鉄道工事用仮設道路及び該仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロック
【課題】構築及び撤去作業が容易であるとともに、信頼性の高い鉄道工事用仮設道路を提供すること。
【解決手段】直方体の底面に鉄道レール2を跨ぐ凹溝22を有する形状に形成された熱可塑性樹脂発泡体製の脚部ブロック21Aと、直方体形状の熱可塑性樹脂発泡体製の方形ブロック21B及び/又は上面に勾配面を有する縦断面台形状或いは三角形状の熱可塑性樹脂発泡体製の傾斜ブロック21Cとを少なくとも組み合わせて構築された構造体20と、該構造体20の上面を覆う柔軟性を有する保護板30とからなり、上記構造体20を構成している脚部ブロック21Aの上方には、少なくとも上記方形ブロック21B或いは傾斜ブロック21Cのいずれかが積層されている鉄道工事用仮設道路10とした。
【解決手段】直方体の底面に鉄道レール2を跨ぐ凹溝22を有する形状に形成された熱可塑性樹脂発泡体製の脚部ブロック21Aと、直方体形状の熱可塑性樹脂発泡体製の方形ブロック21B及び/又は上面に勾配面を有する縦断面台形状或いは三角形状の熱可塑性樹脂発泡体製の傾斜ブロック21Cとを少なくとも組み合わせて構築された構造体20と、該構造体20の上面を覆う柔軟性を有する保護板30とからなり、上記構造体20を構成している脚部ブロック21Aの上方には、少なくとも上記方形ブロック21B或いは傾斜ブロック21Cのいずれかが積層されている鉄道工事用仮設道路10とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道工事用仮設道路に関し、特に、その構築及び撤去作業が容易であるとともに、信頼性の高い鉄道工事用仮設道路及び該仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
駅ホーム或いは鉄道の補修・改良工事等は、通常、終電から始発までの短時間に行われる。その際、工事用の重機を駅ホーム等に乗り入れるために、鉄道レール上に仮設道路を構築することが成されている。
【0003】
この鉄道工事用仮設道路は、一般的に古い枕木を積み重ねて構築されることが多いが、枕木は、重い上に、その容積(大きさ)が小さいために多くを積み重ねる必要があり、その構築及び撤去作業は、時間のかかる重労働な作業となっていた。また、単管で足場を組み、その上を材料搬送するケースも有るが、この場合には組立てに時間が掛るとともに、鉄製の単管を使用するために軌道間(レール間)で短絡の危険も有った。また大型クレーンで作業用重機(ユンボ、杭打ち機等)、また資材を吊り上げて搬入する場合も有ったが、この場合には架線への接触やクレーンの大型化によるコスト高の問題が有った。
【0004】
一方、鉄道工事用の仮設道路ではないが、凹凸がある場所であっても仮設道路を構築でき、且つ仮設道路を構築した場所の土壌に影響を与えることがない土のうを用いた仮設道路の構築方法が、特許文献1に開示されている。また、構築や撤去作業の容易性、さらには繰り返し使用できるものとするために、金属製枠体、或いは袋状ネットにより保護された直方体形状の樹脂発泡体ブロックを用いた仮設道路の構築方法が、特許文献2或いは3に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−133406号公報
【特許文献2】特開平6−280210号公報
【特許文献3】特開平7−233501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された土のうを用いた仮設道路の構築方法にあっては、枕木を用いる場合と同様に、土のうの一つ一つは比較的重い上に、多くを積み重ねる必要があることから、やはり該方法によって鉄道工事用の仮設道路を構築する場合には、その構築及び撤去作業は、時間のかかる重労働な作業となる。
【0007】
また、上記特許文献2,3に開示された樹脂発泡体ブロックを用いたものにあっては、その構築及び撤去作業は容易なものとはなるが、該公報に開示された技術にあっては、凹凸のある地盤上への仮設道路の構築は想定されておらず、またスロープ状の仮設道路を構築するものでもないため、凹凸のある鉄道レール上に構築する必要があり、また工事用の重機を駅ホーム等に乗り入れるためにスロープ状とする必要のある鉄道工事用の仮設道路を構築する場合には、該公報に開示された技術を用いても、信頼性の高い仮設道路を構築することはできず、改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上述した背景技術に鑑み成されたものであって、その目的は、構築及び撤去作業が容易であるとともに、信頼性の高い鉄道工事用仮設道路及び該仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明は、次の構成の鉄道工事用仮設道路及び該仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロックとした。
〔1〕 直方体の底面に鉄道レールを跨ぐ凹溝を有する形状に形成された熱可塑性樹脂発泡体製の脚部ブロックと、直方体形状の熱可塑性樹脂発泡体製の方形ブロック及び/又は上面に勾配面を有する縦断面台形状或いは三角形状の熱可塑性樹脂発泡体製の傾斜ブロックとを少なくとも組み合わせて構築された構造体と、該構造体の上面を保護板とからなり、上記構造体を構成している脚部ブロックの上方には、少なくとも上記方形ブロック或いは傾斜ブロックのいずれかが積層されていることを特徴とする、鉄道工事用仮設道路。
〔2〕 上記脚部ブロック、方形ブロック及び傾斜ブロックを構成している熱可塑性樹脂発泡体が、ポリスチレン系樹脂型内発泡粒子成形体、ポリオレフィン系樹脂型内発泡粒子成形体、ポリスチレン系樹脂押出発泡成形体、或いはポリオレフィン系樹脂押出発泡成形体のいずれかであることを特徴とする、上記〔1〕に記載の鉄道工事用仮設道路。
〔3〕 上記脚部ブロック、方形ブロック及び傾斜ブロックの少なくともいずれかが、板状のポリスチレン系樹脂押出発泡成形体を複数枚積層したもの、或いは板状のポリスチレン系樹脂型内発泡粒子成形体を複数枚積層したものであることを特徴とする、上記〔1〕に記載の鉄道工事用仮設道路。
〔4〕 上記保護板が、木質系合板、或いはプラスチック系樹脂板、ゴム系樹脂板であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の鉄道工事用仮設道路。
〔5〕 上記構造体が、スロープ状であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の鉄道工事用仮設道路。
