説明

鉛フリーのガラス、厚膜ペースト、テープの組成物およびそれから作製した低温共焼成したセラミックデバイス

【課題】多層LTCC回路の製造に適用するのに適したガラス、ペーストおよびテープの組成物を提供すること。
【解決手段】モル%ベースで、46〜56%のB、0.5〜8.5%のP、SiOおよびそれらの混合物、20〜50%のCaO、2〜15%のLn(Lnは希土類元素およびそれらの混合物からなる群から選択される)、0〜6%のM’O(M’はアルカリ元素からなる群から選択される)ならびに0〜10%のAlからなるガラス組成物であって、但し、その組成物は水系で粉砕可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層LTCC回路の製造に適用するのに適したガラス、ペーストおよびテープの組成物に関する。このテープは、高密度のLTCC回路を構築する際に用いられる導体および受動電子材料とのプロセスおよび材料の適合性を示す。非毒性のテープは、より新しいLTCCテープ構造物において使用される、Pbフリーのはんだおよびめっき金属回路接触系を用いた使用にも適している。このテープは、90GHzまでまたはそれを超える周波数にわたって低い誘電損失率を有することを特徴としており、これは化学的耐久性、密封性、機械的強度および加工自由度にも優れている。
【背景技術】
【0002】
相互接続回路ボードは、電気的にかつ機械的に相互接続されている多くの非常に小さい回路要素からできた電子回路またはサブシステムを物理的に具現化したものである。それらが、単一のコンパクトなパッケージ中に、物理的に隔てて互いに隣接して装着し、電気的に互いに連結し、および/またはそのパッケージから延在する共通連結部(common connection)と電気的に連結することができるように、これらの多様な種類の電子コンポーネントを一緒に配置させることがしばしば望まれる。
【0003】
複雑な電子回路は一般に、回路が、絶縁用誘電体層によって隔てられた複数の導体の層で構成されていることが必要である。導電性層は、誘電体層を介してバイアと称される導電性の通路によって、レベル間で相互接続されている。そうした多層構造によって、回路をよりコンパクトにすることができる。
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,147,019号明細書
【特許文献2】米国特許第4,536,535号明細書
【非特許文献1】"Full-Wave Analysis of a Split-Cylinder Resonator for Nondestructive Permittivity Measurements" by Michael Janezic published in IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques, Vol 47, No. 10, October 1999.
【非特許文献2】G. J. Dienes and H. F. Klemm (J. Applied Physics, 17(6) p458, 1946)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LTCCテープ材料の化学的構成要素から毒性の材料を排除することは、世界中の地域廃棄物処理システムにおいて、電子材料の公共への廃棄によって引き起こされる環境影響を低減するための望まれている目標である。このテープは潜在的に毒性のある構成要素を排除するように設計されている。テープは90GHzまで、あるいは時には金属ローディングに応じてより大きい高い周波数範囲にわたって、低誘電損失性能を有する均一でかつ低い誘電率(6〜8)を示す。テープは、プリントされた導体のベース層に金属を付加するのに使用される酸性めっきタンクに対して化学的に耐性がある。
【0006】
典型的な場合、LTCCテープは、無機固体、有機固体および散逸性(fugitive)溶媒のスラリーを、除去可能なポリマーフィルム上にキャスティングすることによって形成させることができる。スラリーは、ガラス粉末、セラミック酸化物フィラー材料、および調合し処理して、分散され懸濁された固体を含む流体にした有機ベースの樹脂−溶媒系(媒体)からなる。テープは、除去可能なポリマーフィルムの表面をスラリーでコーティングし、それによって均一な厚さとコーティングの幅を形成させることによって作製する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、モル%ベースで、46〜56%のB、0.5〜8.5%のP、SiOおよびそれらの混合物、20〜50%のCaO、2〜15%のLn(Lnは希土類元素およびそれらの混合物からなる群から選択される)、0〜6%のM’O(M’はアルカリ元素からなる群から選択される)ならびに0〜10%のAlからなるガラス組成物である。但し、その組成物は水系で粉砕可能である(water millable)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
米国特許(特許文献1)との共同作業で、誘電性テープが、繰り返し再焼成すると、Ag担持導体とのなんらかの持続的相互作用を有していることが確認された。その相互作用は、各再焼成後に、Agをベースとした導体の抵抗率を増大させ、たった4回の再焼成後にその導体抵抗を2倍にする結果をもたらことができる。
【0009】
