説明

鉄筋の接続方法とガス圧接装置

【課題】ガス圧接による鉄筋の接合における酸化膜の影響の発生を少なくし、圧接の品質と信頼性を向上させることができ、しかも、鉄筋の軸方向の縮み量を少なくすることができる鉄筋の接続方法を提供する。
【解決手段】互いに接続せんとする鉄筋aとbを圧接装置1の固定クランプ3と移動クランプ4で同軸芯状の配置に固持し、両鉄筋aとbの互いに対向する接合面を、軸方向の圧力によって圧接させると同時にバーナー14によって加熱し、両鉄筋aとbを圧接させる主加圧時に、少なくとも一方の鉄筋aに相手鉄筋bに対するねじり回転を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリートに埋設する各種鉄筋をガス圧接により互いに接続する接続方法、更に詳しくは、鉄筋の接合面を圧接するとき、圧接状態で鉄筋にねじり回転を与えることで、接続時間の短縮と品質の向上が図れるようにした鉄筋の接続方法とガス圧接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の柱や梁等に埋設する鉄筋を接続する方法として、鉄筋の端部を付き合わせ状に接続するガス圧接法や摩擦圧接法が用いられている。
【0003】
摩擦圧接法は、接続せんとする両鉄筋の端面を突き合せ、両鉄筋に軸方向の圧力を加えながら、一方鉄筋を固定して他方鉄筋を回転させることにより、両鉄筋の突き合わせた端面に摩擦熱で軟化を生じさせ、接合面にアプセット圧力を加えることで接続するものである。
【0004】
しかし、摩擦圧接法は、摩擦熱発生のための加圧手段や回転付与手段に強力なものが必要になり、このため、圧接装置全体が大型化して重量的にも重くなり、現場での鉄筋接続には採用に困難性がある。
【0005】
これに対して、ガス圧接法は、両鉄筋の接合面を突き合わせた部分の外部を燃焼ガスの火炎によって加熱し、突き合わせ部分が軟化すると軸方向の圧力を加えて圧接するものであり、固相接合と同一素材のみでの接合となり、素材を溶かさずに接合できるので接続の信頼性が高く、また、鉄筋の突き合わせ部分が燃焼ガスの加熱で軟化しているので、加圧手段が軽微なものでよく、圧接装置が小型軽量化できるので、現場での鉄筋接続に採用されている。
【0006】
このガス圧接法には、接続せんとする両鉄筋の端面を離して別々に加熱し、端面が適度に軟化したところで両端面を合わせて軸方向に加圧し、軟化金属を継目から押し出して接合するオープンパット法と、接続せんとする両鉄筋の端面を突き合わせた状態で、軸方向に加圧しつつ突き合わせ部分の外周を加熱して圧接するクローズパット法があり、実際の現場接続では後者のクローズパット法が多く用いられている。
【0007】
上記クローズパット法の施工に用いるガス圧接装置は、圧接装置本体に、固定クランプとこの固定クランプに対して進退動する可動クランプを設け、前記圧接装置本体に接続したシリンダで可動クランプを固定クランプ側に移動させる構造になっている。
【0008】
上記クローズパット法の具体的な施工方法は、圧接装置の固定クランプで一方の鉄筋を固持し、可動クランプで他方の鉄筋を固持することにより両鉄筋を同軸芯状に配置し、圧接装置本体に接続したシリンダで可動クランプを一方鉄筋に向けて移動させることで、両鉄筋の接合面を付き合わせて加圧保持し、適当な初期圧力を軸方向に加えながらバーナーの火炎で突合せ部分を一様に加熱し、この加熱を続けながら軸方向の主加圧を施すことにより、圧接部をなだらかな形状に仕上げるものである(例えば特許文献1参照)。
【0009】
