金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセル
【課題】シェル部分に規則的に並んだメソ細孔を有し、空洞部分に光触媒などの機能性金属酸化物を内包しており、真球に近い球状を呈し、しかも単分散性に優れた金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルを提供すること。
【解決手段】メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子と、前記単分散球状中空粒子の空洞部分に保持された金属酸化物粒子とを備えた金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセル。金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルは、メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子を作製し、前記単分散球状中空粒子のメソ孔内及び/又は空洞内に金属酸化物前駆体を吸着させ、前記金属酸化物前駆体を金属酸化物粒子に変換することにより得られる。
【解決手段】メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子と、前記単分散球状中空粒子の空洞部分に保持された金属酸化物粒子とを備えた金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセル。金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルは、メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子を作製し、前記単分散球状中空粒子のメソ孔内及び/又は空洞内に金属酸化物前駆体を吸着させ、前記金属酸化物前駆体を金属酸化物粒子に変換することにより得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルに関し、さらに詳しくは、薬剤運搬体、制限空間での触媒反応用担体、分離材、バイオ分子の固定材などに用いられる金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の金属酸化物は、光触媒や磁性体などの機能を持つ。これらの機能性金属酸化物は、微粒子の状態で使用されることが多いが、微粒子単独で使用されることは希であり、何らかの担体上に微粒子を担持・固定した状態で使用されるのが一般的である。しかしながら、機能性金属酸化物を担体表面に固定すると、新たな問題が生じる場合がある。
【0003】
例えば、二酸化チタンなどの光触媒に紫外線を照射すると、各種化合物の分解及び殺菌に優れた効果を示すことが知られている。そのため、光触媒は、水中有機物の分解、有機物分解による防汚、脱臭、殺菌、NOx、SOx等の環境汚染気体除去、藻類の発生防止、有機塩素化合物の除去等に応用されている。
しかしながら、有機系バインダーを使用して光触媒微粒子を担体上に担持させると、光触媒作用によって有機系バインダーが劣化するという問題がある。また、近年では、光触媒粒子を衣服やカーテンなどに練り込んで用いる場合もあり、光触媒作用によって衣服やカーテンの繊維が劣化するという問題がある。一方、これを避けるために、二酸化チタン粒子の表面を他の材料で完全に被覆すると、ガスや液体が二酸化チタン粒子と接触しにくくなるために、触媒としての活性が著しく低下する懸念がある。
【0004】
また、二酸化チタンは、光触媒活性には優れるが、吸着性には劣る。そのため、湖沼、河川等の流動のある水中における有害物質の除去には、有害物質を吸着する性質を持つ担体に二酸化チタンなどの光触媒を担持させて光触媒担持体とし、これに光を照射して有害物質を分解することが行われている。このような光触媒担持体としては、
(1)金属、セラミックス等の無機質の難分解性物質に光触媒を担持させたもの、
(2)中空バルーン状の担体に光触媒を担持させたもの、
(3)ガラス繊維に光触媒を担持させたもの、
などが知られている。
また、ポンプで循環させた被処理水内にこれらの光触媒担持体を浸漬し、有害物質の分解又は除去を行う水質浄化装置も提案されている。
【0005】
しかしながら、上述した光触媒担持体は、有害物質の吸着性が低く、しかも有害物質は表面にしか付着しない。そのため、処理面積が小さく、分解効率が低いという欠点があった。一方、ポンプを使用する浄化装置は、ポンプの設置及び運転に費用がかかり、処理コストが高くなるという問題がある。
【0006】
これに対し、ナノメートルサイズあるいはマイクロメートルサイズの中空粒子は、低密度、断熱性、徐放性、低屈折性に優れ、種々の化合物を内包可能である。
例えば、このような中空粒子の空洞部分に光触媒を内包させると、光触媒作用による有機系バインダーの劣化を抑制することができるので、有機系バインダーを用いて光触媒内包中空粒子を担体表面に固定することができる。同様に、光触媒作用による繊維の劣化を抑制することができるので、光触媒内包中空粒子を直接、衣服やカーテンに練り込むことができる。さらに、光触媒内包中空粒子のシェル部分に適当な大きさの細孔を導入すると、反応物質を選択的にシェル部分に吸着させることができるので、反応物質の分解効率を向上させることができる。
そのため、近年では、光触媒だけでなく、薬剤運搬体、制限空間での触媒反応用担体、分離材、バイオ分子の固定材等として、高分子、金属、セラミックスなどの多様な材料からなる中空粒子の使用が検討されている。中でも、シリカ中空粒子は、化学的な安定性が高く、人体に無害であることから、多くの報告例がある。
【0007】
例えば、特許文献1には、アナターゼ型酸化チタン粒子を懸濁した溶液にテトラエトキシシラン及びアンモニア水を添加し、テトラエトキシシランを重縮合させることにより得られるマイクロカプセル状光触媒体が開示されている。
同文献には、
(1)このような方法により、アナターゼ型酸化チタンの表面が多孔質シリカにより被覆されたマイクロカプセル状光触媒体が得られる点、及び、
(2)アナターゼ型酸化チタンの表面が多孔質シリカにより被覆されているので、光触媒性能の持続性に優れ、担体や基材等を劣化させ難い点
が記載されている。
【0008】
また、非特許文献1には、TiO2粒子の表面がC層及びSiO2層で被覆された粒子(SiO2/C/TiO2)を作製し、この粒子を大気中において873Kで3時間加熱し、C層を除去することにより得られる中空シリカシェルで被覆されたTiO2粒子(SiO2/空洞/TiO2)が開示されている。
同文献には、このようにして得られた複合粒子は、メタノールの脱水素や酢酸の分解のように、相対的に小さな基質に対しては高い光触媒活性を示すが、メチレンブルーやポリビニルアルコールのような相対的に大きな基質に対しては高い光触媒活性を示さない点が記載されている。
【0009】
また、非特許文献2には、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、イオン交換水、アンモニア水、及びTiO2粒子の混合物にテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を加えて熟成させ、得られた固体粒子を遠心分離し、550℃で焼成することにより得られるナノポーラスシリカ被覆TiO2粒子が開示されている。
同文献には、
(1)溶液中へのTEOSの添加量を変えることにより、シェルの厚さを制御できる点、
(2)メチレンブルーの吸着量は、シリカシェルの厚さが厚くなるほど増大するが、メチレンブルーの光触媒分解は、シリカシェルで被覆することにより抑制される点、及び、
(3)TiO2共存下では、球状粒子が得られない点、
が記載されている。
【0010】
また、特許文献2には、アナターゼ型酸化チタンとコロイダルシリカを分散させた水性ゾルを噴霧乾燥させることにより得られる光触媒体粒子が開示されている。
同文献には、
(1)このようにして得られた光触媒体粒子は、チタニア粒子が微粒子セラミックスの壁材に包まれているので、耐光性が大幅に改良される点、及び、
(2)チタニア粒子と壁材との間には隙間が存在するので、被分解ガスの吸着と反応生成ガスの脱離が容易となる点、
が記載されている。
【0011】
また、非特許文献3には、テトラエチルオルトシリケート、エタノール及びHClの混合物を反応させて予め加水分解された前駆体溶液とし、これにトリブロックコポリマーを加え、さらに、この前駆体溶液とTiO2分散エタノール溶液とを混合し、混合液をスプレードライすることにより得られるTiO2含有球状メソポーラスシリカ粒子が開示されている。
同文献には、
(1)メチレンブルー水溶液にTiO2含有球状メソポーラスシリカ粒子を分散させると、ほとんどすべてのメチレンブルーがメソポーラスシリカ粒子に吸着され、粒子が青色になる点、及び、
(2)TiO2含有球状メソポーラスシリカ粒子に含まれるTiO2と同量のTiO2粒子を分散させたメチレンブルー水溶液に紫外線を照射しても溶液の青色が残るのに対し、TiO2含有球状メソポーラスシリカ粒子を分散させたメチレンブルー水溶液に紫外線を照射すると、懸濁液の色が白に戻る点、
が記載されている。
【0012】
さらに、特許文献3には、光触媒ではないが、シリカゾル、珪酸ナトリウム、及びアルミン酸ナトリウムを反応させてSiO2・Al2O3核粒子を製造し、核粒子分散液に珪酸液を加えて核粒子の表面にシリカ被覆層を形成し、シリカ被覆層が形成された核粒子を分散させた分散液に濃塩酸を加えて脱アルミニウム処理を行うことにより得られるシリカ系微粒子が開示されている。
同文献には、シリカ層で被覆された核粒子分散液に酸を加えることによって、核粒子を構成する元素の全部又は一部が除去され、外殻の内部に空洞を形成することができる点が記載されている。
【0013】
【特許文献1】特開平11−057494号公報
【特許文献2】特開2001−269573号公報
【特許文献3】特開2001−233611号公報
【非特許文献1】Phys.Chem.Chem.Phys., 2007, 9, 6319-6326
【非特許文献2】Chemistry Letters, Vol.37, No.1(2008), 76
【非特許文献3】Chemistry Letters, Vol.37, No.1(2008), 72
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
TiO2微粒子共存下でシリコンアルコキシドを加水分解・重縮合させ、あるいは、このような分散液を噴霧乾燥させると、TiO2微粒子を内包したシリカ粒子を得ることができる。また、分散液にある種の界面活性剤を添加すると、シリカ部分にメソ孔を導入することができる。
しかしながら、このような方法では、真球に近い球状粒子、あるいは、コロイド結晶を作製可能な程度の単分散性を備えた球状粒子は得られない。また、内部の空洞部分に粒子径の揃った金属酸化物を内包し、シェル部分に規則的なメソ孔をもつ粒子も得られない。
【0015】
一方、特許文献3に開示されているように、シリカと金属酸化物からなる核粒子の表面にシリカ層を形成し、酸処理によって核粒子の成分の一部を除去すると、空洞部分にシリカ以外の酸化物を内包したシリカ粒子を得ることができる。
しかしながら、この方法は、酸による化学エッチングを行うために、空洞部分に残存する成分は多孔質となり、粒子の大きさの制御も難しい。また、酸によるエッチングが必須であるので、空洞部分に保持可能な金属酸化物の種類も限られる。さらに、このような方法でもシェル部分に細孔を導入することはできるが、配向性を備えた細孔は得らない。そのため、ターゲット物質の吸収放出特性の向上は望めない。
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、シェル部分に規則的に並んだメソ細孔を有し、空洞部分に光触媒などの機能性金属酸化物を内包しており、真球に近い球状を呈し、しかも単分散性に優れた金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルを提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、空洞部分に保持可能な酸化物の種類に制限がなく、しかも、空洞部分に保持された酸化物の粒径が揃っている金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルは、
メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子と、
前記単分散球状中空粒子の空洞部分に保持された金属酸化物粒子と
を備えている。
【発明の効果】
【0018】
メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子を作製し、単分散球状中空粒子のメソ孔内及び/又は空洞内に金属酸化物前駆体を吸着させ、熱分解等によって金属酸化物前駆体を金属酸化物粒子に変換すると、金属酸化物粒子は、メソ孔内やシェルの外壁部分に析出せず、ほとんどがシェルの内壁部分(中空粒子の空洞部分)に析出する。
従って、単分散球状でシェル部分に規則配列したメソ細孔を有する中空粒子を出発原料に用いると、シェル部分の構造がそのまま保持された金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルが得られる。また、メソ孔内及び/又は空洞内に吸着可能な前駆体が得られる限りにおいて、空洞部分に保持可能な酸化物の種類に制限がない。さらに、空洞部分に保持される酸化物の粒径も均一化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセル]
本発明に係る金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルは、
メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子と、
前記単分散球状中空粒子の空洞部分に保持された金属酸化物粒子と
を備えている。
【0020】
[1.1 単分散球状中空粒子]
[1.1.1 組成]
