説明

鉄道車両の車輪角度測定方法及び車輪角度測定装置

【課題】簡素な構成によってレールに対する車輪の相対角度を検出可能でありかつ汎用性が高い鉄道車両の車輪角度測定方法等を提供する。
【解決手段】車軸20の両端部に固定された一対の車輪10を有し、車輪とレールRi,Roとの接触部に作用する荷重に応じた出力を間欠的に発生する荷重検出手段Bpを備えた荷重測定用輪軸1を用いた鉄道車両の車輪角度測定方法を、荷重測定用輪軸が装着された車両を走行させながら荷重測定用輪軸の回転角度位置を逐次検出し、荷重検出手段の出力がピークを示す回転角度位置の変化に基づいて車輪のレールとの接触点の車輪周方向移動量を求め、接触点の車輪周方向移動量に基づいて車輪のレールに対する相対角度を求める構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車輪のレールに対する角度を測定する車輪角度測定方法及び車輪角度測定装置に関し、特にひずみゲージ等の荷重検出手段を備えた荷重測定用輪軸を用いたものに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、車軸の両端部に車輪を固定した輪軸を備えている。この輪軸は、通常は回転中心軸が枕木方向と平行となるように配置されるが、車両の走行状態によっては、ほぼ鉛直な軸回りにレールに対して相対回転してアタック角(輪軸ヨー角)が発生し、枕木方向に対して傾斜する場合がある。
例えば、輪軸は、曲線路走行中に、外輪側の車輪が内輪側の車輪に対して、相対的に進行方向前方側に変位するように、レールに対して傾斜することがわかっている。
【0003】
走行する鉄道車両の車輪がレールに対してなすアタック角を知ることは、車両の挙動を調査するうえで重要である。例えば、鉄道車両からレールに伝わる力を算出するためには、この角度を知ることが必須である。
また、アタック角が大きくなると、乗り上がり脱線に対する安全性が低下し、また、横圧の増大によって軌道が損傷する原因ともなりうる。
従来、レールと車輪との相対角度を測定するために、様々な方法が行なわれてきた。
例えば、地上に車輪の傾きを測るセンサを設けて、車輪の通過時にその角度を測定することが提案されている。
また、車上側に車輪を基準としたレールの相対変位を検出する変位計を設けることも提案されている。
このようなアタック角の測定に関する従来技術として、例えば、特許文献1には、地上に左右一対の光電計測手段を設置して構成した鉄道車両アタック角測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005− 69707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来技術のように、レール側に測定装置を設置した場合、この設置場所以外では測定を行うことができず、路線内の複数個所で測定を行う場合には多くの機器が必要となり煩雑である。また、車両からレールの近傍へ梁を突き出してその先端に変位計を取り付ける場合には、車両の構造等に起因する制約を受けるため、これらの手法では測定の汎用性が低い。
【0006】
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、簡素な構成によってレールに対する車輪の相対角度を検出可能でありかつ汎用性が高い鉄道車両の車輪角度測定方法及び車輪角度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した問題を解決する本発明の鉄道車両の車輪角度測定方法は、車軸の両端部に固定された一対の車輪を有し、前記車輪とレールとの接触部に作用する荷重に応じた出力を間欠的に発生する荷重検出手段を備えた荷重測定用輪軸を用いた鉄道車両の車輪角度測定方法であって、前記荷重測定用輪軸が装着された車両を走行させながら前記荷重測定用輪軸の回転角度位置を逐次検出し、前記荷重検出手段の出力がピークを示す前記回転角度位置の変化に基づいて前記車輪のレールとの接触点の車輪周方向移動量を求め、前記接触点の車輪周方向移動量に基づいて前記車輪の前記レールに対する相対角度を求めることを特徴とする。
【0008】