LTCC回路積層体の焼成の間にガラスが軟化し、結晶化が始まることが観察されている。温度が上昇し、および/または時間が経過すると、結晶種のより多くがガラス溶融物から成長し、結晶が低粘度の「残留ガラス」で取り囲まれる結果となる。この低粘度「残留ガラス」は、焼成温度で導体組成物と反応して導体抵抗率の増大をもたらすことができる。極端な場合、焼成されたフィルム内で導体ラインが消散して、短絡、電気接続性の不足、信頼性の低下等を引き起こす。これは、導体ライン間で狭いラインアンドスペースを必要とする用途で特に当てはまることである。さらに、より新しいLTCC回路は、0.1mm〜0.3mm程度の厚さと20層以上の層のテープ積層体を有するテープの使用を必要とする。そうした厚さの積層体を加工する工程は30時間以上の長い加熱プロファイルを必要とする。そのような長い加熱プロファイルは、低粘度「残留ガラス」と導体成分との間の相互作用を増大させ、導体特性の劣化の増進をもたらす。導体特性の劣化を低減し、回路の信頼性を向上させるために、SiOおよび/またはPなどの「ガラス網目形成剤」を加えて、「残留ガラス」の粘度を増大させることができる。加えられたこれらの「網目形成剤」は、「残留ガラス」網目内に残留し、焼成温度で「残留ガラス」の粘度を増大させると期待される。Donohueの特許(例えば、特許文献1)(その開示を参照により本明細書に組み込む)に開示されているように、ガラス網目またはテープ処方へのSiOの添加によって、大きな誘電性の損失がもたらされる。この理由から、SiOを混ぜ込むことによってガラスの粘度を上げようとすることは、テープ誘電特性の低い損失特性を望むことと反することになるようである。本出願では、ガラスをDonohueが示すものより少ない量のSiOで調製して、ガラスの「残留ガラス」の粘度を増大させる。網目の中へPを添加することによって、「残留ガラス」の高温粘度を増大させることが期待される。Donohueの教示によれば、起こり得る所望の特性の損失は予想される結果であったので、この計画の好ましい結果は期待できなかった。
【0010】
本発明は、様々な回路製造の必要性に適したガラス組成物、ペースト組成物およびLTCCテープ組成物を対象とする。その材料は有毒な金属酸化物が存在しないことを特徴とする。材料は最近のテープ誘電体材料において標準的な850〜875℃で処理するように設計されている。テープは、スクリーンプリンティングまたはテープ積層化によって塗布される導体および他の受動的電気コンポーネントと共焼成されるように設計されている。焼成されたLTCCテープの特性は、回路動作周波数の現在での上限を90GHzまたはそれを超えるように押し上げる適用のための非常に低い誘電損失特性を有している。
【0011】
LTCCテープのガラス成分は、他の回路形成材料との物理的および化学的適合性、誘電性性能、耐化学性および密封性を含む多くのテープ特性のうちの重要な決定要素の1つである。予想外にも、本発明は、Paul C.Donohueによる発明であり、E.I.du Pont de Nemours and Companyに譲渡されている特許(特許文献1)に最初に記載されている、関連するLTCCテープの加工自由度ならびに導体および受動コンポーネントの適合特性を改良しようとする努力の過程で発見された。この予期せざる発見は、上記特許(特許文献1)の表1、ガラス組成物#16のようにして作製したLTCCテープの特性を、本発明の改変ガラスで作製したテープと比較した際に確認された。目標は、焼成テープの化学的耐久性、密封性または誘電損失特性を犠牲にすることなく、加工自由度を増進させ、Ag担持導体材料との適合性を向上させることである。
【0012】
このため、テープ誘電体性能の値を保持しながら、導体相互作用特性の向上を実現できるかどうかを判断するために、テープ誘電体に使用するガラスの組成の改変を開始した。他のガラス形成剤の添加を組み込むことによって、ガラスの粘度が上昇して焼成敏感性を低減させ、Ag導体相互作用の課題を改善させる可能性があると期待された。しかし、組成物を改変した結果、不都合な特性変化が進むおそれがあるかは未知であった。そこで、試験したガラスの多くを、PとSiOを加えて設計した。
【0013】
本発明のガラスは「セラミック充てんの不透明化ガラス組成物」である。明細書では、不透明化ガラスとは、本結晶化する前に流動する(すなわち、結晶化の発熱により、ガラスの軟化、流動が生じる)ガラスと定義されている。さらに、本発明のガラスは加熱により結晶性材料を形成する(すなわち、結晶化したガラスが残留ガラス中に存在する)。加熱により形成された結晶のケミストリーは親ガラス(加熱前)のケミストリーとは異なる。さらに、本発明のガラス中に存在するセラミックフィラーは、残留ガラスと反応して結晶を形成することができる。本明細書では「残留ガラス」を、結晶化していない組成物からなるガラスと定義する。本発明のガラスは、固体ベースで25〜100重量%の範囲の組成で存在する。
【0014】
本発明の一実施形態は、モル%ベースで、46〜56%のB、0.5〜8.5%のP、SiOおよびそれらの混合物、20〜50%のCaO、2〜15%のLn(Lnは希土類元素およびそれらの混合物からなる群から選択される)、0〜6%のM’O(M’はアルカリ元素からなる群から選択される)ならびに0〜10%のAlからなるガラス組成物であって、但し、水系で粉砕可能である組成物である。他の実施形態は、LnがLaである上記組成物である。さらに、他の実施形態は、M’OがLiO、NaOおよびそれらの混合物からなる群から選択される上記組成物である。
【0015】
本発明のガラスの組成を以下の表1に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】
表1の組成物#1は特許(例えば、特許文献1)(#16)による標準組成物であり、本発明に含まれるものではない。
【0019】
表1のガラスは、テープ誘電体を作製するための処方の関係のみで通常使用される。比較試験で使用するテープ固体の典型的な処方は以下のものからなる。
ガラス粉末 48体積%
アルミナ 52体積%
【0020】
