説明

金属酸素電池

【課題】正極材料としてYとMnとを含む複合酸化物からなる酸素貯蔵材料を用いると共に、反応過電圧を低下させることができる金属酸素電池を提供する。
【解決手段】金属酸素電池1は、酸素を活物質とする正極2と、金属リチウムを活物質とする負極3と、正極2と負極3とに挟持された電解質層4とを備える。正極2は、YMn1-xx3(A=Ru,Ni、Co、0.01≦x≦0.2)からなる酸素貯蔵材料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸素電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、酸素を活物質とする正極と、金属を活物質とする負極と、該正極と負極とに挟持された電解質層とを備える金属酸素電池が知られている。
【0003】
前記金属酸素電池では、放電時には、前記負極において金属が酸化されて金属イオンを生成し、生成した金属イオンが前記電解質層を透過して前記正極側に移動する。一方、前記正極では、酸素が還元されて酸素イオンを生成し、生成した酸素イオンが前記金属イオンと結合して金属酸化物が生成する。
【0004】
また、充電時には、前記正極において、前記金属酸化物から金属イオンと酸素イオンとが生成し、生成した酸素イオンは酸化されて酸素となる。一方、前記金属イオンは前記電解質層を透過して前記負極側に移動し、該負極で還元されて金属となる。
【0005】
前記金属酸素電池では、前記金属として金属リチウムを用いると、金属リチウムは理論電圧が高く電気化学当量が大きいことから、大きな容量を得ることができる。また、酸素として空気中の酸素を用いると、電池内に正極活物質を充填する必要がないことから、電池の質量当たりのエネルギー密度を高くすることができる。
【0006】
ところが、空気中の酸素を正極活物質とするために、正極を大気に開放すると、空気中の水分、二酸化炭素等が電池内に侵入し、電解質、負極等が劣化するという問題がある。そこで、前記問題を解決するために、密封ケース内に、受光により酸素を放出する酸素吸蔵材料を含む正極と、金属リチウムからなる負極と、電解質層とを配設すると共に、該酸素吸蔵材料に光を導く光透過部を備える金属酸素電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
前記金属酸素電池によれば、前記光透過部を介して前記酸素吸蔵材料に光を導くことにより、該酸素吸蔵材料から酸素を放出させることができ、前記正極を大気に開放することなく、正極活物質としての酸素を得ることができる。従って、空気中の水分、二酸化炭素等が電池内に侵入することによる電解質、負極等の劣化を防止することができる。
【0008】
しかし、前記従来の金属酸素電池は、光線の照射が無いときには酸素の供給が不安定になると共に、密封ケースの他の部分に比較して脆弱である光透過部が破壊されて電解液が漏出する虞がある。そこで、前記金属酸素電池の正極材料として、光線の照射によらず、化学的に酸素を吸蔵、放出し、又は物理的に吸着、脱着することができる酸素貯蔵材料を用いることが考えられる。前記酸素貯蔵材料としては、YMnO3を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−230985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記正極材料としてYMnO3からなる酸素貯蔵材料を用いる金属酸素電池では、反応過電圧が大きくなり、結果として充放電効率が低下したり高出力が得られないという不都合がある。
【0011】
本発明は、かかる不都合を解消して、正極材料としてYとMnとを含む複合酸化物からなる酸素貯蔵材料を用いると共に、反応過電圧を低下させることができる金属酸素電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、金属酸素電池の正極材料としてYMnO3からなる酸素貯蔵材料を用いたときに反応過電圧が大きくなる原因について検討した。この結果、YMnO3は電子絶縁体であり、その表面におけるリチウムイオンの酸化還元に伴う電子授受の際の妨げとなっていることを知見した。
【0013】
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであり、前記目的を達成するために、酸素を活物質とする正極と、金属リチウムを活物質とする負極と、該正極と負極とに挟持された電解質層とを備える金属酸素電池において、該正極は、YMn1-xx3(A=Ru,Ni、Co、0.01≦x≦0.2)からなる酸素貯蔵材料を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の金属酸素電池では、放電時には、次の式に示すように前記負極において金属リチウムが酸化されてリチウムイオンと電子とが生成し、生成したリチウムイオンは前記電解質層を透過して正極に移動する。一方、正極においては、前記酸素貯蔵材料から放出又は脱着された酸素が還元されて酸素イオンとなり、前記リチウムイオンと反応して酸化リチウムまたは過酸化リチウムを生成する。そこで、前記負極と正極とを導線で接続することにより、電気エネルギーを取り出すことができる。
【0015】
(負極) 4Li → 4Li+ +4e-
(正極) O2 + 4e- → 2O2-
4Li+ + 2O2- → 2Li2
2Li+ + 2O2- → Li22
また、充電時には、次の式に示すように前記正極において酸化リチウムまたは過酸化リチウムからリチウムイオンと酸素イオンとが生成し、生成したリチウムイオンは前記電解質層を透過して負極に移動する。また、生成した酸素イオンは、そのままで、又は酸化されることにより生成した酸素分子として、前記酸素貯蔵材料に吸蔵又は吸着される。そして、負極では前記リチウムイオンが還元されて、金属リチウムとして析出する。
【0016】
(正極) 2Li2O → 4Li+ + 2O2-
Li22 → 2Li+ + 2O2-
(負極) 4Li+ +4e- → 4Li
