説明

金属酸化物微粒子を含有してなる樹脂組成物

【課題】分散処理を行わなくとも、金属酸化物微粒子が安定に分散され、高い屈折率及び高い透明性を有することができる樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置を提供する。
【解決手段】金属酸化物微粒子分散液の存在下で、特定のケイ素化合物と、メトキシ基含有量が10〜50重量%であるポリジメチルシロキサン化合物又は式(II):


(式中、R及びRは、それぞれ独立してメチル基、エチル基又はプロピル基を示す)で表されるケイ素化合物とを反応させて得られる、前記金属酸化物微粒子を含有してなる樹脂組成物、並びに前記樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物微粒子を含有してなる樹脂組成物及びそれを用いて得られる光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
良好な耐熱性または光取り出し効率を有するシリコーン樹脂の使用が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2)が、さらに、光取り出し効率を向上させるために、樹脂の屈折率を高くすることが望まれている。そこで、樹脂の屈折率を高くする手段として、高屈折率の金属酸化物微粒子を分散させることが考えられる。
【0003】
しかしながら、シリコーン樹脂は非常に疎水性であるが故に、金属酸化物微粒子を凝集せずに分散させることが困難であり、また、不透明になってしまうために透明な樹脂を得ることが困難であるという問題があった。
【0004】
また、分散処理を行って金属酸化物微粒子の特性を発揮させるのが一般的であるが分散処理に長い分散時間を必要とすることもあるので、金属酸化物微粒子の結晶等が崩壊して性能などが低下するという問題もある。そこで分散処理を行わなくとも、樹脂中で金属酸化物微粒子が分散されることが望まれる。
【特許文献1】特開2005−229048号公報
【特許文献2】特開2006−324596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、分散処理を行わなくとも、金属酸化物微粒子が安定に分散され、高い屈折率及び高い透明性を有することができる樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は
〔1〕 金属酸化物微粒子分散液の存在下で、
式(I):
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立してアルキル基又はフェニル基を示し、X1及びX2は、それぞれ独立してアルキル基を示す)
で表されるケイ素化合物と、
メトキシ基含有量が10〜50重量%であるポリジメチルシロキサン化合物
又は式(II):
【化2】

(式中、R及びRは、それぞれ独立してメチル基、エチル基又はプロピル基を示す)
で表されるケイ素化合物とを反応させて得られる、前記金属酸化物微粒子を含有してなる樹脂組成物、並びに
〔2〕 前記〔1〕記載の樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂組成物によれば、分散処理を行わなくとも、金属酸化物微粒子が安定に分散され、高い屈折率及び高い透明性を有することができるという優れた効果を奏する。また、光半導体装置は、該樹脂組成物を用いて封止しているために優れた光取り出し効率を備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、金属酸化物微粒子分散液の存在下で、式(I)で表されるケイ素化合物と、メトキシ基含有量が10〜50重量%であるポリジメチルシロキサン化合物又は式(II)で表されるケイ素化合物とを反応させて得られるものであって、前記金属酸化物微粒子を含有してなる。かかる樹脂組成物は、式(I)で表されるケイ素化合物と、メトキシ基含有量が10〜50重量%であるポリジメチルシロキサン化合物又は式(II)で表されるケイ素化合物とが、金属酸化物微粒子表面で反応すると同時に高分子量化して樹脂となるため、分散処理を行わなくとも、金属酸化物微粒子の分散性が良好になり、高い屈折率及び高い透明性を有することができると考えられる。なお、本発明において「透明性」とは、後述される光透過率とヘイズによって表されるものであり、高い光透過率と低いヘイズを有する場合、透明性が高いと表現されるものである。
【0009】
本発明で用いられる金属酸化物微粒子は、本発明の効果を損なわないものであればよいが、高屈折率が得られるという観点から、高屈折率を有する酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、チタン酸鉛等が挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0010】