〔6〕 直方体の底面に鉄道レールを跨ぐ凹溝を有する形状に形成された熱可塑性樹脂発泡体製の脚部ブロックと、直方体形状の熱可塑性樹脂発泡体製の方形ブロック及び/又は上面に勾配面を有する縦断面台形状或いは三角形状の熱可塑性樹脂発泡体製の傾斜ブロックとから少なくとも構成されていることを特徴とする、鉄道工事用仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロック。
【発明の効果】
【0010】
上記した本発明に係る鉄道工事用仮設道路及び該仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロックによれば、その構築及び撤去作業が容易であるとともに、キャリーなどの重量重機も自走可能な信頼性の高い鉄道工事用仮設道路を提供することができる。また、本発明の仮設道路を利用することにより、軌道間の短絡の虞のある単管を用いた足場、或いは架線への接触が危惧される大型クレーンによる物資や機材の搬入を行わなくて済み、安全性の高い作業を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る鉄道工事用仮設道路及び該仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロックの実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、鉄道工事用仮設道路の構築現場の一例を示した概念的な斜視図である。この構築現場は、駅ホーム1の両側に鉄道レール2が敷かれている。図において駅ホーム1の奥側には、1本の鉄道レール2aが敷かれ、その奥には看板が設置されたフェンス3が構築されている。また、図において駅ホーム1の手前側には、2本の鉄道レール2b,2cが並行に敷かれ、さらにその手前側には道路4がある。
【0013】
近年、駅ホームでは、バリアフリー化やエスカレーター、エレベーター等の設置工事が増えており、その工事は、通常、終電から始発までの短時間に行われる。その際、工事用の重機を駅ホームに乗り入れるようにすることが、作業効率の観点等から有利である。
そこで、図1に示した現場においても、例えば図2に示したように、手前側の道路4から駅ホーム1に重機を乗り入れるようにするため、鉄道レール2上に仮設道路10を構築することが成される。
【0014】
本発明においては、上記仮設道路10を、熱可塑性樹脂発泡体製のブロックの組み合わせから成る構造体20と、該構造体20の上面を覆う保護板30とから構成する。
【0015】
上記構造体20を構築する熱可塑性樹脂発泡体製のブロック21は、例えば図3に示したように、直方体の底面に鉄道レールを跨ぐ凹溝22を有する形状に形成された脚部ブロック21Aと、直方体形状の方形ブロック21Bと、上面に勾配面を有する縦断面台形状或いは三角形状の傾斜ブロック21Cとが用いられる。
【0016】
上記ブロック21の大きさは、運搬性、作業効率の観点等から、長さ180〜240cm、幅90〜120cm、厚さ40〜60cmに設計されていることが好ましい。また、脚部ブロック21Aに形成された凹溝22の大きさは、幅30〜50cm、高さ15〜25cmに設計されていることが、施工性と強度の兼ね合いから好ましい。なお、傾斜ブロック21Cにおける上記厚さは、勾配面の傾斜方向中心部における厚さをいう。また、脚部ブロック21Aに形成された凹溝22は、現場においてカットされたものであってもよい。
【0017】
また、上記ブロック21は、厚み方向の圧縮強度が100kN/m2 を超えるものであることが好ましく、更には、280kN/m2 以上であることが好ましい。ブロック21の圧縮強度は高いほど良いが、発泡体においては、通常圧縮強度と密度は正の相関関係にあるため、圧縮強度が高いほど重量も大きくなる傾向にある。そのため、ブロック21の厚み方向の圧縮強度の上限は、軽量性及び施工性の観点から、概ね800kN/m2 である。
なお、本明細書において上記圧縮強度は、JIS K 7220(1999)に従った圧縮試験に基づく変形10%時の圧縮応力である。
【0018】
上記ブロック21を構成する熱可塑性樹脂発泡体の基材樹脂としては、例えば、ポリスチレン,耐衝撃性ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンサクシネート,ポリエチレンテレフタレート,ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェノール系樹脂などを挙げることができるが、中でも、軽量性、耐水性、耐久性等の特性並びにコストの観点から、ポリスチレン系樹脂を使用することが好ましく、また、じん性、耐油性等の観点から、ポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。
【0019】
上記基材樹脂を用いて形成される発泡体には、型内発泡粒子成形体や押出発泡成形体等があるが、本発明のブロック21としては、周知の発泡体のいずれも使用することができる。具体的には、ポリスチレン系樹脂型内発泡粒子成形体、ポリオレフィン系樹脂型内発泡粒子成形体、ポリスチレン系樹脂押出発泡成形体、或いはポリオレフィン系樹脂押出発泡成形体が好ましく使用することができる。
なお、型内発泡粒子成形体とは、予備発泡させた発泡粒子を型内に充填し、蒸気加熱等により型内成形したものを言う。一方、押出発泡成形体とは、押出機中にて加熱溶融させた樹脂に発泡剤を含有させ、該組成物を低温・低圧域に押し出すことにより発泡成形したものを言う。
【0020】
但し、上記脚部ブロック21A、方形ブロック21B及び傾斜ブロック21Cの少なくともいずれかのブロック21が、板状のポリスチレン系樹脂押出発泡成形体を複数枚積層したもの、或いは板状のポリスチレン系樹脂型内発泡粒子成形体を複数枚積層したものであることはより好ましい。これは、複数枚の発泡板を積層することにより形成したブロック21は、上方からの荷重を層間のずれ等により吸収及び分散させることができたり、積層面が強度向上に寄与したりして、より強度的に優れたものとなるために好ましく、特にポリスチレン系樹脂押出発泡成形体を複数枚積層させたものにあっては、圧縮強度と曲げ強度とのバランスに優れるものとなるために特に好ましい。なお、発泡板を複数枚積層する方法としては、各発泡板同士を接着剤、熱などにより接着する方法、各発泡板を接着することなく単に積層して外周にバンドを回し束ねる方法などが挙げられる。図3の実施の形態では、脚部ブロック21A1、方形ブロック21B1、縦断面三角形状の傾斜ブロック21C1を一体成形品とし、脚部ブロック21A2、方形ブロック21B2, 21B3、縦断面台形状の傾斜ブロック21C2を発泡板の積層品とした。