本発明の金属酸素電池において、前記酸素貯蔵材料として用いるYMn1-xx3(A=Ru,Ni、Co)は、YMnO3のMnの1〜20モル%(0.01≦x≦0.2)、好ましくは5〜20モル%(0.05≦x≦0.2)をRu、Ni又はCoで置換したものである。
【0017】
ここで、YMnO3のMnに対し、3d遷移金属であるSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Ru等を置換固溶させることにより電子伝導性が発現すると考えられる。しかし、Sc、Ti、V、Cr、Feは、バンドギャップの低下は予想されるものの、室温において測定できる範囲の導電性は発現しない。一方、Ru、Ni又はCoは価電子数が多いので、YMnO3のMnに対しRu、Ni又はCoを置換固溶させると、Ru、Ni又はCoの電子雲がYMnO3格子中で非局在化し、導電性が発現するものと考えられる。
【0018】
前記正極におけるリチウムイオンの酸化還元反応は、前記酸素貯蔵材料の粒子上で行われるので、導電性を備える前記YMnx1-x3を該酸素貯蔵材料とすることにより、前記酸化還元反応における電子の授受を円滑に行うことができる。
【0019】
従って、本発明の金属酸素電池によれば、前記正極における反応過電圧を低減することができ、優れた充放電効率と高出力とを得ることができる。
【0020】
YMn1-xx3において、Mnを置換するRu、Ni又はCoがMnの1モル%未満では導電性を得ることができない。また、Ru、Ni又はCoがMnの20モル%を超えても、それ以上の導電性を得ることはできない。
【0021】
また、本発明の金属酸素電池において、前記正極は、前記酸素貯蔵材料と、導電材料と、結着剤とからなるものであってもよく、さらにリチウム化合物を含んでいてもよい。前記リチウム化合物としては、例えば、酸化リチウム又は過酸化リチウムを挙げることができる。
【0022】
前記正極が、前記酸素貯蔵材料と、導電材料と、結着剤と、リチウム化合物とからなるときには、充電時に該正極で生成したリチウムイオンが前記負極の金属リチウム上に均一に析出する。従って、前記負極において、リチウムが溶解と析出とを繰り返す際に、該リチウムは殆ど位置を変えることが無く、該負極表面における凹凸の形成を防止して、過電圧の上昇を抑制することができる。
【0023】
また、このときには、前記リチウム化合物が前記酸素貯蔵材料と密接に接触しているため、該酸素貯蔵材料の触媒作用により該リチウム化合物の分解反応が円滑に進行する。従って、充電時における前記リチウム化合物の分解反応の活性化エネルギーを低減することができ、過電圧の上昇をさらに抑制することができる。
【0024】
また、本発明の金属酸素電池において、前記正極、前記負極及び前記電解質層は密封ケース内に配設されていることが好ましい。本発明の金属酸素電池では、前記酸素貯蔵材料が化学的に酸素を吸蔵、放出し、又は物理的に吸着、脱着することができる。従って、本発明の金属酸素電池では、前記正極を大気に開放したり、脆弱な光透過部を形成することなく、前記密封ケース内に配設された前記正極で活物質としての酸素を得ることができ、大気中の水分、二酸化炭素による劣化や、光透過部の損傷による電解液漏出の虞がない。
【0025】
また、前記酸素貯蔵材料は、酸素を吸蔵、放出する場合には、酸素との化学結合の生成、解離を伴うが、その表面に酸素を吸着、脱着する場合には単に分子間力のみが作用し、化学結合の生成、解離を伴わない。
【0026】
従って、前記酸素貯蔵材料の表面に対する酸素の吸着、脱着は、該酸素貯蔵材料が酸素を吸蔵、放出する場合に比較して低エネルギーで行われることとなり、電池反応には該酸素貯蔵材料の表面に吸着されている酸素が優先的に用いられる。この結果、反応速度の低下及び過電圧の上昇を抑制することができる。
【0027】
このとき、本発明の金属酸素電池では、前記酸素貯蔵材料としてYMnx1-x3(A=Ru,Ni、Co、0.01≦x≦0.2)を用いることにより、その表面に吸着する酸素量を増大させることができる。従って、本発明の金属酸素電池によれば、放電容量を増加させる効果も得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の金属酸素電池の一構成例を示す説明的断面図。
【図2】YMn1-xx3とYMnO3との導電率の比較を示すグラフ。
【図3】本発明の金属酸素電池の一態様における充放電曲線を示すグラフ。
【図4】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、850℃の温度で焼成したYMn0.8Co0.23を用いたときの充放電曲線を示すグラフ。
【図5】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、1000℃の温度で焼成したYMn0.8Co0.23を用いたときの充放電曲線と、該酸素貯蔵材料の導電率とを示すグラフ。
【図6】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、850℃の温度で焼成したYMn0.9Co0.13を用いたときの充放電曲線を示すグラフ。
【図7】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、1000℃の温度で焼成したYMn0.9Co0.13を用いたときの充放電曲線を示すグラフ。
【図8】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、850℃の温度で焼成したYMn0.95Co0.053を用いたときの充放電曲線を示すグラフ。
【図9】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、1000℃の温度で焼成したYMn0.95Co0.053を用いたときの充放電曲線を示すグラフ。
【図10】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、850℃の温度で焼成したYMn0.8Ni0.23を用いたときの充放電曲線と、該酸素貯蔵材料の導電率とを示すグラフ。
