説明

鉄道用警報発生システム

【課題】実際に接触等のおそれがある場合に、携帯受信機から警報を発する。
【解決手段】車載用送受信装置3や線路閉鎖装置4から警報指令を受信することで、携帯受信機5で警報を発する鉄道用警報発生システムにおいて、携帯受信機5に、特定の車載用送受信装置3や線路閉鎖装置4を登録する表示操作部と、警報指令を受信した際にその送信元の装置3、4が予め登録された特定の装置3、4か否かを判定し、特定の装置3、4の場合に警報を発する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、新幹線などの鉄道線路の作業区間において、保守用車両が接近した場合に警報を発する鉄道用警報発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路で作業する際には、地上側の作業区間に線路閉鎖装置を配置し、保守用車両に車載装置を搭載し、車載装置からの信号・電波を受信することで、線路閉鎖装置から警報音を鳴動させている。このとき、保守用車両の走行方向や速度、保守用車両と線路閉鎖装置との距離などに応じて、警報を鳴動させるようにした警報発生方式が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この警報発生方式は、車両において、車両の位置、速度、進行方向と路線情報とから自己状態情報を設定し、この自己状態情報を線路閉鎖装置に向けて送信するとともに、線路閉鎖装置から状態情報を受信する。同様に、線路閉鎖装置において、線路閉鎖装置の設置位置と路線情報とから自己状態情報を設定し、この自己状態情報を車両に向けて送信するとともに、車両から状態情報を受信する。そして、車両および線路閉鎖装置において、自己状態情報と受信した状態情報とに基づいて、接近警報条件を判定することで、衝突のおそれがある場合に誤りなく、かつ確実に接近警報を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−347946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、鉄道線路で作業する場合、作業者は、警報音が鳴動する携帯受信機を携帯している。しかしながら、この携帯受信機は、自機の位置情報を取得する機能を有さないため、車載装置から信号を受信すると、無条件に警報音が鳴動してしまう。すなわち、接触のおそれがない十分遠方に車両が位置する場合や、車両が作業区間を通り過ぎて遠ざかっている場合、さらには、作業区間(作業対象)の路線とは異なる路線を車両が走行している場合であっても、警報音が鳴動してしまう。このため、作業者に対して不要な注意を喚起したり、作業を中断させたりして、作業者に負担を与える場合があった。また、頻繁に警報音が鳴動してしまうため、実際に接触等のおそれがある状態にあっても、作業者への注意喚起が損なわれるおそれがあった。
【0006】
そこでこの発明は、実際に接触等のおそれがある場合に、携帯受信機から警報を発することが可能な鉄道用警報発生システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、鉄道線路側に配置された線路閉鎖装置と、人が携帯する携帯受信機とを備え、前記携帯受信機が前記線路閉鎖装置から警報指令を受信して警報を発する鉄道用警報発生システムにおいて、前記携帯受信機に、特定の線路閉鎖装置を登録する登録手段と、前記警報指令を受信した際にその線路閉鎖装置が前記登録手段で登録された特定の線路閉鎖装置か否かを判定し、特定の線路閉鎖装置の場合に前記警報を発する判定手段と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、登録手段によって、特定の線路閉鎖装置を携帯受信機に登録することで、線路閉鎖装置と携帯受信機とがグループ化される。そして、携帯受信機で警報指令を受信した際に判定手段によって、グループ化された線路閉鎖装置から送信されたものか否かが判定され、グループ化された線路閉鎖装置からの警報指令の場合には、警報が発せられる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鉄道用警報発生システムにおいて、車両に搭載された車載装置に、車両の位置や速度などを検出するセンサ手段と、車両の路線情報を提供する車両用データベースとを備え、前記センサ手段の検出結果と前記車両用データベースの路線情報とから車両状態情報を設定し、この車両状態情報を前記線路閉鎖装置に送信し、前記線路閉鎖装置は、受信した前記車両状態情報に基づいて警報の要否を判定し、警報を要する場合に前記警報指令を前記携帯受信機に送信する、ことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、車載装置において、車両の位置や速度などと車両の路線情報とから車両状態情報が設定され、この車両状態情報が線路閉鎖装置に送信される。そして線路閉鎖装置において、受信した車両状態情報に基づいて警報の要否が判定され、警報を要する場合に、携帯受信機に警報指令が送信される。