テープ処方においてガラス#1の加熱と冷却の両方によって得られた熱膨張挙動を図1に示す。図1、図2および図3のデータは石英ガラス膨張計で、2インチ(5.1cm)の長さの試験片を用いて得られた。膨張計を、サファイア基準について試験した加熱範囲にわたる膨張への回帰フィッティングによって較正した。図1および図2のデータは、4.5℃/分で865℃へ加熱して3分間ソーキングし、次いで3℃/分で250℃に冷却して得た。
【0021】
図1では、加熱経路と冷却経路は、ベルトファーネス中で850℃に焼成し、次いで865℃までの石英ガラス膨張計で再測定した場合に可能である降伏を示す形で分離させている。これは、測定(0.05ニュートン)の間にかけたローディングの下で、結晶と残留ガラスの複合体が降伏していることを示している。典型的な場合、結晶成長が支配的になると、微細構造での降伏は起こらない。このため、残留するガラス状相が、ガラス#1テープ中の降伏特性を依然支配していると予期される。低粘度残留ガラスの存在は、埋め込んだAg導体ラインと反応して、再焼成での観察される伝導度変化および/または小さい寸法の導体ラインアンドスペース(<0.15mm)の場合の回路開放を引き起こす潜在的な理由である。
【0022】
テープ処方において代替のガラス#6をベースとしたテープ(図2)は、ガラス#1テープの熱膨張挙動とは反対に、比較的安定した加熱および冷却特性をもたらす結果となっている。これは、焼成したガラス#6テープが、ガラス#1テープのそれより耐火性の状態になっていることを示唆している。この結果は、焼成テープを865℃に再加熱し冷却しても、より小さいテープの降伏が可能であるということである。これは、残留ガラスがより耐火性の状態であるか、または、焼成テープボディの微細構造において、結晶成長が支配的になってきたことを示しているようである。最も可能性のある結果は、残留ガラスがより耐火性であるということである。
【0023】
膨張計の加熱プログラムを、3℃/分で加熱しながら温度を1000℃にまで上昇させた場合の、種々のガラス組成物で作製したテープの安定性特性を図#3で見ることができる。
【0024】
ガラス#6テープで作製したテープは950℃超まで良好な安定性を示す。他方、ガラス#1で作製したテープは、850℃超の温度で著しい体積膨張特性を示し、950℃の手前で幾分変形している。ガラス#10のテープは、ガラス#1テープとガラス#6テープとの間に位置する膨張挙動を示す。これらの特性の差は、残留ガラスが結晶に対してより少ない割合であるか、または、熱膨張データの増大した耐火性能で示されるように、ガラスの複合体粘度が、ガラス#6テープについて、より高いことを示唆している。耐火性能の改善によって、導体材料との適合性の改善が期待される。ガラス#6テープにおいてBをPに代えたことによるこの耐火性能の改善は、予想外に、以下の表2から分かるように、誘電率(E)および誘電損失率(正接デルタ)の減少を示している。
【0025】
Donohueの特許(例えば、特許文献1)は、SiOによるBの代替は、若干の添加であってもテープ誘電損失率に悪影響を及ぼす(第2段、5行目)ことを開示している。そこで、P、GeOおよびSiOを含むガラス形成剤で代替する本発明は、従来技術で教示されておらず、有益であるとは予測されていない。実際、Donohueは本発明とは関係ない教示をしている。
【0026】
誘電率、Eおよび誘電損失率(正接デルタ)の測定は、表2に示したガラスから作製したテープの選択サンプルについて実施した。これらの測定は、(非金属化)スプリット空洞法(split cavity method)を用いて3.3GHz〜16GHzの周波数範囲で行った。この測定法は、文献(非特許文献1)を参考にした。2つの周波数についてのデータを表2に示す。すべての測定サンプルについて、データ(Eおよび損失)は、非常に小さい周波数の増加を示している。表2のデータから、得られたLTCCテープ特性での改善(より低いEとより小さい損失)は、ガラス6、14および15のように、BをPまたはSiOで代替することにより得られることも明らかである。測定における小さな実験誤差のため、得られた誘電特性にある程度の変動が見込まれることに留意することも重要である。
【0027】
【表3】

【0028】
ガラス#1テープ、ガラス#2テープおよびガラス#6テープの熱機械分析(TMA)特性を図4に示す。TMA測定はTA Instruments Inc.のTMAを使用し、10℃/分で室温から850℃までの加熱プログラムを用いて行った。850℃の温度で5分間保持し、次いで、すべてのサンプルについて電源を切った。ガラス#1テープは、ガラス#6またはガラス#2テープより早く焼結を起こし始める。また、ガラス#6またはガラス#2テープより早く結晶の臨界体積を成長させ、より少ない寸法変化をもたらす(テープ収縮)。これは、ローディング下での変形の減衰によって示されている。ガラス#2テープは、ガラス#2のTCE特性に見られる急激なガラス体積膨張(780℃〜810℃)の影響を示している。ガラス#6テープは、同じガラスの体積膨張特性は有しておらず、テープは、複合体粘度の増大によってテープが硬直するまで変形し続けることを示している。
【0029】
ガラス単独でのTMA特性を図5に示す。ガラス#1は、本発明のガラスより低い温度で焼結し、流動し始める。ガラス#2とガラス#6とはどちらも、結晶性の相の成長のため、寸法安定性がもたらされる前はより小さい収縮を示す。結晶含量を推定するためのTMA法とX線法とによって特性評価して、他の結晶性ガラスと比べて、結晶性相の成長は50体積%を超えていると推定される。
【0030】
図6に示したガラス粘度データから分かるように、ガラス組成物においてBをPで代替するとガラス粘度は増大する。ガラス粘度は、log(粘度)=5から10の粘度領域での平行板法によって測定した。用いた平行板法は、文献(非特許文献2)に記載の1型である。測定データを、フィッティングさせ、精度のリスクはあるものの測定領域を超えて外挿した。この粘度の増大は、Pを大部分がホウ酸塩であるガラスに加えたことによる耐火性BPO構造群の生成によるものと推定される。