ところで、上記したガス圧接法は、両鉄筋の接合面を突き合わせた状態で、軸方向に加圧しつつ突き合わせ部分の外周を加熱して圧接するので、鉄筋の接合端面処理は極めて重要であり、接合前の端面はできるだけ平滑に仕上げないと、接合面に空洞ができて接合力が低下すると共に、圧接前に端面の酸化膜を取り除かないと、接合面間に介在した酸化膜が接合力を低下させる原因になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−214343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、鉄筋の接合端面は、研削を行って酸化膜を除去しても、直ぐに酸化膜の生成が生じるため、接合端面から酸化膜を完全になくすことは困難であり、このため、従来のガス圧接法で接合力の向上を図るには、鉄筋の軸方向の縮み量を多く取ることで圧接部の膨らみ量を大きくしなければならず、時間、ガス燃料等を増大させるという経済的な無駄がある。
【0012】
そこで、この発明の課題は、鉄筋のガス圧接における酸化膜の影響の発生を少なくし、圧接の品質と信頼性を向上させることができ、しかも、鉄筋の軸方向の縮み量を少なくすることができる鉄筋の接続方法とガス圧接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のような課題を解決するため、この発明は、互いに接続せんとする鉄筋を同軸芯状に配置し、両鉄筋の互いに対向する接合面を突き合わせ、加熱と軸方向の圧力によって圧接する鉄筋の接続方法において、前記両鉄筋の接合面圧接時に、少なくとも一方の鉄筋に相手鉄筋に対するねじり回転を加えるようにしたものである。
上記両鉄筋の突き合わせ部分の加熱を、燃焼ガスの火炎によって行うようにすることができる。
【0014】
また、圧接装置本体に、固定クランプとこの固定クランプに対して進退動する可動クランプを設け、前記固定クランプと可動クランプで互いに接続せんとする鉄筋を同軸芯状の配置に固持し、前記圧接装置本体に接続したシリンダで可動クランプを固定クランプ側に移動させることで、両鉄筋の互いに対向する接合面を突き合わせるようにした鉄筋のガス圧接装置において、前記固定クランプと可動クランプの何れか一方を、固持した鉄筋の軸心を中心とする回転が可能となるよう圧接装置本体に取付け、このクランプを回転付与機構で回転させるようにしたものである。
【0015】
ここで、上記回転付与機構は、クランプの外周面に形成したピニオンにラック杆を噛み合わせ、ラック杆をシリンダ等で進退動させることにより、クランプに回転を与えることができる。
上記回転が可能となるクランプが可動クランプであり、前記回転付与機構が、可動クランプの移動によって可動クランプを回転させるように形成されている構造とすることができる。
【0016】
この回転付与機構は、圧接装置本体に枢止した揺動アームと可動クランプを、可動クランプの移動で揺動アームが揺動するようにピン結合し、揺動アームの回動による先端の回動軌跡が鉄筋の軸線に対して上下に変位するのを利用し、上下変位量によってクランプを回転させることになり、この回転により一方の鉄筋に相手鉄筋に対するねじり回転が付与されることになる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によると、鉄筋の圧接による接続時において、少なくとも一方の鉄筋に相手鉄筋に対するねじり回転を加えるようにしたので、鉄筋の接合面に生じた酸化膜が突合せ面のねじり回転によって拡散され、鉄筋の接合面の原子同士を確実に結合させることができ、これによって、接合強度の向上が図れるので、鉄筋接合の品質と信頼度のアップさせることができる。
【0018】
また、接合強度の向上によって、鉄筋の軸方向の縮み量を少なくでき、材料ロスを少なくできて経済的であると同時に、鉄筋の耐疲労強度が向上し、圧接時間の短縮により、作業効率の向上が図れる。
【0019】
更に、クランプの回転駆動源をこのクランプの進退動から得るようにすると、クランプを回転させるためのシリンダのような別の駆動源を用いる必要がなく、圧接装置のコスト上昇を抑えることができ、しかも、圧接装置が大型化しないので、現場での使用が支障なく行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)はこの発明の接続方法に用いるガス圧接装置の第1の実施形態を示す正面図、(b)はこの圧接装置における固定クランプを示す(a)の矢印b−bでの縦断側面図、(c)は同じく(a)の矢印c−cでの縦断側面図、(d)は同じく(a)の矢印d−dでの横断平面図
