説明

鉱石(ora)からの有価金属回収のための塩酸存在下での浸出方法

有価金属を含有する鉱石から該有価金属を浸出するための方法が述べられており、この方法は、塩酸存在下において鉱石を浸出して浸出溶液中に可溶性の金属−塩化物塩を形成させる工程;二酸化硫黄を浸出溶液に添加する工程;浸出溶液から金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩を回収する工程;及び塩酸を再生する工程を含む。鉱石は、酸化亜鉛鉱石のような酸化物卑金属鉱石;サプロライト性又はリモナイト性の鉱石のようなラテライト性ニッケル鉱石;硫化物鉱石又はチタン鉱石、であっても良い。有価金属は典型的に、Zn、Cu、Ti、Al、Cr、Ni、Co、Mn、Fe、Pb、Na、K、Ca、白金族金属及び金からなる群から選択される。金属−硫酸塩又は亜硫酸塩中の金属は、有価金属であってもよく、又はマグネシウムのような有価金属よりも低い価値の金属であってもよい。再生された塩酸は浸出プロセス内で再利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、塩酸を生成又は再生する塩化物ブライン処理方法、及び塩化物溶液中の鉱石から金属を浸出させるための方法に関わる。該方法は、鉱石又は精鉱からの有価金属の回収のための経済的及び環境的に許容できる湿式冶金プロセスの手順を提供する。
【背景技術】
【0002】
比較的濃縮された塩化物ブラインを卑金属の浸出のための媒体として利用することは、過去に何度も提案されてきたが、その最近の例は、WO 2003/35916、WO 2003/89675及びその他の特許などの様々な特許中で説明及び記載されているように、オウトクンプ・ヒドロカッパー・プロセス(Outokumpu Hydrocopper process)である。高強度塩化物ブラインは、一般的な比較的希釈な硫酸塩媒体よりも、概してより早くより完全な浸出を可能にする。しかしながら、そのようなブラインからの溶解有価物の回収は通常厄介なものであり、標準的な電解採取技術では不可能である。
【0003】
ニッケルラテライト鉱石の浸出のために塩酸(塩化物)媒体を使用することは、長年様々な機関における研究課題であったが、この分野において特に草分けとなっているのはリーズ大学(Leeds University)のN.M.Rice氏(Rice,1989参照)である。良好な浸出動力学は、典型的なケイ酸塩(蛇紋石)及び酸化物(リモナイト)鉱石の両方において達成されており、従ってこの系が典型的なラテライト層中の様々な物質からニッケルのような有価物を浸出させるために利用され得ることを示している。特に興味深いのは、高温(典型的には80℃以上)での4モル濃度塩酸溶液中での速い(1時間)浸出動力学であった。概念的なフローシートが後に提案され(Rice及びStrong,1974)、そこでは有価のコバルト及びニッケル(これらは後に、それぞれ、溶媒抽出及び水酸化ニッケルとして加水分解(中和剤としてマグネシアを用いる)によって除去される)を可溶化するために塩酸浸出を利用している。鉄やマグネシウムのような不純物は、高価な塩酸を消費する主要な要因である。塩化鉄は溶媒抽出によって溶液から除去され、そしてスプレー焙焼工程で処理されて安定なヘマタイトを形成し、かつ浸出工程に戻す循環用の塩酸を再生する。同様に、塩化マグネシウムはスプレー焙焼工程で処理されてマグネシア(副産物として販売される、及び/又は中和剤として使用される)を形成し、かつ塩酸(浸出工程へ戻されて再利用される)を再生する。
【0004】
世界の地上Ni資源の約70%はラテライト鉱石中に含まれていると見積もられている。現在、生産されるNiの約40%のみがラテライト鉱石から抽出されており、またこの数値は2012年までに約50%にまで増加すると見積もられている(Dalvi他,2004からの数値)。現存する技術が提供し得るものよりも顕著に低操業及び特に低資本コストでラテライト性鉱床からNi及びCoを回収する新たな処理手段に対する必要性が存在している。さらに、供給に目を向けてみると、おおよそ年率4%のNi需要増加を仮定すれば(当然様々な要因によってこの数値は乱れ得る)、需要を満たすために市場は年間40〜45000トンの新たなNi生産を必要とすることになるであろう(Dalvi他,2004からの数値)。小さな硫化物鉱床、主要な未開発地域のラテライト・プロジェクト(例えば、ゴロ(Goro)及びレーベンズソープ(Ravensthorpe)高圧酸浸出プロジェクト(high pressure acid leach project)、コニアンボ(Koniambo)のような新規製錬所、及びボイジーズベイ(Voisey’s Bay)のような新規硫化物湿式冶金処理手段)からの新たな供給の追加を考慮に入れたとしても、供給が消費に追いつかなくなるであろう。
【0005】
地質学及び鉱物学
ラテライト処理の経済学は、原料鉱石の等級及び組成に強く依存する。ニッケルラテライト鉱床は二つの主要な層、すなわち、表面付近のリモナイト性(水和酸化鉄)物質(低量のNi及びMg、多量のFe)及びより深いところのサプロライト性(水和ケイ酸マグネシウム)物質(多量のNi及びMg、及び低量のFe)から成っている。これらの鉱床は母岩の風化作用によって形成されており、母岩自体はFe−Mg−Si−O−鉱物の形態である結晶化した溶岩が元になっている。母岩はNi(〜0.2%)及びCoを含有しており、その理由はそれらがこれらのケイ酸塩の結晶格子中でFe及びMgを置換することができる(類似の価数及びイオン半径)からである。主な蛇紋石鉱物であるMg(Si)(OH)は、蛇紋石化作用の過程において、高温高圧条件の下(水の存在下、地球表面下)で母岩から形成される。これが、Niの自然な品質向上(<0.5% Ni)につながる。マグネタイトもまた、この蛇紋石化作用変化過程の副産物として形成され、いくつかの母岩の鉱物(例えばかんらん石)に加えて風化作用中のFeの主要な供給源である。母岩の主な蛇紋石(蛇紋石化作用の度合いと呼ばれる割合)及び関連する残留物(特にかんらん石のような鉱物)が地球表面において又はその付近で、特に湿潤、熱帯地域において、長期的な風化(ラテライト化作用としても述べられる)にさらされるときに、ラテライト化が起こる。ラテライト化作用は、Ni及びCoを母岩と比べて3から30倍に濃縮する。ラテライト化作用は動的であり、深さプロファイルは実質的にスナップショットであり、最下層部分が最も直近に変形した岩を表している、すなわち(溶解したCO及び有機酸によって酸性化された)表面の水が、プロファイルを通過して下方に浸透するときに、(流動性が減少する順番に)Ni、Mg、Si、Fe(Fe2+として)及びAlを溶解し浸出させる。表面により近づくと、鉄は急速に酸化され、その構造中にNi(典型的には1.5%のNi)及び殆ど全てのCoを共に吸着させながら、アモルファスの水酸化第二鉄として沈殿する:
【0006】
【化1】

【0007】
これは非平衡反応であり、自然における沈殿プロセスの複雑さを示している。Fe2+は、酸化条件下で、マグネタイト、マグヘマイトなどのようなFe−酸化物、ならびにかんらん石や斜方輝石のようなMg(Fe)−ケイ酸塩の両方から浸出され溶解される。新たに形成された(右辺の)固体もまたほぼ確実に、中間段階としての水酸化第二鉄[Fe(OH)]の沈殿に関与する。
【0008】
時間とともに、物質はその結晶性を増していき、まず針鉄鉱(酸化物鉱床の主要な構成物)を形成し、そして最終的に最も安定で自然な形態、すなわちヘマタイトへ(トップダウンで)変化する。湿った酸化的Ni−ラテライト環境におけるヘマタイトは、その結晶格子にNi及びCoを受け入れることが出来ず、その等級を低下させて鉄質固結物(これはラテライト鉱床の採掘において最初に除去される層である)と呼ばれる上部地殻を形成する。Ni及び特にCoもまた、(たいてい他の鉱物の鉱脈又は表面コーティングとして形成された)Mn酸化物/水酸化物鉱物によって強く吸着されるということに注意を向けるのは重要である。ニューカレドニアのゴロ(Goro)鉱床及びキューバのモアベイ(Moa Bay)鉱床は、その深さプロファイルにおいて(it their depth profiles)大部分はこの種のリモナイト性の区域から成る鉱床の例である。
【0009】
(母岩に由来する)豊富な遊離シリカがMg−ケイ酸塩構造(蛇紋石、かんらん石など)から浸出された後で微晶質のカルセドニー水晶として再沈殿するとき、特定の種類のリモナイト性鉱床が形成される。これは通常、ラテライト性プロファイル内のEh及び/又はpHの変化によって起こる。微晶質のカルセドニー水晶はしばしば、より結晶性の高い水晶の相へ部分的に再結晶化するが、これは微細から粗大な遊離の個別の水晶粒子を生じる(レーベンズソープ(Ravensthorpe)及びジャカレー(Jacare)のケイ酸質鉱床はこの種の鉱石の例であり、すなわち粗雑なシリカ部分を物理的に除去することによって品質向上させやすい。)
【0010】
これほどは風化が厳しくない場合(例えば、より乾燥性又は寒冷の気候、あるいは地下水の流れが制限されている場所(乏しい排水性))、浸出率はより低く、Mgが蛇紋石及びかんらん石の結晶構造から優先的に浸出される。これが他のより流動性の低い鉱物成分(例、Fe及びSi)における同時的な品質向上を惹き起こし、それが主な蛇紋石及びかんらん石のスメクタイト性粘土への変化につながる。Fe2+もまたMg2+よりも流動性が低く、そのため新たに形成されるスメクタイト性粘土の結晶構造中でMgと置き換わる。これらのMg、Fe−粘土はしたがって、よりMgの豊富なセピオライトからよりFeの豊富なノントロナイトまで組成が変化する。粘土層(もしあれば)は通常リモナイト性区域とサプロライト性区域の中間に見られる。スメクタイト性粘土鉱物もまたその格子中にNiを固定するが(1.5%程度のNi)、格子中ではNiは層間の位置(inter−layer positions)でFe2+及びMg2+イオンと置き換わる。スメクタイト性粘土を形成するために必要とされるシリカもまた、粘土中の微晶質カルセドニー水晶の塊として見つけられ得る。ミュリンミュリン(Murrin Murrin)はそのプロファイル中に非常にはっきりとした断続的なスメクタイト性区域を含む鉱床の例である。
【0011】
スメクタイト性粘土層が存在しようとしなかろうと、残留のNi、Mg、Fe及びSiは溶液中に運ばれる。地下水が下降するにつれて、地下水のpHは未風化の岩床との反応によって増加する。ラテライト−岩床接触面に近づくと、変化したNi豊潤(20%程度のNi)水和Mgケイ酸塩鉱物(ガーニエライトとして知られる)が生じる。NiはMgよりも低い塩基性pHレベルにおいて再沈殿し、これがMg−ケイ酸塩中でのNiの品質向上を惹き起こし、結果としてこれらのいわゆるガーニエライト(Ni豊潤水和Mg−ケイ酸塩)が形成される。ガーニエライトはニューカレドニアのような構造学的に活性な地域においてより顕著であり、ブラジル又は西オーストラリアのような大陸塊の地形においてはそれほど顕著でない。その源となる母岩のNi含有量が、得られるラテライト鉱石のNi−等級を大部分決定する。
【0012】
岩床又はガーニエライト層(もしあれば)とリモナイト又は粘土層(もしあれば)との間は、サプロライト区域と呼ばれる、非常に変化の大きいケイ酸マグネシウム物質からなる、すなわち鉱物のフィロケイ酸類(主な蛇紋石及び母岩をその源としている)を含む推移区域がある。蛇紋石化されていない母岩の風化によって、せん断帯、断層、鉱脈及び裂け目のようなより透過性の高い地形構造に沿って現れる微晶質のカルセドニー水晶が生じることもある。時間とともに、Fe及び特にNi(典型的には2〜3%のNi)が優先的にMgと置き換わり、第二の“変化した”蛇紋石を形成する。例えば;
【0013】
【化2】