本発明の鉄道車両の車輪角度測定方法は、前記荷重測定用輪軸の前記車軸に設けられ、前記車軸の回転方向変位に応じて間欠的にパルス信号を発生するエンコーダによって前記回転角度位置を検出するとともに、前記荷重検出手段の出力がピークを示す際のパルスの所定の基準パルスからのずれ量に基づいて前記接触点の車輪周方向移動量を求める構成とすることができる。
【0009】
また、本発明の鉄道車両の車輪角度測定装置は、車軸の両端部に固定された一対の車輪を有し、前記車輪とレールとの接触部に作用する荷重に応じた出力を間欠的に発生する荷重検出手段を備えた荷重測定用輪軸と、前記荷重測定用輪軸の回転角度位置を逐次検出する位置検出手段と、前記荷重測定用輪軸が装着された車両の走行時における前記荷重検出手段の出力がピークを示す前記回転角度位置の変化に基づいて前記車輪のレールとの接触点の車輪周方向移動量を求める接触点変位算出手段と、前記接触点の車輪周方向移動量に基づいて前記車輪の前記レールに対する相対角度を求める角度算出手段を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の鉄道車両の車輪角度測定装置において、前記荷重検出手段の出力履歴及び前記位置検出手段の出力履歴を同期して記録する記録手段を備え、前記接触点変位算出手段は、前記記録手段によって記録された前記荷重検出手段の出力履歴及び前記位置検出手段の出力履歴を用いて前記接触点の車輪周方向移動量の算出を行う構成とすることができる。
また、本発明の鉄道車両の車輪角度測定装置において、前記荷重測定用輪軸の前記車軸に設けられ、前記車軸の回転方向変位に応じて間欠的にパルス信号を発生するエンコーダを備え、前記接触点変位算出手段は、前記荷重検出手段の出力がピークを示す際のパルスの所定の基準パルスからのずれ量に基づいて前記車輪のレールとの接触点の車輪周方向移動量を求める構成とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
輪軸が枕木方向に対して傾斜し、車輪がレールに対して相対傾斜してアタック角が発生すると、車輪のレールとの接触点が相対的に車輪の周方向に移動することから、荷重測定用輪軸の荷重検出手段の出力がピークを示すタイミングが基準となる状態に対して前後することになる。
本発明においては、このような特性を利用して、荷重測定用輪軸が装着された車両を走行させながら荷重測定用輪軸の回転角度位置を逐次検出し、荷重検出手段の出力がピークを示す回転角度位置の変化に基づいて、車輪/レール接触点の車輪周方向移動量を求めることによって、レール側に車輪の角度を検出するセンサを設けたり、車上側にレールの角度や変位を検出する変位計を設けることなく、演算によってレールに対する車輪のアタック角を検出することができる。
このため、センサの設置などで制約を受けることが少なく、汎用性の高いアタック角の推定を実現することができる。
また、回転角度位置を、パルス信号を発生するロータリエンコーダを用いて検出し、パルスのずれ量に基づいて車輪/レール接触点の車輪周方向移動量を求めることによって、上述した効果を確実に得ることができる。
また、荷重検出手段の出力履歴及び位置検出手段の出力履歴を同期して記録する記録手段を設けることによって、車輪/レール接触点の車輪周方向移動量の算出を例えば地上などでオフライン処理によって行うことができ、測定の利便性が向上する。また、データ処理を行なう際の演算負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した鉄道車両の車輪角度測定装置の実施形態の構成を示す模式図である。
【図2】図1の車輪角度測定装置におけるPQ輪軸の要部拡大図であって、図2(a)は車軸方向から見た外観図であり、図2(b)は図2(a)のb−b部矢視断面図である。
【図3】図2のPQ輪軸における輪重測定用のブリッジ回路の構成を示す図である。
【図4】図2のPQ輪軸における横圧測定用のブリッジ回路の構成を示す図である。
【図5】曲線通過時における鉄道車両の輪軸の挙動の一例を示す模式的平面図である。
【図6】直線通過時及び曲線通過時における図3の輪重測定用のブリッジ回路及び図1のエンコーダの出力履歴の一例を示すグラフである。