【図2】この発明の接続方法による鉄筋の接続状態を示す斜視図
【図3】(a)はガス圧接装置の第2の実施形態における移動クランプと第1の例の回転付与機構を示す分解斜視図、(b)は移動クランプにおけるクランプ部材の異なった例を示す斜視図
【図4】移動クランプと第1の例の回転付与機構を示す移動クランプが後退位置にあるときの拡大した正面図
【図5】移動クランプと第1の例の回転付与機構を示す移動クランプが前進動したときの拡大した正面図
【図6】移動クランプと第2の例の回転付与機構を示す移動クランプが後退位置にあるときの拡大した正面図
【図7】移動クランプと第3の例の回転付与機構を示す移動クランプが後退位置にあるときの拡大した正面図
【図8】移動クランプと第4の例の回転付与機構を示す移動クランプが後退位置にあるときの拡大した正面図
【図9】移動クランプと第5の例の回転付与機構を示す移動クランプが後退位置にあるときの拡大した正面図
【図10】移動クランプと第6の例の回転付与機構を示す移動クランプが後退位置にあるときの拡大した正面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0022】
図1(a)乃至(d)は、この発明の接続方法の実施に用いるガス圧接装置1の第1の実施形態を示し、圧接装置本体となる外筒2の一端側外部に一方の鉄筋aを着脱自在に固持する定位置固定クランプ3と、他端側外部に他方の鉄筋bを着脱自在に固持する移動クランプ4と、外筒2の内部に軸方向に移動可能となるよう収納した内筒5とを備え、外筒2の他方端部に油圧シリンダの連結部6が設けられている。
【0023】
上記移動クランプ4は、上面が開放した断面U字状のごとき形状を有し、その内部に納めた他方の鉄筋bを締め付けボルト7により、この移動クランプ4に固定化できるようになっており、この移動クランプ4は、その脚部が外筒の長孔を貫通して上記内筒5に固定化され、外筒2に連結した油圧シリンダで内筒5を押すことにより、移動クランプ4とこれで固持した他方の鉄筋bを固定クランプ3に対して接近動させることができるようになっている。
【0024】
上記固定クランプ3は、図1(b)と(c)のように、外筒2に固定した軸受け部材8で支持することにより、外筒2に対して、軸方向に固定で締め付けボルト9の締め付けによって固持した一方の鉄筋aの軸心を中心に回転可能になり、回転付与機構10によって回転が与えられるようになっている。
【0025】
この固定クランプ3は、図1(b)と(c)のように、外径が円弧で上面が開放した断面U字状のごとき形状を有し、図1(d)で示したように、両端部に外径が一段小径となる取付け部11が設けられている。
【0026】
この固定クランプ3を支持する軸受け部材8は、外筒2に対する固定脚部8aの両端に上面開放のU字状となる立上がり支持部8bを設けて形成され、固定クランプ3の取付け部11を立上がり支持部8bで支持することにより、固定クランプ3は、外筒2の長さ方向に移動不能で回転可能となり、その内部に納めた一方の鉄筋aを軸方向に移動しないよう締め付けボルト9によって固定化できるようになっている。
【0027】
また、固定クランプ3が軸受け部材8から離脱することのないよう、軸受け部材8における立上がり支持部8bの軸心を挟む両側の位置に、固定クランプ3の回転方向に沿う長孔12を設け、この長孔12を貫通するボルト13を固定クランプ3の取付け部11に固定することにより、長孔12の範囲で固定クランプ3を回転可能とすると共に、ボルト13が軸受け部材8から固定クランプ3が離脱しないようにしている。
【0028】
