説明

釘打機、及び壁断熱構造構築方法

【課題】二重頭釘を打ち出す釘打機、及び該釘打機を用いた壁断熱構造構築方法を提供する。
【解決手段】釘マガジン8にある釘案内路15の路面に、互いに平行な上側案内凹溝21と下側案内凹溝22とを配設し、さらに二重頭釘2の上側頭部3aを上側案内凹溝21内に、下側頭部3bを下側案内凹溝22内に配置して走行させて、当該二重頭釘2を釘打圧位置Pに移送する釘打機1とした。また、この釘打機1を用いて、先端が柱へ、下側頭部3bが耐力面材へ、上側頭部3aが外側断熱材へそれぞれ達するように二重頭釘2を打ち込み、壁用断熱ユニットを柱等の壁躯体構造に固定し、壁断熱構造を構築するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釘打機、及び該釘打機を用いて壁断熱構造を構築する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外断熱壁構造として、建物の躯体の外壁面上に断熱材層を設け、さらにその上に外壁材仕上げ材を設置する外断熱壁構造が一般に提供されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
さらに、本発明者は、耐力面材の両側に断熱材を配した壁用断熱ユニットが壁躯体構造(例えば柱体)に固定されてなる壁断熱構造を提供すると共に、壁用断熱ユニットを壁躯体構造に固定する為の締結材として、上下二段の頭部を有するいわゆる二重頭釘を採用することも提案している(特許文献4参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−002747号公報(第4−5頁、第1図)
【特許文献2】特許第3215826号公報
【特許文献3】特開2004−52362号公報
【特許文献4】特開2006−307439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献4に開示された構成にあっては、二重頭釘を手作業で一本一本打ち込む必要があり、所要の壁断熱構造を構築するのには非常に手間と時間がかかり全体として壁断熱構造のコストが高騰してしまう問題があった。また、二重頭釘の打ち込み作業にあって、その打ち込み深さには熟練を要する場合もあり、作業者によって仕上がりにばらつきが生じてしまうこともあった。
【0006】
ところで、従来、上端のみに頭部を有する汎用の釘を一定の打圧力で高速に打ち出すことができる釘打機は種々提案されているが、上述した二重頭釘を安定かつ確実に、一定の打圧力で高速に打ち出すことができる二重頭釘対応の釘打機は未だ提案されていない。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題を解決することができる釘打機、及び、該釘打機を用いた壁断熱構造構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、多数本の釘が連結帯によって相互連結されてなる釘連結物が巻回されて巻束とされた釘巻束を収納する釘巻束収納部と、該釘巻束収納部から引き出された釘連結物を釘打圧位置まで案内する釘案内路とからなる釘マガジンを備え、該釘案内路に案内されて釘打圧位置に到達した釘を、ワークに向かって順次打圧して該釘を打ち出す釘打機において、前記釘は、上下二段に配された上側頭部と下側頭部とを有する二重頭釘であって、前記釘案内路の路面には、互いに平行な二つの案内凹溝が釘の案内方向に沿って配設され、かつ、両案内凹溝は、前記釘マガジンに対して開閉する蓋体によって被覆されると共に、二重頭釘が釘打圧位置まで移送される際には、当該二重頭釘の各頭部が蓋体によって被覆された各案内凹溝内に配置され、各頭部が各案内凹溝に誘導されながらその溝内を走行することを特徴とする釘打機である。
【0009】
