説明

鉄銅系焼結摺動部材およびその製造方法

【課題】鉄系の割合が高く低コストかつ耐荷重能が高いとともに、銅系の割合が低くても高速回転域にも対応できる鉄銅系焼結摺動部材を提供する。
【解決手段】鉄と炭素との反応相Dを含むバックメタル層11と、このバックメタル層11の表面を覆うように設けられ、バックメタル層11よりも銅Aの割合が高い表層12部とを備え、遊離黒鉛Bが分散している鉄銅系焼結摺動部材10であり、銅を5〜50重量%、融点が焼結温度以下である低融点金属を0.1〜5重量%、黒鉛を0.5〜5重量%含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や家電などに使用されるモータに用いられる鉄銅系焼結摺動部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来摺動部材として、銅系または鉄銅系、鉄系軸受が知られており、それぞれ、回転速度や荷重の大きさによって使い分けられている。銅系軸受は主に高速回転・低荷重仕様に用いられ、鉄系軸受は低速回転・高荷重仕様に用いられ、また鉄銅系軸受はその中間的な役割を果たしている。
【0003】
たとえば鉄銅系軸受として、鉄を主成分とし、アスペクト比が大きな扁平状の銅系扁平原料粉末と、この銅系扁平原料粉末よりも平均直径が小さい銅系小原料粉末とから製造され、表面側に銅が偏析し、かつフッ化カルシウムを素地に分散分布してなる摺動部品が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−299346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、銅などの非鉄金属価格の上昇に伴い、材料費比率が増加する傾向であり、比較的安価な鉄銅系、鉄系軸受への転換が図られている。一方、近年のモータの小型化が進むに従い、シャフトから付与されるラジアル荷重が大きくなる傾向にある。このような使用条件下で従来の鉄銅系軸受では、高速回転仕様には耐えきれず、最悪の場合、焼き付きが生じる場合がある等の問題があった。
【0006】
これに対して、特許文献1のような鉄銅系軸受では、アスペクト比の大きい銅粉を使用することにより、銅系並みの高速回転域に対応できるものの、より安価な鉄の割合を増やし、コストダウンを図ることが求められている。また、モータの小型化に伴う耐荷重能を向上させる要求もあり、従来よりも銅含有量を低減させた鉄銅系焼結軸受材が求められている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、鉄系の割合が高く低コストかつ耐荷重能が高いとともに、銅系の割合が低くても高速回転域にも対応できる鉄銅系焼結摺動部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、鉄と炭素との反応相(パーライト相など)によるバックメタル層と、このバックメタル層の表面を覆うように設けられ、前記バックメタル層よりも銅の割合が高い表層部とを備え、遊離黒鉛が分散している鉄銅系焼結摺動部材である。
【0009】
この鉄銅系焼結摺動部材は含油軸受であってもよい。この鉄銅系焼結摺動部材によれば、鉄系の割合が高く高耐荷重能であるとともに、銅系の割合が低くても高速回転域にも対応できる摺動部材を低コストで実現できる。
【0010】
この鉄銅系焼結摺動部材において、前記反応相がパーライトを含むことが好ましい。この場合、バックメタルの硬度が高いので、耐荷重能の高い摺動部材を実現できる。
【0011】
この鉄銅系焼結摺動部材において、銅を5〜50重量%、融点が焼結温度以下である低融点金属を0.1〜5重量%、黒鉛を0.5〜5重量%含有し、残部が鉄および不可避不純物からなることが好ましい。
【0012】
銅を5重量%以上とするのは、表層部の銅の割合の低下を防ぎ、高速回転域での使用を可能にするためである。一方、銅を50重量%以下とするのは、材料費が増大するのを防ぎ、また耐荷重能の低下を抑えるためである。
【0013】
低融点金属を0.1〜5重量%とするのは、0.1重量%未満であるとバインダとしての機能が十分に得られず、5重量%を超えるとシャフトとのなじみが悪くなり、摺動相手への攻撃性が増加するからである。