【0014】
この反応を右辺に進行させるためには、浸透する地下水内の溶解Ni濃度が、固相における濃度よりもわずかに高い必要があるだけである。
【0015】
Niは蛇紋石構造のより弱い結合位置(すなわち四面体位置のOH−結合(いわゆるブルーサイト層(brucite layer))において優先的にマグネシウムと置き換わる傾向がある。
【0016】
最後になるが、ラテライト層の風化プロファイル(深さ)の不規則性、及び不均一な採鉱が原因で、特定の鉱石標本(例えばサプロライト)は多様な割合で他の鉱石(例えばリモナイト及び/又は粘土)を含んでも良い、ということを認識する必要がある。したがって得られる鉱石原料は、非常に多様な鉱物学及び関連する加工特性によって特徴付けられる。
【0017】
世界のラテライトNi資源の大部分はリモナイト型鉱石に含まれており、そしてより少ない程度でサプロライト型鉱石に含まれている(Monhemius,1987及びElias,2002)。
【0018】
現行の実施
繰り返しになるが、いかなる方法の経済学も、より高いNi等級の鉱石を処理する場合により有利であることは念頭に置くべきである。それゆえ、(それが可能であるときは)選鉱が重要であると強調される。不運なことに、リモナイト鉱石及びサプロライト鉱石の両方は、そのNiがそれぞれ針鉄鉱及びケイ酸マグネシウムの鉱物化と密接に混合しているため選鉱が困難である。しかしながら、粗悪な荒れた物質が存在するとき、選鉱による品質向上の明確な可能性が存在する。粗悪な水晶、マグネサイト(MgCO)及びケイ酸マグネシウムなどのようにNi含有量が低いならば、この粗悪な物質のスクリーニングには見込みがある。
【0019】
製錬法(Smelting Process)(図1)
図1は、製錬手段を通じたサプロライト処理の概念的なフローシートを示している。鉱石は20〜50%の遊離水を含んでおり、これは乾燥によって最初に除去される。次いで鉱石を焼成して構造水を追い出し、その後コークス又は石炭を用いて加熱炉中でFe及びNiを金属状態へ還元する。Mg、Siなどはスラグ相をたどり、これにより液体状の溶融したNi−Fe合金の除去が可能になる。残留したS、C及びSiを除去するために精製が必要である:石灰の添加によりCaSスラグが形成され、その一方で空気による酸化を利用して、CをCO気体へ、Siを酸化物スラグへ変換する。フェロニッケルを生産するならば、ステンレス鋼の製造におけるその重要性が理由で、ごく少量のFeがスラグ相へ酸化される。マット生産手段においては、還元条件下で窯にSを加えて金属Ni及び(不幸なことに)Feと反応させて硫化物を形成する必要がある。次いでこの物質を溶融し、酸化物はスラグ相をたどり、そして硫化物はマット相を形成する。最終的に、空気を転換炉を通じて吹き付けて、大部分のFeをスラグ相へ酸化する。
【0020】
特徴:
− スラグの融点はSiO/MgO及びFeOの影響を受けやすい
− かつ、その原料標的を維持するために鉱石のばらつきは除外されるべきである(鉱石の採鉱及びブレンドは経費を増す);
− 低コスト電力産業設備事業の経済学上カットオフ原料等級は約1.7%のNiであり、そして高コスト未開発地域事業の場合はおおよそ2.1%のNiである(Dalviら,2004)。すなわちこの処理限度が標的鉱石として使用され得る資源産出を制限している;
− 製錬法の手段は高い資本に苦しめられており、それゆえエネルギーコスト及びその経済学は地域の電力コストに非常に影響されやすい;
− ニッケル回収は良好であるが(〜90%)、Co副生成物の手柄は全く/ほとんど不可能である;その第一の理由は、サプロライト鉱石中のCoレベルは一般的に低いこと、そして第二の理由は、その乏しい回収(〜50%)にある(Dalviら,2004);
【0021】
キャロン法(Caron Process)(図2)
鉱石は最初に回転窯中で乾燥され、還元的に焙焼される(燃料オイルが通常還元剤として使われる)。Ni及びCoはおおよそ700℃で金属状態へ選択的に還元される(Feの約10%の部分的還元が伴う)。もし(より多くのサプロライト鉱石を処理することにより)原料のケイ酸塩含有量が増加すると、フォルステライト(アモルファスのMg−ケイ酸塩)の再結晶化が起こり(それは700℃で還元するのは難しい)その結果Niを閉じ込め、すなわち浸出を受け入れない。同様に、より高い還元温度及び過還元は、(アンモニア−炭酸アンモニウムの浸出に対して)耐性を有する相を形成する傾向を増加させる結果になり、すなわち動力学対Ni及びCoの回収に帰着する。冷却後、アンモニア−炭酸アンモニウム溶液中(pH〜10)、酸化条件下(空気)で、合金は常圧浸出される。浸出されたNi(Co)及びFeは溶液相中で非常に強固なアンミン錯体を形成する。第一鉄は第二鉄の状態へ酸化され、ゼラチン質の水酸化第二鉄として加水分解する(Coは水酸化第二鉄と共沈殿する傾向があり、かなりの部分が回収不可能である)。液体−固体分離の後、HS気体を用いて、一部のNi及び全てのCoを硫化物として沈殿させる(CoはNiよりも可溶性が低いが、高いNi:Co比の結果として部分的なNi沈殿を生じる)。次いで(Coを含まない)Ni溶液は水蒸気蒸留されて塩基性Ni炭酸塩(固相)ならびにCO及びアンモニアを気相に形成する。CO及びアンモニアは、アンモニア−炭酸アンモニウム溶液を生産するために、再利用のために水への吸収によって回収される。Ni炭酸塩ケーキは販売されるかさらに処理されるかのいずれかであり、その処理は炭酸塩又は溶液からNiを回収するための多くの“バックエンド”処理の一つによるものである。Ni及びCoは溶媒抽出によって回収され得るか、又は塩基性炭酸塩は回転窯中で焼結されてNiO(高純度生産物ではない)を生産し得る。あるいはまた、該ケーキを硫酸アンモニウム溶液中に再溶解してNiアンモニウム硫酸塩を形成し、次いでそれはH気体によってNi金属に還元される(Monhemius,1987参照)。
【0022】
特徴:
・ この方法は多少のサプロライトを(高圧酸浸出法(High Pressure Acid Leaching Process)よりも許容し得るが、増量したMg及びケイ酸塩は増量したフォルステライトを形成し、すなわちより多くのNi損失につながる;
・ 主要な試薬(アンモニア及びCO)はプロセス内で再利用されるが、かなりの損失が起こる(とりわけMg浸出、すなわちMgアンモニウム炭酸塩の形成がその原因である);比較的純粋な産物を生産するために補給の試薬もまた必要である;
・ 全エネルギー入力の60%より多い量は先行処理(湿った鉱石の乾燥及び還元的焙焼)に費やされ、その一方バックエンドは湿式冶金プロセス(すなわち非常にエネルギー的に非効率な方法)へ立ち戻る;
・ 水酸化第二鉄沈殿物のゼラチン性が原因で、ろ過は不十分である;
・ 高温冶金プロセス(フォルステライト形成)及び湿式冶金プロセス(Coの共沈殿及びFeの沈殿による浸出粒子の妨害)の両者について低値回収;全体のおおよそ75%のNi及び50%のCoの回収。
【0023】
有価金属回収率の低さが原因で、かつ低い等級の原料(主にリモナイト性鉱石)を有する原料種がその標的であることから、未開発地域の事業は多量のエネルギー及び試薬コストが伴うこの技術を利用することを期待されていない(Dalviら,2004参照)。
【0024】
HPAL法(図3)
冶金学上、高圧酸浸出(HPAL)法は比較的単純であり、245℃を上回る温度での高温酸分解工程とともに始まる。放電スラリーを石灰で中和して向流的に注いだ後、不純物除去ならびに硫化物(HS)又は水酸化物(石灰)としてのNi及びCoの沈殿、あるいは溶媒抽出による直接的なNi及びCoの除去、がそれに続く(ゴロ(Goro)のフローシート)。任意の更なる精製及び分離は、再溶解(沈殿固体が生産された場合)及び溶媒抽出又は選択的沈殿による精製を含む。最終的に、金属が電解採取又は水素還元を通じて回収されるか、又はNi酸化物が熱加水分解法(Pyrohydrolysis)を通じて生産される(塩化物化学は浸出ではなく、SX又はIXと関係している)。
【0025】
特徴;
・ リモナイト性の方法手段である(リモナイト鉱石はサプロライト鉱石の総トン数の2倍を示すと概算されている)という事実により、製錬の場合よりも資源対象が広いが、この方法は主要な酸消費物、すなわちAl(粘土物質)及び特にMg(<4%)に大変影響されやすい;
・ 特に塩化物が存在するとき(塩水)腐食が高い。耐食性は高い等級のTi合金を使用するとき向上するが、それらは高価である;
・ 圧力装置及び建設資材の使用により資本コストが非常に高額である;
・ 酸消費物(Mg、Al)、及び酸性バックグラウンドを維持する必要性が原因で(重硫酸塩形成による)、ならびに中和の必要性(石灰)が原因で試薬コストが非常に高価である。典型的に、250〜400kg/tの酸添加が使われ、下端は低Mgリモナイト性鉱石に相当する;
・ 特により高いMg及びより高いAl原料について、オートクレーブ中でのスケール形成が問題となってダウンタイムを生じる。
【0026】
Dalviら(2004)の調査が示唆するところによると、HPAL手段の経済学は原料等級の影響を非常に受けやすく、すなわち平均の酸消費量よりも低くオフセットされている場合(マダガスカルのアンバトビー・プロジェクト(Ambatovy Project)参照)、又は酸の安価な産出源(例えば硫化物製錬所の操業)に近接している場合を除いては、概算されている原料等級下限である1.3%のNiが未開発地域の事業のために適用され得る。
【0027】
図4は試薬の使用という観点からのHPAL法の非効率性を示している。低いMg(リモナイト型)原料鉱石を処理する以外はほとんどどうしようもないという認識と共に、酸の消費という点での主な原因はMgであることが分かり得る。それに加えて、コストのほぼ半分は化学的バックグラウンド(重硫酸塩形成を相殺するため、温度)を維持するために費やされているものの、実際的に浸出反応に参画していない。“追加の”酸もまた、加圧浸出後に中和される必要がある。パルプ密度が高くなるほど、絶対的にはコスト(コスト/lb Ni)への化学的バックグラウンドの効果は小さくなる。しかしながら、粘度制限により最大パルプ密度には制限がある。
【0028】
代替的な硫酸塩ベースの方法
この産業においては、有望な常圧浸出(ALP)法に追いつこうとするはっきりとした傾向があり、それはとりわけより低い資本の必要性が理由であり、またリモナイト及びサプロライトの両方を処理することが出来るというその目標も共にある。リモナイト性鉱石は典型的に高残留酸濃度で浸出されるが、その一方サプロライト性鉱石(より高い中和能力を有する)はその後残留酸及びFe加水分解中に放出される酸を中和するのに利用される。HPALとALPの組み合わせ、いわゆる拡張圧力酸浸出(EPAL)法もまた開発されており、現在西オーストラリアのレーベンズソープ・プロジェクト(the Ravensthorpe Project)に適用されている。ALP及びEPALの概念を図5に示す。
【0029】
図5に示した概念は元来1970年代にAMAXによって特許取得されたものである。AMAX法は、部分的なNiの回収が伴って、部分的にサプロライト鉱石を還元する(すなわち中和の反応性を増加させる)ための焙焼炉もまた設けている。図5に示した方法構成とともに、(Mgの大部分を除去して)残留物中のあらゆる非浸出のNiをHPAL浸出に戻して再利用する選択肢もまた実行され得る(Monhemius,1987)。
【0030】
特徴:開回路、ALP/EPAL法:
・ 常圧浸出は遅い動力学によって特徴付けられるが、低資本支出によって大部分補填され、すなわち滞留時間は(HPALと比較して)比較的安価である;
・ (サプロライトの中和/加水分解による)Feの除去を扱うのに常圧浸出の系がたとえ有効であり得るにしても、過度のMg浸出によって酸の著しい損失はやはり起こる(しかしながら、追加の硫黄の燃焼による追加的エネルギーによって、及び追加的なNiの収益によっても、このコストは部分的に補填され得る);
・ HPALと比較して、EPALの方法はより高いエネルギー、及びさらに高い資本コストを導入する;
・ 開回路の常圧硫酸塩手段は、とりわけ絶え間なく締め付ける環境法のために、かなりのMgSO廃棄問題を要する(これは高Mg原料鉱石を処理するときに特に当てはまる)。
【0031】
HPAL部分は、高Ni及び高Co抽出を保証し、一方それと同時に安定なFe残留物を生産するため、全般的に見て、EPAL手段は最小の方法リスクを提供する。AL部分は最小の中和の必要性を保証し、その一方で追加的なNi収入が得られる。しかしながら、とても高い資本コスト及びMgの問題が主要な関心事となる。硫酸塩媒体中での開回路の完全なAL法は、高いNi及びCoの抽出を確実にするために非常に強引な(高酸)浸出条件を必要とする。今度はこれがサプロライト物質による大きな中和の必要性を必要とし、今度はこれが溶液中のMgを通じて、そしておそらくは残留物中のジャロサイトとして、大きな硫酸塩損失という結果となる。大きな試薬消費(安価な入手先が利用可能でない場合)及び環境的な要求が、この手段をおそらく実行不可能にする。この理由から、代替の方法が提案されてきており、Mgの問題を巧みに処理しようとしてきた。アメリカン・クライマックス社(American Climax Inc.)(AMAX社の前身)によって提案された一つのそのような方法は、190〜250℃のオートクレーブ中での非蒸発結晶化を利用して、硫酸塩を一水和物として沈殿させる。この方法は追加的及び高価なオートクレーブを必要とするため、スイスのスルザー(Sulzer)はSURAL法(Sulzer Regenerative Acid Leach Process)を考案し、エプソマイト(MgSO4・7HO)を生産する蒸発結晶化を提案した。この硫酸塩は次いで熱的に分解されてSO(酸プラント中で硫酸に変換され、HPALに戻されて再利用される)及び中和剤であるマグネシア(MgO)(プロセス内で再利用される)を産出する(Monhemius,1987参照)。最近提案された、スカイ・リソーシズ特許常圧浸出法(Skye Resources proprietary atmospheric leach prosess)は、最初の浸出工程もまた常圧である以外は、ほとんどSURAL法と同一である。それに加えて、スカイ法の開発者達はMg硫酸塩のあまり水和されていない形態、すなわち蒸発結晶化後の2から3個の水和水、を主張している(Hatch Feasibility Study,2005参照)。Sural/スカイ法の概念を図6に示す:
【0032】
特徴:閉回路、ALP法、スカイ法参照:
・ 試薬の取り替えは、エネルギー/燃料コストによるコストを埋め合わせ、これは場所によって良くも悪くもなり得る;
・ 蒸発による純粋な硫酸塩溶液からのMg硫酸塩の結晶化は、通常の水収支が必要とする量を超えて、かなりの量のエネルギーを必要とする(高い蒸発の必要性)(主要な原料鉱石のMg等級が増加するにつれ、これは重要性を増していく)。
【0033】
新たに提案された塩化物媒体中の方法
常圧塩化物酸浸出法(The Atmospheric Chloride Acid Leach Process)を図7に示す(この特許方法を開発したカナダのニッケル探査及び鉱山開発会社であるジャガー・ニッケル社(Jaguar Nickel Inc.)にちなんで、以後ジャガー法(Jaguar process)と呼ぶ)。これは、高MgClバックグラウンドを含む塩酸溶液中での常圧浸出法からなる。バックグラウンド溶液中のMg塩化物濃度の上昇につれて、プロトンの活性が劇的に上昇すると主張されている。この主張は、Bate他(1970)及び特にJansz(1983)によりHCl−MgCl−HOの系で実施された研究から来ている。浸出は2段階であり得、第1に鉱石が浸出されてNi及びCoを溶液に運び、それから第2の段階でFeを排除するために調整される。ブラインからFeを加水分解することの追加的な利点は、主張されているところによると、ブライン溶液中の低い水の活性は、脱水反応を促進する傾向があるということである。原理的には、ヘマタイトが大気温度で形成され得るが、そうでないとき(純粋な硫酸塩の系)は相当高い温度で稼動するオートクレーブが必要となる。有価金属の回収後、水収支を維持するために溶液は蒸発され、得られるMg塩化物ブラインは浸出へ戻され再利用される。流出ストリーム(bleed stream)は熱加水分解されて(図7の反応参照)マグネシア(内部の中和剤として部分的に再利用される)及びHCl気体を産生する。HClはその後濃縮されて常圧浸出容器へ戻される。
【0034】
ラテライト鉱石を浸出するため及び塩化Mgの熱加水分解を通じた主要な酸の再生の概念のためのブライン浸出の系は、最初にRice及びStrong(1974)によって提唱され、彼らは溶媒抽出を利用して系からFeClを除去し、それに次ぐスプレー焙焼工程において安定なヘマタイトを形成し、かつ等量の塩酸を再生する、ということを提案した。ジャガー法は、鉄不純物を処理することにおいて、より経済的であるとされる方法を導入する。それは高いバックグラウンド塩濃度(MgCl溶液)で機能し、この濃度は、調節された酸性度において80〜105℃で実行される鉄の加水分解を促進する。しかしながら、試薬の再生よりむしろ、熱加水分解の前及び最中の、濃縮された塩化マグネシウム溶液からの過剰な水の蒸発においてかなりの量のエネルギーが浪費されているということを認識したとき、ジャガー法の経済的な困難が明らかになる。浸出される物質のMg等級が高くなればなるほど、絶対量として(すなわち、処理される鉱石のkgあたり(図8参照))より多くの水が熱加水分解工程に持ち越されることになる。最終結果として、Mg原料等級が増すにつれて、ジャガー法はその水収支という点で急速に非常に非効率になる;そういう訳で、追加の水が回路に添加されてより多くのMgを溶液に吸収させ、ちょうど熱加水分解中に再び蒸発されなければならなくなる地点に達する。ジャガー法と同様に、Mgの最高等級によって惹き起こされる水収支の“引き込み(drawn−in)”効果は、より小さい程度であるとはいえ、“余分の”追加される水が多重効用の蒸発器/結晶化装置で比較的効率的に処理され得ること、及びMg硫酸塩の水和の水のみが(高価な)高温熱分解工程に影響すること、を除いてはスカイ法にも同様に存在するようである(この場合、回路の他の部分における成熟前の硫酸塩の結晶化を避けるためである)。生産されるMg硫酸塩の水和状態が低くなればなるほど、高温試薬再生工程にかかる水蒸発の負荷へのMg原料等級の影響力は小さくなる(図8参照)。直線の勾配が急になればなるほど(図8参照)、(より高い等級のサプロライト性鉱石を処理することから)回収される追加のNiの、高温試薬再生中の水蒸発のコストを吸収する能力はより小さくなる。
【0035】
熱の回収もまた熱加水分解の反応装置にとって不十分かつ複雑である(Steinbach&Baerhold,2002及びAdham 及び Lee,2002)。塩酸はエネルギー交換中に廃棄熱ボイラーの中で濃縮する傾向があるため、外来の物質が必要である。あるいは、もし塩酸除去が最初になされれば、回収のための発熱量が失われる。他の重要な要素は、Ca塩化物やNa塩化物のような不純物は熱加水分解せず、対応する等価の塩化有価物は高価な補填の塩酸又はMg塩化物と置き換えなければならないということである。熱加水分解反応の全体的な効率は100%をかなり下回る(significantly less that 100%)こともまた予測される。
【0036】
特徴:ジャガー法参照の熱加水分解を利用した閉回路法
・ 熱加水分解は比較的低い温度(〜500℃)で実行可能であるが、熱回収は複雑であり(高資本支出)、かつ比較的不十分である;
・ 高Mg含有量のラテライト鉱石を処理するとき、ジャガー法は非経済的になり、すなわち、本質的にリモナイト性鉱石を処理するための方法である;
・ CaやNaのような不純物は熱加水分解せず、等価な塩化有価物は高価な補填の塩酸又はMg塩化物塩と置き換えなければならない。
【0037】
ジャガー法は多量のMgを吸収できないという事実により、スカイ法のようないくらでも吸収する硫酸塩ベースの常圧プロセスに対して競争力のないものとなる。塩化物ベースの方法はごく最近提案されたものであり(Moyes他、2005)、熱加水分解の排除(すなわち硫酸を用いた硫酸塩の沈殿を通じた塩酸の再生)を狙っている(図9の化学反応参照)。この裏にある概念は、熱加水分解よりはむしろ安価な硫酸を用いる化学駆動の沈殿結晶化を利用して高価な塩酸を再生することを軸にして展開している。インテック法(Intec process)はCaCl/SOサイクルを通じて機能している。この方法は、流出ストリームのみが石灰を用いるFeの除去及びNi/Coの回収に供されることを除いてはジャガー法と比較して類似の論理に従っている。得られる溶液はその後、石灰を用いるMgの沈殿に供されてマグネシア(MgO)を形成する。これら単位操作の3つ全ては必然的に等量のCa塩化物での陽イオン塩化物の置換を結果として生じる。この回路で消費される全体量の塩酸は、後に硫酸添加によって再生され、Ca硫酸塩(低い溶解性)の沈殿を惹き起こす。生産される塩酸は、常圧浸出へ戻されて再利用される。今度は硫酸及び石灰が、後にCa硫酸塩の熱分解によって再生され得る。しかしながら、(HSC化学を利用する)熱分解反応の単純な熱動力学モデルはいくつか厄介な問題を表している(図10参照)。
【0038】
硫酸及び石灰の再生という概念は聞こえはいいが、硫酸塩は熱的に分解するために高温を必要とし、すなわち多量のエネルギー入力を必要としている。このことはまた、耐熱性の高い非反応型の石灰が形成されるという結果になり得る。それに加えて、熱分解中に中間固相が形成されるらしく、それがこの方法に更なる複雑性をもたらす。
【0039】
特徴:(塩酸の再生のための硫酸の添加を通じた)Ca硫酸塩の沈殿を利用した閉回路法(インテック法参照):
・ 売り物になるバサニ石(CaSO4・1/2HO)及びマグネシア(MgO)の副生成物がこの方法では形成されると主張されている。しかしながら、これらのような副生成物については常に生成物の純度が問題となることになる。
・ Ca硫酸塩の熱分解を通じて硫酸及び石灰が経済的に再生され得るということはなさそうである。熱分解反応は複雑な中間物を通じて進行し、石灰生成物は耐熱性であるかもしれず、また、この方法は多量のエネルギー入力を必要とする。
・ 原料鉱石のMg含有量が高くなればなるほど、より多くの硫酸及び石灰の補給が必要とされるようになり、したがってサプロライト鉱石を処理することに対してこの方法を非経済的にしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
したがって本出願人は、有価金属回収のためのより効率的かつより経済的な浸出方法の必要性を確認してきた。本出願人は特に、熱加水分解が利用されるときに必要とされるようには大量の水を蒸発させる必要がない、塩化物ブライン浸出溶液中での塩酸強度を産生又は再生する方法の必要性を確認してきた。全ての補給試薬は、プロセス内で補給の必要性の大部分を再生するというオプションを伴った、比較的安価なものである必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0041】
発明の要約
本発明の第一の実施態様にしたがって、有価金属を含む鉱石から該有価金属を浸出するための方法が提供され、該方法は:
塩酸存在下で該鉱石を浸出して浸出溶液中に可溶な金属−塩化物塩を形成する工程;
該浸出溶液へ硫酸を添加する工程;
該浸出溶液から金属−硫酸塩を回収する工程;及び
同時に塩酸を再生する工程;
を含む。
【0042】
金属−硫酸塩は式MeSO4・yHOを有しても良く、式中:
Meは金属であり;かつ
yは0又はそれより大きく、例えば0から3、より詳細には0又は1である。
【0043】
金属−硫酸塩中の金属の供給源は、大部分は鉱石からであっても良い。
【0044】
鉱石は、酸化亜鉛鉱石のような実質的に酸化物の又はケイ素質の卑金属鉱石であっても良い。
【0045】
鉱石は、サプロライト性又はリモナイト性の鉱石のようなラテライト性のニッケル鉱石であっても良い。
【0046】
あるいは、鉱石は、硫化物、チタン又はアルミニウム鉱石であっても良い。
【0047】
金属−硫酸塩は浸出溶液から沈殿させても良く、又は蒸発結晶化によって浸出溶液から回収されても良い。
【0048】
有価金属は、Zn、Cu、Ti、Al、Cr、Ni、Co、Mn、Fe、Pb、Na、K、Ca、白金族金属及び金からなる群から選択され得る。
【0049】
金属−硫酸塩中の金属は有価金属であっても良く、該方法は金属−硫酸塩を分解して有価金属を回収する工程を追加的に含んでも良い。
【0050】
あるいは、金属−硫酸塩中の金属は有価金属より価値が低いマグネシウムのような金属であっても良い。
【0051】
金属−硫酸塩は、処理されて二酸化硫黄、三酸化硫黄又はそれらの混合物を放出し得る。
【0052】
有価金属は、硫酸の添加により形成される金属塩とは独立して回収され得る。
【0053】
回収された塩酸は、超−共沸酸であっても良い。
【0054】
金属−塩化物塩溶液はアルカリ溶液であっても良く、及び/又は同様に金属−硫酸塩はアルカリ金属−硫酸塩であっても良い。
【0055】
再生された塩酸は浸出プロセス内で再利用され得る。鉱石を浸出するために利用される塩酸はブライン溶液、例えば約10%から約90%の飽和塩化マグネシウム溶液、約10%から約90%の飽和塩化亜鉛溶液、又は約10%から約90%の飽和の他の金属の塩化物溶液の一部分であっても良い。より詳細には、ブライン溶液は、約25%から約40%の飽和塩化マグネシウム溶液、約25%から約40%の飽和塩化亜鉛溶液、又は約25%から約40%の飽和の他の金属の塩化物溶液であっても良い。さらにより詳細には、ブライン溶液は、約30%の飽和塩化マグネシウム溶液、約30%の飽和塩化亜鉛溶液、又は約30%の飽和の他の金属の塩化物溶液であっても良い。
【0056】
金属−硫酸塩を利用して金属酸化物を生産しても良い。例えば、金属−硫酸塩は、熱分解に供して金属酸化物ならびに二酸化硫黄、三酸化硫黄又はそれらの混合物を生産しても良い。金属酸化物は、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄及び酸化アルミニウムから選択され得る。二酸化硫黄、三酸化硫黄又はそれらの混合物を利用して硫酸を生産しても良く、今度は硫酸を浸出プロセスに戻して塩酸を再生しても良い。
【0057】
有価金属は、おおよそ室温から金属−塩化物塩浸出溶液のおおよそ沸点までの温度で、鉱石から浸出され得る。
【0058】
コバルト、ニッケル、白金族金属、金、銀及び/又は銅のような1種又はそれ以上の有価金属は、金属−硫酸塩の形成前に溶液から選択的に分離され得る。
【0059】
鉱石の可溶化に由来する鉄及び/又は他の残留不純物は、例えば溶媒抽出、それに続く熱加水分解によって、又は加水分解によって、浸出溶液から除去され得る。
【0060】
硫酸は少なくとも30%、例えば約98%の濃度を有していても良い。
【0061】
本発明の第二の実施態様にしたがって、有価金属を含む鉱石から該有価金属を浸出する方法が提供され、該方法は:
塩酸存在下で鉱石を浸出して浸出溶液中に可溶な金属−塩化物塩を形成する工程;
該浸出溶液へ二酸化硫黄を添加する工程;
該鉱石から金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩を回収する工程;及び
同時に塩酸を再生する工程;
を含む。
【0062】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩は式MeSOx・yHOを有しても良く、式中:
Meは金属であり;
xは3又は4であり;かつ
yは0又はそれより大きく、例えば0から3、より詳細には0又は1である。
【0063】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩中の金属の供給源は、大部分は鉱石からであり得る。
【0064】
該方法は、浸出溶液へ酸化剤を添加して第一鉄イオンを第二鉄イオンへ酸化する工程をさらに含んでも(include include)良い。
【0065】
鉱石は、酸化亜鉛鉱石のような実質的に酸化物の又はケイ素質の卑金属鉱石であり得る。
【0066】
鉱石は、サプロライト性又はリモナイト性の鉱石のようなラテライト性のニッケル鉱石であっても良い。
【0067】
あるいは、鉱石は、硫化物、チタン又はアルミニウム鉱石であっても良い。
【0068】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩は浸出溶液から沈殿させてもよく、あるいは蒸発結晶化によって浸出溶液から回収されても良い。
【0069】
有価金属は、Zn、Cu、Ti、Al、Cr、Ni、Co、Mn、Fe、Pb、Na、K、Ca、白金族金属及び金からなる群から選択され得る。
【0070】
該方法中で触媒を使用して反応を加速しても良い。好適な触媒は、溶液中の銅、黒鉛及び石炭である。
【0071】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩中の金属は有価金属であっても良く、かつ該方法は金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩を分解して有価金属を回収する工程を追加的に含んでも良い。
【0072】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩中の金属は、有価金属よりも価値の低いマグネシウムのような金属であっても良い。
【0073】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩は、処理されて二酸化硫黄、三酸化硫黄又はそれらの混合物を放出し得る。
【0074】
有価金属は、二酸化硫黄の添加により形成される金属塩とは独立して回収され得る。
【0075】
回収された塩酸は、超−共沸酸であり得る。
【0076】
マグネシウムは、二酸化硫黄の添加前に、浸出溶液から除去されてカルシウム又は鉛のような別の金属陽イオンで置換されても良い。マグネシウムの除去後、二酸化硫黄の添加によって形成される金属塩は中間体−亜硫酸塩又は中間体−硫酸塩であり得る。中間体−亜硫酸塩又は中間体−硫酸塩は硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸鉛又は亜硫酸鉛であっても良い。
【0077】
金属−塩化物塩溶液はアルカリ溶液であっても良い。
【0078】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩はアルカリ金属−硫酸塩又はアルカリ−金属亜硫酸塩であっても良い。
【0079】
再生された塩酸は浸出プロセス内で再利用され得る。
【0080】
鉱石を浸出するために利用される塩酸は、ブライン溶液、例えば約10%から約90%の飽和塩化マグネシウム溶液、約10%から約90%の飽和塩化亜鉛溶液、又は約10%から約90%の飽和の他の金属塩化物溶液の一部分であっても良い。より詳細には、ブライン溶液は、約25%から約40%の飽和塩化マグネシウム溶液、約25%から約40%の飽和塩化亜鉛溶液、又は約25%から約40%の飽和の他の金属の塩化物溶液であっても良い。さらにより詳細には、ブライン溶液は、約30%の飽和塩化マグネシウム溶液、約30%の飽和塩化亜鉛溶液、又は約30%の飽和の他の金属の塩化物溶液であっても良い。
【0081】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩を利用して金属酸化物を生産しても良い。例えば、金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩を熱分解に供して、金属酸化物及び二酸化硫黄を生産しても良い。金属酸化物は、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄及び酸化アルミニウムから選択され得る。二酸化硫黄を利用して硫酸を生産しても良く、今度は硫酸を浸出プロセスに戻して塩酸を再生しても良い。
【0082】
中間体の硫酸塩又は亜硫酸塩を熱分解に供して、酸化カルシウムのような金属酸化物、ならびに二酸化硫黄、三酸化硫黄又はそれらの混合物を生産しても良い。二酸化硫黄、三酸化硫黄又はそれらの混合物は浸出溶液からの硫酸塩又は亜硫酸塩の塩析及び塩酸の再生のために再利用されても良い。
【0083】
有価金属は、おおよそ室温から金属−塩化物塩浸出溶液のおおよそ沸点までの温度で鉱石から浸出され得る。
【0084】
コバルト、ニッケル、白金族金属、金、銀及び/又は銅のような1種又はそれ以上の有価金属は、金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩の形成前に溶液から選択的に分離され得る。
【0085】
鉱石の可溶化に由来する鉄及び/又は他の残留不純物は、例えば溶媒抽出、それに続く熱加水分解によって、あるいは加水分解によって、浸出溶液から部分的又は完全に除去され得る。
【0086】
硫酸は少なくとも30%、例えば約98%の濃度を有しても良い。
【発明の効果】
【0087】
発明の詳細な説明
本発明の方法は、試薬及びエネルギーの使用の最適化にあたっての新たな包括的なアプローチを導入する。主要な試薬、すなわちHClが、結晶化に先立って浸出後の溶液を中和する必要性、又は新たな試薬の補給の必要性がなく再生される。この方法は高ブライン溶液においてより効率的になり、追加的な利点:1)無水の結晶化生成物、すなわち必要とされる熱合成のエネルギーがより小さい(試薬の再生);2)大気温度での無水の安定なFe加水分解生成物(例えばヘマタイト);3)高いプロトン活性による速い浸出動力学;及び4)貴重な副生成物(例えばPb、Ag)の浸出及び回収、を追加する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0088】
本発明にしたがって、塩酸を含む溶液中での1種又はそれ以上の金属有価物の浸出のための方法であり、該溶液から金属有価物は固体状の硫酸塩又は亜硫酸塩として回収され、かつ溶液中の塩酸は同時に再生される方法、が説明される。
【0089】
硫化物物質又は非硫化物物質のいずれかであり得る金属含有物質から、有価金属は浸出される。例えば該物質は、酸化亜鉛鉱石のような酸化物の卑金属鉱石;サプロライト性又はリモナイト性の鉱石のようなラテライト性ニッケル鉱石;硫化物鉱石、アルミニウム鉱石、又はチタン鉱石であり得る。金属有価物は最初に、固体状の硫酸塩又は亜硫酸塩の形成に先立って可溶性の金属−塩化物を形成する。
【0090】
有価金属は典型的に、Zn、Cu、Ti、Al、Cr、Ni、Co、Mn、Fe、Pb、Na、K、Ca、白金族金属及び金からなる群から選択される。
【0091】
金属−塩化物塩溶液はアルカリ溶液であっても良く、及び/又は同様に金属−硫酸塩はアルカリ金属−硫酸塩であっても良い。
【0092】
硫酸(典型的には少なくとも30%(例、約98%)の濃度)又は二酸化硫黄が、浸出された有価金属を含む溶液に添加され、後に回収される固体の金属硫酸塩又は金属亜硫酸塩を形成される。このようにして、比較的安価な試薬(硫酸又は二酸化硫黄)を使用してより高価な試薬(塩酸)が再生され、結果としてかなりの節約となる。
【0093】
固体の金属硫酸塩又は金属亜硫酸塩は、典型的には式:
MeSOx・yH
(式中、Meは金属であり、
xは3又は4であり、かつ、
yは0又はそれより大きく、例えば0から3、より詳細には0又は1である)
を有する。
【0094】
塩酸を含む溶液は通常ブライン溶液(すなわち塩化物塩溶液)であり、例えば約10%から約90%の飽和の塩化マグネシウム溶液、約10%から約90%の飽和の塩化亜鉛溶液、又は約10%から約90%の飽和の他の金属の塩化物溶液である。より詳細には、ブライン溶液は、約25%から約40%の飽和の塩化マグネシウム溶液、約25%から約40%の飽和の塩化亜鉛溶液、又は約25%から約40%の飽和の他の金属の塩化物溶液であっても良い。さらにより詳細には、ブライン溶液は30%の飽和塩化マグネシウムブライン、30%の飽和塩化亜鉛ブライン、あるいは他の金属又はアルカリ金属の塩化物であっても良い。ブライン溶液の金属又はアルカリ金属の含有量は、典型的には浸出原料中に存在する酸消費物を基礎にして選択され、かつその濃度は通常、その塩化物塩と硫酸塩の溶解度の間の有意な差異を可能にするように選択される。
【0095】
ブライン溶液(浸出媒体)の主要な構成要素を形成する塩化物の陽イオンを形成する金属は、好ましくは、浸出されることになる鉱石中に存在する主要な酸消費陽イオンから選択される。
【0096】
金属塩化物濃度は、典型的には:
例えばジャガー法において説明したように、浸出プロセスにプラスに影響するよう;
浸出条件下、金属塩化物の溶解度を上回ることなく(あるいは、水を加えて固相への塩化物の損失を防いでも良い)、鉱石からの金属浸出を可能にするよう;
対応する硫酸塩又は亜硫酸塩の容易な沈殿を可能にするよう − すなわち金属濃度は硫酸塩又は亜硫酸塩の溶解度を上回っていなければならない;
沈殿する硫酸塩又は亜硫酸塩の水和状態に影響を与え、それによって中性の硫酸塩又は亜硫酸塩溶液から可能であるよりも低い水和状態が作られるよう;かつ、
他の単位プロセスにおける溶解度限度を超えないよう、選択される。これは様々な単位プロセスに対して異なる操作温度を必要とすることがあり得る(あるいは溶解度限度を超えないように水が特定の単位操作に加えられ得る)。
【0097】
初期の塩酸濃度は、有価金属の高い割合を浸出すると同時に鉱石からの酸消費需要を満足するように選択される。0.5又はそれ以下の最終的な浸出pHで、80%を超える有価金属の抽出という結果になることが分かった。しかしながら、これは鉱石特有であり、満足出来る浸出は他の物質ではここで試験をされたよりも高い最終pH値で達成され得ることが当業者には理解されるであろう。
【0098】
硫酸又は二酸化硫黄は、通常硫酸塩又は亜硫酸塩としての沈殿に起因する塩酸強度と比較して、共沸混合物を超える再生塩酸の強度を生じるに十分な量(金属又はアルカリ金属塩化物の溶解度によって決定される)で、溶液に添加される。ブライン溶液は金属塩化物のバックグラウンド濃度を有しており、浸出中にそこに追加的な強度が追加される。好ましくは、この溶液への硫酸又は二酸化硫黄の添加は、ブラインの酸強度をその元々の値へ回復させるために必要な量を大幅に超えない。換言すれば、バックグラウンドの金属塩化物濃度は、対応する硫酸塩又は亜硫酸塩の結晶化によって削除されてはならない。あるいは、浸出溶液はフラクションに分けられても良く、その一つだけが硫酸塩又は亜硫酸塩の沈殿に供され、この場合バックグラウンドの塩化物レベルは非処理のフラクション中で維持されたままであるので、溶解度が許す限り沈殿は促進され得る。
【0099】
当該方法はまた、少ない水和水を有する金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩の結晶を生産する結晶化工程も含む。代替として、蒸発結晶化(通常の水収支の必要性の範囲内、又はわずかにそれを超える)が、上記の化学的結晶化反応の負荷を緩和するために利用され得る。この代替案は、水蒸発時の塩沈殿の程度に対するバックグラウンドのブラインの多重的な効果によって可能になる。さらに、マグネシウム塩の結晶構造内でのNiの共沈殿は、より低い温度で結晶化を実行するときに、典型的に最も良く見られる。Niが共結晶化するこの傾向は、溶液の常圧での沸点の近くで化学的結晶化を実行するときに、必然的に小さくなる。
【0100】
これらの塩は、直接販売することも可能であり、熱分解に供して販売することが出来る金属酸化物、ならびに二酸化硫黄、三酸化硫黄又はそれらの混合物を生産することも可能であり、ならびに/或いは硫酸塩媒体中で再溶解し、そしてその後に電解採取工程に供することも可能である。
【0101】
コバルト、ニッケル、白金族金属、金、銀、及び/又は銅のような1種又はそれ以上の有価金属は、金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩の形成に先立って溶液から選択的に分離され得る。
【0102】
鉱石の可溶化に由来する鉄及び/又は他の残留不純物は、例えば熱加水分解が後に続く溶媒抽出、又は加水分解によって、部分的に又は完全に浸出溶液から除去され得る。
【0103】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩中の金属は有価金属であっても良く、その場合該方法は、金属−硫酸塩を分解して有価金属を回収する工程を典型的に含む。
【0104】
あるいは、金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩中の金属は、有価金属よりも価値の低いマグネシウムのような金属であっても良く、また、有価金属は、硫酸又は二酸化硫黄の添加によって形成された金属塩とは独立して回収され得る。
【0105】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩は、処理されて二酸化硫黄を放出し得る。
【0106】
金属硫酸塩又は亜硫酸塩の溶解度が対応する塩化物のそれを有意に下回っているならば、該方法は必ずしも温度範囲によって制限されない。それにもかかわらず、浸出は通常、室温と溶液の沸点との間の温度で実行され、そして硫酸塩又は亜硫酸塩の結晶化工程は通常、上述した溶解度の差異が最大になる温度で実行される。
【0107】
マグネシウムは任意で、二酸化硫黄の添加前に浸出溶液から除去されて、カルシウム、鉛又はバリウムのような別の金属陽イオンで置換され得る。マグネシムの除去後に二酸化硫黄の添加によって形成される金属塩は、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸鉛、亜硫酸鉛、硫酸バリウム、又は亜硫酸バリウムのような中間体−亜硫酸塩又は中間体−硫酸塩である。中間体の硫酸塩又は亜硫酸塩は熱分解に供されて、酸化カルシウムのような金属酸化物、及び二酸化硫黄を生産し得る。二酸化硫黄は、浸出溶液から硫酸塩又は亜硫酸塩を塩析して塩酸を再生するために再利用され得る。
【0108】
本方法の際立った特徴として:
塩酸強度は卑金属塩化物ブライン中で再生される;
塩化物媒体中で機能する該浸出プロセスは、二酸化硫黄気体又は硫酸の添加によって維持される;
亜鉛又はマグネシウムのような金属は、中程度にのみ水和された塩として塩化物ブラインから回収され、それは熱的に分解され、硫酸塩媒体中に再溶解され、この溶液から直接的に電解採取され得るか、あるいは硫酸塩又は亜硫酸塩として直接的に、又は酸化物への熱分解後に販売され得る。
【0109】
本発明は、更に詳細に、そしていくつかの実施例によって、さらに説明される。しかしながら、そのような実施例はいかなる点でも、発明の精神又は範囲のいずれかを制限していると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0110】
非硫化物鉱石
本発明の第一の実施態様は、主に塩酸媒体中で、ラテライト性の鉱石、リモナイト性の酸化物及び/又はケイ酸質のサプロライトのような非硫化物鉱石から、マグネシウムならびに少なくともいくつかの有価のニッケル及びコバルトを浸出する方法を提供する。不純物(特に塩化マグネシウム)の固有の蓄積によって決定されるように、主要な浸出剤は塩化物のバックグラウンド中のヒドロニウムイオンである。
【0111】
非硫化物物質の処理は、非硫化物物質の例としてニッケルラテライトを使って以下に詳細に説明される。しかしながら、ケイ酸亜鉛、ボーキサイトなどの他の非硫化物物質もまた、同様の方法で処理され得ることは当業者に明らかになるであろう。ラテライトの例はまた、有価金属が塩化物ブライン強度再生工程で利用される金属でない場合の例でもある。この方法の概念的フローシートを図17に示す。
【0112】
マグネシウムは最初に沈殿によって回収され、塩化マグネシウム電解溶液から直接回収されるわけではないため、上述したように、塩酸の再生及びマグネシウムの回収は、蒸発による過剰な水の除去と関係がない(ジャガー法の場合と同様である)。しかしながら、代替策として、蒸発結晶化(通常の水収支の必要性の範囲内、又はわずかにそれを上回る)が化学的結晶化工程にかかる負荷を緩和するために利用され得る。この代替策は、水蒸発時の塩沈殿の程度に対するバックグラウンドのブラインの多重的な効果によって可能になる。
【0113】
費やされた塩化マグネシウムブラインの酸強度は、硫酸又は二酸化硫黄気体の添加によって回復され、それを通じて低い水和状態のマグネシウムの硫酸塩又は亜硫酸塩は沈殿し、同時に溶液中に塩酸を生成する。
【0114】
ラテライト浸出残留物は、ニッケル及びコバルトの抽出を最大化するためのその後の浸出工程で処理され得る。
【0115】
硫酸塩について、Linke及びSeidell(1965)の実験データが示すところによると、キーゼライト(硫酸マグネシウム・1水和物)が高温(〜100℃)での好ましい結晶化生成物であり、それはさらにマグネシア(再利用される中和剤として一部利用され得る)及び二酸化硫黄を形成するための焼成に必要なエネルギーを最小化する。単純化された反応は以下のように書かれ得る:
【0116】
【化3】