【0031】
他のガラス形成剤および中間酸化物が、ガラス粘度を増大させることが知られている。GeO、SiOおよびZrOによる代替は、表1に示した組成でも表されている。しかし、粘度を増進させる添加のすべてが、改変ガラスから作製したテープの安定性特性の所望の改善をもたらすとは限らない。当業者は、GeOまたはSiOなどの他のガラス形成酸化物の添加を、それらを組み合わせて、または単独で用いて、Pと同じようなテープ安定性特性への利益を得ながら、高ホウ酸塩ガラスの粘度特性を改変させることができる。高ホウ酸塩ガラスの低粘度特性は、製造の操作において、ガラスとテープの特性の制御をより困難にすることが知られている。このため、本特許の教示を他の高ホウ酸塩ガラスに適用すると、他のLTCC誘電体の焼成安定性、導体適合性および誘電特性が改善されることが明らかである。ガラス組成物において、Bに代えて0.5〜8.5モル%のPを添加すると、テープ誘電特性の向上という予期せざる結果がもたらされる。後の節で導体適合性試験について述べるように、テープ誘電体とのAgベースの導体の相互作用も著しく改善される。
【0032】
SiOを添加した表1の組成物は、Agをベースとした導体ラインとの適合性の著しい改善を示している。Ag導体ラインの近傍で相互に作用する傾向は、ガラス12、13、14、15、18および19から作製された試験テープ組成物では抑えられている。この結果はDonohueによって教示されていなかった。表2に報告の誘電損失特性は、予想外に、組成物14でのSiOの添加が、テープ誘電体の電気的損失特性を実質的に低減させることを示している。組成物15は、組成物1と比較して、最も大きな誘電損失率の減少を示している。測定はされていないが、この損失減少の結果は、組成物12および13についても可能性がある。この場合に示したガラスへの低い添加レベルでのSiOの添加については、Donohueは報告していない。SiOの添加は、誘電損失には有益ではないことが示された。
【0033】
この試験で実証した組成範囲は:B46〜58モル%、CaO28〜29モル%、La10〜12モル%、NaO1.3〜1.5モル%、LiO1.3〜1.5モル%、P0.〜5.5モル%、SiO0〜5.5モル%である。実験データで示した基準組成物1に優る性能の利点を獲得するためには、少なくとも0.5モル%のSiO、Pまたはその両方で、Bを代替させなければならない。SiO、P、GeO等の主に1つの追加のガラス形成剤を同時に含むLTCCテープを作製するように調製したガラス組成物で試験を実施したが、当業者は、2つ以上のガラス形成剤を用いて、支配的なホウ酸塩ガラスを改変させることができる。この場合の教示を用いることによって、高ホウ酸塩ガラスをベースとした類似の低損失LTCCテープの作製に同等の利益が期待されると見込まれる。
【0034】
ガラス調製手順
ガラスを、白金るつぼ中で、1350〜1450℃の温度範囲で溶融させた。そのバッチ材料は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カルシウム以外は酸化物の形態であった。五酸化リンは、予め反応させたリン酸塩化合物、例えばCa、Na、LiPOまたはBPOの形態で加えた。ガラスを0.5〜1時間溶融させ、撹拌しクエンチさせた。ガラスは、水に入れるか、または金属ローラーによってクエンチさせることができる。次いで、ガラスを水の中で、ボールミルで粉砕して5〜7ミクロンの粉末にした。ガラススラリーを、325メッシュスクリーンに通してスクリーニングにかけた。次いでスラリーを乾燥し、再度ミルで粉砕して約1〜3ミクロンのD50の最終サイズにした。次いで乾燥したガラス粉末を準備し、テープを作製するためのテープ処方で使用した。
【0035】
Al、ZrO、SiO、TiOまたはそれらの混合物などのセラミックフィラー(耐火性酸化物)を、固体ベースで0〜75重量%の量で、キャスタブル誘電性組成物に加えることができる。フィラーの種類に応じて、焼成後に様々な結晶性相が生成されることが予想される。フィラーは、上記周波数の範囲にわたって誘電率および誘電損失率を制御することができる。例えば、BaTiOの添加によって誘電率を大幅に増加させることができる。
【0036】
ガラスと反応してAl含有結晶性相を生成するので、Alは好ましいセラミックフィラーである。Alは、高い機械的強度と有害な化学反応に対する不活性さを提供するのに非常に効果的である。セラミックフィラーの別の機能は、焼成の間の系全体のレオロジー的制御である。セラミック粒子は、物理的障害物として作用することによってガラスの流れを制限する。この粒子は、ガラスの焼結も阻止し、それによって有機物の燃焼をより容易にもする。α−石英、CaZrO、ムライト、コージライト、フォルステライト、ジルコン、ジルコニア、BaTiO、CaTiO、MgTiO、無定形シリカまたはそれらの混合物などの他のフィラーを用いて、テープの性能および特性を改変させることができる。フィラーの量、フィラーの種類およびフィラーの物理的特性は、焼成されたグリーンテープの収縮に影響を及ぼすこととなる。テープ収縮は、フィラー充てん密度を増大させることによって、収縮を低減するように最適化された多様な粒度分布を用いて、制御されたレベルに調節することができる。
スラリーおよび/またはテープ組成物は固体ベースで0〜5重量%のCuOをさらに含むことができる。
【0037】
テープ組成物の調製では、セラミック材料の量に対するガラスの量が重要である。十分な稠密化が得られる点で、40〜55重量%のフィラーが望ましいと考えられる。フィラー濃度が60重量%を超える場合、焼成された構造は十分に稠密化されず、過度に多孔質となる。望ましいガラスとフィラーとの比の範囲内では、焼成の際、フィラー相が液体ガラスで飽和されることになることは明らかであろう。