【0014】
また、黒鉛を0.5〜5重量%とするのは、黒鉛が0.5重量%未満であると鉄との反応相が少なくなり、マトリクス強度が十分に向上されないからである。一方、黒鉛が5重量%を超えると、残留する遊離黒鉛の量が増加し、遊離黒鉛の存在によりマトリクス強度の低下が顕著となる。
なお、ここでマトリクス強度とは、金属素地の強度や硬度を示す。
【0015】
また本発明は、銅粉を含む鉄銅系原料粉末を成形金型の充填部に充填し加圧して圧粉体を成形する成形工程と、この圧粉体を所定の焼結温度で焼結して焼結体を形成する焼結工程とを含み、鉄と炭素との反応相を含むバックメタル層と、前記バックメタル層よりも銅の割合が高く前記バックメタル層の表面を覆う表層部とを形成し、遊離黒鉛を分散させる鉄銅系焼結摺動部材の製造方法である。
【0016】
この製造方法において、前記焼結工程における前記焼結温度が850℃〜1000℃であり、前記銅粉は、アスペクト比が10以上である扁平銅粉を15%以上含み、前記鉄銅系原料粉末は、前記銅粉、鉄粉、前記焼結温度以下で溶融する低融点金属粉、および黒鉛粉末を含み、重量%で前記銅粉を5〜50%、前記低融点金属粉を0.1〜5%、前記黒鉛粉末を0.5〜5%、および不可避不純物を含み、前記黒鉛粉末が前記鉄粉とともに鉄と炭素との反応相を形成し、かつ遊離黒鉛として前記焼結体中に分散するように前記焼結工程を制御することが好ましい。
【0017】
この製造方法によれば、鉄の割合が高く比較的安価な原料粉末を用いながら、摺動部材の表層部における銅の割合を増やすことにより、鉄銅系でありながら銅系並みの高速回転域での摺動特性を有する摺動部材を、低コストで実現できる。また、焼結条件を制御して鉄と黒鉛の反応を制御することにより、硬さが高く表層部を支えることができる鉄と炭素との反応相によるバックメタル層を形成するとともに、摺動部材の摺動性を向上させる遊離黒鉛を分散させる。これにより、耐摩耗性、耐焼付性に優れ、鉄系の割合が高く耐荷重能が高いとともに、銅系の割合が低くても高速回転域にも対応できる鉄銅系焼結摺動部材を、材料費を抑えながら製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の鉄銅系焼結摺動部材およびその製造方法によれば、鉄系の割合が高いので低コストかつ耐荷重能が高いとともに、銅系の割合が低いにも関わらず高速回転域にも対応できる鉄銅系焼結摺動部材を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る鉄銅系焼結摺動部材を示す断面図である。
【図2】本発明に係る鉄銅系焼結摺動部材の要部を示す部分断面図である。
【図3】本発明に係る鉄銅系焼結摺動部材の代表組織を示す部分断面図である。
【図4】本発明の鉄銅系焼結摺動部材の製造方法における成形工程を示す部分断面図である。
【図5】本発明の実施例および比較例における硬さおよび摩擦係数増加荷重を示す図である。
【図6】本発明の実施例および比較例における摩擦係数増加荷重を示す図である。
【図7】本発明の実施例および比較例における圧環強さおよび表面銅被覆率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る鉄銅系焼結摺動部材およびその製造方法の実施形態について説明する。まず、この鉄銅系焼結摺動部材(以下、「軸受」)10は、図1に示すように、バックメタル層11と、このバックメタル層11の表面を覆うように設けられた表層部12とを備える、焼結により形成された円筒軸受である。表層部12は、軸受10の摺動面(円筒内周面)13を形成している。
【0021】
図2に、軸受10の摺動面13近傍における部分断面図を示す。軸受10は、全体として銅を5〜50重量%、融点が焼結温度以下である低融点金属(本実施形態では錫)を0.1〜5重量%、黒鉛を0.5〜5重量%含有している。軸受10においては、銅(銅合金)A、および黒鉛と鉄とが反応した反応相(たとえばパーライト相)Dが含まれ、黒鉛の一部が遊離黒鉛Bとして分散しているとともに、微細な空隙Cが多数形成されている。空隙Cが軸受10に占める体積は10%〜40%である。図3に、軸受10の代表組織の断面写真を示す。
【0022】