【図7】輪軸の運動を記述する座標系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した鉄道車両の車輪角度測定方法及び車輪角度測定装置の実施形態について図面等を参照して説明する。
実施形態の車輪角度測定方法及び車輪角度測定装置は、ブリッジ回路を構成する複数のひずみゲージを用いて、輪重及び横圧に応じたパルス状の出力を発生するPQ輪軸を用いて、レールに対する車輪の相対角度を求めるものである。
図1は、実施形態の車輪角度測定装置の構成を示す模式図である。
車輪角度測定装置は、PQ輪軸1、エンコーダ110、動ひずみアンプ120、エンコーダ用アンプ130、データ収録・解析用PC(以下、単に「PC」と称する。)140等を備えて構成されている。
【0014】
PQ輪軸1は、ブリッジ回路を構成するひずみゲージが設けられた車輪を用いて、車輪とレールとの間に鉛直方向に作用する輪重(P)、及び、枕木方向に作用する横圧(Q)を測定するものである。
PQ輪軸1は、左右一対の車輪10及びこれを連結する車軸20を有して構成されている。
車軸20は、両端部に形成されたジャーナル部を、図示しない軸箱によって回転可能に支持されている。軸箱は、1次バネ系を有する軸箱支持装置を介して台車枠に取り付けられている。
図2は、PQ輪軸1の要部拡大図であって、図2(a)は車軸方向から見た外観図であり、図2(b)は図2(a)のb−b部矢視断面図である。
車輪10は、一体に形成されたリム部11、輪座12、板部13等を有する一体圧延車輪である。
リム部11は、車輪10の外周縁部を構成する部分であって、レールと当接する踏面11a及びフランジ11bが形成されている。
輪座12は、車輪10の中央部に配置され、車軸20の端部が挿入され固定される開口部が形成されている。
板部13は、リム部11の内周面部と輪座12の外周面との間を連結する平板状の部分である。
【0015】
また、板部13には、輪重測定用のひずみゲージP1〜P4が取り付けられる開口O1、O2等が形成されている。
開口O1、O2は、例えば板部13を車輪10の軸方向に貫通して形成された貫通穴である。開口O1、O2は、車輪10の軸方向から見た形状が円形に形成されている。
開口O1は、リム部11と輪座12との中間部に配置されている。
開口O1の内周面には、ひずみゲージP1、P2が設けられている。
ひずみゲージP1、P2は、車輪10の周方向に離間して配置されている。
【0016】
開口O2は、開口O1に対して、車輪10の中心軸に対して対称に配置され、実質的に同様に形成されている。
開口O2の内周面には、ひずみゲージP3、P4が設けられている。
ひずみゲージP3、P4は、車輪10の周方向に離間して配置されている。
【0017】
また、板部13には、横圧測定用のひずみゲージQ1a〜Q4a、Q1b〜Q4bが設けられている。
ひずみゲージQ1a,Q1bは、開口O1と輪座12との中間部において、板部13の車幅方向外側の面部に設けられている。
ひずみゲージQ1a,Q1bは、車輪10の周方向に並べて配置されている。
ひずみゲージQ2a,Q2bは、車輪10の中心軸方向から見たときの位置が、ひずみゲージQ1a,Q1bとそれぞれ重なるように、板部13の車幅方向内側の面部に設けられている。
ひずみゲージQ3a,Q3bは、ひずみゲージQ1a,Q1bに対して、車輪10の中心軸に対して対称に配置されている。
ひずみゲージQ4a,Q4bは、ひずみゲージQ2a,Q2bに対して、車輪10の中心軸に対して対称に配置されている。
【0018】
上述した輪重測定用のひずみゲージP1〜P4は、図3に示すようにブリッジ回路Bpに組み込まれる。
また、横圧測定用のひずみゲージQ1a〜Q4a、Q1b〜Q4bは、図4に示すようにブリッジ回路Bqに組み込まれる。
各ブリッジ回路Bp、Bqの入力電圧Vinは、軸箱部に設けられるスリップリングSLを介して車上から供給される。また、各ブリッジ回路Bp、Bqの出力電圧Voutは、スリップリングSLを介して車上に設けられた動ひずみアンプ120に供給される。
なお、このようなひずみゲージ及びブリッジ回路は、車輪10の中心軸周りの角度をずらして、複数組設けられる。例えば、開口O1、O2等と実質的に同様の開口を、所定の間隔で周方向に離間させて複数配列し、それぞれの開口内に輪重測定用のひずみゲージを配置し、その周辺に横圧測定用のひずみゲージを配置してもよい。