上記回転付与機構10は、図示の例では、固定クランプ3の下部に、外筒2と直角の配置となるラック10aを設け、固定クランプ3の外径面に形成したピニオン10bにこのラック10aを噛み合わせ、図示省略したが、外筒2に固定した油圧シリンダでラック10aを進退動させることにより、固定クランプ3に回転を与えることができる構造になっている。
【0029】
なお、固定クランプ3と移動クランプ4で固持した両鉄筋aとbの接合面を付き合わせた部分の周囲は、別に用意されるバーナー14で燃焼させた可燃ガスの火炎によって加熱することになる。
【0030】
上記のように、この第1の実施形態のガス圧接装置は、鉄筋a、bのガス圧接において、固定クランプ3に固定した鉄筋aが回転可能となり、移動クランプ4に固定した鉄筋bが回転不能になる。
【0031】
次に、上記第1の実施形態のガス圧接装置1を用いたこの発明の鉄筋の接続方法を説明する。
【0032】
互いに接続せんとする鉄筋aとbの付き合わせる接合端部を研削して平滑面に処理し、一方の鉄筋aをガス圧接装置1の固定クランプ3に納めて締め付けボルト9で固定し、また、他方の鉄筋bを移動クランプ4に納めて締め付けボルト7で固定する。
【0033】
上記ガス圧接装置1は、連結部6に連結した油圧シリンダの収縮で固定クランプ3に対して移動クランプ4が離反位置にあり、固定クランプ3と移動クランプ4に固定された鉄筋aとbは、接合面間に適宜隙間のある状態で同軸芯状の配置となる。
【0034】
上記の状態で油圧シリンダを伸長させ、移動クランプ4を固定クランプ3に向けて移動させることにより、両鉄筋aとbの接合面を突き合わせ、軸方向の初期加圧を加えた状態で、バーナー14を両鉄筋aとbの突き合わせ部分の外側を囲むように配置して点火し、燃焼ガスの火炎で両鉄筋aとbの突き合わせ部分を周囲から均等に加熱する。
【0035】
このようにして、両鉄筋aとbの突き合わせ部分が加熱されると、油圧シリンダの押圧力を高め、初期加圧から主加圧に移行していくと、図2のように、両鉄筋aとbの軟化した突き合わせ部分が膨らみ部cとなって拡径する。
【0036】
上記主加圧時に、回転付与機構10を作動させ、固定クランプ3に回転を与えることにより、この固定クランプ3で固持した一方の鉄筋aに、図2に矢印で示したように、軸心を中心として他方鉄筋bに対するねじり回転を加えるようにする。
【0037】
このように、主加圧による圧接状態で、一方の鉄筋aにねじり回転を加えると、突合せ面に生じた酸化膜が突合せ面のねじり回転による摩擦によって拡散され、鉄筋aとbの接合面の同一素材同士を確実に融合させることができ、これによって、両鉄筋aとbの接合強度の向上が図れることになる。
【0038】
主加圧工程が完了すると、バーナー14の消火と撤去を行い、圧接部が冷えるまで時間をおき、この後、油圧シリンダへの油圧の供給を解き、固定クランプ3と移動クランプ4の締め付けボルト7と9を緩め、固定クランプ3と移動クランプ4から接続後の鉄筋を取外せば作業が完了する。
【0039】
上記のように、主加圧工程時に一方の鉄筋aにねじり回転を加えると、突合せ面に生じた酸化膜が拡散することで鉄筋aとbの同一素材同士を確実に融合させることができ、圧接と回転による摩擦の組み合わせにより、接続強度の向上が図れるので、品質と信頼性がアップし、軸方向の縮み量を少なく設定できるので材料ロスの発生を少なくでき、経済性に優れていると共に、圧接工程全体の時間短縮が図れることになる。
【0040】
なお、ガス圧接装置1を用いた接続は、摩擦圧接法に比べて機械がコンパクトになり、現場での接続に適しているという利点があり、また、図示の場合、ガス圧接装置1は、固定クランプ3を回転可能としたが、反対に移動クランプ4を回転可能としたり、固定クランプ3と移動クランプ4を共に回転可能とし、両鉄筋aとbに相対的なねじり回転を同時に与えるようにしてもよい。
【0041】
また、両鉄筋aとbに与える相対的なねじり回転の角度は任意に設定することができ、往復のねじり回転を付与するようにしてもよい。
【0042】
