説明

金属酸化物分散液

シロキサン流体中に分散した金属酸化物の粒子と分散剤とを含む分散液であって、該分散剤はポリシロキサンであり、(i)該ポリシロキサンは0.1〜3のカルボキシル基を含み、(ii)該ポリシロキサン中の非カルボキシル基含有モノマー単位とカルボキシル基含有モノマー単位との比が40〜150:1である。この分散液は日焼け防止化粧品の成分として特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物の分散液に関し、特に、分散剤としてカルボキシル基を含むポリシロキサンを有するシロキサン流体分散媒に金属酸化物が分散した分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄のような金属酸化物は、日焼け防止剤、プラスチックフィルム、樹脂のような用途において紫外光の減衰剤として用いられてきた。一般に、これらの用途に有用な金属酸化物は一次粒子の平均サイズが200nm未満である。このような金属酸化物を油性媒体中および水中に分散させた分散液が知られており、この分散液は日焼け防止用のクリームやローションのような製品を製剤するのに用いられてきた。金属酸化物の分散液は他の既存製剤成分と混合して製品を作成する適用性があることで製品作成に有利であることが示されてきた。
【0003】
シロキサンまたはシリコーンをベースにしたオイルを化粧品に用いることは、肌触りを向上させることができるため、一般的になってきている。そのため、シロキサンをベースにした分散媒に金属酸化物を分散させた分散液が望まれる。このような分散液を作成することは、これまで困難であった。
【0004】
ヨーロッパ公開特許公報EP0953336Aには、改質シリコーンまたは反応性シリコーンを分散剤とし、混練処理または高圧分散処理によって、シリコーン・オイル中に紫外光遮蔽微粒子を分散させた分散液を作成する方法が開示されている。EP0953336Aは特に、オキサゾリン改質シリコーン、アミノ改質シリコーン、ポリエーテル改質シリコーンを用いている。EP0953336Aには粒子の最高濃度として40wt%と記載されているが、明細書中の実施例の粒子濃度はこれより大幅に低い。日焼け防止製剤への適用性を向上させるには、更に高濃度の粒子を含有するシロキサンまたはシリコーンをベースとした分散液が必要である。この分散液は、安定性および光学特性などの性質を向上させることも必要である。
【発明の開示】
【0005】
本発明者は、上記諸問題の少なくとも1つを解消または大幅に低減できる分散液を見出した。
【0006】
すなわち本発明は、シロキサン流体中に分散した金属酸化物の粒子と分散剤とを含む分散液であって、該分散剤はポリシロキサンであり、(i)該ポリシロキサンは0.1〜3のカルボキシル基を含み、(ii)該ポリシロキサン中の非カルボキシル基含有モノマー単位とカルボキシル基含有モノマー単位との比が40〜150:1である分散液を提供する。
【0007】
本発明は更に、金属酸化物の分散液の作成方法であって、シロキサン流体中で分散剤の存在下で金属酸化物の粒子を粒状粉砕媒体で混練する工程を含み、該分散剤はポリシロキサンであり、(i)該ポリシロキサンは0.1〜3のカルボキシル基を含み、(ii)該ポリシロキサン中の非カルボキシル基含有モノマー単位とカルボキシル基含有モノマー単位との比が40〜150:1である、金属酸化物の分散液の作成方法をも提供する。
【0008】
本発明は更に、金属酸化物の粒子と、シロキサン流体と、ポリシロキサンとを含む日焼け防止組成物であって、(i)該ポリシロキサンは0.1〜3のカルボキシル基を含み、(ii)該ポリシロキサン中の非カルボキシル基含有モノマー単位とカルボキシル基含有モノマー単位との比が40〜150:1である、日焼け防止組成物をも提供する。
【0009】
本発明は更に、シロキサン流体中に分散した金属酸化物の粒子と分散剤とを含む分散液の、日焼け防止組成物の作成への使用であって、該分散剤はポリシロキサンであり、(i)該ポリシロキサンは0.1〜3のカルボキシル基を含み、(ii)該ポリシロキサン中の非カルボキシル基含有モノマー単位とカルボキシル基含有モノマー単位との比が40〜150:1である分散液の、エンドユーザー用日焼け防止組成物の作成への使用をも提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ここで分散液とは、固体粒子が凝集に対して安定している真の分散液を意味する。この分散液中の粒子は比較的均一に分散していて静置中に凝集し難く、凝集が起きても単純に撹拌するだけで容易に分散状態に復帰できる。
【0011】