【0021】
本発明に係る仮設道路10は、上記脚部ブロック21Aと、方形ブロック21B及び/又は傾斜ブロック21Cとを、少なくとも組み合わせて先ず構造体20が構築される。
この構造体20の構築手順の一例を、図4〜図6に従って説明する。
【0022】
先ず、図4に示したように、脚部ブロック21Aを、該脚部ブロック21Aに形成された凹溝22に鉄道レール2が入り込むように配置するとともに、駅ホーム1と鉄道レール2との間、また鉄道レール2と鉄道レール2との間の隙間に方形ブロック21Bを配置する。なお、各ブロック21の下面及び/又は上面をニクロム線カット機などを使用してカットすることにより、ブロック配置時の不陸の調整をすることができる。続いて、その上方及び手前側(図4において左側)に、図5に示したように、方形ブロック21Bを、駅ホーム1から道路4方向に傾斜したスロープが形成されるように、即ち、駅ホーム1側には高くなるように多数段(実施の形態では脚部ブロック21Aを含めて3段)配置し、道路4側は低くなるように1段若しくは0段配置する。続いて、その更に上方及び手前側(図5において左側)に、図6に示したように、傾斜ブロック21Cを、凹凸のないスロープとなるように適宜配置する。
【0023】
上記のようにして構築された構造体20において重要な事柄は、該構造体20を構成している脚部ブロック21Aの上方には、少なくとも方形ブロック21B或いは傾斜ブロック21Cのいずれかが積層されている(実施の形態においては、図6に示されているように、最も駅ホーム1側に位置する脚部ブロック21Aの上方には、2層の方形ブロック21Bと、1層の傾斜ブロック21Cとが積層され、最も道路4側に位置する脚部ブロック21Aの上方には、1層の傾斜ブロック21Cが積層されている)ことである。これによって、凹溝22の存在により上方からの荷重によって破壊の虞が高い脚部ブロック21Aを、その上方に積層されたブロックによって効果的に保護し、その破壊を防止することができる。また、構造体20の安定性の観点、更には荷重分散をより効果的に行わせる観点から、ブロック21の積層は、千鳥配置(左右ブロックの突き合わせ部が、上下方向で一致しない配置)となるように行うことが好ましい。
【0024】
上記構築された構造体20の上面には、本発明においては、保護板30が敷き並べられる。
【0025】
上記保護板30としては、建設現場等において下地養生や地盤確保に使用される周知の木質系合板、或いはプラスチック系樹脂板、ゴム系樹脂板などが挙げられ、中でも柔軟性があり、工事現場において多用されている木質系合板が特に好適に用いられる。木質系合板の中でも、JAS(日本農林規格)に規定された構造用合板が特に好ましく用いられ、具体的にはJAS1級適合の構造用合板等が挙げられる。また、プラスチック系樹脂板としては、具体的に京葉興業株式会社製の樹脂製敷き板『ダイコク板』(登録商標)などを使用することができる。また、保護板30の厚みは、強度と柔軟性(撓み性)との兼ね合いから、9〜18mmのものが好ましく、保護板30の長さ、幅の寸法は、運搬性、作業効率の観点等から、長さ100〜200cm、幅40〜100cmのものが好ましい。
【0026】
図7は、上記の作業により構築された仮設道路10の断面形状を示したものである。
この仮設道路10においては、鉄道レール2による凹凸は、凹溝22を有する脚部ブロック21Aにより解消され、その上方及び手前側(図7において左側)に積層された方形ブロック21B及び/又は傾斜ブロック21Cとの組合せにより、駅ホーム1から道路4方向になだらかに傾斜するスロープ状の構造体20が構築され、その構造体20の上面に、木質系合板などの保護板30が敷き並べられたものとなる。かかる仮設道路10の構築作業は、その主作業が軽量な熱可塑性樹脂発泡体製のブロック21の積み重ね作業となるため、容易に且つ短時間で行うことができる。
【0027】
上記構築した仮設道路10を利用し、建設資材を積んだ車両等の重機が、道路4から駅ホーム1に乗り入れることができる。この際、重機の通過にともなう荷重は、脚部ブロック21Aの上方に積層された方形ブロック21B及び/又は傾斜ブロック21Cの変形による荷重の吸収及び分散作用、さらに上面に敷き並べられた保護板30が柔軟性を有するものの場合は該保護板の変形による荷重の吸収及び分散作用等により、凹溝22の存在により破壊の虞が最も高い脚部ブロック21Aには直接的には伝わらず、その破壊が効果的に防止されるため、信頼性の高い仮設道路となる。
【0028】
上記のようにして構築され、重機の乗り入れに使用された仮設道路10は、始発の運行前には撤去されることとなる。この仮設道路10の撤去作業は、構築した手順とは逆の手順、すなわち、まず保護板30を取り去り、次いで、上方から積み重ねられたブロック21を取り去っていけばよく、構築作業と同様に、その撤去作業は容易に且つ短時間で行うことができるものとなる。また、撤去した後、特別な作業をすることなく、仮設道路構築部分をもとの状態に復元することができる。そして、解体したブロック21は、近くの保管場所に移送し積み上げて保管され、後日、また再使用されることとなる。
【0029】
以上、本発明に係る鉄道工事用仮設道路10及び該仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロック20の実施の形態を説明したが、本発明は、何ら既述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、種々の変形及び変更が可能であることは当然である。
例えば、上記実施の形態では、道路4から駅ホーム1に重機を乗り入れるようにするため、スロープ状の仮設道路10を構築した場合で説明したが、鉄道レールを挟んで並行に形成された駅ホーム同士を連結する、上面が水平な仮設道路においても本発明は適用できるものである。かかる構成の仮設道路の実施の形態を、図8〜図11に示すが、上記した実施の形態と同一の物或いは部材には同一符号を付した。図8は、仮設道路50の構築現場を示した図であり、該現場は、2本の鉄道レール2b,2cを挟んで駅ホーム1A,1Bが並行に形成されている。仮設道路50は、図9に示したように、この駅ホーム1A,1B同士を連結するように形成されており、上記実施の形態と同様に、熱可塑性樹脂発泡体製のブロックの組み合わせから成る構造体20と、該構造体20の上面を覆う保護板30とから構成されている。構造体20は、図10に示したように、脚部ブロック21Aの上方に方形ブロック21Bを一層積層することにより構築されている。また、図11に示したように、脚部ブロック21A上に厚さの薄い方形ブロック21B3を一層積層し、更にその上方に方形ブロック21Bを一層積層することにより構築されている。このようにして形成された上面が水平な仮設道路50は、やはりその構築及び撤去作業が容易であるとともに、キャリーなどの重量重機も自走可能な信頼性の高い鉄道工事用仮設道路となる。