【0011】
請求項3に記載の発明は、車両に搭載された車載装置と、鉄道線路側に配置された線路閉鎖装置と、人が携帯する携帯受信機とを備え、前記車載装置および線路閉鎖装置の少なくとも一方を送信元装置とし、前記携帯受信機が前記送信元装置から警報指令を受信して警報を発する鉄道用警報発生システムにおいて、前記携帯受信機に、特定の送信元装置を登録する登録手段と、前記警報指令を受信した際にその送信元装置が前記登録手段で登録された特定の送信元装置か否かを判定し、特定の送信元装置の場合に前記警報を発する判定手段と、を備える、ことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、登録手段によって、特定の車載装置(車両)や線路閉鎖装置を携帯受信機に登録することで、車載装置や線路閉鎖装置と携帯受信機とがグループ化される。そして、携帯受信機で警報指令を受信した際に判定手段によって、グループ化された車載装置や線路閉鎖装置から送信されたものか否かが判定され、グループ化された線路閉鎖装置などからの警報指令の場合には、警報が発せられる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1および3に記載の発明によれば、グループ化された線路閉鎖装置や車載装置(車両)からの警報指令を受信した場合にのみ、携帯受信機で警報が発せられる。すなわち、作業区間の路線に対応する車両や線路閉鎖装置をグループ化して登録することで、作業区間の路線を走行する車両などから警報指令を受信した場合、つまり、実際に接触等のおそれがある場合に、警報が発せられる。一方、作業区間とは異なる路線を走行する車両などから警報指令を受信しても、携帯受信機で警報を発することがない。このため、作業者に対して不要な注意を喚起したり、作業を中断させたりすることがなく、作業者への負担が軽減されるとともに、実際に接触等のおそれがある場合に警報を発するため、作業者に適正に(効果的に)注意喚起することが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、車両の位置や速度などによる車両状態情報に基づいて、警報を要する場合に携帯受信機に警報指令が送信されるため、より実際に接触等のおそれがある場合に、携帯受信機から警報を発することが可能となる。すなわち、車両の位置や速度などによって警報の要否が判定されるため、接触等のおそれがない十分遠方に車両が位置する場合や、車両が作業区間を通り過ぎて遠ざかっている場合などには、警報指令が送信されず、携帯受信機で警報を発することがない。このため、作業者への負担がより軽減されるとともに、作業者により適正に注意喚起することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態に係る鉄道用警報発生システムを示す概略構成図である。
【図2】図1のシステムの車載用送受信装置の構成ブロック図である。
【図3】図1のシステムの線路閉鎖装置の構成ブロック図である。
【図4】図1のシステムの携帯受信機の構成ブロック図である。
【図5】図1のシステムにおける無線通信データ例を示す図である。
【図6】図1のシステムにおけるグループ化手順を示すフローチャートである。
【図7】図1のシステムにおける線路閉鎖装置の処理、動作を示すブロック図である。
【図8】図1のシステムにおける他のグループ化手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
図1は、この発明の実施の形態に係る鉄道用警報発生システム1を示す概略構成図である。この鉄道用警報発生システム1は、新幹線などの鉄道線路の作業区間Wにおいて、保守用車両2が接近した場合に警報を発するシステムであり、車両2に搭載された車載用送受信装置(車載装置)3と、作業区間Wの端部に配置された線路閉鎖装置4と、作業者(人)Mが携帯する携帯受信機5とを備えている。なお、鉄道線路には、キロ程を示すサインポストである地上子が、所定距離間隔で配置されている。
