説明

鉄道車両構体及びその製造方法

【課題】 組み立て作業性の向上を図りつつ、十分な剛性を担保することができる鉄道車両構体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 鉄道車両構体1では、周縁部から車両内面側に向けて突出する第1の接合片18bを有する第1の外板パネル18と、周縁部から車両内面側に向けて突出する第2の接合片20aを有する第2の外板パネル20とが、第1及び第2の接合片18b,20aが突き合わされた状態で接合され、その突き合わせ接合部分は、内側溶接部W1、外側溶接部W2及び中間連結部W3によって溶接されている。これにより、互いに突き合わされて接合された接合片18b,20aを外板パネル18,20同士の接合部分に延在する骨部材としてそのまま機能させることができ、鉄道車両構体1の組み立て作業性を良好なものとしつつ、剛性を十分に担保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外板パネルを接合してなる鉄道車両構体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、例えば特許文献1に開示された鉄道車両の側構体製造方法がある。この鉄道車両の製造方法では、骨部材と外板パネルとによって中間窓ブロック、側入口ブロック等を形成し、これらの各ブロック同士を溶接によって接合することで鉄道車両の側構体を形成している。このように、側構体を構成するブロックを個々に作製することで、各外板パネルの寸法を小さくし、その取り扱いを容易なものとしている。
【特許文献1】特開2002−104180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した鉄道車両の側構体製造方法では、外板パネルに対して骨部を別体として接合しているため、側構体の組み立てに要する工数の増加が避けられない。その一方で、外板パネルに骨部を設けなければ、鉄道車両構体として十分な剛性が得ることが難しい。そのため、組み立て作業性の向上と剛性の担保とを同時に満足させることができる技術が望まれていた。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、組み立て作業性の向上を図りつつ、十分な剛性を担保することができる鉄道車両構体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の解決のため、本発明に係る鉄道車両構体は、周縁部から車両内面側に向けて突出する第1の接合片を有する第1の外板パネルと、第1の外板パネルに隣接すると共に、周縁部から車両内面側に向けて突出する第2の接合片を有する第2の外板パネルと、を備え、第1及び第2の接合片同士が互いに突き合わされた接合部分には、突き合わせ接合部分の車両内面側の端部に形成された内側溶接部と、突き合わせ接合部分の車両外面側の端部に形成された外側溶接部と、内側溶接部と外側溶接部との間に形成された中間連結部と、が設けられていることを特徴としている。
【0006】
この鉄道車両構体では、周縁部から車両内面側に向けて突出する第1の接合片を有する第1の外板パネルと、周縁部から車両内面側に向けて突出する第2の接合片を有する第2の外板パネルとが、第1及び第2の接合片が突き合わされた状態で接合されている。これにより、互いに突き合わされて接合された第1及び第2の接合片を、第1及び第2の外板パネルの接合部分に延在する骨部材としてそのまま機能させることができるため、鉄道車両構体の組み立て作業性を良好なものとしつつ、剛性を十分に担保することができる。その一方で、第1及び第2の接合片の突き合わせ接合部分は、内側溶接部及び外側溶接部によって溶接されるため、第1及び第2の外板パネル同士を強固に接合することが可能となる。また、外板パネルの外側表面に段差部分が生じてしまうような重ね代が不要となるため、設計上の制約も生じない。さらに、第1及び第2の接合片は中間連結部によって連結されており、突き合わせ接合部分における空隙の発生が抑えられている。この結果として、接合片同士の接合強度をアップさせることが可能となる。
【0007】
また、内側溶接部は車両内面側の端部に沿って長手方向に連続的に形成されていることが好ましい。これにより、第1及び第2の接合片における突き合わせ接合部分の接合がより強固なものとなり、鉄道車両構体の剛性をより高めることができる。
【0008】