【試験例】
【0030】
以下、本発明を見出した試験例を記載する。
【0031】
〔使用材料及び機器〕
−ブロック−
・脚部ブロック
ポリスチレン樹脂押出発泡成形体(密度29kg/m3,圧縮強度340kN/m2,厚さ100mm)を1枚、外寸法:330×330×100mm、凹溝:高さ40mm,幅180mm。
・方形ブロック
ポリスチレン樹脂押出発泡成形体(密度29kg/m3,圧縮強度340kN/m2,厚さ100mm)を1枚、外寸法:330×330×100mm。
−保護板−
・木質系合板
JAS(日本農林規格)1級適合の構造用合板、外寸法:330×330×4mm。
・金属板
鉄製、外寸法:330×330×9mm。
−試験機−
・圧縮試験機
(株)島津製作所社製:G−5000B
・集中荷重付加治具
木製、加圧面:100×100mm。
【0032】
〔試験例〕
−試験例1−
上記脚部ブロック上に、上記方形ブロックを載置し、更にその上方に上記木質系合板を載置した状態で、上記圧縮試験機により、図12に示したように中央に集中荷重を掛け、約30%歪みまで圧縮変形させた。
−試験例2−
上記脚部ブロック上に、上記方形ブロックを載置し、更にその上方に上記木質系合板を載置した状態で、上記圧縮試験機により、図13に示したように端部に集中荷重を掛け、約30%歪みまで圧縮変形させた。
−試験例3−
上記脚部ブロック上に、上記方形ブロックを載置し、更にその上方に上記金属板を載置した状態で、上記圧縮試験機により、図13に示したように端部に集中荷重を掛け、約30%歪みまで圧縮変形させた。
−試験例4−
上記脚部ブロック上に、上記木質系合板を載置した状態で、上記圧縮試験機により、図14に示したように中央に集中荷重を掛け、約20%歪みまで圧縮変形させた。
【0033】
〔試験結果〕
−試験例1−
約30%歪みまで圧縮変形させたが、脚部ブロックに亀裂や破損は発生しなかった。
−試験例2−
集中荷重を掛けた端部付近のみが凹み、上面全体が傾斜面となることはなかった。また、脚部ブロックの凹溝に亀裂や破損は発生しなかった。
−試験例3−
上面全体が傾斜面となった。
−試験例4−
約20%歪みで、脚部ブロックの凹溝を形成している脚部の根元に大きな亀裂が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】鉄道工事用仮設道路の構築現場の一例を概念的に示した斜視図である。
【図2】図1の構築現場に本発明に係る鉄道工事用仮設道路を構築した一例を概念的に示した斜視図である。
【図3】本発明に係る鉄道工事用仮設道路の構築に使用するブロックを示した斜視図であって、(a)は脚部ブロックの例を示した斜視図、(b)は方形ブロックの例を示した斜視図、(c)は傾斜ブロックの例を示した斜視図である。
【図4】本発明に係る鉄道工事用仮設道路の構築作業途中を示した概念的な側面図である。
【図5】本発明に係る鉄道工事用仮設道路の構築作業途中を示した概念的な側面図である。
【図6】本発明に係る鉄道工事用仮設道路の構築作業途中を示した概念的な側面図である。
【図7】本発明に係る鉄道工事用仮設道路の一例を概念的に示した側面図である。
【図8】鉄道工事用仮設道路の構築現場の他の例を概念的に示した斜視図である。
【図9】図8の構築現場に本発明に係る鉄道工事用仮設道路を構築した他の例を概念的に示した斜視図である。
【図10】本発明に係る鉄道工事用仮設道路の他の例を概念的に示した側面図である。
【図11】本発明に係る鉄道工事用仮設道路の更に他の例を概念的に示した側面図である。
【図12】試験例1の荷重の掛け方を概念的に示した図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図13】試験例2及び3の荷重の掛け方を概念的に示した図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図14】試験例4の荷重の掛け方を概念的に示した図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
【0035】
1,1A,1B 駅ホーム
2,2a,2b,2c 鉄道レール
3 フェンス
4 道路
10,50 仮設道路
20 構造体
21 ブロック
21A,21A1,21A2 脚部ブロック
21B,21B1,21B2,21B3 方形ブロック
21C,21C1,21C2 傾斜ブロック
22 凹溝
30 保護板
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道工事用仮設道路に関し、特に、その構築及び撤去作業が容易であるとともに、信頼性の高い鉄道工事用仮設道路及び該仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
駅ホーム或いは鉄道の補修・改良工事等は、通常、終電から始発までの短時間に行われる。その際、工事用の重機を駅ホーム等に乗り入れるために、鉄道レール上に仮設道路を構築することが成されている。
【0003】
この鉄道工事用仮設道路は、一般的に古い枕木を積み重ねて構築されることが多いが、枕木は、重い上に、その容積(大きさ)が小さいために多くを積み重ねる必要があり、その構築及び撤去作業は、時間のかかる重労働な作業となっていた。また、単管で足場を組み、その上を材料搬送するケースも有るが、この場合には組立てに時間が掛るとともに、鉄製の単管を使用するために軌道間(レール間)で短絡の危険も有った。また大型クレーンで作業用重機(ユンボ、杭打ち機等)、また資材を吊り上げて搬入する場合も有ったが、この場合には架線への接触やクレーンの大型化によるコスト高の問題が有った。
【0004】
一方、鉄道工事用の仮設道路ではないが、凹凸がある場所であっても仮設道路を構築でき、且つ仮設道路を構築した場所の土壌に影響を与えることがない土のうを用いた仮設道路の構築方法が、特許文献1に開示されている。また、構築や撤去作業の容易性、さらには繰り返し使用できるものとするために、金属製枠体、或いは袋状ネットにより保護された直方体形状の樹脂発泡体ブロックを用いた仮設道路の構築方法が、特許文献2或いは3に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−133406号公報
【特許文献2】特開平6−280210号公報