【0117】
0.01%未満の全塩化物含有量を有する結晶生成物は、このようにして生産された。キーゼライトの結晶構造へのNiの共結晶化は、溶液の常圧での沸点の近くで(又は加圧することによりさらに高温で)上記の反応を実行するときに、最小化されることが分かった。したがって、この方法を利用すると、販売するため及び/又は中和剤として使用するための高純度のマグネシアを生産することが可能であると想定される。あるいは、もしニッケル損失が許容出来ないものであると分かれば、例えばイオン交換、溶媒抽出、セメンテーション、沈殿などの化学的方法によって、結晶化前にニッケルは除去され得る。それに加えて、比較的安価で入手の容易な試薬である硫酸又は二酸化硫黄を用いて、比較的高価な塩酸が再生される。
【0118】
ブライン系中の第一鉄−第二鉄の対は、硫酸塩又は亜硫酸塩を沈殿させるための二酸化硫黄の直接的な利用において特に重要な役割を果たすように思われる。第二鉄のイオンが存在しなければ、溶液の二酸化硫黄を吸収する能力は、高いブラインバックグラウンドの溶液中で非常に低いことが分かり得、それゆえ系中で効率的に吸収されない。しかしながら、第二鉄のイオンの存在により、第二鉄イオンから第一鉄イオンへの還元反応に起因して、溶液中への気体の直接的な吸収が可能になる。この反応は、硫酸マグネシウム塩又は亜硫酸マグネシウム塩の優先的な塩析に更につながる溶液中の変化が伴うように思われる。
【0119】
ここで説明される本発明の方法が図11に示されており、バックグラウンド中でMg塩化物の量が増加した溶液における、Mg硫酸塩のより低い溶解度を軸に展開する。浸出貴液(pregnant leach solution(PLS))への硫酸の導入は、それゆえ硫酸塩の沈殿をもたらし、一方それと同時に常圧浸出工程へ戻して再利用するための塩酸を再生する。図12は、AspenPlusとして知られる商業的に入手可能なプロセスシミュレーション・ソフトウェアを利用した、塩化物バックグラウンドの増加に伴うMg硫酸塩の溶解度の予測される変化を示している。
【0120】
今度は沈殿したMg硫酸塩が熱的に分解されてマグネシア(中和剤として内部利用される)及び二酸化硫黄気体を形成する。二酸化硫黄気体は酸プラント中で硫酸に変換され、化学的に駆動される硫酸塩沈殿工程に戻され再利用される。
【0121】
温度及び水の動きに加えて、ブライン濃度もフローシートの統合での重要な変数である。対照的に、スカイ法のような硫酸塩ベースの方法は、自由度として利用できる温度及び水の動きしか有しない。これが、回路内での望んでいない結晶化を避けるためにより多量の水を添加する必要性を生じさせ、更にこれが、蒸発結晶化の所望の水準を達成するためにより多量の水(処理される鉱石のkgあたり)の除去を余儀なくさせる。この水の“引き込み”効果は、鉱石のMg原料等級が増すにつれて、ますますより重要になる。それとは対照的に、本発明は蒸発プロセスではなくて化学的な結晶化工程を利用しており、したがって水収支を原料鉱石のMg含有量のばらつきから分断している。また、本方法における高いブラインバックグラウンドが理由で、水収支を考慮すると厳然として必要とされる水蒸発中に多重的な効果が作用しており、さらにより多くのMg硫酸塩の沈殿を可能としている。これが、蒸気供給エネルギーの必要性を(通常の水収支を超えて)劇的に増加させることなく、化学的沈殿中の非効率性(望ましくない溶解度の振る舞いが原因である)を補填する。混合塩化物−硫酸塩電解液系はそれゆえ、スカイ法のような純粋な閉回路の硫酸塩ベースの方法と比較して、より高い度合いの方法の柔軟性を付け加えている。
【0122】
当該方法は、回路中に高い塩化物バックグラウンドを維持することによって、回路中の硫酸塩溶解度を抑制する。それと同時に、高い塩化物バックグラウンドは、プロトンの高い活性及び低い水の活性を確実にする。図13は、温度及びMg塩化物濃度の関数としてのプロトン活性の表面プロットを示している。
【0123】
このモデルは、HCl−MgCl−HO電解液系でのHの単一イオン活性を特徴付けるために、特に開発された。図13は、MgClのようなバックグラウンド塩の添加に伴って、Hの単一イオン活性(これは、唯一のものではないが、どれほど早くラテライトが崩壊してNiを放出するかを決定する重要なパラメーターである)がどのように向上するかを表している。65℃及び1MのHClにおいて、10倍の増加が実現される。残念なことに、温度が増加するにつれて、効果は劇的に減少する。それゆえ二つの相反する効果が存在する:高いH活性を達成するために低い温度で浸出したいが、それとは反対に固液界面での活性化エネルギー障壁を乗り越えるためにより高い温度で浸出したい。それにも関わらず、例えば85℃で浸出するときでさえ、純粋なHCl−HOの系における値と比較してほぼ二倍のH活性を達成することが出来る。純粋な硫酸塩の系においてはプロトンの同様な“攻撃性”は実現され得ないため、これは特に重要である。
【0124】
図14は二つの系の比較を表しており、Mg−硫酸塩の系における硫酸の同等の形式的な濃度と比較して、塩酸−Mg塩化物電解液は劇的に高いプロトン濃度を生じることをはっきり示している。この効果の主要な原因は、電解液中での異なるイオン間のスペシエーション中に見出され得る:H−Clは弱く、一方H−SO2−の結合は強く、また、ほとんどのプロトンを“捕まえて”重硫酸塩複合体(HSO)を形成する。重硫酸イオンを形成するこの傾向は、特により高いMg硫酸塩濃度及び温度において硫酸を比較的弱くすることである。
【0125】
本発明の方法は、例えばジャガー法のような純粋な塩化物ベースの方法と違い、NaやCaのような不純物を処理するのに特に適している。本発明の方法においてはNa−ジャロサイトを形成するために十分な硫酸塩が存在するべきであり、それは下記式:
【0126】
【化4】