さらに、外側溶接部は車両外面側の端部に沿って長手方向に連続的に形成されていることが好ましい。これにより、第1及び第2の接合片における突き合わせ接合部分の接合強度をさらに高めることができ、鉄道車両構体の剛性をより高めることが可能となる。しかも、突き合わせ接合部分において、車両外面側の端部が連続的に溶接されることで、第1及び第2の外板パネルの接合部分が車両外部から遮断されるため、水密性・気密性の高い鉄道車両構体を作り出すことができる。
【0009】
また、本発明に係る鉄道車両構体の製造方法は、第1の外板パネルの周縁部から車両内面予定側に向けて突出する第1の接合片と、第2の外板パネルの周縁部から車両内面予定側に向けて突出する第2の接合片とを突き合わせるように配置して、接合片同士の突き合わせ部分を仮止めする仮止め工程と、仮止め工程後、突き合わせ部分の車両内面予定側の端部を溶接する内側溶接工程と、仮止め工程後、突き合わせ部分の車両外面予定側の端部を溶接する外側溶接工程と、を備えることを特徴としている。
【0010】
この鉄道車両構体の製造方法では、第1及び第2の外板パネルにおける第1及び第2の接合片同士を突き合わせ部分において仮止めした後、突き合わせ部分の車両内面予定側の端部及び車両外面予定側の端部を溶接によって接合する。これにより、互いに突き合わされて接合された第1及び第2の接合片を、第1及び第2の外板パネルの接合部分に延在する骨部材としてそのまま機能させることができるため、鉄道車両構体の組み立て作業性を良好なものとしつつ、剛性を十分に担保することができる。その一方で、第1及び第2の接合片における突き合わせ部分の車両内面予定側の端部及び車両外面予定側の端部が溶接によって接合されるため、第1及び第2の外板パネルを強固に接合することが可能となる。また、このような製造方法によれば、外板パネルの表面に段差部分が生じてしまうような重ね代が不要となるため、設計上の制約も生じない。さらに、鉄道車両構体を製造するにあたっては、第1の外板パネルと第2の外板パネルとの接合箇所の内面側と外面側をいきなり溶接するのではなく、内側溶接工程及び外側溶接工程を行う前工程として、溶接や締結部材などによる仮止め工程を採用しているので、第1の外板パネルと第2の外板パネルとの位置合わせを確かなものにすることができ、しっかりとした内側溶接及び外側溶接を行うことができる。しかも、この仮止め工程によって、第1及び第2の接合片同士の突き合わせ部分における空隙の発生が抑えられるため、接合片同士の接合強度をアップさせることが可能となる。
【0011】
また、外側溶接工程は、内側溶接工程の後に行われることが好ましい。この場合、内側溶接工程において定盤上に外板パネルを平坦に設置することができる。これにより、定盤上での外板パネルの歪みを抑えることができると共に、車両内面予定側の端部の溶接作業性を向上させることが可能となる。また、溶接で発生する熱が外板パネルの車両外面予定側を通して定盤側に放熱されるので、良好な溶接を実現することできる。
【0012】
また、内側溶接工程及び外側溶接工程の少なくとも一方は、突き合わせ部分の溶接が連続溶接であることが好ましい。これにより、第1及び第2の接合片の接合をさらに確実なものとすることができ、鉄道車両構体の剛性をより高めることが可能となる。しかも、突き合わせ部分の車両外面予定側の端部を連続溶接することにより、第1及び第2の外板パネルの接合部分を車両外部から遮断することができるため、水密性・気密性の高い鉄道車両構体を作り出すことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、鉄道車両構体の組み立て作業性の向上を図りつつ、十分な剛性を担保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る鉄道車両構体の好適な実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る鉄道車両構体1を示す斜視図である。この鉄道車両構体1は、床部を構成する床構体2と、側部を構成する側構体4と、屋根部を構成する屋根構体6と、前部及び後部を構成する妻構体8とを有し、各構体2〜8は相互に溶接されている。
【0016】
側構体4は、4個のドアユニット10及び5個の窓ユニット12を備えると共に、ドアユニット10を取り囲むドアブロック14と、窓ユニット12を取り囲む窓ブロック16とが相互に溶接されて構成されている。さらに、ドアブロック14は、腰パネル18,19と、吹寄せパネル20,21と、幕パネル22とを有している。また、窓ブロック16は、腰パネル23と、窓枠パネル24と、幕パネル25とを有している。
【0017】