【特許文献3】特開平7−233501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された土のうを用いた仮設道路の構築方法にあっては、枕木を用いる場合と同様に、土のうの一つ一つは比較的重い上に、多くを積み重ねる必要があることから、やはり該方法によって鉄道工事用の仮設道路を構築する場合には、その構築及び撤去作業は、時間のかかる重労働な作業となる。
【0007】
また、上記特許文献2,3に開示された樹脂発泡体ブロックを用いたものにあっては、その構築及び撤去作業は容易なものとはなるが、該公報に開示された技術にあっては、凹凸のある地盤上への仮設道路の構築は想定されておらず、またスロープ状の仮設道路を構築するものでもないため、凹凸のある鉄道レール上に構築する必要があり、また工事用の重機を駅ホーム等に乗り入れるためにスロープ状とする必要のある鉄道工事用の仮設道路を構築する場合には、該公報に開示された技術を用いても、信頼性の高い仮設道路を構築することはできず、改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上述した背景技術に鑑み成されたものであって、その目的は、構築及び撤去作業が容易であるとともに、信頼性の高い鉄道工事用仮設道路及び該仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明は、次の構成の鉄道工事用仮設道路及び該仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロックとした。
〔1〕 直方体の底面に鉄道レールを跨ぐ凹溝を有する形状に形成された熱可塑性樹脂発泡体製の脚部ブロックと、直方体形状の熱可塑性樹脂発泡体製の方形ブロック及び/又は上面に勾配面を有する縦断面台形状或いは三角形状の熱可塑性樹脂発泡体製の傾斜ブロックとを少なくとも組み合わせて構築された構造体と、該構造体の上面を保護板とからなり、上記構造体を構成している脚部ブロックの上方には、少なくとも上記方形ブロック或いは傾斜ブロックのいずれかが積層されていることを特徴とする、鉄道工事用仮設道路。
〔2〕 上記脚部ブロック、方形ブロック及び傾斜ブロックを構成している熱可塑性樹脂発泡体が、ポリスチレン系樹脂型内発泡粒子成形体、ポリオレフィン系樹脂型内発泡粒子成形体、ポリスチレン系樹脂押出発泡成形体、或いはポリオレフィン系樹脂押出発泡成形体のいずれかであることを特徴とする、上記〔1〕に記載の鉄道工事用仮設道路。
〔3〕 上記脚部ブロック、方形ブロック及び傾斜ブロックの少なくともいずれかが、板状のポリスチレン系樹脂押出発泡成形体を複数枚積層したもの、或いは板状のポリスチレン系樹脂型内発泡粒子成形体を複数枚積層したものであることを特徴とする、上記〔1〕に記載の鉄道工事用仮設道路。
〔4〕 上記保護板が、木質系合板、或いはプラスチック系樹脂板、ゴム系樹脂板であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の鉄道工事用仮設道路。
〔5〕 上記構造体が、スロープ状であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の鉄道工事用仮設道路。
〔6〕 直方体の底面に鉄道レールを跨ぐ凹溝を有する形状に形成された熱可塑性樹脂発泡体製の脚部ブロックと、直方体形状の熱可塑性樹脂発泡体製の方形ブロック及び/又は上面に勾配面を有する縦断面台形状或いは三角形状の熱可塑性樹脂発泡体製の傾斜ブロックとから少なくとも構成されていることを特徴とする、鉄道工事用仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロック。
【発明の効果】
【0010】
上記した本発明に係る鉄道工事用仮設道路及び該仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロックによれば、その構築及び撤去作業が容易であるとともに、キャリーなどの重量重機も自走可能な信頼性の高い鉄道工事用仮設道路を提供することができる。また、本発明の仮設道路を利用することにより、軌道間の短絡の虞のある単管を用いた足場、或いは架線への接触が危惧される大型クレーンによる物資や機材の搬入を行わなくて済み、安全性の高い作業を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る鉄道工事用仮設道路及び該仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロックの実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、鉄道工事用仮設道路の構築現場の一例を示した概念的な斜視図である。この構築現場は、駅ホーム1の両側に鉄道レール2が敷かれている。図において駅ホーム1の奥側には、1本の鉄道レール2aが敷かれ、その奥には看板が設置されたフェンス3が構築されている。また、図において駅ホーム1の手前側には、2本の鉄道レール2b,2cが並行に敷かれ、さらにその手前側には道路4がある。
【0013】
近年、駅ホームでは、バリアフリー化やエスカレーター、エレベーター等の設置工事が増えており、その工事は、通常、終電から始発までの短時間に行われる。その際、工事用の重機を駅ホームに乗り入れるようにすることが、作業効率の観点等から有利である。
そこで、図1に示した現場においても、例えば図2に示したように、手前側の道路4から駅ホーム1に重機を乗り入れるようにするため、鉄道レール2上に仮設道路10を構築することが成される。
【0014】
本発明においては、上記仮設道路10を、熱可塑性樹脂発泡体製のブロックの組み合わせから成る構造体20と、該構造体20の上面を覆う保護板30とから構成する。
【0015】
上記構造体20を構築する熱可塑性樹脂発泡体製のブロック21は、例えば図3に示したように、直方体の底面に鉄道レールを跨ぐ凹溝22を有する形状に形成された脚部ブロック21Aと、直方体形状の方形ブロック21Bと、上面に勾配面を有する縦断面台形状或いは三角形状の傾斜ブロック21Cとが用いられる。
【0016】
上記ブロック21の大きさは、運搬性、作業効率の観点等から、長さ180〜240cm、幅90〜120cm、厚さ40〜60cmに設計されていることが好ましい。また、脚部ブロック21Aに形成された凹溝22の大きさは、幅30〜50cm、高さ15〜25cmに設計されていることが、施工性と強度の兼ね合いから好ましい。なお、傾斜ブロック21Cにおける上記厚さは、勾配面の傾斜方向中心部における厚さをいう。また、脚部ブロック21Aに形成された凹溝22は、現場においてカットされたものであってもよい。
【0017】