【0127】
の通りにその塩化物同等物を再生する。
【0128】
実際、回路から失われた全塩化物を置き換えるために上記反応を利用することが出来るよう、十分な硫酸塩が存在することが望ましい。必要ならば(if need be)、十分なNaがFe除去工程へ循環されるのを確実にするために、回路へ少量のNa塩化物を加えても良い。化学的結晶化工程中で硫酸を添加するとき、溶液中のどんなCa塩化物も沈殿して不溶性のCa硫酸塩を形成するはずである。Ca硫酸塩は同伴するMg硫酸塩と共に分解しないが、等量の硫黄元素を燃焼することによって差異を補填することが出来る。したがって、プロセス回路中の主要な不純物を効率的に処理することに加えて、塩化物及び硫酸塩の損失は、それぞれNa塩化物及び硫黄元素のような安価な試薬を添加することにより補填され得る。他の不純物については、十分量以上の利用可能な(MnOへのSO/O酸化のための)SOが存在するため、Mnは容易に処理され得、流出の必要は無い。環境的及び経済的視点から、回路からの溶液流出が無いことは重要である。
【0129】
沈殿したマグネシウム生成物の焼成に関連して、流動床リアクター中(900〜1200℃)での分解のための理想的な生成物は、1モルのマグネシウムあたり1.5〜4モルの水を必要とする。この実行は米国特許第4,096,235号に開示されており、その全ての内容はここに組み込まれる。(熱分解に最適化された水和物を生産するための)一水和物の部分的な再水和は、結晶化した沈殿生成物の好適な水ベースの溶液との接触時間を調節することによって、容易に達成され得る。硫酸塩/亜硫酸塩の焼成で生産される二酸化硫黄から硫酸を再生する技術は十分に確立されており、経済性が保証されれば、硫酸を再利用する方法を提供し得る。
【0130】
マグネシアへの分解のために硫酸マグネシウム塩/亜硫酸マグネシウム塩を利用することの主要な利点は、(ジャガー法によって示唆されるように、塩化マグネシウム溶液の熱加水分解と比較して)かなり少ないエネルギーが水、すなわち水和の水のみの除去と関連する、ということである。商業的価値を有する非常に高品質のマグネシア生成物がこのようにして生産され得る。
【0131】
Mg硫酸塩の熱分解は比較的直線的である。図15は、還元剤として炭素が存在する下での熱分解用のHSC化学モデルを表している。沈殿したMg硫酸塩は非常に微細である(<10μm)傾向があるため、熱分解の動力学は、800℃であってさえも、非常に早くなるはずである。図16は、低温(65℃)での沈殿は、針状の6水和物及び非常に微細な1水和物粒子の混合物を生じることを示している。高温(110℃)でのブライン溶液からの沈殿は、排他的に1水和物であるキーゼライト(MgSO4・O)を形成する。したがって、熱分解のエネルギーは、少なくとも二つの水和水が沈殿塩中に存在するスカイ法の場合よりも低くなることが期待される。小さい粒子へ粘着しているあらゆるMg塩化物は熱加水分解してHCl気体を形成するべきであり、このHCl気体は再利用され得る。沈殿した硫酸塩の典型的な組成は、実験的に:17.1% Mg、<0.05% Fe、0.1% Ni、<0.05% Co、2% Cl、その他は硫酸塩及び水、であることが分かっている。沈殿した塩のNi含有量は温度の関数であり、含有量は結晶化の温度が低くなるにつれて増加する。
【0132】
重燃料オイル(HFO)及び特に低級石炭のような潜在的により安価な燃料源を使用することが出来た。石炭中のいかなる硫黄も酸化してSOを形成するはずであり、それゆえ全体的な硫黄元素の補給の必要性を低減するはずである。
【0133】
上述したように、塩化物系において実行する主要な利点は、ブライン溶液と平衡状態にある固体相を脱水するというその傾向である。キーゼライト(1水和物)又は無水和物塩すら結晶化の間に形成され得るという事実に加えて、ヘマタイトが大気条件下のFe加水分解の間に形成され得る。それは環境的視点から好ましい加水分解生成物であるというだけでなく、純粋な硫酸塩の系でのよりゼラチン状の又はより水和した沈殿物と比較して向上した沈降及びろ過の特性を示すということが知られている。これはまた、低い水含有量を持つ固相ケーキを生じ、したがって回路からの有価物の損失を最小化する。
【0134】
他の重要な要因は、水酸化第二鉄及び針鉄鉱の結晶構造内でNi及びCoが共吸収する傾向であり、その一方で(ちょうど自然において見られるように)ヘマタイトはこれらの種を共吸収する非常に低い傾向を示す。ブライン溶液からのヘマタイトの優先的な沈殿は、Fe加水分解中の調節された過飽和の沈殿及びヘマタイトの種物質の導入によって特に達成可能である(Riveros及びDutrizac,1997参照)。
【0135】
本発明の方法の基本ケースの概念的フローシートを図17に示す。常圧容器の周囲の再循環は塩酸の反応最大滞留時間が反応するのを可能にし、回路の中和の必要性(処理される鉱石あたりのMgの内部再循環負荷)を最小化する。流出ストリームのみが、Feを加水分解し次いで水酸化物沈殿を通じてNi及びCoを回収するために中和される。水収支を維持するために、単一の蒸発工程が中和後に続く。主要な再循環から分岐したストリームでの化学的結晶化は、回路からの損失分に加えて消費された分と等量の塩酸を再生する。沈殿した硫酸塩は焼成されてSO気体及びマグネシアを生産する。SO気体は酸プラント中で硫酸に変換されて結晶化装置へ再循環され、その一方マグネシアの一部は再循環されて内部の中和の必要性を満たす。過剰なマグネシアは販売され得る。
【0136】
本発明の方法の重要な特徴は、原料鉱石のMg含有量に比較的影響されにくいということである。これは図8から直接的に従う。もし1水和物ケーキが生産されれば、再生工程(Mg硫酸塩の熱分解)と関係する蒸発はほとんど/全く存在しない。これは、その高いNi金属の価値によって絶対的には操作コストにかなりの利益を付加する高い等級のサプロライト鉱石の処理を可能にする。以下の表は、全ての目標性能基準が原理的に満たされ得ることを示している。
【0137】
目標性能基準
・HPAL及び製錬と比較して少ない投資の必要性 v;
− 高圧の湿式冶金単位操作が必要でなく、穏やかな温度の高温冶金単位操作のみ必要とされている;
− 塩化物媒体は特別な腐食の予防措置を必要としているが、全ての単位操作は事実上常圧下である;
【0138】
・製錬と比較して少ないエネルギーの必要性 v;
− 還元剤を系に添加すれば、無水の/わずかに水和したMg硫酸塩の熱分解は800℃未満で達成可能である;
− 高温熱分解工程からの廃エネルギー値は、廃熱ボイラーシステムを通じて湿式冶金回路の加熱の必要性の全てを供給する;
− 硫黄含有の低等級の石炭が、還元剤及び熱分解焙焼炉中の直接的燃焼のための燃料として使用され得る;
【0139】
・HPALと比較して少ない試薬の必要性 v;
− Mg硫酸塩の熱分解は、硫酸塩(酸プラントを通じて)及び中和剤(マグネシア)の再生という結果につながる;
− 硫黄補給の必要性は、閉回路からの通常の損失に限られており、付加的な(安価な)硫黄の燃焼によって補填され得る;
− 塩化物補給の必要性は、閉回路からの通常の損失に限られており、NaClのような安価な塩化物塩によって置き換えられ得る;
− NaやCaのような不純物は硫酸塩(それぞれナトリウムジャロサイト及びCa硫酸塩)の除去を通じて処理され得、すなわち流出ストリームは必要でない;
【0140】
・HPALに匹敵するNi及びCoの回収 v;
− プロトン活性がより高く、それゆえ(純粋な硫酸塩の系での大気圧下の鉱石反応と比較して)より活発な浸出系である;
− HPALと比較して動力学は遅いが、これはより大きい常圧浸出タンクによって補填され得、すなわち滞留時間は比較的わずかである;
【0141】
・液体/固体分離及び残留物安定性 v;
− 塩化物存在下で沈殿したFe加水分解生成物は、優れた沈降及びろ過特性を示す;
【0142】
・環境的 v
− (環境的に安定な)ヘマタイトと同様、無水のFe加水分解生成物は、塩化物の系内で常圧条件/わずかに加圧条件下で形成され得る;
− Mg硫酸塩は熱的に分解されて内部の酸及び中和剤の必要性を満たす;
− 閉回路、すなわち環境へ流れ出る排出が無い;
【0143】
・拡大した鉱石標的からの増加したNi収入 v;
− 原料鉱石のMg含有量に影響を受けにくいことがリモナイト性鉱石及びサプロライト鉱石の共処理を可能にし、より大きな関連するNi収入標的が伴う;
【0144】
質量/エネルギー収支によって作成された二つの概念的なフローシートが図18及び図19に示されている。フローシート1(図18)は、基本ケースのフローシートとして使われた。本発明のブラインバックグラウンドはMg硫酸塩の溶解度を抑制するために利用される。蒸発結晶化は、通常の水収支の必要性を超えることなく、化学的沈殿工程に対する負荷を緩和するため、すなわち重硫酸塩の形成による化学的結晶化工程の非効率性を補填するために利用される。フローシート1(図18)は、原料鉱石中のMgのばらつきから水蒸発の必要性を効率的に分断している。図19は代替のフローシートを示しており、重硫酸塩の形成により高酸環境では化学的結晶化が不可能であると想定している。これは試薬の再生に関しての最悪な場合のシナリオを表している。
【0145】
1.鉱物反応試験
鉱物反応試験法を用いて、ラテライト性鉱石標本が試験された。三つの鉱石標本が高ブラインバックグラウンド及び二酸化硫黄の効果を調査するための更なる試験のために選択された。試験は高い固体濃度(30%)及び酸添加(硫酸=2018kg/t及び塩酸=1500kg/t;ともに41.2kg H/t)で実行された。ブラジル原産のジャカレーサプロライト、含鉄鉱石及びケイ酸質鉱石が試験のために選択された。標本の最上等級を表1に示す。
【0146】
【表1】