次に、図3乃至図9は、ガス圧接装置の第2の実施形態における異なった幾つかの例を示している。なお、上述した第1の実施形態のガス圧接装置と同一部分には同一符号を付すことによって説明に代える。
【0043】
この第2の実施形態のガス圧接装置1aは、図示省略したが、図1(a)における固定クランプ3を移動クランプ4のように、既存のものと同様の単に一方の鉄筋aを軸方向に移動しないように固定することができる構造のものを用いて外筒2に固定化している。
【0044】
また、移動クランプ4は、外筒2の長さ方向への移動が自在となり、その内部に納めた他方の鉄筋bを軸方向に移動しないよう締め付けボルトによって固定化した状態で、この鉄筋bの軸心を中心に回転可能となり、上記回転付与機構10aが、移動クランプ4の軸方向の移動を利用して、この移動クランプ4に回転を与えるような構造になっている。
【0045】
従って、第2の実施形態のガス圧接装置1aは、鉄筋a、bのガス圧接において、移動クランプ4に固定した鉄筋bが回転可能となり、固定クランプ3に固定した鉄筋aは回転しない。
【0046】
図3(a)のように、上記移動クランプ4は、内筒5に固定脚部21で固定した円筒状のホルダー22と、このホルダー22に対して抜き差し自在となり、ホルダー22で回転可能に保持される一対のクランプ部材23、24からなり、前記ホルダー22は、その上部軸方向の全長が鉄筋bの出し入れができる幅の開口25になっており、また、クランプ部材23、24は、前記ホルダー22の内部に前進方向の前端から軸方向に抜き差し可能に挿入する円筒を二つ割した構造となり、両クランプ部材23、24は、先端外周にホルダー22の前端へ当接することで後方に移動しないようにする大径頭部23a、24aが設けられ、ホルダー22の前進方向の移動時に一体動するようになっており、内周は鉄筋に対して外嵌する内径を有している。
【0047】
上記クランプ部材23、24は、ホルダー22よりも軸方向に長く、クランプ部材23、24の何れか一方(図示では一方クランプ部材23)のホルダー22から突出する両端部に、鉄筋bを固定する締め付けボルト26のねじ孔27が設けられ、他方クランプ部材24の後端でホルダー22から突出する部分に、外方に突出するピン28が突設されている。
【0048】
この移動クランプ4は、ホルダー22内に鉄筋bを通し、ホルダー22に対する前方位置で鉄筋bを挟むように外嵌したクランプ部材23、24を後退動させ、ホルダー22の内部に納めてピン28がホルダー22の側面側に突出する位相で、締め付けボル26をねじ込んで鉄筋bを締め付ければ、移動クランプ4が組み上がって鉄筋bとクランプ部材23、24及びホルダー22が固定化し、ホルダー22に対してクランプ部材23、24と鉄筋bはこの鉄筋bの軸心を中心に回転可能になる。
【0049】
図3(b)は、上記移動クランプ4におけるクランプ部材の異なった例を示し、このクランプ部材123の図3(a)との相違点は、二つ割でなく一体構造であり、先端外周にホルダー22の前端へ当接することで後方に移動しないようにする大径頭部123aが設けられ、その上部軸方向の全長が鉄筋bの出し入れができる幅の開口124になっており、ホルダー22で回転可能に支持することにより、ホルダー22に対して抜き差ししなくても、その内部に鉄筋bを出し入れできるようになっている。
【0050】
図3乃至図5に示す第1の例の回転付与機構10aは、外筒2の外部側面で、後退位置にある移動クランプ4の後端寄りの位置に、揺動アーム29の下端部を支点軸30でこの支点軸30を中心に揺動自在となるよう枢止し、揺動アーム29の先端二又部31を上記ピン28に係合させた構造になっている。
【0051】
上記揺動アーム29は、図4のように、移動クランプ4が後退位置にあるとき、支点軸30とピン28の間で上端が後方に位置する傾斜状態となる長さに設定され、従って、後退位置にある移動クランプ4が前進動すると、ピン28と二又部31の係合により、揺動アーム29の上端が直立方向に引かれ、図5のように、起立動する揺動アーム29はピン28を押し上げることになり、この押上でクランプ部材24を回転させ、鉄筋bにひねり回転を付与することになる。