ポリシリキサン分散剤は、望ましくはポリアルキルシロキサンであり、望ましくはアルキル基は低アルキル、例えばC1−6、更に望ましくはC1−3、特にメチル基である。
【0012】
ポリシロキサンとは、遊離官能性カルボキシル基および/またはエステルおよび/またはその塩誘導体を意味する。適切なエステル基としては、低アルキル、例えばC1−6、更に望ましくはC1−3、特にメチル基が含まれる。適切な塩誘導体としては、金属、例えばアルカリ金属、望ましくはナトリウムまたはカリウムが含まれる。本発明の望ましい実施形態においては、ポリシロキサンのカルボキシル基は、遊離酸および/またはその塩、より望ましくは遊離酸である。
【0013】
適したポリシロキサンは、1分子あたり0.5〜3、望ましくは0.8〜2.5、より望ましくは0.9〜2、特に1〜1.5、特別に1.1〜1.4のカルボキシル基(またはカルボキシル基含有モノマー単位)を含む。望ましい実施形態においては、カルボキシル基の個数が異なる種々のポリシロキサン分子の混合物を用いており、したがって1分子あたりのカルボキシル基の個数は平均値であるため、整数とならないこともある。
【0014】
また、適したポリシロキサンは、1分子あたり20〜500、望ましくは30〜200、より望ましくは40〜150、特に50〜120、特別に60〜100の非カルボキシル基含有モノマー単位を含む。
【0015】
ポリシロキサン中の非カルボキシル基含有モノマー単位とカルボキシル基含有モノマー単位との比は、望ましくは40〜100:1、より望ましくは45〜75:1、特に50〜70:1、特別に55〜65:1である。
【0016】
カルボキシル基は、ポリシロキサン鎖の、望ましくは末端および/または側鎖、より望ましくは側鎖、特に側鎖のみに付加されている。別の実施形態においては、カルボキシル基はポリシロキサン鎖の末端にのみ付加されている。このカルボキシル基は、ヘテロ原子を含み得る炭化水素結合を介して付加されることが適している。
【0017】
適切なポリシロキサンの分子量(数平均分子量)は、望ましくはゲル透過クロマトグラフィーで測定され、500〜50000、望ましくは2000〜20000、より望ましくは4000〜15000、特に5000〜10000、特別に6000〜8000である。
【0018】
適切なポリシロキサンの粘度は、0.05〜150、望ましくは0.1〜50、より望ましくは0.2〜10、特に0.5〜5、特別に0.7〜1.2Pa・sである。
【0019】
望ましくはポリシロキサンは下記の式(1)で表され、
【0020】
【化1】

【0021】
ここで、Rは同種または異種で良く、R、H、第1アミン含有基、およびピロリドンから選択され、該ピロリドンはカルボキシル基および/またはエステルおよび/またはその誘導体であって下記の式(2)で表され、
【0022】
【化2】

【0023】
ただし、R基の0.1〜3個が式(2)で表されるものであり、ここで:
Fは、同種または異種でよく、炭素原子が1〜12個の直鎖または分岐アルキレン;
nはゼロまたは2; nはゼロまたは1; nはゼロまたは1、ただし、nがゼロでnが1の場合はnは1、nが2でnが1の場合はnは0または1、nが2でnが0の場合はnは0;
Bは−NR、硫黄(S)、または酸素(O)であり、Rは水素または低アルキル(C1−6)であり、Rは同種または異種であってアルキル、アリルおよびオレフィン(ビニル)から選択され;
およびRは、同種または異種であってアルキル、アリル、キャップトまたはアンキャップトポリオキシアルキレン、アルカリル、アラルキレン、およびアルケニルから選択され;
は水素、低アルキル(C1−6)、または金属;
aは整数であって良く、10〜1000であり; および
bは整数であって良く、側鎖R1基が式(2)で表されるものである場合には0.1〜3である。
【0024】
本発明の望ましい実施形態においては、Rは水素またはアルカリ金属であり、より望ましくは水素である。Rは望ましくは、Rであるか、カルボキシル基および/またはエステルおよび/またはその塩誘導体を含むピロリドンである。少なくとも1つの側鎖結合したR基は、望ましくは、カルボキシル基および/またはエステルおよび/またはその塩誘導体を含むピロリドンである。RおよびRは、望ましくはアルキル、より望ましくはC1−6の低アルキル、特にC1−3の低アルキル、特別にメチルである。
【0025】
適切なaは20〜500、望ましくは30〜200、より望ましくは40〜150、特に50〜120、特別に60〜100である。また、bの側鎖R1基が上記式(2)に示されるものである場合には、bは0.5〜3が適切であり、望ましくは0.8〜2.5、より望ましくは0.9〜2、特に1〜1.5、特別に1.1〜1.4である。a:bの比は、望ましくは40〜100:1、より望ましくは45〜75:1、特に50〜70:1、特別に55〜65:1である。