【図11】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、1000℃の温度で焼成したYMn0.8Ni0.23を用いたときの充放電曲線と、該酸素貯蔵材料の導電率とを示すグラフ。
【図12】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、850℃の温度で焼成したYMn0.9Ni0.13を用いたときの充放電曲線と、該酸素貯蔵材料の導電率とを示すグラフ。
【図13】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、1000℃の温度で焼成したYMn0.9Ni0.13を用いたときの充放電曲線と、該酸素貯蔵材料の導電率とを示すグラフ。
【図14】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、850℃の温度で焼成したYMn0.95Ni0.053を用いたときの充放電曲線と、該酸素貯蔵材料の導電率とを示すグラフ。
【図15】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、1000℃の温度で焼成したYMn0.95Ni0.053を用いたときの充放電曲線を示すグラフ。
【図16】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、850℃の温度で焼成したYMn0.8Ru0.23を用いたときの充放電曲線を示すグラフ。
【図17】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、1000℃の温度で焼成したYMn0.8Ru0.23を用いたときの充放電曲線と、該酸素貯蔵材料の導電率とを示すグラフ。
【図18】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、850℃の温度で焼成したYMn0.9Ru0.13を用いたときの充放電曲線を示すグラフ。
【図19】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、1000℃の温度で焼成したYMn0.9Ru0.13を用いたときの充放電曲線と、該酸素貯蔵材料の導電率とを示すグラフ。
【図20】本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、850℃の温度で焼成したYMn0.95Ru0.053を用いたときの充放電曲線を示すグラフ。
【図21】図21は、本発明の金属酸素電池の他の態様において、前記酸素貯蔵材料として、1000℃の温度で焼成したYMn0.95Ru0.053を用いたときの充放電曲線と、該酸素貯蔵材料の導電率とを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の金属酸素電池1は、酸素を活物質とする正極2と、金属リチウムを活物質とする負極3と、正極2と負極3との間に配設される電解質層4とを備え、正極2、負極3及び電解質層4は、ケース5に密封して収容されている。
【0031】
ケース5は、カップ状のケース本体6と、ケース本体6を閉蓋する蓋体7とを備え、ケース本体6と蓋体7との間には絶縁樹脂8が介装されている。また、正極2は蓋体7の天面との間に正極集電体9を備えており、負極3はケース本体6の底面との間に負極集電体10を備えている。尚、金属酸素電池1において、ケース本体6は負極板として、蓋体7は正極板として作用する。
【0032】
金属酸素電池1において、正極2は酸素貯蔵材料と、導電材料と、結着剤とからなるものであってもよく、さらにリチウム化合物を含んでいてもよい。前記リチウム化合物としては、例えば、酸化リチウム又は過酸化リチウムを挙げることができる。
【0033】
前記酸素貯蔵材料は、YMn1-xx3(A=Ru,Ni、Co)からなる。YMn1-xx3は、YMnO3のMnの1〜20モル%(0.01≦x≦0.2)、好ましくは5〜20モル%(0.05≦x≦0.2)をRu、Ni又はCoで置換したものであり、導電性を備えている。また、前記酸素貯蔵材料は、酸素を吸蔵又は放出する機能を備えると共に、その表面に酸素を吸着、脱着することができる。
【0034】
前記酸素貯蔵材料は、例えば、イットリウム化合物と、マンガン化合物と、ルテニウム化合物、ニッケル化合物、コバルト化合物のいずれか1種の化合物と、有機酸との混合物を、250〜350℃の範囲の温度で反応させて得られた反応生成物の混合物を、850〜1000℃の範囲の温度で焼成することより得ることができる。前記化合物としては、Y、Mn、Ru、Ni、Coのそれぞれの金属の硝酸塩を用いることができる。また、前記有機酸としては、例えば、リンゴ酸を用いることができる。
【0035】
前記導電材料としては、例えば、グラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、メソポーラスカーボン、カーボンファイバー等の炭素材料を挙げることができる。
【0036】
前記結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を挙げることができる。
【0037】
次に、電解質層4は、例えば、非水系電解質溶液をセパレータに浸漬させたものであってもよく、固体電解質であってもよい。
【0038】
前記非水系電解質溶液は、例えば、リチウム化合物を非水系溶媒に溶解したものを用いることができる。前記リチウム化合物としては、例えば、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドリチウム(LiTFSI)等を挙げることができる。また、前記非水系溶媒としては、例えば、炭酸エステル系溶媒、エーテル系溶媒、イオン液体等を挙げることができる。
【0039】
前記炭酸エステル系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等を挙げることができる。前記炭酸エステル系溶媒は2種以上混合して用いることもできる。
【0040】
前記エーテル系溶媒としては、例えば、ジメトキシエタン、ジメチルトリグラム、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。前記エーテル系溶媒は2種以上混合して用いることもできる。