【0052】
図6に示す第2の例の回転付与機構10aは、図3(a)又は(b)の移動クランプ4において、クランプ部材24の回転角度をより多くなるようにしたものである。なお、移動クランプ4のクランプ部材については、図3(a)の二つ割りの場合を用いて説明する。以降の各例においても同様である。
【0053】
上記回転付与機構10aは、外筒2の外部側面で、後退位置にある移動クランプ4の前端寄りの位置に、L形揺動杆32の屈曲部分を支点軸30で枢止し、このL形揺動杆32の上端部後面をホルダー22の外面に突設したピン33に当接させ、L形揺動杆32の下端に押上アーム34の下端を結合ピン35で、この結合ピン35を支点に揺動自在となるよう枢止結合し、押上アーム34の先端二又部36を上記クランプ部材24のピン28に係合させた構造になっている。
【0054】
後退位置にある移動クランプ4が前進動すると、L形揺動杆32の上端部がピン33で前方に押され、L形揺動杆32は支点軸30を中心に回動して下端が上昇し、押上アーム34が押上げられることで押上アーム34はピン28を押し上げることになり、この押上でクランプ部材24を回転させ、鉄筋bにひねり回転を付与することになり、L形揺動杆32の支点軸30から下端までの長さによる梃子の原理によって押上アーム34の押上量を拡大でき、クランプ部材24の回転角度を大きく設定できる。
【0055】
図7に示す第3の例の回転付与機構10aは、上記図6の回転付与機構10aにおいて、L形揺動杆32の下端と押上アーム34の下端をリンク37を介して枢止結合し、クランプ部材24の回転角度を大きく設定できるようにしたものであり、押上アーム34を確実に押上げることができるようリンク37の姿勢を保つため、L形揺動杆32の下端にはリンク37を受けるストッパー38が設けてある。
【0056】
図8に示す第4の例の回転付与機構10aは、上記図6に示した回転付与機構10aの変形例であり、外筒2の外部側面で、後退位置にある移動クランプ4の前端寄りの位置に、揺動リンク39の途中を支点軸30で枢止し、この揺動リンク39の上端にピン40で枢止連結した揺動アーム41の上端二又部42を上記ホルダー22の外面に突設したピン43に係合させ、揺動リンク39の下端に枢止連結した押上アーム34の先端二又部36を上記クランプ部材24のピン28に係合させた構造になっている。
【0057】
後退位置にある移動クランプ4が前進動すると、揺動アーム41の上端二又部42がホルダー22のピン43で押されて前方に移動し、揺動リンク39の上端が押下げられることで支点軸30を中心に回動して下端が上昇し、押上アーム34が押上げられることで押上アーム34はピン28を押し上げることになり、この押上でクランプ部材24を回転させ、鉄筋bにひねり回転を付与することになる。
【0058】
図9に示す第5の例の回転付与機構10aは、図3(a)又は(b)の移動クランプ4において、外筒2の外部側面で、後退位置にある移動クランプ4の前端寄りの位置に、揺動リンク44の下端を支点軸30で枢止し、揺動リンク44の上端に枢軸45で連結した押上アーム34の先端二又部36を上記クランプ部材24のピン28に係合させ、上記ホルダー22に一体動するようピン46で先端を枢止連結した連杆47の後端と枢軸45を結合したものであり、押上アーム34を確実に押上げることができるよう揺動リンク44の姿勢を保つため、外筒2には揺動リンク44の下縁を受けるストッパー48が設けてある。
【0059】
後退位置にある移動クランプ4が前進動すると、連杆47が揺動リンク44の上端を前方に引くことで揺動リンク44が前方に引き起こされ、これによって押上アーム34が押上げられることで押上アーム34はピン28を押し上げることになり、この押上でクランプ部材24を回転させ、鉄筋bにひねり回転を付与することになる。