遊離黒鉛は、軸受10における固体潤滑剤として機能し、耐摩耗性、耐焼付性などの摺動特性を向上させている。バックメタル層11には反応相Dが含まれており、この軸受10の耐荷重を高めている。また、このバックメタル層11の表面を覆うように設けられた表層部12は、バックメタル層11よりも銅の割合が高く、たとえば軸受10の表面における鉄と銅との面積比率で銅が50〜80%であり、特に高速回転域における軸受10の摺動特性を向上させている。表層部12の厚さは、たとえば20μmである。
【0023】
なお、空隙Cに潤滑油を保持させることにより、軸受10に支持されたシャフト15の回転により発生する熱で摺動面13から潤滑油を染み出させ、シャフト15との間に油膜を形成することができる。
【0024】
軸受10を用いた場合、シャフト15から付与される荷重により、摺動面13に弾性変形および塑性変形が生じ、シャフト15と軸受10との接触面積が増大して摩擦抵抗が増大する。しかしながら、この軸受10は、銅の含有割合が比較的低いものの、摺動面13における銅Aの割合が比較的高く、その直下には反応相Dを含み高硬度であるバックメタル層11が形成されて表層部12を支持しているので、シャフト15と軸受10との接触面積の増大を抑え、摩擦抵抗の増大を抑制できる。したがって、軸受10は、材料費が抑えられて低コストであり、高耐荷重能であるとともに、高速回転域にも対応できる。
【0025】
次に、本発明に係る鉄銅系焼結摺動部材(軸受)10の製造方法について説明する。軸受10の製造方法は、鉄銅系原料粉末(以下、「原料粉末」)Pを成形金型20の充填部20aに充填して加圧し、圧粉体を成形する成形工程(図4参照)と、この圧粉体を850℃〜1000℃の焼結温度で焼結して焼結体を形成する焼結工程とを含む。
【0026】
成形工程には、図4に示すように、ダイプレート21、コアロッド22、下パンチ23および上パンチ24を備える成形金型20が用いられる。この成形金型20において、ダイプレート21に形成された円柱状の貫通孔21aと、この貫通孔21aの中心に挿入された円柱状のコアロッド22と、これら貫通孔21aとコアロッド22との間に下方から挿入された円筒状の下パンチ23とによって、円筒状空間が形成される。この円筒状空間に、所定量の原料粉末Pを上方から投入し、上方から上パンチ24を挿入して下パンチ23と上パンチ24との間隔を狭めて原料粉末Pを圧縮することにより、圧粉体が形成される。
【0027】
原料粉末Pは、軸受10における材料のコストダウンを図ること、また黒鉛との反応相(パーライト相など)を生成することにより軸受10の耐荷重能を高めることを目的として、鉄を主成分としている。原料粉末Pは、鉄粉、銅粉を5〜50重量%、焼結温度以下で溶融する低融点金属粉を0.1〜5重量%、黒鉛粉末を0.5〜5重量%、および固体潤滑剤としてフッ化カルシウムを含む。なお、固体潤滑剤としては、フッ化カルシウムの他、フッ化黒鉛、チッ化ホウ素、タルク、二硫化モリブデン等を採用できる。
【0028】
原料粉末Pにおいて、鉄粉としては、水素還元やコークス還元等の多孔質鉄粉や、アトマイズ鉄粉等の不規則形状粉が用いられる。なお、粒中に気孔が存在する多孔質鉄粉やアトマイズ鉄粉を用いることにより、軸受10における気孔率を高くできるので、潤滑油を十分に保持・供給可能な軸受10を実現できる。
【0029】
原料粉末Pにおいて、低融点金属としては、錫、亜鉛、燐などが用いられ、焼結工程において焼結温度以下で溶け、素地中に拡散することで、マトリクス強度などを向上させる。
【0030】
原料粉末Pにおいて、銅粉は、アスペクト比(直径/厚さ)が10以上である扁平銅粉を15%以上含み、その他に略球状の電解銅粉および/またはアトマイズ銅粉(以下、「略球状銅粉」)が混合されている。原料粉末Pにおける銅粉の割合は、高速回転域での使用に耐えうるように表層部12における銅の割合を十分高め、耐荷重能の低下を抑制し、また材料費を抑えるために、5〜50重量%としている。
【0031】
原料粉末Pが成形金型20の充填部20aに充填されると、扁平銅粉が表層部12に集まるとともに、扁平銅粉や鉄粉よりも小さい略球状銅粉が表層部12近傍の扁平銅粉および鉄粉の隙間に入り込むことにより、表層部12に銅成分が偏析する。そして、その状態で圧縮成形することにより、銅粉が表層部12に集中し、内部よりも表層部12において銅成分の割合が高い圧粉体を成形することができる。