中空粒子は、シリカのみからなるものでも良く、あるいは、シリカを主成分とし、シリカ以外の金属元素M1の酸化物を含んでいても良い。金属元素M1は、特に限定されるものではないが、2価以上の金属アルコキシドを製造可能なものが好ましい。金属元素M1が2価以上の金属アルコキシドを製造可能なものである場合、金属元素M1の酸化物を含む中空粒子を容易に製造することができる。このような金属元素M1としては、具体的には、Al、Ti、Mg、Zrなどがある。
中空粒子中のシリカの含有量は、50wt%以上が好ましく、さらに好ましくは、80wt%以上である。
【0021】
[1.1.2 形状]
中空粒子は、単分散で、かつ球状の粒子からなる。
本発明において、「単分散」とは、(1)式で表される単分散度が10%以下であることをいう。
単分散度=(粒子径の標準偏差)×100/(粒子径の平均値) ・・・(1)
後述する方法を用いると、単分散度が10%以下、あるいは、5%以下である中空粒子が得られる。
【0022】
「球状」とは、同一条件下で製造された複数個(好ましくは、20個以上)の粒子を顕微鏡観察した場合において、各粒子の真球度の平均値が、13%以下であることをいう。また、「真球度」とは、各粒子の外形の真円からのずれの程度を表す指標であって、粒子の表面に接する最小の外接円の半径(r0)に対する、外接円と粒子表面の各点との半径方向の距離の最大値(Δrmax)の割合(=Δrmax×100/r0(%))で表される値をいう。後述する方法を用いると、真球度が7%以下、あるいは、3%以下である中空粒子が得られる。
【0023】
[1.1.3 メソ細孔]
中空粒子は、シェル部分にメソ細孔を持つ。後述する方法を用いて中空粒子を製造する場合において、界面活性剤の種類、添加量などを最適化すると、メソ細孔を規則配列させることができる。
また、メソ細孔の大きさは、界面活性剤の分子長を最適化することにより制御(1〜50nmまで)することができる。
中空粒子は、メソ細孔を有するため、比表面積が極めて大きい。後述する方法を用いると、BET比表面積が800m2/g以上、あるいは、1000m2/g以上である中空粒子が得られる。金属酸化物粒子は中空粒子の空洞部分に導入されるので、金属酸化物粒子導入後も、シェル部分の細孔構造はほとんどそのまま維持される。
【0024】
[1.1.4 平均粒子径及びシェル厚さ]
中空粒子の平均粒子径及びシェル厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。後述する方法を用いると、平均粒子径が0.1〜1.5μmである中空粒子、あるいは、シェル厚さが0.01〜1μmである中空粒子が得られる。
【0025】
[1.2 金属酸化物粒子]
[1.2.1 組成]
金属酸化物粒子の組成は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。金属酸化物粒子として、種々の機能を備えたものを用いると、金属酸化物が持つ機能をそのまま備えた金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルが得られる。
金属酸化物粒子としては、具体的には、
(1)二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化銅などの光触媒粒子、
(2)酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化ネオジウム、酸化サマリウム、あるいは複合体(フェライト構造)などの磁性体粒子、
(3)酸化スズ、酸化インジウムスズなどの導電性粒子、
(4)酸化イットリウム、酸化ユーロピウム、酸化テルビウムなどの蛍光体粒子、
などがある。
その他の金属酸化物としては、具体的には、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化セリウム、あるいは二種類以上の酸化物を含む複合酸化物(例えば、磁性体粒子のフェライト構造など)などがある。
【0026】
[1.2.2 含有量]
金属酸化物粒子の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。一般に、金属酸化物粒子の含有量が多くなるほど、金属酸化物粒子が持つ機能を強く発現する金属酸化物内包メソポーラスシリカが得られる。
本発明においては、金属酸化物の大半が単分散中空粒子の空洞部分(特に、シェルの内壁部分)に保持されるので、シェル部分のメソ細孔の規則配列性や、中空粒子の真球度・単分散性を損なうことなく、相対的に多量の金属酸化物粒子を保持することができる。
後述する方法を用いると、少量の金属酸化物粒子を含有するメソポーラスシリカカプセルだけでなく、従来の方法よりも多量(例えば、30wt%以上、あるいは、40wt%以上)の金属酸化物粒子を含有するメソポーラスシリカカプセルであっても合成することができる。
【0027】
[1.2.3 粒子径及び標準偏差]
後述する方法を用いると、金属酸化物微粒子は、均一かつ微細な状態で空洞部分に保持される。製造条件を最適化すると、金属酸化物粒子の粒子径及び標準偏差を制御することができる。
【0028】
[2. 金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルの製造方法]
本発明に係る金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルの製造方法は、単分散球状中空粒子作製工程と、前駆体吸着工程と、金属酸化物生成工程とを備えている。
【0029】
[2.1 単分散球状中空粒子作製工程]
単分散球状中空粒子製造工程は、メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子を作製する工程である。
単分散球状中空粒子は、
(1)シリカ原料と、界面活性剤と、空洞形成用粒子とを含む原料を溶媒中で混合し、空洞形成用粒子粒子の周囲が界面活性剤を含むシリカからなるシェルで被覆された前駆体粒子を作製し、
(2)前駆体粒子から界面活性剤及び空洞形成用粒子を除去する、
ことにより得られる。
【0030】
[2.1.1 シリカ原料]
シリカ原料には、
(1) テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン(シラン化合物)、
(2) トリメトキシシラノール、トリエトキシシラノール、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン(シラン化合物)、
(3) ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン等のジアルコキシシラン(シラン化合物)、
(4) メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)、二ケイ酸ナトリウム(Na2Si2O5)、四ケイ酸ナトリウム(Na2Si4O9)、水ガラス(Na2O・nSiO2、n=2〜4)等のケイ酸ナトリウム、
(5) カネマイト(NaHSi2O5・3H2O)、二ケイ酸ナトリウム結晶(α、β、γ、δ−Na2Si2O5)、マカタイト(Na2Si4O9)、アイアライト(Na2Si8O17・xH2O)、マガディアイト(Na2Si14O17・xH2O)、ケニヤイト(Na2Si20O41・xH2O)等の層状シリケート、
(6) Ultrasil(Ultrasil社)、Cab−O−Sil(Cabot社)、HiSil(Pittsburgh Plate Glass社)等の沈降性シリカ、コロイダルシリカ、Aerosil(Degussa−Huls社)等のフュームドシリカ、
などを用いることができる。
【0031】
また、シリカ原料には、ヒドロキシアルコキシシランも用いることができる。ヒドロキシアルコキシシランとは、アルコキシシランのアルコキシ基の炭素原子にヒドロキシ基(−OH)がついたものをいう。ヒドロキシアルコキシシランとしては、ヒドロキシアルコキシ基を4個有するテトラキス(ヒドロキシアルコキシ)シラン、ヒドロキシアルコキシ基を3個有するトリス(ヒドロキシアルコキシ)シランを用いることができる。
ヒドロキシアルコキシ基の種類及びヒドロキシ基の数は特に制限されないが、2−ヒドロキシエトキシ基、3−ヒドロキシプロポキシ基、2−ヒドロキシプロポキシ基、2,3−ジヒドロキシプロキシ基等のように、ヒドロキシアルコキシ基中の炭素原子の数が比較的少ないもの(炭素数が1〜3程度のもの)が反応性の点から有利である。
【0032】
テトラキス(ヒドロキシアルコキシ)シランとしては、テトラキス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、テトラキス(3−ヒドロキシプロポキシ)シラン、テトラキス(2−ヒドロキシプロキシ)シラン、テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)シラン、などがある。
トリス(ヒドロキシアルコキシ)シランとしては、メチルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、エチルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、フェニルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、3−メルカプトプロピルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、3−アミノプロピルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、3−クロロプロピルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、などがある。
これらのヒドロキシアルコキシシランは、アルコキシシランとエチレングリコールやグリセリンなどの多価アルコールとを反応させることにより合成することができる(例えば、Doris Brandhuber et al., Chem.Mater. 2005, 17, 4262参照)。
【0033】
これらの中でも、テトラアルコキシシラン及びテトラキス(ヒドロキシアルコキシ)シランは、加水分解により生ずるシラノール結合の数が多くなり、強固な骨格を形成することができるので、シリカ原料として好適である。
なお、これらのシリカ原料は、単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。但し、2種以上のシリカ原料を用いると、前駆体粒子の製造時の反応条件が複雑化する場合がある。このような場合には、シリカ原料は、単独で使用するのが好ましい。
【0034】
また、前駆体粒子のシェルがシリカ以外の金属元素M1の酸化物を含む場合には、シリカ原料に加えて金属元素M1を含む原料を用いる。
金属元素M1を含む原料には、
(1) アルミニウムブトキシド(Al(OC4H9)3)、アルミニウムエトキシド(Al(OC2H5)3)、アルミニウムイソプロポキシド(Al(OC3H7)3)等のAlを含むアルコキシド類、及び、アルミン酸ナトリウム、塩化アルミニウム等の塩類、
(2) チタンイソプロポキシド(Ti(Oi−C3H7)4)、チタンブトキシド(Ti(OC4H9)4)、チタンエトキシド(Ti(OC2H5)4)等のTiを含むアルコキシド、
(3) マグネシウムメトキシド(Mg(OCH3)2)、マグネシウムエトキシド(Mg(OC2H5)2)等のMgを含むアルコキシド、
(4) ジルコニウムイソプロポキシド(Zr(Oi−C3H7)4)、ジルコニウムブトキシド(Zr(OC4H9)4)、ジルコニウムエトキシド(Zr(OC2H5)4)等のZrを含むアルコキシド、
などを用いることができる。
【0035】
[2.1.2 界面活性剤]
界面活性剤は、シェルにメソ細孔を形成するための鋳型となる。界面活性剤の種類は、特に限定されるものではなく、種々の界面活性剤を用いることができる。使用する界面活性剤の種類、添加量などに応じて、シェル内の細孔構造を制御することができる。
【0036】
界面活性剤は、特に、アルキル4級アンモニウム塩が好ましい。アルキル4級アンモニウム塩とは、次の(a)式で表されるものをいう。
CH3−(CH2)n−N+(R1)(R2)(R3)X- ・・・(a)
(a)式中、R1、R2、R3は、それぞれ、炭素数が1〜3のアルキル基を表す。R1、R2、及び、R3は、互いに同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。アルキル4級アンモニウム塩同士の凝集(ミセルの形成)を容易化するためには、R1、R2、及び、R3は、すべて同一であることが好ましい。さらに、R1、R2、及び、R3の少なくとも1つは、メチル基が好ましく、すべてがメチル基であることが好ましい。
(a)式中、Xはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子の種類は特に限定されないが、入手の容易さからXは、Cl又はBrが好ましい。
(a)式中、nは7〜21の整数を表す。一般に、nが小さくなるほど、メソ孔の中心細孔径が小さい球状シリカマトリックスが得られる。一方、nが大きくなるほど、中心細孔径は大きくなるが、nが大きくなりすぎると、アルキル4級アンモニウム塩の疎水性相互作用が過剰となる。その結果、層状の化合物が生成し、球状の多孔体が得られない。nは、好ましくは、9〜17、さらに好ましくは、13〜17である。
【0037】
(a)式で表されるものの中でも、アルキルトリメチルアンモニウムハライドが好ましい。アルキルトリメチルアンモニウムハライドとしては、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムハライド、ノニルトリメチルアンモニウムハライド、デシルトリメチルアンモニウムハライド、ウンデシルトリメチルアンモニウムハライド、ドデシルトリメチルアンモニウムハライド等がある。
これらの中でも、特に、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド又はアルキルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
【0038】
中空粒子を合成する場合において、1種類のアルキル4級アンモニウム塩を用いても良く、あるいは、2種以上を用いても良い。しかしながら、アルキル4級アンモニウム塩は、中空粒子のシェル内にメソ孔を形成するためのテンプレートとなるので、その種類は、メソ孔の形状に大きな影響を与える。より均一なメソ孔を有する中空粒子を合成するためには、1種類のアルキル4級アンモニウム塩を用いるのが好ましい。