【0026】
両末端R基は望ましくはRである。Rは望ましくはアルキル、より望ましくはC1−6の低アルキル、特にC1−3の低アルキル、特別にメチルである。Bは望ましくは−NRである。本発明の特に望ましい実施形態においては、nは2、nは0、nは0、FはCHであるか、またはnは2、nは0、nは1、BはNCH、FはCHであり、特にnは2、nは0、nは0、FはCHである。
【0027】
本発明の特に望ましい実施形態においては、ポリシロキサン分散剤は下記の式(3)で表され、
【0028】
【化3】

【0029】
ここでXは、水素またはアルカリ金属であり、a、b、a:bの比は前記定義のとおりである。
【0030】
アメリカ合衆国公開特許公報US5596061Aは、カルボキシル基を含む適切なポリシロキサンおよびその合成方法として、例えば反応性第1アミン基を有するポリシロキサンをイタコン酸と反応させる方法を開示しており、ここで引用したことよりその教示内容を本明細書中に取り込む。
【0031】
本発明の分散液中に存在するポリシロキサン分散剤の量は、金属酸化物の粒子の重量を基準にして、望ましくは1〜60wt%、より望ましくは3〜40wt%、特に5〜30wt%、特別に6〜25wt%である。
【0032】
本発明に用いる金属酸化物は、望ましくはチタン、亜鉛、または鉄の酸化物、より望ましくは酸化チタンまたは酸化亜鉛、特に酸化亜鉛である。
【0033】
金属酸化物粒子の平均一次粒子サイズは、望ましくは200nm未満であり、粒子がほぼ球状である場合にはこのサイズは直径を表わす。しかし、本発明は球状以外の金属酸化物粒子をも包含しており、その場合には上記の平均一次粒子サイズは最大径を意味する。本発明に用いる金属酸化物を特徴付ける平均粒子サイズは、一次粒子の平均サイズであり、これは典型的には電子顕微鏡観察で測定する。このサイズは、凝集していない金属酸化物粒子のサイズである。多くの場合、一次粒子は単結晶から成るが、数個の結晶が融接したものもある。
【0034】
一次粒子がほぼ球状である場合には、平均一次粒子サイズは望ましくは5〜100nm、より望ましくは10〜100nmである。二酸化チタン粒子は針状であり、一次粒子の平均最大径は望ましくは150nm、より望ましくは20〜100nmである。
【0035】
金属酸化物が二酸化チタンである場合には、粒子の形状は望ましくは針状であり、最大径と最小径との比は10:1〜2:1である。また、金属酸化物が二酸化チタンである場合には、分散液中に存在するポリシロキサン分散剤の量は、二酸化チタン粒子の重量を基準にして望ましくは5〜60wt%、より望ましくは9〜40wt%、特に12〜30wt%、特別に15〜25wt%である。
【0036】
金属酸化物が酸化亜鉛である場合には、粒子は適切な一次粒子サイズが30〜100nmであり、望ましくは60〜90nmである。また、金属酸化物が酸化亜鉛である場合には、分散液中に存在するポリシロキサン分散剤の適切な量は、酸化亜鉛粒子の重量を基準にして、1〜25wt%、望ましくは3〜18wt%、より望ましくは5〜12wt%、特に6〜10wt%、特別に7〜9wt%である。
【0037】
金属酸化物粒子は純粋な金属酸化物から実質的に成るが、無機被膜を備えていることも望ましい。例えば、二酸化チタン粒子は、他の元素の酸化物、例えばアルミニウム、ジルコニウムまたはシリコンの酸化物で被覆されていても良く、アルミナとシリカで被覆された針状二酸化チタンの形であって良く、これは本発明の方法に特に有用であり、イギリス公開特許公報GB2205088Aに開示されている。また、唯一の無機酸化被膜としてアルミナを備えている粒状金属酸化物も本発明に有用であることが見出された。無機被膜の望ましくは量は、芯部の金属酸化物粒子の重量に対する無機酸化物の重量として、4〜20wt%である。より望ましくは、無機被膜の望ましくは量は、芯部の金属酸化物粒子の重量に対する無機酸化物の重量として、5〜15wt%である。適切な無機被膜は、適した方法であればどのような方法で付与しても良く、当業者であればそのような方法を直ちに適用できる。典型的な方法においては、酸化物が被膜を形成する無機製剤の可溶塩の存在下で、金属酸化物芯部粒子の水分散液を形成する。この分散液は、用いた塩の性質によって酸性または塩基性であり、それに対応して酸またはアルカリを分散液に添加してpHを調整することにより、無機酸化物を析出させることができる。
【0038】