【0147】
それぞれの標本は以下に示された一連の試験に供された:
・ 塩酸浸出(1500kg/t)
・ 硫酸浸出(2018kg/t)
・ 高ブライン塩酸浸出(1500kg/t HCl;2m MgCl
・ SOでの高ブライン塩酸浸出(1500kg/t HCl;2m MgCl;20kg/t SO
【0148】
試験は、熱統計的に管理された油浴から循環されるオイルジャケットを持つ2lガラスリアクタ中で実施された。全ての試験は85℃でなされ、水中の30%スラリー(固体/固体+水)にパルプ化した鉱石300gを用いて開始した。スラリーは被覆鋼インペラ及びポリプロピレンバッフルインサートを用いて懸濁した。酸の添加は1時間のインターバルでの10回の等量添加へ分割された。40mlのスラリー標本をそれぞれのインターバルの最後に取り出し(金属の抽出のために分析された)。塩化マグネシウム・6水和物を最初のスラリーに添加し、その一方、高ブライン試験中の塩化マグネシウムレベルを維持するために、無水塩化マグネシウムを酸と共に添加した。必要なときには、ブロンクホルスト質量流量計(a Bronkhorst mass flowmeter)を利用して二酸化硫黄添加を調節した。
【0149】
a.サプロライトの結果
図20及び図21はサプロライトの実験で達成された、それぞれニッケル及びコバルトの抽出を表している。それが塩化物イオンによるより高い酸活性又は硫酸塩媒体中での重硫酸塩錯体の形成のどちらであるにせよ、塩化物媒体中での両方の金属のより多い抽出は明らかである。純粋な塩酸浸出と比較して、ブラインバックグラウンドで約10%の抽出の向上が観察される。二酸化硫黄の添加は、ニッケルの抽出に対して効果を有しなかったが、コバルトにおいて向上があった。
【0150】
図22は、高ブライン試験での全ての金属の抽出プロファイルを示している。ニッケルが少量の酸添加でサプロライトから選択的に抽出され、続いてマンガン、そしてその後マグネシウムが抽出される。26kg H/tまでは酸添加の増加とともに選択性が減少し、その後はプロファイルは有意に変化しない。
【0151】
b.ジャカレー含鉄の結果
図23から図25は、リモナイトの試験の結果を示している。ニッケルの抽出に対して、類似の傾向(サプロライトの振る舞いを参照)が観察される。しかしながら、リモナイトは、塩酸での抽出と硫酸での抽出との間により大きな分離があり、塩化物バックグラウンドからより多くの利益を得ているように見える。抽出における10%の向上が、二酸化硫黄の効果を伴わずにブラインバックグラウンドの場合に再び観察される。より多くのコバルト抽出が、ブラインバックグラウンドへの二酸化硫黄の添加で得られた。図25は、高いブラインバックグラウンドにおいて、小さい程度の選択性が得られたことを示している。抽出プロファイルは26kg H/tより大きい酸添加では有意に変化しなかった。
【0152】
c.ジャカレーケイ酸質リモナイト
ニッケル及びコバルトの抽出プロファイルが図26から図28に示されている。その傾向は含鉄鉱石標本で観察されたものと類似していた。
【0153】
鉱物反応試験から、以下が結論付けられ得る:
・ブラインの系に対する硫酸を塩酸に変えて、ニッケル抽出の顕著な向上が観察された。同様の利益はコバルトについても観察された。
・コバルトの抽出のみが、二酸化硫黄の添加から利益を得た。
・ジャカレーケイ酸質からのニッケルの抽出は、それぞれリモナイト相、マグネシウム−ケイ酸塩相及び水酸化マグネシウム相に含まれるニッケルとだいたい同じ比率で、鉄、マグネシウム及びマンガンの抽出と相関している。
・ジャカレーケイ酸質中のコバルトの抽出はマンガン抽出とのみ相関があり、様々な相の間に分布したコバルトの比率とは一致しない。
【0154】
2.結晶化試験
酸性の塩化物−硫酸塩又は塩化物−亜硫酸塩の水溶液系中のマグネシウム塩の溶解性挙動についてほとんど情報は得られない。操作条件ならびに様々な単位操作の統合を決定するためにこの知識は必要である。主要なパラメーターは:
・温度
・酸濃度
・塩化物濃度、及び
・硫酸塩/亜硫酸塩の濃度
である。
【0155】
より複雑性の少ない二相硫酸塩系(すなわち気相が存在しない)が最初に選択された。開始溶液は、一定の塩化マグネシウム濃度にて、様々の硫酸マグネシウム濃度で調製された。沈殿が観察されるまで温度で硫酸が添加された。生成物溶液がMg2+、Cr、SO2−及び遊離酸に対して分析され、そこからマグネシウム及び硫酸塩のイオン生成物が計算されたが、その一方固体はMg2+、Cl及びSO2−に対して分析された。
【0156】
結晶の特性化
統合されたフローシートは、結晶化装置の操作条件及び生成固体の特性に制限を課す。結晶の以下の特性は重要であり、定量化される必要がある:
・粒子径分布:かなり大きな平均径を有する狭い粒子径分布が空気中での流動化に必要である。あるいは、生成物は回転窯中で熱分解される。
・結晶水:可能なだけ低い水和状態が必要である。
・溶液含有物:母液の損失は最小限に維持される必要がある。
・ろ過性:ろ過性は補助的なものと考えられ、上記を満たすことにより向上するはずである。
【0157】
バッチ実験で生産される結晶の特性は生産スケールの連続リアクターを代表するものではないらしいことが認められている。
【0158】
バッチ実験で生産される結晶は、図30に示すように、典型的に微細であった(凝集する傾向がある10μmの粒子)。化学的解析は、硫酸塩に対するマグネシウムのモル比は1に近いこと(〜17% Mg + 〜67% SO)及び2%未満の塩化物含有量であることを示した。図30の特定の結晶は、濃硫酸を6mol/kg MgCl溶液に添加することによって110℃で形成された。これらの結晶は、単結晶解析(最小で50μmの結晶)のためには小さすぎたが、化学的解析及びX線回折(XRD)粉末解析によってバルク相がキーゼライト(MgSO4・O)であることが確認された。
【0159】
3.ロックド・サイクル試験
本願の方法における二つの鍵となる処理工程である浸出及び結晶化の間の相互作用を評価するために、ロックド・サイクル試験が利用された。中和工程もまた、再利用される溶液中での鉄及びニッケルの蓄積を調節するために導入された。それぞれのサイクルは、前工程からの溶液を用いた、一連の浸出、中和、及び次いで結晶化から成り立っていた。この一連が、定常状態に近づくために、数多くのサイクルで繰り返されるべきであった。
【0160】
結晶化と比較しての、浸出中の硫酸マグネシウムの溶解度の差異は、系に流入する追加のマグネシウムの全てを受け入れるのに十分であった。マグネシウムが流出する唯一の時点は結晶化中であった。溶解度の差異は結晶化(110℃)及び浸出(85℃)に対する異なる操作温度によって更に大きくなった。
【0161】
ロックド・サイクル試験はジャカレーサプロライトを用いて10%の固体密度(固体/固体+水)で実施された。
【0162】
90%を超えるNi及び塩酸バックグラウンドの抽出は、結晶化工程を通じた、連続的な硫酸の添加及びMg硫酸塩の除去によって維持された。結晶化後に除去(流出)される溶液部分は、最初のサイクルでのFe及びNi濃度を維持するのに十分であった。しかしながら、小規模のバッチスケールの実験を実行しているとき、3サイクル後に、最初のサイクルの水収支を維持することは非常に困難なものになった。しかし、最初の3サイクルの間の結果(表2)は、主要な試薬(塩酸)が、硫酸を添加してMg硫酸塩を沈殿させることによって維持され得ることを証明するのに十分であった。
【0163】
【表2】