【0041】
前記イオン液体としては、例えば、イミダゾリウム、アンモニウム、ピリジニウム、ペリジウム等のカチオンと、ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド(TTSI)、ビス(ペンタフルオロエチルスルフォニル)イミド(BETI)、テトラフルオロボレート、パークロレート、ハロゲンアニオン等のアニオンとの塩を挙げることができる。
【0042】
前記セパレータとしては、例えば、ガラス繊維、ガラス製ペーパー、ポリプロピレン製不織布、ポリイミド製不織布、ポリフェニレンスルフィド製不織布、ポリエチレン製多孔フィルム、ポリオレフィン製平膜等を挙げることができる。
【0043】
また、前記固体電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質等を挙げることができる。
【0044】
前記酸化物系固体電解質としては、例えば、リチウム、ランタン、ジルコニウムの複合酸化物であるLi7La3Zr212、リチウム、アルミニウム、ケイ素、チタン、ゲルマニウム、リンを主成分とするガラスセラミックス等を挙げることができる。前記Li7La3Zr212は、リチウム、ランタン、ジルコニウムの一部を、それぞれストロンチウム、バリウム、銀、イットリウム、鉛、スズ、アンチモン、ハフニウム、タンタル、ニオブ等の他の金属で置換されたものであってもよい。
【0045】
次に、集電体9,10としては、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、銅等のメッシュからなるものを挙げることができる。
【0046】
本実施形態の金属酸素電池1では、放電時には次の式に示すように、負極3において、金属リチウムが酸化されてリチウムイオンと電子とが生成する。生成したリチウムイオンは、正極2に移動し、前記酸素貯蔵材料から供給される酸素の還元により生成した酸素イオンと反応し、酸化リチウム又は過酸化リチウムを生成する。
【0047】
(負極) 4Li → 4Li+ +4e-
(正極) O2 + 4e- → 2O2-
4Li+ + 2O2- → 2Li2
2Li+ + 2O2- → Li22
一方、充電時には次の式に示すように、正極2において、酸化リチウム又は過酸化リチウムからリチウムイオンと酸素イオンとが生成する。生成したリチウムイオンは負極3に移動し、負極3で還元されることにより金属リチウムとして析出する。
【0048】
(正極) 2Li2O → 4Li+ + 2O2-
Li22 → 2Li+ + 2O2-
(負極) 4Li+ +4e- → 4Li
このとき、正極2は、導電性を備える前記YMn1-xx3を前記酸素貯蔵材料として含むので、該酸素貯蔵材料の粒子上で行われるリチウムイオンの酸化還元反応における電子の授受を円滑に行うことができ、反応過電圧を低減することができる。
【0049】
前記放電時又は充電時に、前記酸素貯蔵材料は、酸素の吸蔵、放出には化学結合の生成、解離を伴うが、その表面における酸素の吸着、脱着は、分子間力に相当するエネルギーのみで行うことができる。従って、正極2における電池反応には、前記酸素貯蔵材料の表面において吸着、脱着される酸素が優先的に用いられることとなり、反応速度の低下及び過電圧の上昇を抑制することができる。
【0050】
またこのとき、正極2は、前記酸素貯蔵材料として前記YMnx1-x3を用いることにより、該酸素貯蔵材料の表面に吸着する酸素量を増大させることができる。従って、本実施形態の金属酸素電池1によれば、放電容量を増加させる効果も得ることができる。
【0051】
次に、実施例及び比較例を示す。
【実施例】
【0052】
〔実施例1〕
本実施例では、まず、硝酸イットリウム5水和物と、硝酸マンガン6水和物と、硝酸ルテニウムと、リンゴ酸とを、1:0.8:0.2:6のモル比となるようにして、粉砕混合し、複合金属酸化物材料の混合物を得た。次に、得られた複合金属酸化物材料の混合物を250℃の温度で30分間反応させた後、さらに、300℃の温度で30分間、350℃の温度で1時間反応させた。次に、反応生成物の混合物を粉砕混合した後、1000℃の温度で1時間焼成して複合金属酸化物を得た。
【0053】
本実施例で得られた複合金属酸化物は、X線回折パターンにより、化学式YMn0.8Ru0.23で表される複合金属酸化物であり、六方晶構造を備えることが確認された。また、得られた複合金属酸化物は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製)を用い、エタノールを溶媒として平均粒子径D50を算出したところ、5.75μmの平均粒子径を備えていた。
【0054】
次に、本実施例で得られたYMn0.8Ru0.23の導電率を図2に示す。
【0055】
次に、酸素貯蔵材料としての本実施例で得られたYMn0.8Ru0.23と、導電材料としてのケッチェンブラック(株式会社ライオン製)と、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業株式会社製)とを、10:80:10の質量比で混合し、正極混合物を得た。そして、得られた正極混合物をチタンメッシュからなる正極集電体9に5MPaの圧力で圧着し、直径15mm、厚さ1mmの正極2を形成した。
【0056】
正極2は、全自動細孔分布測定装置(Quantachrome社製)を用い、水銀圧入法により空隙率を測定したところ、78容量%の空隙率を備えていた。
【0057】
次に、内径15mmの有底円筒状のSUS製ケース本体6の内部に、直径15mmの銅メッシュからなる負極集電体10を配置し、負極集電体10上に、直径15mm、厚さ0.1mmの金属リチウムからなる負極3を重ね合わせた。
【0058】
次に、負極3上に、直径15mmのガラス繊維(日本板硝子株式会社製)からなるセパレータを重ね合わせた。次に、前記セパレータ上に、前記のようにして得られた正極2及び正極集電体9を、正極2が該セパレータに接するように重ね合わせた。次に、前記セパレータに非水系電解質溶液を注入し、電解質層4を形成した。