【0032】
なお、この成形工程において、成形金型20に加速度0.01〜3G程度の振動を与えたり、充填部20aを囲む成形金型20の各面に静電気を発生させたり、磁力を用いたりすることにより、より効果的に銅粉を表層部12に偏析させることができる。また、プレスの作動によって生じる振動によっても偏析させることができる。
【0033】
このように成形された圧粉体を焼結することにより、焼結体を製造する(焼結工程)。この焼結工程においては、銅の融点より低く黒鉛が鉄への反応を生じる温度より高い850℃〜1000℃に焼結温度を制御することで、黒鉛粉末が鉄粉とともに鉄と炭素との反応相を形成し、かつ遊離黒鉛として焼結体中に分散するように焼結条件を制御する。
【0034】
焼結温度が850℃以上であることにより、鉄と黒鉛とを十分に合金化して鉄と炭素との反応相Dを形成し、十分なマトリクス強度を得ることができる。一方、焼結温度が1000℃を超えると、銅の焼結が活性化し、表層部12に集まった扁平銅粉が溶け始め、軸受10の表面の十分な銅被覆が得られず、また遊離黒鉛の存在量が不十分となるので、焼結温度の上限は1000℃とする。このように圧粉体を焼結することにより、銅の割合が表層部12で高く、反応相Dを含む高硬度のバックメタル層11で表層部12を支持することができる軸受10が製造される。なお、焼結炉内において、850℃〜1000℃の最高温度ゾーンの通過時間は3〜30分とされる。
【0035】
[実施例]
ここで、本発明に係る製造方法により製造した鉄銅系焼結摺動部材(含油軸受)の実施例および比較例について説明する。各実施例は、鉄、銅、錫(低融点合金)、黒鉛、およびフッ化カルシウム(固体潤滑剤)の割合、および焼結温度を本発明の範囲内で変更し、本発明の製造方法に従って製造した軸受10である。比較例は、鉄、銅、錫(低融点合金)、黒鉛、およびフッ化カルシウム(CaF、固体潤滑剤)の割合、および焼結温度のいずれかを本発明の範囲外の値に変更し、実施例と同様に成形工程および焼結工程を経て製造した軸受である。いずれも軸受も、内径8mm、外径18mm、長さ8mmとした。表1に、各実施例および比較例の成分比および焼結温度を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
各実施例および比較例の評価方法は以下の通りである。
(硬さの評価)
マイクロビッカース硬さ計を用いた。
(圧環強さの評価)
アムスラー試験機を用いた。
【0038】
(摩擦特性の評価)
軸受にシャフトを組み付け、シャフトを一定の間回転させた後、軸受のラジアル方向に荷重を2分間隔で増加させ、摺動時に軸受とシャフトとの間に発生する摩擦力から摩擦係数を算出し、荷重増加に伴う摩擦係数の変動を確認した。そして、面圧5MPa時の評価値をそれぞれの摩擦係数とした。
【0039】
(表面の銅面積率の評価)
マイクロスコープを用いて軸受の表面を倍率100倍でカラー撮影し、2mm方眼のトレース用紙のフレームをその写真上に重ね合わせ、フレームのマス目の50%以上を占める銅および鉄の部分をそれぞれカウントし、その比率によって算出した。
【0040】
まず、黒鉛の有無を変更した実施例1および比較例1について、硬さを評価した。黒鉛を含有する実施例1では、黒鉛を含有しない比較例1に比較して、硬さの増加が確認された(図5参照)。
【0041】
さらに、これら実施例1および比較例1について、摺動時の摩擦係数の上昇が起こる荷重(摩擦特性)を評価した。その結果、黒鉛を含有する実施例1と黒鉛を含有しない比較例1とでは、摩擦係数上昇荷重に有意差が生じ、黒鉛を含有する実施例1の軸受の方がより高い荷重に耐えられることが確認された(図5参照)。
【0042】
次に、固体潤滑剤の有無を変更した実施例2および比較例1について、摩擦特性を評価した。固体潤滑剤としては、フッ化カルシウムを選定した。その結果、フッ化カルシウムの含有により、固体潤滑効果が発揮され、摩擦係数上昇荷重の増加が確認された(図5参照)。
【0043】