上述のように、二重頭釘が釘案内路を走行する際には、その上下の各頭部が各案内凹溝内を、溝壁又は蓋体による案内作用を受けながら釘打圧位置に向けて走行することとなる。ここで、両案内凹溝は、二重頭釘の当該軸方向の変動を適正に制限すると共に、蓋体は、二重頭釘が釘案内路の路面から飛び出すことを制限する。これにより、釘案内路を走行する釘連結物の姿勢が安定し、円滑に当該釘連結物が釘打圧位置に供給される。ここで、汎用の釘(一頭釘)対応の公知の釘打機は、ワイヤによって多数本の釘が互いに連結された釘連結物が装填され、該釘連結物が釘案内路を走行する構成が一般的であるところ、上記本発明に係る構成とすることにより本発明に釘連結物対応の市販品の釘打機を流用することも可能となる。なお、本発明に係る案内凹溝の溝幅は、二重頭釘の各頭部の肉厚を考慮して、変動を適正に制限しつつ該頭部が円滑に溝内を走行できるよう適宜設定されるものである。
【0010】
また、上記構成にあって、前記蓋体の内周面に、案内凹溝を被覆する遮閉状態で少なくともいずれかの案内凹溝に並行状に対向して互いに溝内が連通する補助案内凹溝が配設され、二重頭釘が釘打圧位置まで移送される際には、当該案内凹溝を走行する頭部が補助案内凹溝の溝内も走行する構成としても良い。
【0011】
かかる構成にあっては、案内凹溝と補助案内凹溝とで両側を挟まれた案内通路を頭部が走行することとなるため、溝内での頭部の走行を妨げることなく、当該頭部を両側から適度に保持して溝内から飛び出すことを防止し、二重頭釘が釘案内路から脱離することを防いでいる。
【0012】
また、これまでに述べた二重頭釘を発射する釘打機を用いて、以下に示す壁断熱構造を構築する方法が提案される。すなわち、本発明は、耐力面材の内外両側に断熱材がそれぞれ貼着され、外側の断熱材は該耐力面材と縦横同寸法に設定され、内側の断熱材の所定箇所には切欠き部が形成されてなる壁用断熱ユニットを、壁躯体構造を構成する柱体を前記切欠き部に嵌合することにより当該壁躯体構造に仮固定し、さらに請求項1又は請求項2記載の釘打機により二重頭釘を、先端が前記柱体へ、下側頭部が前記耐力面材の外側表面へ、上側頭部が前記外側の断熱材へそれぞれ達するように壁用断熱ユニットに対して外側から打ち込んで、壁断熱ユニットを壁躯体構造に固定し、壁断熱ユニットと壁躯体構造とからなる壁断熱構造を構築することを特徴とする壁断熱構造構築方法である。
【0013】
かかる構成とすることにより、手作業を排除して、二重頭釘を用いた壁断熱構造を構築することができる。
【0014】
さらに、上記方法にあっては、二重頭釘の上側頭部と下側頭部との離間距離を、壁断熱ユニットを構成する外側の断熱材の肉厚とほぼ等しくする構成が提案される。
【0015】
かかる構成にあっては、上側頭部を外側の断熱材の外側表面から視認可能な程度の深さで打ち込めば、丁度、下側頭部が耐力面材の外側表面へ達することとなるため、釘打ち深さを最小限とすることができる。また、上側頭部が外側の断熱材に到達していることを目視で確認すれば、少なくとも下側頭部が耐力面材の外表面に達していることを容易に推察することができる。
【0016】
なお、前記構成にあっては、二重頭釘の上側頭部と下側頭部との離間距離を35mmとし、外側の断熱材の肉厚を、35mm〜40mmとする構成が好適である。
【0017】
かかる構成とすることにより、現行の建築基準法に適合した壁断熱構造を構築することができる。
【0018】
また、上側頭部の頂上面に、下側頭部も有する二重頭釘であることを示す識別標識が付された二重頭釘を用いる構成としても良い。
【0019】
かかる構成とすることにより、二重頭釘が外側の断熱材に打ち込まれて下側頭部が視認不能であるときでも、作業者は、外側に露出した上側頭部の頂上面の識別標識を視認して当該釘が二重頭釘であることを認識することができる。これにより、その他の構成の釘(例えば汎用の一頭釘)を併用していた場合でも釘の種別を判別でき、該識別標識に基づき、壁断熱ユニットと壁躯体構造とが二重頭釘によって確かに結合されている、という安全確認も容易となる。