【0059】
前記非水系電解質溶液としては、エチレンカーボネートと、ジエチルカーボネートとを50:50の質量比で混合した混合溶液を溶媒として、該溶媒に支持塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルの濃度で溶解した溶液(キシダ化学株式会社製)を用いた。
【0060】
次に、ケース本体6に収容された負極集電体10、負極3、電解質層4、正極2、正極集電体9からなる積層体を、内径15mmの有底円筒状のSUS製蓋体7で閉蓋した。このとき、ケース本体6と蓋体7との間に、外径32mm、内径30mm、厚さ5mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるリング状の絶縁樹脂8を配設することにより、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0061】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を電気化学測定装置(東方技研株式会社製)に装着し、負極3と正極2との間に、0.2mA/cm2の電流を印加し、セル電圧が2.0Vになるまで放電した。このときのセル電圧と放電容量との関係を図3(a)に示す。
【0062】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を前記電気化学測定装置に装着し、負極3と正極2との間に、0.2mA/cm2の電流を印加し、セル電圧が4.5Vになるまで充電した。このときのセル電圧と充電容量との関係を図3(b)に示す。
【0063】
〔実施例2〕
本実施例では、硝酸ルテニウムに代えて硝酸ニッケルを用い、化学式YMn0.8Ni0.23で表される複合金属酸化物を得た以外は、実施例1と全く同一にして金属酸素電池1を製造した。本実施例で得られたYMn0.8Ni0.23の導電率を図2に示す。
【0064】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、充放電を行った。このときのセル電圧と放電容量との関係を図3(a)に、セル電圧と充電容量との関係を図3(b)に、それぞれ示す。
【0065】
〔比較例1〕
本比較例では、硝酸ルテニウム及び硝酸ニッケルを全く用いずに、化学式YMnO3で表される複合金属酸化物を得た以外は、実施例1と全く同一にして金属酸素電池1を製造した。本比較例で得られたYMnO3の導電率を図2に示す。
【0066】
次に、本比較例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、充放電を行った。このときのセル電圧と放電容量との関係を図3(a)に、セル電圧と充電容量との関係を図3(b)に、それぞれ示す。
【0067】
図2から、実施例1で得られたYMn0.8Ru0.23、実施例2で得られたYMn0.8Ni0.23は優れた導電率を備えることが明らかである。これに対して、比較例1で得られたYMnO3は実質的に導電性を示さず、電子絶縁体であることが明らかである。
【0068】
また、図3から、導電性を備える前記YMn0.8Ru0.23、YMn0.8Ni0.23を前記酸素貯蔵材料として含む実施例1及び実施例2の金属酸素電池1によれば、YMnO3を前記酸素貯蔵材料として含む比較例1の金属酸素電池1に比較して、放電容量が増加しており、充放電過電圧(反応過電圧)が低くなっていることが明らかである。
【0069】
〔実施例3〕
本実施例では、硝酸イットリウム5水和物と、硝酸マンガン6水和物と、硝酸コバルトと、リンゴ酸とを、1:0.8:0.2:6のモル比となるようにして、粉砕混合し、複合金属酸化物材料の混合物を得た。次に、得られた複合金属酸化物材料の混合物を250℃の温度で30分間反応させた後、さらに、300℃の温度で30分間、350℃の温度で1時間反応させた。次に、反応生成物の混合物を粉砕混合した後、850℃の温度で1時間焼成して、化学式YMn0.8Co0.23で表される複合金属酸化物を得た。
【0070】
次に、本実施例で得られたYMn0.8Co0.23と、導電材料としてのケッチェンブラック(株式会社ライオン製)と、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業株式会社製)と、リチウム化合物としての過酸化リチウム(株式会社高純度化学研究所製)とを、8:1:1:4の質量比で混合し、正極混合物を得た。そして、得られた正極混合物をアルミニウムメッシュからなる正極集電体9に塗布し、直径15mm、厚さ0.4mmの正極2を形成した。
【0071】
次に、内径15mmの有底円筒状のSUS製ケース本体6の内部に、直径15mmのSUSメッシュからなる負極集電体10を配置し、負極集電体10上に、直径15mm、厚さ0.1mmの金属リチウムからなる負極3を重ね合わせた。
【0072】
次に、負極3上に、直径15mmのポリオレフィン製平膜(旭化成イーマテリアルズ株式会社製)からなるセパレータを重ね合わせた。次に、前記セパレータ上に、前記のようにして得られた正極2及び正極集電体9を、正極2が該セパレータに接するように重ね合わせた。次に、前記セパレータに非水系電解質溶液を注入し、電解質層4を形成した。
【0073】
前記非水系電解質溶液としては、ジメトキシエタンを溶媒として、該溶媒に支持塩としてビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドリチウム(LiTFSI)を1モル/リットルの濃度で溶解した溶液(キシダ化学株式会社製)を用いた。
【0074】
次に、ケース本体6に収容された負極集電体10、負極3、電解質層4、正極2、正極集電体9からなる積層体を、内径15mmの有底円筒状のSUS製蓋体7で閉蓋した。このとき、ケース本体6と蓋体7との間に、外径32mm、内径30mm、厚さ5mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるリング状の絶縁樹脂8を配設することにより、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0075】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を電気化学測定装置(東方技研株式会社製)に装着し、負極3と正極2との間に、0.2mA/cm2の電流を印加し、セル電圧が3.9Vになるまで定電流充電を行った。セル電圧が3.9Vに達した時点で定電圧充電に移行し、電流値が0.015mA/cm2になるまで充電した。このときのセル電圧と充電容量との関係を図4(a)に示す。