次に、鉄および銅の比率を変更した実施例3,4,5および比較例2について、摩擦特性を評価した。その結果、摩擦係数の上昇が生じる面圧は、銅が多い方が高くなった(図6参照)。
【0044】
次に、焼結温度を変更した実施例6〜8および比較例3,4について、圧環強さおよび軸受表面の銅被覆率を評価した。その結果、焼結温度850℃未満では十分な圧環強さが得られず、1000℃を超えると表面の銅被覆率が低下することが確認された(図7参照)。
【0045】
以上説明したように、本発明によれば、鉄の割合が高い原料粉末を用いながら、軸受表層部の銅の割合を増やすことができる。したがって、鉄銅系でありながら銅系並みの高速回転域での摺動特性を有する軸受を、低コストで実現できる。また、硬さが高く表層部を支えることができるバックメタル層(パーライト相など、鉄と炭素との反応相)を形成することにより、耐荷重能を向上させることができる。また、遊離黒鉛を分散させることにより軸受の摺動性を向上させることができる。
【0046】
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。たとえば、前記実施形態では本発明の鉄銅系焼結摺動部材として円筒状の軸受について説明したが、本発明は円筒軸受に限定されず、平板状、半円弧状等、種々の形状の摺動部材に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 鉄銅系焼結摺動部材(軸受)
11 バックメタル層
12 表層部
13 摺動面
15 シャフト
20 成形金型
20a 充填部
21 ダイプレート
21a 貫通孔
22 コアロッド
23 下パンチ
24 上パンチ
A 銅(銅合金)
B 遊離黒鉛
C 空隙
D 反応相
P 鉄銅系原料粉末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄と炭素との反応相を含むバックメタル層と、
このバックメタル層の表面を覆うように設けられ、前記バックメタル層よりも銅の割合が高い表層部と
を備え、遊離黒鉛が分散していることを特徴とする鉄銅系焼結摺動部材。
【請求項2】
含油軸受であることを特徴とする請求項1に記載の鉄銅系焼結摺動部材。
【請求項3】
前記反応相がパーライトを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の鉄銅系焼結摺動部材。
【請求項4】
銅を5〜50重量%、融点が焼結温度以下である低融点金属を0.1〜5重量%、黒鉛を0.5〜5重量%含有し、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする請求項1にから3のいずれかに記載の鉄銅系焼結摺動部材。
【請求項5】
銅粉を含む鉄銅系原料粉末を成形金型の充填部に充填し加圧して圧粉体を成形する成形工程と、
この圧粉体を所定の焼結温度で焼結して焼結体を形成する焼結工程とを含み、
鉄と炭素との反応相を含むバックメタル層と、前記バックメタル層よりも銅の割合が高く前記バックメタル層の表面を覆う表層部とを形成し、遊離黒鉛を分散させる
ことを特徴とする鉄銅系焼結摺動部材の製造方法。
【請求項6】
前記焼結工程における前記焼結温度が850℃〜1000℃であり、
前記銅粉は、アスペクト比が10以上である扁平銅粉を15%以上含み、
前記鉄銅系原料粉末は、前記銅粉、鉄粉、前記焼結温度以下で溶融する低融点金属粉、および黒鉛粉末を含み、重量%で前記銅粉を5〜50%、前記低融点金属粉を0.1〜5%、前記黒鉛粉末を0.5〜5%、および不可避不純物を含み、
前記黒鉛粉末が前記鉄粉とともに鉄と炭素との反応相を形成し、かつ遊離黒鉛として前記焼結体中に分散するように前記焼結工程を制御することを特徴とする請求項5に記載の鉄銅系焼結摺動部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−94167(P2011−94167A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246595(P2009−246595)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(306000315)株式会社ダイヤメット (130)
【Fターム(参考)】