【0038】
焼成による組成物をより稠密化するためには、無機固体が小さい粒子サイズであることが重要である。具体的には、ほぼすべての粒子が15μmを超えないようにすべきであり、好ましくは10μmを超えないようにすべきである。これらの最大サイズの制限を前提として、ガラスとセラミックフィラーの両方の粒子の少なくとも50%が1μm超であり、6μm未満であることが好ましい。
【0039】
ガラスとセラミック無機固体が分散している有機媒体は、揮発性有機溶媒中に溶解された有機ポリマー系結合剤、および、任意選択で可塑剤、離型剤、分散剤、剥離剤、消泡剤、安定剤および湿潤剤などの他の溶解した材料を含む。
【0040】
よりよい結合効率を得るためには、全組成物ベースで、90重量%の固体(これはガラスとセラミックフィラーを含む)に対して少なくとも5重量%のポリマー結合剤を使用することが好ましい。しかし、30重量%以下のポリマー結合剤および可塑剤などの他の低揮発性調節剤、ならびに少なくとも70%の無機固体を使用することがより好ましい。熱分解によって除去しなければならない有機物の量を低減させ、焼成による完全な稠密化を容易にするより良好な粒子の充てんをもたらすために、これらの制限内で、できるだけ少ない量の結合剤と他の低揮発性の有機調節剤を用いることが望ましい。
【0041】
これまで、グリーンテープ用の結合剤として様々なポリマー系材料が使用されてきた。例えば、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、アタクチックポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ(メチルシロキサン)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)などのシリコンポリマー、ポリスチレン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ポリスチレン、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリアミド、高分子量ポリエーテル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー、ポリアクリルアミド、およびナトリウムポリアクリレート、ポリ(低級アルキルアクリレート)、ポリ(低級アルキルメタクリレート)などの様々なアクリルポリマー、ならびに低級アルキルアクリレートおよびメタクリレートの種々のコポリマーおよびマルチポリマーである。エチルメタクリレートとメチルアクリレートのコポリマー、ならびにエチルアクリレート、メチルメタクリレートおよびメタクリル酸のターポリマーが、これまでスリップキャストの材料用の結合剤として使用されてきた。
【0042】
1985年8月20日発行のUsalaの米国特許(特許文献2)は、0〜100重量%のC1〜8アルキルメタクリレート、100〜0重量%のC1〜8アルキルアクリレートおよび0〜5重量%のアミンのエチレン不飽和カルボン酸の相溶性マルチポリマーの混合物である有機結合剤を開示している。最大量の誘電性固体と一緒に、上記ポリマーを最少量で使用することができるので、これらを選択して、本発明の誘電性組成物を作製することが好ましい。このため、先に参照したUsalaの出願の開示を参照により本明細書に組み込む。
【0043】
しばしば、ポリマー系結合剤は、結合剤ポリマーのガラス転移温度(Tg)を低下させように働く可塑剤も、結合剤ポリマーに対して少量含む。もちろん、可塑剤の選択は、主として、改変を要するポリマーによって決まる。様々な結合剤系で用いられる可塑剤には、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、アルキルホスフェート、ポリアルキレングリコール、グリセロール、ポリ(エチレンオキシド)、ヒドロキシエチル化アルキルフェノール、ジアルキルジチオホスホネートおよびポリ(イソブチレン)が挙げられる。これらのうち、比較的低い濃度で効果的に使用することができるので、アクリル酸ポリマー系ではブチルベンジルフタレートが最も頻繁に使用される。
【0044】
キャスティング溶液の溶媒成分は、ポリマーの完全な溶解が得られ、かつ、大気圧で比較的低いレベルの熱をかけることにより溶媒を分散液から蒸発させることができる十分に高い揮発性が得られるように選択する。さらに、溶媒は、有機媒体中に含まれる任意の他の添加剤の沸点または分解温度より十分低い温度で沸騰しなければならない。したがって、150℃未満の大気沸点を有する溶媒が最も頻繁に用いられる。そうした溶媒には、アセトン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、酢酸アミル、2,2,4−トリエチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレート、トルエン、塩化メチレンおよびフルオロカーボン類が含まれる。上記した個々の溶媒は、結合剤ポリマーを完全には溶解させないおそれがある。しかし、他の溶媒と混ぜた場合、それらは十分に機能する。これは当業者の十分に周知の範囲内である。環境に有害なクロロカーボン類の使用が回避されるので、特に好ましい溶媒は酢酸エチルである。
【0045】
溶媒とポリマーに加えて、可塑剤を用いると、テープクラッキングが防止され、ブランキング、プリンティングおよび積層化などのコーティングしたままの(as−coated)テープのハンドリング性の広い自由度を提供される。好ましい可塑剤はRohm and Haas社製のポリプロピレングリコールジベンゾエートである、BENZOFLEX(登録商標)400である。