金属酸化物微粒子の平均一次粒子径は、樹脂に高濃度に分散された状態でも優れた透明性を得るという観点から、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜50nm、さらに好ましくは1〜20nmである。平均一次粒子径は、動的光散乱法での粒子分散液の粒子径測定あるいは透過型電子顕微鏡による直接観察により測定することができる。
【0011】
本発明において、金属酸化物微粒子は、分散液中に調製されることが好ましい(「金属酸化物微粒子分散液」ともいう)が、分散媒としては水、アルコール、ケトン系溶媒、アセトアミド系溶媒などが挙げられ、なかでも、水を用いることが好ましい。分散液中の金属酸化物微粒子の量(固形分濃度)は、効率的に粒子表面で反応を行う観点から、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは20〜40重量%、さらに好ましくは30〜40重量%である。このような金属酸化物微粒子分散液は、酸化チタンとして触媒化成社のNEOSUNVEILあるいはQUEEN TITANICシリーズ、多木化学社のタイノック、酸化ジルコニウムとして第一希元素化学工業社のZSLシリーズ、住友大阪セメント社のNZDシリーズ、日産化学社のナノユースシリーズなどの市販のものを用いることができる。
【0012】
反応に供する混合物中の金属酸化物微粒子分散液の使用量は、屈折率の観点から、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは8〜25重量%である。
【0013】
本発明で反応に供されるケイ素化合物は、式(I):
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立してアルキル基又はフェニル基を示し、X1 及びX2 は、それぞれ独立してアルキル基を示す)
で表される化合物である。
【0016】
式(I)中のR1 及びR2 は、それぞれ独立してアルキル基又はフェニル基を示し、アルキル基の炭素数は、粒子表面の親・疎水性制御、アルコキシシランの重縮合反応の効率などの観点から、1〜18が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。アルキル基は具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が例示される。なかでも、R1 及びR2 は、メチル基であることが好ましい。
【0017】
式(I)中のX1 及びX2 は、それぞれ独立してアルキル基を示し、アルキル基の炭素数は、粒子表面での反応性、加水分解速度の観点から、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基等が例示される。なかでも、X1 及びX2 は、いずれもメチル基であることが好ましい。
【0018】
式(I)で表されるケイ素化合物としては、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、R1 及びR2 がメチル基、X1 及びX2 がメチル基であるジメチルジメトキシシランが好ましい。
【0019】
式(I)で表されるケイ素化合物の市販品としては、KBM22(ジメチルジメトキシシラン、信越化学工業社製)等が例示される。
【0020】
式(I)で表されるケイ素化合物の使用量は、成形物の成形性の観点から、反応に供される混合物中に好ましくは5〜20重量%、より好ましくは10〜20重量%である。
【0021】
また、本発明では、メトキシ基含有量が10〜50重量%であるポリジメチルシロキサン化合物が反応に供される。上記化合物は、例えば、1つ以上のジメチルシロキサン構造と、分子末端としてケイ素原子に1つ以上のメトキシ基が結合した構造とを少なくとも有する化合物である。
【0022】
また、上記ポリジメチルシロキサン化合物のメトキシ基含有量は、粒子表面での反応率、シラン同士の重合反応の効率の観点から、10〜50重量%、好ましくは20〜50重量%である。メトキシ基含有量とは、化合物全体に対するメトキシ基の分子量割合を表すものである。
【0023】
メトキシ基含有量が10〜50重量%であるポリジメチルシロキサン化合物の市販品としては、KC−89(信越化学工業社製)、KR−500(信越化学工業社製)、X−40−9225(信越化学工業社製)等が例示される。
【0024】
また、本発明で反応に供されるケイ素化合物は、式(II):
【0025】
【化4】

【0026】
(式中、R及びRは、それぞれ独立してメチル基、エチル基又はプロピル基を示す)
で表される化合物である。
【0027】
式(II)中のR及びRは、それぞれ独立してメチル基、エチル基又はプロピル基を示し、これらのなかでも、Rはメチル基、Rはエチル基であることが好ましい。