【0018】
車載用送受信装置3は、図2に示すように、車載用送受信機31と、GPSアンテナ32と、無線機アンテナ装置33と、地点センサ(センサ手段)34と、速度センサ(センサ手段)35とを備えている。
【0019】
車載用送受信機31のGPS受信機311は、GPSアンテナ32で受信したGPS信号を受けて、GPS信号から生成したPPS(Pulse Per Second)信号を基準信号として制御部312に伝送するとともに、必要に応じて他の位置信号などを制御部312に伝送する。なお、このPPS信号は1秒ごとに得られるため、基準信号を例えば2秒ごとに与える必要がある場合には、GPSデータから同時に得られる時刻データを利用して奇数秒ごと,あるいは偶数秒ごとにPPS信号を得るようにする。また、表示操作部313は、テンキーやLED表示器などを備え、入力された操作に基づく操作信号を制御部312に伝送するものである。
【0020】
業務用無線機314は、無線機アンテナ装置33を介して、車載用送受信機31からのデータを外部に送信するとともに、外部の他の車載用送受信装置3や線路閉鎖装置4からデータを受信し、制御部312に伝送するものである。ここで、無線機アンテナ装置33は、主として、アンテナ331と、アンテナ共用器332と、フィルタ333とから構成されている。また、業務用無線機314にはスピーカ315が接続され、業務用無線機314から警報信号を伝送することで、スピーカ315から警報音が発せられる。
【0021】
制御部312は、鉄道線路の各路線、路線毎の上り下り別の地上子のキロ程などの路線情報を記憶した車両用データベース316を有しており、この車両用データベース316から車両2の状況が抽出されて利用される。すなわち、表示操作部313からの操作信号や、後述するような地点センサ34や速度センサ35などの検出信号と、車両用データベース316のデータとに基づいて、自車両2の走行している路線や、位置、速度、方向などのデータ(車両状態情報)を生成する。また、制御部312は、業務用無線機314を介して、外部の他の車載用送受信装置3や線路閉鎖装置4との送受信によって、時分割多重通信に必要な通信処理を行う。さらに、他の車両2や線路閉鎖装置4と接近した場合に、スピーカ315から警報音を発するための指令信号や、ブレーキを作動させて車両2を停止させるための指令信号が、制御部312から出力される。
【0022】
地点センサ34は、車両2の線路上の地点を地上子からの信号に基づいて検出し、制御部312に伝送するものであり、速度センサ35は、車両2の車輪の回転に伴う検出パルスを検出して、制御部312に伝送するものである。
【0023】
線路閉鎖装置(線路閉鎖用送受信装置)4は、線路の特定区間を区切って、車両2の進入を禁止するためのものであり、図3に示すように、線路閉鎖用送受信機41と、GPSアンテナ42と、無線機アンテナ43とを備えている。
【0024】
線路閉鎖用送受信機41のGPS受信機411は、GPSアンテナ42で受信したGPS信号を受けて、GPS時刻信号から生成したPPS信号を基準信号として制御部412に伝送するとともに、必要に応じて他の位置信号などを制御部412に伝送する。また、表示操作部413は、テンキーやLED表示器などを備え、入力された操作に基づく操作信号を制御部412に伝送するものである。
【0025】
業務用無線機414は、無線機アンテナ43を介して、この線路閉鎖用送受信機41からのデータを外部に送信するとともに、外部の車載用送受信装置3や線路閉鎖装置4からデータを受信し、制御部412に伝送する。また、業務用無線機414にはスピーカ415が接続され、業務用無線機414から警報信号を伝送することで、スピーカ415から警報音が発せられる。
【0026】
制御部412は、表示操作部413から入力された路線情報やキロ程情報などの操作信号に基づいて、線路閉鎖装置4が設置されている路線や、位置などのデータを生成する。また、制御部412は、業務用無線機414を介して、外部の車載用送受信装置3や他の線路閉鎖装置4との送受信によって、時分割多重通信に必要な通信処理を行う。さらに、車両2と接近した場合に、業務用無線機414に対して、スピーカ415から警報音を発するための指令信号を出力する。
【0027】