【0164】
鉱石サプロライト:
Fe:15%
Ni:1.5%
Mg:18%
浸出固体密度:10%
【0165】
中和中に多少のMg硫酸塩結晶の形成が起こり、流出ストリームからFeを除去したこともまた留意された。しかしながらこれらの結晶は、少量の水を用いた最終的な残留物ケーキの洗浄中に急速に再溶解し循環溶液へ再導入された。
【0166】
表3は、それぞれ85℃及び105℃で実施された二つのロック・サイクル試験の最終サイクルの結晶化中に形成された固体を示している。両方とも、1に近いマグネシウム−硫酸塩モル比を有する高マグネシウム塩を生産した。XRDの結果(図29参照)は、より高温で沈殿した塩は排他的にキーゼライト(MgSO4・O)から成ったことを示した。
【0167】
【表3】

【0168】
4.硫酸の代わりに二酸化硫黄を直接使用した試験
以下の方法は、混合塩化物/硫酸塩の系において塩酸を再生するために二酸化硫黄がいかにして直接使用されうるかを説明しており、得られる溶液を酸化物又は硫化物鉱石から有価金属を浸出するために使用している。
【0169】
まず最初に、第二鉄(3+)状態の鉄が、酸再生工程中の二酸化硫黄気体の担体/吸着剤として機能する必要がある。例えばNiリモナイトのような酸化物鉱石を浸出する場合と同様に、鉄の大部分は鉱石の浸出中に第二鉄状態で溶液に入り得る。しかしながら、もし鉄の大部分が第一鉄(2+)状態で溶液に入るならば、最初に第一鉄を第二鉄状態へ酸化するために(酸素のような)酸化剤が必要となる。
【0170】
【化5】

【0171】
酸再生工程が次に続き、その工程では二酸化硫黄の吸収が溶液への硫酸の放出と共に起こる:
【0172】
【化6】

【0173】
混合塩化物/硫酸塩系において、主要な金属塩化物と硫酸塩の種との間の塩溶解度の差異は、浸出中に消費されるのと等量の塩酸を再生するために利用される。ラテライト性の酸化物鉱石から浸出されるマグネシウムの場合、反応は以下のようになる:
【0174】
【化7】

【0175】
酸再生工程中の全体の反応はしたがって次のようになる:
【0176】
【化8】

【0177】
他の金属種に対しても同様の反応を書くことができ、それゆえ浸出工程中に消費されたのと等量の塩酸を補給する手段を提供する。沈殿した塩(上記の例ではMgSO4・O)は熱的に加水分解されて等量の二酸化硫黄気体を再生し得、したがって方法全体を完全に自己維持可能にする。あるいは、硫黄(又は他の安価な硫黄の供給源)は空気中で燃焼されて二酸化硫黄気体を生産し得、この気体は高価な酸プラント中で最初にこの気体を硫酸に変換させる必要なく、上述したようにして直接使用され得る。
【0178】
上述した全ての反応は、出願人の実験室で明らかにされてきた。しかしながら、酸性度の上昇(それは継続的な反応の結果であり得る)とともに、反応6の速度は遅くなることが予測される。商業的には、溶液中の銅イオン、グラファイト又は石炭のような触媒が反応6を加速させるために使用され得る。
【0179】
ニッケル含有のラテライト標本はブラジルのジャカレー鉱床から調達された。該原料は特定のマグネシウム含有量を有していることが分かったが、それは酸浸出に供されたとき、かなりの量の酸を消費することが予期された。結果として、塩化マグネシウムブラインが80℃、80%の飽和レベルで調製された。数学的なプロセス物質収支予測の予測によって、他のブライン構成要素を添加した。ラテライト標本はこの媒体中でパルプにされ、塩酸の添加によって媒体の酸性度は0.5のpHまで補填された。ラテライトからのニッケル及びマグネシウムの抽出は、三時間の滞留時間内に80%をかなり上回った。浸出貴液は二酸化硫黄気体を用いたスパージングに供され、これは、少なくともラテライト標本から浸出されたのと同じだけのマグネシウムの沈殿を可能にした。沈殿は結晶性の硫酸マグネシウム・1水和物であることが分かった。浸出媒体の酸強度は同時に回復され、次の標本の浸出を可能にした。
【0180】
硫酸塩は焼成されてMgOを形成し、それは内部プロセスの必要性を超えるものである。このMgOのいくらかは、二つの別個の水酸化物生成物である鉄生成物及びNi/Coケーキとして、鉄、ニッケル及びコバルトを浸出溶液から沈殿させるために使われた。鉄生成物は廃棄され、Ni/Coケーキが主要なプロセス生成物であった。
【0181】
十分な第二鉄イオンが存在し、かつ十分な反応時間が許されていれば、原理的に二酸化硫黄気体が結晶化工程中の硫酸に取って代わるために使用され得ることを表4は示している。
【0182】
【表4】