【0039】
[2.1.3 空洞形成用粒子]
空洞形成用粒子は、空洞を形成するための鋳型となるものである。空洞形成用粒子は、その周囲にシリカを主成分とするシェルを形成することができ、かつ、シェル形成後に容易に除去できるものであれば良い。また、単分散球状の中空粒子を得るためには、空洞形成用粒子もまた単分散球状である必要がある。
空洞形成用粒子としては、例えば、
(1)焼成による分解又は有機溶媒による除去が可能なポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、メラミンホルムアルデヒドなどの高分子コロイド粒子、
(2)塩酸などの酸によって除去可能な炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの塩基性化合物粒子、
などがある。
空洞形成用粒子として高分子コロイド粒子を用いる場合、粒子表面に、シリカ原料の重縮合を促進する機能を有する塩基性の官能基(例えば、アミノ基)を備えたものを用いる。粒子表面にこのような官能基がない場合、粒子表面以外の領域においてシリカが単独で重縮合し、副生成物が得られる。これに対し、表面がこのような官能基で修飾された高分子コロイド粒子を用いると、粒子表面において優先的にシリカ原料の重縮合が進行してシェルとなり、副生成物の生成を抑制することができる。
【0040】
[2.1.4 溶媒]
溶媒には、水、アルコールなどの有機溶媒、水と有機溶媒の混合溶媒などを用いる。アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール等の1価のアルコール、エチレングリコール等の2価のアルコール、グリセリン等の3価のアルコールのいずれでも良い。
水と有機溶媒の混合溶媒を用いる場合、混合溶媒中の有機溶媒の含有量は、目的に応じて任意に選択することができる。一般に、溶媒中に適量の有機溶媒を添加すると、粒径や粒度分布の制御が容易化する。
【0041】
[2.1.5 配合比]
一般に、シリカ原料及び必要に応じて添加される金属元素M1を含む原料(以下、「シェル源」という)の濃度が低すぎると、中空粒子を高収率で得ることができない。また、粒径及び粒度分布の制御が困難となり、粒径の均一性が低下する。従って、シェル源の濃度は、0.005mol/L以上が好ましい。シェル源の濃度は、さらに好ましくは、0.008mol/L以上である。
一方、シェル源の濃度が高すぎると、メソ孔を形成するためのテンプレートとして機能する界面活性剤が相対的に不足し、規則配列したメソ孔が得られない。従って、シェル源の濃度は、0.03mol/L以下が好ましい。シェル源の濃度は、さらに好ましくは、0.015mol/L以下である。
【0042】
一般に、界面活性剤の濃度が低すぎると、メソ孔を形成するためのテンプレートが不足し、規則配列したメソ孔が得られない。従って、界面活性剤の濃度は、0.003mol/L以上が好ましい。界面活性剤の濃度は、さらに好ましくは、0.01mol/L以上である。
一方、界面活性剤の濃度が高すぎると、中空粒子を高収率で得ることができない。従って、界面活性剤の濃度は、0.03mol/L以下が好ましい。界面活性剤の濃度は、さらに好ましくは、0.02mol/L以下である。
【0043】
シェルの厚さは、空洞形成用粒子とシェル源の比率で決まる。一般に、空洞形成用粒子に対するシェル源の比率が大きくなるほど、シェルを厚くすることができる。
【0044】
[2.1.6 反応条件]
シリカ原料として、アルコキシシラン、ヒドロキシアルコキシシラン等のシラン化合物を用いる場合には、これをそのまま出発原料として用いる。
一方、シリカ原料としてシラン化合物以外の化合物を用いる場合には、予め、水(又は、必要に応じてアルコールが添加されたアルコール水溶液)にシリカ原料を加えて、水酸化ナトリウム等の塩基性物質を加える。塩基性物質の添加量は、シリカ原料中のケイ素原子と等モル程度の量とするのが好ましい。シラン化合物以外のシリカ原料を含む溶液に塩基性物質を加えると、シリカ原料中に既に形成されているSi−(O−Si)4結合の一部が切断され、均一な溶液が得られる。溶液中に含まれる塩基性物質の量は、中空粒子の収量や気孔率に影響を及ぼすので、均一な溶液が得られた後、溶液に希薄酸溶液を加え、溶液中に存在する過剰の塩基性物質を中和させる。希薄酸溶液の添加量は、シリカ原料中のケイ素原子に対して1/2〜3/4倍モルに相当する量が好ましい。
【0045】
所定量の界面活性剤を含む溶媒中に、空洞形成用粒子及びシェル源を加え、加水分解及び重縮合を行う。これにより、界面活性剤がテンプレートとして機能し、空洞形成用粒子の表面にシリカ及び界面活性剤を含むシェルが形成された前駆体粒子が得られる。
【0046】
反応条件は、シリカ原料の種類、前駆体粒子の粒径等に応じて、最適な条件を選択する。一般に、反応温度は、−20〜100℃が好ましい。反応温度は、さらに好ましくは、0〜80℃、さらに好ましくは、10〜40℃である。
【0047】
[2.1.7 界面活性剤及び空洞形成用粒子の除去]
乾燥後、前駆体粒子から界面活性剤及び空洞形成用粒子を除去すると、単分散球状中空粒子が得られる。界面活性剤の除去方法としては、
(1) 前駆体粒子を大気中又は不活性雰囲気下において、300〜1000℃(好ましくは、300〜600℃)で、30分以上(好ましくは、1時間以上)焼成する焼成方法、
(2) 前駆体粒子を界面活性剤の良溶媒(例えば、少量の塩酸を含むメタノール)中に浸漬し、所定の温度(例えば、50〜70℃)で加熱しながら攪拌し、薄膜中の界面活性剤を抽出するイオン交換法、
などがある。
空洞形成用粒子が高分子コロイド粒子からなる場合、空洞形成用粒子も、界面活性剤と同様の方法により除去することができる。あるいは、有機溶媒(トルエン、クロロホルム、ベンゼンなど)に浸漬することで除去することもできる。一方、空洞形成用粒子が塩基性化合物からなる場合、塩酸などの酸により空洞形成用粒子を除去することができる。
【0048】
[2.2 前駆体吸着工程]
前駆体吸着工程は、単分散球状中空粒子のメソ孔内及び/又は空洞内に金属酸化物の前駆体を吸着させる工程である。
前駆体は、金属酸化物の種類に応じて最適なものを選択する。
前駆体としては、具体的には、
(1)硝酸塩(例えば、硝酸鉄、硝酸亜鉛など)、塩化物(例えば、塩化鉄、塩化ルテニウムなど)、アンモニウム塩、硫酸塩、炭酸塩等の無機塩、
(2)酢酸塩(例えば、酢酸スズ、酢酸セリウムなど)、クエン酸塩等の有機塩、
(3)メトキシド、エトキシド(例えば、ジルコニウムエトキシド)、プロポキシド(例えば、チタンイソプロポキシド)、ブトキシド(例えば、チタンブトキシド、アルミニウムブトキシドなど)等のアルコキシド、
(4)フェロセンカルバデヒド、コバルトセンカルバデヒド、ニッケロセンカルバデヒドなどのメタロセン、
(5)ビス(8−ヒドロキシキノレート)亜鉛、トリス(8−ヒドロキシキノレート)ガリウムなどの金属錯体、
などがある。
【0049】
単分散球状中空粒子に液体状の前駆体又は適当な溶媒に前駆体を溶解させた溶液を振りかけると、メソ孔内及び/又は中空粒子の空洞内に液体又は溶液が吸収される。液体又は溶液は、最大で中空粒子の空洞+メソ孔の容積に相当する量まで吸着させることができる。
【0050】
[2.3 金属酸化物生成工程]
金属酸化物生成工程は、メソ孔内及び/又は空洞内に吸着させた金属酸化物前駆体を金属酸化物粒子に変換する工程である。
前駆体の金属酸化物への変換は、前駆体を吸着させた単分散球状中空粒子を酸化雰囲気下で加熱することにより行う。加熱温度は、前駆体の種類に応じて最適な温度を選択する。加熱温度は、通常、300〜1000℃程度である。加熱温度は、好ましくは、450〜800℃である。
1回の吸着・焼成で必要量の金属酸化物を担持できない場合には、吸着及び焼成を複数回繰り返す。
【0051】
[3. 金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルの作用]
メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子を作製し、単分散球状中空粒子のメソ孔内及び/又は空洞内に金属酸化物前駆体を吸着させ、熱分解等によって金属酸化物前駆体を金属酸化物粒子に変換すると、金属酸化物粒子は、メソ孔内やシェルの外壁部分に析出せず、ほとんどがシェルの内壁部分(中空粒子の空洞部分)に析出する。
従って、単分散球状でシェル部分に規則配列したメソ細孔を有する中空粒子を出発原料に用いると、シェル部分の構造がそのまま保持された金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルが得られる。また、メソ孔内及び/又は空洞内に吸着可能な前駆体が得られる限りにおいて、空洞部分に保持可能な酸化物の種類に制限がない。さらに、空洞部分に保持される酸化物の粒径も均一化することができる。
【0052】
例えば、金属酸化物が光触媒である場合、光触媒の周囲が中空粒子で覆われているので、これを有機系バインダーを用いて担体上に固定したり、あるいは、これを直接、衣服やカーテンに練り込んでも、有機系バインダーや布地の繊維を劣化させることがない。しかも、中空粒子は多孔質であるため、有害物質を空洞内に取り込むことができ、有害物質の分解効率が高い。特に、有害物質がシリカに吸着しやすい物質である場合には、中空粒子のシェル部分が選択的に有害物質を吸着するので、高い分解効率が得られる。
また、金属酸化物が磁性体であるメソポーラスシリカカプセルは、メソ孔内に薬剤を吸着させ、患部まで運搬する薬剤運搬体として用いることができる。
【実施例】
【0053】
(実施例1〜3、比較例1〜2)
[1. 試料の作製]
[1.1 チタニア内包メソポーラスシリカカプセル(実施例1)]
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)0.352g、水40g、メタノール40gを室温で混合し、攪拌を行った。この溶液に、表面をアミノ基で修飾したポリスチレン粒子の水溶液(粒子濃度:2.57wt%、粒子径:200nm)2.84L、及びテトラメトキシシラン0.132gを添加し、さらに攪拌を続けた。室温でさらに8時間攪拌し、一晩放置した後、ろ過と脱イオン水による洗浄を3回繰り返した。乾燥後、焼成することによりポリスチレン及び界面活性剤を除去し、白色粉末(中空メソポーラスシリカ)を得た。
【0054】
次に、チタンイソプロポキシドとアセチルアセトンをモル比1:2の割合で混合し、チタニア前駆体溶液とした。中空メソポーラスシリカ0.0127gに対して、チタニア前駆体溶液17.8μLを加えて、中空メソポーラスシリカに溶液を均一に浸み込ませた。
窒素/酸素混合気体中(体積比:4/1)で、酸素をバブリングにより供給しながら500℃で6時間焼成を行った。前駆体溶液の含浸と焼成を複数回繰り返し、チタニア内包メソポーラスシリカカプセルを得た。
【0055】
[1.2 チタニア内包メソポーラスシリカカプセル(実施例2)]
テトラメトキシシランの添加量を0.246gとした以外は、実施例1と同様の手順に従い、白色粉末(中空メソポーラスシリカ)を得た。
次に、中空メソポーラスシリカ0.0094gに対して、実施例1と同様のチタニア前駆体溶液を13.2μL加えて、中空メソポーラスシリカに溶液を均一に浸み込ませた。以下、実施例1と同様の手順に従い、チタニア内包メソポーラスシリカカプセルを得た。
【0056】
[1.3 酸化鉄内包メソポーラスシリカカプセル(実施例3)]
フルフリルアルコール1mLにフェロセンカルバデヒド2.14gを溶解させて、酸化鉄前駆体溶液とした。実施例1で得られた中空メソポーラスシリカ0.0129gに対して、酸化鉄前駆体溶液19.1μLを加えて、中空メソポーラスシリカに溶液を均一に浸み込ませた。処理後の粉末を500℃で3時間焼成し、酸化鉄内包メソポーラスシリカカプセルを得た。
【0057】
[1.4 チタニア内包中実メソポーラスシリカ(比較例1)]
水795gとメタノール800gの混合溶液に対して、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)7.04g及び1規定水酸化ナトリウム6.84gを添加し、室温で攪拌を行った。これにテトラメトキシシラン5.28gを加えて、さらに攪拌を続けたところ、テトラメトキシシランは完全に溶解し、白色粉末が析出してきた。室温でさらに8時間攪拌して、一晩放置した後、ろ過と脱イオン水による洗浄を3回繰り返した。乾燥後、焼成することにより界面活性剤を除去し、白色粉末(中実メソポーラスシリカ)を得た。
【0058】
チタンイソプロポキシドとアセチルアセトンをモル比1:2の割合で混合し、チタニア前駆体溶液とした。中実メソポーラスシリカ0.1224gに対してチタニア前駆体溶液85.7μLを加えて、中実メソポーラスシリカに溶液を均一に浸み込ませた。
窒素/酸素混合気体中(体積比:4/1)で、酸素をバブリングにより供給しながら、500℃で6時間焼成を行った。前駆体溶液の含浸と焼成を複数回繰り返し、チタニア内包中実メソポーラスシリカを得た。
【0059】
[1.5 チタニア粉末(比較例2)]
市販のチタニア粉末(P25、石原産業製)をそのまま試験に供した。
【0060】
[2. キャラクタリゼーション]
[2.1 中空メソポーラスシリカ(実施例1、2)]
図1(a)及び図1(b)に、それぞれ、実施例1及び実施例2で得られた中空メソポーラスシリカのSEM像を示す。また、図2及び図3に、それぞれ、実施例1で得られた中空メソポーラスシリカのTEM像及びSTEM像を示す。さらに、図4に、実施例2で得られた中空メソポーラスシリカのTEM像を示す。
これらの観察により、実施例1、2で得られた中空メソポーラスシリカは、均一なシリカシェルで覆われており、粒子表面には余分な析出物(余剰のシリカなど)のない、非常に単分散性に優れる球状粒子であることがわかる。
さらに、加えるテトラメトキシシラン量により、シリカシェルの厚みをコントロール可能であった。つまり、実施例1のシェル厚は33nmであるのに対し、実施例2のシェル厚は54nmに増加した。シェル厚を増加させても、余分なシリカ成分が析出することはなく、粒子の単分散性も保持された。
STEM像(図3)では、粒子1個を拡大して観察しており、実施例1で得られたシリカ粒子が中空であること、及び、シェル部分には規則的なメソ細孔が存在すること、がよく示されている。