【0028】
式(II)で表されるケイ素化合物の製造法としては、例えば、トルエン存在下で、トリエトキシシランとビニルトリメトキシシランの混合物を窒素置換し、触媒を加えてから、20〜80℃で1〜3時間攪拌して反応させた後、室温まで冷却し、次いで溶媒を留去して得られる方法が挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
メトキシ基含有量が10〜50重量%であるポリジメチルシロキサン化合物又は式(II)で表されるケイ素化合物の使用量は、屈折率の観点から、反応に供される混合物中に好ましくは5〜45重量%、より好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは13〜40重量%である。
【0030】
金属酸化物微粒子分散液の存在下で反応に供される、式(I)で表されるケイ素化合物とメトキシ基含有量が10〜50重量%であるポリジメチルシロキサン化合物又は式(II)で表されるケイ素化合物との重量比[式(I)で表されるケイ素化合物/メトキシ基含有量が10〜50重量%であるポリジメチルシロキサン化合物又は式(II)で表されるケイ素化合物]は、反応性の観点から、好ましくは3/1〜1/3、より好ましくは3/1〜1/2、さらに好ましくは2/1〜1/2となるように配合されることが好ましい。上記の数値範囲より小さくなる場合、樹脂の疎水性が高くなりすぎ、粒子の凝集の原因となる。また、この数値範囲より大きくなる場合、架橋度が高くなりすぎて、ゲル化の原因となる。
【0031】
金属酸化物微粒子分散液の存在下で反応に供する際、上記の成分以外に、反応化合物の溶解度の観点から、水、メタノール、2−プロパノール、メチルエチルケトン等の成分を含んでいてもよい。かかる成分の使用量は、反応に供される混合物中に好ましくは0〜50重量%である。
【0032】
本発明において、上記の成分を用いて反応に供するが、反応は、例えば、金属酸化物微粒子分散液の存在下で、式(I)で表されるケイ素化合物、メトキシ基含有量が10〜50重量%であるポリジメチルシロキサン化合物又は式(II)で表されるケイ素化合物、メタノール、2−プロパノール等を混合して、好ましくは20〜80℃、より好ましくは40〜60℃、好ましくは1〜6時間、より好ましくは2〜4時間攪拌して反応させる方法が挙げられるが、これに限定されない。かかる反応は、メトキシ基含有量が10〜50重量%であるポリジメチルシロキサン化合物および各ケイ素化合物の有機置換基である加水分解性基、例えばメトキシ基と、水との反応を利用して、メトキシ基含有量が10〜50重量%であるポリジメチルシロキサン化合物および各ケイ素化合物をシラノール型にし、さらに金属酸化物微粒子の表面でメトキシ基含有量が10〜50重量%であるポリジメチルシロキサン化合物および各ケイ素化合物同士を縮重合反応させて樹脂化するような反応によって生じていると考えられる。
【0033】
また、反応後に、室温に冷却し、水、アルコール等の溶媒を留去して、金属酸化物微粒子を含有してなる樹脂組成物を得ることができる。本発明により得られる樹脂組成物は、樹脂中に金属酸化物微粒子が均一でかつ安定に分散されたものである。
【0034】
金属酸化物微粒子の樹脂組成物全量に対する割合は、屈折率の観点から、好ましくは1〜15体積%、より好ましくは5〜15体積%である。
【0035】
さらに、樹脂組成物の粘度(25℃)としては、例えば、1000〜10000mPa・sであることが好ましい。
【0036】
樹脂組成物は、例えば、メタノール/テトラヒドロフランの混合溶剤に溶解させて溶液(樹脂組成物溶液)としてもよく、塗工時の膜厚制御の観点から、混合溶剤中に好ましくは10〜50重量%、より好ましくは20〜50重量%として使用することができる。該樹脂組成物の溶液を用いて、膜厚が好ましくは3〜100μm、より好ましくは10〜50μmになるように形成されることが好ましい。
【0037】
本発明において樹脂組成物を用いて形成される膜の光透過率は、光取出し効率の観点から、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。かかる光透過率は、後述の実施例に記載されるようにして測定することができる。
【0038】
同様に、本発明において樹脂組成物を用いて形成される膜のヘイズは、光取出し効率の観点から、好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜4%、さらに好ましくは0〜3%である。かかるヘイズは、後述の実施例の記載のようにして測定することができる。
【0039】