【0020】
なお、二重頭釘の軸径を、2.7mm〜3.3mmとすることが望ましい。
【0021】
かかる構成とすることにより、現行の建築基準法に適合した壁断熱構造を構築することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の釘打機は、釘案内路の路面に平行な二つの案内凹溝を配設し、二重頭釘の各頭部を蓋体によって被覆された各案内凹溝内に配置し、各頭部を各案内凹溝の溝内を走行させて当該二重頭釘を釘打圧位置まで移送するようにしたため、二重頭釘からなる釘連結物を安定かつ円滑に釘打圧位置まで案内することが可能となり、該釘打圧位置から一定の打圧力で高速に二重頭釘を打ち出すことができる効果を奏する。
【0023】
また、蓋体に補助案内凹溝を設け、案内凹溝を走行する頭部が補助案内凹溝の溝内も走行する構成とした場合は、二重頭釘の釘案内路からの脱離を防止できる効果がある。
【0024】
また、本発明に係る壁断熱構造構築方法は、壁用断熱ユニットを、請求項1又は請求項2記載の釘打機により、二重頭釘を、先端が前記柱体へ、下側頭部が前記耐力面材の外側表面へ、上側頭部が前記外側の断熱材へそれぞれ達するように壁用断熱ユニットに対して外側から打ち込むことにより壁躯体構造に固定し、壁断熱構造を構築するようにしたため、手作業による二重頭釘の釘打ちが排除されることとなり、一定の打圧力で高速に二重頭釘を打ち出して、壁断熱構造を低コストかつ短時間で構築することができる効果を奏する。また、釘打機を用いることにより、釘打ち精度が向上して品質が均一化する効果も奏する。
【0025】
また、二重頭釘の頭部の離間距離を、壁断熱ユニットを構成する外側の断熱材の肉厚とほぼ等しくする構成とした場合は、上側頭部を外側断熱材の外側表面に達する深さで打ち込んで下側頭部を耐力面材の外側表面へ到達させることができるため、釘打ち深さを最小限とすることができる効果がある。また、上側頭部が外側断熱材に達していることを目視確認するだけで、少なくとも下側頭部が耐力面材の外表面に達していることを容易に推察することができる効果がある。
【0026】
また、二重頭釘の上側頭部と下側頭部との離間距離を35mmとし、外側の断熱材の肉厚を、35mm〜40mmとした場合は、現行の建築基準法に適合した壁断熱構造を構築することができる。
【0027】
また、上側頭部の頂上面に、下側頭部を有する釘であることを示す識別標識が付された二重頭釘を用いる構成とした場合は、外側に露出した上側頭部の頂上面に付された識別標識を視認するだけで当該釘が二重頭釘であることを容易に確認できるため、釘の種別が容易となって、壁断熱ユニットと壁躯体構造とが二重頭釘によって確かに結合されている、という安全確認がしやすいという効果がある。
【0028】
また、二重頭釘の軸径を、2.7mm〜3.3mmとした場合は、現行の建築基準法に適合した壁断熱構造を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明に係る釘打機1を、図1〜図6に従って説明する。なお、本実施例に係る釘打機1は、圧縮空気を動力源とする高圧ロール型であり、いわゆる二重頭釘2を打ち出すものである。この二重頭釘2は、図2等に示すように、上下二段に配された、軸径Dに対して幅広の上側頭部3aと下側頭部3bとを有し、公知品を好適に採用することができる。
【0030】
ところで、打ち出し前の二重頭釘2は、図2に示すように、上下二本の金属製ワイヤ5a,5bで電気溶接されて、多数本が径方向に一列状に相互連結されてなる釘連結物2Aとされていると共に、該釘連結物2Aが、さらに、図3に示すように幾重にも巻回されて巻束とされた釘巻束20として釘打機1に収納される。なお、前記金属製ワイヤ5a,5bにより、本発明に係る連結帯が構成される。なお、連結帯としては、金属製ワイヤ5a,5bに限定されず、その他の材料からなる線材等を適宜採用しても勿論良い。