【0183】
ここに提示したデータから以下の結論を導くことが出来る:
・主要な試薬(塩酸)は、濃硫酸でMg硫酸塩を沈殿させることによって、主要サイクル中で維持することが可能であり、その結果主要な浸出工程中の一貫したNiの抽出につながる。
・硫酸マグネシウムの溶解度は、浸出と比較して結晶化装置中、特に結晶化装置においてより高い温度かつより高いMg塩化物濃度で操作する場合により低かった。
・結晶化中に形成される結晶は、硫酸マグネシウム・1水和物(キーゼライト)であり、多少のニッケル及び塩化物含有物を有した。塩化物含有物は微細な沈殿中での溶液の取り込みによるものらしく、一方ニッケル含有物はより高温(溶液の常圧での沸点をわずかに下回る)で結晶化を実行することにより最小化され得る。
・二酸化硫黄気体を吸収するのに十分な第二鉄イオンが存在するならば、二酸化硫黄気体が等量の硫酸に組織的に取って代わるために利用され得る。
【0184】
硫化物鉱石
硫化物濃縮物(例、亜鉛の硫化物濃縮物)の酸化的又は非酸化的な浸出のための塩酸(塩化物)媒体の使用が、本発明の第二の実施態様にしたがって以下で説明される。硫化物濃縮物からの卑金属の回収のための非酸化的な方法は、それ自体は新規ではないが(硫酸塩媒体:S−C銅法,Kawulka他,1978;塩化物媒体:Molleman他,1998)、酸を再生する方法は当該分野では知られていない。統合された酸再生工程と組み合わせた、高ブライン溶液中での非酸化的浸出方法もまた当該分野で知られていない。
【0185】
亜鉛のような有価卑金属は、主に塩酸媒体中で硫化物濃縮物から浸出される。浸出される卑金属は、最終的に販売可能な生成物の形態で回収され得る。浸出動力学は速く、銅のような金属は容易に固相中で(CuSとして)除外され、保証されるならば、酸化的浸出法によって尾鉱から回収され得る。非酸化的条件下での操作の追加的利点は、硫黄元素が従来の十分に確立されたクラウス法(Claus process)(石油/石油化学産業)を通じて回収され得るということである。
【0186】
主要回路中の塩、特に卑金属(例、塩化亜鉛)の固有の蓄積によって決定されるように、主な浸出剤は塩化物バックグラウンド中のヒドロニウムイオンである。
【0187】
結晶化工程は、浸出された有価物を溶液から除去するために、塩化物ブラインバックグラウンドに対して卑金属硫酸塩又は亜硫酸塩(例えば亜鉛のそれら)の低い溶解度の生成物を利用する。硫酸塩又は亜硫酸塩の結晶は少ない水和水を有し、熱分解して酸化物(内部の中和剤として利用される)を生産するのに適しており、この酸化物は直接的に販売され得るか、又はその一部は後に金属を直接電解採取するために利用される硫酸溶液(電解採取において生産される)に再溶解され得る。
【0188】
金属は低い水含有量及び少ない結晶水を有する結晶化したケーキから回収されるため、塩酸の再生及び卑金属(例えば亜鉛)の回収は、上述したように、蒸発による過剰な水の除去とは無関係である。
【0189】
本発明は硫酸塩の系及び塩化物の系での亜鉛の溶解度の顕著な差異をもとにしており、後者は100℃でほとんど2倍高い(Linke及びSeidell,1965で公開された実験データ参照)。それに加えて、塩化物媒体中での実験時に本発明者らが発見したのは、中間の再利用可能な試薬としてのSO気体を介して又は硫酸としてのいずれかで硫酸塩又は亜硫酸塩を添加したとき、この現象を強化し利用して塩化物媒体中での亜鉛溶解度を劇的に減少させることが出来、それによって硫酸亜鉛又は亜硫酸亜鉛の塩を形成して沈殿させ、その一方で溶液中の塩酸を再生する、ということであった。さらに、得られた実験結果が示すところによると、ガニンジャイト(gunningite)(硫酸亜鉛・1水和物)が広い範囲の温度(典型的に〜60℃)にわたって望ましい結晶化生成物であり、さらにそれがZnO(製造過程の再利用される中和剤として一部は再利用される)を形成しかつ二酸化硫黄を再生する焼成に必要なエネルギーを最小化する。単純化された反応は以下のように書かれ得る:
【0190】
【化9】

【0191】
0.01%未満の全塩化物含有量を有する結晶生成物はこの方式で本出願人によって生産され、この技術の可能性、すなわち販売用の高純度のZnO(一部の量は内部の中和剤として利用される)を生産すること、又は(電解採取から戻ってくる)硫酸溶液中にZnOを再溶解してその結果の溶液からZn金属を直接的に電解採取すること、を明らかにした。それに加えて、比較的安価かつ容易に入手可能な試薬、すなわち二酸化硫黄気体又は硫酸を利用して、比較的高価な塩酸が再生される。沈殿した硫酸亜鉛生成物の焼成に関して、それは流動床リアクター中での分解用の理想的な生成物であるはずである。(熱分解に最適化された水和物を生成する)1水和物の部分的な再水和は、結晶化された沈殿生成物の好適な水ベースの溶液との接触時間を調節することによって容易に達成され得る。もし二酸化硫黄の直接的な使用が技術的に困難であると分かったならば、硫酸塩の焼成中に生成された二酸化硫黄から硫酸を再生する技術は十分に確立されており、(実験的に)実行可能であると証明されているガニンジャイトを沈殿させる方法を提供する。いずれにせよ、二酸化硫黄は熱分解工程の生成物であるため、補給の試薬は必要でない。少ない水和水を持つ硫酸亜鉛の塩を酸化亜鉛への分解のために利用することの主な利点は、塩化亜鉛溶液の熱加水分解と比較して、かなり少ないエネルギーが使われるということである。
【0192】
望ましい浸出動力学が巨大で粗い濃縮物において達成され、このことは、この方法が硫化物供給源からの亜鉛、銀及び鉛のような有価金属の浸出に適しているということを示している。特に興味深いのは、4モル濃度の塩酸溶液中での85℃の温度における速い(<1時間)浸出動力学であった(図35)。
【0193】
この方法の概念的なフローシートが図32に示されており、そこでは非酸化的工程において硫化物原料から有価の亜鉛を可溶化するために塩酸浸出媒体が使用されており、その後亜鉛が酸再生工程において結晶化した塩として除去される。硫酸亜鉛の回収のためには浸出貴液の中和処理が必要でなく、それは硫酸の添加によって回収される。沈殿した硫酸塩は、(当業者ならば予想するような)6水和物ではなく、1水和物の形態である。硫酸塩を酸化物に変換するつもりならば、これは6水和物と比較してかなりのエネルギーの節約につながるため、これが特に好都合である。鉄のような不純物は、再利用される酸化亜鉛焼成物を用いた過剰な酸の中和の後で加水分解によって除去される。
【0194】
同様の結果は、浸出貴液のスパージングを通じて、(硫酸の代わりに)二酸化硫黄気体を直接添加することによって達成することが出来た。既製の硫酸を購入するのではなく、硫黄元素又は固体の硫酸塩が焙焼されて二酸化硫黄を生成する場合にこれは利点を持ち得る。
【0195】
この方法は新規の試薬再生の概念、すなわち方法内での浸出剤及び中和剤の再利用、に基づいている。
【0196】
予備的な質量/エネルギー収支は、硫化物鉱石の従来の処理を上回る、この方法の顕著な操作コストの利益を示した。
【0197】
以下の要素が特に関連する:
・濃縮物は不純物のより少ない濃縮物又は好ましくは巨大で粗い濃縮物であっても良い(より高い全体的な有価物の回収性);
・全塩化物が回路の残りの部分において維持され得るならば、非酸化的浸出は必要とされるいかなるHCl濃度においても機能する;
・Cuは常圧浸出中にCuSとして再沈殿し、すなわち保証されるならば脈石残留物から回収され得る。
・Pbが回路から塩化物複合体として浸出し、また硫酸塩として結晶化装置中でおそらくは沈殿する。熱合成工程で形成されるPbOはその後ZnO再浸出工程の残留物から純粋なPbSOの塩として容易に回収可能である;
・塩化物溶液にHSOを添加したとき、ZnSO4・Oの塩が結晶化装置中で形成され、これは硫酸塩と塩化物塩の溶解度の差異のメリットを利用している:
ZnCl+HSO+HO→ZnSO4・O+2HCl
この反応を実行する主要な利点は、バックグラウンドのブラインはもともと遊離の水を結合し、したがってZnSO4・6HOのような高度に水和した塩と比較して分解するためにかなり少ないエネルギーしか必要としない無水塩(1モルのZnあたり<=1molのHO)を形成する、ということである;
・ZnSO4・Oを沈殿させるための主要な試薬としての(熱分解工程で形成される)SOの直接的な使用は、溶液相中のSOを吸収するために十分な第二鉄状態の鉄が存在するならば、実行可能であることが示されている。これは、結晶化に先立って、(空気中の酸素のような)酸化剤を添加して(非酸化的浸出からの)第一鉄を第二鉄へ変化させることを必要とする;
・上記の結晶化及び熱分解工程は化学量論的な釣り合いにあり、補給のHSO又はSOは(現実のプラント管理の目的を除いては)必要でない;
・主要な回路内でのFeの増加を抑えるために、ブライン溶液の一部は主要な回路から(結晶化の前に)流し出される。(熱分解工程で生成される)ZnOの比例量は、Feの除去に先立って、不純物流出溶液中の遊離の酸を中和するために循環され、したがって亜鉛屑との有価物(Ag、Ni、Co、Cd)のセメンテーションを可能にする;
・Feの加水分解はオートクレーブ内で大気圧又は低圧のいずれかで実行されて、ヘマタイト及び/又は針鉄鉱(おそらくアカガナイト(akaganite)として)を形成する。高ブライン溶液中での操作の他の利点は、ごくわずかの遊離水しか含まれておらず、これが今度はFe酸化物/水酸化物の脱水を可能にして、従来の硫酸塩の系の場合よりもかなり低い温度でヘマタイトを沈殿させる、ということである。
・ZnOの大部分(から中和への流出を引いたもの)は、再浸出工程へと進み、そこで電解採取から戻ってくる陽極液中でHSOを用いて酸化物は溶解される。再びであるが、酸は化学量論的な釣り合いにあり、補給の酸も中和剤も(現実のプラントを管理する目的を除いては)必要でない;
・回路中でNaSOが飽和まで増加して最も濃縮した時点で沈殿するため、全回路にわたって、溶液を流出する必要が全く/ほとんどない;
・流出が全く/ごくわずかしか必要でないため、水の除去は多重効用蒸発装置(multiple−effect evaporator)を用いて達成される;
・図33は統合されたフローシート内の塩化物及び硫酸塩のフローループを示している。
【0198】
冶金学上の評価
実験室のシミュレーションは、4つの処理工程、すなわち、浸出、結晶化、熱分解及びZnO焼成物の再浸出から成り立っていた。以下の元素の振る舞いが回路を通じて追跡された(10ppmの検出下限によって制限された):
アルミニウム、カルシウム、カドミウム、コバルト、クロム、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、ニッケル、鉛、シリコーン、亜鉛
【0199】
試験の条件は、準備的な質量/エネルギー収支のシミュレーションに基づいていた。コンピューターシミュレーションと試験のシミュレーションとの間の一つの顕著な差異は、コンピューターシミュレーションはより不純物の少ない濃縮物(〜50% Zn)で実行され、その一方実験室のシミュレーションはより粗雑な濃縮物(〜5% Zn)で実行されたという事実であった。
【0200】
研究の初期段階の冶金学的な評価は、非酸化的常圧浸出及び結晶化装置の単位操作についてのみ焦点が当てられていた。非酸化的浸出の設備は図34に示されている。
【0201】
浸出中に形成された全てのHSを硫黄元素へ変化させるために、気相は硫酸第一鉄スクラバを通じて捕捉された。スクラバに対する真空は、すなわち実験室環境へのHSの漏出に対して、浸出容器に陽圧を加えるよりも効果的であることが分かった。しかしながら、系からのHSの一貫した除去を確実にするために、すなわち反応を右辺へ進めるために、空気は浸出容器を通じてスパージングされた:
ZnS + 2H ⇔ Zn2+ + H
【0202】
図35は、(微細な粒子は除外されて)選択されたサイズフラクションに対して低い固体密度において実施された試験の典型的な浸出動力学を示している。4MのHClの動力学は際立った見込みを示した。他の二つの試験での阻害時間は、アノード方向の表面の分極、すなわち(スパージングされた)Oの存在が原因であった。溶液中への空気のスパージングはその後止められた。
【0203】
(ZnSO4・Oの)結晶化のスキームの主要な利点は、浸出後の中和が必要でなく、したがって浸出は、いかなる所望のHCl濃度においても操作され得ること、すなわち速い動力学を達成することである。図36は、濃HSOを用いたブライン溶液からの典型的な結晶化生成物を示している。質量の大部分はガニンジャイト[Zn(SO4)(H2O)]によって占められたが、ジプサムの非常に高い結晶性がXRDを支配している。NaCl濃度が非常に高い場合、少量のチャンゴイト(changoite)[Na2Zn(SO4)2.4H2O]もまた沈殿した。
【0204】
結晶化工程においてほかの要素からの妨害を避けるために、溶液濃度はそれらの硫酸塩又は亜硫酸塩の溶解度よりも低く保たれる。これは、セメンテーション及び/又は中和によって、例えば浸出貴液からの流出ストリームを処理することにより達成される。焼成物の一部を使用してこの中和を生じさせても良い。
【0205】
ブライン強度を調節するために、本発明の方法の水収支は蒸発によって維持され、浸出原料、洗浄水などのような様々な水の流入を補填する。
【0206】
硫化物鉱石の浸出
硫化亜鉛プロセスの例を用いることにより、本発明の方法はいま、さらに説明される。
【0207】
ジャムスバーグ(Gamsberg)(南アフリカ)鉱床からの鉱石から調製した浮遊選鉱濃縮物を含んだ閃亜鉛鉱を使用した。その濃縮物が4NのHCl中、85℃で、溶液中の塩化亜鉛のバックグラウンドに対して浸出された。浸出は原則的に15から30分以内に完了することが分かった。塩化物として亜鉛の80%飽和で浸出貴液を調製するよう、塩化亜鉛のバックグラウンド濃度及びブラインに対する濃縮物の比は選択された。浸出液を攪拌されたビーカー中の98%硫酸と接触させて、浸出される亜鉛の量と等量の硫酸亜鉛を沈殿させた。沈殿物は予測された半水化物水和状態の結晶質の硫酸亜鉛であることが分かった。硫酸プラントに好適な、又は結晶化における直接的な再利用に好適な、少なくとも20%のSOを有する気相を生成するために、塩は任意で好適な温度(例、750℃)にて空気で酸化物に焼成される。
【0208】
結晶化
塩化物と硫酸塩の両方として亜鉛、第一鉄、ナトリウムを有する合成初液が60℃で調製され、それらに化学量論量の硫酸が添加された。これらの試験の目的は二つの要素:第一に溶液中の主要な成分の溶解度を決定すること、そして第二に硫酸の添加を通じて形成され得る結晶の量と純度を決定すること、からなる。これらの試験の結果は表5に要約されている。
【0209】
【表5】