【0046】
用途
上記のようなガラス、セラミックフィラー、ポリマー系結合剤および溶媒のスラリー分散液の薄層を、可撓性の基材上にキャストティングさせ、そのキャスト層を加熱して揮発性溶媒を除去させてグリーンテープを形成する。これによって溶媒フリーのテープ層が形成される。次いで、テープをシート中にブランク(blank)するか、またはロール状に集める。グリーンテープは典型的な場合、多層電子回路用の誘電性材料すなわち絶縁材料として用いられる。グリーンテープのシートを、回路の実際の寸法より若干大きいサイズで、各隅部に整合ホールをブランクする。多層回路の種々の層を連結させるために、グリーンテープにバイアホールを形成させる。これは典型的な場合機械的なパンチングによって行う。しかし、鋭く焦点をあわせたレーザーまたは他の方法を用いて揮発させ、グリーンテープにバイアホールを形成することができる。典型的な場合、バイアホールサイズは0.1〜6.4mmの範囲である。厚膜導電性インクを用いてバイアホールを充てんして層間の相互接続を形成する。このインクは通常、標準的なスクリーンプリンティング技術によって塗布される。回路の各層は、スクリーンプリンティング導体トラックで仕上げる。また、レジスターインクまたは高誘電率インクを、選択した層上にプリントして抵抗性または容量性の回路要素を形成することもできる。さらに、多層キャパシタ業界で使用されるものと類似した、特別に調製した高誘電率グリーンテープを多層回路の一部として組み込むことができる。
【0047】
回路の各層を完成した後、個々の層を順に並べ、積層化する。密閉一軸または静水圧のプレスダイを用いて、層間の正確な配置を確実にする。高温用カッター(hot stage cutter)で積層体アセンブリの形を切り整える。焼成は、典型的な場合、標準的な厚膜コンベアベルトファーネスまたはプログラム化された加熱サイクルを有する箱型ファーネス中で実施する。この方法はまた、頂部層および底部層としての従来のリリーステープの使用、焼成後のリリーステープの除去、およびクリーニングの必要なく、頂部導体および/または底部導体を束縛焼結構造の一部として共焼成させることもできる。
【0048】
本発明の焼成テープ(またはフィルム)の誘電特性は、存在する結晶とガラス全体の量および/または質に依存する。低温共焼成したセラミック(LTCC)デバイスの誘電特性も使用した導体に依存する。いくつかの他の実施形態では、導体の誘電性テープとの相互作用は、デバイスの誘電性部分のケミストリーを変えることができる。加熱プロファイルを調節し、かつ/または、テープ中のフィラーの質および/または量、および/または導体のケミストリーを変えることによって、当業者は、誘電率および/または誘電損失率の変更を行うことができる。
【0049】
本明細書では「焼成」という用語は、空気などの酸化性雰囲気下でアセンブリをある温度で、アセンブリの層内のすべての有機材料を揮発(燃焼)させるのに十分な時間加熱して、層内のどのガラス、金属または誘電性材料も焼結させて、アセンブリ全体を稠密化させることを意味する。
【0050】
当業者は、積層化ステップのそれぞれにおいて、バイアホールが、隣接する機能層の適当な導電性経路に適切に連結されるように、層を正確に位置合わせすべきであることを理解されよう。
【0051】
「機能層」という用語は、導電性、抵抗性または容量性の機能を有するプリント化されたグリーンテープを指す。したがって、上述したように、典型的なグリーンテープ層は、1つまたは複数のレジスタ回路および/またはキャパシタならびに導電性回路をその上にプリントされていてよい。
【0052】
10層を超える層を有する多層積層体は、典型的な場合、有機熱分解のための十分な時間を与えるために、焼成サイクルが20時間を超える必要があることも理解されたい。
【0053】
本発明の組成物の用途は、一般に多層回路を含む電子物品の形成に使用して、これらに限定されないが高周波数センサー、多モードレーダーモジュール、電気通信コンポーネントおよびモジュールならびにアンテナを含むマイクロ波および他の高周波数回路コンポーネントを形成させることができる。
【0054】
これらの多層回路では、回路が、絶縁用誘電体層によって隔てられた複数の層の導体で構成されていることが必要である。絶縁用誘電体層は、本発明のテープからなる1つまたは複数の層からできていてよい。導電性層は、誘電体層を介した電気的に導電性経路によって、レベル間を相互接続されている。誘電性層および導電性層でできた多層構造を焼成すると、機能性回路を可能にする複合体が形成される(すなわち、電気的に機能性複合体構造が形成される)。本明細書で定義するこの複合体は、電気的に機能性の回路をもたらす多層構造の焼成により得られた明確に区分された部分でできた構造材料である。
【実施例】
【0055】
実施例で使用したテープ組成物は、揮発性溶媒またはそれらの混合物中で、微細な無機粉末と結合剤をボールミルで粉砕して調製した。積層化、回路をパターン化する能力、テープ燃焼特性および焼成ミクロ構造の成長を最適化するためには、以下の体積%の処方のスリップが好都合であることが分かった。実際上の参考として、典型的なスリップ組成物の調製を重量パーセントでも示す。無機相は、ガラスでは3.5g/cc、アルミナでは4.0g/ccの比重(specific density)を有していると推定され、有機ビヒクルは1.1g/ccの比重を有していると推定される。比重が、本実施例で想定したものと異なるので、ガラスとアルミナ以外の酸化物を使用した場合、重量%組成はそれに応じて変わることになる。
体積% 重量%
無機相 41.9 73.8
有機相 58.1 26.2
【0056】