【0031】
図1に示すように、釘打機1は、二重頭釘2が打ち出される射出口7と、釘マガジン8とを備えている。この釘マガジン8は、釘連結物2Aが巻回されてなる釘巻束20を収納する釘巻束収納部13と、該釘巻束20から引き出された釘連結物2Aを前記射出口7の上側に位置する釘打圧位置Pまで案内する釘案内路15とからなる。さらに、釘打機1は、釘案内路15にある釘連結物2Aを釘打圧位置Pに順次送り進める供給機構17と、釘打圧位置Pに供給された二重頭釘2を打圧して射出口7からワークに向かって打ち出す打圧機構18が内蔵される釘打機本体9とを備えている。
【0032】
さらにまた釘打機1は、前記釘案内路15の釘打圧位置P側に軸支されている透明の蓋体11を備えている。この蓋体11は、釘マガジン8の釘案内路15が露出する開放状態と、該釘案内路15が被覆される遮閉状態とに、適宜、位置変換される。なお、本件明細書では、開放状態の蓋体11の符号を11Aとし、遮閉状態の蓋体11の符号を11Bとして説明及び図示する。
【0033】
かかる構成にあって、釘巻束20を釘巻束収納部13の軸芯14周りに配置し、釘巻束20の引き出し部20Aから引き出した釘連結物2Aを釘案内路15に導入し、それから蓋体11を遮閉し、釘案内路15にある釘連結物2Aを、釘案内路15の案内作用に従って供給機構17により釘巻束20から引き出すと共に順次釘打圧位置Pまで送り出し、釘打圧位置Pに到達した二重頭釘2の上側頭部3aの頂上面をピストンで構成される打圧機構18により打圧することにより、二重頭釘2が一定打圧力で高速にワークに向かって打ち出される。
【0034】
次に、本発明の要部である釘案内路15について詳述する。
図1,図5に示すように、釘マガジン8の内周面8aであって、釘連結物2Aの二重頭釘2がそれぞれ走行する釘案内路15の路面15aには、上側案内凹溝21と、下側案内凹溝22とがほぼ左右方向に形成されている。さらに詳しく述べると、この上側案内凹溝21と下側案内凹溝22は、一方の溝端(図1で左側端)が前記釘打圧位置Pにそれぞれ臨ませてあると共に、それぞれ釘案内路15における釘の走行方向(換言すれば、釘巻束収納部13から釘打圧位置Pに向かう方向)に沿って、それぞれ平行に形成されている。なお、両案内凹溝21,22の溝深さ方向は、図5に示すように、釘マガジン8の釘案内路15部分を構成する薄肉板部の厚み方向と一致することとなる。
【0035】
また、前記蓋体11の内周面11aには、補助案内凹溝23が左右方向に形成されている。この補助案内凹溝23は、一方の溝端(図1で右側端)が前記釘打圧位置Pに臨ませてあると共に、図5に示すように、当該蓋体11が遮閉状態となると、釘案内路15にある下側案内凹溝22に対向し、釘案内方向に沿って当該補助案内凹溝23と当該下側案内凹溝22とが向かい合い、双方の溝によって下側頭部案内通路28が形成されるように配置設計されている。
【0036】
かかる構成にあって、蓋体11が遮閉状態とされ、前記供給機構17が駆動して釘連結物2Aを釘巻束20から引き出すと共に釘打圧位置Pへ送り出し、釘打圧位置Pに向けて二重頭釘2が走行すると、当該二重頭釘2の上側頭部3aは、図6に示すように、上側案内凹溝21内を走行する。すなわち、上側頭部3aが上側案内凹溝21により構成される上側頭部案内通路27を通過する。一方、下側頭部3bは、下側案内凹溝22内とこれに対向する補助案内凹溝23内とを走行する。すなわち、下側頭部3bが下側頭部案内通路28を通過する。なお、二重頭釘2を連結する上側の金属製ワイヤ5aは、上側案内凹溝21の直下に設けられた横長穴部26を通過すると共に、下側の金属製ワイヤ5bは、下側案内凹溝22の直下に設けられた低段部24を通過する。