【0061】
図5に、実施例1及び実施例2で得られた中空メソポーラスシリカの窒素吸着等温線及びBJH法により求めた細孔分布曲線を示す。いずれの粒子についても、等温線にはメソ細孔に起因する立ち上がりが観察された。また、細孔分布曲線からは、20Å(2nm)の均一な細孔が存在することが示唆された。これらの粒子のBET比表面積は、1040m2/g(実施例1)及び812m2/g(実施例2)と、かなり大きな値であり、両者ともに吸着特性が高いことが期待される。
【0062】
[2.2 チタニア内包メソポーラスシリカカプセル(実施例1、2)]
図6及び図7に、それぞれ、実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセルのSEM像及びEDXによる元素分析結果を示す。
SEM写真では、粒子表面にチタニア粒子の析出が認められず、担持前(図1)に比べて、見かけ上は粒子に変化は見られなかった。EDXでは、SiのピークとともにTiのピークも明瞭に観察された。グラフ中でCuのピークが最も強く検出されているが、これはSEM観察において、少量の粉末サンプルをCu製SEMプレート上に担持する方法で行っていることによる。
図8に、実施例2で得られたチタニア内包メソポーラスシリカのSEM像を示す。実施例1と同様に、粒子表面に析出する余分なチタニアは見られなかった。
【0063】
表1に、実施例1及び実施例2で得られたチタニア内包メソポーラスシリカのEDXによる元素分析の結果を示す。測定は、1つの粒子について観察場所を変えて3回繰り返し、その平均値を求めた。元素分析より、粒子中に50wt%近い非常に多量なチタニアを導入できることがわかった。SEM観察により、粒子表面にはチタニアが析出していないことが明らかであるため、導入した多量のチタニアは、すべて粒子中に存在していることが示唆される。
【0064】
【表1】
【0065】
図9に、実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカのTEM像及び電子線回折像を示す。また、図10に、実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカの粉末XRD回折パターンを示す。
TEM像においても、粒子表面にはチタニア粒子が存在しないことが良くわかる。さらに、導入したチタニアの大部分は、中空のシリカシェル壁面に10nm程度の大きさで高分散な状態で存在している様子が確認された。TEM像を拡大し、メソ細孔の仔細な観察を行ったが、メソ孔内にはほとんどチタニア粒子は認められなかった。つまり、実施例1の方法では、規則的なメソ細孔を持つシリカシェル壁面に10nm程度の大きさのチタニア粒子が張り付いており、その導入量は50wt%に近い非常に特殊な構造体であることがわかった。
このチタニアの粒径は10nm程度と細かく、さらにシリカとの接触面積が少なく、従来技術のようにチタニアは完全に被覆されていない。そのため、高い触媒活性を持つことが期待できる。
TEMの電子線回折パターンは、アナターゼに帰属された。結晶構造については、粉末XRD測定でも明瞭なアナターゼのピークが観察された。
【0066】
[2.3 酸化鉄内包メソポーラスシリカカプセル(実施例3)]
図11、図12及び図13に、それぞれ、実施例3で得られた酸化鉄内包メソポーラスシリカカプセルのSEM像、EDXによる元素分析結果、及びTEM像を示す。なお、図12において、グラフ中の表は、分析値である。分析は、観察場所を変えて3回繰り返し、その平均値を求めた。
酸化鉄導入の場合もチタニアと同様に、非常に多量の酸化鉄量(Si/Fe=54/46)であるにもかかわらず、酸化鉄は、粒子中(主に、粒子の中空部分)に高分散な状態で担持されることがわかった。
【0067】
図14に、実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセル及び実施例3で得られた酸化鉄内包メソポーラスシリカカプセルの窒素吸脱着等温線の測定結果を示す。チタニア及び酸化鉄導入後も、メソ孔は存在していた。さらに、BETによる比表面積は、それぞれ、530.53m2/g(実施例1)及び793.37m2/g(実施例3)であった。これは、TEM観察の通り、導入された金属酸化物は、ほとんど中空部分に担持され、メソ細孔は酸化物粒子によって閉塞されておらず、吸着や触媒反応に非常に有利であることを示している。
【0068】
[2.4 チタニア内包中実メソポーラスシリカ(比較例1)]
図15に、比較例1で合成した中実メソポーラスシリカのSEM像を示す。粒子は、非常に単分散性の高い球状粒子であった。
図16に、チタニア担持量の異なるチタニア内包中実メソポーラスシリカ(比較例1)のSEM像を示す。図16中のチタニア量は、EDXによる元素分析値である。
SEM観察の結果より、Si/Ti=74/26(wt%)程度までは、若干量のチタニアは表面に析出しているが、大部分はメソ孔内に導入可能であった。Si/Ti=72/28(wt%)までチタニア量を増加させると、粒子表面でのチタニア成長が顕著になった。Si/Ti=69/31(wt%)では、粒子表面での析出がさらに増加した。
本検討により、通常のアルコキシド含浸法では、Ti成分を粒子表面に析出させることなく、28wt%以上のTi成分を中実メソポーラスシリカに導入することは困難であり、その限界導入量は、実施例1、2で達成された50w%よりも非常に少量であることがわかった。
【0069】
[3. 触媒反応特性]
以下に、実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセルの紫外線照射による触媒特性を示す。実施例1で得られたカプセルは、10nm程度の高活性なチタニア粒子を多量に内包し、かつ反応物質の拡散をスムーズに進行させる規則性の高いメソ細孔をシリカシェルに備えている。また、高比表面積はメソポーラスシリカの高い吸着特性が期待されるために、特に流動槽中での水質浄化触媒として優れた性能を発揮することが期待される。
実施例1で得られたカプセルは、メソポーラスシリカに由来する非常に高い吸着特性を持つために、汚染物質を吸着により水中から除去することができる。さらに、この状態で光照射を行うことにより、吸着された汚染物質は、空洞内部に存在する微細なチタニア粒子により分解される。これと同時に、シリカの吸着特性は再生されるために、非常に簡便な方法で半永久的に光触媒能を発揮させることが可能である。
一方、チタニア粒子単独では、優れた触媒作用を備えているにもかかわらず、汚染物質を吸着できないために、流動状態になる反応系の水質浄化を行うことはできない。
この流動槽中での汚染物質除去のモデル実験として、次のような反応を行った。
【0070】
[3.1 光触媒反応(1)]
メチレンブルーの0.05mM水溶液60mLに対して、実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセル及び市販のチタニア粉末(P25、石原産業製)(比較例2)を、各々0.11g添加して、darkで3時間攪拌を行った。ろ過により粉末と濾液に分離して、濾液の吸収スペクトルの測定を行った。
【0071】
図17に、得られた吸収スペクトルを示す。メチレンブルーは、664nmに主な吸収ピークを示す。比較例2のろ液の吸収スペクトルは、反応前の元の溶液のスペクトルとほとんど重なっており、比較例2の粉末は、吸着によりメチレンブルーを除去できなかった。この時、ろ紙上の粉末の色は、反応を行う前と同じ白色で、吸収スペクトルからも明らかであるが、メチレンブルーによる着色は見られなかった。
【0072】
一方、実施例1の場合、ろ液は全くの透明であり、吸収スペクトルは400nm〜800nmの領域でほとんどゼロに等しく、メチレンブルー特有の664nmのピークも見られなかった。逆に、ろ紙上の粉末は、メチレンブルー特有の青色を呈した。つまり、実施例1の粒子は、吸着により系内のメチレンブルーをすべて除去できることがわかった。
次に、ろ紙上の青く着色した実施例1の粒子に、そのままの状態で紫外線を3時間照射したところ、3時間後には粉末は白色に戻った。この粉末を再びメチレンブルーの溶液に添加して、同様な反応を繰り返した。3時間後に再びろ過により、粉末とろ液を分離した。前述同様に、濾液はほとんど透明であり、ろ紙上の粉末はメチレンブルー由来の青色を呈した。ろ液の吸収スペクトルの測定を行ったところ、スペクトルは測定領域においてはほぼゼロであり、664nmにはピークは認められなかった。
【0073】
一連の操作を5回繰り返したが、5回目においてもろ液は透明であり、ろ紙上の粉末は青く着色していた。本実験により、実施例1の粉末は、光による再生が可能であり、吸着特性に優れた光触媒として、湖沼、河川等の流動のある水中からの有害物質の除去において、優れた特性を発揮することが期待される。
一方、汚染物質の中には、全くシリカに吸着しない物質も存在する。次の実験においては、実施例1の粒子がそのような汚染物質に対しても優れた光触媒活性を持つことを証明する。
【0074】
[3.2 光触媒反応(2)]
メチルオレンジの0.2mM水溶液50mLに対して、実施例1の粒子及び比較例1の粒子(図16(a)の粒子(Si/Ti=74/26))を、各々0.125g添加して、darkで3時間攪拌を行った。3時間後に遠心分離により粉末と上澄み液を分離し、上澄み液の吸収スペクトルの測定を行った。この時、粉末は白色のままであり、上澄み液はメチルオレンジ由来の鮮やかなオレンジ色であった。つまり、メチルオレンジは、シリカに吸着しないことが分かった。
【0075】
分離した粉末を再び液に分散させて、紫外線を照射しながら、30分毎に液をサンプリングし、メチルオレンジの光分解反応の進行度合いを測定した。
図18に、得られた吸収スペクトルを示す。メチルオレンジは、460nmに吸収スペクトルを示す。実施例1の粒子では、紫外線照射30分後には吸収スペクトルのピーク高さが1/3程度に減少し、照射時間とともに460nmのピークは段階的に減少し、150分後には元のピークの1/10近くまで減少した。150分後には、溶液はほぼ透明になり、実施例1の粒子は、吸着によらず、光触媒作用のみでも、汚染物質を除去できることがわかった。
【0076】
一方、比較例1の粒子では、紫外線を照射してもメチルオレンジの光分解は効率的に進まず、3時間UV照射を行っても、溶液は反応前のオレンジ色とそれほど変化が見られなかった。
図19に、この光分解反応効率を時間に対してプロットしたグラフを示す。比較例1の粒子の光分解特性は時間とともに一定であり、反応は非常にゆっくり進行した。一方、実施例1の粒子は、初期段階の反応速度が非常に早く、光触媒反応が素早く進行していることがわかった。これは、粒子内に非常に微細なチタニア粒子が、高分散かつ多量に存在し、かつ規則的なメソ孔により反応基質の拡散が速やかに起きていることに対応すると考えられる。
【0077】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルは、薬剤運搬体、制限空間での触媒反応用担体、分離材、バイオ分子の固定材などに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、それぞれ、実施例1及び実施例2で作製した中空メソポーラスシリカのSEM像である。
【図2】実施例1で作製した中空メソポーラスシリカのTEM像(左図:高倍率、右図:低倍率)である。
【図3】実施例1で作製した中空メソポーラスシリカのSTEM像(2視野)である。
【図4】実施例2で作製した中空メソポーラスシリカのTEM像(左図:高倍率、右図:低倍率)である。
【図5】図5(a)は、実施例1及び実施例2で作製した中空メソポーラスシリカの吸脱着等温線である。図5(b)は、実施例1及び実施例2で作製した中空メソポーラスシリカの細孔分布曲線である。
【図6】実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセルのSEM像である。
【図7】実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセルのEDX分析結果である。
【図8】実施例2で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセルのSEM像である。
【図9】実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセルのTEM像及び電子線回折像である。
【図10】実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセルの粉末XRDパターンである。
【図11】実施例3で得られた酸化鉄内包メソポーラスシリカカプセルのSEM像である。
【図12】実施例3で得られた酸化物内包メソポーラスシリカカプセルのEDX分析結果である。
【図13】実施例3で得られた酸化鉄内包メソポーラスシリカカプセルのTEM像である。
【図14】実施例1で得られた中空メソポーラスシリカ及びチタニア内包メソポーラスシリカカプセル、並びに、実施例3で得られた酸化鉄内包メソポーラスシリカカプセルの窒素吸脱着等温線である。
【図15】比較例1で得られた中実メソポーラスシリカのSEM像である。
【図16】比較例1で得られた、チタニア含有量の異なるチタニア内包中実メソポーラスシリカのSEM像である。
【図17】メチレンブルー接触後のろ液の吸収スペクトルである。
【図18】図18(a)は、実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセルを分散させたメチルオレンジ溶液の吸収スペクトル変化である。図18(b)は、比較例1で得られたチタニア内包中実メソポーラスシリカ(Si/Ti=74/26(wt%))を分散させたメチルオレンジ溶液の吸収スペクトル変化である。
【図19】メチルオレンジ溶液吸収スペクトルの時間変化を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルに関し、さらに詳しくは、薬剤運搬体、制限空間での触媒反応用担体、分離材、バイオ分子の固定材などに用いられる金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の金属酸化物は、光触媒や磁性体などの機能を持つ。これらの機能性金属酸化物は、微粒子の状態で使用されることが多いが、微粒子単独で使用されることは希であり、何らかの担体上に微粒子を担持・固定した状態で使用されるのが一般的である。しかしながら、機能性金属酸化物を担体表面に固定すると、新たな問題が生じる場合がある。
