説明

金属酸化物繊維およびその製造方法

【課題】飛散性を抑制するとともに、樹脂への高い充填率での混練が可能になり、更に樹脂への分散性も兼備する、無機フィラーを提供すること。
【解決手段】チタン元素を含むセラミックスからなり、平均繊維径が50〜1500nmである金属酸化物繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属酸化物繊維およびその製造方法に関する。更に詳しくは本発明は、誘電体材料や半導体材料として有用な金属酸化物繊維およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機フィラーを樹脂に充填させることにより誘電体組成物が作製されている(例えば、特許文献1〜4等参照。)。
一般にこれらの方法では、無機フィラーとして微粒子やアスペクト比の小さい棒状フィラーが用いられている。しかし、微粒子やアスペクト比の小さい棒状フィラー等は、飛散性が高いために作業者の誤吸入などの危険性が高いといった問題があった。
【0003】
一方、粒径の大きな無機フィラーを用いることにより飛散性を抑えることが可能であるが、粒径を大きくすることにより、樹脂への充填率が下がり組成物の誘電率が下がるといった問題や、無機フィラーの比表面積が小さくなることにより、樹脂への分散性が低下するといった問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−67889号公報
【特許文献2】特開2006−134869号公報
【特許文献3】特開2006−100258号公報
【特許文献4】特開2005−93096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術が有していた問題点を解消し、飛散性を抑制するとともに、樹脂への高い充填率での混練が可能になり、更に樹脂への分散性も兼備する、無機フィラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の目的は、
チタン元素とその他の金属元素を含むセラミックスからなり、平均繊維径が50〜1500nmである金属酸化物繊維によって達成することができる。
【0007】
更に、本発明の他の目的は、
チタン酸アルキルとの錯体を形成する化合物とチタン酸アルキルと水溶性金属塩と水と繊維形成性の溶質から成る溶液を作製する段階と、前記溶液から静電紡糸法にて紡糸する段階と、前記紡糸によって得られた繊維構造体を累積させる段階と、前記累積された繊維構造体を焼成する段階を含む、金属酸化物繊維の製造方法によって達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属酸化物繊維は、繊維の平均繊維径が小さく、複合材料にした場合などの分散性に優れた誘電体材料または半導体材料として有効である。
また、得られる金属酸化物繊維は編み込むなどの加工を施すことで様々な構造体を形成することも出来るし、また取り扱い性やその他の要求事項に合わせて本発明以外のセラミック繊維と組み合わせて用いることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の金属酸化物繊維は、チタン元素を含むセラミックスからなり、平均繊維径が50〜1500nmである。
【0010】
チタン元素を含むセラミックスとしては、自発分極が存在し、外部電場によってその方向を変えられる材料である誘電体であることが好ましい。誘電体としては、SrTiO、BaTiO、PbTiO、CdTiO、KNbO、Pb(Ni1/3Nb2/3)O、Pb(Mg1/3Nb2/3)O、Cd(Mg1/3Nb2/3)O、LiNbO、LiTaO、Li4+xTi12(0≦x≦3)、CdNb、PbNb、BiTi12、BiWOなどが知られているが、中でも、チタン酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウムバリウムが好ましい。
【0011】
次に、平均繊維径が50〜1500nmであることを説明する。本発明の金属酸化物繊維の平均繊維径が1500nmを越えると、金属酸化物繊維の柔軟性や複合材料にした場合の分散性が乏しくなることから好ましくない。好ましくは、100〜1000nmの範囲にあることであることであり、更に好ましくは、200〜900nmの範囲にあることである。更に好ましくは、400〜800nmの範囲にあることである。
【0012】
本発明の金属酸化物繊維の繊維長としては、10μm以上であることが好ましい。繊維長が10μm以下であるとそれによって得られる金属酸化物繊維の飛散性が増加するため好ましくない。繊維長は、好ましくは、100μm以上であり、更に好ましくは1mm以上である。
【0013】
次に、金属酸化物繊維の結晶形について説明する。誘電体の結晶構造には、ペロブスカイト、イルメナイト、パイロクロア、タングステンブロンズ、層状構造などが存在するが、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウムバリウムの場合は、ペロブスカイトであることが好ましい。また、結晶性が高く結晶子サイズが大きいことが誘電体材料として好ましく、好ましい結晶子サイズは、15〜40nmであり、より好ましくは20〜30nmである。
【0014】
次に、本発明の金属酸化物繊維を製造するための態様について説明する。
本発明の金属酸化物繊維を製造するには、前述の要件を同時に満足するような金属酸化物繊維が得られる手法であればいずれも採用することができるが、チタン酸アルキルとの錯体を形成する化合物とチタン酸アルキルと水溶性金属塩と水と繊維形成性の溶質から成る溶液を作製する段階と、前記溶液から静電紡糸法にて紡糸する段階と、前記紡糸によって得られた繊維構造体を累積させる段階と、前記累積された繊維構造体を焼成する段階を含む、金属酸化物繊維の製造方法が好ましい一態様として挙げることができる。