【0037】
このように、両頭部3a,3bを、両案内凹溝21,22の溝内を走行させて釘打圧位置Pへ誘導するようにすると、当該二重頭釘2の軸方向(すなわち釘の上下方向)への移動が適正に制限されることとなって、移送中の二重頭釘2の姿勢が安定することとなる。これにより、二重頭釘2を円滑に釘打圧位置Pに供給することができる。また、両案内凹溝21,22を蓋体11が被覆するため、二重頭釘2からなる釘連結物2Aは、釘案内路15から脱離しない。
【0038】
さらに、本実施例は、補助案内凹溝23を設けて、下側頭部案内通路28を下側案内凹溝22と補助案内凹溝23とで形成したため、二重頭釘2はさらに安定して釘案内路15を走行することとなる。
【0039】
上記した実施例は、蓋体11を遮閉状態とすると、補助案内凹溝23が下側案内凹溝22と対向して双方の溝内が連通する構成であるが、上側案内凹溝21に連通する補助案内凹溝をさらに追加した構成としても良いし、また上側案内凹溝21に対向する補助案内凹溝のみを設けた構成としても良い。さらに、蓋体11に補助案内凹溝23を設けない構成も本発明に含まれるものである。
【0040】
なお、二重頭釘2の先端から下側頭部3bまでの長さは、55mm以下とするのが好適である。かかる構成とすることにより、釘打機1が大型化することを防止できる。また、二重頭釘2の先端から下側頭部3bまでの長さは、45mm以上が好適である。かかる構成とすることにより、下側案内凹溝22の設計が容易となる。
【0041】
次に、上記した二重頭釘対応の釘打機1を用いて構築する壁断熱構造構築方法について、図7〜図11に従って説明する。
【0042】
まず、壁断熱構造29について説明する。
本発明に係る壁断熱構造29は、後述する壁用断熱ユニット30と、壁躯体構造とで構成されている。さらに詳述すると、図7に示すように、壁用断熱ユニット30は、耐力面材31と、該耐力面材31の内外両側にそれぞれ貼着されている内側の断熱材32及び外側の断熱材33とを有している。ここで、この外側の断熱材33は、図8に示すように、耐力面材31と縦横同寸法に設定されている。また、内側の断熱材32は、図9に示すように、壁躯体構造を構成する柱体(柱34、間柱35、横架材36)を嵌合するための切欠き部37A〜37Cを備えている。具体的には、両端(外周)に形成された縦長の切欠き部37Aに、柱34が嵌合する。また、中央(中通)に形成された縦長の切欠き部37Bに、間柱35が嵌合する。さらに、上下両端(外周)に形成された横長の切欠き部37Cに、横架材36が嵌合する。なお、この内側の断熱材32に切欠き部37A〜37Cを設ける位置は、建物の設計図のCADデータに基づいて設定される。すなわち、前記切欠き部37〜37Cは、内側の断熱材32の所定箇所を、建物の設計図のCADデータがインプットされNC制御されたルーターや熱線切断機等の工作機械(図示せず)によって切除し作製する。
【0043】
そして、図11に示すように、前記切欠き部37A〜37Cに壁躯体構造を構成する柱体(柱34、間柱35、横架材36)がそれぞれ嵌合された状態で、当該壁用断熱ユニット30が、二重頭釘2によって該壁躯体構造に固定されている。具体的には、二重頭釘2の先端が前記柱34へ、下側頭部3bが前記耐力面材31の外側表面へ、上側頭部3aが前記外側の断熱材33へそれぞれ達している。なお、上側頭部3aは、断熱材33の外側表面よりも10mm程度食い込んだ深さ位置にある。
【0044】
さらに、図10,11に示すように、前記切欠き部37A〜37Cに嵌合された壁躯体構造を構成する柱体(柱34、間柱35、横架材36)の内側には、内壁材40が固定されている。また、壁用断熱ユニット30の外側には胴縁38が取り付けられており、該胴縁38を介して該壁用断熱ユニット30の外側には外壁材39が固定されている。
【0045】