また、腰パネル18,19,23は、窓ユニット12の下縁部よりも下側に位置し、床構体2と溶接されるパネルである。吹寄せパネル20,21は、ドアユニット10と窓ユニット12との間に位置するパネルである。また、ドアブロック14において、腰パネル18,19及び吹寄せパネル20,21は、ドアユニット10を挟んで対称に配置されている。
【0018】
幕パネル22,25は、ドアユニット10及び窓ユニット12の上縁部よりも上側に位置し、屋根構体6と溶接されるパネルである。また、窓枠パネル24は、窓ブロック16において、腰パネル23と幕パネル25との間に位置するパネルであり、中央部分に窓ユニット12を嵌め込むための開口部24c(図5参照)が形成されている。
【0019】
次に、前述したドアブロック14及び窓ブロック16についてさらに詳細に説明する。ドアブロック14及び窓ブロック16を構成する各パネル18〜25は、例えばステンレス鋼から形成された種々の外板パネルとして構成されている。なお、外板パネルの材質は、ステンレス鋼のほか、アルミ合金、高張力鋼、その他の一般鋼であってもよい。
【0020】
図2及び図3に示すように、ドアブロック14において、腰パネル(外板パネル)18,19の各々の下縁部には、断面L字形状を有する長尺の接合片18a,19aが水平方向に延在しており、各々の上縁部には、それぞれ断面L字形状を有する長尺の接合片18b,19bが水平方向に延在している。さらに、腰パネル18,19におけるドアユニット10側の縁部には、断面L字形状を有する長尺の接合片18c,19cが鉛直方向に延在している。
【0021】
また、吹寄せパネル(外板パネル)20,21の各々の下縁部には、平板状の長尺の接合片20a,21aが水平方向に延在しており、各々の上縁部には、平板状の接合片20b,21bが水平方向に延在している。また、吹寄せパネル20,21におけるドアユニット10側の縁部には、断面L字形状を有する長尺の接合片20c,21cが鉛直方向に延在している。さらに、幕パネル(外板パネル)22の下縁部には、断面L字形状を有する長尺の接合片22aが水平方向に延在しており、上縁部には、断面L字形状を有する長尺の接合片22bが水平方向に延在している。
【0022】
そして、腰パネル18は、上側の縁部に形成された接合片18bが吹寄せパネル20の下側の縁部に形成された接合片20aに突き合わされた状態で吹寄せパネル20に溶接されている。また、吹寄せパネル20は、上側の縁部に形成された接合片20bが幕パネル22の下側の縁部に形成された接合片22aに突き合わされた状態で幕パネル22に溶接されている。
【0023】
ここで、腰パネル(第1の外板パネル)18の接合片(第1の接合片)18bと吹寄せパネル(第2の外板パネル)20の接合片(第2の接合片)20aとの溶接について詳細に説明する。
【0024】
腰パネル18と吹寄せパネル20との接合部分において、接合片18b,20aは、図4に示すように、接合片18bと接合片20aとの突き合わせ部分26における車両内面側の端部26aを連続溶接した内側溶接部W1と、車両外面側の端部26bを連続溶接した外側溶接部W2とによって強固に連結されている。さらに、接合片18b,20aは、内側溶接部W1と外側溶接部W2との間における突き合わせ部分26の中間部分26cで、中間連結部W3により溶接されている。そして、溶接部W1,W2及び連結部W3によって溶接された接合片18b,20aは、腰パネル18と吹寄せパネル20との溶接部分に沿って水平方向に延在する骨部材として機能している(図2参照)。
【0025】
このような溶接を行う場合、まず、各々の車両外面予定側の側面18d,20dが下側となるように、腰パネル18と、吹寄せパネル20とを定盤(図示しない)上に配置する。次に、接合片18bに接合片20aが突き合わされるように腰パネル18と吹寄せパネル20とを隣接させ、この接合片18b,20aの突き合わせ部分26の中間部分26cを、スポット溶接により形成される中間連結部W3によって仮止めする(仮止め工程)。
【0026】
仮止めを行った後、突き合わせ部分26の車両内面予定側の端部26aを長手方向に沿って連続溶接し、内側溶接部W1を形成する(内側溶接工程)。その後、腰パネル18及び吹寄せパネル20を各々の車両内面予定側の側面18e,20eが下側となるように定盤上に再配置する。そして、突き合わせ部分26の車両外面予定側の端部26bを長手方向に沿って連続溶接し、外側溶接部W2を形成する(外側溶接工程)。
【0027】