望ましくは実施形態においては、本発明の分散液を形成するのに用いる金属酸化物粒子は疎水性である。例えば、金属酸化物粒子の表面に疎水性被膜を付与することにより、金属酸化物粒子を疎水性にすることができる。疎水性被膜の付与は、分散液の形成前でもよいし、その場形成すなわち分散液形成中でもよい。更に、上述のように、粒子は無機被膜を備えていてもよい。したがって、本明細書中で用いている用語「金属酸化物粒子」は、芯部粒子に予め被膜付与されていればそれも含めた、深部粒子+被膜の全体を意味する。
【0039】
一般に、金属酸化物粒子を撥水性物質で処理することにより疎水化する。適した撥水物質としては、脂肪酸、望ましくは10〜20個の炭素原子を含む脂肪酸、例えばラウリル酸、ステアリン酸、イソステアリン酸があり、これら脂肪酸の塩、例えばナトリウム塩およびアルミニウム塩があり、高級アルコール、例えばステアリルアルコールがあり、シリコーン、例えばポリジメチルシロキサンポリマーおよびコポリマーがある。
【0040】
疎水化処理は従来の方法を用いて行なうことができる。典型的には、金属酸化物芯部粒子(被膜なしまたは無機被膜付き)を水中に分散させ、温度50〜80℃に加熱する。次いでこの分散液に、脂肪酸の塩(例えばステアリン酸ナトリウム)を添加した後、酸を添加することにより、上記金属酸化物粒子の表面に上記脂肪酸を堆積させる。別の方法として、金属酸化物の芯部粒子または無機被膜処理した芯部粒子を、撥水物質の有機溶媒溶液と混合した後、溶媒を蒸発させる。本発明の望ましい別の実施形態においては、疎水性物資を、作成中の本発明の分散液に直接添加することにより、疎水性被膜をその場形成することができる。
【0041】
被膜付きまたは被膜なしの芯部粒子を基準にして、一般には20wt%以下の疎水性物質で、望ましくは0.05〜3wt%の疎水性物質で、該粒子を処理する。
【0042】
本発明の分散液は、被膜付きまたは被膜なしの芯部粒子を基準にして、適切には30wt%より多い、望ましくは40wt%より多い、より望ましくは45wt%より多い、特に50wt%より多い、特別には60wt%より多い金属酸化物、特に酸化亜鉛を含有する。一般に、75wt%より多い金属酸化物粒子を含有する分散液を作成することは困難である。
【0043】
本発明の分散液に用いる金属酸化物は、シロキサン流体分散媒中に分散させる。適切であればどのようなシロキサン流体を用いてもよく、基本的な要件は化粧品として許容性である。シロキサン流体の1つの望ましいタイプは、環状オリゴマージアルキルシロキサン、例えばシクロメチコンとして知られているジメチルシロキサンの環状五量体である。他の流体として、ジメチルシロキサン直鎖オリゴマーまたはポリマーで適度の流動性を持つもの、およびフェニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(フェニルトリメチコンとしても知られている)がある。
【0044】
分散液は更に、従来から日焼け防止剤に用いられていた化粧品成分のような、用途に適した従来の添加物を含有してもよい。望ましくは、適応性を最大化するために、分散液は規定した各成分(金属酸化物粒子、シロキサン流体分散剤、およびカルボキシル基含有ポリシロキサン分散剤)から実質的に成る。
【0045】
本発明の分散液は、日焼け防止製品およびその他の紫外光減衰用組成物を作成するのに特に有用である。このような用途には、分散液は紫外光減衰能が強力であると同時に日焼け防止製剤中に配合して肌に適用した際に可視光には透明であることが望ましい。金属酸化物が二酸化チタンである場合には、紫外光の波長範囲にある光に対する分散液の最大減衰係数が40L/g/cm以上であり、より望ましくは50L/g/cm以上である。金属酸化物が酸化亜鉛である場合には、紫外光の波長範囲にある光に対する分散液の最大減衰係数が15L/g/cm以上であり、より望ましくは20L/g/cm以上である。
【0046】
使用時に可視光に対して実質的に透明である分散液中の金属酸化物粒子は、可視光の波長範囲にある光に対する減衰係数が、望ましくは10L/g/cm以下、より望ましくは5L/g/cm以下、特に2L/g/cm以下である。
【0047】
本発明の金属酸化物分散液は望ましくは粒状粉砕媒体で混練することにより作成される。本発明の金属酸化物製品を分散媒中で粉砕するのに適した混練機は、製品を粉砕するために粒状粉砕媒体を用いる混練機である。その典型例は、攪拌子を1つ以上備え、粒状粉砕媒体として砂ビード、ガラスビード、またはセラミクスビードを用いるビード混練機(ビードミル)である。特に有用なものとして、混練機のサイズによって500〜5000rpmで作動する高速混練機が一般に適している。望ましくは、800〜3000rpmで作動する混練機を用いる。攪拌子の先端スピードが10m/秒に達しあるいはそれ超える攪拌式混練機が有用である。所望に応じて混練機を冷却できる。一般に、分散液は混練前に高速攪拌機で前混練するが、他の方法として、最初に分散媒を混練機に添加し、次いで金属酸化物と分散剤とを一緒に分散剤に添加する。混練を所要時間行なった後に、狭いギャップを通して篩い分けし、粉砕媒体から分散液を分離する。