また、二重頭釘2の打ち込みにより外側の断熱材33にできた貫通孔(図示省略)には、コーキングが充填され、断熱の欠損が低減されている。さらに、この貫通孔の開口部には、防水テープ(図示省略)が貼着されており、十分な防水性が確保されている。
【0046】
また、壁用断熱ユニット30は、耐力面材31の外周において、柱34に対して100mm間隔、耐力面材31の中通において間柱35に対して200mm間隔で二重頭釘2によって固定されており、耐力面材31として機能している。
【0047】
このような壁断熱構造29では、耐力面材31の内外両側に断熱材32,33がそれぞれ貼着され、内側の断熱材32の切欠き部37A,37B,37Cに壁躯体構造を構成する柱体の柱34、間柱35、及び横架材36を嵌合するので、建物の断熱効果を向上させて省エネルギー化を図るために断熱材32,33の厚みを増加させる場合に、断熱材32,33の厚みの増加分を内側の断熱材32と外側の断熱材33とに分けることができ、外側の断熱材33の厚みの増加分を1/2以下に低減することができる。したがって、外側の断熱材33の厚みの増加分を低減させた分だけ建物の壁躯体構造と外壁材39との間隔が大きくなるのを抑えることができるため、該壁躯体構造によって外壁材39を十分に支えることができるとともに、建物の断熱効果を向上させて省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0048】
なお、本実施例では、前記耐力面材31として、例えば合板、火山性ガラス質複層板(商品名:ダイライト(登録商標))、ケイカル板、MDF(中質繊維板)、OSB(オリエンテッドストランドボード)、パーティクルボード、ハードボード等の機械的強度の高い板材が使用される。
【0049】
また、前記断熱材32,33の材料としては、例えばポリスチレン発泡体やポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリウレタン発泡体、フェノールフォーム保温板等のプラスチック発泡体または繊維シート等の断熱性の高い材料が使用される。
【0050】
次に、前記の壁断熱構造29の構築手順を説明する。
まず、図10に示すように、壁用断熱ユニット30と同様の耐力面材31Aの外側に断熱材33Aが貼着された受材47を、建物の柱体である土台48や横架材36の所定位置に、ビスまたは釘(図示省略)で固定する。
【0051】
次に、図11に示すように、壁用断熱ユニット30の内側の断熱材32の切欠き部37A,37B,37Cに柱34、間柱35、横架材36をそれぞれ嵌合して、当該壁用断熱ユニット30を壁躯体構造に仮固定する。なお、仮固定とは、切欠き部37A,37B,37Cに柱34、間柱35、横架材36をそれぞれ嵌合することにより壁用断熱ユニット30自体が壁躯体構造に保持されている状態であって、作業者により、適宜、壁用断熱ユニット30を壁躯体構造から容易に離脱させることができるような状態をいう。
【0052】
そして、壁躯体構造に仮固定された壁用断熱ユニット30の、その外側の断熱材33(ワーク)に向けて、上記した釘打機1を使って二重頭釘2を打ち込む。ここで、二重頭釘2の先端を柱34へ、下側頭部3bを耐力面材31の外側表面へ、上側頭部3aを外側の断熱材33へそれぞれ到達させるように釘打機1の打圧力を調整する。なお、通常は、二重頭釘2の上側頭部3aは、外側の断熱材33の外側表面より10mm程度食い込ませて打ち込む。
【0053】
そしてさらに、仕上げとして、外側の断熱材33にできた貫通孔にコーキングを充填し、貫通孔の開口部を覆うように防水テープを貼着する。
【0054】
このとき、該壁用断熱ユニット30の耐力面材31と外側の断熱材33の下部は該受材47によって支持されているとともに、該壁用断熱ユニット30の内側の断熱材32の下部は横架材36によって支持されている。
【0055】