【0015】
まず、チタン酸アルキルとの錯体を形成する化合物とチタン酸アルキルと水溶性金属塩と水と繊維形成性の溶質から成る溶液を作製する段階について説明する。
ここで用いるチタン酸アルキルには、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラターシャリーブトキシドなどが挙げられるが、入手のしやすさより、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシドが好ましい。
【0016】
次に、チタン酸アルキルとの錯体を形成する化合物について説明する。チタン酸アルキルとの錯体を形成する化合物には、カルボン酸類、アミド類、エステル類、ケトン類、ホスフィン類、エーテル類、アルコール類、チオール類などの配位性の化合物が挙げられる。
【0017】
本発明では、チタン酸アルキルとの錯体を形成する化合物とチタン酸アルキルの混合物と水を反応させる必要があることから、常温で水との反応性を示さない程に強固な錯体を形成する化合物は好ましくない。そのため、カルボン酸類が好ましく、より好ましくは脂肪族カルボン酸であり、更に好ましくは酢酸である。
【0018】
チタン酸アルキルとの錯体を形成する化合物の添加量としては、本発明の金属酸化物繊維を作製するための溶液が作製される量であれば特に限定されないが、チタン酸アルキルに対して5等量以上であることが好ましく、より好ましくは7〜10等量である。
【0019】
本発明では、チタン酸アルキルとの錯体を形成する化合物とチタン酸アルキルとの混合物と水が反応することで生成するゲルを解離させることにより透明な溶液を作製する。
【0020】
水を添加する際に、水の濃度が局所的に高くなることは、解離困難なゲルの生成が起こる可能性があるため好ましくない。そのため攪拌した溶液中に水を徐徐に添加することが好ましい。生成したゲルを解離させる段階については、更に攪拌を続けることによってゲルを解離させることができる。ゲルを解離させることによって透明な溶液を調製することができる。
【0021】
水を添加する量としては、本発明の金属酸化物繊維を作製するための溶液が作製される量であれば特に限定されないが、チタン酸アルキルの重量に対して0.5〜3倍量であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5倍量である。
【0022】
次に、水溶性金属塩について説明する。本発明の金属酸化物繊維の作製には、チタン元素以外の金属元素を水溶性金属塩によって添加する必要がある。水溶性の金属塩には、酢酸リチウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、酢酸カドミウム、酢酸鉛などが挙げられるが、チタン酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウムバリウムからなる繊維を作製するためには、それぞれ、酢酸リチウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウムが好ましい。
【0023】
次に、繊維形成性の溶質について説明する。本発明の金属酸化物繊維を作製するには、溶液に曳糸を持たせるために繊維形成性の溶質を溶解させる必要がある。繊維形成性の溶質としては、本発明の金属酸化物繊維が作製されれば特に限定されないが、取り扱いの点や焼成によって除去される必要があることから有機高分子が好ましい。
【0024】
例えば、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、エーテルセルロース、ペクチン、澱粉、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルイソシアネート、ポリブチルイソシアネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリノルマルプロピルメタクリレート、ポリノルマルブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリパラフェニレンテレフタラミド、ポリパラフェニレンテレフタラミド−3,4′―オキシジフェニレンテレフタラミド共重合体、ポリメタフェニレンイソフタラミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、メチルセルロース、プロピルセルロース、ベンジルセルロース、フィブロイン、天然ゴム、ポリビニルアセテート、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルノルマルプロピルエーテル、ポリビニルイソプロピルエーテル、ポリビニルノルマルブチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリビニルターシャリーブチルエーテル、ポリビニリデンクロリド、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(N−ビニルカルバゾル)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリビニルメチルケトン、ポリメチルイソプロペニルケトン、ポリプロピレンオキシド、ポリシクロペンテンオキシド、ポリスチレンサルホン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、並びにこれらの共重合体などが挙げられる。中でも水に対する溶解性の点から、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、エーテルセルロース、ペクチン、澱粉が好ましく、ポリエチレングリコールが特に好ましい。
