記界面に前記金属酸化物からなる板状単結晶体をトラップさせるステップと、
前記第1の溶媒を除去するステップと、
前記界面にトラップされた前記金属酸化物からなる板状単結晶体に表面圧を印加するステップと、
前記第1の溶媒が除去された前記分散液に基材を浸漬させ、前記トラップされた前記金属酸化物からなる板状単結晶体を前記基材に移すステップと
を包含する、方法。
【請求項10】
前記界面を形成するステップに先立って、
M(OH)(ここで、Mは、Co、Fe、Ni、ZnおよびCuからなる群から選択される金属元素である)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体を加熱し、前記金属酸化物からなる板状単結晶体に相転移させるステップをさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項8に記載の金属酸化物薄膜の製造方法であって、
M(OH)(ここで、Mは、Co、Fe、Ni、ZnおよびCuからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素である)で表される金属水酸化物からなる板状単結晶体を水に分散させた分散液に、ヘキサンまたはトルエンのいずれかである第1の溶媒を添加し、前記分散液中の水と前記第1の溶媒との界面を形成するステップと、
アルコール類である第2の溶媒をさらに添加し、前記界面に前記金属水酸化物からなる板状単結晶体をトラップさせるステップと、
前記第1の溶媒を除去するステップと、
前記界面にトラップされた前記金属水酸化物からなる板状単結晶体に表面圧を印加するステップと、
前記第1の溶媒が除去された前記分散液に基材を浸漬させ、前記トラップされた前記金属水酸化物からなる板状単結晶体を前記基材に移すステップと、
前記基材に移された前記金属水酸化物からなる板状単結晶体を加熱するステップと
を包含する、方法。
【請求項12】
第1の電極と、
前記第1の電極上に位置する抵抗体と、
前記抵抗体上に位置する第2の電極と
を含み、
前記抵抗体は、請求項1〜3のいずれかに記載の金属酸化物からなる板状単結晶体、または、請求項8に記載の金属酸化物薄膜である、抵抗変化型素子。
【請求項13】
前記抵抗変化型素子のリセット電流は、1mA未満である、請求項12に記載の抵抗変化型素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【公開番号】特開2012−188315(P2012−188315A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52950(P2011−52950)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年11月16日 インターネットアドレス「pubs.acs.org/cm」に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】