上記の体積%および重量%でのスリップ組成物は、効果的なスリップミリングとコーティング性能を得るために、有機溶媒および/または溶媒混合物の望ましい量に応じて変えることができる。より具体的には、スリップのための組成物は、粘度を10,000センチポアズ未満に低下させるのに十分な溶媒を含まなければならない。典型的な粘度範囲は1,000〜4,000センチポアズである。スリップ組成物の例を表3に示す。選択したスリップ粘度に応じて、スリップの粘度がより高くなると、分散安定がより長期に延ばされる(通常数週間)。テープ構成要素の安定した分散が、通常コーティングしたままのテープにおいて保持される。
【0057】
【表4】

【0058】
必要なら、粉砕処理の前に、好ましい無機顔料を0.1〜1.0重量%の量で上記スリップ組成物に加えることができる。
【0059】
ガラス粉末調製
本明細書の実施例用のガラスはすべて、電気加熱型のファーネスにおいて、Pt/Rhるつぼ中で1350〜1450℃、約0.5〜1時間で溶融させた。ガラスを、水の中に注加してクエンチし、迅速に取り出し、予備ステップとして乾燥させ、次いで、水中で粉砕して粒子サイズを微細化した。これらの試験用に調製した粉末を、ボールミルで粉砕し、スクリーニングして1〜3ミクロンの平均サイズに調節した。粉砕したスラリーを高温の空気オーブン中で乾燥し、スクリーニングして凝集を破壊した。ガラス、アルミナおよびテープ媒体を一緒に粉砕して、ポリマーをベースとした担体基材上にスラリーをキャスティングすることによって、テープを形成するのに適したスリップを作製した。均一な寸法の層を形成するテープキャスティング装置を用いてテープをキャスティングし、乾燥してほぼ約0.11mmの厚さの可撓性のテープを形成した。
【0060】
化学的耐久性試験
10層のテープの層を積層化して焼成後で2.5×2.5mmの寸法を有するサンプルを形成した。サンプルを、標準的LTCC加熱プロファイル(ドアツードアで190分間)で焼成し、40℃の一定温度で10%の酸強度の2つの異なる鉱酸の中に、それぞれについて30分間の一定した期間浸漬させた。テープの成分が酸の中に浸出したことによる重量損失(重量%の差)を化学的耐久性の尺度とした。2つの市販のLTCCテープ、951−ATおよび943−A5、(Dupont Company,Wilmington DE)を対照として用いた。結果を以下に示す。
【0061】
【表5】

【0062】
本発明の耐化学性は、標準的943テープより実質的に改善されている。
【0063】
機械的強度
標準的LTCC加熱プロファイルを用いて、10層の「グリーンテープ」を積層化し焼成した。いくつかの重複部分の破壊応力を測定した。その平均値を以下に示す。
【0064】
【表6】

【0065】
これらの結果は、すべてのテープ材料において同じような強度が得られたことを示している。
【0066】
加工自由度
10層の「グリーンテープ」を、最高焼成温度と時間を、最高温度850℃一定で10分間保持しながら、3つの異なる加熱プロファイルを用いて積層化し焼成した。3つの加熱プロファイルについての合計時間は75分間、190分間および380分間であった。
【0067】
2つの誘電特性である、誘電率と誘電損失率とを、8〜9GHzの一定周波数で測定し、加工自由度の尺度とした。結果を以下に示す。
【0068】
【表7】

【0069】
ガラス#6によるLTCCテープについては、誘電率および誘電損失率が減少している。ほとんどすべてのテープサンプルについて、テープ積層体の加熱速度については誘電特性の漸進的な低下を示している。
【0070】
温度の効果の追加的な試験では、ガラス#2で作製したテープ積層体を焼成するのに、825℃、850℃および875℃で10分間、190分間プロファイルを用いた。結果を以下に示す。
【0071】
【表8】

【0072】
加熱プロファイルを固定し、ピークソーキング温度を、加工自由度のシミュレーションとして変化させた場合、特性はわずかしか変わらないことが分かった。したがって、加工自由度が良好であることが示された。本発明によるガラスから作製されたテープの特性は、得られた誘電特性の望ましさと、その特性を再現可能にする安定性との両方が改善することが分かった。
【0073】
「不透明化ガラス−セラミック複合体」である本発明の焼成したフィルムの誘電特性は、複合体中に存在する全結晶と残留ガラスの量と質に依存する。LTCC誘電特性は、「金属−不透明化ガラス−セラミック複合体」である導体フィルムにも依存する。精通した技術者は、加熱プロファイルを調節することによって、焼成したフィルム中に存在する成分の比を変更して、より低い誘電率および/またはより小さい誘電損失率を実現することがきよう。
【0074】
テープ収縮および再焼成安定性
収縮値を測定し、次いで当業者に周知の「三平方の定理(Hypotenuse)」法を用いて計算した。標準的グリーンテープ焼成プロファイルに従って、すべての部分を850℃で焼成した。再焼成は、30分間、800℃超のプロファイルを用いて850℃で実施した。
【0075】
【表9】

【0076】
ガラス#1をベースとしたテープ(943市販テープ)についての収縮データは、部分相互間と再焼成相互間で、本発明のガラス#6をベースとしたテープより大きい変動を示している。ガラス#1テープについて見られるこの変動は、本発明を用いて作製したテープより、テープ収縮の製造制御をより困難にしている。改善されたテープの変動は、最初と3回(3X)再焼成したものとの間で0.11〜0.12程度である。標準的テープの変動は同一条件で、0.3〜0.18の範囲である。収縮についての製造仕様のための許容範囲は+/−0.3%であるので、これは、限界プロセス制御(marginal process control)をもたらす。しかし、部分相互間の収縮の変動はばらつきの最も大きな原因である。943テープの最初の焼成は0.65の差を示している。これは適用に必要な変動を超えている。改善されたテープは非常に小さい部分間の変動を示しており、現在の寸法安定性基準に適合するように作製することができる。