本発明において樹脂組成物を用いて形成される膜の屈折率は、光取出し効率の観点から、好ましくは1.41以上、より好ましくは1.45以上、さらに好ましくは1.50以上である。かかる屈折率は、例えば、アッベの屈折率計を用いて測定することができる。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、封止材、コーティング材、成形材、表面保護材、粘着剤、接着剤等に用いることができる。なかでも、封止材として用いる場合、本発明の樹脂組成物は、例えば、青色又は白色LED素子を搭載した光半導体装置(液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイ、広告看板等)に好適に用いられる。従って、本発明の樹脂組成物は、光半導体素子封止用であることが好ましい。さらに、本発明は、上記の樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置を提供する。かかる光半導体装置は、該樹脂組成物を用いて封止しているために優れた光取り出し効率を備えることができる。
【0041】
本発明の光半導体装置は、上記の樹脂組成物を用いて、例えば、LED素子を封止することにより製造することができる。具体的には、LED素子が搭載された基板の上に、アプリケータ、キャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により適当な厚さに樹脂組成物(溶液)をそのまま塗布し、好ましくは50〜150℃で、好ましくは1〜3時間加熱して、乾燥することにより、光半導体素子を封止して光半導体装置を製造することができる。
【実施例】
【0042】
実施例1
攪拌機、還流冷却器及び窒素導入管を備えた容器に、平均一次粒子径5nmの酸化ジルコニウム水分散液(商品名:NZD−3005、住友大阪セメント社製、固形分濃度30重量%)1.7gにメタノール1.7g、2−プロパノール1.7gを加えた。式(I)で表されるケイ素化合物として、ジメチルジメトキシシラン(商品名:KBM22、信越化学工業社製、R及びRはメチル基、X及びXはメチル基)0.9gと、メトキシ基含有量が45重量%であるポリジメチルシロキサン化合物(商品名:KC−89、信越化学工業社製)0.9gをさらに加え、60℃で3時間攪拌して反応させた。反応終了後、室温に冷却し、最初に水を留去し、次いでアルコール類を留去して、酸化ジルコニウムを含有してなるワックス状で透明な樹脂組成物を得た(酸化ジルコニウムの樹脂組成物全量に対する割合9体積%)。
【0043】
また、該樹脂組成物をメタノール/テトラヒドロフラン(1/1)の混合溶剤に30重量%で溶解した溶液をガラス基板上に膜厚が10μmとなるようにして塗布して、150℃で1時間乾燥した。得られた膜の450nmでの光透過率は98%であり、ヘイズは0.3%であった。得られた膜の屈折率をアッベの屈折率計で測定したところ1.47であった。
【0044】
そして、該樹脂組成物の溶液を青色発光ダイオードが実装された基板の上にアプリケータで塗布して150℃で1時間加熱して乾燥させて青色発光ダイオードを封止し、青色発光ダイオード装置を得た。
【0045】
実施例2
実施例1で用いたKC−89に代えて、メトキシ基含有量が28重量%であるポリジメチルシロキサン化合物(商品名:KR−500、信越化学工業社製)0.9gを使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た(酸化ジルコニウムの樹脂組成物全量に対する割合8体積%)。
【0046】
また、実施例1と同様にして得られた膜の光透過率は97.1%であり、ヘイズは0.1%であり、屈折率は1.46であった。そして、実施例1と同様にして、青色発光ダイオードを封止し、青色発光ダイオード装置を得た。
【0047】
実施例3
実施例1で用いたKC−89に代えて、メトキシ基含有量が24重量%であるポリジメチルシロキサン化合物(商品名:X−40−9225、信越化学工業社製)0.9gを使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た(酸化ジルコニウムの樹脂組成物全量に対する割合7体積%)。
【0048】
また、実施例1と同様にして得られた膜の光透過率は98%であり、ヘイズは0.2%であり、屈折率は1.46であった。そして、実施例1と同様にして、青色発光ダイオードを封止し、青色発光ダイオード装置を得た。
【0049】
実施例4
[式(II)で表されるケイ素化合物の製造]
トリエトキシシラン3.28g(20mmol)とビニルトリメトキシシラン(商品名:KBM1003、信越化学工業社製)2.96g(20mmol)とトルエン10mlを加え、窒素置換を30分間行った。ついで白金触媒(商品名:プラチナム(O)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(Pt2%以下)、アルドリッチ社製)3μmlを加え、80℃で3時間攪拌して反応させた。室温まで冷却し、溶媒を留去して、式(II)で表されるケイ素化合物を得た。構造はH NMRで確認したところ、Rはメチル基、Rはエチル基であった。