【0060】
図10に示す第6の例の回転付与機構10aは、図3(a)又は(b)の移動クランプ4において、先端二又部49を上記クランプ部材24のピン28に係合させた押上アーム50を、ホルダー22に固定した保持部材51で上下動するように保持し、外筒2の外面に押上アーム50の下端が当接する傾斜カム52を固定し、移動クランプ4が前進移動すると、傾斜カム52で押上アーム50が押上げられることで、クランプ部材24を回転させ、鉄筋bにひねり回転を付与するようにしたものである。
【0061】
この図10に示す第6の例の回転付与機構10aにおいては、移動クランプ4の反対側の面に、傾斜カムが図示と反対傾斜となるものを設けると、移動クランプ4の前進位置から後退動するとき、回転したクランプ部材23、24を図10に示す初期の状態に自動的に戻すことができる。
【0062】
上記した各例によって示した第2の実施形態のガス圧接装置1aは、何れの例においても、移動クランプ4と共に鉄筋bを前進させるとき、移動開始と同時にこの鉄筋bに回転を与えることになるが、実質的な回転の付与は、両鉄筋a、bの接合面を当接させた状態から、主加圧工程時の鉄筋aとbに生じる軸方向の縮み量分だけ移動クランプ4が更に前進動することで、主加圧工程時にこの前進量に対応した角度だけ鉄筋bにひねり回転を与えることになる。
【符号の説明】
【0063】
1 ガス圧接装置
1a ガス圧接装置
2 外筒
3 固定クランプ
4 移動クランプ
5 内筒
6 連結部
7 締め付けボルト
8 軸受け部材
9 締め付けボルト
10 回転付与機構
10a 回転付与機構
11 取付け部
12 長孔
13 ボルト
21 固定脚部
22 ホルダー
23 クランプ部材
24 クランプ部材
25 開口
26 締め付けボルト
27 ねじ孔
28 ピン
29 揺動アーム
30 支点軸
31 二又部
32 L形揺動杆
33 ピン
34 押上アーム
35 結合ピン
36 二又部
37 リンク
38 ストッパー
39 揺動リンク
40 ピン
41 揺動アーム
42 二又部
43 ピン
44 揺動リンク
45 枢軸
46 ピン
47 連杆
48 ストッパー
49 二又部
50 押上アーム
51 保持部材
52 傾斜カム
a、b 鉄筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接続せんとする鉄筋を同軸芯状に配置し、両鉄筋の互いに対向する接合面を突き合わせ、加熱と軸方向の圧力によって圧接する鉄筋の接続方法において、
前記両鉄筋の接合面圧接時に、少なくとも一方の鉄筋に相手鉄筋に対するねじり回転を加えることを特徴とする鉄筋の接続方法。
【請求項2】
上記両鉄筋の突き合わせ部分の加熱を、燃焼ガスの火炎によって行うことを特徴とする請求項1に記載の鉄筋の接続方法。
【請求項3】
圧接装置本体に、固定クランプとこの固定クランプに対して進退動する可動クランプを設け、前記固定クランプと可動クランプで互いに接続せんとする鉄筋を同軸芯状の配置に固持し、前記圧接装置本体に接続したシリンダで可動クランプを固定クランプ側に移動させることで、両鉄筋の互いに対向する接合面を突き合わせるようにした鉄筋のガス圧接装置において、
前記固定クランプと可動クランプの何れか一方を、固持した鉄筋の軸心を中心とする回転が可能となるよう圧接装置本体に取付け、このクランプを回転付与機構で回転させるようにしたことを特徴とする鉄筋のガス圧接装置。
【請求項4】
上記回転が可能となるクランプが可動クランプであり、前記回転付与機構が、可動クランプの移動によって可動クランプを回転させるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の鉄筋のガス圧接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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