【0077】
導体適合性/再焼成安定性
直列に連結された5000スクェア(square)の導体ラインと300を超えるバイアフィル(via−fill)導体とからなる「デイジーチェーンテスト」を、システムの導体適合性と再焼成安定性を評価するために用いた。それぞれ焼成した後、抵抗率を測定した。無限大の抵抗率を与えることによって、どのような導体ラインの開切(break)および/または導体−バイアフィル導体の分離も試験中に示されるはずである。導体開放(open)は検出されなかった。試験は、0.05、0.11および0.25mmの厚さのテープで行い、同じ安定性性能が示された(すなわち開放なし)。図7に示す、#6ガラスをベースとした本発明のテープを用いた、再焼成の回数を関数としたAgをベースとした導体の抵抗率は、高いレベルの安定性が得られたことを示している。
【0078】
ガラス#1(Donohue基準)と比較した場合、ガラス#14、#20および#6から作製した焼成テープサンプルは、0.127mmのラインアンドスペースを有する埋め込み導体ライン近傍でAg相互作用の損傷を示していない。対照的に、ガラス#1をベースとしたテープは、テープ誘電体内の埋め込み導体ラインの近傍で局在化した導体侵食を示している。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1、図2および図3のデータは、石英ガラス膨張計で2インチ(5.1cm)の長さの試験片を用いて得た。
【図1】テープ処方中のガラス#1の加熱と冷却との両方でとった熱膨張挙動を示す図である。
【図2】テープ処方中にガラス#6をベースとしたテープへ代えると比較的安定した加熱および冷却特性が得られることを示す図である。
【図3】膨張計の加熱プログラムを、3℃/分で加熱しながら1000℃に接近するまで温度を上昇させ、様々なガラス組成物によって作製したテープの安定性の特性を示す図である。
【図4】ガラス#1テープ、ガラス#2テープおよびガラス#6テープの熱機械分析(TMA)特性を示す図である。
【図5】ガラス単独でのTMA特性を示す図である。
【図6】ガラス組成物中のBをPに置き換えた場合のガラスの粘度への効果を示す図である。
【図7】Agをベースとした導体の抵抗率を、再焼成の回数の関数として示した図である。図7では、#6ガラスをベースとした本発明のテープを用いて、高いレベルの安定性が得られている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モル%ベースで、46〜56%のB、0.5〜8.5%のP、SiOおよびそれらの混合物、20〜50%のCaO、2〜15%のLn(Lnは希土類元素およびそれらの混合物からなる群から選択される)、0〜6%のM’O(M’はアルカリ元素からなる群から選択される)ならびに0〜10%のAlからなることを特徴とするガラス組成物であって、但し、水系で粉砕可能である組成物。
【請求項2】
LnはLaであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
M’OはLiO、NaOおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
固体ベースで、
(a)25〜100重量%の請求項1に記載のガラス組成物、
(b)0〜75重量%の耐火性酸化物を含み、その両方が
(c)有機ポリマー系結合剤
の溶液中に分散されていることを特徴とする組成物。
【請求項5】
揮発性有機溶媒をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
0〜5重量%のCuOをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記耐火性酸化物はAlであることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記CaOが部分的にBaO、MgOまたはそれらの混合物によって代替されていることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
請求項5に記載の誘電性組成物の層を可撓性の基材上にキャスティングしてキャスト層を形成し、前記キャスト層を加熱して、揮発性有機溶媒を除去することによって溶媒フリーの層を形成することにより形成されたことを特徴とするグリーンテープ。
【請求項10】
前記溶媒フリーの層は基材から隔てられていることを特徴とする請求項9に記載のテープ。
【請求項11】
導体組成物はテープ上に堆積されていることを特徴とする請求項9に記載のテープ。
【請求項12】
導体組成物はテープ上に堆積されていることを特徴とする請求項10に記載のテープ。
【請求項13】
請求項9に記載のテープを含む物品であって、前記テープを処理して有機ポリマー系結合剤を蒸発させ、ガラス組成物を焼結させることを特徴とする物品。
【請求項14】
請求項10に記載のテープを含む物品であって、前記テープを処理して有機ポリマー系結合剤を蒸発させ、ガラス組成物を焼結させることを特徴とする物品。
【請求項15】
導体をさらに含む請求項9または10のいずれか一項に記載の物品であって、前記物品が処理されて電気的に機能性の複合体構造を形成していることを特徴とする物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−176787(P2007−176787A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−309207(P2006−309207)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】