【0019】
エンコーダ110は、車軸20の一方の端部を支持する軸箱に設けられ、PQ輪軸1の中心軸回りの回転角度位置を検出するロータリエンコーダである。エンコーダ110は、PQ輪軸1の回転方向変位に応じて間欠的なパルス信号を発生する。
このようなパルス信号は、例えばPQ輪軸1の一回転あたり例えば600〜1200程度のパルスが出力されるようになっている。また、エンコーダ110は、PQ輪軸1が所定の回転角度位置となったときに一回転あたり一回の原点パルス信号を出力するようになっている。このような構成によって、原点パルス信号が出力されてからのパルス数をカウントすることによって、現在のPQ輪軸1の回転角度位置を検出することができる。
【0020】
動ひずみアンプ120は、輪重測定用のブリッジ回路Bp、及び、横圧測定用のブリッジ回路Bqの出力電圧Voutが入力され、これらをリアルタイムに所定のゲインで増幅してPC140に伝達するものである。
エンコーダ用アンプ130は、エンコーダ110の出力が入力され、これを所定のゲインで増幅してPC140に伝達するものである。
【0021】
PC140は、情報処理装置であるCPU、RAM、ROM、HDD等の記憶手段、各種入出力部及びこれらを連結するバス等を有する。
また、PC140は、A/Dボード141及びカウンタボード142を備えている。
A/Dボード141は、動ひずみアンプ120の出力をアナログ−ディジタル変換するものである。
カウンタボード142は、エンコーダ用アンプ130によって増幅されたエンコーダ110の出力信号に基づいて、パルス数をカウントアップするものである。
【0022】
次に、本実施形態におけるレールに対する車輪の相対角度(アタック角)の測定原理について説明する。
図5は、曲線通過時における鉄道車両の輪軸の挙動を示す模式的平面図であって、上方から見た状態を示している。図中、車輪10がレールに対して相対傾斜しない場合(アタック角=0)のPQ輪軸1を破線で図示し、実際のPQ輪軸1を実線で図示している。
曲線路の通過時には、PQ輪軸1は、外側レールRo側の車輪10が相対的に前進し、内側レールRi側の車輪10が相対的に後退する挙動を示すことが知られている。
このように、PQ輪軸1が傾斜すると、各車輪10がレールと接触する車輪/レール接触点位置は、軸心の直下に対して車輪10の車輪周方向に移動し、かつその移動量はアタック角に相関すると考えられる。
【0023】
図6は、実施形態における輪重測定用のブリッジ回路Bp及びエンコーダ110の出力履歴の一例を示すグラフである。
図6(a)は、ブリッジ回路Bpの出力履歴を示し、縦軸は出力電圧を示し、横軸は時間を示している。
図6(b)は、エンコーダ110の出力履歴を示し、縦軸は出力電圧を示し、横軸は時間を示している。
【0024】
図6(a)において、直線路走行時の出力履歴を実線で示し、曲線時走行時の出力履歴を破線で示している。
上述したように、曲線路走行等によって、レールに対して車輪が相対傾斜すると、車輪10のリム部11のレールとの接触点位置が車輪周方向に移動することになる。
そこで、本実施形態においては、基準状態(輪軸が枕木方向に沿った状態)に対するブリッジ回路Bpの出力ピーク時期のずれを、図6(b)に示すエンコーダ110のパルス信号のパルス数を用いてカウントし、ずれたパルス数を用いて基準状態に対する車輪10の車輪/レール接触点の車輪周方向移動量θを演算している。
なお、本実施形態では輪重測定用のブリッジ回路Bpを用いているが、横圧測定用のブリッジ回路Bqを用いてもよい。
なお、本実施形態では輪重測定用のブリッジ回路Bpを用いているが、横圧測定用のブリッジ回路Bqを用いてもよい。
【0025】
PC140は、PQ輪軸1の輪重測定用のブリッジ回路Bpの出力ピーク位置(タイミング)が、基準状態における位置(図6における基準パルスPo位置)に対して、エンコーダ110のパルス数にしてどれだけずれたかに基づいて、以下の式1を用いて車輪10の車輪/レール接触点の車輪周方向移動量θを算出する。
ブリッジ回路Bpの出力ピークは、デジタル変換された信号の値が最大となる箇所とする。

車輪/レール接触点の車輪周方向移動量θ(deg.)