【0076】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を前記電気化学測定装置に装着し、負極3と正極2との間に、0.2mA/cm2の電流を印加し、セル電圧が2.0Vになるまで放電した。このときのセル電圧と放電容量との関係を図4(b)に示す。
【0077】
〔実施例4〕
本実施例では、複合金属酸化物材料の混合物から得られた反応生成物の混合物を粉砕混合した後、1000℃の温度で1時間焼成した以外は、実施例3と全く同一にして、化学式YMn0.8Co0.23で表される複合金属酸化物を得た。
【0078】
次に、本実施例で得られたYMn0.8Co0.23を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0079】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図5(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図5(b)に、それぞれ示す。また、本実施例で得られたYMn0.8Co0.23の導電率を図5(c)に示す。
【0080】
〔実施例5〕
本実施例では、硝酸イットリウム5水和物と、硝酸マンガン6水和物と、硝酸コバルトと、リンゴ酸とを、1:0.9:0.1:6のモル比となるようにして、粉砕混合し、複合金属酸化物材料の混合物を得た以外は、実施例3と全く同一にして、化学式YMn0.9Co0.13で表される複合金属酸化物を得た。
【0081】
次に、本実施例で得られたYMn0.9Co0.13を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0082】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図6(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図6(b)に、それぞれ示す。
【0083】
〔実施例6〕
本実施例では、複合金属酸化物材料の混合物から得られた反応生成物の混合物を粉砕混合した後、1000℃の温度で1時間焼成した以外は、実施例5と全く同一にして、化学式YMn0.9Co0.13で表される複合金属酸化物を得た。
【0084】
次に、本実施例で得られたYMn0.9Co0.13を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0085】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図7(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図7(b)に、それぞれ示す。
【0086】
〔実施例7〕
本実施例では、硝酸イットリウム5水和物と、硝酸マンガン6水和物と、硝酸コバルトと、リンゴ酸とを、1:0.95:0.05:6のモル比となるようにして、粉砕混合し、複合金属酸化物材料の混合物を得た以外は、実施例3と全く同一にして、化学式YMn0.95Co0.053で表される複合金属酸化物を得た。
【0087】
次に、本実施例で得られたYMn0.95Co0.153を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0088】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図8(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図8(b)に、それぞれ示す。
【0089】
〔実施例8〕
本実施例では、複合金属酸化物材料の混合物から得られた反応生成物の混合物を粉砕混合した後、1000℃の温度で1時間焼成した以外は、実施例7と全く同一にして、化学式YMn0.95Co0.053で表される複合金属酸化物を得た。
【0090】
次に、本実施例で得られたYMn0.95Co0.053を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0091】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図9(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図9(b)に、それぞれ示す。
【0092】
〔実施例9〕
本実施例では、硝酸コバルトに代えて硝酸ニッケルを用いた以外は、実施例3と全く同一にして、化学式YMn0.8Ni0.23で表される複合金属酸化物を得た。
【0093】
次に、本実施例で得られたYMn0.8Ni0.23を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0094】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図10(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図10(b)に、それぞれ示す。また、本実施例で得られたYMn0.8Ni0.23の導電率を図10(c)に示す。
【0095】
〔実施例10〕
本実施例では、複合金属酸化物材料の混合物から得られた反応生成物の混合物を粉砕混合した後、1000℃の温度で1時間焼成した以外は、実施例9と全く同一にして、化学式YMn0.8Ni0.23で表される複合金属酸化物を得た。
【0096】