また、上記ブロック21は、厚み方向の圧縮強度が100kN/m2 を超えるものであることが好ましく、更には、280kN/m2 以上であることが好ましい。ブロック21の圧縮強度は高いほど良いが、発泡体においては、通常圧縮強度と密度は正の相関関係にあるため、圧縮強度が高いほど重量も大きくなる傾向にある。そのため、ブロック21の厚み方向の圧縮強度の上限は、軽量性及び施工性の観点から、概ね800kN/m2 である。
なお、本明細書において上記圧縮強度は、JIS K 7220(1999)に従った圧縮試験に基づく変形10%時の圧縮応力である。
【0018】
上記ブロック21を構成する熱可塑性樹脂発泡体の基材樹脂としては、例えば、ポリスチレン,耐衝撃性ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンサクシネート,ポリエチレンテレフタレート,ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェノール系樹脂などを挙げることができるが、中でも、軽量性、耐水性、耐久性等の特性並びにコストの観点から、ポリスチレン系樹脂を使用することが好ましく、また、じん性、耐油性等の観点から、ポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。
【0019】
上記基材樹脂を用いて形成される発泡体には、型内発泡粒子成形体や押出発泡成形体等があるが、本発明のブロック21としては、周知の発泡体のいずれも使用することができる。具体的には、ポリスチレン系樹脂型内発泡粒子成形体、ポリオレフィン系樹脂型内発泡粒子成形体、ポリスチレン系樹脂押出発泡成形体、或いはポリオレフィン系樹脂押出発泡成形体が好ましく使用することができる。
なお、型内発泡粒子成形体とは、予備発泡させた発泡粒子を型内に充填し、蒸気加熱等により型内成形したものを言う。一方、押出発泡成形体とは、押出機中にて加熱溶融させた樹脂に発泡剤を含有させ、該組成物を低温・低圧域に押し出すことにより発泡成形したものを言う。
【0020】
但し、上記脚部ブロック21A、方形ブロック21B及び傾斜ブロック21Cの少なくともいずれかのブロック21が、板状のポリスチレン系樹脂押出発泡成形体を複数枚積層したもの、或いは板状のポリスチレン系樹脂型内発泡粒子成形体を複数枚積層したものであることはより好ましい。これは、複数枚の発泡板を積層することにより形成したブロック21は、上方からの荷重を層間のずれ等により吸収及び分散させることができたり、積層面が強度向上に寄与したりして、より強度的に優れたものとなるために好ましく、特にポリスチレン系樹脂押出発泡成形体を複数枚積層させたものにあっては、圧縮強度と曲げ強度とのバランスに優れるものとなるために特に好ましい。なお、発泡板を複数枚積層する方法としては、各発泡板同士を接着剤、熱などにより接着する方法、各発泡板を接着することなく単に積層して外周にバンドを回し束ねる方法などが挙げられる。図3の実施の形態では、脚部ブロック21A1、方形ブロック21B1、縦断面三角形状の傾斜ブロック21C1を一体成形品とし、脚部ブロック21A2、方形ブロック21B2, 21B3、縦断面台形状の傾斜ブロック21C2を発泡板の積層品とした。
【0021】
本発明に係る仮設道路10は、上記脚部ブロック21Aと、方形ブロック21B及び/又は傾斜ブロック21Cとを、少なくとも組み合わせて先ず構造体20が構築される。
この構造体20の構築手順の一例を、図4〜図6に従って説明する。
【0022】
先ず、図4に示したように、脚部ブロック21Aを、該脚部ブロック21Aに形成された凹溝22に鉄道レール2が入り込むように配置するとともに、駅ホーム1と鉄道レール2との間、また鉄道レール2と鉄道レール2との間の隙間に方形ブロック21Bを配置する。なお、各ブロック21の下面及び/又は上面をニクロム線カット機などを使用してカットすることにより、ブロック配置時の不陸の調整をすることができる。続いて、その上方及び手前側(図4において左側)に、図5に示したように、方形ブロック21Bを、駅ホーム1から道路4方向に傾斜したスロープが形成されるように、即ち、駅ホーム1側には高くなるように多数段(実施の形態では脚部ブロック21Aを含めて3段)配置し、道路4側は低くなるように1段若しくは0段配置する。続いて、その更に上方及び手前側(図5において左側)に、図6に示したように、傾斜ブロック21Cを、凹凸のないスロープとなるように適宜配置する。
【0023】
上記のようにして構築された構造体20において重要な事柄は、該構造体20を構成している脚部ブロック21Aの上方には、少なくとも方形ブロック21B或いは傾斜ブロック21Cのいずれかが積層されている(実施の形態においては、図6に示されているように、最も駅ホーム1側に位置する脚部ブロック21Aの上方には、2層の方形ブロック21Bと、1層の傾斜ブロック21Cとが積層され、最も道路4側に位置する脚部ブロック21Aの上方には、1層の傾斜ブロック21Cが積層されている)ことである。これによって、凹溝22の存在により上方からの荷重によって破壊の虞が高い脚部ブロック21Aを、その上方に積層されたブロックによって効果的に保護し、その破壊を防止することができる。また、構造体20の安定性の観点、更には荷重分散をより効果的に行わせる観点から、ブロック21の積層は、千鳥配置(左右ブロックの突き合わせ部が、上下方向で一致しない配置)となるように行うことが好ましい。
【0024】
上記構築された構造体20の上面には、本発明においては、保護板30が敷き並べられる。
【0025】
上記保護板30としては、建設現場等において下地養生や地盤確保に使用される周知の木質系合板、或いはプラスチック系樹脂板、ゴム系樹脂板などが挙げられ、中でも柔軟性があり、工事現場において多用されている木質系合板が特に好適に用いられる。木質系合板の中でも、JAS(日本農林規格)に規定された構造用合板が特に好ましく用いられ、具体的にはJAS1級適合の構造用合板等が挙げられる。また、プラスチック系樹脂板としては、具体的に京葉興業株式会社製の樹脂製敷き板『ダイコク板』(登録商標)などを使用することができる。また、保護板30の厚みは、強度と柔軟性(撓み性)との兼ね合いから、9〜18mmのものが好ましく、保護板30の長さ、幅の寸法は、運搬性、作業効率の観点等から、長さ100〜200cm、幅40〜100cmのものが好ましい。
【0026】
図7は、上記の作業により構築された仮設道路10の断面形状を示したものである。