=(360(deg.)/全パルス数)×基準パルスからのパルスずれ数・・(1)

ここで、全パルス数とは、車軸20を一回転させた際にエンコーダ110が発生するパルス数を示すものとする。
【0026】
このようにして車輪/レール接触点の車輪周方向移動量θを得ることができれば、以下の式2〜式4を用いて、演算によってアタック角Ψを求めることができる。
ここで、輪軸の運動を記述する座標系を図7に示す。

【数1】


ここで、Pは車輪踏面形状(Profile)関数、Sはレール頭頂面形状関数である。
φ,θ,Ψが微小なとき、式(2)の第5式において、P’=tanαとし、微小角近似を行うと、車輪/レールの接触に関する以下の関係式が得られる。

【数2】



従って、車輪フランジ/レール接触点の車輪周方向移動量(移動角)θを知れば、接触角αの推定値を用いて、式(5)よりアタック角Ψが演算可能である。
【0027】
上述したようなブリッジ回路Bpの出力のピーク位置の特定、ずれたパルス数のカウント、接触点の車輪周方向移動量θの演算、アタック角Ψの演算等は、例えば、車上に搭載されたPC等を用いてリアルタイムに行なってもよい。
また、車上ではブリッジ回路Bpの出力及びエンコーダ110の出力を同期させた記録のみを行なって、ブリッジ回路Bpの出力のピーク位置の特定、ずれたパルス数のカウント、及び、角度の算出等は、記録されたデータを用いて地上等でオフライン処理によって行なってもよい。
なお、上述した基準状態において、ブリッジ回路Bpの出力がピークとなるパルス位置(基準パルス位置)は、乱れがない出力を得ることを目的として、例えば、PQ輪軸1を装着した車両を、事前に平滑な直線区間を低速で走行させながらブリッジ回路Bpの出力履歴を取得することによって知ることができる。
このような予備走行によって、変動や他の力の影響を受けない輪重波形を取得することができる。こうした輪重波形と車輪回転角の情報を関係付けることによって、ブリッジ回路Bpの出力がピークとなるパルス位置を記録することができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、PQ輪軸1が装着された車両を走行させながらPQ輪軸1の回転角度位置をエンコーダ110で逐次検出し、輪重測定用のブリッジ回路Bpの出力がピークを示す回転角度位置の基準パルスからのパルスずれ量(ずれ数)に基づいて接触点の車輪周方向移動量θを求め、この移動量θに基いて車輪10のレールに対する相対角度(アタック角Ψ)を演算により求めることによって、レール側に車輪10の角度を検出するセンサを設けたり、車上側にレールの角度や変位を検出するセンサを設けることなく、レールに対する車輪10の角度を検出することができる。
このため、センサの設置などで制約を受けることが少なく、汎用性の高い測定を実現することができる。
【0029】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。
例えば、荷重測定用輪軸は、実施形態のような一体圧延車輪を有するものに限らず、例えばスポーク車輪を有するもの等、異なった構成を有するものであってもよい。
また、ひずみゲージの配置やブリッジ回路の構成も特に限定されない。
また、車輪角度測定装置の構成も上述した実施形態のものに限定されず、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 PQ輪軸(荷重測定用輪軸) 10 車輪
11 リム部 11a 踏面
11b フランジ 12 輪座
13 板部 O1,O2 開口