【0003】
例えば、二酸化チタンなどの光触媒に紫外線を照射すると、各種化合物の分解及び殺菌に優れた効果を示すことが知られている。そのため、光触媒は、水中有機物の分解、有機物分解による防汚、脱臭、殺菌、NOx、SOx等の環境汚染気体除去、藻類の発生防止、有機塩素化合物の除去等に応用されている。
しかしながら、有機系バインダーを使用して光触媒微粒子を担体上に担持させると、光触媒作用によって有機系バインダーが劣化するという問題がある。また、近年では、光触媒粒子を衣服やカーテンなどに練り込んで用いる場合もあり、光触媒作用によって衣服やカーテンの繊維が劣化するという問題がある。一方、これを避けるために、二酸化チタン粒子の表面を他の材料で完全に被覆すると、ガスや液体が二酸化チタン粒子と接触しにくくなるために、触媒としての活性が著しく低下する懸念がある。
【0004】
また、二酸化チタンは、光触媒活性には優れるが、吸着性には劣る。そのため、湖沼、河川等の流動のある水中における有害物質の除去には、有害物質を吸着する性質を持つ担体に二酸化チタンなどの光触媒を担持させて光触媒担持体とし、これに光を照射して有害物質を分解することが行われている。このような光触媒担持体としては、
(1)金属、セラミックス等の無機質の難分解性物質に光触媒を担持させたもの、
(2)中空バルーン状の担体に光触媒を担持させたもの、
(3)ガラス繊維に光触媒を担持させたもの、
などが知られている。
また、ポンプで循環させた被処理水内にこれらの光触媒担持体を浸漬し、有害物質の分解又は除去を行う水質浄化装置も提案されている。
【0005】
しかしながら、上述した光触媒担持体は、有害物質の吸着性が低く、しかも有害物質は表面にしか付着しない。そのため、処理面積が小さく、分解効率が低いという欠点があった。一方、ポンプを使用する浄化装置は、ポンプの設置及び運転に費用がかかり、処理コストが高くなるという問題がある。
【0006】
これに対し、ナノメートルサイズあるいはマイクロメートルサイズの中空粒子は、低密度、断熱性、徐放性、低屈折性に優れ、種々の化合物を内包可能である。
例えば、このような中空粒子の空洞部分に光触媒を内包させると、光触媒作用による有機系バインダーの劣化を抑制することができるので、有機系バインダーを用いて光触媒内包中空粒子を担体表面に固定することができる。同様に、光触媒作用による繊維の劣化を抑制することができるので、光触媒内包中空粒子を直接、衣服やカーテンに練り込むことができる。さらに、光触媒内包中空粒子のシェル部分に適当な大きさの細孔を導入すると、反応物質を選択的にシェル部分に吸着させることができるので、反応物質の分解効率を向上させることができる。
そのため、近年では、光触媒だけでなく、薬剤運搬体、制限空間での触媒反応用担体、分離材、バイオ分子の固定材等として、高分子、金属、セラミックスなどの多様な材料からなる中空粒子の使用が検討されている。中でも、シリカ中空粒子は、化学的な安定性が高く、人体に無害であることから、多くの報告例がある。
【0007】
例えば、特許文献1には、アナターゼ型酸化チタン粒子を懸濁した溶液にテトラエトキシシラン及びアンモニア水を添加し、テトラエトキシシランを重縮合させることにより得られるマイクロカプセル状光触媒体が開示されている。
同文献には、
(1)このような方法により、アナターゼ型酸化チタンの表面が多孔質シリカにより被覆されたマイクロカプセル状光触媒体が得られる点、及び、
(2)アナターゼ型酸化チタンの表面が多孔質シリカにより被覆されているので、光触媒性能の持続性に優れ、担体や基材等を劣化させ難い点
が記載されている。
【0008】
また、非特許文献1には、TiO2粒子の表面がC層及びSiO2層で被覆された粒子(SiO2/C/TiO2)を作製し、この粒子を大気中において873Kで3時間加熱し、C層を除去することにより得られる中空シリカシェルで被覆されたTiO2粒子(SiO2/空洞/TiO2)が開示されている。
同文献には、このようにして得られた複合粒子は、メタノールの脱水素や酢酸の分解のように、相対的に小さな基質に対しては高い光触媒活性を示すが、メチレンブルーやポリビニルアルコールのような相対的に大きな基質に対しては高い光触媒活性を示さない点が記載されている。
【0009】
また、非特許文献2には、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、イオン交換水、アンモニア水、及びTiO2粒子の混合物にテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を加えて熟成させ、得られた固体粒子を遠心分離し、550℃で焼成することにより得られるナノポーラスシリカ被覆TiO2粒子が開示されている。
同文献には、
(1)溶液中へのTEOSの添加量を変えることにより、シェルの厚さを制御できる点、
(2)メチレンブルーの吸着量は、シリカシェルの厚さが厚くなるほど増大するが、メチレンブルーの光触媒分解は、シリカシェルで被覆することにより抑制される点、及び、
(3)TiO2共存下では、球状粒子が得られない点、
が記載されている。
【0010】
また、特許文献2には、アナターゼ型酸化チタンとコロイダルシリカを分散させた水性ゾルを噴霧乾燥させることにより得られる光触媒体粒子が開示されている。
同文献には、
(1)このようにして得られた光触媒体粒子は、チタニア粒子が微粒子セラミックスの壁材に包まれているので、耐光性が大幅に改良される点、及び、
(2)チタニア粒子と壁材との間には隙間が存在するので、被分解ガスの吸着と反応生成ガスの脱離が容易となる点、
が記載されている。
【0011】
また、非特許文献3には、テトラエチルオルトシリケート、エタノール及びHClの混合物を反応させて予め加水分解された前駆体溶液とし、これにトリブロックコポリマーを加え、さらに、この前駆体溶液とTiO2分散エタノール溶液とを混合し、混合液をスプレードライすることにより得られるTiO2含有球状メソポーラスシリカ粒子が開示されている。
同文献には、
(1)メチレンブルー水溶液にTiO2含有球状メソポーラスシリカ粒子を分散させると、ほとんどすべてのメチレンブルーがメソポーラスシリカ粒子に吸着され、粒子が青色になる点、及び、
(2)TiO2含有球状メソポーラスシリカ粒子に含まれるTiO2と同量のTiO2粒子を分散させたメチレンブルー水溶液に紫外線を照射しても溶液の青色が残るのに対し、TiO2含有球状メソポーラスシリカ粒子を分散させたメチレンブルー水溶液に紫外線を照射すると、懸濁液の色が白に戻る点、
が記載されている。
【0012】
さらに、特許文献3には、光触媒ではないが、シリカゾル、珪酸ナトリウム、及びアルミン酸ナトリウムを反応させてSiO2・Al2O3核粒子を製造し、核粒子分散液に珪酸液を加えて核粒子の表面にシリカ被覆層を形成し、シリカ被覆層が形成された核粒子を分散させた分散液に濃塩酸を加えて脱アルミニウム処理を行うことにより得られるシリカ系微粒子が開示されている。
同文献には、シリカ層で被覆された核粒子分散液に酸を加えることによって、核粒子を構成する元素の全部又は一部が除去され、外殻の内部に空洞を形成することができる点が記載されている。
【0013】
【特許文献1】特開平11−057494号公報
【特許文献2】特開2001−269573号公報
【特許文献3】特開2001−233611号公報
【非特許文献1】Phys.Chem.Chem.Phys., 2007, 9, 6319-6326
【非特許文献2】Chemistry Letters, Vol.37, No.1(2008), 76
【非特許文献3】Chemistry Letters, Vol.37, No.1(2008), 72
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
TiO2微粒子共存下でシリコンアルコキシドを加水分解・重縮合させ、あるいは、このような分散液を噴霧乾燥させると、TiO2微粒子を内包したシリカ粒子を得ることができる。また、分散液にある種の界面活性剤を添加すると、シリカ部分にメソ孔を導入することができる。
しかしながら、このような方法では、真球に近い球状粒子、あるいは、コロイド結晶を作製可能な程度の単分散性を備えた球状粒子は得られない。また、内部の空洞部分に粒子径の揃った金属酸化物を内包し、シェル部分に規則的なメソ孔をもつ粒子も得られない。
【0015】
一方、特許文献3に開示されているように、シリカと金属酸化物からなる核粒子の表面にシリカ層を形成し、酸処理によって核粒子の成分の一部を除去すると、空洞部分にシリカ以外の酸化物を内包したシリカ粒子を得ることができる。
しかしながら、この方法は、酸による化学エッチングを行うために、空洞部分に残存する成分は多孔質となり、粒子の大きさの制御も難しい。また、酸によるエッチングが必須であるので、空洞部分に保持可能な金属酸化物の種類も限られる。さらに、このような方法でもシェル部分に細孔を導入することはできるが、配向性を備えた細孔は得らない。そのため、ターゲット物質の吸収放出特性の向上は望めない。
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、シェル部分に規則的に並んだメソ細孔を有し、空洞部分に光触媒などの機能性金属酸化物を内包しており、真球に近い球状を呈し、しかも単分散性に優れた金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルを提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、空洞部分に保持可能な酸化物の種類に制限がなく、しかも、空洞部分に保持された酸化物の粒径が揃っている金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルは、
メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子と、
前記単分散球状中空粒子の空洞部分に保持された金属酸化物粒子と
を備えている。
【発明の効果】
【0018】
メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子を作製し、単分散球状中空粒子のメソ孔内及び/又は空洞内に金属酸化物前駆体を吸着させ、熱分解等によって金属酸化物前駆体を金属酸化物粒子に変換すると、金属酸化物粒子は、メソ孔内やシェルの外壁部分に析出せず、ほとんどがシェルの内壁部分(中空粒子の空洞部分)に析出する。
従って、単分散球状でシェル部分に規則配列したメソ細孔を有する中空粒子を出発原料に用いると、シェル部分の構造がそのまま保持された金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルが得られる。また、メソ孔内及び/又は空洞内に吸着可能な前駆体が得られる限りにおいて、空洞部分に保持可能な酸化物の種類に制限がない。さらに、空洞部分に保持される酸化物の粒径も均一化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセル]
本発明に係る金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルは、
メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子と、
前記単分散球状中空粒子の空洞部分に保持された金属酸化物粒子と
を備えている。
【0020】
[1.1 単分散球状中空粒子]
[1.1.1 組成]
中空粒子は、シリカのみからなるものでも良く、あるいは、シリカを主成分とし、シリカ以外の金属元素M1の酸化物を含んでいても良い。金属元素M1は、特に限定されるものではないが、2価以上の金属アルコキシドを製造可能なものが好ましい。金属元素M1が2価以上の金属アルコキシドを製造可能なものである場合、金属元素M1の酸化物を含む中空粒子を容易に製造することができる。このような金属元素M1としては、具体的には、Al、Ti、Mg、Zrなどがある。
中空粒子中のシリカの含有量は、50wt%以上が好ましく、さらに好ましくは、80wt%以上である。
【0021】
[1.1.2 形状]
中空粒子は、単分散で、かつ球状の粒子からなる。
本発明において、「単分散」とは、(1)式で表される単分散度が10%以下であることをいう。
単分散度=(粒子径の標準偏差)×100/(粒子径の平均値) ・・・(1)
後述する方法を用いると、単分散度が10%以下、あるいは、5%以下である中空粒子が得られる。
【0022】
「球状」とは、同一条件下で製造された複数個(好ましくは、20個以上)の粒子を顕微鏡観察した場合において、各粒子の真球度の平均値が、13%以下であることをいう。また、「真球度」とは、各粒子の外形の真円からのずれの程度を表す指標であって、粒子の表面に接する最小の外接円の半径(r0)に対する、外接円と粒子表面の各点との半径方向の距離の最大値(Δrmax)の割合(=Δrmax×100/r0(%))で表される値をいう。後述する方法を用いると、真球度が7%以下、あるいは、3%以下である中空粒子が得られる。
【0023】
[1.1.3 メソ細孔]
中空粒子は、シェル部分にメソ細孔を持つ。後述する方法を用いて中空粒子を製造する場合において、界面活性剤の種類、添加量などを最適化すると、メソ細孔を規則配列させることができる。
また、メソ細孔の大きさは、界面活性剤の分子長を最適化することにより制御(1〜50nmまで)することができる。
中空粒子は、メソ細孔を有するため、比表面積が極めて大きい。後述する方法を用いると、BET比表面積が800m2/g以上、あるいは、1000m2/g以上である中空粒子が得られる。金属酸化物粒子は中空粒子の空洞部分に導入されるので、金属酸化物粒子導入後も、シェル部分の細孔構造はほとんどそのまま維持される。
【0024】
[1.1.4 平均粒子径及びシェル厚さ]
中空粒子の平均粒子径及びシェル厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。後述する方法を用いると、平均粒子径が0.1〜1.5μmである中空粒子、あるいは、シェル厚さが0.01〜1μmである中空粒子が得られる。
【0025】