【0048】
一般に、この方法を用いると、既に説明した本発明の分散液の性質を備えた分散液を作成することができる。特に、紫外光減衰能が強力であると同時に可視光に対しては実質透明である分散液を、この方法を用いて作成できる。多くの場合、混練を行なう条件(例えば、混練時間、粉砕媒体の割合、分散剤または金属酸化物の濃度)を調整することにより、光減衰プロファイルを調整できる。
【0049】
本発明の分散液は、エンドユーザー用の日焼け防止組成物を作成するための成分として有用である。日焼け防止組成物中に存在する金属酸化物の量は、組成物の重量を基準として、望ましくは0.5〜40wt%、より望ましくは1.0〜30wt%、特に2.0〜20wt%である。日焼け防止組成物中で、金属酸化物粒子のみを紫外光減衰成分としてもよいが、他の日焼け防止成分として特に有機日焼け防止成分を添加してもよい。
【0050】
以下に、非限定的な実施例により本発明を詳細に説明する。
【0051】
下記の試験手順を採用した。
【0052】
i)29SiNMRを用いて、非カルボキシル基含有モノマー単位の個数(例えば、式(1)および(3)のa)、カルボキシル基含有モノマー単位の個数(例えば式(2)、および式(3)のb)、a:bの比、およびポリシロキサン分散剤の分子量を測定した。
【0053】
ii)Brookfield RVT biscometerを用い、適当なスピンドル値として10rpm、25℃において、粘度を測定し、結果をPa・s単位で表示した。
【実施例】
【0054】
〔実施例1〕
シクロメチコン86.3g、カルボキシル基を含むポリシロキサン(Monasil PCA (登録商標。Unigema社製)11.3g、疎水被膜付き酸化亜鉛(平均一次粒子サイズ:約80nm(比表面積から算出))150gを混合し、15分間完全に攪拌した。得られた混合物を水平式ビード混練機に入れ、粉砕媒体としてジルコニアビードを用い、作動速度約1500rpmにて混練した。混練後、混合物を前混合容器に戻し、更に混練機で混練を3回行なった。得られた分散液の光学特性(nオクタノールを用いて20000倍に希釈した後にUV分光分析により測定)を表1に示す。ここで、λmaxは最大減衰が観測された波長(単位nm)、Emax、E308、E360およびE524はλmax、308nm、360nmおよび524nmの波長でそれぞれ観測された減衰係数(単位L/g/cm)である。
【0055】
【表1】

【0056】
〔実施例2〕
実施例1と同じ手順を実行した。ただし、シクロメチコン66.8g、Monasil PCA10.8g、イソステアリン酸(Prisorine(登録商標。Unigema社製)2.4g、および被膜なし酸化亜鉛(平均一次粒子サイズ:約60nm)を用いた点が実施例1と異なる。得られた分散液の光学特性を、シクロヘキサンで20000倍に希釈して測定した。測定結果を下記の表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
この分散液を用いて、下記組成の日焼け防止製剤を作成した。
【0059】
<相A> wt%
ARLACEL P135(登録商標。Unigema社製) 2.0
ARLAMOL HD P135(登録商標。Unigema社製) 5.0
ARLAMOL E P135(登録商標。Unigema社製) 2.4
Finsolv TN 4.0
Candelilla Wax 1.0
ステアリン酸マグネシウム 0.7
実施例1で作成した酸化亜鉛分散液 14.0
Jojoba Oil 4.0
環状メチコン 5.6
Parsol MCX 8.0
<相B>
ATLAS G-2330(登録商標。Unigema社製) 3.0
Germaben II 1.0
硫酸マグネシウム 0.7
D-Panthanol USP 0.8
Allantoin 0.2
脱ミネラル水 47.6
<手順>
i)相Aおよび相Bを別々に作成して75〜80℃に加熱した。
【0060】
ii)相Bを相Aにゆっくりと添加しつつ、Siverson混合機を用いて2分間強烈攪拌した。
【0061】
iii)混合物を強烈攪拌しつつ25℃まで冷却した。
【0062】