P1〜P4 ひずみゲージ(輪重検出用)
Q1a〜Q4a、Q1b〜Q4b ひずみゲージ(横圧検出用)
SL スリップリング Bp 輪重測定用ブリッジ回路
Bq 横圧測定用ブリッジ回路 Vin 入力電圧
Vout 出力電圧
110 エンコーダ 120 動ひずみアンプ
130 エンコーダ用アンプ 140 PC
141 A/Dボード 142 カウンタボード
Ro 外側レール Ri 内側レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸の両端部に固定された一対の車輪を有し、前記車輪とレールとの接触部に作用する荷重に応じた出力を間欠的に発生する荷重検出手段を備えた荷重測定用輪軸を用いた鉄道車両の車輪角度測定方法であって、
前記荷重測定用輪軸が装着された車両を走行させながら前記荷重測定用輪軸の回転角度位置を逐次検出し、前記荷重検出手段の出力がピークを示す前記回転角度位置の変化に基づいて前記車輪のレールとの接触点の車輪周方向移動量を求め、
前記接触点の車輪周方向移動量に基づいて前記車輪の前記レールに対する相対角度を求めること
を特徴とする鉄道車両の車輪角度測定方法。
【請求項2】
前記荷重測定用輪軸の前記車軸に設けられ、前記車軸の回転方向変位に応じて間欠的にパルス信号を発生するエンコーダによって前記回転角度位置を検出するとともに、
前記荷重検出手段の出力がピークを示す際のパルスの所定の基準パルスからのずれ量に基づいて前記接触点の車輪周方向移動量を求めること
を特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の車輪角度測定方法。
【請求項3】
車軸の両端部に固定された一対の車輪を有し、前記車輪とレールとの接触部に作用する荷重に応じた出力を間欠的に発生する荷重検出手段を備えた荷重測定用輪軸と、
前記荷重測定用輪軸の回転角度位置を逐次検出する位置検出手段と、
前記荷重測定用輪軸が装着された車両の走行時における前記荷重検出手段の出力がピークを示す前記回転角度位置の変化に基づいて前記車輪のレールとの接触点の車輪周方向移動量を求める接触点変位算出手段と、
前記接触点の車輪周方向移動量に基づいて前記車輪の前記レールに対する相対角度を求める角度算出手段を備えること
を特徴とする鉄道車両の車輪角度測定装置。
【請求項4】
前記荷重検出手段の出力履歴及び前記位置検出手段の出力履歴を同期して記録する記録手段を備え、
前記接触点変位算出手段は、前記記録手段によって記録された前記荷重検出手段の出力履歴及び前記位置検出手段の出力履歴を用いて前記接触点の車輪周方向移動量の算出を行うこと
を特徴とする請求項3に記載の鉄道車両の車輪角度測定装置。
【請求項5】
前記荷重測定用輪軸の前記車軸に設けられ、前記車軸の回転方向変位に応じて間欠的にパルス信号を発生するエンコーダを備え、
前記接触点変位算出手段は、前記荷重検出手段の出力がピークを示す際のパルスの所定の基準パルスからのずれ量に基づいて前記車輪のレールとの接触点の車輪周方向移動量を求めること
を特徴とする請求項3又は請求項4に記載の鉄道車両の車輪角度測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−122935(P2012−122935A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275627(P2010−275627)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】