携帯受信機5は、図4に示すように、携帯アンテナ51と携帯受信部52とを備え、送信機能はなく、所定の受信エリアにおいて、車載用送受信装置3や線路閉鎖装置4からの電波(警報指令)を受信する機能のみを有している。そして、後述するように、例えば車載用送受信装置3から電波を受信することで、スピーカ53から警報音を発して、車両2が接近したことを作業者Mに注意喚起するものである。また、表示操作部(登録手段)54とメモリ55とを備え、後述するグループ化により、特定の車載用送受信装置3や線路閉鎖装置4のID(識別情報)が、メモリ55に登録・記憶されるようになっている。
【0028】
制御部(判定手段)56は、車載用送受信装置3や線路閉鎖装置4の送信元装置から電波・制御データを受信した際に、その送信元装置が特定の送信元装置か否かを判定する。すなわち、送信元装置から受信したIDと、メモリ55に記憶されているIDとが一致するか否かを判定し、特定の送信元装置からの受信の場合に、警報音を発する指令信号をスピーカ53に出力するものである。このように、グループ化された特定の車載用送受信装置3や線路閉鎖装置4から、電波を受信した場合にのみ、警報音を発するようになっている。ここで、受信する制御データは、後述する警報指令信号(接近警報)に限らず、作業区間Wを通過した場合の情報や、車両2の速度情報なども含まれる。
【0029】
さらに、この実施の形態では、グループ化された特定の線路閉鎖装置4から電波を受信した場合に、警報音を発することを基本とするが、バックアップ機能も備えている。すなわち、線路閉鎖装置4の故障などにより線路閉鎖装置4から所定時間電波を受信しない場合には、グループ化された特定の車載用送受信装置3から電波を受信することで、警報音を発するようになっている。
【0030】
図5は、車載用送受信装置3や線路閉鎖装置4から、ある通信スロットS(i)を使用して送信される無線通信データ例を示し、通信データとして、システムID、基地ID、路線ID、車両IDのほか、位置情報、速度情報、方向情報および通信ステータスが送信される。ここで、通信ステータスは、その時点で受信できている通信スロット番号と、自己が送信する通信スロット番号とを表している。また、このような無線通信データは、時分割多重通信方式によって送受信され、通信サイクル間隔を2秒間とする。そして、分割された車両用の通信スロットに対して、その空き状況に応じて車両2が空きスロットを取得し、線路閉鎖装置用の通信スロットに対しては、線路閉鎖装置4の設置時に通信スロットが割り当てられるようになっている。
【0031】
このような構成の車載用送受信装置3と線路閉鎖装置4と携帯受信機5に対して、次のようにしてグループ化が可能となっている。ここで、線路閉鎖装置4と携帯受信機5とを同一グループ化する場合を例にして説明する。
【0032】
まず、図6に示すように、各線路閉鎖装置4において電源をオンして(ステップS1)、作業情報設定のモードに入り(ステップS2)、グループ化を設定する場合(ステップS3で「する」の場合)には、表示操作部413を操作して自装置4のIDを送信する(ステップS4)。一方、各携帯受信機5において電源をオンすると(ステップS11)、表示操作部54に設定済みのIDが表示され(ステップS12)、グループ化を設定する場合(ステップS13で「する」の場合)には、ステップS4で送信された各線路閉鎖装置4のIDを受信する(ステップS14)。
【0033】
続いて、受信したIDが表示操作部54に表示され(ステップS15)、同一グループ・親機とする線路閉鎖装置4のIDを表示操作部54で選択して(ステップS16)、その選択を決定すると(ステップS17で「する」の場合)、そのIDがメモリ55に記憶され、表示操作部54に運用画面が表示される(ステップS18)。一方、線路閉鎖装置4において、自装置4のID送信後にグループ化を終了する場合(ステップS5で「する」の場合)には、表示操作部413に運用画面が表示される(ステップS6)ものである。
【0034】
このようなグループ化は、ひとつの線路閉鎖装置4に対して複数の携帯受信機5を同一グループとすることが可能であり、また、同一グループとする線路閉鎖装置4は、単一であってもよいし、複数であってもよい。すなわち、携帯受信機5が、ひとつの線路閉鎖装置4からの電波のみによって警報を発するようにしてもよいし、複数の線路閉鎖装置4からの電波によって警報を発するようにしてもよい。また、このようにしてグループ化したことや、親機として設定した線路閉鎖装置4などのIDは、携帯受信機5の表示操作部54などで確認できるようになっている。
【0035】
次に、線路閉鎖装置4から携帯受信機5に対して、警報指令などの電波を送信する処理、動作について、図7に示す動作ブロックに基づいて説明する。
【0036】