このような溶接方法によれば、内側溶接工程において定盤上に各パネル18,20を平坦に設置することができる。これにより、定盤上での各パネル18,20の歪みを抑えることができると共に、車両内面予定側の端部26aにおける溶接の作業性を向上させることが可能となる。また、溶接で発生する熱が各パネル18,20の車両外面側の側面18d,20dを通して定盤側にスムーズに放熱されるので、良好な溶接を実現することできる。
【0028】
なお、溶接部W1及びW2の形成に用いる溶接方法としては、摩擦撹拌溶接(FSW)、レーザ溶接、ハイブリッドレーザ溶接、タンデムMIG、ろう接を用いることが好ましい。これらの溶接方法によれば、パネルへの入熱量を少なくできるので、熱による歪みを抑えた連続溶接が可能となる。また、中間連結部W3による仮止めの方法としては、スポット溶接を用いることが好ましいが、リベット締結やアーク溶接、或いはボルトによる固定であってもよい。
【0029】
以下、図2及び図3に示すように、ドアブロック14におけるもう一方の腰パネル(第1の外板パネル)19の接合片(第1の接合片)19bと吹寄せパネル(第2の外板パネル)21の接合片(第2の接合片)21aとの溶接においても、前述の方法に従って形成された溶接部W1,W2及び連結部W3によって接合片19b,21aの溶接がなされている。そして、溶接された接合片19b,21aは、腰パネル19と吹寄せパネル20との溶接部分に沿って水平方向に延在する骨部材として機能する。
【0030】
また、吹寄せパネル(第1の外板パネル)20,21と幕パネル(第2の外板パネル)22との溶接においても、上述の方法に従って形成された溶接部W1,W2及び連結部W3によって接合片(第1の接合片)20b,接合片(第2の接合片)22a及び接合片(第1の接合片)21b,接合片(第2の接合片)22aの溶接がなされている。そして、溶接された接合片20b,22a及び接合片21b,22aは、吹寄せパネル20,21と幕パネル22との溶接部分に沿って水平方向に延在する骨部材として機能する。
【0031】
さらに、図2に示すように、各パネル18〜22におけるドアブロック14の端部側に位置する縁部には、接合片18a〜22a及び接合片18b〜22bよりも大きく突出する接合片18f,20f,22f及び接合片19g,21g,22gが鉛直方向に延在している。この接合片18f,20f,22f及び19g,21g,22gは、それぞれ連続溶接部W4によって相互に連結しており、これにより、ドアブロック14の前後の端部において鉛直方向に延在するブロック間接合片14a,14bが形成されている。
【0032】
一方、図5及び図6に示すように、窓ブロック16において、腰パネル(外板パネル)23の下縁部には、断面L字形状を有する長尺の接合片23aが水平方向に延在しており、上縁部には、断面L字形状を有する長尺の接合片23bが水平方向に延在している。また、窓枠パネル(外板パネル)24の下縁部には、断面L字形状を有する長尺の接合片24aが水平方向に延在しており、上縁部には、断面L字形状を有する長尺の接合片24bが水平方向に延在している。さらに、幕パネル(外板パネル)25の下縁部には、断面L字形状を有する長尺の接合片25aが水平方向に延在しており、上縁部には、断面L字形状を有する長尺の接合片25bが水平方向に延在している。
【0033】
そして、腰パネル23は、上側の縁部に形成された接合片23bが窓枠パネル24の下側の縁部に形成された接合片24aに突き合わされた状態で窓枠パネル24に溶接されている。さらに、窓枠パネル24は、上側の縁部に形成された接合片24bが幕パネル25の下側の縁部に形成された接合片25aに突き合わされた状態で幕パネル25に溶接されている。
【0034】
ここで、腰パネル23及び窓枠パネル24の溶接にあたっては、前述した溶接方法に従って、順次第1の外板パネルと第2の外板パネルとの溶接がなされている。すなわち、図7に示すように、腰パネル(第1の外板パネル)23の接合片(第1の接合片)23bと窓枠パネル(第2の外板パネル)24の接合片(第2の接合片)24aとは、接合片23bと接合片24aとの突き合わせ部分27における車両内面側の端部27aを連続溶接した内側溶接部W1と、車両外面側の端部27bを連続溶接した外側溶接部W2とによって強固に連結されている。さらに、接合片23b,24aは、内側溶接部W1と外側溶接部W2との間における突き合わせ部分27の中間部分27cで、中間連結部W3により溶接されている。そして、溶接された接合片23b,24aは、腰パネル23と窓枠パネル24との溶接部分に沿って水平方向に延在する骨部材として機能する(図5参照)。
【0035】