【0210】
低い初期亜鉛濃度により、試験20050324D6では結晶は形成されなかった。これらの結果は、沈殿結晶化による主要な試薬の再生の概念は、Znの系において根本的に妥当であることを示した。
【0211】
高い酸強度の塩化物ブライン(超酸)の調製
塩化物ブラインは硫酸又は二酸化硫黄と接触させられ、超共沸濃度の塩酸ブライン(すなわち得られる塩酸の強度が共沸混合物を超える場合)を生成し得る。この方法においては、洗練された蒸留技術又は高価な試薬は必要とされない。これは非常に高い酸性度を有する溶液の生産のための単純かつ安価な方式を提供しており、白金族金属の精錬の実行において広く利用されている特殊溶解プロセス(specialty dissolution processes)のような特定のプロセスにおけるその後の利用に使われる。達成され得る酸強度は、これが共沸混合物を下回ろうとも上回ろうとも、選択される塩化物によって左右される。
【0212】
高い酸強度の塩化物ブラインの調製
100℃において、塩化マグネシウムは約42.3g/100gの飽和溶液の程度まで可溶である。HSOを添加すると、全てのマグネシウムが1水和物として沈殿するという極端な場合において、約50.3gの塩が形成され、49.7gの水及び32.4gのHClが残り;39%の酸強度である。
【0213】
高酸強度の塩化物ブラインの調製
80℃において、塩化亜鉛は約84.4g/100gの飽和溶液の程度まで可溶である。HSOを添加すると、1水和物として75%の亜鉛が沈殿する場合、約71.7gの塩が形成され、28.3gの水及び33.9gのHClが残り;54%の酸強度である。
【0214】
本発明をその特定の実施態様に関して詳細に説明してきたが、本発明の精神及び範囲から離れることなく本発明に対する様々な変形、修正及び他の変化がされ得ることは当業者に理解されることになるであろう。
【0215】
本発明がその特定の実施態様に関して詳細に説明されたが、本発明の精神及び範囲から離れることなく本発明に対する様々な変形、修正及び他の変化がされ得ることは当業者に理解されることになるであろう。それゆえ、特許請求の範囲は、そのような全ての修正、変形及び/又は変化を補う又は包含することが意図されている。
【0216】
参考文献
Rice, N. M. The Hydrochloric Acid Route for Nickel Laterites: A Brief History of an ongoing Project, Leeds University Mining Association Journal, pp.59−89, 1989.
Rice, N. M. and Strong, L.W. The leaching of lateritic nickel ores in hydrochloric acid, Canadian Metallurgical Quarterly, Vol.13, No.3, pp.485−493, 1974.
Dalvi, A.D., Gordon, W. and Osborne, R.C. The past and the future of nickel laterites, IN: TMS 2004−133rd Annual Meeting & Exhibition Proceedings, Charlotte, N. Carolina, March 14−18, 2004.
Monhemius, A.J., Treatment of lateritic ores of nickel to produce ferronickel, matte or precipitated sulphide, IN: Extractive Metallurgy of Nickel, Critical Reports on Applied (Chemistry Vol.77, ed. Burkin, A.R., John Wiley & Sons, pp.51−75, 1987.
Elias, M. Nickel laterite deposits − geological overview, resources and exploitation, IN: Giant Ore Deposits: Characterisitics, Genesis and Exploration, eds. Cooke, D. R. and Pongratz, J. , Special Publication, Centre of Ore Deposit Research, University of Tasmania, pp.205−220, 2002.
Hatch Feasibility Study, Fenix Preliminary Assessment, Rev. 0, February 2005.
Bates, R.G., Staples, B. R. and Robinson, RA Ionic hydration and single ion activities in unassociated chlorides at high ionic strengths, Analytical Chemistry, Vol.42, No.8, pp. 867−871, 1970.
Jansz, JJ. C. (1983) Estimation of ionic activities in chloride systems at ambient and elevated temperatures, Hydrometallurgy, Vol.11, pp.13−31.
Steinbach, W. and Baerhold, P. Comparison of spray roasting and fluidised bed granulation for the recovery of hydrochloric acid from metallurgical processes through pyrohydrolysis, IN: Chloride Metallurgy 2002, Metallurgical Society of Canada, 52nd Annual Hydrometallurgy Meeting, Eds. E. Peck and G. Van Weert, Metallurgical Society of Canada, pp.643−655, 2002.
Adham, K and Lee, C. Energy recovery in the metal chloride pyrohydrolysers, IN: Chloride Metallurgy 2002, Metallurgical Society of Canada, 52nd Annual Hydrometallurgy Meeting, Eds. E. Peck and G. Van Weert, Metallurgical Society of Canada, pp.657−671, 2002.
Moyes, J., Houllis, F., Tong, A. and Sammut, D. The lntec Nickel Laterite Process, IN: ALTA 2005 Nickel/Cobalt Conference Proceedings (ref. Presentation), Perth, Australia, May 16−18, 2005.
HSC Chemistry 5.1, Chemical Reaction and Equilibrium Software with Thermochemical Database, Outokumpu Research, Finland.
Linke, W. F. and Seidell, A. Solubilities of Inorganic and Metal Organic Compounds, 4th edi., Amer. Chem. Soc, Vol. 1 and 2, 1965.
Riveros, P.A. and Dutrizac, J. E. The precipitation of hematite from ferric chloride media, Hydrometallurgy, Vol.46, pp.85−104, 1997.
Kawulka, P., Kirby, CR. and Bolton, G. K. Sherrit−Cominco Copper Process, CIM Bulletin, February, 1978.
Molleman, E., Van Sandwijk, T. and Van Weert, G. Acid dissolution of iron−bearing zinc concentrates, Minerals & Metallurgical Processing, Vol.15, No.3, 1998
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】製錬手段を通じたサプロライト処理の概念的フローシート
【図2】キャロン法を通じた主にリモナイト処理の概念的フローシート
【図3】HPAL法を通じたリモナイト(及びスメクタイト)処理の概念的フローシート
【図4】HPAL法のエネルギー及び試薬の経費解析
【図5】常圧浸出(ALP)及びHPAL−ALP(EPAL)アプローチ
【図6】Sural/Skyeの概念:Mg硫酸塩結晶化及び主要な試薬の再生
【図7】ジャガー法の概念:Mg塩化物の熱加水分解を通じた主要な試薬の再生
【図8】Mg塩化物溶液の熱加水分解及び結晶化Mg硫酸塩の熱合成の間の比較上の(仮想的な)水蒸発の負荷
【図9】インテック法の概念:Ca硫酸塩沈殿を通じた主要な試薬の再生
【図10】HSC化学(phemistry)モデル参照の、Ca硫酸塩の熱分解
【図11】本発明の方法の概念:Mg硫酸塩の沈殿及び熱分解を通じた試薬の再生
【図12】Mg塩化物の量を変化させたMg硫酸塩の溶解度(AspenPlusモデル参照)
【図13】Mg塩化物濃度及び温度の関数としての、0.5mol/kg HCl溶液の水素イオン活性
【図14】温度の関数としての、それぞれ0から1mol/kg HCl及び2.5mol/kg MgCl、ならびに0から0.5mol/kg HSO及び2.5mol/kg MgSO中での水素イオン重量モル濃度
【図15】HSC化学モデル参照のMg硫酸塩の熱分解
【図16】ブライン溶液から様々な温度で沈殿したMg硫酸塩結晶
【図17】本発明の方法の概念的(基本ケースの)フローシート
【図18】本発明の方法のフローシート1
【図19】本発明の方法のフローシート2
【図20】サプロライトの試験で得られたニッケル抽出
【図21】サプロライトの試験で得られたコバルト抽出
【図22】高ブライン試験でのサプロライト中の全ての金属の抽出プロファイル
【図23】リモナイトの試験で得られたニッケル抽出
【図24】リモナイトの試験で得られたコバルト抽出
【図25】高ブライン試験でのリモナイト中の全ての金属の抽出プロファイル
【図26】ケイ酸質のリモナイト試験で得られたニッケル抽出
【図27】ケイ酸質のリモナイト試験で得られたコバルト抽出
【図28】高ブライン試験でのケイ酸質のリモナイト中の全ての金属の抽出プロファイル
【図29】ニッケル抽出へのMgClの効果
【図30】形成される典型的な結晶のSEM写真
【図31】試薬添加のために利用されるシリンジを挿入して使用されるオイル加熱のリアクター
【図32】硫化物鉱石のプロセス
【図33】統合された硫化物鉱石のプロセスにおける塩化物及び硫酸塩のフローループ
【図34】小規模の非酸化的常圧浸出設備
【図35】90℃のHCl中での非酸化的浸出条件下での浸出動力学(+38〜75μm)
【図36】結晶化生成物のX線回折粉末解析

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価金属を含む鉱石から該有価金属を浸出する方法であって:
塩酸存在下で該鉱石を浸出して浸出溶液中に可溶な金属−塩化物塩を形成する工程;
該浸出溶液へ二酸化硫黄を添加する工程;
該鉱石から金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩を回収する工程;及び
同時に塩酸を再生する工程;
を含む方法。
【請求項2】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩が式MeSOx・yHOを有し、式中:
Meは金属であり;
xは3又は4であり;かつ
yは0又はそれより大きい、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩中の金属の供給源が大部分は鉱石からである、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
yが0から3である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
yが0である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
yが1である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
浸出溶液に酸化剤を添加して第一鉄イオンを第二鉄イオンへ酸化する工程を更に含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
鉱石が実質的に酸化物の又はケイ素質の卑金属鉱石である、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
鉱石が酸化亜鉛鉱石である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
鉱石がラテライト性のニッケル鉱石である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ラテライト性の鉱石がサプロライト性又はリモナイト性の鉱石である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
鉱石が硫化物鉱石である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
鉱石がチタン鉱石である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
鉱石がアルミニウム鉱石である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
金属−硫酸塩又は金属亜硫酸塩を浸出溶液から沈殿させる、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩が蒸発結晶化により浸出溶液から回収される、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
有価金属が、Zn、Cu、Ti、Al、Cr、Ni、Co、Mn、Fe、Pb、Na、K、Ca、白金族金属及び金からなる群から選択される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩中の金属が有価金属である、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩を分解して有価金属を回収する工程を追加的に含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩中の金属が、有価金属よりも価値の低い金属である、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩中の金属がマグネシウムである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩を処理して、二酸化硫黄、三酸化硫黄又はそれらの混合物を放出する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
有価金属が、二酸化硫黄の添加により形成される金属塩とは独立して回収される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
回収された塩酸が、超−共沸酸である、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
二酸化硫黄の添加前に、マグネシウムが浸出溶液から除去されて別の金属陽イオンで置換される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
金属陽イオンがカルシウムである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
金属陽イオンが鉛である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
マグネシウムの除去後に二酸化硫黄の添加によって形成される金属塩が中間体−亜硫酸塩又は中間体−硫酸塩である、請求項25から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
中間体−亜硫酸塩又は中間体−硫酸塩が硫酸カルシウム又は亜硫酸カルシウムである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
中間体−亜硫酸塩又は中間体−硫酸塩が硫酸鉛又は亜硫酸鉛である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
金属−塩化物塩溶液がアルカリ溶液である、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩がアルカリ金属−硫酸塩又はアルカリ−金属亜硫酸塩である、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
再生された塩酸が浸出プロセス内で再利用される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
鉱石を浸出するために利用される塩酸がブライン溶液の一部分である、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
ブライン溶液が、約10%から約90%の飽和塩化マグネシウム溶液、約10%から約90%の飽和塩化亜鉛溶液、又は約10%から約90%の飽和の他の金属塩化物溶液である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ブライン溶液が、約25%から約40%の飽和塩化マグネシウム溶液、約25%から約40%の飽和塩化亜鉛溶液、又は約25%から約40%の飽和の他の金属の塩化物溶液である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩を使用して金属酸化物を生産する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩を熱分解に供して、金属酸化物及び二酸化硫黄、金属酸化物及び三酸化硫黄、あるいは金属酸化物及び二酸化硫黄と三酸化硫黄の混合物を生産する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
金属酸化物が、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄及び酸化アルミニウムから選択される、請求項37又は38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
二酸化硫黄、三酸化硫黄又はそれらの混合物を使用して硫酸を生産し、今度は硫酸を浸出プロセスに戻して塩酸を再生する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
中間体の硫酸塩又は亜硫酸塩を熱分解に供して、金属酸化物及び二酸化硫黄、三酸化硫黄又はそれらの混合物を生産する、請求項28から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
金属酸化物が酸化カルシウムである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
二酸化硫黄が浸出溶液からの硫酸塩又は亜硫酸塩の塩析及び塩酸の再生のために再利用される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
有価金属が、おおよそ室温から金属−塩化物塩浸出溶液のおおよそ沸点までの温度で鉱石から浸出される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
1種又はそれ以上の有価金属が、金属−硫酸塩又は金属−亜硫酸塩の形成前に溶液から選択的に分離される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
選択的に分離される有価金属が、コバルト、ニッケル、白金族金属、金、銀及び/又は銅である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
鉱石の可溶化に由来する鉄及び/又は他の残留不純物が、浸出溶液から部分的又は完全に除去される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
鉄及び/又は他の残留不純物が、溶媒抽出、それに続く(dollowed by)熱加水分解によって除去される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
鉄及び/又は他の残留不純物が、加水分解によって除去される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
硫酸が少なくとも30%の濃度を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
触媒を使用して反応過程を加速する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
触媒が、溶液中の銅、黒鉛及び石炭からなる群から選択される、請求項51に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図15】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図36】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate


【公表番号】特表2008−533293(P2008−533293A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537412(P2007−537412)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003128
【国際公開番号】WO2006/043154
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(507132721)
【Fターム(参考)】