自己状態生成手段441は、表示操作部413からの操作信号に基づいて、線路閉鎖装置4が設置されている路線や位置などの自己状態情報を検出・生成する。そして、この自己状態情報を自己の通信スロットを用いて、外部の他の車両2等に向けて送信する。また、自己の位置情報を距離計算手段442に供給するとともに、自己の位置情報と路線ID等を警報条件判定手段443に供給する。
【0037】
データ受信手段444は、車載用送受信装置3からの車両状態情報を受信する。この車両状態情報は、通信サイクル毎に取得され、各車両2の位置、速度、進行方向、路線ID等のデータが含まれている。そして、受信した車両2毎の車両状態情報に対して、位置情報を距離計算手段442に供給し、速度、進行方向、路線ID等を警報条件判定手段443に供給する。
【0038】
距離計算手段442は、自己状態生成手段441からの自己位置情報と、データ受信手段444からの車両2の位置情報とから、自装置4と車両2との距離を計算し、警報条件判定手段443に距離情報を供給する。
【0039】
警報条件判定手段443は、自己状態生成手段441からの自己位置情報と、データ受信手段444からの車両2の速度、進行方向、路線IDと、距離計算手段442からの車両間距離に基づいて、警報の要否を判定し、警報を要する場合に警報オン指令を警報出力手段445に供給する。
【0040】
ここで、警報の要否判定は、車両間距離や車両2の速度、進行方向などのほか、路線の区別や、上り線・下り線の区別などをも利用して行われる。また、車両2毎の速度に対応したブレーキ制動距離など、停止に必要となる条件を考慮して判定される。なお、上り線、下り線で別々の周波数を使用した時分割多重通信方式で通信する場合には、上り線・下り線の区別は判定条件から除外される。
【0041】
また、警報オン指令を供給した後に、警報を要する状態が解除された場合には、警報オフ指令を警報出力手段445に供給する。ここで、警報の解除判定も、上記の警報判定と同様に、車両間距離や車両2の速度、進行方向などに基づいて行われる。
【0042】
警報出力手段445は、警報条件判定手段443からの警報オン指令を受けて、携帯受信機5に対して警報指令信号を送信し、同様に、警報条件判定手段443からの警報オフ指令を受けて、携帯受信機5に対して警報停止信号を送信する。このとき、自装置4のIDを含めて信号を送信する。
【0043】
このような構成の鉄道用警報発生システム1では、まず、作業区間Wの路線を走行する車両2や作業区間Wに配置された線路閉鎖装置4と、作業区間Wで作業を行う作業者Mの携帯受信機5とを、上記のようにしてグループ化する。そして、作業中に車両2が作業区間Wに接近し、上記のようにして警報を要すると判定されると、線路閉鎖装置4において警報音が鳴動するとともに、送信元装置として線路閉鎖装置4から携帯受信機5に対して警報指令信号が送信される。これにより、警報指令信号を送信した線路閉鎖装置4と同一グループの携帯受信機5では、警報指令信号を受けて警報音と警報表示を発し、同一グループでない携帯受信機5では、警報指令信号を受けても警報音などを発しない。
【0044】
その後、車両2が作業区間Wを通過して遠ざかった場合には、上記のようにして警報を要する状態が解除されたと判定され、線路閉鎖装置4での警報音が停止するとともに、線路閉鎖装置4から携帯受信機5に対して警報停止信号が送信される。そして、警報停止信号を送信した線路閉鎖装置4と同一グループの携帯受信機5では、警報停止信号を受けて警報音などを停止する。
【0045】
一方、線路閉鎖装置4の故障などが生じ、線路閉鎖装置4からの電波が携帯受信機5で受信されない場合には、携帯受信機5で警報音が発せられ、これにより作業者Mは、通信異常が生じたことを認識することが可能となる。さらに、このような状態で、送信元装置として同一グループの車載用送受信装置3から電波を受信した場合には、上記のようにして携帯受信機5で警報音などが発せられる。このように、通信異常が生じた場合でも、警報が発せられ、安全性が確保される。
【0046】
以上のように、この鉄道用警報発生システム1によれば、作業者Mの作業区間Wに関連するグループ化された線路閉鎖装置4や車載用送受信装置3から電波を受信した場合、つまり、実際に接触等のおそれがある場合に、作業者Mの携帯受信機5で警報が発せられる。一方、作業者Mの作業区間Wとは異なる路線を走行する車両2の車載用送受信装置3などから電波を受信しても、携帯受信機5で警報を発することがない。このため、作業者Mに対して不要な注意を喚起したり、作業を中断させたりすることがなく、作業者Mへの負担が軽減されるとともに、実際に接触等のおそれがある場合に警報を発するため、作業者Mに適正に(効果的に)注意喚起することが可能となり、安全性が向上する。