この仮設道路10においては、鉄道レール2による凹凸は、凹溝22を有する脚部ブロック21Aにより解消され、その上方及び手前側(図7において左側)に積層された方形ブロック21B及び/又は傾斜ブロック21Cとの組合せにより、駅ホーム1から道路4方向になだらかに傾斜するスロープ状の構造体20が構築され、その構造体20の上面に、木質系合板などの保護板30が敷き並べられたものとなる。かかる仮設道路10の構築作業は、その主作業が軽量な熱可塑性樹脂発泡体製のブロック21の積み重ね作業となるため、容易に且つ短時間で行うことができる。
【0027】
上記構築した仮設道路10を利用し、建設資材を積んだ車両等の重機が、道路4から駅ホーム1に乗り入れることができる。この際、重機の通過にともなう荷重は、脚部ブロック21Aの上方に積層された方形ブロック21B及び/又は傾斜ブロック21Cの変形による荷重の吸収及び分散作用、さらに上面に敷き並べられた保護板30が柔軟性を有するものの場合は該保護板の変形による荷重の吸収及び分散作用等により、凹溝22の存在により破壊の虞が最も高い脚部ブロック21Aには直接的には伝わらず、その破壊が効果的に防止されるため、信頼性の高い仮設道路となる。
【0028】
上記のようにして構築され、重機の乗り入れに使用された仮設道路10は、始発の運行前には撤去されることとなる。この仮設道路10の撤去作業は、構築した手順とは逆の手順、すなわち、まず保護板30を取り去り、次いで、上方から積み重ねられたブロック21を取り去っていけばよく、構築作業と同様に、その撤去作業は容易に且つ短時間で行うことができるものとなる。また、撤去した後、特別な作業をすることなく、仮設道路構築部分をもとの状態に復元することができる。そして、解体したブロック21は、近くの保管場所に移送し積み上げて保管され、後日、また再使用されることとなる。
【0029】
以上、本発明に係る鉄道工事用仮設道路10及び該仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロック20の実施の形態を説明したが、本発明は、何ら既述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、種々の変形及び変更が可能であることは当然である。
例えば、上記実施の形態では、道路4から駅ホーム1に重機を乗り入れるようにするため、スロープ状の仮設道路10を構築した場合で説明したが、鉄道レールを挟んで並行に形成された駅ホーム同士を連結する、上面が水平な仮設道路においても本発明は適用できるものである。かかる構成の仮設道路の実施の形態を、図8〜図11に示すが、上記した実施の形態と同一の物或いは部材には同一符号を付した。図8は、仮設道路50の構築現場を示した図であり、該現場は、2本の鉄道レール2b,2cを挟んで駅ホーム1A,1Bが並行に形成されている。仮設道路50は、図9に示したように、この駅ホーム1A,1B同士を連結するように形成されており、上記実施の形態と同様に、熱可塑性樹脂発泡体製のブロックの組み合わせから成る構造体20と、該構造体20の上面を覆う保護板30とから構成されている。構造体20は、図10に示したように、脚部ブロック21Aの上方に方形ブロック21Bを一層積層することにより構築されている。また、図11に示したように、脚部ブロック21A上に厚さの薄い方形ブロック21B3を一層積層し、更にその上方に方形ブロック21Bを一層積層することにより構築されている。このようにして形成された上面が水平な仮設道路50は、やはりその構築及び撤去作業が容易であるとともに、キャリーなどの重量重機も自走可能な信頼性の高い鉄道工事用仮設道路となる。
【試験例】
【0030】
以下、本発明を見出した試験例を記載する。
【0031】
〔使用材料及び機器〕
−ブロック−
・脚部ブロック
ポリスチレン樹脂押出発泡成形体(密度29kg/m3,圧縮強度340kN/m2,厚さ100mm)を1枚、外寸法:330×330×100mm、凹溝:高さ40mm,幅180mm。
・方形ブロック
ポリスチレン樹脂押出発泡成形体(密度29kg/m3,圧縮強度340kN/m2,厚さ100mm)を1枚、外寸法:330×330×100mm。
−保護板−
・木質系合板
JAS(日本農林規格)1級適合の構造用合板、外寸法:330×330×4mm。
・金属板
鉄製、外寸法:330×330×9mm。
−試験機−
・圧縮試験機
(株)島津製作所社製:G−5000B
・集中荷重付加治具
木製、加圧面:100×100mm。
【0032】
〔試験例〕
−試験例1−
上記脚部ブロック上に、上記方形ブロックを載置し、更にその上方に上記木質系合板を載置した状態で、上記圧縮試験機により、図12に示したように中央に集中荷重を掛け、約30%歪みまで圧縮変形させた。
−試験例2−
上記脚部ブロック上に、上記方形ブロックを載置し、更にその上方に上記木質系合板を載置した状態で、上記圧縮試験機により、図13に示したように端部に集中荷重を掛け、約30%歪みまで圧縮変形させた。
−試験例3−
上記脚部ブロック上に、上記方形ブロックを載置し、更にその上方に上記金属板を載置した状態で、上記圧縮試験機により、図13に示したように端部に集中荷重を掛け、約30%歪みまで圧縮変形させた。
−試験例4−
上記脚部ブロック上に、上記木質系合板を載置した状態で、上記圧縮試験機により、図14に示したように中央に集中荷重を掛け、約20%歪みまで圧縮変形させた。
【0033】
〔試験結果〕
−試験例1−
約30%歪みまで圧縮変形させたが、脚部ブロックに亀裂や破損は発生しなかった。
−試験例2−
集中荷重を掛けた端部付近のみが凹み、上面全体が傾斜面となることはなかった。また、脚部ブロックの凹溝に亀裂や破損は発生しなかった。
−試験例3−
上面全体が傾斜面となった。
−試験例4−
約20%歪みで、脚部ブロックの凹溝を形成している脚部の根元に大きな亀裂が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】鉄道工事用仮設道路の構築現場の一例を概念的に示した斜視図である。
【図2】図1の構築現場に本発明に係る鉄道工事用仮設道路を構築した一例を概念的に示した斜視図である。
【図3】本発明に係る鉄道工事用仮設道路の構築に使用するブロックを示した斜視図であって、(a)は脚部ブロックの例を示した斜視図、(b)は方形ブロックの例を示した斜視図、(c)は傾斜ブロックの例を示した斜視図である。
【図4】本発明に係る鉄道工事用仮設道路の構築作業途中を示した概念的な側面図である。
【図5】本発明に係る鉄道工事用仮設道路の構築作業途中を示した概念的な側面図である。
【図6】本発明に係る鉄道工事用仮設道路の構築作業途中を示した概念的な側面図である。
【図7】本発明に係る鉄道工事用仮設道路の一例を概念的に示した側面図である。
【図8】鉄道工事用仮設道路の構築現場の他の例を概念的に示した斜視図である。