Diffey and Robson, J. Soc. Cosmet. Chem. Vol. 40, pp127-133, 1989の方法を用いて日焼け防止係数(Sun Protection Factor)を測定し、値として23を得た。
【0063】
以上の実施例により、本発明の分散液および日焼け防止剤の優れた特性が分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン流体中に分散した金属酸化物の粒子と分散剤とを含む分散液であって、該分散剤はポリシロキサンであり、(i)該ポリシロキサンは0.1〜3のカルボキシル基を含み、(ii)該ポリシロキサン中の非カルボキシル基含有モノマー単位とカルボキシル基含有モノマー単位との比が40〜150:1である分散液。
【請求項2】
請求項1において、上記ポリシロキサンは粘度が0.2〜10Pa・sである分散液。
【請求項3】
請求項1または2において、上記ポリシロキサンは分子量(数平均)が4000〜15000である分散液。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項において、上記分散液中の金属酸化物粒子の含有量が30wt%より大、より望ましくは40wt%より大、特に50wt%より大である分散液。
【請求項5】
請求項1から5までのいずれか1項において、上記ポリシロキサンは1分子当り0.8〜2.5個のカルボキシル基を含む分散液。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項において、上記ポリシロキサンは30〜300個の非カルボキシル基含有モノマー単位を含む分散液。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項において、上記カルボキシル基が上記ポリシロキサン鎖の側鎖に、望ましくは側鎖のみに、付加されている分散液。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項において、上記金属酸化物粒子が疎水性である分散液。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項において、上記シロキサン流体分散媒が環状オリゴマージアルキルシロキサン、直鎖ジメチルシロキサンオリゴマーおよび/またはポリマー、および/またはフェニルトリス(トリメチルシロキシ)シランである分散液。
【請求項10】
金属酸化物の分散液の作成方法であって、シロキサン流体中で分散剤の存在下で金属酸化物の粒子を粒状粉砕媒体で混練する工程を含み、該分散剤はポリシロキサンであり、(i)該ポリシロキサンは0.1〜3のカルボキシル基を含み、(ii)該ポリシロキサン中の非カルボキシル基含有モノマー単位とカルボキシル基含有モノマー単位との比が40〜150:1である、金属酸化物の分散液の作成方法。
【請求項11】
金属酸化物の粒子と、シロキサン流体と、ポリシロキサンとを含む日焼け防止組成物であって、(i)該ポリシロキサンは0.1〜3のカルボキシル基を含み、(ii)該ポリシロキサン中の非カルボキシル基含有モノマー単位とカルボキシル基含有モノマー単位との比が40〜150:1である、日焼け防止組成物。
【請求項12】
シロキサン流体中に分散した金属酸化物の粒子と分散剤とを含む分散液の、日焼け防止組成物の作成への使用であって、該分散剤はポリシロキサンであり、(i)該ポリシロキサンは0.1〜3のカルボキシル基を含み、(ii)該ポリシロキサン中の非カルボキシル基含有モノマー単位とカルボキシル基含有モノマー単位との比が40〜150:1である分散液の、エンドユーザー用日焼け防止組成物の作成への使用。

【公表番号】特表2007−513934(P2007−513934A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543615(P2006−543615)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005145
【国際公開番号】WO2005/055968
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(590000341)インペリアル・ケミカル・インダストリーズ・ピーエルシー (17)
【氏名又は名称原語表記】IMPERIAL CHEMICAL INDUSTRIES PLC
【出願人】(503342708)アイシーアイ アメリカズ インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】