そして最後に、図11に示すように、該壁用断熱ユニット30の外側に胴縁38を取り付け、該胴縁38を介して該壁用断熱ユニット30の外側に外壁材39を取付け固定して、一連の壁断熱構造29の構築を完了する。
【0056】
このような手順とすることにより、手作業で二重頭釘2を釘打ちすることなく、壁用断熱ユニット30を壁躯体構造に確実に固定して、壁断熱構造29を短時間で構築することができる。これにより、壁断熱構造29の組立てにつき、飛躍的なコスト低減が可能となる。
【0057】
さらに、上記構築方法にあっては、二重頭釘2の上側頭部3aと下側頭部3bとの離間距離を、壁用断熱ユニット30を構成する外側の断熱材33の肉厚とほぼ等しくする構成が好適である。かかる構成とすることにより、上側頭部3aを外側の断熱材33の外側表面へ達する程度の深さで打ち込めば、丁度、下側頭部3bが耐力面材31の外側表面へ達することとなるためである。
【0058】
なお、前記構成にあっては、二重頭釘2の上側頭部3aと下側頭部3bとの離間距離を35mmとし、外側の断熱材33の肉厚を、35mm〜40mmとする構成が好適である。これは、現行の建築基準法に適合するものである。
【0059】
また、図4に示すように、上側頭部3aの頂上面に、六角形の図形からなる識別標識6が付された二重頭釘2を用いる構成としても良い。かかる構成とすることにより、二重頭釘2が外側の断熱材33に打ち込まれて下側頭部3bが視認不能であるときでも、作業者は、外側に露出した上側頭部3aの頂上面の識別標識6を視認して当該釘が二重頭釘2であることを認識することができる。なお、識別標識6は、その他の構成の釘(例えば汎用の一頭釘)と識別できるものであり、頂上面に直接図柄等が印刷されたものであってもよいし、該頂上面を立体的形状に成形加工してなるもので良い。
【0060】
また、二重頭釘2の軸径Dは、2.7mm〜3.3mmとすることが望ましい。かかる構成とすることにより、現行の建築基準法に適合させることができる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態を実施例により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。例えば、本実施例以外、壁用断熱ユニット30を製造する場合には、まず、建物の設計図のCADデータがインプットされた例えばルーター等の切断工作機械によって該内側の断熱材32の所定箇所を切除して、該内側の断熱材32に切欠き部37A〜37Cを形成し、その後、耐力面材31の内外両面にそれぞれ内側の断熱材32と外側の断熱材33を位置決めして貼着しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、二重頭釘を打ち出すことができる釘打機として、また、外壁材を十分に支えることができる強度が確保され、かつ、建物の断熱効果を向上させて省エネルギー化を図ることが可能な壁断熱構造の構築方法として、産業上利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】釘打機1の部分切欠断面図である。
【図2】二重頭釘2からなる釘連結物2Aの側面図である。
【図3】釘巻束20の平面図である。
【図4】識別標識6が付された二重頭釘2の平面図である。
【図5】二重頭釘2を示さない図1のA−A線断面図である。
【図6】二重頭釘2を示した図1のA−A線断面図である。
【図7】壁用断熱ユニット30の平断面図である。
【図8】壁用断熱ユニット30の外面図である。
【図9】壁用断熱ユニット30の内面図である。
【図10】受材47を横架材36に固定した様子を示す説明側断面図である。
【図11】壁用断熱ユニット30を柱34等に固定した様子を示す説明平断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 釘打機
2 二重頭釘