【0025】
有機高分子の分子量も、本発明の金属酸化物繊維が作製されれば特に限定されないが、分子量が低い場合は、有機高分子の添加量が大きくなり、焼成によって発生する気体が多くなることから、金属酸化物繊維の構造に欠陥が発生する可能性が高くなり好ましくない。好ましい分子量は、ポリエチレングリコールの場合、100,000〜8,000,000の範囲であり、より好ましくは、100,000〜600,000である。
【0026】
次に、繊維形成性の溶質の添加量としては、繊維の形成される濃度範囲で可能な限り少ないことが金属酸化物繊維の緻密性向上の点から好ましいが、0.01〜3重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜2重量%である。
【0027】
次に、本発明の金属酸化物繊維を作製するための溶液に用いる溶媒について説明する。本発明では、水を溶媒として用いるが、溶液の安定性向上の点や、紡糸の安定性の向上から、溶液に水以外の溶媒、例えばアルコールなどを添加することも可能であるし、塩化アンモニウムなどの塩や塩酸などの酸の添加も可能である。
【0028】
次に、静電紡糸法について説明する。本発明の金属酸化物繊維は静電紡糸法によって作製されるが、静電紡糸法とは繊維形成性の基質を溶解させた溶液を電極間で形成された静電場中に吐出し、溶液を電極に向けて曳糸し、形成される繊維状物質を捕集基板上に累積することによって繊維構造体を得る方法であって、繊維状物質とは、繊維形成性の基質を溶解させた溶媒が留去して繊維積層体となっている状態のみならず、前記溶媒が繊維状物質に含まれている状態も示している。
【0029】
また、通常の静電紡糸は室温で行われるが、溶媒の揮発が不十分な場合など、必要に応じて紡糸雰囲気の温度を制御したり、捕集基板の温度を制御したりすることも可能である。
【0030】
次いで、静電紡糸法で用いる装置について説明する。
前述の電極は、金属、無機物、または有機物のいかなるものでも導電性を示しさえすれば用いることができ、また、絶縁物上に導電性を示す金属、無機物、または有機物の薄膜を持つものであっても良い。
【0031】
また、静電場は一対又は複数の電極間で形成されており、いずれの電極に高電圧を印加しても良い。これは、例えば電圧値が異なる高電圧の電極が2つ(例えば15kVと10kV)と、アースにつながった電極の合計3つの電極を用いる場合も含み、または3つを越える数の電極を使う場合も含むものとする。
【0032】
次いで、紡糸によって得られた繊維構造体を累積させる段階について説明する。
本発明の製造方法では、静電紡糸法によって紡糸を行うため、繊維構造体は捕集基板である電極上に積層される。捕集基板に平面を用いれば平面状の不織布が得られるが、捕集基板の形状を変えることによって、所望の形状の構造体を作製することも出来る。
また、繊維構造体が基板上の一箇所に集中して積層されるなど、均一性が低い場合には、基板を揺動かしたり、回転させたりすることも可能である。
【0033】
また、本発明の焼成前の繊維構造体は強度が低いことから、捕集基板上に積層された繊維構造体を剥離する際に構造が一部壊れてしまうことがある。そのため、捕集基板とノズルとの間に静電気除去装置などを設置し、ノズルと静電気除去装置との間に綿状に繊維構造体を積層させることも可能である。
【0034】
次に、繊維構造体を焼成する段階について説明する。本発明の金属酸化物繊維を作製するには、紡糸によって作製された繊維構造体を焼成する必要がある。焼成には、一般的な電気炉を用いることができるが、必要に応じて炉内の気体を置換可能な電気炉を用いてもよい。また、焼成温度は、十分な結晶成長を行うために、500〜1500℃で焼成することが好ましい。より好ましくは800〜1200℃である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何等限定を受けるものではない。また以下の各実施例、比較例における評価項目は以下のとおりの手法にて実施した。
【0036】
平均繊維径:
得られた金属酸化物繊維の表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S−2400)により撮影(倍率2000倍)して得た写真図から無作為に20箇所を選んでフィラメントの径を測定し、すべての繊維径(n=20)の平均値を求めて、金属酸化物繊維の平均繊維径とした。
【0037】
X線回折図形の測定:
得られた金属酸化物繊維を、X線回折装置(株式会社リガク社製)を使用し、X線源にCuのKα線を用い、多層膜コンフォーカルミラーにより単色化してX線回折図形を得た。
【0038】
結晶子サイズの算出:
得られたX線回折図形より、Scherrerの式より結晶子のサイズを算出した。
(式)D=K×λ/βcosθ
D:結晶子の大きさ
λ:測定X線波長
β:結晶子の大きさによる回折線の拡がり
θ:回折線のブラッグ角
K:Scherrer定数
【0039】
繊維長10μm以下の繊維の存在確認:
得られたセラミック繊維の表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S−2400)により撮影(倍率2000倍)して得た写真図を観察し、繊維長10μm以下の繊維が存在するか確認した。
【0040】
[実施例1]