【0047】
しかも、車両2の位置、速度、進行方向などによって警報の要否が判定されるため、接触等のおそれがない十分遠方に車両2が位置する場合や、車両2が作業区間Wを通り過ぎて遠ざかっている場合などには、携帯受信機5で警報音などを発することがない。このため、作業者Mへの負担がより軽減されるとともに、作業者Mにより適正に注意喚起することが可能となる。
【0048】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、線路閉鎖装置4に警報の要否を判定する機能を備えているが、車載用送受信装置3にも同機能を備え、上記のバックアップ時などに、警報を要する場合にのみ警報指令信号を送信するようにしてもよい。
【0049】
また、線路閉鎖装置4と携帯受信機5とを同一グループ化する場合について説明したが、車載用送受信装置3と携帯受信機5とを同一グループ化することなども可能であり、この場合、携帯受信機5におけるグループ化を、図8に示すようにして行う。
【0050】
すなわち、携帯受信機5において電源をオンすると(ステップS21)、表示操作部54に設定済みのIDが表示され(ステップS22)、グループ化を設定する場合(ステップS23で「する」の場合)には、親機のIDを設定する(ステップS24)。つまり、同一グループ化する車載用送受信装置3や線路閉鎖装置4のIDを入力する。そして、その設定IDを決定すると(ステップS25で「する」の場合)、そのIDがメモリ55に記憶され、表示操作部54に運用画面が表示される(ステップS26)。このようにして、携帯受信機5を車載用送受信装置3および線路閉鎖装置4の双方に対して、グループ化することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 鉄道用警報発生システム
2 保守用車両
3 車載用送受信装置(車載装置)
34 地点センサ(センサ手段)
35 速度センサ(センサ手段)
316 車両用データベース
4 線路閉鎖用送受信装置(線路閉鎖装置)
5 携帯受信機
54 表示操作部(登録手段)
56 制御部(判定手段)
M 作業者(人)
W 作業区間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道線路側に配置された線路閉鎖装置と、人が携帯する携帯受信機とを備え、前記携帯受信機が前記線路閉鎖装置から警報指令を受信して警報を発する鉄道用警報発生システムにおいて、
前記携帯受信機に、
特定の線路閉鎖装置を登録する登録手段と、
前記警報指令を受信した際にその線路閉鎖装置が前記登録手段で登録された特定の線路閉鎖装置か否かを判定し、特定の線路閉鎖装置の場合に前記警報を発する判定手段と、
を備える、ことを特徴とする鉄道用警報発生システム。
【請求項2】
車両に搭載された車載装置に、車両の位置や速度などを検出するセンサ手段と、車両の路線情報を提供する車両用データベースとを備え、前記センサ手段の検出結果と前記車両用データベースの路線情報とから車両状態情報を設定し、この車両状態情報を前記線路閉鎖装置に送信し、
前記線路閉鎖装置は、受信した前記車両状態情報に基づいて警報の要否を判定し、警報を要する場合に前記警報指令を前記携帯受信機に送信する、ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道用警報発生システム。
【請求項3】
車両に搭載された車載装置と、鉄道線路側に配置された線路閉鎖装置と、人が携帯する携帯受信機とを備え、前記車載装置および線路閉鎖装置の少なくとも一方を送信元装置とし、前記携帯受信機が前記送信元装置から警報指令を受信して警報を発する鉄道用警報発生システムにおいて、
前記携帯受信機に、
特定の送信元装置を登録する登録手段と、
前記警報指令を受信した際にその送信元装置が前記登録手段で登録された特定の送信元装置か否かを判定し、特定の送信元装置の場合に前記警報を発する判定手段と、
を備える、ことを特徴とする鉄道用警報発生システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−210869(P2012−210869A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77516(P2011−77516)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】