次に、本実施例で得られたYMn0.8Ni0.23を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0097】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図11(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図11(b)に、それぞれ示す。また、本実施例で得られたYMn0.8Ni0.23の導電率を図11(c)に示す。
【0098】
〔実施例11〕
本実施例では、硝酸イットリウム5水和物と、硝酸マンガン6水和物と、硝酸ニッケルと、リンゴ酸とを、1:0.9:0.1:6のモル比となるようにして、粉砕混合し、複合金属酸化物材料の混合物を得た以外は、実施例3と全く同一にして、化学式YMn0.9Ni0.13で表される複合金属酸化物を得た。
【0099】
次に、本実施例で得られたYMn0.9Ni0.13を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0100】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図12(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図12(b)に、それぞれ示す。また、本実施例で得られたYMn0.9Ni0.13の導電率を図12(c)に示す。
【0101】
〔実施例12〕
本実施例では、複合金属酸化物材料の混合物から得られた反応生成物の混合物を粉砕混合した後、1000℃の温度で1時間焼成した以外は、実施例11と全く同一にして、化学式YMn0.9Ni0.13で表される複合金属酸化物を得た。
【0102】
次に、本実施例で得られたYMn0.9Ni0.13を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0103】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図13(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図13(b)に、それぞれ示す。また、本実施例で得られたYMn0.9Ni0.13の導電率を図13(c)に示す。
【0104】
〔実施例13〕
本実施例では、硝酸イットリウム5水和物と、硝酸マンガン6水和物と、硝酸ニッケルと、リンゴ酸とを、1:0.95:0.05:6のモル比となるようにして、粉砕混合し、複合金属酸化物材料の混合物を得た以外は、実施例3と全く同一にして、化学式YMn0.95Ni0.053で表される複合金属酸化物を得た。
【0105】
次に、本実施例で得られたYMn0.95Ni0.153を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0106】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図14(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図14(b)に、それぞれ示す。また、本実施例で得られたYMn0.95Ni0.053の導電率を図14(c)に示す。
【0107】
〔実施例14〕
本実施例では、複合金属酸化物材料の混合物から得られた反応生成物の混合物を粉砕混合した後、1000℃の温度で1時間焼成した以外は、実施例13と全く同一にして、化学式YMn0.95Ni0.053で表される複合金属酸化物を得た。
【0108】
次に、本実施例で得られたYMn0.95Ni0.053を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0109】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図15(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図15(b)に、それぞれ示す。
【0110】
〔実施例15〕
本実施例では、硝酸コバルトに代えて硝酸ルテニウムを用いた以外は、実施例3と全く同一にして、化学式YMn0.8Ru0.23で表される複合金属酸化物を得た。
【0111】
次に、本実施例で得られたYMn0.8Ru0.23を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0112】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図16(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図16(b)に、それぞれ示す。
【0113】
〔実施例16〕
本実施例では、複合金属酸化物材料の混合物から得られた反応生成物の混合物を粉砕混合した後、1000℃の温度で1時間焼成した以外は、実施例15と全く同一にして、化学式YMn0.8Ru0.23で表される複合金属酸化物を得た。
【0114】
次に、本実施例で得られたYMn0.8Ru0.23を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0115】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図17(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図17(b)に、それぞれ示す。また、本実施例で得られたYMn0.8Ru0.23の導電率を図17(c)に示す。
【0116】
〔実施例17〕
本実施例では、硝酸イットリウム5水和物と、硝酸マンガン6水和物と、硝酸ルテニウムと、リンゴ酸とを、1:0.9:0.1:6のモル比となるようにして、粉砕混合し、複合金属酸化物材料の混合物を得た以外は、実施例3と全く同一にして、化学式YMn0.9Ru0.13で表される複合金属酸化物を得た。
【0117】
次に、本実施例で得られたYMn0.9Ru0.13を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0118】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図18(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図18(b)に、それぞれ示す。