[1.2 金属酸化物粒子]
[1.2.1 組成]
金属酸化物粒子の組成は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。金属酸化物粒子として、種々の機能を備えたものを用いると、金属酸化物が持つ機能をそのまま備えた金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルが得られる。
金属酸化物粒子としては、具体的には、
(1)二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化銅などの光触媒粒子、
(2)酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化ネオジウム、酸化サマリウム、あるいは複合体(フェライト構造)などの磁性体粒子、
(3)酸化スズ、酸化インジウムスズなどの導電性粒子、
(4)酸化イットリウム、酸化ユーロピウム、酸化テルビウムなどの蛍光体粒子、
などがある。
その他の金属酸化物としては、具体的には、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化セリウム、あるいは二種類以上の酸化物を含む複合酸化物(例えば、磁性体粒子のフェライト構造など)などがある。
【0026】
[1.2.2 含有量]
金属酸化物粒子の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。一般に、金属酸化物粒子の含有量が多くなるほど、金属酸化物粒子が持つ機能を強く発現する金属酸化物内包メソポーラスシリカが得られる。
本発明においては、金属酸化物の大半が単分散中空粒子の空洞部分(特に、シェルの内壁部分)に保持されるので、シェル部分のメソ細孔の規則配列性や、中空粒子の真球度・単分散性を損なうことなく、相対的に多量の金属酸化物粒子を保持することができる。
後述する方法を用いると、少量の金属酸化物粒子を含有するメソポーラスシリカカプセルだけでなく、従来の方法よりも多量(例えば、30wt%以上、あるいは、40wt%以上)の金属酸化物粒子を含有するメソポーラスシリカカプセルであっても合成することができる。
【0027】
[1.2.3 粒子径及び標準偏差]
後述する方法を用いると、金属酸化物微粒子は、均一かつ微細な状態で空洞部分に保持される。製造条件を最適化すると、金属酸化物粒子の粒子径及び標準偏差を制御することができる。
【0028】
[2. 金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルの製造方法]
本発明に係る金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルの製造方法は、単分散球状中空粒子作製工程と、前駆体吸着工程と、金属酸化物生成工程とを備えている。
【0029】
[2.1 単分散球状中空粒子作製工程]
単分散球状中空粒子製造工程は、メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子を作製する工程である。
単分散球状中空粒子は、
(1)シリカ原料と、界面活性剤と、空洞形成用粒子とを含む原料を溶媒中で混合し、空洞形成用粒子粒子の周囲が界面活性剤を含むシリカからなるシェルで被覆された前駆体粒子を作製し、
(2)前駆体粒子から界面活性剤及び空洞形成用粒子を除去する、
ことにより得られる。
【0030】
[2.1.1 シリカ原料]
シリカ原料には、
(1) テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン(シラン化合物)、
(2) トリメトキシシラノール、トリエトキシシラノール、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン(シラン化合物)、
(3) ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン等のジアルコキシシラン(シラン化合物)、
(4) メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)、二ケイ酸ナトリウム(Na2Si2O5)、四ケイ酸ナトリウム(Na2Si4O9)、水ガラス(Na2O・nSiO2、n=2〜4)等のケイ酸ナトリウム、
(5) カネマイト(NaHSi2O5・3H2O)、二ケイ酸ナトリウム結晶(α、β、γ、δ−Na2Si2O5)、マカタイト(Na2Si4O9)、アイアライト(Na2Si8O17・xH2O)、マガディアイト(Na2Si14O17・xH2O)、ケニヤイト(Na2Si20O41・xH2O)等の層状シリケート、
(6) Ultrasil(Ultrasil社)、Cab−O−Sil(Cabot社)、HiSil(Pittsburgh Plate Glass社)等の沈降性シリカ、コロイダルシリカ、Aerosil(Degussa−Huls社)等のフュームドシリカ、
などを用いることができる。
【0031】
また、シリカ原料には、ヒドロキシアルコキシシランも用いることができる。ヒドロキシアルコキシシランとは、アルコキシシランのアルコキシ基の炭素原子にヒドロキシ基(−OH)がついたものをいう。ヒドロキシアルコキシシランとしては、ヒドロキシアルコキシ基を4個有するテトラキス(ヒドロキシアルコキシ)シラン、ヒドロキシアルコキシ基を3個有するトリス(ヒドロキシアルコキシ)シランを用いることができる。
ヒドロキシアルコキシ基の種類及びヒドロキシ基の数は特に制限されないが、2−ヒドロキシエトキシ基、3−ヒドロキシプロポキシ基、2−ヒドロキシプロポキシ基、2,3−ジヒドロキシプロキシ基等のように、ヒドロキシアルコキシ基中の炭素原子の数が比較的少ないもの(炭素数が1〜3程度のもの)が反応性の点から有利である。
【0032】
テトラキス(ヒドロキシアルコキシ)シランとしては、テトラキス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、テトラキス(3−ヒドロキシプロポキシ)シラン、テトラキス(2−ヒドロキシプロキシ)シラン、テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)シラン、などがある。
トリス(ヒドロキシアルコキシ)シランとしては、メチルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、エチルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、フェニルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、3−メルカプトプロピルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、3−アミノプロピルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、3−クロロプロピルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、などがある。
これらのヒドロキシアルコキシシランは、アルコキシシランとエチレングリコールやグリセリンなどの多価アルコールとを反応させることにより合成することができる(例えば、Doris Brandhuber et al., Chem.Mater. 2005, 17, 4262参照)。
【0033】
これらの中でも、テトラアルコキシシラン及びテトラキス(ヒドロキシアルコキシ)シランは、加水分解により生ずるシラノール結合の数が多くなり、強固な骨格を形成することができるので、シリカ原料として好適である。
なお、これらのシリカ原料は、単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。但し、2種以上のシリカ原料を用いると、前駆体粒子の製造時の反応条件が複雑化する場合がある。このような場合には、シリカ原料は、単独で使用するのが好ましい。
【0034】
また、前駆体粒子のシェルがシリカ以外の金属元素M1の酸化物を含む場合には、シリカ原料に加えて金属元素M1を含む原料を用いる。
金属元素M1を含む原料には、
(1) アルミニウムブトキシド(Al(OC4H9)3)、アルミニウムエトキシド(Al(OC2H5)3)、アルミニウムイソプロポキシド(Al(OC3H7)3)等のAlを含むアルコキシド類、及び、アルミン酸ナトリウム、塩化アルミニウム等の塩類、
(2) チタンイソプロポキシド(Ti(Oi−C3H7)4)、チタンブトキシド(Ti(OC4H9)4)、チタンエトキシド(Ti(OC2H5)4)等のTiを含むアルコキシド、
(3) マグネシウムメトキシド(Mg(OCH3)2)、マグネシウムエトキシド(Mg(OC2H5)2)等のMgを含むアルコキシド、
(4) ジルコニウムイソプロポキシド(Zr(Oi−C3H7)4)、ジルコニウムブトキシド(Zr(OC4H9)4)、ジルコニウムエトキシド(Zr(OC2H5)4)等のZrを含むアルコキシド、
などを用いることができる。
【0035】
[2.1.2 界面活性剤]
界面活性剤は、シェルにメソ細孔を形成するための鋳型となる。界面活性剤の種類は、特に限定されるものではなく、種々の界面活性剤を用いることができる。使用する界面活性剤の種類、添加量などに応じて、シェル内の細孔構造を制御することができる。
【0036】
界面活性剤は、特に、アルキル4級アンモニウム塩が好ましい。アルキル4級アンモニウム塩とは、次の(a)式で表されるものをいう。
CH3−(CH2)n−N+(R1)(R2)(R3)X- ・・・(a)
(a)式中、R1、R2、R3は、それぞれ、炭素数が1〜3のアルキル基を表す。R1、R2、及び、R3は、互いに同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。アルキル4級アンモニウム塩同士の凝集(ミセルの形成)を容易化するためには、R1、R2、及び、R3は、すべて同一であることが好ましい。さらに、R1、R2、及び、R3の少なくとも1つは、メチル基が好ましく、すべてがメチル基であることが好ましい。
(a)式中、Xはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子の種類は特に限定されないが、入手の容易さからXは、Cl又はBrが好ましい。
(a)式中、nは7〜21の整数を表す。一般に、nが小さくなるほど、メソ孔の中心細孔径が小さい球状シリカマトリックスが得られる。一方、nが大きくなるほど、中心細孔径は大きくなるが、nが大きくなりすぎると、アルキル4級アンモニウム塩の疎水性相互作用が過剰となる。その結果、層状の化合物が生成し、球状の多孔体が得られない。nは、好ましくは、9〜17、さらに好ましくは、13〜17である。
【0037】
(a)式で表されるものの中でも、アルキルトリメチルアンモニウムハライドが好ましい。アルキルトリメチルアンモニウムハライドとしては、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムハライド、ノニルトリメチルアンモニウムハライド、デシルトリメチルアンモニウムハライド、ウンデシルトリメチルアンモニウムハライド、ドデシルトリメチルアンモニウムハライド等がある。
これらの中でも、特に、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド又はアルキルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
【0038】
中空粒子を合成する場合において、1種類のアルキル4級アンモニウム塩を用いても良く、あるいは、2種以上を用いても良い。しかしながら、アルキル4級アンモニウム塩は、中空粒子のシェル内にメソ孔を形成するためのテンプレートとなるので、その種類は、メソ孔の形状に大きな影響を与える。より均一なメソ孔を有する中空粒子を合成するためには、1種類のアルキル4級アンモニウム塩を用いるのが好ましい。
【0039】
[2.1.3 空洞形成用粒子]
空洞形成用粒子は、空洞を形成するための鋳型となるものである。空洞形成用粒子は、その周囲にシリカを主成分とするシェルを形成することができ、かつ、シェル形成後に容易に除去できるものであれば良い。また、単分散球状の中空粒子を得るためには、空洞形成用粒子もまた単分散球状である必要がある。
空洞形成用粒子としては、例えば、
(1)焼成による分解又は有機溶媒による除去が可能なポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、メラミンホルムアルデヒドなどの高分子コロイド粒子、
(2)塩酸などの酸によって除去可能な炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの塩基性化合物粒子、
などがある。
空洞形成用粒子として高分子コロイド粒子を用いる場合、粒子表面に、シリカ原料の重縮合を促進する機能を有する塩基性の官能基(例えば、アミノ基)を備えたものを用いる。粒子表面にこのような官能基がない場合、粒子表面以外の領域においてシリカが単独で重縮合し、副生成物が得られる。これに対し、表面がこのような官能基で修飾された高分子コロイド粒子を用いると、粒子表面において優先的にシリカ原料の重縮合が進行してシェルとなり、副生成物の生成を抑制することができる。
【0040】
[2.1.4 溶媒]
溶媒には、水、アルコールなどの有機溶媒、水と有機溶媒の混合溶媒などを用いる。アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール等の1価のアルコール、エチレングリコール等の2価のアルコール、グリセリン等の3価のアルコールのいずれでも良い。
水と有機溶媒の混合溶媒を用いる場合、混合溶媒中の有機溶媒の含有量は、目的に応じて任意に選択することができる。一般に、溶媒中に適量の有機溶媒を添加すると、粒径や粒度分布の制御が容易化する。
【0041】
[2.1.5 配合比]
一般に、シリカ原料及び必要に応じて添加される金属元素M1を含む原料(以下、「シェル源」という)の濃度が低すぎると、中空粒子を高収率で得ることができない。また、粒径及び粒度分布の制御が困難となり、粒径の均一性が低下する。従って、シェル源の濃度は、0.005mol/L以上が好ましい。シェル源の濃度は、さらに好ましくは、0.008mol/L以上である。