また、図5及び図6に示すように、窓枠パネル24と幕パネル25との溶接についても同様の方法が採られている。すなわち、窓枠パネル(第1の外板パネル)24の接合片(第1の接合片)24bと幕パネル(第2の外板パネル)25の接合片(第2の接合片)25aとは、溶接部W1,W2及び連結部W3によって溶接されている。そして、溶接された接合片24b,25aは、窓枠パネル24と幕パネル25との溶接部分に沿って水平方向に延在する骨部材として機能する。
【0036】
なお、図5に示すように、窓ブロック16を構成する各パネル23,24,25は、いずれも水平方向に延在する形状であるため、骨部材の剛性が特に必要とされる。このため、窓枠パネル24の接合片24a,24bは、上下共に断面L字形状とされている。すなわち、窓ブロック16における各パネル23,24,25同士の接合部分では、断面L字形状の接合片23b,24a及び24b,25a同士が突き合わされることでより剛性の高い骨部材が作り出され、窓ブロック16の補強がなされている。
【0037】
さらに、図5に示すように、各パネル23,24,25において、窓ブロック16の端部側に位置する縁部には、接合片23a〜25a及び接合片23b〜25bよりも大きく突出する断面L字形状の接合片23d,24d,25dが鉛直方向に延在している。この接合片23d,24d,25dは、連続溶接部W5によって相互に連結しており、これにより、窓ブロック16の前後の端部において鉛直方向に延在するブロック間接合片16aが形成されている。
【0038】
そして、ドアブロック14と窓ブロック16とは、図8に示すように、ブロック間接合片14a,16aを突き合わせた状態で、前述した溶接方法に従って相互に溶接されている。すなわち、ドアブロック14及び窓ブロック16の溶接にあたって、ドアブロック(第1の外板パネル)14のブロック間接合片(第1の接合片)14aと窓ブロック(第2の外板パネル)16のブロック間接合片(第2の接合片)16aとは、前述と同様の溶接部W1,W2及び連結部W3によって溶接されている。そして、溶接されたブロック間接合片14a,16aは、ドアブロック14と窓ブロック16との溶接部分に沿って鉛直方向に延在する骨部材として機能する。
【0039】
以上説明したように、この鉄道車両構体1では、互いに突き合わされて溶接された第1及び第2の接合片が、第1及び第2の外板パネルの溶接部分に延在する骨部材としてそのまま機能している。これにより、骨部材を別途外板パネルに接合する工程が不要となり、鉄道車両構体1の組み立て作業性を良好なものとしつつ、剛性を十分に担保することができる。
【0040】
一方で、各接合片同士の突き合わせ部分26,27は、内側溶接部W1及び外側溶接部W2によって連続溶接されているため、外板パネル同士の接合を強固に行うことが可能となる。また、外板パネルの外側表面に段差部分が生じてしまうような重ね代が不要となるため、設計上の制約が生じることもない。
【0041】
また、外板パネルの溶接部分は、外側溶接部W2によって車両外部から遮断されている。このため、トンネルに入った時の急激な圧力変化や風雨に耐えることのできる水密性・気密性の高い鉄道車両構体1が作り出される。
【0042】
さらに、各接合片同士は中間連結部W3によって接合されており、突き合わせ部分26,27において空隙の発生が抑えられている。この結果として、接合片同士の接合強度をアップさせることが可能となる。
【0043】
本発明は上記実施形態に限られない。例えば、外板パネルの接合に用いる接合片同士の組み合わせは、鉄道車両構体1の設計に合わせて種々の変形が適用可能である。例えば、図9に示すように、平板状の接合片18hを有する腰パネル18Aと、接合片18hと等長の平板状の接合片20hを有する吹寄せパネル20Aとを組み合わせてもよい。図10に示すように、平板状の接合片18iを有する腰パネル18Bと、接合片18iより短い平板状の接合片20iを有する吹寄せパネル20Bとを組み合わせてもよい。また、図11に示すように、断面L字形状の接合片18jを有する腰パネル18Cと、接合片18jより長い断面L字形状の接合片20jを有する吹寄せパネル20Cとを組み合わせてもよい。
【0044】
さらには、図12に示すように、平板状の接合片18kを有する腰パネル18Dと、接合片18kより短い断面L字形状の接合片20kを有する吹寄せパネル20Dとを組み合わせてもよく、図13に示すように、平板状の接合片18lを有する腰パネル18Eと、接合片18lより長い断面L字形状の接合片20lを有する吹寄せパネル20Eとを組み合わせてもよい。いずれの組み合わせによっても図2に示された実施形態の場合と同等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る鉄道車両構体の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】車両内面側から見たドアブロックの斜視図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】ドアブロックにおける腰パネルと吹寄せパネルとの接合片同士の溶接状態を示す要部拡大断面図である。