【0119】
〔実施例18〕
本実施例では、複合金属酸化物材料の混合物から得られた反応生成物の混合物を粉砕混合した後、1000℃の温度で1時間焼成した以外は、実施例17と全く同一にして、化学式YMn0.9Ru0.13で表される複合金属酸化物を得た。
【0120】
次に、本実施例で得られたYMn0.9Ru0.13を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0121】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図19(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図19(b)に、それぞれ示す。また、本実施例で得られたYMn0.9Ru0.13の導電率を図19(c)に示す。
【0122】
〔実施例19〕
本実施例では、硝酸イットリウム5水和物と、硝酸マンガン6水和物と、硝酸ルテニウムと、リンゴ酸とを、1:0.95:0.05:6のモル比となるようにして、粉砕混合し、複合金属酸化物材料の混合物を得た以外は、実施例3と全く同一にして、化学式YMn0.95Ru0.053で表される複合金属酸化物を得た。
【0123】
次に、本実施例で得られたYMn0.95Ru0.053を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0124】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図20(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図20(b)に、それぞれ示す。
【0125】
〔実施例20〕
本実施例では、複合金属酸化物材料の混合物から得られた反応生成物の混合物を粉砕混合した後、1000℃の温度で1時間焼成した以外は、実施例19と全く同一にして、化学式YMn0.95Ru0.053で表される複合金属酸化物を得た。
【0126】
次に、本実施例で得られたYMn0.95Ru0.053を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0127】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。充電時のセル電圧と充電容量との関係を図21(a)に、放電時のセル電圧と放電容量との関係を図21(b)に、それぞれ示す。また、本実施例で得られたYMn0.95Ru0.053の導電率を図21(c)に示す。
【0128】
〔比較例2〕
本比較例では、硝酸コバルト、硝酸ルテニウム、硝酸ニッケルのいずれをも全く用いずに、化学式YMnO3で表される複合金属酸化物を得た以外は、実施例3と全く同一にして図1に示す金属酸素電池1を得た。
【0129】
次に、本比較例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、充放電を行った。このときのセル電圧と放電容量との関係を、図4〜21に実施例3〜20の金属酸素電池1におけるセル電圧と放電容量との関係と共に示す。
【0130】
図5、10〜14、17、19、21の各図(c)から、実施例4、9〜13、16、18、20で得られた化学式YMn1-xx3(A=Ru,Ni、Co、0.05≦x≦0.2)で表される複合金属酸化物は優れた導電率を備えることが明らかである。
【0131】
また、図4〜21の各図(a)、(b)から、導電性を備える前記YMn1-xx3(A=Ru,Ni、Co、0.05≦x≦0.2)を前記酸素貯蔵材料として含む実施例3〜20の金属酸素電池1によれば、YMnO3を前記酸素貯蔵材料として含む比較例2の金属酸素電池1に比較して、放電容量が増加しており、充放電過電圧(反応過電圧)が低くなっていることが明らかである。
【符号の説明】
【0132】
1…金属酸素電池、 2…正極、 3…負極、 4…電解質層、 5…ケース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を活物質とする正極と、金属リチウムを活物質とする負極と、該正極と負極とに挟持された電解質層とを備える金属酸素電池において、
該正極は、YMn1-xx3(A=Ru,Ni、Co、0.01≦x≦0.2)からなる酸素貯蔵材料を含むことを特徴とする金属酸素電池。
【請求項2】
請求項1記載の金属酸素電池において、前記正極は、YMn1-xx3(A=Ru,Ni、Co、0.05≦x≦0.2)からなる酸素貯蔵材料を含むことを特徴とする金属酸素電池。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の金属酸素電池において、前記正極は、前記酸素貯蔵材料と、導電材料と、結着剤とからなることを特徴とする金属酸素電池。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の金属酸素電池において、前記正極は、前記酸素貯蔵材料と、導電材料と、結着剤と、リチウム化合物とからなることを特徴とする金属酸素電池。
【請求項5】
請求項4記載の金属酸素電池において、前記リチウム化合物は過酸化リチウムであることを特徴とする金属酸素電池。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の金属酸素電池において、前記正極、前記負極及び前記電解質層は密封ケース内に配設されていることを特徴とする金属酸素電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−33730(P2013−33730A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−149151(P2012−149151)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】