一方、シェル源の濃度が高すぎると、メソ孔を形成するためのテンプレートとして機能する界面活性剤が相対的に不足し、規則配列したメソ孔が得られない。従って、シェル源の濃度は、0.03mol/L以下が好ましい。シェル源の濃度は、さらに好ましくは、0.015mol/L以下である。
【0042】
一般に、界面活性剤の濃度が低すぎると、メソ孔を形成するためのテンプレートが不足し、規則配列したメソ孔が得られない。従って、界面活性剤の濃度は、0.003mol/L以上が好ましい。界面活性剤の濃度は、さらに好ましくは、0.01mol/L以上である。
一方、界面活性剤の濃度が高すぎると、中空粒子を高収率で得ることができない。従って、界面活性剤の濃度は、0.03mol/L以下が好ましい。界面活性剤の濃度は、さらに好ましくは、0.02mol/L以下である。
【0043】
シェルの厚さは、空洞形成用粒子とシェル源の比率で決まる。一般に、空洞形成用粒子に対するシェル源の比率が大きくなるほど、シェルを厚くすることができる。
【0044】
[2.1.6 反応条件]
シリカ原料として、アルコキシシラン、ヒドロキシアルコキシシラン等のシラン化合物を用いる場合には、これをそのまま出発原料として用いる。
一方、シリカ原料としてシラン化合物以外の化合物を用いる場合には、予め、水(又は、必要に応じてアルコールが添加されたアルコール水溶液)にシリカ原料を加えて、水酸化ナトリウム等の塩基性物質を加える。塩基性物質の添加量は、シリカ原料中のケイ素原子と等モル程度の量とするのが好ましい。シラン化合物以外のシリカ原料を含む溶液に塩基性物質を加えると、シリカ原料中に既に形成されているSi−(O−Si)4結合の一部が切断され、均一な溶液が得られる。溶液中に含まれる塩基性物質の量は、中空粒子の収量や気孔率に影響を及ぼすので、均一な溶液が得られた後、溶液に希薄酸溶液を加え、溶液中に存在する過剰の塩基性物質を中和させる。希薄酸溶液の添加量は、シリカ原料中のケイ素原子に対して1/2〜3/4倍モルに相当する量が好ましい。
【0045】
所定量の界面活性剤を含む溶媒中に、空洞形成用粒子及びシェル源を加え、加水分解及び重縮合を行う。これにより、界面活性剤がテンプレートとして機能し、空洞形成用粒子の表面にシリカ及び界面活性剤を含むシェルが形成された前駆体粒子が得られる。
【0046】
反応条件は、シリカ原料の種類、前駆体粒子の粒径等に応じて、最適な条件を選択する。一般に、反応温度は、−20〜100℃が好ましい。反応温度は、さらに好ましくは、0〜80℃、さらに好ましくは、10〜40℃である。
【0047】
[2.1.7 界面活性剤及び空洞形成用粒子の除去]
乾燥後、前駆体粒子から界面活性剤及び空洞形成用粒子を除去すると、単分散球状中空粒子が得られる。界面活性剤の除去方法としては、
(1) 前駆体粒子を大気中又は不活性雰囲気下において、300〜1000℃(好ましくは、300〜600℃)で、30分以上(好ましくは、1時間以上)焼成する焼成方法、
(2) 前駆体粒子を界面活性剤の良溶媒(例えば、少量の塩酸を含むメタノール)中に浸漬し、所定の温度(例えば、50〜70℃)で加熱しながら攪拌し、薄膜中の界面活性剤を抽出するイオン交換法、
などがある。
空洞形成用粒子が高分子コロイド粒子からなる場合、空洞形成用粒子も、界面活性剤と同様の方法により除去することができる。あるいは、有機溶媒(トルエン、クロロホルム、ベンゼンなど)に浸漬することで除去することもできる。一方、空洞形成用粒子が塩基性化合物からなる場合、塩酸などの酸により空洞形成用粒子を除去することができる。
【0048】
[2.2 前駆体吸着工程]
前駆体吸着工程は、単分散球状中空粒子のメソ孔内及び/又は空洞内に金属酸化物の前駆体を吸着させる工程である。
前駆体は、金属酸化物の種類に応じて最適なものを選択する。
前駆体としては、具体的には、
(1)硝酸塩(例えば、硝酸鉄、硝酸亜鉛など)、塩化物(例えば、塩化鉄、塩化ルテニウムなど)、アンモニウム塩、硫酸塩、炭酸塩等の無機塩、
(2)酢酸塩(例えば、酢酸スズ、酢酸セリウムなど)、クエン酸塩等の有機塩、
(3)メトキシド、エトキシド(例えば、ジルコニウムエトキシド)、プロポキシド(例えば、チタンイソプロポキシド)、ブトキシド(例えば、チタンブトキシド、アルミニウムブトキシドなど)等のアルコキシド、
(4)フェロセンカルバデヒド、コバルトセンカルバデヒド、ニッケロセンカルバデヒドなどのメタロセン、
(5)ビス(8−ヒドロキシキノレート)亜鉛、トリス(8−ヒドロキシキノレート)ガリウムなどの金属錯体、
などがある。
【0049】
単分散球状中空粒子に液体状の前駆体又は適当な溶媒に前駆体を溶解させた溶液を振りかけると、メソ孔内及び/又は中空粒子の空洞内に液体又は溶液が吸収される。液体又は溶液は、最大で中空粒子の空洞+メソ孔の容積に相当する量まで吸着させることができる。
【0050】
[2.3 金属酸化物生成工程]
金属酸化物生成工程は、メソ孔内及び/又は空洞内に吸着させた金属酸化物前駆体を金属酸化物粒子に変換する工程である。
前駆体の金属酸化物への変換は、前駆体を吸着させた単分散球状中空粒子を酸化雰囲気下で加熱することにより行う。加熱温度は、前駆体の種類に応じて最適な温度を選択する。加熱温度は、通常、300〜1000℃程度である。加熱温度は、好ましくは、450〜800℃である。
1回の吸着・焼成で必要量の金属酸化物を担持できない場合には、吸着及び焼成を複数回繰り返す。
【0051】
[3. 金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルの作用]
メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子を作製し、単分散球状中空粒子のメソ孔内及び/又は空洞内に金属酸化物前駆体を吸着させ、熱分解等によって金属酸化物前駆体を金属酸化物粒子に変換すると、金属酸化物粒子は、メソ孔内やシェルの外壁部分に析出せず、ほとんどがシェルの内壁部分(中空粒子の空洞部分)に析出する。
従って、単分散球状でシェル部分に規則配列したメソ細孔を有する中空粒子を出発原料に用いると、シェル部分の構造がそのまま保持された金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルが得られる。また、メソ孔内及び/又は空洞内に吸着可能な前駆体が得られる限りにおいて、空洞部分に保持可能な酸化物の種類に制限がない。さらに、空洞部分に保持される酸化物の粒径も均一化することができる。
【0052】
例えば、金属酸化物が光触媒である場合、光触媒の周囲が中空粒子で覆われているので、これを有機系バインダーを用いて担体上に固定したり、あるいは、これを直接、衣服やカーテンに練り込んでも、有機系バインダーや布地の繊維を劣化させることがない。しかも、中空粒子は多孔質であるため、有害物質を空洞内に取り込むことができ、有害物質の分解効率が高い。特に、有害物質がシリカに吸着しやすい物質である場合には、中空粒子のシェル部分が選択的に有害物質を吸着するので、高い分解効率が得られる。
また、金属酸化物が磁性体であるメソポーラスシリカカプセルは、メソ孔内に薬剤を吸着させ、患部まで運搬する薬剤運搬体として用いることができる。
【実施例】
【0053】
(実施例1〜3、比較例1〜2)
[1. 試料の作製]
[1.1 チタニア内包メソポーラスシリカカプセル(実施例1)]
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)0.352g、水40g、メタノール40gを室温で混合し、攪拌を行った。この溶液に、表面をアミノ基で修飾したポリスチレン粒子の水溶液(粒子濃度:2.57wt%、粒子径:200nm)2.84L、及びテトラメトキシシラン0.132gを添加し、さらに攪拌を続けた。室温でさらに8時間攪拌し、一晩放置した後、ろ過と脱イオン水による洗浄を3回繰り返した。乾燥後、焼成することによりポリスチレン及び界面活性剤を除去し、白色粉末(中空メソポーラスシリカ)を得た。
【0054】
次に、チタンイソプロポキシドとアセチルアセトンをモル比1:2の割合で混合し、チタニア前駆体溶液とした。中空メソポーラスシリカ0.0127gに対して、チタニア前駆体溶液17.8μLを加えて、中空メソポーラスシリカに溶液を均一に浸み込ませた。
窒素/酸素混合気体中(体積比:4/1)で、酸素をバブリングにより供給しながら500℃で6時間焼成を行った。前駆体溶液の含浸と焼成を複数回繰り返し、チタニア内包メソポーラスシリカカプセルを得た。
【0055】
[1.2 チタニア内包メソポーラスシリカカプセル(実施例2)]
テトラメトキシシランの添加量を0.246gとした以外は、実施例1と同様の手順に従い、白色粉末(中空メソポーラスシリカ)を得た。
次に、中空メソポーラスシリカ0.0094gに対して、実施例1と同様のチタニア前駆体溶液を13.2μL加えて、中空メソポーラスシリカに溶液を均一に浸み込ませた。以下、実施例1と同様の手順に従い、チタニア内包メソポーラスシリカカプセルを得た。
【0056】
[1.3 酸化鉄内包メソポーラスシリカカプセル(実施例3)]
フルフリルアルコール1mLにフェロセンカルバデヒド2.14gを溶解させて、酸化鉄前駆体溶液とした。実施例1で得られた中空メソポーラスシリカ0.0129gに対して、酸化鉄前駆体溶液19.1μLを加えて、中空メソポーラスシリカに溶液を均一に浸み込ませた。処理後の粉末を500℃で3時間焼成し、酸化鉄内包メソポーラスシリカカプセルを得た。
【0057】
[1.4 チタニア内包中実メソポーラスシリカ(比較例1)]
水795gとメタノール800gの混合溶液に対して、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)7.04g及び1規定水酸化ナトリウム6.84gを添加し、室温で攪拌を行った。これにテトラメトキシシラン5.28gを加えて、さらに攪拌を続けたところ、テトラメトキシシランは完全に溶解し、白色粉末が析出してきた。室温でさらに8時間攪拌して、一晩放置した後、ろ過と脱イオン水による洗浄を3回繰り返した。乾燥後、焼成することにより界面活性剤を除去し、白色粉末(中実メソポーラスシリカ)を得た。
【0058】
チタンイソプロポキシドとアセチルアセトンをモル比1:2の割合で混合し、チタニア前駆体溶液とした。中実メソポーラスシリカ0.1224gに対してチタニア前駆体溶液85.7μLを加えて、中実メソポーラスシリカに溶液を均一に浸み込ませた。
窒素/酸素混合気体中(体積比:4/1)で、酸素をバブリングにより供給しながら、500℃で6時間焼成を行った。前駆体溶液の含浸と焼成を複数回繰り返し、チタニア内包中実メソポーラスシリカを得た。
【0059】
[1.5 チタニア粉末(比較例2)]
市販のチタニア粉末(P25、石原産業製)をそのまま試験に供した。
【0060】
[2. キャラクタリゼーション]
[2.1 中空メソポーラスシリカ(実施例1、2)]
図1(a)及び図1(b)に、それぞれ、実施例1及び実施例2で得られた中空メソポーラスシリカのSEM像を示す。また、図2及び図3に、それぞれ、実施例1で得られた中空メソポーラスシリカのTEM像及びSTEM像を示す。さらに、図4に、実施例2で得られた中空メソポーラスシリカのTEM像を示す。
これらの観察により、実施例1、2で得られた中空メソポーラスシリカは、均一なシリカシェルで覆われており、粒子表面には余分な析出物(余剰のシリカなど)のない、非常に単分散性に優れる球状粒子であることがわかる。
さらに、加えるテトラメトキシシラン量により、シリカシェルの厚みをコントロール可能であった。つまり、実施例1のシェル厚は33nmであるのに対し、実施例2のシェル厚は54nmに増加した。シェル厚を増加させても、余分なシリカ成分が析出することはなく、粒子の単分散性も保持された。
STEM像(図3)では、粒子1個を拡大して観察しており、実施例1で得られたシリカ粒子が中空であること、及び、シェル部分には規則的なメソ細孔が存在すること、がよく示されている。
【0061】
図5に、実施例1及び実施例2で得られた中空メソポーラスシリカの窒素吸着等温線及びBJH法により求めた細孔分布曲線を示す。いずれの粒子についても、等温線にはメソ細孔に起因する立ち上がりが観察された。また、細孔分布曲線からは、20Å(2nm)の均一な細孔が存在することが示唆された。これらの粒子のBET比表面積は、1040m2/g(実施例1)及び812m2/g(実施例2)と、かなり大きな値であり、両者ともに吸着特性が高いことが期待される。
【0062】
[2.2 チタニア内包メソポーラスシリカカプセル(実施例1、2)]
図6及び図7に、それぞれ、実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセルのSEM像及びEDXによる元素分析結果を示す。
SEM写真では、粒子表面にチタニア粒子の析出が認められず、担持前(図1)に比べて、見かけ上は粒子に変化は見られなかった。EDXでは、SiのピークとともにTiのピークも明瞭に観察された。グラフ中でCuのピークが最も強く検出されているが、これはSEM観察において、少量の粉末サンプルをCu製SEMプレート上に担持する方法で行っていることによる。
図8に、実施例2で得られたチタニア内包メソポーラスシリカのSEM像を示す。実施例1と同様に、粒子表面に析出する余分なチタニアは見られなかった。
【0063】
表1に、実施例1及び実施例2で得られたチタニア内包メソポーラスシリカのEDXによる元素分析の結果を示す。測定は、1つの粒子について観察場所を変えて3回繰り返し、その平均値を求めた。元素分析より、粒子中に50wt%近い非常に多量なチタニアを導入できることがわかった。SEM観察により、粒子表面にはチタニアが析出していないことが明らかであるため、導入した多量のチタニアは、すべて粒子中に存在していることが示唆される。
【0064】
【表1】
【0065】
図9に、実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカのTEM像及び電子線回折像を示す。また、図10に、実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカの粉末XRD回折パターンを示す。