【0050】
実施例1と同様の実験装置を用い、平均一次粒子径5nmの酸化ジルコニウム水分散液(商品名:NZD−3005、住友大阪セメント社製、固形分濃度30重量%)1.5g、メタノール1.5g、2−プロパノール1.5g、式(I)で表されるケイ素化合物としてジメチルジメトキシシラン(商品名:KBM22、信越化学工業社製、R及びRはメチル基、X及びXはメチル基)0.9g、上記式(II)で表されるケイ素化合物0.9gを加えた以外は実施例1と同様の条件で反応を行い、酸化ジルコニウムを含有してなるワックス状で透明な樹脂組成物を得た(酸化ジルコニウムの樹脂組成物全量に対する割合8体積%)。
【0051】
また、実施例1と同様にして得られた膜の光透過率は98%であり、ヘイズは0.2%であり、屈折率は1.50であった。そして、実施例1と同様にして、青色発光ダイオードを封止し、青色発光ダイオード装置を得た。
【0052】
比較例1
KC−89に代えて、片末端の3官能性アルコキシシランであるメチルトリメトキシシラン(商品名:KBM13、信越化学工業社製)0.9gを用いた以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。反応中は透明であったが、溶媒を留去すると白濁し、金属酸化物微粒子を再分散できなかった。
【0053】
比較例2
あらかじめ、実施例1の酸化ジルコニウム分散液を除く組成で反応させたものに、実施例1で使用した酸化ジルコニウム分散液を加え、濃縮したが、酸化ジルコニウムは凝集し、再分散できなかった。
【0054】
(評価)
上記に記載された光透過率、ヘイズ、屈折率は以下の方法により評価された。
【0055】
(光透過率)
分光光度計(U−4100、日立ハイテク社製)を用いて、波長450nmにおける光透過率を、ガラス板上に実施例1〜4の樹脂組成物をコーティングして形成された膜について測定した。
【0056】
(ヘイズ)
ガラス板上に実施例1〜4の樹脂組成物をコーティングして形成された膜について反射・透過率計(HR−100、村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。
【0057】
(屈折率)
アッベの屈折率計(NAR−IT型、アタゴ社製)を用いて、25℃における屈折率をガラス板上に実施例1〜4の樹脂組成物をコーティングして形成された膜について測定した。
【0058】
以上の結果により、実施例1〜4は比較例1〜2と比較して、優れた屈折率および透明性を有している。従って、本発明の樹脂組成物は、分散処理を行わなくとも、金属酸化物微粒子が安定に分散され、高い屈折率および高い透明性を有することができる。また、該樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置は優れた光取り出し効率を備えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の樹脂組成物は、封止材、コーティング材、成形材、表面保護材、粘着剤、接着剤等に用いることができる。なかでも、封止材として用いる場合、本発明の樹脂組成物は、例えば、青色又は白色LED素子を搭載した光半導体装置(液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイ、広告看板等)に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物微粒子分散液の存在下で、
式(I):
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立してアルキル基又はフェニル基を示し、X1及びX2は、それぞれ独立してアルキル基を示す)
で表されるケイ素化合物と、
メトキシ基含有量が10〜50重量%であるポリジメチルシロキサン化合物
又は式(II):
【化2】

(式中、R及びRは、それぞれ独立してメチル基、エチル基又はプロピル基を示す)
で表されるケイ素化合物とを反応させて得られる、前記金属酸化物微粒子を含有してなる樹脂組成物。
【請求項2】
金属酸化物微粒子が1〜100nmの平均一次粒子径を有する酸化チタン又は酸化ジルコニウムである、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
光半導体素子封止用である、請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置。

【公開番号】特開2010−37458(P2010−37458A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203049(P2008−203049)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】