【図9】図8の構築現場に本発明に係る鉄道工事用仮設道路を構築した他の例を概念的に示した斜視図である。
【図10】本発明に係る鉄道工事用仮設道路の他の例を概念的に示した側面図である。
【図11】本発明に係る鉄道工事用仮設道路の更に他の例を概念的に示した側面図である。
【図12】試験例1の荷重の掛け方を概念的に示した図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図13】試験例2及び3の荷重の掛け方を概念的に示した図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図14】試験例4の荷重の掛け方を概念的に示した図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
【0035】
1,1A,1B 駅ホーム
2,2a,2b,2c 鉄道レール
3 フェンス
4 道路
10,50 仮設道路
20 構造体
21 ブロック
21A,21A1,21A2 脚部ブロック
21B,21B1,21B2,21B3 方形ブロック
21C,21C1,21C2 傾斜ブロック
22 凹溝
30 保護板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体の底面に鉄道レールを跨ぐ凹溝を有する形状に形成された熱可塑性樹脂発泡体製の脚部ブロックと、直方体形状の熱可塑性樹脂発泡体製の方形ブロック及び/又は上面に勾配面を有する縦断面台形状或いは三角形状の熱可塑性樹脂発泡体製の傾斜ブロックとを少なくとも組み合わせて構築された構造体と、該構造体の上面を覆う保護板とからなり、上記構造体を構成している脚部ブロックの上方には、少なくとも上記方形ブロック或いは傾斜ブロックのいずれかが積層されていることを特徴とする、鉄道工事用仮設道路。
【請求項2】
上記脚部ブロック、方形ブロック及び傾斜ブロックを構成している熱可塑性樹脂発泡体が、ポリスチレン系樹脂型内発泡粒子成形体、ポリオレフィン系樹脂型内発泡粒子成形体、ポリスチレン系樹脂押出発泡成形体、或いはポリオレフィン系樹脂押出発泡成形体のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の鉄道工事用仮設道路。
【請求項3】
上記脚部ブロック、方形ブロック及び傾斜ブロックの少なくともいずれかが、板状のポリスチレン系樹脂押出発泡成形体を複数枚積層したもの、或いは板状のポリスチレン系樹脂型内発泡粒子成形体を複数枚積層したものであることを特徴とする、請求項1に記載の鉄道工事用仮設道路。
【請求項4】
上記保護板が、木質系合板、或いはプラスチック系樹脂板、ゴム系樹脂板であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の鉄道工事用仮設道路。
【請求項5】
上記構造体が、スロープ状であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の鉄道工事用仮設道路。
【請求項6】
直方体の底面に鉄道レールを跨ぐ凹溝を有する形状に形成された熱可塑性樹脂発泡体製の脚部ブロックと、直方体形状の熱可塑性樹脂発泡体製の方形ブロック及び/又は上面に勾配面を有する縦断面台形状或いは三角形状の熱可塑性樹脂発泡体製の傾斜ブロックとから少なくとも構成されていることを特徴とする、鉄道工事用仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロック。
【請求項1】
直方体の底面に鉄道レールを跨ぐ凹溝を有する形状に形成された熱可塑性樹脂発泡体製の脚部ブロックと、直方体形状の熱可塑性樹脂発泡体製の方形ブロック及び/又は上面に勾配面を有する縦断面台形状或いは三角形状の熱可塑性樹脂発泡体製の傾斜ブロックとを少なくとも組み合わせて構築された構造体と、該構造体の上面を覆う保護板とからなり、上記構造体を構成している脚部ブロックの上方には、少なくとも上記方形ブロック或いは傾斜ブロックのいずれかが積層されていることを特徴とする、鉄道工事用仮設道路。
【請求項2】
上記脚部ブロック、方形ブロック及び傾斜ブロックを構成している熱可塑性樹脂発泡体が、ポリスチレン系樹脂型内発泡粒子成形体、ポリオレフィン系樹脂型内発泡粒子成形体、ポリスチレン系樹脂押出発泡成形体、或いはポリオレフィン系樹脂押出発泡成形体のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の鉄道工事用仮設道路。
【請求項3】
上記脚部ブロック、方形ブロック及び傾斜ブロックの少なくともいずれかが、板状のポリスチレン系樹脂押出発泡成形体を複数枚積層したもの、或いは板状のポリスチレン系樹脂型内発泡粒子成形体を複数枚積層したものであることを特徴とする、請求項1に記載の鉄道工事用仮設道路。
【請求項4】
上記保護板が、木質系合板、或いはプラスチック系樹脂板、ゴム系樹脂板であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の鉄道工事用仮設道路。
【請求項5】
上記構造体が、スロープ状であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の鉄道工事用仮設道路。
【請求項6】
直方体の底面に鉄道レールを跨ぐ凹溝を有する形状に形成された熱可塑性樹脂発泡体製の脚部ブロックと、直方体形状の熱可塑性樹脂発泡体製の方形ブロック及び/又は上面に勾配面を有する縦断面台形状或いは三角形状の熱可塑性樹脂発泡体製の傾斜ブロックとから少なくとも構成されていることを特徴とする、鉄道工事用仮設道路形成用の熱可塑性樹脂発泡体製組合せブロック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−97180(P2009−97180A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267807(P2007−267807)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【出願人】(390007607)大鉄工業株式会社 (11)
【出願人】(391041844)押谷産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【出願人】(390007607)大鉄工業株式会社 (11)
【出願人】(391041844)押谷産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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