TEM像においても、粒子表面にはチタニア粒子が存在しないことが良くわかる。さらに、導入したチタニアの大部分は、中空のシリカシェル壁面に10nm程度の大きさで高分散な状態で存在している様子が確認された。TEM像を拡大し、メソ細孔の仔細な観察を行ったが、メソ孔内にはほとんどチタニア粒子は認められなかった。つまり、実施例1の方法では、規則的なメソ細孔を持つシリカシェル壁面に10nm程度の大きさのチタニア粒子が張り付いており、その導入量は50wt%に近い非常に特殊な構造体であることがわかった。
このチタニアの粒径は10nm程度と細かく、さらにシリカとの接触面積が少なく、従来技術のようにチタニアは完全に被覆されていない。そのため、高い触媒活性を持つことが期待できる。
TEMの電子線回折パターンは、アナターゼに帰属された。結晶構造については、粉末XRD測定でも明瞭なアナターゼのピークが観察された。
【0066】
[2.3 酸化鉄内包メソポーラスシリカカプセル(実施例3)]
図11、図12及び図13に、それぞれ、実施例3で得られた酸化鉄内包メソポーラスシリカカプセルのSEM像、EDXによる元素分析結果、及びTEM像を示す。なお、図12において、グラフ中の表は、分析値である。分析は、観察場所を変えて3回繰り返し、その平均値を求めた。
酸化鉄導入の場合もチタニアと同様に、非常に多量の酸化鉄量(Si/Fe=54/46)であるにもかかわらず、酸化鉄は、粒子中(主に、粒子の中空部分)に高分散な状態で担持されることがわかった。
【0067】
図14に、実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセル及び実施例3で得られた酸化鉄内包メソポーラスシリカカプセルの窒素吸脱着等温線の測定結果を示す。チタニア及び酸化鉄導入後も、メソ孔は存在していた。さらに、BETによる比表面積は、それぞれ、530.53m2/g(実施例1)及び793.37m2/g(実施例3)であった。これは、TEM観察の通り、導入された金属酸化物は、ほとんど中空部分に担持され、メソ細孔は酸化物粒子によって閉塞されておらず、吸着や触媒反応に非常に有利であることを示している。
【0068】
[2.4 チタニア内包中実メソポーラスシリカ(比較例1)]
図15に、比較例1で合成した中実メソポーラスシリカのSEM像を示す。粒子は、非常に単分散性の高い球状粒子であった。
図16に、チタニア担持量の異なるチタニア内包中実メソポーラスシリカ(比較例1)のSEM像を示す。図16中のチタニア量は、EDXによる元素分析値である。
SEM観察の結果より、Si/Ti=74/26(wt%)程度までは、若干量のチタニアは表面に析出しているが、大部分はメソ孔内に導入可能であった。Si/Ti=72/28(wt%)までチタニア量を増加させると、粒子表面でのチタニア成長が顕著になった。Si/Ti=69/31(wt%)では、粒子表面での析出がさらに増加した。
本検討により、通常のアルコキシド含浸法では、Ti成分を粒子表面に析出させることなく、28wt%以上のTi成分を中実メソポーラスシリカに導入することは困難であり、その限界導入量は、実施例1、2で達成された50w%よりも非常に少量であることがわかった。
【0069】
[3. 触媒反応特性]
以下に、実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセルの紫外線照射による触媒特性を示す。実施例1で得られたカプセルは、10nm程度の高活性なチタニア粒子を多量に内包し、かつ反応物質の拡散をスムーズに進行させる規則性の高いメソ細孔をシリカシェルに備えている。また、高比表面積はメソポーラスシリカの高い吸着特性が期待されるために、特に流動槽中での水質浄化触媒として優れた性能を発揮することが期待される。
実施例1で得られたカプセルは、メソポーラスシリカに由来する非常に高い吸着特性を持つために、汚染物質を吸着により水中から除去することができる。さらに、この状態で光照射を行うことにより、吸着された汚染物質は、空洞内部に存在する微細なチタニア粒子により分解される。これと同時に、シリカの吸着特性は再生されるために、非常に簡便な方法で半永久的に光触媒能を発揮させることが可能である。
一方、チタニア粒子単独では、優れた触媒作用を備えているにもかかわらず、汚染物質を吸着できないために、流動状態になる反応系の水質浄化を行うことはできない。
この流動槽中での汚染物質除去のモデル実験として、次のような反応を行った。
【0070】
[3.1 光触媒反応(1)]
メチレンブルーの0.05mM水溶液60mLに対して、実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセル及び市販のチタニア粉末(P25、石原産業製)(比較例2)を、各々0.11g添加して、darkで3時間攪拌を行った。ろ過により粉末と濾液に分離して、濾液の吸収スペクトルの測定を行った。
【0071】
図17に、得られた吸収スペクトルを示す。メチレンブルーは、664nmに主な吸収ピークを示す。比較例2のろ液の吸収スペクトルは、反応前の元の溶液のスペクトルとほとんど重なっており、比較例2の粉末は、吸着によりメチレンブルーを除去できなかった。この時、ろ紙上の粉末の色は、反応を行う前と同じ白色で、吸収スペクトルからも明らかであるが、メチレンブルーによる着色は見られなかった。
【0072】
一方、実施例1の場合、ろ液は全くの透明であり、吸収スペクトルは400nm〜800nmの領域でほとんどゼロに等しく、メチレンブルー特有の664nmのピークも見られなかった。逆に、ろ紙上の粉末は、メチレンブルー特有の青色を呈した。つまり、実施例1の粒子は、吸着により系内のメチレンブルーをすべて除去できることがわかった。
次に、ろ紙上の青く着色した実施例1の粒子に、そのままの状態で紫外線を3時間照射したところ、3時間後には粉末は白色に戻った。この粉末を再びメチレンブルーの溶液に添加して、同様な反応を繰り返した。3時間後に再びろ過により、粉末とろ液を分離した。前述同様に、濾液はほとんど透明であり、ろ紙上の粉末はメチレンブルー由来の青色を呈した。ろ液の吸収スペクトルの測定を行ったところ、スペクトルは測定領域においてはほぼゼロであり、664nmにはピークは認められなかった。
【0073】
一連の操作を5回繰り返したが、5回目においてもろ液は透明であり、ろ紙上の粉末は青く着色していた。本実験により、実施例1の粉末は、光による再生が可能であり、吸着特性に優れた光触媒として、湖沼、河川等の流動のある水中からの有害物質の除去において、優れた特性を発揮することが期待される。
一方、汚染物質の中には、全くシリカに吸着しない物質も存在する。次の実験においては、実施例1の粒子がそのような汚染物質に対しても優れた光触媒活性を持つことを証明する。
【0074】
[3.2 光触媒反応(2)]
メチルオレンジの0.2mM水溶液50mLに対して、実施例1の粒子及び比較例1の粒子(図16(a)の粒子(Si/Ti=74/26))を、各々0.125g添加して、darkで3時間攪拌を行った。3時間後に遠心分離により粉末と上澄み液を分離し、上澄み液の吸収スペクトルの測定を行った。この時、粉末は白色のままであり、上澄み液はメチルオレンジ由来の鮮やかなオレンジ色であった。つまり、メチルオレンジは、シリカに吸着しないことが分かった。
【0075】
分離した粉末を再び液に分散させて、紫外線を照射しながら、30分毎に液をサンプリングし、メチルオレンジの光分解反応の進行度合いを測定した。
図18に、得られた吸収スペクトルを示す。メチルオレンジは、460nmに吸収スペクトルを示す。実施例1の粒子では、紫外線照射30分後には吸収スペクトルのピーク高さが1/3程度に減少し、照射時間とともに460nmのピークは段階的に減少し、150分後には元のピークの1/10近くまで減少した。150分後には、溶液はほぼ透明になり、実施例1の粒子は、吸着によらず、光触媒作用のみでも、汚染物質を除去できることがわかった。
【0076】
一方、比較例1の粒子では、紫外線を照射してもメチルオレンジの光分解は効率的に進まず、3時間UV照射を行っても、溶液は反応前のオレンジ色とそれほど変化が見られなかった。
図19に、この光分解反応効率を時間に対してプロットしたグラフを示す。比較例1の粒子の光分解特性は時間とともに一定であり、反応は非常にゆっくり進行した。一方、実施例1の粒子は、初期段階の反応速度が非常に早く、光触媒反応が素早く進行していることがわかった。これは、粒子内に非常に微細なチタニア粒子が、高分散かつ多量に存在し、かつ規則的なメソ孔により反応基質の拡散が速やかに起きていることに対応すると考えられる。
【0077】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセルは、薬剤運搬体、制限空間での触媒反応用担体、分離材、バイオ分子の固定材などに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、それぞれ、実施例1及び実施例2で作製した中空メソポーラスシリカのSEM像である。
【図2】実施例1で作製した中空メソポーラスシリカのTEM像(左図:高倍率、右図:低倍率)である。
【図3】実施例1で作製した中空メソポーラスシリカのSTEM像(2視野)である。
【図4】実施例2で作製した中空メソポーラスシリカのTEM像(左図:高倍率、右図:低倍率)である。
【図5】図5(a)は、実施例1及び実施例2で作製した中空メソポーラスシリカの吸脱着等温線である。図5(b)は、実施例1及び実施例2で作製した中空メソポーラスシリカの細孔分布曲線である。
【図6】実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセルのSEM像である。
【図7】実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセルのEDX分析結果である。
【図8】実施例2で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセルのSEM像である。
【図9】実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセルのTEM像及び電子線回折像である。
【図10】実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセルの粉末XRDパターンである。
【図11】実施例3で得られた酸化鉄内包メソポーラスシリカカプセルのSEM像である。
【図12】実施例3で得られた酸化物内包メソポーラスシリカカプセルのEDX分析結果である。
【図13】実施例3で得られた酸化鉄内包メソポーラスシリカカプセルのTEM像である。
【図14】実施例1で得られた中空メソポーラスシリカ及びチタニア内包メソポーラスシリカカプセル、並びに、実施例3で得られた酸化鉄内包メソポーラスシリカカプセルの窒素吸脱着等温線である。
【図15】比較例1で得られた中実メソポーラスシリカのSEM像である。
【図16】比較例1で得られた、チタニア含有量の異なるチタニア内包中実メソポーラスシリカのSEM像である。
【図17】メチレンブルー接触後のろ液の吸収スペクトルである。
【図18】図18(a)は、実施例1で得られたチタニア内包メソポーラスシリカカプセルを分散させたメチルオレンジ溶液の吸収スペクトル変化である。図18(b)は、比較例1で得られたチタニア内包中実メソポーラスシリカ(Si/Ti=74/26(wt%))を分散させたメチルオレンジ溶液の吸収スペクトル変化である。
【図19】メチルオレンジ溶液吸収スペクトルの時間変化を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子と、
前記単分散球状中空粒子の空洞部分に保持された金属酸化物粒子と
を備えた金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセル。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子は、光触媒粒子及び磁性体粒子から選ばれるいずれか1種以上である請求項1に記載の金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセル。
【請求項3】
平均粒子径が0.1〜1.5μmである請求項1又は2に記載の金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセル。
【請求項4】
メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子を作製し、前記単分散球状中空粒子のメソ孔内及び/又は空洞内に金属酸化物前駆体を吸着させ、前記金属酸化物前駆体を金属酸化物粒子に変換することにより得られる請求項1から3までのいずれかに記載の金属酸化物内包メソポーラスシリカナノカプセル。
【請求項1】
メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子と、
前記単分散球状中空粒子の空洞部分に保持された金属酸化物粒子と
を備えた金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセル。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子は、光触媒粒子及び磁性体粒子から選ばれるいずれか1種以上である請求項1に記載の金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセル。
【請求項3】
平均粒子径が0.1〜1.5μmである請求項1又は2に記載の金属酸化物内包メソポーラスシリカカプセル。
【請求項4】
メソポーラスシリカからなる単分散球状中空粒子を作製し、前記単分散球状中空粒子のメソ孔内及び/又は空洞内に金属酸化物前駆体を吸着させ、前記金属酸化物前駆体を金属酸化物粒子に変換することにより得られる請求項1から3までのいずれかに記載の金属酸化物内包メソポーラスシリカナノカプセル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−249268(P2009−249268A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102830(P2008−102830)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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