2A 釘連結物
3a 上側頭部
3b 下側頭部
5a,5b 金属製ワイヤ(連結帯)
8 釘マガジン
11 蓋体
13 釘巻束収納部
15 釘案内路
15a 路面
20 釘巻束
21,22 案内凹溝
23 補助案内凹溝
29 壁断熱構造
30 壁用断熱ユニット
31 耐力面材
32 断熱材(内側の断熱材)
33 断熱材(外側の断熱材)
34 柱(柱体)
35 間柱(柱体)
36 横架材(柱体)
37A〜37C 切欠き部
P 釘打圧位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数本の釘が連結帯によって相互連結されてなる釘連結物が巻回されて巻束とされた釘巻束を収納する釘巻束収納部と、該釘巻束収納部から引き出された釘連結物を釘打圧位置まで案内する釘案内路とからなる釘マガジンを備え、該釘案内路に案内されて釘打圧位置に到達した釘を、ワークに向かって順次打圧して該釘を打ち出す釘打機において、
前記釘は、上下二段に配された上側頭部と下側頭部とを有する二重頭釘であって、
前記釘案内路の路面には、互いに平行な二つの案内凹溝が釘の案内方向に沿って配設され、かつ、両案内凹溝は、前記釘マガジンに対して開閉する蓋体によって被覆されると共に、二重頭釘が釘打圧位置まで移送される際には、当該二重頭釘の各頭部が蓋体によって被覆された各案内凹溝内に配置され、各頭部が各案内凹溝に誘導されながらその溝内を走行することを特徴とする釘打機。
【請求項2】
前記蓋体の内周面に、案内凹溝を被覆する遮閉状態で少なくともいずれかの案内凹溝に並行状に対向して互いに溝内が連通する補助案内凹溝が配設され、
二重頭釘が釘打圧位置まで移送される際には、当該案内凹溝を走行する頭部が補助案内凹溝の溝内も走行することを特徴とする請求項1記載の釘打機。
【請求項3】
耐力面材の内外両側に断熱材がそれぞれ貼着され、外側の断熱材は該耐力面材と縦横同寸法に設定され、内側の断熱材の所定箇所には切欠き部が形成されてなる壁用断熱ユニットを、壁躯体構造を構成する柱体を前記切欠き部に嵌合することにより当該壁躯体構造に仮固定し、さらに請求項1又は請求項2記載の釘打機により二重頭釘を、先端が前記柱体へ、下側頭部が前記耐力面材の外側表面へ、上側頭部が前記外側の断熱材へそれぞれ達するように壁用断熱ユニットに対して外側から打ち込んで、壁断熱ユニットを壁躯体構造に固定し、壁断熱ユニットと壁躯体構造とからなる壁断熱構造を構築することを特徴とする壁断熱構造構築方法。
【請求項4】
二重頭釘の上側頭部と下側頭部との離間距離を、壁断熱ユニットを構成する外側の断熱材の肉厚とほぼ等しくすることを特徴とする請求項3記載の壁断熱構造構築方法。
【請求項5】
二重頭釘の上側頭部と下側頭部との離間距離を35mmとし、外側の断熱材の肉厚を、35mm〜40mmとすることを特徴とする請求項4記載の壁断熱構造構築方法。
【請求項6】
上側頭部の頂上面に、下側頭部も有する二重頭釘であることを示す識別標識が付された二重頭釘を用いることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の壁断熱構造構築方法。
【請求項7】
二重頭釘の軸径を、2.7mm〜3.3mmとすることを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の壁断熱構造構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−23063(P2009−23063A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190544(P2007−190544)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000104548)キッコーナ株式会社 (10)
【Fターム(参考)】