【図5】車両内面側から見た窓ブロックの斜視図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】窓ブロックにおける腰パネルの接合片と窓枠パネルの接合片との溶接状態を示す要部拡大断面図である。
【図8】ドアブロックと窓ブロックとの連結状態を示す斜視図である。
【図9】接合片の別の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【図10】接合片のさらに別の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【図11】接合片のさらに別の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【図12】接合片のさらに別の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【図13】接合片のさらに別の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1…鉄道車両構体、18,18A〜18E,19…腰パネル(外板パネル)、20,20A〜20E,21…吹寄せパネル(外板パネル)、22,25…幕パネル(外板パネル)、24…窓枠パネル(外板パネル)、18a〜25a,18b〜25b,18f〜18l,20f〜20l,22f,19g,21g,22g,23d〜25d…接合片、26,27…突き合わせ部分(突き合わせ接合部分)、26a,27a…車両内面側の端部、26b,27b…車両外面側の端部、14a,14b,16a…ブロック間接合片(接合片)、W1…内側溶接部、W2…外側溶接部,W3…中間連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁部から車両内面側に向けて突出する第1の接合片を有する第1の外板パネルと、
前記第1の外板パネルに隣接すると共に、周縁部から前記車両内面側に向けて突出する第2の接合片を有する第2の外板パネルと、を備え、
前記第1及び第2の接合片同士が互いに突き合わされた接合部分には、
前記突き合わせ接合部分の前記車両内面側の端部に形成された内側溶接部と、
前記突き合わせ接合部分の車両外面側の端部に形成された外側溶接部と、
前記内側溶接部と前記外側溶接部との間に形成された中間連結部と、が設けられていることを特徴とする鉄道車両構体。
【請求項2】
前記内側溶接部は前記車両内面側の前記端部に沿って長手方向に連続的に形成されていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両構体。
【請求項3】
前記外側溶接部は前記車両外面側の前記端部に沿って長手方向に連続的に形成されていることを特徴とする請求項2記載の鉄道車両構体。
【請求項4】
第1の外板パネルの周縁部から車両内面予定側に向けて突出する第1の接合片と、第2の外板パネルの周縁部から前記車両内面予定側に向けて突出する第2の接合片とを突き合わせるように配置して、前記接合片同士の突き合わせ部分を仮止めする仮止め工程と、
前記仮止め工程後、前記突き合わせ部分の前記車両内面予定側の端部を溶接する内側溶接工程と、
前記仮止め工程後、前記突き合わせ部分の車両外面予定側の端部を溶接する外側溶接工程と、を備えることを特徴とする鉄道車両構体の製造方法。
【請求項5】
前記外側溶接工程は、前記内側溶接工程の後に行われることを特徴とする請求項4記載の鉄道車両構体の製造方法。
【請求項6】
前記内側溶接工程及び前記外側溶接工程の少なくとも一方は、前記突き合わせ部分の溶接が連続溶接であることを特徴とする請求項4又は5記載の鉄道車両構体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−8078(P2006−8078A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192032(P2004−192032)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】