チタンテトラノルマルブトキシド(和光純薬工業株式会社製、一級)1重量部と酢酸(和光純薬工業株式会社製、特級)1.3重量部を添加し均一な溶液を得た。この溶液にイオン交換水1.8重量部、酢酸バリウム(和光純薬工業株式会社製、特級)0.75重量部、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、一級、平均分子量300,000〜500,000)0.044重量部混合させた溶液を攪拌しながら添加することにより溶液中にゲルが生成した。生成したゲルは、更に攪拌を続けることにより解離し、透明な溶液を調製することが出来た。
【0041】
この紡糸溶液から図1に示す装置を用いて、繊維構造体を作製した。噴出ノズル1の内径は0.2mm、電圧は15kV、噴出ノズル1から電極4までの距離は15cmであった。得られた繊維構造体を空気雰囲気下で電気炉を用いて1000℃まで10時間で昇温し、その後1000℃で2時間保持することにより金属酸化物繊維を作製した。得られた金属酸化物繊維を電子顕微鏡で観察したところ、平均繊維径は800nmであった。また、得られた金属酸化物繊維のX線回折結果から、結晶構造はペロブスカイトであり、結晶子サイズは25nmであることが確認された。得られた金属酸化物繊維の表面の走査型電子顕微鏡写真を図2に、X線回折図形を図3に示す。
【0042】
[実施例2]
チタンテトラノルマルブトキシド(和光純薬工業株式会社製、一級)1重量部と酢酸(和光純薬工業株式会社製、特級)1.3重量部を添加し均一な溶液を得た。この溶液にイオン交換水2重量部、酢酸ストロンチウム0.5水和物(和光純薬工業株式会社製)0.63重量部、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、一級、平均分子量300,000〜500,000)0.062重量部混合させた溶液を攪拌しながら添加することにより溶液中にゲルが生成した。生成したゲルは、更に攪拌を続けることにより解離し、透明な溶液を調製することが出来た。
【0043】
この紡糸溶液から図1に示す装置を用いて、繊維構造体を作製した。噴出ノズル1の内径は0.2mm、電圧は15kV、噴出ノズル1から電極4までの距離は15cmであった。得られた繊維構造体を空気雰囲気下で電気炉を用いて1000℃まで10時間で昇温し、その後1000℃で2時間保持することにより金属酸化物繊維を作製した。得られた金属酸化物繊維を電子顕微鏡で観察したところ、平均繊維径は700nmであった。また、得られた金属酸化物繊維のX線回折結果から、結晶構造はペロブスカイトであり、結晶子サイズは25nmであることが確認された。得られた金属酸化物繊維の表面の走査型電子顕微鏡写真を図4に、X線回折図形を図5に示す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の金属酸化物繊維を製造するための製造装置を模式的に示した図である。
【図2】実施例1の操作で得られた金属酸化物繊維の表面を走査型電子顕微鏡で撮影(2000倍)して得られた写真図である。
【図3】実施例1の操作で得られた金属酸化物繊維のX線回折図形である。
【図4】実施例2の操作で得られた金属酸化物繊維の表面を走査型電子顕微鏡で撮影(2000倍)して得られた写真図である。
【図5】実施例2の操作で得られた金属酸化物繊維のX線回折図形である。
【符号の説明】
【0045】
1 溶液噴出ノズル
2 溶液
3 溶液保持槽
4 電極
5 高電圧発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン元素を含むセラミックスからなり、平均繊維径が50〜1500nmである金属酸化物繊維。
【請求項2】
チタン元素を含むセラミックスが、チタン酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムおよびチタン酸ストロンチウムバリウムから選ばれた少なくとも1種のチタン酸化合物である、請求項1記載の金属酸化物繊維。
【請求項3】
チタン酸アルキルとの錯体を形成する化合物とチタン酸アルキルと水溶性金属塩と水と繊維形成性の溶質から成る溶液を作製する段階と、前記溶液から静電紡糸法にて紡糸する段階と、前記紡糸によって得られた繊維構造体を累積させる段階と、前記累積された繊維構造体を焼成する段階を含む、金属酸化物繊維の製造方法。
【請求項4】
繊維形成性の溶質が有機高分子である、請求項3記載の金属酸化物繊維の製造方法。
【請求項5】
有機高分子がポリエチレングリコールである、請求項4記載の金属酸化物繊維の製造方法。
【請求項6】
チタン酸アルキルとの錯体を形成する化合物がカルボン酸類である、請求項3記載の金属酸化物繊維の製造方法。
【請求項7】
カルボン酸類が酢酸である、請求項6記載の金属酸化物繊維の製造方法。
【請求項8】
水溶性金属塩が水溶性バリウム塩または水溶性ストロンチウム塩または水溶性リチウム塩である、請求項3記載の金属酸化物繊維の製造方法。
【請求項9】
水溶性バリウム塩が酢酸バリウムである、請求項8記載の金属酸化物繊維の製造方法。
【請求項10】
水溶性ストロンチウム塩が酢酸ストロンチウムである、請求項8記載の金属酸化物繊維の製造方法。
【請求項11】
水溶性リチウム塩が酢酸リチウムである、請求項8記載の金属酸化物繊維。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−321277(P2007−321277A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151638(P2006−151638)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】